Namazu: [説明]

        Q&A本文(No8401-8550)

No
Q(お客の質問) A(答え)
8401 ムラサキオモトとは メキシコ、西インド諸島原産で、観葉植物として温室に栽培される多年草。沖縄などでは野性化している。短縮した茎の先から披針形の葉を多数出し、葉の基部は茎を包むようにつく。葉の長さは15〜25cmで幅4cm、先はとがり、やや多肉質で、表面は緑、裏面は紅紫色で美しい。開花期は7 〜8月。葉と葉の間から2枚の苞葉が出て、それに包まれるようにして花が咲く。がく片、花弁ともに3枚で、花弁は白色か淡紫色。 雄しべは6個で、花糸には細毛がある。種子はよくできて、よく発芽するが、寒さに弱く、15度以下での越冬はむずかしい。

一属一種:花をよく見ると、ムラサキツユクサに似ている。そのため、これをムラサキツユクサ属に入れていた時代もある。が、花序のつき方が異なっているため、いまはムラサキオモト属を新設して これに入れてある。ツユクサ科のムラサキオモト属は世界に一属一 種しかいない。変種としては、葉の両面とも緑のミドリムラサキモトや葉に淡黄色の縞のある斑入りムラサキオモトなどがある。  
学名のレーオデスカラーのレーオは人名に由来するが、デスカラーは葉の表面が緑、裏面が紫と二色になっていることをあらわしている。ヨーロッパには1783年ごろに入ったようだが、フランス名もドイツ名も二色の意味を持つ名前になっている。

名前の由来:葉がオモト(ユリ科)に似て、葉の裏面が紫色であることからこの名となる。紫金蘭、紫錦蘭の名称は、葉裏の色から園芸愛好家の間から出たもので、漢名ではない。沖縄では、首里のアカウムト、石垣島のオンバンウムトゥがあるが、ウムトはオモトの沖縄方言。英名はBoat‐Lilyで、苞をボートに見立て、そこから 白い花が咲き、葉の外観がユリ科のものに似るところからきている。

文化年間に渡来:斎藤月岑著『武江年表』(1878年)によると文化13年(1816年)の項に「紫おもと初めて渡る(おもとと号すれどもリロの種類にはあらず、始めは高価を以てひさぎたり。寒を恐るる故唐むろにて養う)」と記されている。リロとはシュロソウのこと。これがわが国に最初に渡来した記録。 小笠原諸島には明治8年(1875年)に入っている。           

『草木図説』の解説:飯沼慾斎は『草木図説』(1856〜1862年)7巻にムラ サキオモトの精細な図をのせ、解説している中で「この草琉球産に して性最畏寒、冬蔵密ならざれば育しがたし」と記している。性質は最も寒さをおそれるので、冬は囲いなどしないと生育がむずかしいというのである。また、江戸後期のこのころ、すでに沖縄地方では、野生化しているところもあった。

観葉植物から薬草に:葉の緑と紫の鮮やかな配色の美しさによって、メキシコ原産のムラサキオモトが世界じゅうに観葉植物として広まっていった。もともと寒さには弱いが、暑さには強く、熱帯や亜熱帯のような高温、多温帯である東南アジアなどには、早くから 移入されて、野性化している。  
昭和の初期、ある日本人がマレーシアの奥地を旅行していたとき、途中で立ち寄った一軒の家で、子供がはげしい下痢症状で苦しんでいた。すると、その家の主人は、外に飛び出していき、間もな く何枚かの草の葉をとって戻ってきて、その葉の汁を子供に飲ませた。子供の下痢はおさまり、間もなく元気をとり戻した様子を目の あたりに見て、この日本人はたいへん驚き、草の名を主人に聞いて、 ムラサキオモトであることを知った。その後、日本に帰って、さっ そく、下痢止め薬をつくるようになったのである。

採取時期と調整法:必要時にとって水洗いし、生のまま用いる。

成分:紫色素のアントシアニジンを主成分とする。

薬効と用い方:
下痢止めに:
新鮮な葉を細切りし、ジューサーで手早く葉汁をしぼり、1回約20〜40ccを服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8402 ウコンとは インドよりインドシナの原産で、熱帯アジア、マレーシア、中国南部、台湾に栽培する多年草。九州南部、沖縄、小笠原、その他の 暖地に栽培される。根茎は太くて大きく、主根茎から側根茎を多数出し、いずれも黄色。長柄のある長楕円形の葉4〜5枚を互生し、 高さ40〜50cmになる。葉の主脈は太く、側脈とともに隆起して目立 つ。花は栽培地によって開花期を異にするがだいたい7〜9月。高 さ約20cmの花茎を伸ばし、深緑色の苞を重ねた花穂をつける。この苞から3〜4個の花が咲く。花冠は3裂し、雄しべ4個はすべて花弁化して仮雄蕊となるが、そのうちの一つは大きい唇弁となって、 その中央に雄しべをつける。花弁は白色、先端部がわずかに淡紅色に染まっている。

名前の由来:『本草和名』(918年)に欝金の漢名で出ているのが最初で、 林道春着『新刊多識編』(1631年)になると、鬱金の漢名を記し、これにカオリサキノクサの和名をあげている。これは「香り咲きの草」の意であろう。それより82年後に出版された、『和漢三才図会』 (1713年)寺島良安著には鬱金の漢名にウコンの和名をあげている。漢名を日本音に読んだもので植物の名としては、「香り咲きの草」よ り、このほうがふさわしい。

栽培記録:江戸時代以前の古文書にもこの植物名が出てくるが、わ が国で栽培されていたかどうかは疑わしい。徳川ハ代将軍吉宗は当時、外国産有用植物、特に薬用植物の国内での栽培に力を入れた結果、10年の歳月をへて人参(薬用人参)の栽培に成功するが、ウコンもこの時代に栽培されていた。享保11年(1726年)に幕府の麻布御薬園でウコンを栽培した記録がある。それ以後各地の御薬園に栽培さ れるようになる。『物類品シツ』平賀源内著(1763年)は「漢種、享保中、 種を伝て今官園多あり」と記した。官とは幕府の御薬園をさしている。『花彙』小野蘭山・島田充房共著(1763年)にはウコンの図をのせ「今京都では往々これを植ふ。三、四月苗を生ず」と記し、『絵本野山草』橘 保国著(1806年)にも図をのせ、「葉は美人蕉(ひめばしょう)に似たり、花のかたち、款冬花(ふきのはん)のたけたるごとく、葉の中に咲。色白く、少しうつり見ゆる。八、九月花あり」と記し、『草木図説』(1856〜1862年)の飯沼慾斎もウコンを図で示し、解説を加えている。また、特にこれに似たキョウオウとの区別にもふれている。これら絵入りの出版物が多く出ているのは、当時、南方植物のウコンに人気があっ たからであろう。

類似植物キョウオウ:和名の別名にハルウコンの名があるキョウオウは、学名はCurcuma aromatica Salisb.このアロマチカは芳香性の意で、根茎に香気があることに由来する。キョウオウは漢名の薑黄を日本流に音読みにしたもの。インド原産で、沖縄には古くか ら渡来し、現在は野生化している。花は春咲きで、白色に淡い紅色のぼかしがあること、花序は葉と葉の間からは出ないこと、葉の裏には軟毛が生えること、根茎がウコンが紅黄色であるのに対して、ハルウコンは淡黄〜黄褐色であることなどの点に大きな違いがある。

採取時期と調整法:最近はビニールハウスなどの利用で、寒い地方での栽培も見られる。秋に根茎のみを採取し、枝分かれしている根状部分をばらばらにしてから水洗いし、日干しにする。

成分:根茎の黄色の色素はクルクミンで、約0.3%含み、これに利胆作用があって、胆汁の分泌を促進し、黄疸症状に用いられる。その他に精油を含み、その主要成分はツルメロン、ジハイドロ・ツルメ ロン、ジンギベレン、シネオールなどを含んでいる。

薬効と用い方:
健胃、利胆に:
1日に6〜10gを、水400〜600ccで1/2量に煎じて服用する。
鎮痛に:1回量3〜5gを水400ccで1/2にせんじて服用する。
食品原料に:カレー粉の原料や、食品の黄色着色料として用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8403 パパイヤとは(パパイア) メキシコより西インド諸島、ブラジルなどの熱帯アメリカ地方を原産地とする草本状の高木。亜熱帯以南の各地で栽培され、わが国では小笠原諸島や沖縄で栽培。幹は直立して高さ7〜10mに達し、先端に掌状葉が多数、互生状 に群生する。葉はヤツデの葉に似て大きく、直径30〜60cmになり、 各裂片は深く割れ、表面は緑色で裏面は淡緑色か緑白色。葉を析る と白色の乳汁を出す。雌雄異株であるが、ときに両性花をつけることもある。雌株にのみつく雌花は花柄が短く、1葉腋に5花をつ け、がく片5枚は緑色で厚く、花弁5枚は乳白色で厚い。子房は大きく、卵形で5稜がある。雄しべは退化している。雄株につく雄花は花柄が25〜100cmと長く、ひも状に葉腋からたれ下がることが多 く、雌花より小さい花を集散花序につける。花弁は細長く乳白色で 雄しべは10個。花は一年じゅう見られる。果実は葉腋に着き、倒卵形で頭の部分が突出し、表面は橙黄か緑黄色。果肉はやわらかく、甘みと特異な香りがある。黒色の種子が多数入っている。

名前の由来:パパイヤまたパパヤともいい、語源はカリブ語(カリブ海地方の土語)のアババイのなまりであるとされている。パパイ ヤが正しく、パパヤはなまりということではない。別名のチチウリ は、葉を切ると乳汁が出ることから、乳瓜の意味でつけられた。 木瓜(ぼくこえ)は台湾での名で奄美大島ではこれをモッカと呼ぶ。沖縄ではパパヤと呼ぶほうが多く、鬼界ケ島、永良部島、徳之島ではパパイヤ と呼び、奄美大島では木瓜のほかにパパイヤともいう。

パパイヤの発見:コロンブスの米大陸発見以後、16世紀の初めにスペインの探検隊によるパナマから南東北西部にパパイヤが発見さ れ、間もなくカリブ海沿岸一帯に広まった。ヨーロッパにはスペイ ン人によって1690年に伝わり、アジアには18世紀の終わりに伝来し、 台湾、小笠原、また沖縄にも移植栽培されるようになった。現在わが国の果物店にはハワイ産のものが、航空便で送られてきている。

果物としての需要:果肉の色は黄、オレンジ、紅橙などいろいろあ り、大きさもさまざまだが、あまり大きいのは味が落ちる。ひょうたん型が比較的無難、黒い種子を除き、果肉 をスプーンですくいながら食べるが、レモン汁や食塩少量を加えてもよい。  
『四訂日本食品標準成分表』(1982年)によると、熟したものは可食部 100g中、カロチン85μg、ビタミンC65mgを含有。

タンパク質消化剤のパパイン:パパイヤの果実は、タンパク質分解酵素パパインを含んでいる。若い果実をきずつけて乳液をしぼり、 これを集めて加温しながら急速に乾燥させ、この中に含まれる夾雑物を除くため、アルコールを用いて夾雑物を沈澱させて分離し、パパインを精製する。タンパク質消化剤のほか、二キビ、ソバカスなどに効果があるとして化粧料にも応用される。

採取時期と調整法:一般には果物店から購入したものを利用する。 沖縄地方やパパイヤを栽培しているところでは、未熟果の汁をそのまま利用する。また成熟果も用いる。

成分:若葉にはカルパインというアルカロイドが含まれ、これは有毒物質である。ほかに配糖体のカルポキシドもある。果実には前述のパパインのほかカロチノイド色素のクリプトキサンチンや酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸のほか、ビタミンA、Cが多い。またブドウ糖、果糖などの糖質が5〜6%、脂肪分解酵素のリパノーゼも含まれ、樹脂、ゴム質、脂肪少量もある。

薬効と用い方:
胃痛、下痢止めに:
成熟した果実の汁をしぼり、1回40ccを新鮮な内に飲む。沖縄地方の民間療法として行われている方法。
寄生性皮膚病(疥癬など)に:未熟果の果汁を直接患部に塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8404 ノブキとは 北海道、本州、四国、九州の山地や林の下、谷間、日陰の路傍、湿地などに自生する多年草。朝鮮半島、中国(東北地区)、 ヒマラヤに分布する。  
地下茎は横に伸び、多くのひげ根を出す。茎は50〜90cmの高さになり、腺毛が生える。根出葉は葉柄が長く、葉は腎臓形、表面緑色、裏面は白色の綿毛が密生するので、白みがかって見える。 葉柄には狭いひれ状の翼がある。花は8〜10月、白色の頭花が円錐花序に咲く。頭花の外側に並ぶ7〜8個の管状花は、雌性花で 果実を結び、内側にある15〜18個の管状花は、雄性花でこれには果実はできない。果実は緑色のこん棒状、表面に赤褐色を帯びた 粘性の腺毛が生える。

名前の由来:葉が腎臓形で、フキの葉に似ていて、野原にあることからこの名となった。別名のオショウナは和尚葉のこと。古くは禅寺で住職を和尚と呼んでいたが、のちには寺の住職は何宗でも一般に和尚というようになった。以前は天台宗では「かしょ う」、真言宗では「わじょう」と言っていた。また、寺でこの若葉を精進料理に用いていたので、この名となったともいわれている。中国では「腺梗菜(せんこうさい)」と書く。こん棒状になった果実の表面に腺毛があるので、この漢名となったもの。

採取時期と調整法:開花期の葉をとって水洗いし、そのまま生の葉をしぼって、葉汁を用いる。

成分:特殊成分は未精査である。若葉100に対し、タンパク質1.27、 脂肪0.41、糖質5.94、繊錐1.38、灰分0.88という一般成分が知られている。牧場の乳牛か、野生のノブキを食べると、乳質がよくなるというのは、これらの成分によるものとも言われている。

薬効と用い方:
切り傷、はれもの、うるしかぶれに:
生の葉のしぼり汁を外用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8405 ヤマハハコとは 本州(長野、石川両県以北)、北海道の山地、高山に自生する多年草で、雌雄異株。サハリン、千島、カムチャッカ、中国、ヒマラヤ、北米に分布。根茎は細く横に伸び、地上茎は直立し、高 さ50cmほどになる。葉は狭い披針形で長さ7〜9cm、幅1〜1.5cm。やや厚くて3脈があり、先端はとがり、基部は半ば茎を抱くようについて互生する。裏面には灰白色の綿毛が密生。8〜9 月、白色または淡黄色の管状花からなる頭花を散房花序につける。

名前の由来:平野部の畑や路傍、庭先などに見られるハハコグサに似ていて、これは山地にのみ生えるのでこの名となった。別名 アラレギクは、数多くつく頭花の形を霰(あられ)に見立てたもの。

類似植物二種:
(1)ホソバヤマハハコ:
本州(福井、愛知面県以西)、四国、九州の山地の頂上付近に自生する多年草。茎は分枝せず、葉幅は2〜6mmで、ヤマハハコの葉幅より狭い。
(2)カワラハハコ:北海道から九州の各地の川原などの乾燥した砂地に群生する多年草。葉の幅は1〜2mmで、ホソバヤマハハコよりさらに 細いが、茎は根元から多く枝分かれするのが違う。  
名前が似ているハハコグサは、同じキク科のハハコグサ属のもの。ヤマハハコ、ホソバヤマハハコ、カワラハハコはヤマハハコ属のものである。

採取時期と調製法:夏の開花期に全草をとり、水洗い後日干しに。

成分:「ヤマハハコの成分研究」と題して、フラボノイドのルテオリン、ケンフェロール、クエルセチンなど、6種類のフラボノイ ドをホソバヤマハハコの地上部より検出したと、徳島文理大学薬学部が日本生薬学会札幌大会(1982年)にて発表している。

薬効と用い方:
黄疸に:
1日量8gを水200〜600ccで約1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8406 キクイモとは 北米原産の多年草で、観賞用のほか、地下の塊茎が果糖の製造原料として栽培され、また野生化もしている。茎は直立して1.5〜2mに伸びる。  葉は縁に鋸歯があり、卵状長楕円形で先端はとがり、基部は急に細くなって対生。上部の葉はときに互生することもある。茎、 葉ともにあらい毛が生え、さわるとざらつく。  
9〜10月に開花し、花径は7〜8cm。外側の舌状花は濃黄色で 10〜12個。中心の管状花は黄色。

名前の由来:地下に芋状の塊茎があり、花はキクであることから、この名となった。別名カライモは唐芋の意で、昔、中国から 渡来したものと考えてこの名がある。シシイモ、ブタイモは、猪や豚が好んでこの芋を食べることから。  
英名はエルサレム・アーティチョークであるが、エルサレムはイエスキリストの聖地とは無関係で、ヒマワリの英名の一つであ るGirasolがなまったものといわれている。日本でのシシイモ やブタイモの名にくらべると、英語での呼び名はすばらしい。

花よりだんごのキクイモ:江戸末期に英国から渡来したというキクイモは、塊茎を煮物、漬け物に利用した。また、特に太平洋戦争中は、食料不足を補うため各地で栽培され、大いに利用された。

採取時期と調整法:10月、茎葉が枯れるころに塊茎をとり、水洗いして用いるが、太平洋戦争中、この栽培が各地で盛んであった のは、食料補給以外に果糖製造の原料に利用するからであった。

成分:塊茎にはデンプンを含まず、イヌリンのみを含むので、こ れから果糖を製造した。

薬効と用い方:
果糖製造に:
糖尿病、薬物中毒、アルコール中毒などに、水分や熱源補給を目的に、専門医が果糖の注射剤として使用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8407 キバナオランダセンニチとは 東南アジア原産の1年草で、観賞用、薬用、香辛料のために栽培される。茎は下部の根元より多数枝分かれし、高さ約30cmにな り、葉は緑色の卵形〜広卵形で、縁に波状の浅い鋸歯があり、葉 柄によって対生する。花は7〜9月に開花、頭花は楕円形で黄色、管状花のみよりなる。一つの管状花は子房の側方に一つの小 苞がついている。果実はそう果を結び、扁平で2本の刺針があって冠毛はない。葉や頭花に刺激性の辛味と独特の風味がある。

名前の由来:ヒユ科の園芸種として栽培される1年草のセンニチコウ(千日紅)に似ていてオランダから伝えられたという意味で オラングセンニチの名前が生まれ、その後、花の黄色の種類が渡来し、これにキバナオランダセンニチの名がつけられた。ハトウガラシ(葉唐辛子)の別名があるのは、葉をかむと辛みがあるところから。

類似植物オランダセンニチ:キバナオランダセンニチは明治初年に渡来したが、よく似たオラングセンニチはそれより早く渡来 し、江戸時代の天保年間には、すでに知られていた。別名はセンニチモドキ。葉は暗紫緑色で対生し、頭花は長球形で、その頂端部は褐色、周辺の花は黄緑色で、いずれも管状花より成り立って いる。キバナオランダセンニチの頭花は黄一色で、葉は緑色である点が大きく異なっている。

採取時期と調整法:夏に頭花のみを採取し、水洗い後、そのままを日干しにする。乾燥したものをミキサーで砕いて保存する。

成分:全草、特に頭花中に辛味物質のスピラントールを含み、頭花には約1%。その他フィトステリンを含む。オランダセンニチはこの辛味成分の含量は少ない。

薬効と用い方:
食欲増進に:
粉末状になった頭花1回量約1.5gを、そのまま水で服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8408 オオヨモギとは(艾葉/がいよう) 本州(近畿地方以北)、北海道の山地に自生する多年草。サハリン、千島に分布する。ヨモギに似て大形で、高さ1,5〜2mに達する。根茎は分枝しながら伸び、先端より新苗を出す。葉は茎の中央部で長さ15〜20cm、幅6〜12cmの長楕円形で、深く裂けて2 〜3対の裂片となる。裂片は披針形でさらに分裂する。表面は緑色、裏面は白い綿毛が密生して白く見える。8〜10月に開花し、 淡黄色の頭花多数を円錐花序につける。頭花は幅2.5〜3mm、長さ 3mmの鐘形。総苞片は3列につく。

名前の由来:ヨモギに似て大きいのでこの名となった。別名のヤマヨモギは深山に多いところから。イブキヨモギは滋賀県の伊吹山での別名、ヌマヨモギは沼ヨモギで、山地の沼地近辺に多いことからつけられたもの。

類似植物ヨモギ:オオヨモギより小形のヨモギは、茎は高さが50cm〜1mになり、頭花は長さ 2.5〜3.5mm、径1.5mm。葉は長さ5〜10cm、裂片は2〜4対で長楕円状になっている。平野部から山地にかけて普通に見られるもので、 オオヨモギは深山に入らないと見られない点が異なっている。

もぐさの原料に:ヨモギの葉も、もぐさの原料となるが、一般に葉の大きいこのオオヨモギを用いている。乾燥葉を石臼などで粉末にするとき、葉裏の綿毛は細末にはならず、綿くずのようにな る。これをふるいにかけて、綿毛だけを集めてもぐさにする。

採取時期と調整法:夏に葉だけ日干しにしたものが艾葉(がいよう)である。

成分:シネオール、αーツョン、セスキテルペンなどの精油分のほか、アデニン、コリンなどを含む。

薬効と用い方:
健胃、貧血、心機能保全、せき、下痢に:
艾葉(がいよう)5〜8gを1日量として煎服する
腰痛・痔に:艾葉300gを木綿袋に入れ、風呂に浸して入浴する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8409 エゾヨモギギクとは 北海道(利尻島、礼文島、その他北部海岸)にのみ自生する多年草。サハリン、朝鮮半島、中国(東北地区)、シベリアに分布する。根茎は太く横に伸びる。茎は高さ60〜70cmでそう(叢)生 して無毛。葉は2回羽状に深く裂け、各羽片の幅2〜3皿で縁に 鋸歯があり、羽片の間の葉柄にも鋸歯があり、葉や頭花には特異なにおいがある。花は7〜9月、茎の先が多数に分かれ、頂上が 平らになる散房花序に、黄色の頭状花をつける。頭花は径約0.5〜 1cmの半球形で、管状花のみよりなり、舌状花はない。

名前の由来:花や葉がヨモギに似るというが、この由来は、はっ きりしない。エゾは北海道にのみ自生することから。わが国で、ヨモギギクと呼ぶものはヨーロッパ産のもので、特に栽培される。葉の裂片の数がエゾヨモギギクより少ない程度の差である。

採取時期と調整法:
8月に頭花のみ採取し、風通しのよいところで陰干しにする。

成分:ヨーロッパ産のヨモギギクの成分研究が早くより進み、その大半が明らかにされている。エゾヨモギギクの成分もヨモギギクとほどんと同じものと見られる。ヨモギギクの全草は樟脳に類似する芳香性の精油を0.2%含んで、その大半がβーツョン、 その他ボルネオール、カンフェン、パラ・シメン、ピネン、リモーネン、樟脳など含む。その他フラボノイドのルテオリン、クエルセチン、イソラムネチン、回虫駆除成分のフロログルシノールのタナセチンを含む。

薬効と用い方:
食欲増進、健胃に:
1日5〜10gを水400ccで1/2量に煎じて服用する。
回虫駆除に:1回量10gを水300ccで1/2にせんじて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8410 トキンソウとは 北海道から沖縄まで、各地の低地の庭先や畑に普通に見られるもので、繁殖力旺盛な1年草。朝鮮半島、中国、台湾、シベリア、インドとアジアに広く分布。北アメリカに帰化している。茎は地面をはうように伸び、葉はへら状のくさび形で、先端は少数の鈍い鋸歯があって互生。葉質は厚いが、やわらかくて緑色。  
花は7〜10月に、葉腋に淡緑色で、球形の頭花をつける。頭花は径4mmほどで、管状花のみよりなり、花冠は4裂する。果実はそう果(痩果)を結び、冠毛はできない。

名前の由来:夏に、畑や庭先に雑草のように大繁殖し、手でこれを除草するときに、球状の花を押しつぶすと、黄色の果実(そう果)が押し出されるので、吐金草の意味でつけられた。別名のハナヒリグサは、この草をもんで鼻の中に入れると、鼻の粘膜を刺 激するので、ハナヒリグサの名となる。ヒリは、ひりひりと刺激することに由来する。鼻の疾患を治すほか、頭や目の病気も、この草を使った鼻療法がある。

中国での用法:漢名は石胡ズイ。中国では、感冒で鼻詰まりのときや、慢性鼻炎、過敏性鼻炎、百日ぜき、慢性気管支炎などのときに、新鮮な草をもんで、鼻の孔にさし込む。

採取時期と調整法:
夏に全草を採取して、水洗いしてから、日干 しにする。

成分:日本生薬学会東京大会(1969年)で東京理科大学薬学部の村上 孝夫、長沢元夫両教授の研究発表があり、次の成分が明らかにされた。トリテルペノイドのタラクサステロール、βーシトス テロール、スチグマステロールなどである。

薬効と用い方:
打撲、痔に:
乾燥した全草約10〜20gを、水約600ccで1/2量にせんじての前汁で患部 を洗うように外用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8411 エゾノキツネアザミとは(小薊/しょうけい) 北海道、本州(東北地方)の明るい草原や路傍などに自生する多年草。朝鮮半島、中国(東北、華北)、シベリア、ヨーロッパ、 ロシアに分布する。茎の高さは1〜1.5mになり、葉は披針形で長さ10〜20cm、縁に先のとがった刺針がある。花が咲くころには根 ぎわから出る根出葉は枯れ落ちる。葉の裏面には綿毛が密生し、白く見える。  
花は8〜10月に開花し、茎の先に多数の頭花が散房状につく。 頭花は管状花のみよりなり、紫紅色で美しい。果実はそう果を結 び、冠毛は黒みがかった白色である。

名前の由来:アザミの種類ではないのに、キツネアザミという名のものがある。よく見ると、名前に反してアザミの仲間ではないのに気づいて「だまされた」ということになり、さては狐にたぶらかされたかというので、この名前になる。このエゾノキツネアザミも、アザミの仲間ではないし、キツネアザミにも似ていないが、前と同じ筆法で、狐の名前がつけられ、蝦夷(北海道)に多いところから、この名前になった。

生薬小薊(しょうけい):中国ではキツネアザミを、夏の開花前に、全草を刈りとって、生のままか、または日干しにしたものを生薬名で小薊と呼ぶ。わが国での小薊は、ノアザミなどアザミ属の根または全草を乾燥したものを用いる。中国での薬効は、吐血、鼻出血、血便 などや外傷による出血に用いる。煎剤として服用したり、外傷の止血には、小薊の粉末を外用したりする。

採取時期と調整法:夏、開花前の全草を採取し、日干しにする。

成分:精査されていない。

薬効と用い方:
止血に:
乾燥した全草を適当にせんじて、その汁で洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8412 ボタンボウフウとは 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄の海岸に生える常緑の多年草。台湾、中国、フィリピンに分布。茎は高さ50〜100pにな り、太く枝分かれする。若い茎は青緑色、大きい株になって、赤みを帯びる。葉は青緑色で厚く、2〜3回三出羽状複葉。小葉は倒卵状くさび形で、先は2〜3裂する。花は7〜9月に開き、白色5花弁の小花を大きい散形花序に多数つける。花序の小花柄は 20〜30本で、花序の径約5〜10cm。総苞片がなく、披針形の小総苞片数個がある。果実は楕円形で、表面に短毛があり、熟すると2片に分かれて落下する。

名前の由来:葉がボタンに似ているので牡丹防風の名となった。 防風はセリ科の植物で、その香りがこの草に似ていることから。 別名のイワゼリは、海辺の岩場に生えることからで、ケズリボウフウは、根を薬用にするときにその根を削ることによる。サクナは迫菜(はくな)からで、海岸に近い崖地にせまる場所にあることに由来 し、沖縄では広くこれを長命草(チョーミーグサ)と呼んで、長寿につながる薬草として用いている。

採取時期と調整法:必要時に、根を採取して輪切りにし、陰干しにする。葉は生のまま用いる。

成分:根にクマリン類のクマリン、ベルガプテン。そのほかパルミチン酸、ペウケダラクトン、イソペウケダラクトンなどが知ら れている。沖縄本島で採取した根の成分が、ハマウドール、ペウ ケグノールなどであることを、薬学雑誌の昭和43年5号(1968) に、当時、京都大学助教授の秦清之氏らが発表している。

薬効と用い方:
カゼ、せき止めに:

根を干したもの1日量約5〜8gを水400ccで約1/2量に煎じて服用。
滋養強壮に:カゼ、せき止めと同じ分量で根をせんじて服用。また、葉を他の材料と煮て食するのもよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8413 イブキボウフウとは 北海道、本州の日当たりのよい山地の草原に生える多年草。朝鮮半島南部に分布。茎は直立に伸び、多くの枝を分けて高さ40〜 80cmになり、根元には繊維状の毛がある。葉は2〜3回羽状複葉で、裂片は細く、披針形。茎、葉ともに白い毛が生える。花は8 〜9月に開き、白色の小花を後歌形花序につける。花弁は白色で 5個、先端は内側に曲がる。がく片は三角で5個。雄しべ5個は花弁より突き出す。果実は卵形で、短い白毛を密生する。

名前の由来:滋賀県の伊吹山に多く自生しているので伊吹防風となった。防風は中国産の生薬で、その代用になるので、この名がつけられた。
 伊藤圭介著『日本産物志』(1872年)には「江州伊吹山其他、和、 勢、播、總等諸州山野に生ず。葉は重鰭(かさねひれ)様にして夏月葉間より茎を抽くこと二三尺にして枝を分ち白色散形をなす。根は状ニンジ ンの如くにて細し。比根即ち薬舗にて呼ぶ所の伊吹防風是なり」と記し、精細なイブキボウフウの図も併記してある。
『日本薬局方』収載のイブキボウフウ第七改正(1962年)の『日本薬局方』のボウフウに、本品はオオバノイブキボウフウまたはイ ブキボウフウの根および根茎であると規定されたが、現在は中国産のものをボウフウにあてている。

採取時期と調整法:夏〜秋に根、根茎を採取して、水洗い後陰干 しにする。

成分:精油の一種を含むが、精査されていない。

薬効と用い方:
カゼに:
1日量5〜8gを、400〜600ccの水で 1/2にせんじて、熱いうちに服用する。熱のないときには、風呂にたてるとよく、湯冷めしない。ヨモギ葉20gとこのイブキボウフウの根20〜30gを木綿袋に詰め、浴槽に入れ入浴する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8414 オオミノトケイソウとは 熱帯アメリカ原産のつる性多年草。観賞用として温室内で栽培 されるが、沖縄の石垣島では野生化している。熱帯地方に広く分布している。
全株無毛で、つるは四角く、角の部分にわずかに翼がある。葉は長卵円形で長さ13〜15p、先端は急にとがり、基部は円形。全縁(鋸歯がないこと)で、表面は濃緑色で光沢がある。葉脈は上面はへこみ、下面に突出。葉腋から長さ約30cmの巻ひげを出す。
花は大形の径9〜12cmで、香りがある。がく片5枚、花弁5枚、ともにほぼ同じ大きさで多肉質で、内面は赤紫色。花の中央で糸状に伸びる部分は副花冠で、これには白地に紫の絞り模様があり、 繊細で長く伸びるので美しい。雄しべは5個、雌しべの柱頭の先端は扁平で三つに分かれる。果実は大形、長さ25cm、幅15cm、果 肉は白〜淡黄色、果実内部の空所に種皮を包む白色透明、多汁 の仮種皮が充満し、この部分を食用にする。

名前の由来:この種類の代表種トケイソウ(時計草)は江戸時代享保5年(1720)オランダ人によって伝えられ、その花に似て、果実が大きいことからこの名前となった。別名は大長実果物時計草(おおながみくだものとけいそう)の意である。

採取時期と調整法:夏に果実をとり、二つ割りにして、内部の仮種皮を用いる。果肉は厚いが、かたくないので切れる。

成分:仮種皮はリン酸とビタミンAを多く含むほか、フラボン類のサボナリン、ビテキシンを含んでいる。葉には青酸を含むので有毒である。

薬効と用い方:
疲労回復に:
果実内の仮種皮の部分は多汁で甘く、酸味もあるので、この部分を食べる。少量の牛乳と砂糖を加えて、ミキサーで混合して飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8415 ツルムラサキとは 熱帯アジア原産でつる性の1年草。長さ3〜4mに伸びるつる は、他の物に絡みつく。つるも菜も多肉質で無毛。つるは柴色で、葉は互生し、広卵形で葉柄があり、全縁。葉腋から多肉質の花柄 を伸ばし、その上部に穂状花序に数個の花をつける。花は花弁が なく、がく片5個は多肉質で白色、のちに先端部のみ紅色となり、 全部が開かずにつぼみ状になる。雄しべ5個、雌しべの柱頭は3裂。花後、がく片が異常に発育して多肉になり、これで果実を包む。 のちに黒紫色で多汁になるが、真正の果実は多肉多汁の厚い皮の偽果の中に隠れている。

名前の由来:つるが紫であるのと、黒紫色の実(偽果)がつるにできることから、この名になった。学名の種名「ルブラ」は赤いという意味で、茎が赤いことからつけられたもの。

シンツルムラサキが先輩:ここではシンツルムラサキを別名にしているが、シンツルムラサキは茎が緑で、紫や赤ではない。シンとは真で、ほんとうのという意味であるが、ここでは先輩の意味。ツルムラサキは明治時代の渡来だが、それ以前、江戸初期にすでに渡来していたものをシンツルムラサキにした。渡来が先ということで、先輩、後輩の関係であり、本物、にせものというものではない。学名はバセラ アルバで、アルバは白という意味。 最近、野菜売場にツルムラサキが並べられているが、茎や菜は緑 で、バセラ アルバである。

採取時期と調整法:生のままのつる、葉を用いる。

成分:αーカロチン、βーカロチン、ルテインほか、ビタ ミンCの含量が100g中80mgと多い。カロチン(ビタミンA効果)が 3600μg。レモンはCが90mg、カロチン(ビタミンA)は0である。

薬効と用い方:
健康食に:
ミキサーに150ccの牛乳を入れ、あとからツルムラサキを適量加えて飲む (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8416 バンジロウとは 熱帯アメリカ原産で、高さ3〜4mになる常緑樹。熱帯各地に栽培される。沖縄地方でも栽培される。葉は長楕円形で対生し、表面は淡緑色で、葉脈は著しくはっきりと見え裏面には密に細毛が生える。葉をも むと芳香がある。春に白い花を葉腋に2〜5個つける。花弁は4 〜5枚、花径は約3cm。果実は楕円形や球形、洋梨形で、表面は黄色で8〜9月に熟し、果肉は淡紅、黄、白色で甘く、酸味があって熟すと、ジャコウのようなにおいがある。

名前の由来:バンジロウは蕃石榴の台湾語から由来する。蕃次郎ではない。石榴はザクロで、わが国では蕃石榴を日本読みでバンザクロともいう。グァバはスペイン名が転訛したもの。

熱帯アメリカからアジアヘ:16世紀の初め、スペイン人がアメリ カ大陸に上陸して、南米コロンビアよりペルーの広い地域に、すでにバンジロウが栽培されていたのを発見。その後、スペイン人 によって熱帯各地に広められ、アジアにはフィリピンに初めて運ばれ、そこからインドに渡来したのが17世紀。台湾では17世紀末には栽培されていて、その後、中国南部に伝えられている。
ビタミンCがレモンの3倍:生果の果肉100g中、ビタミンC270mgを含み、レモンでは90mgであるから約3倍の含量である。ビタミ ンAのカロチンが270μg、レモンは0。『四訂日本食品標準成分表』 (1982年)による。

成分:葉にクエルセチン、βージトステロール、ビタミン C、樹皮にはピロガロールタンニンのエラグ酸が含まれる。

薬効と用い方:
生食に:
果実はビタミンCが豊富なので、美容と健康のため、果実の生食をすすめたい。
健康茶に:沖縄地方に栽培され、ビタミンA、Cが多いので、葉を水洗し、刻んでから日干しにし、お茶がわりに飲用するとよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8417 バンレイシとは 西インドのアンチル諸島の原産で熱帯地方に広く栽培されて いる。沖縄地方にも栽培される。高さ4〜5mの小木。葉は落葉性で長楕円状の披針形。両端はとがり、表面は濃緑色、裏面は淡緑色で、長さ約12cm。花は葉腋に2〜3個をつけ、花弁3枚で黄緑色、先はとがって厚い。果実は円錐形で径5〜7.5mになり、緑紫色で、表面に突起が多い。 果肉は白色でやや黄みを帯び、やわらかく、甘みと香りが強い。

名前の由来:果実が茘枝(れいし、ムクロジ科、中国南部原産の果実で、 唐の玄宗皇帝が揚貴妃のため、中国南部からとり寄せた話は有名、現在東南アジア産が、生食用としてわが国に輸入される)に似ていて、南方の国から伝えられたので茘枝の上に蕃をつけ、蕃茘枝となった。果実の表面にうろこ状の突起があるのを、おしゃか様の頭に見立てて、釈迦頭の別名となる。

類似植物二種:
(1)ギュウシンリ(牛心梨):
バンレイシ科で、バ ンレイシより甘みが少なく、芳香がある。石細胞があり、洋梨のような舌ざわりが特徴。
(2)チェリモア:南米産で、バンレイシ 科。果肉は白くクリーム状。酸味、甘み、芳香があり、バンレイ シ類で最高のうまみがある。ただ、発酵し、腐りやすいのが欠点。

成分:糖分はブドウ糖、蔗糖を含み、デンプン、タンパク質、ビタミンCが特に多い。葉と若い枝にはアルカロイドのアノナイ ン、ロイメリン、コリジン、ノルコルジンなどのアポルフィン型アルカロイドを含んでいる。

薬効と用い方:
生食に:
甘み(糖分)とビタミンCが豊富なので、美容と健康上、果実店で求めて、生食するとよい。またシヤーベットや発酵飲料の原料にもなる。  
インドでは民間薬:葉を健胃、発汗、根を下剤に用いる (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8418 ゴレンシとは マレー地方が原産地とされ、早くからインド、インドネシアに栽培されている。現在中国南部、台湾、フィリピン、ハワイ、ブ ラジルに栽培。わが国では、高知県で温室栽培に成功し、まだ数は少ないが、果物店に並ぶようになった。高さ5〜10mに達する小高木。葉は奇数羽状複葉。小葉は楕円形で、9〜11枚がつく、表面は深緑色、裏面は白みを帯びた緑色。
夜間になると葉は下向きにたれる。花は葉液に集散花序につき、 がく片、花弁各5枚、花弁はピンクで中央に紫色の斑点がある。
雄しべ10個で、うち5個は葯を持たない仮雄蕊(かゆうずい)。果実は長楕円形で長さ10〜12cm。五条の深い溝があるので、断面は星形になり、 表面は光沢があって熟すと黄色となる。また、多汁でコハク色になり酸味が強く、芳香がある。

名前の由来:中国には古くから栽培され『本草綱目』(1590年)に五斂子が記載されている。「南方の地では稜を斂と呼ぶ」とあって、 五つの稜があるので五斂子の名となったと説明している。わが国では、これを日本読みにしてゴレンシとなった。このほか、羊桃、陽桃の漢名もある。

利用法の多い果実:熟した果実は爽快な酸味と甘み、それに特有の芳香があり、果皮は淡黄褐色で、半透明になる。熟しかかった果実はゼリーやジャムに、未熟果は野菜として利用する。東南ア ジアでは果汁に砂糖と氷を加えて、清涼飲料水としている。

成分:果実にはシュウ酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸を含み、糖分は蔗糖、果糖、ブドウ糖。葉や小枝にはサポニン、ステ ロイド、トリテルペノイド類が含まれているとの報告がある。

薬効と用い方:
下痢止めに:
果物1個分を細切りにして、水400ccで1/2になるようにせんじて服用する。
食用に:果実を生食するほか、煮たり焼いたりしても食べる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8419 パセリとは 紀元前4〜3世紀、古代ローマ人やギリシア人がこれを薬用や香味料として使用していた。それほど古くから使われていたので原産地を、ずばりと決定するのはむずかしいが、おそらくヨーロ ッパ中南部からアフリカ北岸であろうという説と、南イタリアや アルジェリアという説がある。高さは30〜60cmになる2年草で、 葉は濃緑色で表面に光沢があり、2〜3回3出複葉で裂片は深く切れ込んでいる。茎の上部に出る葉は、裂片が細く、披針形であ る。花は夏〜秋に開き、径2mmの黄緑色の小花多数を複数形花序につける。果実は広卵形で長さ3mmほどで香気がある。

名前の由来:英名のparsleyパースレーが変化してパセリにな った。『大和本草』(1708年)に「紅毛芹(おらんだぜり)あり根はギシギシに似て根の 色は黄色」と短い文でオランダゼリを報じている。これによっ て、オランダゼリを別名とするようになる。おそらくオランダ人によって伝えられたものであろう。その後明治の初めには洋芹(ようぜり)の名で呼ばれたが、この名は間もなくすたれてしまった。

採取時期と調整法:必要時に葉を水洗し、生のままを用いる。

成分:葉からフラボンの黄色針状晶アピゲニンと、その配糖体のアピインも含まれ、なお、このアピインに単糖類の一種が結合して、アピオーゼなるものも含まれている。種子にはペトロセリン酸なる脂肪酸が含まれ、さらに、フェノール性物質のアピオールがある。『四訂日本食品標準成分表』(1982年)によると、100g中にビタミンC200mg、ビタミンAのカロチン7500μg、A効力4200IU、カルシウム190mg、鉄9.3mg。特にビタミンAが突出している。

薬効と用い方:
貧血に:
鉄分が多いので利用されるが、この青汁をしぼり、20ccほどを1回量とし服用する。
虫刺されに:生の葉をもんで、患部に直接すりこむように塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8420 ミズアオイとは 北海道から九州まで各地の水湿地、沼や水田などに自生する1年草。中国、朝鮮半島、ウスリーなどに分布。茎葉とも多汁で軟質、濃緑色で高さ約40cm、根元より出る葉は長柄がある心臓形で、葉面は光沢がある。茎から出る葉は、短柄がある。開花期は9〜10月、花茎の先に多数の花を総状花序につける。花は径約3cm、花被6枚のうち内花被3枚は幅がわずかに広く、いずれも青紫色で、美しい。雄しべ6個で5個の葯は黄色、残りの1個は大 きく、葯は青紫色で、花糸にかぎ状の突起がある。果実はさく果を結び、熟すと下向きにたれ下がる。

名前の由来:水に生え、葉がアオイ(カンアオイ類)に似ているので水葵の意味。ウシノシタの別名は、葉の形が牛の舌に似てい ることから。『和名抄』(932年)の水葱類に水茎があり、これを和名ナギと呼び食べられるとしている。『本草和名』(918年)にも水葱のほかにコク菜をあげ、ともにナギの和名をあげている。このように ミズアオイの古名はナギであった。中国では「雨久花」と書く。 『中国高等植物図鑑』(1976年)、『中葯大辞典』(1977年)、『全国中草薬彙編』(1983年)のいずれもこの漢名を記している。

観賞用に栽培:伊藤伊兵衛著『草花絵前集』(1699年)には「花形梅花のやうにてしほらしく、色は水浅黄の宛少濃(もちつとこき)ものなり」とあり、江戸時代には観賞用として栽培されていたと考えられる。

採取時間と調整法:夏の開花期に葉を水洗いし、日干しに。

成分:精査されていない。

薬効と用い方:
胃潰瘍に:
九州の北部地帯での民間療法として、みそ汁の実にミズアオイの茎葉を適当に劾んで入れ、朝夕2回に用いている。また乾燥したもの1日量約10gを水600ccで1/2にせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8421 エゾミソハギとは 北海道から九州までの各地の湿地帯に群生する多年草。サハリン、干鳥、朝鮮半島、中国、アジアよりヨーロッパ、アフリカ北部、北米と世界の温帯に広く分布する。根茎は横にはい、茎は4陵、ときに6陵で、高さ約1.5m。葉は披針形〜広披針形で、先端はとがり、基部は円形か心形で、茎を抱くようにつき、茎葉ともにきわめて短い毛がある。開花は7〜8月、茎の先に穂状花序に紫紅色の花多数をつけるので美しい。がくは筒状で、上部は6裂する。花弁は6枚で紫紅色。雄しべ12個で、長、短の雄しべが2列に並ぶ。雌しべの先端柱頭は花弁より突き出している。果実はさく果を結ぶ。

類似植物ミソハギとの区別:ミソハギは全株無毛で、葉の基部は茎を抱くようにはならない。エゾミソハギは全株超短毛、葉の基部が茎を抱くようにつく。

名前の由来:エゾミソハギは北海道のほか全国に分布しているが、蝦夷(北海道)に特に多いミソハギの意味。ミソハギは、けがれを払うために行う禊(みそ)ぎに由来。

採取時期と調整法:夏の開花期に地上部を採取し、水洗い後、日干しにする。生のままを用いる。

成分:全草にサリカイリンの配糖体を含み、タンニン様物質、コリン、βージトステロール、花の色素はアルビジンの配糖体 アントチアノシドを含んでいる。

薬効と用い方:
打撲に:
地上部の茎葉をもんで患部に厚く当て軽く包帯で止める。
下痢止めに:乾燥したものを1日量として6〜12gを水400〜600ccで1/2にせんじ、3回に分けて服用する。
山菜料理:開花前の若い茎葉は、水に浸し、アク抜きをし、塩少々を加え油いために、またサラダに利用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8422 ムラサキツユクサとは 北米東部地方原産の多年草で、観賞用草花として明治初年に輸入され、各地に栽培が広まった。高さ約40cmほどの株立ちとなり、茎に3〜8の節があり、そこから広線形長さ約30cmほどの葉を出す。葉幅は7〜15mmで、断面はU字形になり、背に丸みのある樋状にへこむ。茎葉ともに汁液が多い粘性軟質。開花期は5〜 7月。花径25〜30mmで花の色は紫。花弁、がく片は各3。雄しべ 6個で花糸には紫色の多細胞の毛が生える。花は集散花序に集まってつき、花の寿命は1日であるが、次々に開花して、長期間にわたって花を楽しむことができる。

名前の由来:花が紫色で、ツユクサに似ているので、この名前と なった。

オオムラサキツユクサとの区別;
(1)葉は幅20〜25mmと広く、主脈で二つ折りとなり、断面はV字形。基部の葉幅が広くなり、茎を抱くようになる。葉の上には毛が散生する。
(2)花はより大きく径 30〜50mmで、花色の変化が多くて、紫、赤紫、赤桃、白などがある。
(3)茎の高さは70〜100cmとなり、ムラサキツユクサより大きい。

生物学の実験用に:雄しべの花糸に生える一本の毛は、だんごを連ねたように多数の球状をした細胞が並んだもの。これは、顕微鏡で細胞または核分裂の観察に用いる。同じツユクサ科のムラサキ オモトも花糸の若い毛を生物学の観察、実験用にする。

採取時間と調査法:春から夏の開花期に全草を刈りとって、水洗い後、刻んでから日干しにするが、粘性物質を含むので、乾燥しにくい。カビが生じないように入念に干すのがよい。

成分:粘性物質を含むが、まだその本態は精査されていない。   

薬効と用い方:
利尿に:
よく乾燥したものを1日量として約5gを水600ccで1/2量に煎じて1日3〜4回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8423 ツボクサとは 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄まで、平地の路傍や草原などに生える多年草。朝鮮半島、中国、東南アジア、マレーシア、オーストラリア、アフリカ、コーカサス、北米(帰化)に分 布する。茎は地面をはうように伸び、節からひげ根を出す。葉は長い葉柄によって、各節から2〜4枚が集合して出る。葉面は腎臓形で基部は深く切れ込み、縁に浅い鋸歯があり、径2〜5cmの大きさ。花は6〜8月、葉腋に2〜3個の小花をつける。短い花柄の先に2〜3個の花がつき、花弁は5枚で上部が淡紅紫色を帯び、短い雄しべ5個があり葯は黒紫色。花柱は2個。果実は直径 約3mmのそう果を結び、平円形で、数本の縦の脈がある。熟する と二つに分かれる。

名前の由来:庭先に生えることからこの名となる。ツボは庭のことで、古くは坪というと、垣根で区切られた庭をさし、坪庭とも呼んだ。このようなところに生える草なので坪草となる。壷草ではない。中国では積雪草、落得打、崩大碗などと書く。

香りがないツボクサ:『大和本草』(1708年)には「葉円く積雪草に似 て香気なし、茎葉柔なり、蔓草に非ず根よりそう生す、岸のかたわらに多く生ず」と記している。当時、積雪草はカキドオシを指 していたが、これには香りがあり、ツボクサにはないという違いを指摘している。

採取時期と調整法:春〜夏に全草を採取し、水洗い後、日干しに。

成分:わが国以外で、研究が進み、塩化カリ、硫酸カリ、βージトステロール、タンニン、グルコース、クエルセチン、ケンフェロールのほか、多数のトリテルペノイド類を含む。

薬効と用い方:
湿疹に:
乾燥した茎葉10gを水400ccで1/2に煎じ、煎液で患部を洗う。
解熱に:乾燥した唇柴1回5gを水400ccで1/2に煎じ、内服(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8424 ノカンゾウとは 本州、四国、九州の各地の山野のやや湿った草地や溝の縁など に自生する多年草。沖縄では栽培またはそこから自然に広まったもので、自生はない。日当たりのよいところに群生し、6〜9月に黄橙色の径約10cmの美しい花をつけ、特に花の赤みが強いのをベニカンゾウと呼ぶ。花被片は6枚で先はそり返り、花被の筒状部は2〜4cmの長さがある。茎の高さは40〜90cm。葉幅は4〜8cm。雄しべ6個は花被片より短い。雌しべの1個の花柱は細長く伸びるが、花被片よりやや短い。ほとんど結実しない。根茎は短くて繊維で包まれ、根は多数で、先は紡錘状にふくらむ。

名前の由来:野萱草(のかんぞう)の意である。萱草はホンカンゾウのことで、 下段のホンカンゾウは中国原産、わが国で栽培され、これに似て野原にあるという意味でつけられた。

類似植物二種:
(1)ヤブカンゾウ:花被が重弁で八重咲き。ハ重咲きはこの仲間ではこれのみ。藪などに見られるというので、この名になる。
(2)ハマカンゾウ:海岸砂地に見られるので名づけられたもの。花茎に葉が出 て、葉は冬も枯れない。また葉質が厚い。これに対して、ノカン ゾウは葉は薄く、冬には枯れて、花茎に葉は出ない。

採取時期と調整法:6〜7月、花のつぼみを日干しに。夏〜秋に根をとり、日干しに、また、生の根を用いる。

成分:地下部にはアミノ酸のアスパラギン、ヒドロオキシグルタ ミン、塩基性アミノ酸のリジン、アルギニン、その他コハク酸などを含む。

薬効と用い方:
解熱に:
つぼみ1回量5〜10gを、水400ccで1/2にせんじて服用。
利尿に:根1回量5〜10gを400ccの水で1/2にせんじて服用。
はれものに:生の根を砕いて、患部に厚くはって止めておく(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8425 ホンカンゾウとは 中国南部の原産で、わが国に栽培され、野生はない。
短い根茎は繊維で包まれ、根は紡錘状に肥大している。葉は根生して2列に配列する。花茎は高さ60〜100cm。花序は分枝して6〜 12個の花をつける。花は黄褐色か橙黄色で、花被内面には八字形の紋がある。花被は開花時にはそり返り、朝に開花し、夕刻には しぼむ一日花である。雄しべ6個、花柱とも花被の外に出ている。花に香りはない。

名前の由来:本物とか真正な萱草の意味でこの名となる。別名に忘優草(ぼうゆうせん)の漢名がある。心配事を忘れる草の意である。花のつぼみを料理して食べると、美味で、心配事を忘れるほどうまいということからつけられた。別名のカンゾウは漢名を日本読みにしたも の。シナカンゾウは中国のという意味でつけられた。学名のヘメ ロカルリスはギリシア語の一日の美しさという意味で、一日花から由来したもの。フルバは茶褐色のという意味で、花の色からきている。

金針菜について:中華料理の材料に中国より金針葉が輸入される。ヤブカンゾウ、ノカンゾウ、ホンカンゾウなどの仲間のつぼみを乾燥したものだが、揚子江以南の萱草は採取時に雨が多いため、つぼみの時期に雨のない東北地区の黄花葉(和名ウコンカンゾウブか多く、他の種類より芳香が強い。その他マンシュウキスゲ、ホソバキスゲなどからも製品としている。

採取時期と調整法:6〜7月に根をとり、水洗い後刻んで日干し にする。

成分:まだこのものについては未精査。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量として5〜8gを水400〜600ccで1/2にせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8426 ヒハツモドキとは 東南アジア、マレーシア原産で、古い時代に台湾などより入ったのではないかと見られ、沖縄、特に先島(さきしま)諸島の宮古諸島やハ重山諸島に多く栽培されている。つる性常緑低木で、つるの長さは 2〜4m。葉は長楕円形で、長さ7〜15cm、幅2.5〜5cm。先端は細く、基部は楕円形で、葉質は厚く、つるに対生につき、上面には光沢があり、4〜5本の葉脈が通っていて暗緑色、下面は淡緑色。葉の緑は全縁で、ゆるやかな波を打っている。全株無毛。穂状花序は長さ2〜4cmで、果穂は円柱状で上方は細く、赤熟する。

名前の由来:同じコショウ科にヒハツと呼ぶ生薬があって、インドやジャワ、マラヤなどに産し、コショウのように一粒ずつではな く、粒が固まりついて棒状に長くなったもので、別名を長胡淑ともいう。これに果穂が似ているので、ヒハツモドキとなった。沖縄地方での方言は各島それぞれ違っている。台湾に近い与那国ではチパチ、宮古や石垣ではピバーチ、ピバーツ。沖縄首里ではフィファチと呼ぶ。

香辛料のヒバーチ粉:ヒハツモドキの果実の粉末を、沖縄地方では胡淑の粉末と同じように香辛料として使用している。

採取時期と調整法:夏に果実を採取し、粉末として用いる。

成分:辛味成分の本質は精査されていない。辛味の程度は、コショウやヒハツより弱いが、辛味の主要成分はおそらく、含量は少ないがピペリンであると考えられる。

薬効と用い方:
香辛料:
粉末か、砕いたものを用いる。
健胃整腸、食欲増進に:これらはともに、粉末約2〜5gを1/3にわけて、健胃整腸は食後に、食欲増進には食前30分前に、粉末のまま水で服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8427 ヤシャビシャクとは 本州、四国、九州の特産で、深山のミズナラ、ブナなどの落葉大木上に着生する雌雄異株の落葉低木。花は4〜5月に開き、淡縁白色の小花で、花弁状のがく片が深く5裂して大きく、その内側に、がく片の約1/2の長さの花弁が5裂してつく。雄しべ5個は花弁とほぼ同じ長さである。葉は円形で、浅く5〜7裂し、縁に細い鋸歯がある。両面に短毛が生え、表面の葉脈はへこんでい る。果実は腋果を結び、表面に腺毛があり、夏に熟しても緑色である。

名前の由来:夜叉柄杓の意味であるのはわかるが、語源は不明。 別名のテンノウメ、テンバイの語源については『日本産物志』 (1872年)で、著者伊藤圭介が、花の形がウメの花に似て、樹上高く これが生えているので、天梅、天の梅というとしている。が、ヤ シャビシャクの語源にはふれていない。

寄生植物と着生植物の違い:『大和本草諸品図』(1715年)には、ヤシ ャビシャクの図に、ヤシホの名を示し、これをヤドリギなりとしている。一般には、ある樹木に他の植物が寄生して、そのものが生活しているとき、これをヤドリギと総称している。なお、ヤシャビシャクは他の種類の樹上にあるが、寄生植物ではなく、着生植物である。また、別名ヤシホは紀州地方の方言で、熊野ではこ れが訛って、ヤシヨとなる。

木製品の染料に:箱などに、ヤシャビシャクの干した実を水に入れてせんじ、その汁を塗ると、桑材の感じになるので、木工所で使用することが、前出の『日本産物志』に出ている。

採取時期と調整法:夏に葉と果実を採取し、日干しにする。

成分:未精査であるが、有機酸を含むものとされている。  

薬効と用い方:
利尿、催乳に:
葉と果実を1日5〜10gを水400〜600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8428 ズダヤクシュとは 北海道、本州(近畿以東)、四国の深山の針葉樹林の下に自生する多年草。鬱陵島(朝鮮半島)、中国、ヒマラヤに分布する。 根茎は横に伸び、細長いほふく(匍匐)茎を出す。花茎は直立して伸び、高さ20〜40cmで、2〜3個の葉をつける。葉は心臓状円形で、5裂し、両面に短毛が生える。根出葉は形は花茎の葉と同 じで、葉柄はより長い。葉柄、花茎とも短毛がある。  
6〜8月に白い小花を下向きに開く。がくは5裂し、短い腺毛が生える。花弁は5枚で、がく片より少し長い。雄しべ10個の花糸は白く、がく片より長い。葯(花粉粒を入れた袋)は淡黄色。 心皮2枚は長さ不同で、その結果、果実のさく果は長い果皮と、 短い果皮とで耳かき状になる。

名前の由来:『日本産物志』(1872年)に「山民の方言に、喘息を『ズダ』と称す、此草喘息を治するに偉効あるを似て、ズダ薬種の名ありと云」と記してある。ズダは木曾地方の方言とされている。

類似植物:ズダヤクシュに類似するチャルメルソウ、コチャルメルソウは、葉がよく似ていて、花がないときは、区別が困難である。チャルメルソウ属のものは、花が白くなくて淡褐色をしている。
(1)チャルメルソウ:葉の上面は暗緑色で、先が曲がったあらい毛が生える。
(2)コチャルメルソウ:葉の上面は緑色、下面は淡緑色で、両面に先が曲がらず、直立するあらい毛が生える。ズダヤクシュの葉の上面は淡緑色で、あらい毛が生えるが、下面の脈上にも、上面と同じような毛が生えているほか、腺毛も生える。

採取時期と調整法:夏の開花期の全草をとり、水洗い後日干しに。

成分:まだよくわかっていない。

薬効と用い方:
せき止めに:
1日量として乾燥したもの約5gを水400ccで1/2量に煎じて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8429 ハリブキとは 北海道(南部のみ)、本州(福井、静岡両県以北および奈良県大峰連峰)、四国(愛媛県石鎚山)の特産。亜高山帯の主に針葉樹林下の日陰に生える落葉低木で、高さ約90cm以下。幹はほぼ直立に伸び、鋭くとがった刺針が密生する。葉は円心形で大きくて、深く7〜9裂する。縁には鋭い鋸歯があり、葉柄、葉の両面脈上にも剌針がある。花は6〜7月に開き、白緑色5花弁の小花が円錐花序につく。雄しべは5個で、花柱は二つに分かれる。果実は広卵楕円状で、やや扁平。熟して赤くなる。根は黄褐色で、 特異の香りがある。

名前の由来:葉を食用にするフキ(キク科)に見立てたもので、 針の多いフキの意味。別名のクマダラは、タラノキ(ウコギ科)よりもさらに剌針が鋭いことをあらわす意味で、熊の名をつけた もの。

民間薬としての利用:別名はクマゲラのほかに、日光地方の方言で、ネズトリ、ネズミトリの名もある。日光地方は湯元より金精峠周辺の高地に多く、この地方では夏の終わりごろに、紅熟した果実を採取し、利尿葉に用いている。また、解熱、肺炎の民間薬 として、古くから奈良県大峰連峰山麓の山村で利用されている。

採取時期と調整法:夏に根を採取して、水洗い後にこまかく切り、 風通しのよい日陰で乾燥。果実は秋に採取し、日干しにする。

成分:特に根部は香りが強い。セスキテルペンアルコールのオプロパノン、セスキテルペンのオプロジオールなど、香りの強い成分を含むことが知られている。

薬効と用い方:
解熱に:
乾燥した根1回量約5gを水400で1/2量に煎じて服用。
利尿に:果実を1日量約3〜6g、水400〜600ccで1/2量にせんじ て服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8430 ナスとは インド原産の多年草であるが、日本のような温帯地方では1年草として栽培。茎は高さ60〜100cmで、枝分かれし、黒紫色。葉は卵状楕円形で互生し、葉縁は波状となり、全縁で葉柄と接するところは左右が不均衡。茎、葉ともに黒紫色の星状毛が生え、またとげがある。夏から秋に、葉腋と次の葉腋の途中より下向きの花をつける。がくは紫黒色で5裂。花冠は淡紫色で浅い皿状にな り、先は浅く5裂。雄しべ5個、雌しべ1個。花軸に数個の花をつけるが、一番下の花が結実し、あとは実らない。

名前の由来:『正倉院文書』(750年)に「天平勝宝二年六月二十一 日、藍園茄子を進上」との記載があり、『延喜式』(928年)に、また 『本草和名』(918年)、『和名抄』(932年)にナスの名が出てくる。『和名抄』では漢名の茄子、一名紫瓜子をあげ、和名をナスビとしている。これが正しい和名で、単にナス(茄)というのは簡略名であるが漢名茄子を日本読みしたもの。ここでは簡略名のナスをとった。

採取時期と調整法:夏に限らず、ナスを購入すれば、ヘタは入手できる。根、花、茎は夏に採取し、いずれも水洗して日干しに。

成分:果実中にアデニン、コリン、トリゴネリンなどを含み、果皮の色素はナスニンで加水分解してデルフィニジンを生ずる。この物質は、鉄やニッケルイオンなどと安定した塩をつくる。ナスの漬け物に鉄くぎを入れておくと、漬け物にいつも青紫色を保たせることができるのは、このためである。

薬効と用い方:
二日酔いに:
ナスの花、クズの花各5gを水400ccで1/2量に煎じて服用。
はれものに:へ夕10gを水600ccで1/2にせんじ、この汁で湿布。
あかぎれに:根10〜20gを水600ccで1/2にせんじ、この汁を脱脂綿に含ませ、患部に当てる。
しもやけに:茎10〜20gを水600ccにて1/2にせんじた汁で洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8431 シマトウガラシとは 熱帯アメリカ原産の、高さ80〜150cmになる常緑の低木で、小笠原島、奄美大島以南の沖縄に野生化、または栽培され、熱帯各地に広く分布している。
幹は直立して枝分かれし、葉は卵状披針形で互生 し、長さ3〜10cm。葉の両端とも狭く、鋸歯はない。葉は無毛で、かむと辛味が強い。花は葉腋に1個または数個つき、花弁は淡緑白色か黄緑色。果実はさく果を結び、上向きにつく。果実の長さは1.5〜2.5cmで、熱すると紅くなり、きわめて辛い。

名前の由来:早くから小笠原島に帰化し、野生化していたので、 この名となる。キダチトウガラシは、本状となるからである。

博物学者リンネの学名:スウェーデンの博物学者リンネが、トウ ガラシにCapsicum annuum L.の学名をつけ、シマトウガラシにCapsicum frutescens L.を命名したのは、1737年であった。トウガラシの学名中のアンヌウムは1年草、シマトウガラシのフルテッスセンスは低木状という意味。その後、ベイリーという学者 は一般のトウガラシも高温のところでは多年草になるので、両者を同一種とみなした(1923年)。しかし、近年になって、花の形態上の違いや細胞の核型が異なることなどから、二種は明瞭に区別で きるものとなり、リンネの命名の正しさが再確認された。

採取時期と調整法:常緑の小樹木で、必要時に採取できる。果実 を水洗い後、日干しにする。

成分:普通のトウガラシ同様、辛味成分の本態は、カプサイシンが主要な成分。果皮色素はカルチノイドのカプサンチンである。

薬効と用い方:
健胃に:
粉末をきわめて少量、食前に服用。
神経痛に:このトウガラシを刻んで、広口の約200ccの小びんに半量ほど入れ、35度のホワイトり力―を満たし、約20日後にこし、トウガラシチンキをつくって塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8432 アサクラザンショウとは サンショウの突然変異によってできたものに、刺針がなく、果実の大きいアサクラザンショウがある。牧野富太郎先生が『植物研究雑誌』(1928年)に「朝倉山根の由来」と題して、「但馬養父郡朝倉の郷と云う處があって、一郷に七カ村があり、その内に今滝寺村があり、その村の今滝寺という寺の裏山の絶壁上によく繁茂したサンショウがあって、この枝を接穂として接木し、これが世間に広まった。そのため、朝倉の郷の名をとり、アサクラザンショ ウとなった」といういきさつを、江戸の但馬出身の医者の話として記してある。
種子からはサンショウが発芽:種子はよく発芽するが、みんなトゲのあるサンショウになる。アサクラザンショウをふやすためには、サンショウの実生苗につぎ木しなければならない。また、イヌザンショウの実生苗をつぎ木の台木に用いてもよい。

類似植物ヤマアサクラサンショウ:サンショウとアサクラザンシ ョウの中間型とみられるものに、ヤマアサクラサンショウがあ り、これは剌針がきわめて短いか、または剌針がなくて、山地にまれに自生のものがみられる。果実や葉はアサクラザンショウよ り小さい。果皮を利用する。

採取時期と調整法:果皮は秋に、葉は夏に採取する。果皮のみを とり、そのまま陰干しする。

成分:サンショウと同じ成分である。精油はジペンテン、シトロネラール、フェランドレン、ゲラニオール、シトロネロール、シ トラールなどを含み、辛味成分はサンショオール、サンショアミ ドで、その他タンニンも含まれる。

薬効と用い方:
香辛料に:
サンショウと同じに用いる。
健胃に:1回に約2gの果皮の粉末を、水にてそのまま服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8433 ガジュマルとは 種子島、屋久島以南から沖縄までの暖地に栽培される常緑の大樹。中国、台湾その他熱帯アジアよりオーストラリアに分布す る。
葉は倒卵形か 長楕円形の革質で長さ約8cm、幅約5cm。緑には鋸歯がなくて無毛。葉の上面は緑色で光沢があり、下面は淡緑色で、主脈が隆起している。5月に開花するが、イチジク型の花で、外部からは花 が見えない無花果は無柄の球形で葉腋に1〜2個がつき、径5〜 10mmで、淡黄色か紅みを帯びた白色。果実は赤く熟す。

名前の由来:ガジュマルは沖縄の方言である。また、別名のカヅマルもガジマルもガジュマルから変化したものである。ガジュマ ルの名は、一説によると、インドネシアでも同じガジュマルと発音されているというので、その方面の名がそのまま伝えられたものであろう。江戸時代の明和年間の末(1771年)と、安永年間の中ご ろ(1776年)、江戸にガジュマルが入っている。当時はいずれも寒気のために枯れたが、そのころガヅマルと呼び、これは沖縄の方言 であるとされたことが、白井光太郎著の『樹木和名考』(1932年)にみえている。漢名は榕樹(ようじゅ)。

採取時期と調整法:必要時に樹皮や気根の皮をとり、日干しに。

成分:葉に乳液を含み、樹皮にはタンニン様物質を含むと考えら れるが、主要の化学成分としては未精査である。

薬効と用い方:
腹痛に:
樹皮か気根の皮を乾燥したものを1日量5〜8g、水400〜600ccで半量にせんじて 服用する。
その他の用途:沖縄地方では防風、防潮樹または街路樹として植えられ、材は挽物細工や朱塗の下地としての素材に。また、キク ラゲの人工栽培のときの榾木(ほだぎ)にも用いられる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8434 コマクサとは 北海道、本州(中、北部)の高山の砂礫地に生える多年草で、 わが国の高山植物の代表種。千島、カムチャッカ、サハリン、シ ベリア東部に分布する。根茎は短く、細根は黄褐色で、多数が長 く伸びる。葉はすべて根出葉で葉柄は長く、多数に細裂し、裂片は線状長楕円形で、先端は鈍くとがり、青みを帯びた粉白色で無毛。高山では7〜8月に開花し、5〜10cmの花茎の先に2〜7個の淡紅色花を下向きにつける。がく片2枚は広卵形で果実成熟期まで残る。花弁は4枚、外側の一対は大きく、下部は袋状、上部はまくれ返る。内側の一対は長楕円形で狭く、上部は連合する。 果実はさく果て、熟して二つに裂け、種子は黒色。

名前の由来:花のつぼみの形が、馬面(うまづら)に似るというので駒草とな った。別名のオコマクサは御駒草で、木曾の御嶽山に登る人々が これを貴び、敬称をあらわす意味で呼んだ。キンギンソウは金銀草で、貴重なというこということを含めた呼び名である。

成分:全草にアルカロイドのジセントリン、プロトピン、その他 クウエセチンモノメチールエーテルを含むことが知られている。 このうちジセントリン、プロトピンは鎮痛作用がある。

特別保護植物として採取禁止:わが国の高山植物の女王ナンバー ワン。花がかれんで美しく、青みのある粉白色で繊細な葉と相まって、真夏の登山者のあこがれの花となっている。木曾の薬として有名な「御百草」はキハダを原料にした腹痛薬であるが、江戸時代にはキハダを原料にしてつくっているのに、それを公表せず、もっぱら御駒草という貴重な薬草を原料にしたので、効果抜群であると宣伝した時代があった。そのためコマクサ乱獲のもと となったが、それほどの効果はない。全草が腹痛薬に用いられた という、昔の歴史を知っておくために記したが、実際には特別保護植物なので、採取すべきではない (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8435 ガンコウランとは 北海道、本州(北部、中部)の高山に自生する常緑の小低木で群生する。千島、サハリン、朝鮮半島、アジアの寒帯に分布。幹は地上をはい、密に枝分かれして、高さ10〜20cmとなってそう生 する。  
葉は互生し、密につき、線形で左右の縁は裏側に巻き込むよう に曲がる。雌雄異株で、雪が消えて間もなく6〜7月に開花。枝の先にがく片3、花弁3、雄しべ3の小花をつける。雄しべの花 糸は紅紫色で、長く花の外に突き出す。果実は球形の石果を結び、紫黒色で、光沢がある。

名前の由来:岩高蘭(がんこうらん)の意であるが、この語源はよくわからない。 葉がイチイ(アララギともいう)の葉に似ていて、これを欄とも いうので、岩高欄となったという説がある。欄は一般に木蘭のことをあらわすが、イチイの漢名としてこれを当てることがある。 そうなるとこの語源説が正しいのではないか。

採取時期と調整法:夏に果実を採取して水洗いし、水きりして生 のままを用いる。

成分:葉幅がやや広いヨーロッパ産のものを基本種とし、わが国産のものはその変種になるが、ヨーロッパ産のセイヨウガンコウランの葉に、ウルソール酸の存在をヨーロッパの学者が発表して いる(1967年)。国産のガンコウランにも、おそらくウルソール酸が含まれるのではないかと推測される。ウルソール酸はガンコウラ ン科と近縁関係にあるツツジ科の葉中にも含まれている。

薬効と用い方:
生食に:
甘みと酸味があるので、生のままを食べる。酸味はクエン酸と見られる。

疲労回復(健康薬酒)に:ガンコウラン果実100g、グラニュー糖 50gを35度のホワイトリカー750ccに漬け、1〜2ヵ月後に飲用する。この薬酒を1回量20〜40ccを限度にやすむ前に飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8436 クロバナヒキオコシとは 北海道、本州(日本海側、山陰、北陸以北、北関東以北)の山地に自生する多年草。茎は高さ約1.5mになり、上方で枝分かれし4稜があって、下向きの毛が生える。葉は約3cmの柄があり、広卵形で長さ6〜10cm。先端はとがり、縁に鋸歯があって葉質は薄 く、上面に短毛がまばらに生え、裏面の脈上に短毛と腺点があ る。花は8〜9月、茎の上部の葉腋より花茎円錐花序に濃紫色の唇形花を開く。がくは5裂し、こまかい毛が生え、花冠は長さ5 〜6mmで、下唇部は花冠の筒状部と同じ長さがある。果実は4個の倒卵形の分果を結び、白毛が生える。

名前の由来:ヒキオコシの花に対して、これは暗紫色であることからこの名となる。クロバナといっても、真っ黒な花というのではない。ヒキオコシの花 は淡青紫色、ときに白に近い色をしている。

類似植物ヒキオコシとの区別:クロバナヒキオコシは高地の深山に生え、ヒキオコシは高地にもあるが、それより低地に多くみられ、花は淡青紫色で、果実(分果)は無毛である点が、クロバナヒキオコシとの区別の要点である。

採取時期と調整法:夏の開花期に地上部を刈りとり、水洗いしたのち、日干しにする。

成分:茎葉に苦味質を含み、エンメイン、オリドニンのほかポニチジン、ノドシン、イソドカルピンのほか、ウルソール酸、オレアノール酸、スチグマステロール、βージトステロールなどが含まれる。

薬効と用い方:
健胃に:
ヒキオコシと同じように用いる。軽い胃の痛み、胃のもたれなどの症状で胃の調子がよくないとき、1日量として5〜10gを水400〜600ccでせんじて、何回かに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8437 キセワタとは 北海道から九州までの山地に自生する多年草。朝鮮半島、中国に分布する。茎の断面は四角で、直立に伸びて高さ1mほどになり、下向きの毛がある。葉は長い柄があって対生し、長さ6〜10cmの長卵形で縁にあらい鋸歯があり、先端はとがり、基部はくさび状に狭くなる。開花期は8〜9月。茎の上部、葉腋より淡紅色 の花数個ずつがつく。がくは深く5裂し、先端は刺針状となる。 花冠は外側に白毛を密生する唇形で、上唇、下唇とに分かれ、下 唇は3裂する。果実は分果で倒卵形で、3稜がある。

名前の由来:花冠に白い毛が生えて綿をかぶったようだというの で、着せ綿。これが語源である。中国にもキセワタがあって、大花益母草(おおばなやくもそう)と書く。益母草(メハジキ)より花が大きいというのでこの漢名となる。

わが国での漢名は別種のもの:わが国では鏨菜(ざんさい)をキセワタの漢名 にあてるが、これはキセワタによく似た別の種類で、別名を山玉米と書き、学名はLeonurus pseud‐macranthus Kitag.学名中、 プソイド・マクランタスは、マクランタスもどきの意で、無理に日本名をつければキセワタモドキとなろう。しかし、これはわが国には産しない。唇形花冠は白く、紫の紋様があり、花は長さ1.8cmと小さい。大花益母草も鏨菜もともに中国東北地区に自生して いる。これらは、益母草と同様に産後の腹痛に用いている。鏨菜はキセワタモドキ、大花益母草がキセワタとなる。

採取時期と調整法:夏の8〜9月、開花期の地上部を刈りとって 日干しとする。

成分:キセワタの成分は精査されていないが、メハジキの成分と共通したものが含まれるのではないかと考えられる。

薬効と用い方:
産後の腹痛に:
6〜10gを1日量とし、水400 〜600ccで1/2量にせんじ服用する (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8438 ヒノキバヤドリギとは 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄などに自生する常緑の低木で、ツバキ、モチノキ、ヒサカキなど、その他多くの常緑樹に 寄生する。台湾、中国、インド、マレーシアなどに分布。
茎は多数の節間あり、よく枝分かれをし、節間は扁平で倒被針形。葉は緑色で小さく、鱗片状突起となって退化しているが、対生につく。全体が緑色で、雌雄同株。花は4〜8月に黄緑色の雌花、雄花を節に数個つける。花は小さく、花被は3裂。 果実は熟すと橙黄色で楕円形の液果となり、1個の種子がある。 多くはメジロなどの小鳥に食べられ、糞とともに散布されて繁殖する。

名前の由来:枝がヒノキに似ているヤドリギという意味である。 別名のツバキヒジキは海藻のヒジキに似ていて、ツバキに寄生していることから。ヒノキツバキは、枝がヒノキ似て、ツバキに寄 生することから。中国では栗寄生と書く。『中国高等植物図鑑』 (1980年)。

ヤドリギ科の仲間:ヒノキバヤドリギ属は葉は退化して、鱗片状 で小さく、花が単性。雄花、雌花が別々に同株につき、花被は3 裂しているのが特徴。次項のアカミヤドリギはヤドリギ属で、常緑の葉があり、花は単性で、花被は4裂。マツグミはマツグミ属で、花は両性で大きく、紅色である。

採取時期と調整法:春より秋に茎葉を採取し、水洗い後日干しに。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
鎮痛に:
神経性の痛みや打撲傷で痛むときに、茎葉の乾燥したものかを1日量として5〜 10g、水400〜600ccで1/2にせんじて服用する。わが国では薬用に していないがこれは中国の民間療法である(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8439 アカミヤドリギとは/アカミノヤドリギとは 北海道から九州までに自生する常緑低木で、エノキ、ケヤキ、 ブナ、ミズナラ、サクラ類などの落葉樹の枝に寄生する。枝は円 く2〜3のまた状に枝分かれして節があり、無毛で緑色。葉は対生 し、柄はなく、倒被針形で、長さ3〜8cm。葉の先端は円く、基部はくさび形で細くなり、葉質は厚くて濃緑色。花は2〜3月に 開く。雌雄異株。花被は厚く4裂し、雄しべは花糸がなく、花被の内側に葯がつき、葯は多室で、多くの孔が開き、花粉を出す。 果実は球形で11〜12月に熟し、橙赤色となる。中に1個の種子がある。

名前の由来:果実の表面は熟すと橙赤色となるのでこの名があ る。ヤドリギの果実は淡黄色。ヨーロッパ産のセイヨウヤドリギの果実は白色に近い。赤みのこのような橙赤色となるのは、この アカミヤドリギのみであり、薬用にはこのものが賞用される。別名のホヤはヤドリギの古名で、『和名抄ら(932年)に寄生の漢名をあげ、この和名はヤドリギであるとし、ホヤともいうと記してある。また、古名にホヨがある。万葉集巻十八の歌にホヤとかホヨが出ている。ホヨは『和名抄』で、「夜止里木一云保夜」として ある保夜を、ホヨ呼んだものであろう。

採取時期と調整法:果実は11〜12月にとり、水洗いしてから日干しに。茎葉は必要時に採取し、水洗い後に、刻んでから日干しに。

成分:茎葉にはオレアノール酸、βーアミリンのほか、イノ ジットも含まれている。

薬効と用い方:
産後の回復に:
特にこのアカミヤドリギの果実の乾燥したものがよく1日量として約10gを水400〜600ccで1/2にまでせんじて服用する。
中風に:乾燥した茎葉を1日量として5〜10gを水400〜600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8440 マツグミとは 本州(関東以西)、四国、九州(屋久島まで)に自生するわが国特産種。アカマツ、クロマツ、モミ、ツガなどの枝上に寄生する常緑の半寄生性の低木。枝は分岐し、葉はやや対生につき、厚 く緑色で光沢はなく、倒披針形で先端は丸く、基部は細まって短 葉柄となり、長さ1.5〜3p、幅3〜7mm。花は7〜8月、葉腋に1〜4個をつけ、花の長さ約1.8cmで深赤色、花被の筒状部は細 く、先端は4裂して反曲。この部分の長さは約4mmで黄褐色。果実は翌年の春に赤く熟し、径約5mmの球形で、中に白色の種子一 つを含む。果肉は甘みがあり、粘液質で、小児が好んで食べる。  

名前の由来:マツ(アカマツ、クロマツ)の枝に寄生し、果実がグミのようであるので、松グミの意味で。この名となった。別名も松との組み合わせの名が多い。わが国特産のもので、漢名はな い。松寄生、松上は和製漢字で、一般にあまり用いられていない。

類似植物オオバヤドリギ:
イヌマキ、シイ・カシ類、ヤブニッケ イ、タブノキなどの常緑樹に寄生するものにオオバヤドリギがあ る。この葉は広卵形で大きく、下面に赤褐色の綿毛がある。関東の房総半島より沖縄に自生、台湾、中国南部に分布する。中国で は「毛葉桑(もうようそう)寄生」と書き、茎葉を鎮痛や安胎下乳(胎児の安定や 母乳の出をよくする意)に用いる。

採取時期と調整法:夏〜秋に茎葉をとり、水洗い後日干しとする。

成分:茎葉にクエルチトリンの含まれているほかは、まだよくわ からないが、近年、大阪市環境科学研究所と東北大学薬学部の共同研究「マツグミの降圧性成分に関する研究」(日本薬学会・1975年) で、顕著な効力のあることを発表している。

薬効と用い方:
高血圧症の予防に:
茎葉1日量5〜10gを水400〜600ccで1/2にせんじ服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8441 ノリウツギとは 北海道より九州まで、各地の平野部から山地の日当たりのよいところに自生する落葉低木。南千島、サハリン、中国に分布。幹は2〜3mに伸び、樹皮は灰褐色で、内皮には粘液が多い。葉は対生し、広卵形〜卵状楕円形で、先端が急に狭くなり、さらに先端がとがる。縁に鋸歯があって両面の脈上に短毛があり、特に裏面に多い。花は7〜8月に白色花をその年伸びた枝の先に、大形の円錐花序につける。花序の周辺に大形の白い装飾花がつくが、これは中性花とも呼ばれて結実しない。また、がく片4枚で、白色から淡紅に染まることもある。両性花は小さく、花弁5枚、雄 しべ10個、花柱は3個。果実はさく果を結ぶ。

名前の由来:樹皮と木質部の間の厚くやわらかい部分か内皮。これをとって水につけると糊がとれる。和紙をすく糊に用いることからこの名となる。トロロアオイ(アオイ科)の糊より腐りにく いという利点がある。別名のサビタ、サブタは北海道で呼ばれ、 アイヌ語ではないかといわれるが、アイヌ語ではラスパニとい う。サビタの名前の発祥の地は青森、岩手の両県にサビタ、サブタが残っているので、古い時代に北海道に移ったのではないかと見られる。沢を隠すようにこの木が生い茂るので、沢ぶた。これ が変化してサブタ、サビタになったのではないか。

採取時期と調整法:夏のほうが樹皮がとれやすい。樹皮の内皮部分を日干しにしてから、粉末とする。また、樹皮をそのまま刻んで日干しにする。

成分:内皮の部分の粘液質のほか、葉茶にプロトカテキュ酸、カ フェー酸、フェルラ酸などのフェノール性物質を含んでいる。

薬効と用い方:
疥癬に:
樹皮をせんじて、その汁で洗う。
女性の洗髪料に:内皮の粉末を木綿の袋入れ、湯と共に洗髪すると、毛髪にうるおいとつやを出す(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8442 ヨロイグサとは(ビャクシ) 本州(近畿、中国地方)、九州(北部、中部)の山地に自生する大形の多年草。朝鮮半島、中国(東北地区)、シベリア東部に分布する。薬用の目的で主に奈良県や北海道で栽培されている。 2mに達する太い茎は空洞で、直立して伸び紫紅色で、上部は分枝し、短毛がある。葉は2〜3回3出複葉で大形。葉柄の基部は広くなり、鞘状となって茎を包む。花は7〜8月に、白色の小花多数を複散形花序につける。果実は翼があり、無毛で扁平。根は太くて短く、紡錐状で芳香が強い。

名前の由来:『延喜式』、『本草和名』、『和名抄』など平安初期の古文献に、ビャクシの漢名に対し、ヨロイグサの和名が出てくる。江戸時代に入ると、ヨロイグサの名をボタンやトキンソウ(キク科 の小草)の別名とした文献もある。ビャクシの古名ヨロイグサの語源 については、江戸末期の『倭訓栞(わくんのしおり)』に葉の刻みが重なり合う様子からこの名となったとしている。ビャクシは中国古代の薬物書 『神農本草経』に記載されている漢薬で、古い時代にわが国に伝 えられたものであろう。のちに中国のビャクシも、わが国産のヨロイ グサも、その根は同じビャクシとして薬用に用いられるようになった。中国産を唐ビャクシ、日本産を和ビャクシとして区別している。

採取時期と調整法:11月ごろに根を採取し、水洗いしてから刻ん で、陰干しにする。

成分:多数のフロクマリン類が知られている。ビャクアングリコ ールは和ビャックシに多く、唐ビャクシに少なく、唐ビャクシはオキシペウセダニンを多く含むとされている。その他精油を含む 。

薬効と用い方:
鎮静、鎮痛に:
カゼのとき、頭痛がする。また、歯痛の時などに、1日量5〜10gを水400〜600ccで1/2量に煎じて服用。
★害虫がつきやすく、保存に配慮が必要である(画像はこちら
8443 ウマノミツバとは 北海道から沖縄まで各地の山地の林の下草として生える多年草。朝鮮半島、中国(東北地区)、千島、サハリンに分布。茎は 直立し、高さ30〜70cmで分枝する。根出葉は長い柄があって大き く、深く3裂し側方の裂片はさらに2深裂して、縁にあらい鋸歯 がある。茎出栗は対生か互生し、深く3裂して、縁に鋸歯があ る。茎の上部の葉は葉柄がないか、または短い。茎葉ともに無毛。花は7〜9月に開き、小形の散形花序に、小さい白色花多数 をつける。両性花と雄花がある。がく片は線形で5枚、花弁は白色5枚、雄しべ5個。果実は長さ約5mmの卵円形で、表面にかぎ状に曲がった刺毛がある。

名前の由来:馬の三つ葉の意味。人には役に立だない三つ葉、馬なら食べるかもしれないということから。

類似植物ミツバとの区別:よく似たミツバは、花はすべて両性花で、果実の表面には、ウマノミツバのようなかぎ状に曲がった剌毛はない。また、葉は3小栗よりなるなどの点が異なる。

採取時期と調整法:夏の開花期に根を含めた全草をとり、水洗い後に刻んでから、日干しにする。

成分:ヨーロッパ産のセイヨウウマノミツバSanicula europaea L.の成分は、全草より、サポニン、フロロゲン酸、その他果糖、 ブドウ糖の少量を含むとされていて、わが国のものが、古くから 去痰の民間薬として用いられてきたことの裏づけとなった。サポ ニンは去痰の作用がある。セイヨウウマノミツバは西ドイツを中心に中部ヨーロッパに自生し、わが国産のものとよく似ていて、 根出葉が掌状に深く5裂している。

薬効と用い方:
利尿、去痰に:
1日量として5〜10gを水400〜600ccで1/2量に煎じて1日数回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8444 ダリヤとは(ダリア) メキシコからグアテマラの高地を原産地とする多年草で、わが 国には天保12年(1841年)オランダ船により、初めて長崎に輸入した ものとされている。地下には淡褐色で、サツマイモ状の塊根が数個集まってつき、春にこの塊根より地上に中空で円柱形の茎を伸ばす。高さは1.5〜2m。葉は対生し、1〜3回羽状に深く裂け、 裂片にはあらい鋸歯がある。初夏より秋に開花し、各枝の先に、 数個の大形で美しい頭状花をつける。一重、八重、花色さまざまの園芸品種が多い。頭花の周辺に雌性の舌状花、内部には両性花の管状花がある。果実は扁平で、冠毛のないそう果を結ぶ。

名前の由来:スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダールの名を記念して、ダーリアの学名がつけられ、わが国ではこれを縮小 したかたちでダリヤと呼んでいる。江戸時代、天保年間のころか ら天竺牡丹の名で呼ばれていた。この場合、天竺とはインドでは なく、南蛮(アジア以外の外国)をさしていて、そのころ一重咲 きの花がボタンに似ていたので、この名前となった。明治の終わ りころにダリヤと呼ぶようになる。

採取時期と調整法:地下の塊根を採取し、水洗いする。

成分:キクイモと同じように、塊根には多量のイヌ リンを含んでいる。その他、葉にはクマリン類、フラボノールの配糖。またクロロゲン酸が塊根に含まれている。

果糖製造法:こまかく砕いた根を水に入れて、水酸化カルシウムで弱アルカリ性にし、加熱しこれを布でこし、脱色炭で脱色して 濃縮するとイヌリンが得られ、これに水とシュウ酸を加えて沸騰 しながら加水分解すると、果糖となる。これを炭酸カルシウムで 中和し、さらに結晶として精製。

薬効と用い方:

主として果糖注射液として、体液や栄養補給のために、医師が使用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8445 タカサブロウとは 北海道を除いた本州から沖縄まで、たんぼのあぜ道や湿地に自生する1年草。種子が淡水や海水に強く、特に海流に遅ばれて広 く世界じゅうに分布している。茎は高さ30〜60cmで、短毛が生え、直立するか斜めに立って枝分かれする。葉は無柄で披針形。 先端がとがり、緑に細い鋸歯があり、両面に短毛が生え、茎とともにさわるとざらつく。夏の盛りに、径1cmほどで周辺に白い舌状花と中心に淡緑色の管状花のある頭花をつける。舌状花冠は長 さ5mm、管状花冠は4裂。そう果は長さ3mm。

名前の由来:古名を単にタタラビと呼び、のちに、タタラビソウ となるが、タタラビは皮膚などのただれることを意味する古名。 タタラビソウはただれのときに用いられる草であり、その意味を知ればきたない草という感じがする。このイメージ・チェンジの ためであろうか、高三郎の人の名にあやかって、タカサブロウと なったとする説がある。目のただれを治す薬草として古くから用いられている。中国にもこの草があって鱧腸(れいちょう)の名で知られ、ま た墨旱蓮(ぼくかんれん)ともいう。夏にこの茎を析ると、断面が黒くなって乾 く。これはウェデロラクトンという特殊成分があり、これといっ しょに含まれている酵素が空気中の酸素を吸収し、この特殊成分 を変化させるからである。墨旱蓮の漢名はこのことに由来する。 このほか、タンニンも含まれている。

採取時期と調整法:夏の開花期に全草をとって、水洗いしてか ら、日干しにする。

成分:ウェデロラクトン、タンニン

薬効と用い方:
血尿や血便の止血に:
1日量3〜10gを水600ccで1/2にせんじ服用。
ただれ目に:上と同じ分量をせんじ、その汁で洗眼する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8446 ヤマユリとは 本州(東北より近畿まで)に自生する多年草で、北海道、九 州、四国、北陸、中国地方などに自生しない。もしこれらの地方にあれば、以前栽培されていたものが野生化したものであろう。 山地の草原や林の中に生え、地上茎は1〜1.5mに直立し、やや弓 なりに曲がって伸びる。地下の鱗茎は扁球形で黄白色。下部から 多くの根を出す。葉は深緑色で披針形。先はとがり、短い柄によ って互生する。  7〜8月に、茎の先に1〜5個、ときに20個以上の花をつけ る。花被片は6枚で白色、中央に黄色の太い線が通り、赤褐色の 斑点がある。雄しべ6個、雌しべの先は浅く3裂。花後長楕円形 の大きい果実(さく果)を結ぶ。

名前の由来:山百合と書き、山に生えるユリの意。細長い茎の先 に大きい花を数個つけるので、わずかな風にも花が揺り動いて、 ユリの名になる。生薬名百合(びゃくごう)は、この鱗茎を乾燥したものの名である。別名のホウライジユリは愛知県の鳳来寺山に多いことか ら。エイザンユリは京都府、滋賀県境の比叡山に多いことから、 リョウリユリは料理ユリで、奈良県多武蜂(とうのみね)・談山(だんざん)神社付近の方言である。

採取時期と調整法:秋に地上部が枯れたころ、鱗茎を掘り、水洗いして、鱗片をはぎとり、ばらばらにし、これに熱湯を注ぎ、日干しにする。これが生薬でいう百合である。

成分:鱗茎の粘質性成分は、粘質多糖類のグルコマンナンであ る。種子の成分としては、フェルラ酸、クマリン類のバラ・クマ リン酸が含まれ、花粉粒中にフラボン配糖体の黄色結晶ナルキシ ンを合んでいる。

薬効と用い方:
せき止め、解熱に:
1回に4〜10gを、水400ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8447 テッポウユリとは 種子島から沖縄に自生し、主として海岸の崖などに多い多年草。各地で観賞用に広く栽培される。花は白く、花筒が長く、先端が少しそり返り、芳香が高く、花そのものが優美である。鱗茎 は扇球形で淡黄色。茎は直立して伸び、約1mになる。葉は柄が なく披針形で長さ約15cm、幅約1cm。表面に光沢があって互生す る。花は5〜6月に開く。雄しべ6個は花被より短く、雌しべの 先端の柱頭はこん棒状にふくれている。果実はさく果を結び、長楕円状筒形で、長さ6cmぐらいになる。

名前の由来:沖縄各島で海岸に面した崖に多く、古くは琉球百合と呼んでいた。『成形図説』(1804年)には、関東では鉄砲百合と呼ぶ とあるが、語源にはふれていない。花の筒状部が長いのを鉄砲に見立てたとする説と、鉄砲伝来の種子島より江戸に入ったので、 江戸で鉄砲百合の名がつけられたとする説もある。  
別名にタメトモユリがある。為朝百合で、源為朝に関係の深いハ丈島から来たものと考えて、この名となったが、八丈島からではなく、沖縄からのもの。温暖な南の島に多いというのを江戸の 人がこのように呼んだのである。

採取時期と調整法:鱗茎を採取し、根をとり除き、水洗いし、生のままをつき砕いて使用する。

成分:花粉粒の成分としてカロチノイドの色素が合まれているほか、まだ精査されていない。鱗茎には苦味成分が合まれているので、苦みが強く、食用にはならない。

薬効と用い方:
打撲傷に:
砕いた鱗茎を直接、患部に当てるが、次のようにすると良い。容器に鱗茎を入れ、食酢の小量を加えてつき砕き、木綿の袋に入れて、これを患部に当て湿布するようにする。これは沖縄地方で行われる民間療 法である(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8448 クワイとは 中国原産で、古い時代にわが国に入った野菜の一つ。アジア、 ヨーロッパ、アメリカなどの温帯に広く分布するが、野菜として栽培するのは、中国と日本だけ。多年草の水草で、高さ90〜120cm に伸び、地下部に発達するほふく茎(匍匐茎)の先に塊茎をつく る。根出葉は大形の矢じり形で緑色無毛、長さ約30cm。葉柄の基部はさや状となる。花は白色の3花弁で雌雄同株。雄花は多数の黄色の雄しべを持ち、花穂の上部につき、雌花は少数で、多くの雌しべを持って花穂の下部に、輪生につく。開花は9月ころであるが、開花するのはきわめてまれで、また実もほとんど見られない。

名前の由来:平安時代の『本草和名』(918年)にクロクワイの和名があって、烏芋の漢名がこれにあたるとした。『和名抄』(932年)に なると、これにクワイの和名をつける。その後に、慈姑(じこ)の漢名とともに今日のクワイが渡来し、両者を区別するため、これにシロクワイの和名がつけられた。クロクワイはカヤツリグサ科でわが国に自生し、地下の径1.5cmほどの塊茎を食用にする。シロクワイが普及して、クロクワイは利用されなくなったため、一般に利用されるほうをクワイと呼ぶようになる。『成形図説・巻之二十九』 (1804年)では「クロクワイとは黒丸イ(くろまるい)の転化したもの、茎は畳表にするイグサに似て、塊茎が丸く黒いから」という。

栽培地:主産地は関東の埼玉県浦和、越谷、草加の各市の水田地帯で、全国の80%を占める。11月下旬から出荷される。

成分:デンプン、アスパラギン、ベタイン、コリンなど含有。

薬効と用い方:
産後の子宮出血に:
鱗茎を刻んで乾燥したもの1日量10〜15gを水600ccで1/2量にまでせ んじて服用。
膀胱結石に:同じ分量で用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8449 スイタクワイとは(スイタグワイ) 大阪府吹田市を中心に、古くからその周辺のたんぼに栽培される多年草で、その塊茎は、クワイより小形であるので、マメグワ イやコグワイ、枡(ます)ではかって売るのでハカリグワイやマスグワイの別名もある。  
本種は野生種のオモダカ科のオモダカより自然に生じたもので、クワイからの系統のものではない。花茎に雄花、雌花を開き、緑色3枚のがくと、白色3枚の花弁を持ち、雌花は花茎の下方に、雄花は上方につく。

名前の由来:産地の名をとってこの名となった。

本草書に記載されたスイタグワイ

『大和本草』(1708年)に「一種スイタクワイと云物あり、葉も根もクワイに似て小なり花なし、味よしクワイより味濃く摂州吹(原文は吸)田の村より出たり」と ある。また、『和漢三才図会』(1713年)には、慈姑の項の末尾に「一 種に小にして独頭蘭(ほくり)の根の如くなるものあり。煮て之を食ふ。味さらによし。摂州吹田村より多く之れを出だす。所謂福州の小慈 姑は此の類か」と記した。ホクリはシュンランである。  『本草綱目啓蒙』(1803年)にも慈姑の末尾に「一種根小にしてムクロジの大きなる者あり、マメクワイと云ふ又スイタグワイと云 う、摂州吹(原文は吸)田村にて多く種へ出す故に名づく、二三月京師に賣る」とあり、近畿地方ではよく知られていた。

成分:クワイとほぼ同じものを含むと推測されるが、精査されていない。クワイ、スイタグワイともにシュウ酸カルシウムを含み、苦味がある。料理にはゆでこぼしてから使う。

薬効と用い方:
産後の子宮出血に
:鱗茎を刻んで乾燥したものを1日量10〜15gを水600ccで約1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8450 ナンキンハゼとは 中国原産の落葉樹で、山東省以南の地に多い。江戸時代に中国より渡来し、わが国暖地に街路樹、庭木として栽培。高さ8〜15 mに伸び、全株無毛。若枝は緑色、のち褐色となって、老木になると樹皮は縦に裂ける。葉は菱状広卵形で、先端は急にとがり互 生し、葉柄は長い。葉柄と葉身が接するところの左右に腎形の腺体がある。雌雄同株で穂状花序の上部に雄花多数を、下部に雌花を数個つける。開花は6〜7月で、雌花のがく片3枚、花柱は3個で先はそり返る。子房3室。雄花のがくは浅く3裂し、雄しべ 2個で花糸は短い。果実は11月に成熟し、黒褐色で3稜があり、 半球形、白色の種子3個が入っている。

名前の由来:秋に葉が紅葉して美しい。この紅葉がハゼノキに似ていること、南京からの渡米ということから、この名となる。漢名はウキュウ。

中国木蝋:秋に果実を採取し、種子のみを集めて、適当な温度を加えて圧縮すると、蝋様物質がとれる。これを中国木蝋という。 ススキ類の茎を軸にしてこれに灯心を巻き、この表面に蝋を塗り重ねて、あとでススキの軸を抜き去ってローソクを造る。中国独特のローソクで、油煙が少ないのが特徴である。

採取時期と調製法:果実は中国木蝋の原料。薬用には、根の皮を用い、必要時にとり、水洗いして日干しとする。

成分:樹皮、葉にβージトステロール、イソクエルチトリン、エラーグ酸などを含み、種子には多量の脂肪油があり、パル ミチン酸、油酸などのグリセリードからなっている。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量として5〜8gを、水400〜600ccでせんじて1/2量までにし、これを数回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8451 ナツグミから 福島県から関東地方、東海地方の特産。関東地方ド集中的に多いので、カントウナツグミの別名がある。山野に普通の落葉低木 で、庭先にも栽培され、変異が多い。花は4〜5月に、淡黄色花を開き、葉腋より1〜2個が長い柄によってたれ下がって咲く。 がくは筒状で、先は4裂し、雄しべ4個はがく筒内壁の上部につく。がく筒内側は無毛。果実は6〜7月に赤く熟し、長さ約1.5cmの楕円形。葉は長楕円形、卵形と変異が多く、上面には、初め灰白色の星状鱗片や鱗毛があり、のちに脱落して無毛となる。下面には銀色の鱗片が密生し、ほかに褐色の鱗片が散在する。

名前の由来:夏に果実が熟すので、夏グミとなる。グミの語源 は、『倭訓栞(わくんのしおり)』によると、江戸初期の『藻塩草(もしおぐさ)』・宗碩編の説を 引用し、ナワシログミを例にとり、果実のよく成熟したものをグ ミと名づけると記してある。

類似植物二種:
(1)アキグミ:
葉は落葉性で、花は春に開花して、 葉腋に数個つき、葉には銀白色の鱗片を密生。葉の上面は鱗片のみで星状毛はない。果実は球形で秋に熟す。果柄はナツグミより 短く、5〜10mm。ナツグミは3〜5p。
(2)ナワシログミ:葉が常 緑性である。花は秋に開花、翌年初夏に実を結ぶ。

採取時期と調整法:夏から秋に果実をとり、水洗いしてから水けを除き、そのまま用いる。

成分:色素リコペエンを含むのはナワシログミと同じ。その他は 精査されていない。

薬効と用い方:
疲労回復(健康薬酒)に: 
水きりした果実を1g容量の広口瓶に約半分まで入れ、グラニュー糖150g、薄い輪切りのレモン1個分を加え、35度のホワイ トリカーを容器いっぱいになるまで注いで、冷暗所に静置し、2 〜3ヵ月後に飲用。1回量は20〜40ccを限度とする(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8452 オオマツヨイグサとは アメリカ原産というが、はっきりしていない。わが国には明治の初めに入り、繁殖力が盛んで、全国に広く野生化する。2年草で、茎は1m以上に伸び、葉は長楕円の披針形で互生し、根出葉は倒披針形で地面に車輪状に出る。葉縁、両面ともに綿毛がある。花期は6〜9月。花径約8cmの大形4弁花は黄色で、夕刻に開花し、翌朝にしぼむ。果実は柱状4角のさく果て、長さ3cmほ ど。4裂して多数の種子を出す。しぼんだ花弁は赤くならない。

名前の由来:大きいマツヨイグサのこと。マツヨイグサは江戸時代の終わりごろ、オランダ船が初めて長崎に伝え、当時は観賞用 として栽培されていた。『草木図説』(1856年)には原産地も、正しい名もわかっていないが、世間ではこの草をマツヨイグサと呼んでいると記している。待宵草で、夕方を待って開花することからである。このマツヨイグサに似て大形であることから、オオマツヨイグサの名になった。詩人で画家の竹久夢二は、岡山県下の河原に咲くマツヨイグサを見て、「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるセなさ……」と歌ったので、逆の名前が広まった。夢二は オオマツヨイグサを見ていたのではないか。

類似植物二種:
(1)マツヨイグサ:
花径3〜6cm。多年草で、花は黄色でしぼむと赤くなる。
(2)アレチマツヨイグサ(メマツョイグサ):花径5cm、黄色でしぼんでも赤くならない。2年草。根出葉の先端がとがっている。

採取時期と調整法:必要時に、根を水洗いして刻んで日干しに。

成分:ケンフエロール、クエルセチン、ミリセチンなどのフラボノルを葉中に、種子の脂肪は、オレアノール酸、リノール酸、リ レノン酸を含む。

薬効と用い方:
カゼでのどが痛むときに:
乾燥根1日量約10gを水600ccで1/2量に煎じて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8453 アカバナとは 北海道南部、本州、四国、九州の山地の水温の地に自生する多年草。朝鮮半島、中国、サハリンに分布する。茎はほぼ直立に伸 びて約90cmになる。茎に稜線はなく、腺毛が生え、上部の茎は枝分かれする。葉は対生し、卵状披針形で縁に浅い鋸歯があり、基部は多少茎を抱くようにつく。葉の長さは2〜6cmで、茎とともに赤みを帯びることがある。7〜9月に開花し、葉腋より小花をつける。花弁は先が浅く裂け、紅紫色で4枚。柱頭はこん棒状にふくらむ。果実は長さ8cmのさく果。外側に腺毛があり、種子に赤褐色の冠毛がある。

名前の由来:茎葉が、秋に赤みを帯びるのでこの名があり、花が赤いからではない。

類似植物二種:
(1)イワアカバナ:
柱頭は急にふくらみ、球形。茎全面にこまかい毛が密生する。
(2)ケゴンアカバナ:柱頭が急にふくらみ球形になるのは、イワアカバナと同じ。茎には2列に並ぶ細毛がある。

中国での利用:中国では良種柳葉菜の漢名で呼び、別名を心胆草、柳葉菜、小対経草と書く。夏から秋に全草を刈りとって、水洗後に日干しにするほか、生の茎葉を砕いて用いている。下痢止めのほか、月経過多に煎服したり、打撲傷に生の全草をたたいてすりつぶして、患部にはって利用する。

採取時期と調整法:夏の開花期に全草を刈りとって、水洗い後、刻んで日干しとする。水湿地に生えるので、よく乾燥させないと、保存中にカビを生じやすいので注意すること。

成分:まだ精査されていないが、βージトステロールや、タ ンニン類が含まれている。

薬効と用い方:
下痢止めに:
1日量として5〜10gを水600ccで1/2量に煎じて、何回かに分けて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8454 シナガワハギとは 中央アジアからヨーロッパの原産の2年草で、わが国に帰化して野生化し、北海道より沖縄までの海岸、川岸、路傍、あき地などに見られる。茎は直立し、枝分かれして高さ30〜90cmになる。 葉は葉柄の先に3出複葉をつけ、小葉は長楕円形で、先端は丸みがあり、基部はくさび形で狭い。花は春から初夏に開き、葉腋よ り総状花序を伸ばし、長さ3〜4cmの黄色蝶形花を多数つける。 がくは5裂する。果実は豆果を結び、広楕円形で、表面に不明瞭な網目状のしわがあり、1個の種子を入れる。  
従来セイヨウエビラハギとシナガワハギは別種とされていたが、近年これは同じ種類とされた。

名前の由来:『草木図説』第1版(1856年)にエビラハギの名があり、牧野増訂本にシナガワハギの名が出てくる。武藤信平著『内外実用牧草図説』(1908年)には「武蔵国品川附近に多く自生し、萩の葉に似るのでこの名がある」と記してある。

ヨーロッパではスパイスに:花がつぼみのころ花穂と葉を採取 し、乾燥すると、香りのよいクマリンのにおいがする。肉類の料 理やソーセージ、チーズの味つけなど、また、丸焼きに風味をつ けるときにも用いられる。

採取時期と調整法:開花期でよいが、なるべくつぼみのころにと り、全草を水洗いし、刻んでから風通しのよいところで陰干しに する。よく乾燥すると、クマリンのにおいがする。

成分:クマリン、クマール酸、メリロート酸、ウンベリフェロン、ハイドロクマリンなどが含まれている。  

薬効と用い方:
打撲に
:むち打ち症などにもよい。患部の大きさにより分量をきめる。刻んであるものをなべに入れ、水をひたひたに入れて、沸騰しないように煮て、木綿の袋に入れて軽くしぼり、患部に当てて湿布する (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8455 エゾノレンリソウとは 北海道、本州(津軽、能登半島、飛島・山形県、男鹿半島など 日本海沿岸)の湿地帯に自生する多年草。サハリン、千島にも分布する。北米には基本種Lathyrus palustris L.を産し、北部の湿地帯に見られる。高さ約1mに伸び、茎は翼があり、わずかに短毛が生える。葉は羽状複葉で、小策は挟い長楕円形で先端は急に突出し、両面には短毛が多い。3〜5対となってつく。葉軸よ り出る巻きひげは2〜3に分枝する。托葉は三角形のほこ形で先端がとがっている。8月に総状花序を葉腋より伸ばし、紫紅色の 蝶形花を数個つける。がくは浅く5裂。果実の豆果は扁平で長さ約5cm。種子は径約3mmの扁平楕円形で灰褐色、数個がある。

名前の由来:蝦夷(北海道)に特に多く見られるレンリソウの意でこの名となる。よく似ているレンリソウは、同じマメ科の多年草で、本州の岩手県以南、九州に自生し、葉軸より出る巻きひげは枝分かれしない。このものは薬用に供しない。別名のベニザラサ、ベンザラサの語源は不明であるが、ベンザラサは今日東北北部地方で一般に通用する方言で、それがなまってベニザラサとな っている。  

『樺太植物誌』:樺太廰発行、宮部金吾・三宅勉共著『樺太植物誌』(1913年)によると、「婦人血の道の妙薬なりとて俗にベニザラサと称へ本島に来る漁夫は必ず採集し陰乾と為し持ち帰りて賞用す」とある。

採取時期と調整法:8〜9月全草を刈りとり日干しにする。

成分:ケンフエロール配糖体を含むとされているが、その他は未精査である。

薬効と用い方:
利尿、腎臓病に:
1日量約10gを水600ccで 1/2か1/3量にまでせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8456 ガガイモとは 北海道、四国、九州の各地の原野に自生する多年生のつる性草本。朝鮮半島、中国、千島に分布する。 地下に横にはう長い根茎がある。地上のつるは長く伸び、葉は対生して、長い葉柄の先に長卵状心形の葉がつき、先端はとがり、下面は白緑色。茎葉を切ると白い乳液を出す。花は8月に開き、花冠は淡紫色で5裂し、内面には密に毛がある。がくは深く 5裂している。  
秋に長さ約10cmの袋果をつけ、熟して2裂すると、種子を出す。種子は扁平で、先端に絹糸のよう な長い毛が多数つく。

名前の由来:古名をカガミ。これを漢名蘿摩(らま)に当てたのは『本草和名』(918)で、カガミからガガイモに変化したものと考えられ る。『日本書記』巻一の大国主神のくだりに「白斂(びゃくれん)の皮をもっ て舟となす」とあるのは、 このガガイモの果実の皮をさしたもの。果実が2裂し て内部が見え、舟形になっている状態が神話の中 のおとぎの小舟にふさわしい。また、その内側が鏡のように光っ いるので、古名はカガミと呼んだ。別名のクサワタ、クサパンヤは草綿のことで、種子に多数の絹糸様の毛が生えることから。 イガナスビは果実の表面にいぼ状の突起ができることから。

採取時期と調整法:果実は夏のころに、未熟のものを採取。茎または、未熟の果実から出る乳液は必要なときに。

成分:ガガイモ科のプレグナン誘導体サルコスチンを含むほか、 ブレグラリン、メタプレキシゲニン、ベンゾエルラマノンなど、 プレグナン誘導体が含まれている。

薬効と用い方:
強壮に:
未熟果を天ぷらにして食べる。
いぼとりに:乳液を直接いぼに塗る。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8457 コシアブラとは 北海道、本州、四国、九州の各地の山地の林の中に自生する落葉高木。幹はほぼ直立に伸び、20mに達するものもある。幹の樹皮は灰褐色。小枝は灰白色で太くなると褐灰色となる。葉は互生して、長柄があり、3〜5の小葉からなる掌状複葉で、小葉は縁 にとげ状の鋸歯があり、先端はとがっている。葉質は薄く、かた い。葉の裏は淡緑白色で、葉脈上に淡褐色の軟毛がある。7〜8月にその年に伸びた枝先に緑黄色5弁の小花多数を散形花序につける。果実は球形で、熟すと黒くなる。

名前の由来:伊藤圭介著の『日本産物志』(1872年)にゴンゼツを一般の名称とし、別名をコシアブラとしている。古く平安のころの 『和名抄』(932年)は金漆の漢名をあげ、この和名をコシアブラとした。伊藤圭介は金漆をゴンゼツと読ませている。  
金漆は金色をした漆のことではなく、刀剣など金属類に塗る漆で、ウルシノキからの漆とは、本質的に異なるもののようだが、 今日それを伝える物も文献もない。この樹木を材料にし、金漆を作ったのにはちがいないが、この木の樹液をこしてつくったからか、それとも別の意味があるのか、はっきりしていない。別名の ナマドウフは材質がやわらかいことから。コセアブラは、コシアブラのなまったもの。

採取時期と調整法:春の若葉を採取し、水洗いしてそのまま用いる。また、これとは別に、若葉を日干しにする。

成分:葉にケンフエロールとクエルセチンの配糖体、また、イソクエルチトリンを含むことが知られている。

効と用い方:
健康食に:
塩少々加えて若葉をさっと短時間でゆで、おひたしにして食べる。また乾かし た若葉1日量5〜10gを、水600ccでよ1/3にまでせんじて服用す る。イソクエルチトリンを含むので、血圧降下の作用がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8458 ヘラオオバコとは ヨーロッパ原産の多年草。江戸時代の終わりころに渡来し、現在、各地に野生化した帰化植物。沖縄には戦後になって見られる ようになった。  
根茎は太く肉質で、葉はすべて根出葉。披針形で幅は狭くて1.5 〜3cm、長さ約30cm、縦に数本の脈があり、白毛が生える。花茎はそう生し、葉より長く、30〜50cmに直立して伸び、先端に3〜 5cmの穂状に多数の花をつけ、6〜8月に開花。がくは楕円形で透明、4枚のうち2枚は合着。花冠は白色で4裂し、雄しべ4個は花冠より長く突き出す。果実は卵状楕円形で、中に種子2個を 含む。

名前の由来:花はオオバコと似ているが、葉が狭くヘラ状になっていることからつけられた。オオバコは大葉子で、大きな葉になることからこの名がある。ナキリッパは菜切葉のことである。

ヨーロッパでの民間薬:古い時代から、スコットランドの高地に住む人たちは、このヘラオオバコの葉をもんで、傷口に当てるこ とや、根を去痰薬に用いることを行っていた。

採取時期と調整法:根は春〜夏の間の必要時に採取し、水洗いして刻んでから、日干しにする。葉は春〜夏の間の必要時に、生の葉をそのまま用いたり、または、水洗いして日干しにしたりする。

成分:種子には粘液質のプランタザンを含んでいる。葉中にはアウクビン、カタルポールが含まれ、これらはモノテルペノドで、 利尿作用がある。

薬効と用い方:
去痰に:
1日量として根約10gを水600ccで 1/2量にまでせんじて服用する。
利尿に:葉の乾燥したものを1日量5〜15g、水600ccで1/2量に せんじて服用する。
傷薬に:切り傷などの軽い傷に、生葉をすりつぶした汁を塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8459 イヌビユとは 北海道から沖縄まで全国各地の荒地、路傍、畑地に広く生える1年草。原産地は明らかでないが、ヨーロッパよりアジアの温帯に広く分布する。  
茎はほふくするか、直立して、多くは根元より分枝して、斜上することが多い。高さ約30cmになる。葉は互生し、菱状卵形で、 先端にくぼみがある。葉柄は長い。花は6〜10月に、茎の先や葉腋より黄褐色の小花を長い穂状花序につける。花被片は3枚で、 へら形の鱗片状。雄しべ3個。果実は胞果を結び、花被より長く、熟しても裂けず、下半部にしわがある。種子は1個で扁平な球形で、表面に網目模様がある。

名前の由来:犬ビユのことであって、栽培されるヒユに似ているが、役には立だないヒユであるという意味のもの。ヒユは食用になる作物である。

類似植物アオビユ:イヌビユによく似たアオビユは、別名をホナガイヌビユと呼ぶ。大正時代に渡来した1年草で、本州より沖縄までの各地に野生化している帰化植物。花穂が長く、13cmほどにもなるので、別名ホナガイヌビユとなったもの。草丈も大形で、 90cmくらいに伸びて、イヌビユが約30cmの高さであるのにくらべても区別できる。また、イヌビユは胞果の下半部のみにしわがあ るが、アオビユは果実の胞果の全面にしわがある点が異なる。

採取時期と調整法:8〜9月に全草を採取して、水洗い後に日干 しにする。

成分:茎葉に硝酸カリウムを含むので、利尿効果がある。なお同類のアオビユの茎葉には、サポニンとタンニンを含むことが知ら れている。

薬効と用い方:
利尿に:
乾燥したもの1日量として5〜10g水600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8460 ヤマブドウとは 北海道、本州、四国に自生するつる性落葉木本。葉は大きく、 角ばった円形で、五角円心状。裏面に茶褐色のくも毛が密生し互 生する。花は5〜6月に開き、黄緑色の小花は円錐花序に咲く。 花序の下に巻きひげが出る。果実は秋に紫黒色に熟し、球形で径 約8mm。栽培される甲州ブドウより小さく、酸味が強い。甘みの糖度は甲州ブドウよりもむしろ多いが、酸味に打ち消されて、あ まり甘みが感じられない。しかし、さらに秋深くなって枝に残っ ているものは、非常に甘い。

名前の由来:山に自生するブドウの意味でつけられた。ブドウは中国原産でなく、古い時代に西方より渡来したものでこの語源は 西暦元年ころ、現在のソ連のカザフ、ウズベク、タジク共和国のあたりに栄えた大宛国(だいえんこく)の土語のBudawか、ギリシア語のBotrus を中国で漢字の「蒲桃」であらわしたもの。のちになって、今日  一般に用いられている「葡萄」の字に変わっていったが、ブドウの名のルーツは中国ではなく、大宛国やギリシアにあった。  

採取時期と調整法:秋によく熟した果実を採取し、水洗い後、水きりして、そのままを用いる。  

成分:果実中の主たる成分として酒石酸カルシウム、重酒石酸カリウム、転化糖、蔗糖、ブドウ糖のほか、ヒタミンB1、Cの少量も含まれている。

薬効と用い方:
疲労回復に:
ヘルシードリンクにするには、家庭用のミキサーを用意して、ガラス製の容器の中に、果実を1/4ほど入れる。これにグラニュー糖50〜60g を加え、ミキサーにかける。果皮や種子も砕かれて、多少のつぶつぶは残るが、飲みにくいほどではない。  
市販されるブドウの安価な品物を入手したときには、この方法で利用することをすすめたい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8461 エビズルとは 本州、四国、九州、沖縄に自生する雌雄異株のつる性落葉木本。朝鮮半島、中国に分布する。ヤマブドウに似るが、それより全体に小さい。葉は五角状の心膜状円形で浅く3裂する。上面、 下面ともに薄茶色のくも毛が生え特に下面に濃く生える。長く伸びるつるは、葉と対生に出て巻きひげとなる。初夏に淡黄緑色の小花を円錐花序につける。花序の下に巻きひげがある。果実は球形で秋になると、黒熟し、強い酸味がある。

名前の由来:エビヅルのエビは、わが国にまだブドウも入ってきていない時代、野山に自生するこのエビヅルなどの果実が秋に熟 した色をエピ、またはエビ色とよんだところから、エビヅルとなった。ヤマブドウもヤマエビ、オオエビヅル、エビカヅラなどと呼び、ブドウの名称は使われなかった。エビヅルこそ、古代に命名された名が、そのままの形で残ったものである。

類似植物ノブドウ:同じブドウ科でも、ノブドウはノブドウ属、 エビヅルはブドウ属と、所属を異にしている。葉の大きさやその外観が似ているので、まちがいやすい。ノブドウの葉の裏には毛がないので区別できる。

カマエビの虫:秋から冬に、エビヅルのツルのところどころに、 ふくれる部分ができる。そこを折ると、中に昆虫の幼虫が入っている。これをカマエビの虫と呼ぶ。この虫をコマドリやメジロ、 ウグイスなどの小鳥に与えると、鳴き声が一段とよくなるというので、愛鳥家がさがし求める。

採取時期と調整法:秋に成熟した果実をとり、水洗いしてから、 生のままを用いる。

成分:ヤマブドウとほぼ同じである。

薬効と用い方:
疲労回復に:
糖分や適度の酸殊のほか、ビタミン類もあって、生食するとよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8462 ソバナとは 本州、四国、九州の山地の樹陰にはえる多年草。朝鮮半島、中国に分布する。茎は空洞でやわらかく、折ると白い乳汁を出す。根は肥厚して紡錘形。葉は長い葉柄によって互生し、広披針形で、先端は細くなり、基部は心形で、縁にあらい鋸歯がある。花は8月に 開き、茎の先や葉腋より花茎を伸ばし、青紫花をつけ、円錐花序にまばらに下垂する。花冠は鐘形で、先は5裂して広がり、がくは5枚に分かれ、各片は披針形。花柱は花冠より外には突き出さない。

名前の由来:春の山菜として若苗をゆで、おひたしにして食べ る。ゆでるときに、そば(蕎麦)をゆでるときのにおいに似ているというので蕎麦菜になったという説がある。また一説には、け わしい山道を岨道(そばみち)といい、そのような場所に生えるので、岨葉だというのもある。中国では薄葉薺ネイ(くさかんむりに尼)(別名杏葉菜:キョウヨウサイ)と書く。わ が国でソバナを薺ネイと書くが、これはこのソバナに似て、別種の 中国産 Adenophora trachelioides Maxim.の中国名である。わが国ではソバナに薺ネイの漢名をあてるが、これは正しくない。

類似植物フクシマシャジン:ソバナに似たフクシマシャジンは、 葉は3〜4枚が輪生する。開花期は8〜9月で、花は細くて長い柄によってつき、この柄はソバナのほうが短い。フクシマシャジンは本州北、中部と四国の一部にしか産しない。

採取時期と調整法:夏から秋に根をとり、水洗い後に日干しにするが、乾燥しにくいので、二つ割りにして干すのがよい。

成分:根にサポニンの一種を含むほか、イヌリンを含む。

薬効と用い方:
はれものの解毒に:
おできなどのはれものには、根を乾燥したもの5gにショウガ少量を加え、砂糖をコーヒー用スプーンで軽く1杯、水600ccで1/2にせんじ服用。
去痰に:同じ分でせんじ服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8463 センナリホオズキとは 熱帯アメリカ原産の1年草で、飯沼慾斎著「草木図鑑」(1856年〜1862年)に「往々田園路傍に自生す」とあることからすると、江戸時代の後期にはすでに、各地に帰化植物として繁殖していたとみられる。北海道を除く各地、沖縄までに自生する。南北アメリカ、 中国、朝鮮半島にも分布。  茎の高さは約30cm。枝分かれして横に広がって伸び、茎には稜線があって、わずかに短毛が生える。花は8〜10月、各葉腋に黄白色花を1個、下向きにつける。がくは先が5裂、雄しべ5個。 花冠は浅く5裂し、淡黄白色。内部の奥の部分は紫色。果実は袋 状に発達したがくに包まれ、成熟しても緑色で、ホオズキのように赤くならない。

名前の由来:多数の果実ができるので、千成りホオズキの意味でつけられた。別名のハタケホオズキ、タンボホオズキは、この草 が桑畑や果樹園などに繁殖して、畑を荒らすことから。

類似植物オオセンナリ:南米原産の1年草のオオセンナリは、す でに江戸時代に観賞用に渡来し、ときに野生化していた。センナリホオズキより大形なのでこの名があるが、別属のオオセンナリ属に所属している。果実は熟しても緑色であるところは似ているが、がくの変形した袋状の上部に5個の突起ができるので区別がつく。センナリホオズキにはこのような突起はできない。

採取時期と調整法:開花期か果実の時期でもよい、全草をとり、水洗い後刻んでから日干しとする。

成分:まだ精査されていない。  

薬効と用い方:
解熱に:
1回量として3〜5gを、水400ccで1/2にまでせんじて飲む。苦味があるので、服用する直前に砂糖を加えるとよい。砂糖量はコーヒー用スプー ンで軽く1杯程度に(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)(画像はこちら
8464 カラムシとは 本州、四国、九州、沖縄の原野に自生する多年草。原産地がは っきりしていないが、インド、中国とアジア大陸に繊維植物とし て、古い時代から栽培されてきた。わが国でも早くから栽培されており、現在は野生化し、帰化植物となっている。茎は直立に1〜1.5mに伸び、円柱形で、外皮は灰褐色であらい毛が生える。葉は長柄があって互生し、広卵形で先端がとがり、縁に鋸歯があり、裏面には白色の綿毛が密生する。8〜9月に開花。雌雄同株で、雄花は黄白色、花被片4枚、雄しべ4個で、下部の葉腋に円錐状に集まって穂状に下垂する。雌花の穂は上部の葉腋につく。

名前の由来:深津 正著『植物和名語源新考』によると、カラムシのカラは韓で、古代の朝鮮をあらわし、ムシは朝鮮語のこの植物の名、朝鮮より渡来したムシの意味としている。別名のマオは真麻で、真正の麻をあらわし、一般に苧麻(ちょま)の漢名をあてる。コロモグサは衣草で、カラムシの繊維で布をつくったことから。

わが国最古の繊維植物:山口県下関市の遺跡より、紀元前300年の弥生式土器時代のカラムシの繊維による布の断片が出土してい る。これは、わが国最初の織物で、その後に、大麻やカジノキも利用された。中世末期になってワタ(草綿)が渡来するまでは、 苧麻は衣類の繊維材料として需要が多かった。

採取時期と調整法:根茎や根を冬から翌年の春の間にとり、水洗いして日干しに。また、生の根茎を水洗いして、そのまま利用。

成分:医薬としての薬効成分は精査されていない。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量約5gを水400〜600ccで1/2量に煎じて服用する。
はれものに:生の根茎を砕き、そのまま患部にはる。
★『救民妙薬集』(1693年)には打ち身(打撲傷)の薬にカラムシの茎葉をよくほぐして、黒焼きにし、酒で飲むことを記している(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8465 ニオイヒバとは
 北米東部の山岳地帯原産の針葉樹。わが国には明治中期に輸入され、庭木として各地で栽培されるが、寒気に強く、特に、東北地方から北海道に移植された。
高さ約20mになり、樹形は円錐状で美しい。枝は赤褐色、または灰緑色。葉は鱗片状で上面濃緑色、下面は青みを帯びた緑色。葉をもむと芳香がある。黄色に見える楕円形のものは毬果で、熟して褐色になり、長さ8〜10mm。雌雄同株。

国内の同属は二種のみ:
ニオイヒバはクロベ属に属し、わが国特産で本州(青森以南)と四国に自生するクロベと、北米原産の二 オイヒバのみが、国内で見られるクロベ属である。クロベは樹形 が庭木に向かないため、特殊なところ以外では栽培されない。クロベは本州(青森県以南)と四国に自生する。

名前の由来:葉をもむと香水のような芳香があり、葉がヒバ(ヒ ノキ)に似ているのでつけられた名。植木屋筋では香水ヒノキと 呼んでいる。英名ではホワイトシーダーと呼ぶ。

ツヤ油に:淡緑黄色のツヤ油は、ニオイヒバ葉を原料にして得た精油で、独特の樟脳様の香りのある油状の液体。ピネン、ツヨン、ボルネオールなど、またはそのエステルを含んでいる。

採取時期と調整法:必要時に葉を採取し、陰干しにする。

成分:葉にはイソクエルチトリン、d‐カテコール、ヒノキフラボンのほか、ミリセチン、クエルセチン、ケンフエロールなどの配糖体を含み、オイデスモール、カルバクロールも知られ、材部にはガラクトグルコマンナン、オクシデンタロールが含まれる。

薬効と用い方:
寄生性皮膚病に:陰干しした葉5〜10g1回2〜4gを水600ccで約1/3量に煎じた汁で患部を洗う。
利尿、興奮剤に:陰干し葉5〜10gを1日量とし、水600ccで1/2にせんじ何回かに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8466 クロマメノキとは 北海道、本州(中部地方より以北)の日当たりのよい高層の湿原に自生する。千島、サハリン、朝鮮半島のほか、北半球に分布。落葉低木で、10〜80cmの高さとなり、よく分枝する。葉は倒卵形〜倒卵円形で、厚く、長さ1.5〜2cmで、先端は丸く、わずかにへこむか、突出することもある。基部はくさび形で、短い柄によって互生する。縁に鋸歯がなく、葉脈は裏面に隆起し表面、裏面とも無毛。花は6〜7月に開き、花冠はつぼ形で上部は浅く5 裂し、緑白色か淡紅色で、下向きにつく。雄しべ10個、葯に2本の長い突起がある。果実は球形で、藍黒色に熟し、白粉をかぶ る。果実は甘、酸味があって食用となる。

名前の由来:果実が黒大豆に似ているので、この名となる。別名 のアサマブドウは信州浅間山に多いことから。コウザンブドウは高山に多いことから。ダケグミは岳グミの意。クロモモは果実の黒いことから。モモ、グミ、ブドウの名前がつくのは、果物として食べられていたことをあらわしている。

採取時期と調整法:夏によく熟した果実を、きずをつけないように採取し、さっと水洗いしてから水けをきり、生のままを用いる。きずをつけると、薬酒がきれいに仕上がりにくい。

成分:果汁は青黒色で、蔗糖、転化糖、ガラクトース、リンゴ酸、 多量のアントシアン系の色素ウルギノシンを含んでいる。葉には フラボン配糖のケルセチン、ウルソール酸を含む。

薬効と用い方:
疲労回復(健康薬酒)に:
果実500g、グラニュー糖200g、ホワイトリカー1.8g、梅酒用の広口びんを用意する。容器の中に果実をきずをつけないように静かに入れて、次にグラニュー糖、最後にホワィトリカーを注ぎ、軽く蓋をする。冷暗の場所に3〜4ヵ月間静置したのち、 1回に20〜40ccを限度に飲む。果実は入れたままでよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8467 アスナロとは 本州、四国、九州の山地に自生する常緑針葉樹でわが国特産。 樹高30mに達するものもある。樹皮は赤褐色か黒褐色で縦裂し長い鱗片状に裂ける。葉はヒノキ、サワラに似て大形、質はかたく、大きい鱗状で光沢があり、上面は緑色、下面は白みを帯び る。花は5月に開花。毬果は角のある球形で、初め白緑色であるが、熟すると淡褐色となる。材質はよいが、精油を含むので特異 臭があり一般にきらわれる。水温に耐える性質を利用し、風呂桶に適している。材部より得たアスナロ油が肺結核の治療薬に効く とさわがれたことがあった。

名前の由来:ヒノキの葉によく似ているので、平安時代にアスハ ヒノキと呼ばれ、これがアスナロウに変化、さらに今日のアスナ ロの4文字に呼ばれるようになった。この説が一般に認められている。一方では、平安以前の呼び名は阿須檜(あすひ)で、この阿須は明日ではなく、良質という意味の古代語アテであろうという。アスヒは「良質の檜」の意義の名となるが、この詮索のきっかけになっ たのは、アスナロが、今日、地方によっては、アテまたはアテヒの古名を残しているところがあるからであった。このことについては、中村浩著『植物名の由来』(1980年)に説明されている。

採取時期と調整法:秋に葉を採取し、水洗い後、陰干しとする。

成分:葉にヒノキフラボン、スチアドピチレン、ソテツフラボ ン、イソクエルチトリンなどを含むほか、肝臓保護成分ジオキシポドフェロトキシンの研究発表が、日本生薬学会第24回年会 (1977年)で、東北大学ヒキノヒロシ教授らによって行われている。

薬効と用い方:
肝炎に:
古くから黄疸療法に用いられてきているので、肝炎の予防と治療に、1日量5〜 10gの乾燥葉を水600ccで1/2にせんじ服用。
解熱に:上と同じ分量で服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8468 カワラサイコとは 北海道(渡島半島)、本州、四国、九州各地の河原や海岸砂地 など、日当たりのよい乾燥地に生える多年草。朝鮮半島、中国、 台湾などに分布する。  根は太くて、地中に深く伸び、茎は根元からそう生し、高さ30 〜60cmになる。根出葉は長柄があり、羽状複葉に深裂する。小葉は7〜14対につき、裏面に白い綿毛が密生する。表面はほとんど無毛で、光沢がある。茎に出る葉は、小形で葉柄も短い。葉柄の 根元に切れ込みのある托葉がつく。茎、葉柄とも長い毛が密生す る。花は6〜8月に、黄色5弁花を開き、集散花序につく。がく 片5枚、雄しべは多数。

名前の由来:河原柴胡の意味である。地下部の根が漢薬の柴胡に似ているということからきた名である。柴胡はセリ科のミシマサイコの根であり、カワラサイコとは薬効の点では、無関係のものである。

柴胡の代用は無理:従来、セリ科のミシマサイコの代用にされていたこともあったが、柴胡のような効果はない。解熱に根を、通経に全草を利用した時代もあったが、そのような効果も期待でき ない。『救民妙薬集』(1693年)には「俗にいうオコリのとき河原柴胡3匁、つねのごとくせんじ、もちひてよし」とあるが、これも効果については疑問がある。

採取時期と調整法:秋に根を採取し、水洗い後に、刻んでから日干しにする。

成分:タンニンを含むほかは、まだ研究されていない。

薬効と用い方:
下痢に:
乾燥根を1日量として5〜8g、水600ccで1/2量に煎じて服用する。ロ内炎に:上と同じ分量にてせんじた汁をやや冷めかげんのとき、これでうがいをする。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8469 ハリギリとは 北海道、本州、四国、九州の山地に自生する落葉高木。朝鮮半島、中国、千島、サハリンに分布。幹は直立に伸び、大きいものでは30mにもなる。枝は刺針が多い。葉は枝の先のほうに互生 し、葉柄は10〜30cmと長く、5〜9に裂けて掌状葉となり、長さ、幅共に10〜30cmと大きく、基部は心形。葉質は厚い。花は7 〜8月、黄緑色の小花多数を球形の散形花序につける。花弁5枚。雄しべ5個は花弁より長く突き出す。果実は球形で熟すと黒くなる。剌針はその年に 伸びた枝にあるが、老木になると幹の剌針がなくなる。

名前の由来:葉が桐の葉に似て、樹幹、枝にとげの多いことから この名となった。別名センノキは関東以北に多い呼び名で、瀬の 木の瀬をセンと読ませたことから。『和訓栞』に「セノキはタラの奥州の方言で仙台の茂崎山にこの木多く、瀬の木の義なり」と あり、現在ハリギリの別名センノキ以外に、セノキ、セノギ、セイノキ、セイヌキ、セヌキなど瀬に関連する方言が残っている。 同じ科のタラノキ、葉は異にするが、枝に刺針の出るのがよく似 るので、センノキの名が、ハリギリの別名となった。

採取時期と調整法:必要時に根皮または樹皮を採取するが、夏の高温多湿のときのほうが採取しやすい。そのまま日干しに。

成分:樹皮と根皮にカロトキシン、カロサポニンを含み、加水分解するとヘデラゲニンを生ずる。これらには去痰作用がある。

薬効と用い方:
去痰に:
根皮約1日量として5gを水400〜600ccで1/2にせんじ服用する。
打撲、くじき、リウマチに:樹皮10〜20gを水600ccで1/2にせんじ、この汁が冷めかげんのとき、タオルなどに含ませ、直接に患部に当てて湿布する。
食用に:若葉はおひたしに。山菜として広く利用されている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8470 ヤブニッケイとは 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄、小笠原の海岸に近い暖地に自生する常緑高木。朝鮮半島(南部)、中国(南部)、台湾に分布する。幹は15mに伸び、樹皮は灰黒色、小枝は緑色。葉は互生するが、小枝の先端では対生。緑には鋸歯がなく多少波状になる。葉は厚く、革質で、長楕円形か、ときに狭卵形で長さ約12cm。先端は短くとがり、基部は挟い。表面は濃緑色で光沢があり、裏面は粉白色で白みを帯び、はっきりとした3本の脈があり、もめばかすかな樟 脳臭がある。  
花は6月中旬、新しく伸びた小枝の葉鎧より長い柄を出し、数個の淡黄色6花被の小花を散形花序につける。花被片の内側は短毛が生え、雄しべ12個が4輪に並び、外側の第1輪、第2輪の雄しべはいずれも4室の葯(花粉粒を入れる室)があって、それぞれの葯に弁がついている。第3、4輪の内側に並ぶ雄しべは、花粉をつくらない 仮雄蕊である。果実は楕円形で長さ約12mm。12月ころに紫黒色にな って成熟し、内に種子1個を入れ、ツグミ、ヒヨドリが好んで食べる。

名前の由来:植物の名に、ヤブの語がつくものがあり、その大部分は役に立たないものを意味している。植物とは違うが、ヤブ医者の表現もその一つであろう。この樹木になぜ、かんばしくないヤブの語がついたのか。それは一方にこれに似ていて、たいへん役に立つ樹木があるからである。同じクスノキ科の常緑樹のニッケイで、葉をもめば香りが強く、樹皮にも芳香があり、地下の根の皮はさらに強い香りがある。この根皮は肉桂という生薬名で、健胃、整腸薬に用いられている。ヤブニッケイには、芳香成分をほとんど含まないため、ニッケイのように役には立たないというところから、この名前となった。  
別名のコガは、コガノキ、クロコガなど今日に残る古名で、わが国最初の漢和字書『新撰字鏡』(898〜901年)には木へんに賀と書き、コガノキと読ませている。同じクスノ本科のタブノキもコガノキと呼んでいた。クスタブはクスノキとタブノキに似ていることから、アブラダモは果実から油がとれることから。また、松浦桂(マツラケイと読む)は、ヤブニッケイの佐賀 県北部松浦湾に臨む松浦付近の呼び名である。神奈川県逗子市周辺の山間地ではバカオオキ(馬鹿の大木の意)の方言で呼んでいる。 中国では天竺桂と書く。

肉桂脂の利用:種子を圧搾して得た脂肪は、低温(32〜35度)でとける性質があり、これを肉桂脂と呼ぶ。粗製の肉桂脂は酸性度が強く、酸度を下げて脱色すると、淡黄色のもろいかたまりになる。太平洋戦争のころ、カカオ豆の輸入がストップして、チョコレートが姿を消した。そのとき、いちはやく肉桂脂に着目し、これで代用チョコレートを製造した業者があった。カカオ豆はアフリカ、南米など熱帯産のカカオノキから得たもので、これを圧搾してカカオ脂を製造する。精製したものは黄白色で、かたくてもろいかたまりで、 30〜34度でとける。肉桂脂がこれに近い温度でとけるのでカカオ脂の代用となり、代用チョコレートが作られた。ヤブと軽視されていたこのニッケイ、そのころは大いに人のために役立ったわけである。

成分:葉、樹皮、根皮ともニッケイのような香りがほとんどない が、精油を含み、シネオール、オイゲノール、フェランドレンなどが含まれる。また、肉桂脂はカプリルジラウリンやオレイン酸、ミ リスチン酸などのグリセリドを主要成分とする脂肪である。

薬効と用い方:
ニッケイに含まれる桂アルデヒドは存在しないため、芳香性健胃薬には使用しない。  
脂肪の性質が似ているカカオ脂は低温でとけることを応用して、 坐薬の原料にする。現在、肉桂脂は坐薬にもチョコレートにも使われないが、カカオ脂ととける温度が似ていることに注目すべきである(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8471 ホソバオケラとは(蒼朮/そうじゅつ) 中国山東省以南、江西省までと、四川省に自生する多年草で、わが国産のオケラによく似ている。江戸時代中期に渡来し、当時大和地方や尾張、また佐渡にも栽培され、現在佐渡にわずかに残っている。茎は直立して伸び、高さ約1mになる。根茎は塊状。葉は卵状披針形か狭い披針形で長さ3〜3.5cm、幅1〜1.5cm。先端は鋭くとがり、基部は狭く、縁には針のようにとがった鋸歯があって、上面は濃緑色、革質でかたく、光沢があり、下面は淡緑色で葉脈が隆起す る。茎の下部に出る葉は3裂し、縁に鋸歯がある。花は9〜10月、 茎や葉腋より花柄を伸ばし、それらの先端に頭状花序をつける。外側には葉状の葯が1列に並び、羽状に深裂する。花冠は管状花のみからなり、白色で先端は5裂する。雌雄異株で、果実はそう果(痩果)を結ぶが、わが国で栽培するのは雄株がなく、雌株のみで果実はできない。株分けによって繁殖する。わが国での生産は少ないため、主に中国産の生薬蒼朮を輸入している。

名前の由来:葉が細いオケラの意味でこの名となるが、江戸中期から佐渡に栽培されていたので、サドオケラの名もある。中国では、 一般に生きた生の植物名を茅蒼朮(ぼうそうじゅつ)と書く。

本草書に見る白朮、蒼朮:『和名抄』(932年)には朮をオケラとし、 薊(あざみ)に似て山に生ずるから別名山薊というとし、『多識編』(1631年)で は白朮をオケラ、この異名を山薊、また別に蒼朮をアカオケラとしている。『大和本草』(1708年)では、白朮、蒼朮の項目で「白朮は脾胃を 強くして飲食を進め、虚を補ひ、汗や瀉を止めるとし、蒼朮は汗を発し、風寒湿を去り、気を下し、痰食水を消す」と薬効を記してあ る。『和漢三才図会』(1713年)は以前は朮と称して蒼朮、白朮と区別しなかったが、中国から蒼朮が渡来してから区別するようになったと述べている。『物類品シツ』(1763年)には白朮をオケラとし、蒼朮を一名 赤朮とし「享保年間種子を伝う、和産のオケラに似る。花は白色で、根の味香烈なり、この物種子を植えても生じがたし、根を分つこと白朮のごとくにして生じ易し」とある。  
江戸時代に入って、蒼朮の苗が中国より渡来し、奈良を中心に栽培されるようになって、生薬として白朮、蒼朮を区別していた。その後この区別が乱れて、わが国ではオケラの根茎の外側をナイフなどで削り、乾燥して白く仕上げたものを白朮、削らずにそのまま乾燥したものを蒼朮だとする時代もあった。

『日本薬局方』と蒼朮:
昭和26年3月公布の『第六改正日本薬局方』 (1951年)に初めてオケラ(蒼朮)が収載された。これはオケラの根茎を乾燥し、茎や根をできるだけ除いたもので、これを蒼朮としている。『第七改正の局方』(1962年)も同じものをあげ、『第ハ改正の局方』 (1971年)に初めて蒼朮をホソバオケラまたはその変種の根茎であるとした。このときからオケラを白朮として区別し、記載することになる。江戸時代、またそれ以前から白朮、蒼朮を区別していたわが国で、日本薬局方は昭和26年(1951年)に初めてオケラを、それから20年目の昭和46年(1971年)にようやくホソバオケラをとりあげた。『多識編』の時代からすると300年もたってぃた。あまりにも時間がかかりすぎたとぃえるのではないか。

採取時期と調整法:秋に根茎をとり、水洗い後刻んでから陰干しにして乾燥したものが、生薬蒼朮である。

成分:ホソバオケラの根茎に含まれるもののみをあげると、アトラクチロジン、アトラクチロジノール、ヒネゾール、βーオイデスモ ール、エレモールなどである。

薬効と用い方:
健胃、整腸、利尿、発汗に:
蒼朮は単独では使わず、次の漢方処方などに用ぃる。
平胃散として、蒼朮4g、厚朴、陳皮各3g、大棗2g、甘草1g、乾生姜0.5 〜1gを1日量として、水600ccからよ1/2量までにせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8472 ヤナギタデとは 北海道より沖縄まで、わが国各地の水湿地に自生する1年草。台湾、中国、北半球の温帯に広く分布。春に発芽し、秋に花をつけ、 霜がおりるころに枯れる。茎は枝分かれし、高さ40〜80cmに伸びて無毛。葉は披針形で長さ5〜12cm、両端とも細くなり、短い柄によ って互生する。葉質は薄く、両面に腺点があり、縁に短毛が生える。また中肋に沿って短毛があるが、ときに無毛もある。葉鞘は筒状で、縁に毛が生える。葉をかめば辛味がある。  
花は7〜10月に開き、穂状花序に小花をまばらにつけ、のちにたれ下がる。花被は花弁がなく、がくのみで4〜5裂し、淡紅色で、 透明な腺点が多い。果実は3稜形の暗褐色で光沢のないそう果(痩果)を結ぶ。

名前の由来:葉をかむと、強い辛みが口中に広がって、しばらく消えない。口中が辛みで「ただれる」という意味で、タデの名ができ て、葉がヤナギ類に似ているのでヤナギタデになった。漢名は蓼(たで)。
カクラングサは霍乱草で辛いことから。ウマノコショウは馬の胡椒で、辛いことをあらわしている。別名にタデとあるように、野生のヤナギタデを単にタデと呼ぶことが多い。

古代の蓼:奈良時代の歌に「小児等 草はな苅りそ ハ穂蓼(やはたたで)を 穂積のあそが腋草を苅れ」がある。あなたがた、草を苅るついでに穂の多く出ている蓼を苅りとってくださいという意。『本草和名』 (918年)は蓼実に、紫蓼、香蓼、青蓼をあげ、人は食べるとし、『和名抄』(932年)は姜蒜(きょうびる)類の中に蓼をあげ、和名をタデとし、「人家恒食之 また紫蓼もある」と記している。
 平安時代の歌人藤原定案(京極中納言とも呼ばれ、日記『明月記』は有名)の歌に、「北山に松たけ狩に行く人は 加茂の川原に  穂蓼ぞつむ」 とあるように、奈良、平安のころには、川原や水湿地に生える野生 の蓼を姜蒜類(今日のスパイス)に用いていた。

タデの栽培品種:タデとして栽培されるのはヤナギタデである。こ れを基本種としてベニタデが多く生産され、静岡、愛知、広島などが古くからの栽培地である。子葉が紅色の芽物用として常時出荷され、魚類の生ぐささを消し、魚毒にも効があるとして日本料理のつまに用いられる。子葉が緑色のものはアオタデ。アザブタデ(麻布蓼・江戸蓼ともいう)は花が小さく、葉は狭くて紫色を帯び、多数分岐して束生状になる。
ホソバタデ(細葉蓼・薩摩蓼ともいう)は葉は線形、紫色などと栽培品種が多い。

赤穂の名産トウタデ:『本草網目啓蒙』(1803年)には「若葉は紫色、基部は緑色なり、味辛辣食用に堪ゆ、播州赤穂のトウタデと呼ぶ名産なり」とあって、さらに「形ヤナギタデの如し、若葉は紫色、味きわめて辛く、長ずれば脚葉は緑色、秋にいたれば穂を生じて赤し、 枯れんとする寸前全草皆赤し」とあり、赤穂の地名は、これに由来するとしている。赤穂出身で娘時代そこで過ごした東京在住の年配のかたに尋ねたところ、記憶にないとのこと。明治以降栽培がすたれてしまったのであろうか。

成分:辛味成分はセスキテルペンアルデヒドのタデオナールとポリブジアール。茶菓にクエルセチン、ピネン、シネオール、フェラン ドレン、酢酸ボルネオール、テルピネオールなどがわずかにある。
ベ二タデにルチンとアントシアニンを含むという報告もある。

採取時期と調整法:ヤナギタデは各地に自生し、秋に茎葉が伸びたころに採取し、茎葉を水洗いして日干しに。また生のものも用いる。

薬効と用い方:
毒虫に刺されたときに:
生の葉を少量の塩でもみ、患部にすり込む。
暑気あたりに:乾燥した茎葉を一握りほど、水でせんじて、ほどよい温度になってから両足を浸すようにつける。服用はしない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8473 オリーブノキとは ヨーロッパ南部、アフリカ北部などの地中海沿岸地方か、シリア、トルコなどを原産地とする説がある。現在スペイン、イタリア、ギリシア、ポルトガルのほか、北米カルフォルニア、メキシコなどが主要な栽培地。わが国にもわずかであるが栽培される。高さ7〜10mになる常緑の小樹木。幹は枝分かれが多く、樹皮は灰緑色。葉は披針形で上面は暗緑色、下面は銀色か灰緑色で、革質でかたい。多くは対生するが、ときに互生もする。花は5〜7月、葉腋より、2〜3に分枝した花枝を伸ばし、総状花序に黄白花の小花多 数をつける。花冠は深く4裂し、芳香があり、雄しべ2、雌しべ1個。がくは小形で先端が浅く4裂する。果実は楕円体で中に1個の 種子を入れる。果実は初め緑色、のち黄色、秋には黒藍色となる。 果実収穫の適期は黄色に移りかねるころとされている。

名前の由来:英名のオリーブがそのまま和名となった。オレーフはオランダ語のOlijfから由来するが、わが国は近代西洋医学の原点 となったオランダ医学に影響されるところが大きく、この果実よりしぼりとった油を、『日本薬局方』に収載するにあたって、「オレーフ油」とし、ときに「オレフ油」と短縮した名称となった。その後、オリブ油またはオリーブ油と改名されたのは、昭和26年(1951) の『第六改正日本薬局方』からで、局方施行より64年目であった。

ホルトノキと平賀源内:和歌山市より南に約25q、湯浅湾に臨んで、湯浅の町がある。ここに浄土宗の深専寺があり、平賀源内が宝暦10年(1670年)7月、この寺に立ち寄り、境内のズクノキを見て、これぞホルトカルと申す木と、『紀州産物志』に記した。さらにこの木の実をしばった油がポルトガルの油、外科常用の品とも記してい る。オランダの本草書で読んでいたオリーブノキの絵を見ていた源内は、初めて見るズクノキを、オリーブノキと思い込んだのである。  さらに『物類品シツ』(1763年)の中で、外国産の実は大きいが、和産は小さい、だが全く同じ物とし、江戸に来ていたオランダ外科医ポルストルマンに和彦のこの実を見せたところ、本物と答えたとい う。源内はますます紀伊の方言のズクノキは、本物のホルトカルノキときめつけてしまった。ホルトカルノキは今日ホルトノキと呼ぶが、このようないきさつから、オリーブノキの別名としても残っている。これを本物と答えたオランダ医は、オリJブノキはオランダに栽培されていないので、実物を見ていなかったのではないか。ズクノキはズクノキ科の常緑樹で、今日ではホルトノキと呼ぶのを正名とし、むしろズクノキを別名としている。千葉県房総より東海、 南畿、山陽地方に自生し、オリーブとは関係のない別種である。

渡来と栽培:文久3年(1863年)に初めて輸入された記録があるが、間もなく枯死する。明治7年(1874)、サンフランシスコより苗木が入り、神戸市山手に植え、翌明治8年に小豆島に植える。明治12年フ ランスより小苗木が大量に入り、神戸市山元町の農商務省勧農局温帯植物試験場で植えつけて、各地に苗木を頒布する。このころよ り、神奈川、静岡、高知、長崎、宮崎などの諸県での栽培の結果はよくなくて、小豆島のみ成績がよいことがわかってくる。それは、開花期に梅雨期が重なると受粉の現像がよくないという結論であっ た。明治41年(1908)農商務省は小豆島に試験園を設けてオリーブノキの栽培に力を入れることになる。

採取時期と調整法:秋の初めに果実をとり、オリーブ油とする。

成分:脂肪油でオレイン酸、リノレン酸、パルミチン酸、アラキン酸、ステアリン酸などのグリセリドよりなる。冬期気温10度以下に なると、固形分を析出。加温すると融解する。

薬効と用い方:
オリープ油:
日やけむらを防ぐときの塗擦薬にするほか専門的は軟膏、乳剤など使用。食用油にも用いられる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8474 タチバナとは 本州(紀州、長門)、四国、九州、沖縄に自生する常緑樹。済州島、台湾に分布する。高さ2〜4mm。枝は3稜で緑色、刺針は 長さ2〜20mmで鋭くとがる。葉は狭卵形、先端はとがり、鈍いへこみがある。基部は広いくさび形。長さ3〜8cm、幅1.5〜3.5cm。 葉柄に狭い翼がある。花は6月に開花。白色花弁5枚で、芳香があり雄しべ20個。果実は径2〜2.8cmの扁球形で黄色に熟し、果肉は苦味と酸味があり、食用にならない。種子は倒卵形。

名前の由来:『古事記』や『日本書紀』にあるように、垂仁天皇の命を受けた田道間守が「常世の国」から持ち帰った「非時(ときじく)の香菓(かぐのこのみ)」がこれという。田道間守の名からタチバナとなったとい われている。『和名抄』(932年)は橘の漢名にタチバナの和名をあげ、『多識編』(1631)で橘をタチバナとし、いまは俗にミカンというと記している。このころよりミカンの名が出てきたものであろう。

類似のコウジとフクレミカン:コウジミカンは果実の径4〜5cmで甘みがある。フクレミカンはコウジミカンとほぼ同じ果実径4〜5cmで 甘みがあり、果肉と果皮が離れやすくなっている。タチバナは2 〜3cmで果実の径は小さく、酸味が強い。コウジ、フクレともタチバナより変化したものであろう。平安神宮の右近の橘は、コウジミカンかフクレミカンのいずれかではないか。

成分:酸味はクエン酸である。

薬効と用い方:
食欲増進に:
広ロびんに1/3ほど果肉を入れて、グラニュー糖はなるべく控えめに加えて、ホワイトリカーを満たしてタチバナ酒として約20〜40ccを食前に飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8475 レモンとは 西部ヒマラヤ、インドの原産の常緑樹で、高さ6〜7mの小木。根元より幹を多く出す。葉は厚く卵状楕円形で互生し、葉柄には翼が出ない。枝には剌針が多い。つぼみは紅色。花弁は4〜 5枚。肉質で、上部は白色、下部の外側は淡紅紫色。芳香が強い。果実は紡錘形で、両端はとがる。輪切りにすると、10〜12室 があり、多汁で芳香がある。わが国では5月に開花し、秋に収穫。イタリア、スペイン、ポルトガル、北米カルフォルニア、ブラジルなどが主な産地で、これらの地方では花が年じゅう開き、 果実の収穫も連続して行われる。

名前の由来:英名のレモンがそのまま和名となる。リモンは、古名で、これよりレモンとなった。イタリー、スペインなどでは現在もリモンである。学名は古名のリモンに由来している。

わが国での栽培:文久元年(1861)の12月、外国奉行水野忠徳等が 軍艦咸陽丸(かんようまる)で小笠原島に渡ると、この樹が繁殖して果実をつけていたとの報告が残っている。これはそれより8年前、嘉永6年(1853)6月ペリーが浦賀に来航した当時、小笠原島に滞泊していたことがあり、食事のあと、種子が捨てられて繁殖したものとされている。明治の終わりころから、熊本、和歌山、広島、香川の諸県にわずかに栽培される。わが国は高温、多湿のため、壊瘍病(かいようびょう)が発生しやすく生産は伸びない。

成分:果皮にdーリモニン、シトラール、シトロネラール、酢酸ゲラニオール、テルピネオールなどを含み、果汁中にはクエン酸、ビタミンCを含む。特にこのCは100g中90mgで果物中でも屈指の量である。

薬効と用い方:
芳香性健胃薬に:
レモンの汁をしぼり、水で薄めて飲む。レモン1個の約1/6量の汁を服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8476 ヤクシソウとは 北海道、本州、四国、九州の日当たりのよい原野、路傍に自生する2年草。朝鮮半島、台湾、中国、インドネシア、インドに分布する。茎は高さ30〜100cmで枝分かれし、紫色の斑点がある。葉はへら状卵形で、裏面は白みを帯び、葉質は薄く、緑に浅い鋸歯があり、基部は丸い耳状で茎を抱くようについて互生する。茎葉とも無毛で、切ると白色の乳液を出す。花は8〜11月、花茎の先に7〜8個の黄色の頭花をつける。総苞は濃緑色。苞は2列に並ぶ。そう果は黒褐色で、短毛が生え、冠毛は白色で長さ約3.5cm。

名前の由来:薬師草のことである。薬師は医王ともいう。病気や災難を除く薬師如来を本尊とする一つの信仰であって、薬師如来 の草に由来する。『和訓栞』によると、藤原定家(平安時代の 歌人、日記『明月記』の著者)の鷹歌(鷹狩りの鷹を詠んだ歌)の中に、薬師草のことを、青薬と呼んでいると記してあるが、鷹とこの草との関係についてはふれていない。別名のチチクサ、ウサギノチチは、茎葉を切ると白色乳汁が出ることから。熊本地方のウマゴヤシの方言は、馬が好んで食べることから。ニガミグサは全草に苦みがあることから。

採取時期と調整法:秋の開花期に頭花と花茎をとり、日干しに。

成分:酢酸ゲルマニシイル、酢酸タラクサステイル、βージ トステロール、ヘキサコザノールなどの成分が、昭和41年(1966) の薬学雑誌に東北大学医学都薬学科によって報告された。βーアミリン、αーアミリン、パラフィン、ヘキサコザノールなどの報告は、昭和57年(1982)の薬学雑誌に昭和薬科大学植物化学教室が発表している。

薬効と用い方:
はれものに:
よく乾燥した頭花と、ゴマ油にひたひたになるように漬け、この油を直接はれものに塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8477 フウトウカズラとは(フウトウカヅラ) 関東南部より四国、九州、沖縄までの暖地の海岸に近い樹林の中やへりに自生する常緑のつる性木本。雌雄異株。朝鮮半島南 部、台湾、中国南部の福建、浙江、広東の各省に分布する。  
つるは緑色。葉は長卵形で厚く、暗緑色で、光沢はなく、先端はとがり、基部は浅く心形で、互生する。若葉は丸みのある心臓形で、裏面に短毛が生えるが、成葉は無毛となる。5〜6月、長さ約8cmの黄色の花穂をたれる。雄花、雌花ともに花被はなく、 花軸に半ば凹入するように入る。12月ころ、果実は赤く熟し、辛みはない。

名前の由来:中国南部に産する「海風藤(かいふうとう)」や「風藤(ふうとう)」と呼ぶものはフウトウカズラの中国名「細葉青ロウ藤」の茎葉を乾燥した生薬 の名である。生薬名「風藤」からフウトウカズラの和名となる。

国産には少ないコショウ科:わが国にあるコショウ科の自生種は、このフウトウカズラと、沖縄にみられるヒハツモドキの二種類のみである。

『和漢三才図会』と沖縄民間療法:『和漢三才図会』(1713年)に、「南藤は能く諸風を治すので、風藤の名がある」としている。諸風とは、神経痛、リウマチ、腰痛などの痛みのある病気をさしたも の。沖縄地方では、カゼ、神経痛、リウマチに茎葉を水でせんじて服用するとか、打撲傷などには葉をせんじた汁で患部を洗う、
または湿布するという民間療法がある。

採取時期と調整法:必要時に、葉をつけたつるをとり、こまかく刻んでから陰干しにする。

成分:アミド体のフウトウアミドが知られ、その他の成分はまだわかっていない。

薬効と用い方:
腰痛に:
乾燥したものを約100g、木綿の袋に入れて風呂に入れると良い(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8478 モリアザミとは 本州、四国、九州の乾燥地の草原に自生する多年草。わが国の特産。茎は60〜100cmに伸び、下部の葉は開花時にもあって、長楕円形で羽状に深い切れ込みがある。花は8〜10月、紅紫色の頭花が上向きにつき、総苞の緑の外片は長く伸び、頭花の基部に車座につくのが特徴。根はゴボウ根のように垂直に伸び、径1〜1.5cm、長さ20〜30cmでゴボウより小さい。各地に栽培されている。

名前の由来:森に自生するアザミという意味である。別名のゴボウアザミは、花はアザミ類に似ていて、根がゴボウのようだというのでつけられた。

根は漬け物に:ヤマゴボウ(山牛蒡)の名で漬け物が市販されている、これは、このモリアザミの根をみそ漬け、その他の漬け物にしたものである。長野県佐久地方、下伊那から松本平にかけて多く栽培される。島根県大田地方では「三瓶ゴボウ」、金沢市付近では「白山ゴボウ」、愛知県奥三河地方では「菊ゴボウ」の名で呼ぶが、いずれもモリアザミの根のことで、かりかりと歯切れがよく、においも風味も独特である。

ヤマゴボウ科のヤマゴボウとは別:漬け物にするキク科モリアザミとヤマゴボウ科のヤマゴボウとは同名異種で、ヤマゴボウ科のものは根を漬け物にしたり、その他の方法で食用にすることはない。

採取時期と調整法:秋から翌春のうちに、必要時に根をとり、すばやく水洗いしてから刻んで、日干しにする。成分の多糖類のイヌリンが水にとけやすいので、水洗いを早くするのがコツ。

成分:根に多糖類を含むという報告があるほかは、まだ精査され ていない。

薬効と用い方:
健胃に:
乾燥根を1日量として約5g、水400〜600ccで1/2量にまでせんじ服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8479 メナモミとは 北海道、本州、四国、九州など各地の原野、荒地などに自生する1年草。朝鮮半島、中国に分布。茎は直立して1mほどに伸び、白毛が密生する。葉は対生し、卵形か三角状卵形で、3本の太い葉脈があって、脈の上には毛が密生する。下部の葉は、開花 時には枯れる。9〜10月に開花。黄色の頭花を枝先に散房状につける。総苞片5個はへら形で、花柄とともに腺毛が密生して、強 い粘りけがある。

名前の由来:別名にナモミがある。『和名抄』(932年)にはこれを 「蒼耳(そうじ)」としている。これは、キク科のオナモミのことで奈良、平安時代に、強壮薬の神麹(しんさく)をつくるとき、米こうじ、アズキ、カワラニンジンその他の材料の ほかに、オナモミの未熟の実や葉をもんで、その汁を加え、発酵してつくった。オナモミをもむ、このことから別名ナモミ(菜もみ)となった。のちに、これより小形の、ナモミを雌ナモミと名づけたのである。オナモミは大形の意をあらわして雄の呼び名をつけた。モチナモミは餅ナモミで果実が粘ることから。イシモチ も同じ。アキボコリは、秋になると、この果実が衣類のあちこちに、ほこりのようにつくことから『多識編』(1631年)に、「今案(いまあんずる)に米那毛美(めなもみ)と云う」と記している。ナモミ(オナモミ)は古くから知られていたが、メナモミはあとになって知られるようになったのであろう。

採取時期と調整法:夏から秋に地上部をとり、水洗い後日干し。

成分:東京理科大学薬学部の村上孝夫教授らによって、昭和47〜48年(1972〜1973)に日本生薬学会で、ジテルペノイドの6種類を抽出し、有機化学的な構造を決定したと発表されている。

薬効と用い方:
はれものに:
1日量として約5〜10gを、水400〜600ccで1/2量にせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8480 ミソナオシとは 伊豆の大島、三宅島に、または東海地方より沖縄までの西南の暖地に見られ、特に山地の林の緑や路傍に自生する半低木。朝鮮半島(南部),
中国(南部)、東南アジアに広く分布する。高さは 30〜90cm。若枝は緑色、下部は木質で、多少毛が生える。葉は3出複葉で、3枚ある複葉のうち、中央の小葉が他の2枚より長 い。葉の下面と葉柄にこまかい毛が生える。  
開花期は8〜9月で、枝の上部の葉腋より花軸を出し、白色蝶形花を穂状につけ、果実はさや果を結び、扁平で4〜6の節があ り、かぎ状の毛が密生する。

名前の由来:小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1803年)で「小木の如し。春新葉を生ず。形細長く南天燭葉に似て、三葉一拠に集りて、萩の如く、黒みて光りあり。此葉よく虫を殺す故に、此葉を末とな し・味噌醤油の中に入れば虫生せず」とある。この茎葉は味噌醤 油の変敗を防ぐために用いられたので、「味噌直し」の名となる。  
ミソクサの別名は、味噌草で、みその腐敗を防ぐのに使用したことからきている。

中国では:漢名は小槐花(しょうかいか)で、ミソナオシの枝葉を乾燥して、生 薬名青酒甕(せいしゅおう)と書き、利尿薬に用いている。

採取時期と調整法:夏に葉のみをとるか、枝先のやわらかい部分ならば、枝を含めた葉をとって、水洗い後に日干しにする。

成分:茎葉にはアピゲニンのフラボン配糖体などを含んでいる。

薬効と用い方:
産後の腹痛に:
乾燥した葉を1日量として5〜10g、水600ccで1/2量に煎じて3回に分けて服用する。
食品防腐に:布製か合成繊維製品の網袋に乾燥葉を入れたまま、 みそやしょうゆの中に入れておく。ミソナオシの中には有害な物 質は含んでいない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8481 オオバタンキリマメとは 東北地方南部より九州までの山野に自生するつる性の多年草。
朝鮮半島南部にも分布する。茎には短毛が生え、他のものに絡みつくように伸びる。葉は小葉3枚の3出複葉。各小葉は広卵形で、先端は細くとがっている。葉質は薄く、裏面にはまばらに短毛がある。花は6〜9月、黄色の蝶形花を開き、がくは腺点と短毛がある。果実は豆果を結び、扁平で紅熟し、中には黒色の2種子ができる。

類似植物タンキリマメ:よく似たタンキリマメは、関東南部より 四国、九州、沖縄までに自生し、朝鮮半島(南部)、中国などオオバタンキリマメより広く分布する。小葉はやや厚く、倒卵形で、先端はとがらない。オオバタンキリマメの小葉は先が細くなり、先端はとがっている点が異なる。

名前の由来:タンキリマメに似て葉が大きいので、この名とな る。タンキリマメは、葉と果実をせんじてせきのときの痰をとり除く薬にすることに由来した名前。別名のトキリマメは、この小葉の先端が鋭くとがっていることに由来する。とがっていることを古い方言にトギスという。トギスがトギリになり、さらにそれよりトキリに変化したものと考えられる。

採取時期と調整法:秋に豆果を含めた全体をとり、水洗いしたの ち、日干しにする。

成分:精査されていない。

薬効と用い方:
健康茶に:
1日に5〜15gを、水600ccで1/2量にせんじて適当に分け服用する。
利尿に:健康茶と同じ分量と用法で服用するとよい。 ★類似植物のタンキリマメは、痰切り薬に用いるが、このオオバタンキリマメは、利尿薬に用いるが、痰をとる目的で使用することはない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8482 ナベナとは(和続断/わぞくだん) 本州、四国、九州の山地に生える壮大な2年草。中国、朝鮮半島に分布。茎は1〜1.5mの高さになり、全株に刺針状のあらい毛 が生え、さわるとざらつく。葉は対生し、羽状に裂け、裂片は楕円形で縁に鋸歯があり、表面に剌毛がある。花は8〜9月に開花。よく分枝した長い花柄の先に楕円形、径2〜3cmの頭状花をつける。総苞片は花の外側に1列に並び、線形で刺毛が生えて、 そり返り、花後も残る。花は紅紫色で、花冠は4裂し、4個の雄しべがある。

名前の由来:小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1803年)の中で、キク科 のヒゴタイを説明するのに、その花は「山芹菜の花毬(かきゅう)の如く」とし、山芹菜をナベナと読ませている。山芹は、当帰の別名として出てくるが、その下に葉の字をつけるとナベナになる。ナベは物を煮る鍋とみられるので、この草の若葉をなべでおひたしなどにしたり、また、なにかその他のものをつくるのになべを用 いたのではないか。

生薬続断:続断は、マツムシソウ科の中国産トウナベナの根を乾 燥したものであると『本草綱目』に記載され、また別種中国産ナ ベナも続断として用いられている。『中華人民共和国薬典』(中国薬局方)1977年版によると、続断はトウナベナ(川続断)の根を乾燥したものとしている。市場には代用生薬として、キク科のアザミ類の根、シソ科のオドリコソウやキセワタの根があるが、マツムシソウ科のトウナベナやナベナと同効とは考えられない。わが国のナベナの根は「和続断」である。

採取時期と調整法:夏〜秋に根をとり、水洗い後に日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
腰痛、はれもの痛に:
1日量として5〜10gを水600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8483 ベニバナボロギクとは アフリカ原産の1年草。太平洋戦争後、沖縄、北九州と北上してきて、現在では関東地方にまで及んだ帰化植物。茎は直立して 伸び、高さ30〜80cm。葉は互生し、倒卵形の長楕円状、濃緑色で 大小の鋸歯があり、上、下面とも伏した毛が生え、茎葉とも汁液に富みやわらかい。花は8〜10月に開き、枝の先に総状花序について、下向きにうなだれるように咲く。頭花は管状花のみからなり、管状花の先端がれんがのような紅色で、下部は白い。雌しべの先が二またになり、さらにその先が左右に細く巻くように曲がる。白色の長い冠毛がある。

名前の由来:花が紅色のボロギクの意味。ボロギクは、外観がよく似ているダンドボロギクに由来する。昭和8年(1933)愛知県段戸山で帰化植物のダンドボロギクが発見され、それに似ているので、この名となった。別名のナンヨウギクは、戦時中、南洋諸島 で若葉を春菊のかわりに食べ、南洋菊の名で呼ばれていた。

ダンドボロギクとの区別点:ダンドボロギクは、花序が下向きにならず上向きに咲く。葉は狭い披針形で、緑にあらい鋸歯があって、基部は茎を抱くようにつき、花は淡黄色か緑黄色で紅くはない。雌しべの先は2裂し、その先が巻くようにはならない。ベニバナボロギクは葉は幅広く、下のほうが羽状に深く裂け、基部は葉柄があって、茎を抱くようにはつかない。両種は同じキク科だが、ダンドボロギクはタケダグサ属、ベニバナボロギクはベニバ ナボロギク属に入り、それぞれ属を異にする。

採取時期と調整法:初夏から秋の間に、茎葉を刈りとって、水洗いしてから日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
利尿に:
乾燥した全草の5〜8gを1日量とし水600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8484 カワラニンジンとは(青藁/せいこう) 関東以南、四国、九州などの川岸、荒地などに自生する2年草。朝鮮半島、中国に分布する。茎は多くの枝を出して、高さ50 〜150cmになる。葉は羽状に深く裂け、茎葉とも毛は生えない。花は8〜9月に開花し、頭花は花のときには下向きにたれ、半球形で、径5〜6mm。総苞片は緑色で外側に腺点がある。花冠は管状花のみからなり、黄色。果実はそう果を結び、長さ約1mm。

名前の由来:葉が野菜のニンジンに似ていること、河原に生えることからこの名となった。

神麹(しんきく)と青藁(せいこう):古い時代に中国から「神麹」の製法が伝えられ、これに用いる材料の薬用植物も同時に渡来したものと見られている。「神麹」は米こうじ、オナモミ(蒼茸)、カワラニンジン(青藁)、ヤナギタデ(辨蓼)、アンズ(杏仁)、アズキ(赤小豆)を原料に、まずオナモミ、カワラニンジン、ヤナキタデを手でもんで青汁をしぼり、これに米こうじ、杏仁、赤小豆を加えて発酵させてつくった一種の酵母製剤、消化を助ける強壮剤である。オナモミとカワラニンジンはこのころに渡来し、のちに野生化して、 今日に至っているものであろう。

採取時期と調整法:夏の開花直前に全草を採取し、風通しのよいところで陰干しとする。また茎葉の生のままを用いる。

成分:全草に特異なにおいがあり、このにおいによる精油中に は、αーピネン、カンフェンを含み、その他、近年になって、クマリン類のスコポレチン、ダフネチン、ヘルニアリンを含 むとの発表があった(東京薬科大学下村裕子教授らによる)。

薬効と用い方:
解熱に:
乾燥葉を1回量3〜5gをとり、熱湯を注いで冷めないうちに服用。
疥癬(かいせん)に:生の茎葉をもみ、汁を患部に塗るか、乾燥したもの約50 〜100gを布袋に詰め、薬浴料として風呂に入れてはいる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8485 カサモチとは(和藁本/わこうほん) 中国原産で古くより薬用のために栽培され、本州西南部、近畿地方その他に野生化する多年草。中国に分布。茎は細くて短毛が生え、高さ約1mに伸びて分枝する。葉は2回羽状、裂片は卵形で鋸歯があり、両面に細毛がある。花は8〜10月、枝先に複数形 花序をつくり、多数の小白花を開く。総苞片と小総苞片は長楕円形でやや白い膜質。果実は長さ1.5〜2mmの扁球形で、無毛。

名前の由来:語源はよくわからない。藁本の漢名に、『本草和名』 (918年)はカサモチの和名をあげ、サワソラシを別名とし、『延喜 式』(927年)は栗本にふりがなをつけてカサモチとし、『和名抄』 (932)は藁本をサワソラシ、別名ソラシ。江戸初期の 『多識編』(1631年)は藁本をサワソラシとし、カサモチノの名はない。
『花彙』 (1763年)には藁本の図をのせ、和名サワソラシとし、「近ごろは花屋 や人家で栽培しているが、一種俗に和藁本と称しているものは馬芹で、これと混同してはいけない」と記してある。ここでいうウマゼリはヤブニンジンのことである。藁本の古名はカサモチ。のちにサワソラシとソラシの和名が長くつづき、江戸末期にカサモチが再び用いられるようになった。

採取時期と調整法:秋に根茎を採取し、水洗い後、陰干しにする。

成分:精油成分はプロペニール、アリールのジメトオキシベンゼンを含んでいる。市販品の生薬和藁本は、セリ科のヤブニンジンの根茎を用いているが、これにはアネトール、アニスアルデヒドなどが含まれている。

薬効と用い方:
鎮痙、鎮痛に:
頭痛、片頭痛などに漢方処方のキョカツキュウコウトウがよい。キョ活、川キュウ、藁本、ビャクシ、防風各3gを水でせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8486 チョウセンゴヨウとは(海松子/かいしょうし) 栃木、群馬両県の深山から秩父、赤石山系、木曾より飛騨、四国(愛媛県の高山)などに自生する常緑高木。朝鮮半島、中国に分布。幹は直立に伸び30mに達する。樹皮は灰褐色、のち鱗片状にはげる。若枝は太く、赤褐色の軟毛がある。葉は5本ずつ束生 し、長さ6〜12cm。雌雄同株。花は5月に開き、雌花は円錐状卵形で新しい枝の先につき淡褐色。成熟時には多くは 横向きになる。雄花は新しい枝の下部に密生し、毬果 は開花してから翌年10月に成熟。種子は倒卵形、長さ1〜1.5cmで大きく、淡褐色。

名前の由来:朝鮮半島に特に多く自生するので、この名となる。 別名チョウセンマツも同じ意味。オニゴョウマツは葉が5本一束に出るのはゴョウマツに同じだが、葉がそれより長いので、オニゴヨウマツの名となる。漢名は海松(かいしょう)。

江戸時代から輸入:『大和本草』(1708年)に記してあるところによれば、江戸時代には朝鮮半島から海松子が輸入されて、朝鮮産のほうが、わが国産のものよりも良質で、香味ともにすぐれているとされていたようである。

採取時期と調整法:10月ころに種子を採取するが、多くは市販品を求めるとよい。ナッツとして、松の実、海松子などの名で販売されている。

成分:脂肪、タンパク質が多い。落花生100g中に脂肪が49.5gであるのに対して、海松子は60.8g含まれている。脂肪はパルミチン酸やミリスチン酸などの脂肪酸。タンパタ質はアルギン、ヒスチジン、チロジン、グルタミン酸などのアミノ酸を含んでいる。

薬効と用い方:
滋養強壮に:
薬という観念を捨て、健康食としてピーナッツやアーモンドと同じように食べるとよい。
特有のヤニ臭があるが、生のまま食べる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8487 タラヨウとは 本州(東海地方以西)、四国、九州など、暖地の山地に自生する常緑高木。中国に分布する。雌雄別株。葉は短い柄があり、厚く革質で、大きい長楕円形。緑に鋭い鋸歯があり、長さ10〜18cmで、互生する。上面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色で、主脈が隆起する。樹皮は灰黒色で、枝は太く、レンズ状のこまかい突起がある。花は4〜5月に、葉腋に淡黄緑色花を多数つける。 雌花雄花ともがく片4、花弁4、雄しべ4。雄花は雌しべが発達しない。果実は径約8mmの球形で、10〜11月に紅熟する。

名前の由来:葉の裏に先のとがった棒などで文字を書くと、しばらくして、黒くなって文字が浮き上がってはっきりと見える。また、葉の一部を火であぶると、中心が茶褐色になった紋様があらわれる。これらの現象は、葉に含まれている酸化酵素の働きである。インドのヤシ科の貝多羅樹(ばいたらじゅ)の葉に経文を書いたという故事になぞらえて、多羅樹、そして多羅葉となる。

採取時期と調整法:常緑樹であるので、葉は必要時に採取すればよいが、中でも春から夏までの間がよい。水洗い後に刻んでから、日干しにする。

成分:樹皮にはとりもちを含み、その成分は、αーアミリン、βーアミリン、ステアリン酸からなる。果実は脂肪分を含み、ミリスチン、パルミチン、ステアリンなどの脂肪酸がある。葉にはβーアミリン、ルペオール、タラクセロール、ウバオール、βージトステロール、ウルソール酸などのトリペノイドを含んでいる。

薬効と用い方:
健康茶に:
利尿効果があるので、腎疾患の予防に常用すると良い。1日量として、3〜10gの干した葉を適当量の水に入れて、やかんで一度沸騰させてか ら、弱火でしばらくせんじ、1日に何回かに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8488 キンモクセイとは 中国原産の常緑小高木。古くから各地に観賞用として栽培されている。高さ5〜6mで、ときに10mを越す巨木もある。樹皮は灰褐色、幹はよく分枝する。葉は革質、長楕円形か披針形で、両端はとがり縁に細い鋸歯があるが、鋸歯がないこともある。短い葉柄により対生。雌雄異株。花は9〜10月、葉腋に花柄のある多数の橙黄色の小花を束生する。花冠は厚く、4裂し、雄しべは2個。強い芳香がある。わが国では雄株のみで、果実を結ばない。

名前の由来:『多識編』(1631年)に「木犀・今云毛久世伊」とあり、 木犀の漢名をモクセイと日本読みしたのが始まりとされる。これは花の白いギンモクセイであったようだ。『和漢三才図会」(1713年)では「単(ひとえ)の淡白色、此れ所謂る銀桂か。未だ黄及び紅なる者を見ず」。『花彙』(1763年)にはギンモクセイの図があり、『本草図譜』 (1828年)にはキンモクセイを記載し、「黄色の小花簇生し形四弁にして一分許なり、実は必ず結ばず」とある。花の淡黄色はウスギモクセイで漢名金桂。果実は楕円形で熟して紫黒色。ギンモクセイ もときに楕円形の果実を結ぶ。キンモクセイは関東、ウスギモクセイ、ギンモクセイは関東以西に多く栽培され、3種を総称して木犀と呼ぶ。ほかに漢名は桂花、丹桂など。

木犀三種:
(1)キンモクセイ:
花は濃黄色。葉は全縁か、ときに鋸歯があり、狭い長楕円形。
(2)ギンモクセイ:花は白色。葉縁に鋸歯があり、長楕円形。
(3)ウスギモクセイ:花は黄白色、葉は全縁か、ときに上部に鋸歯がある。

採取時期と調整法:秋に花をとり、風通しのよい場所で陰干しに。

成分:芳香成分はオスマン、パラハイドロオキシフエニール・アルコールなど。その他パルミチン酸、オレアノール酸など。

薬効と用い方:
歯痛に:
1回量小さじ2〜3杯を茶こしに入れ、熱湯を注いで服用。うがいもよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8489 ガマズミとは 北海道より九州まで、山野の日当たりのよい林の縁などに自生する落葉低木。朝鮮半島、中国に分布する。高さ2〜3m。若枝 には毛がある。葉は対生し、広い卵形で長さ約10cm。先端は急にとがり、基部は円形、縁に波形の鋸歯があり、5〜6対の側脈が目立つ。両面に毛がある。5〜6月、白色小花多数を小枝の先に散房花序につける。花冠は深く5裂、雄しべ5個は花冠より長い。果実は広卵形の石果で長さ約7mm、8月に紅熟する。

名前の由来:「古名をヘミ、またはヘミキ、今はガマズミという、ヘミとはネリソ草木などというカツラのような木を指す」と 『倭訓栞』が記している。ネリソ草木は不明。樹皮が強く折れにくいので、薪をしばる藤蔓に代用することなどに由来するのであろう。一般に、ガマズミのズミはこの実で衣類を染めるからとか、実に酸味があるので酢実(すみ)とする説がある。ガマは同じ仲間の オオカメノキのカメからではないかとの説がある。漢名は莢迷(きょうめい)。

採取時期と調整法:秋に紅熟した果実をとり、水洗いして用いる。

成分:ガマズミの成分は未精査であるが、これに近いセイヨウカンボクViburnum opulus L.の成分がヨーロッパで発表になっている。参考のために記すと、成熟して紅くなる果実の未熟果にはクロロゲン酸、βージトステロール、ウルソール酸。花にケンフエロールとクエルセチンの配糖体を含むとし、また乾燥した花にウルソール酸が含まれるとしている。

効と用い方:
疲労回復(健康薬酒)に:
広口びんに約1/3量の果実を入れグラニュー糖は好みの量を加え、35度のホワイトリカーをびんいっぱいまで注いで、2〜3 ヵ月間冷暗所に静置。果実はそのままにしておき、1回20〜40cc を1日1回飲む。  
利尿作用があり、小便の出がよくなる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8490 ユーカリノキとは オーストラリア原産の常緑高木。世界各地に栽培され、わが国には明治10年ころに輸入された。樹皮は褐色で絶えず不規則には げ落ちる。葉は厚く披針形で鎌状に彎曲、両面粉をかぶったように白みがあり、’葉をもむと特異の香りがある。葉は上部の枝に互生する。下部の若枝につく葉は丸みを帯びた楕円形で対生する。 両葉とも鋸歯はなく、油点が散在している。木質の花のつぼみにふたがあり、雄しべが束になってこれを押しのけて開花する。花は白色。開花は12月。

名前の由来:学名のエウカリプツスに由来した名。アオゴムは英名ブルー・ガムより。また、主として関西地方で、単にゴムノキとも呼ばれるが、ゴムはとれない。大正の中ごろ、この木を植えると土壌中の湿気はとれるし、大気は清浄になるし、材はパルプ にというので、栽培ブームになった。植えれば必ず利益があると いう意味で、「有加利(ゆうかり)」の当て字も流行した。珍獣コアラはこの葉を主食にしているという。近々コアラがわが国にやってくるというので、ユーカリノキの栽培が始まったが、伊豆の城が崎海岸には以前より製紙パルプ材としての植林が行われている。

成分:葉を水蒸気蒸留して得た精油をユーカリ油という。この油はシネオールの大部よりなり、ピネンなども含まれる。

薬効と用い方:
医薬品としてのユーカリ油の利用:
刺激性が あり、神経痛、リウマチ、筋肉の疲れの時に、直接、患部に外用剤として塗る。そのほか、防腐、殺菌、駆風、駆虫剤に用いられる。また、化粧品の香料にも用いられる。 駆虫剤としては、蚊の忌避剤用の皮膚クリームに利用される。
ユーカリ油が豊富にあるオーストラリアでは、ガソリンのかわりに、自動車を走らせている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8491 モチノキとは 本州(山形、宮城両県以南)より沖縄までの海岸に沿った暖地に自生する常緑高木。雌雄異株。庭木として栽培される。樹皮より鳥もちを作る。葉は厚く、長楕円形で長さ5〜8cm、先端は鈍くとがり、基部はくさび形で全縁。表面は濃緑色、裏面は淡緑色。若い枝から出る新葉は、葉の上半部の緑に鋸歯がある。4〜 5月に、葉腋より黄緑の小花を数個つける。花弁、がく片とも4枚。雄花は雄しべ4個。雌花は退化した小形の雄しべ4と雌しべ 1がある。果実は径約1pの球形で、10〜11月に赤く熟す。

名前の由来:樹皮から「鳥もち」を作ることからモチノキの名となる。モチ、トリモチノキ、ホンモチいずれも鳥もちに関連して 呼ばれた別名。『多識編』(1631年)に冬青(とうせい)の漢名をあげ、和名をアカ ミノヤズモチとしたが、のちに、わが国ではこれをモチノキの漢名とするようになる。これは同じモチノキ科の別種ナナミノキの漢名であって、モチノキの漢名ではない。

鳥もち製法:夏の盛りに樹皮をはぎとり、2〜3ヵ月間、水につけて腐らせ、これをうすでつき砕き、水で洗い、粘りのあるゴム状物質を集める。これが「本もち」で、初め灰白色、のち空気にふれると赤みを帯びる。小鳥とりや、ハエとり紙に利用したり、 あかぎれ膏に加えたりした。ヨーロッパではセイヨウヤドリギの果実を砕き、鳥もちを作る。

採取時期と調整法:夏に樹皮を採取し、水洗い後砕き、日干しに。

成分:「鳥もち」の粘る本質は化学的に蝋(ワックス)で、トリテルペンアルコールの脂肪酸エステルが含まれる。ほかにゴム様物質、樹脂質、タンニンなどが知られ、葉にはルチンがある。

薬効と用い方:
高血圧に:
予防に用いることをすすめたい。1日量5〜10gを水600ccで1/2量に煎じて服用する。1日に何回かに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8492 オトコエシとは 北海道より九州まで、各地の山野に自生する多年草。朝鮮半島、中国に分布する。  
茎は太く直立して伸び、高さ約1mになる。葉は対生し、羽状に裂け、根出葉は花時に枯れる。茎葉ともに毛が多い。花は8〜10月に開き、白い粟粒様の小花多数を、茎の先に散房状につけ る。花冠は5裂し、径3〜4mmで、筒状部に距(きょ)がない。雄しべ4 個。果実は倒卵形で2〜3mmと小さいが、小苞が発達してできた 翼が果実に径5〜6mmの円形となってつく。

名前の由来:女性的なオミナエシに対し、全草に毛が多く生え、茎も太くて壮大な感じがするというので男性をあらわす意味でこの名となる。白い粟粒様の小花を飯に見立てたのがオトコメシとなり、シロアワバナも小花を泡にたとえ、シロオミナエシは花が白いところからきた別名。オミナエシもオトコエシも開花期の根茎を乾燥すると、しょうゆの腐ったにおいがするので敗醤、白花敗醤の漢名となった。いまの市販しょうゆは腐らない。

生薬敗醤:全草または根茎を乾燥したものを生薬の敗醤とするが、オトコエシ、オミナエシともに敗醤の生薬として使う。

採取時期と調整法:秋に根茎を含めた全草を、水洗い後日干しに。

成分:苦味質ピロシッドが根茎の成分として知られ、さらにオレアノール酸の報告もある。この根茎の乾燥したものには特異な臭気があって、ネコの誘因物質が含まれているという東北大学理学部生物学教室の元村勲教授の発表が植物研究雑誌(1963年)にある。リンドウ科植物にも含まれる苦味配糖体のロガニンがオトコエシの根茎からも検出されているので、おそらく誘因物質に関係があるものとみられる。

薬効と用い方:
はれものの解毒に:
1日量5〜10gを水600ccで1/2にせんじて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8493 ミゾソバとは 北海道より九州までの各地の溝やたんぼのあぜ道などの水湿地に、群れをなして生える1年草。わが国のほか、朝鮮半島、中国、ウスリー、サハリンにも分布する。  
茎は地上をはい、節より根を出し、それより上に直立して伸び、高さは30〜60cm。まばらに下向きのとげが出る。葉は卵状で、基部が左右に突き出すほこ形、両面に剌毛と星状毛が生えて、互生し、葉鞘は短く、縁に毛が生える。8〜10月、枝先に10個ほどの花が集まってつく。花被は5裂し、上半部は紅紫色、下半部は白色。花弁はなく、がくが花弁のようになっている。花柄は短く、腺毛がある。果実は3稜形のそう果を結ぶ。

名前の由来:外形がソバに似て、生育場所が溝に多いことから。 コンペトウグサは花が集まって咲く様子が金平糖に似ること、カ ワソバ、タソバは溝やたんぽに多いことから。カエルタデは蛙の多い水湿地に生えることから出た。  
中国では葉の形から戟葉蓼(げきようりょう)と書く。戟は左右に枝の出た「ほ こ」のことである。  
『大和本草』(708年)に「牛面草は俗の名で、また溝スバとは水辺に生ずること。牛の額というのは、ソバの葉に似て長いから。ま たイシミカワに似てあのような鋭い刺がない。茎葉は柔で色は青い。生の葉をすりつぶし、切り傷の出血を止める効がある」と記 している。

採取時期と調整法:秋の開花期の生の茎葉を用いる。

成分:花にはフラボノイドのクエルセチンの配糖体であるクエルチトリンが含まれる。これはドクグミの葉にも含まれていて、利 尿作用がある。また、ペルシカリンも花部に含まれている。

薬効と用い方:
切り傷の止血に:
生の茎葉、または葉をもんで、できた青汁を患部に塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8494 イヌコウジュとは 北海道より沖縄まで全国各地の草原、川岸、たんぼのあぜ道など日当たりのよいところに自生する1年草。朝鮮半島、中国、台湾に分布。茎は四角で直立に伸び、高さは20〜60cmになる。葉は卵状披針形で長さ3〜4p、両端は細くなってとがり、縁の鋸歯は浅く、葉質はやや厚く、細毛が生える。葉は対生する。花は9 〜10月に開き、淡紅紫色の唇形花冠多数を、茎または葉腋より伸 び枝先に穂状につく。花冠は上、下2唇に分かれ、上唇は3裂、 雄しべ4個、うち2個が長い。雌しベ1個。果実は4個の分果ができて、一つの分果は扁球形で、表面に網状紋がある。

名前の由来:シソ科のナギナタコウジュを中国で香需(こうじゅ)と呼び、花が大きく美しい。これに対してこのものは見劣りするというのでイヌの名をつけられた。イヌコウジュも中国に野生し、石セイ寧と書く。わが国では『和漢三才図会』、『本草綱目啓蒙』、『本草図説』などにいずれもイヌコウジュを爵床(しゃくしょう)としていたが、今日ではこれはキツネノマゴにあてた。

類似植物ヒメジソとの区別点:ヒメジソは葉が薄く、葉は広卵形で幅広く、縁の左右に4〜6個の鋸歯があり、茎葉はほとんと無毛で、茎は紫褐色ではない。上唇のがくは3裂し、先端はとがらない。イヌコウジュは葉が厚く、葉は長卵形、縁の左右にある鋸歯は6〜13個と多い。茎は紫褐色で細毛が多い。上唇のがくは3裂し、先端は鋭くとがる。

採取時期と調整法:開花期に全草をとり、水洗い後刻んで陰干しにする。

成分:精油を含み、この精油中にαーツヨン、セスキテル ペンを含んでいる。  

薬効と用い方:
腰痛に:
薬湯料として風呂に乾燥したもの20〜50gを布袋に入れ、入浴する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8495 アキグミとは 北海道(西南部)、本州、四国、九州の山野に自生する落葉低木。朝鮮半島、台湾、中国に分布。幹は直立して高さ約3m。小枝は灰白色。葉は長楕円状の披針形で下面は銀白色の鱗片が厚く密生する。葉柄は長さ約5mm。花は4〜5月、葉腋に1〜7個が束生する。がくは筒状で先は4裂して細長く、銀白色か浅黄褐色 の鱗片を密生し、雄しべ4個はがく筒内壁につく。果実は球形で、9〜11月に赤く熟す。

名前の由来:花は春4〜5月に開花するが、果実は9〜11月と秋に成熟するのでこの名となる。ナツグミは初夏に果実が成熟。ナワシログミは田植えのころの春に。これらグミ類はみな果実の食べごろを基準に名がつけられている。別名のカワラグミは川原の砂地に生えることから。マメグは果実が球形で豆のようだということから。シャシャブは、たとえばあめをしゃぶるというようになめることを意味し、子供たちが、この実を食べるしぐざからこの名となる。

類似植物ナツグミとの区別点:ナツグミ、アキグミともに落葉低木だが、春〜初秋には葉があるので花や果実がない時期には、葉 が区別要点になる。ナツグミの葉は長さ3〜10cmの長楕円形〜楕円形、幅2〜3cmで、基部は細くなり、上面は銀色の鱗片があってのちに脱落すること、下面は銀色の鱗片と、褐色の鱗片を混生して脱落しないこと。アキグミは葉が長さ4〜8cmの長楕円状披針形幅1〜2.5cmで、葉の下面には銀白色の鱗片のみである。

採取時期と調整法:成熟した果実を採取し、水洗いのあと水きり して、生のままを用いる。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
疲労回復(健康薬酒)に:
作り方など、ナツグミと同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8496 マメガキとは(カキノキ科) 朝鮮半島、中国、小アジアに分布し、古い時代に中国から渡来して各地に栽培され、現在も柿渋をとるために栽培されることが 多い。もともと自生はないが、逸出して野生化したものがある。 高さ12mに達する落葉高木で、雌雄異株。樹皮は暗灰色。葉は長さ8〜15mmの葉柄があり、楕円形か長楕円形で、先端が急にとが る。上面は深緑色、下面はやや灰色で毛が多く生え、脈上に特に多い。花は6月に開き、ことし新しく伸びた枝の葉腋に黄白色花を下向きにつけ、花冠は壷状で先が4裂、がくは4裂して毛が生える。雄花の雄しべ16個、雌花は雌しべ1個がある。  
果実は径1.5〜2cmの球形で鈴なりにつき、10〜 11月に熟して、透き通るような黄褐色で甘くなるが、多少の渋みが残る。枝につけたまま、ブドウのように暗褐色になるまでおくと甘い。漢名は君遷子(くんせんし)と書く。

類似植物シナノガキ:別名リュウキュウマメガキともいうシナノガキは、関東以西から沖縄の山地に自生。これの樹皮は黒褐色で マメガキより黒く、枝は無毛で、葉柄は15〜25mmの長さ、マメガキより長い。葉の下面は灰白色で無毛。果実はマメガキと同じ大きさの球形で、マメガキよりは渋みが少ない。

採取時期と調整法:初秋の青い果実のへたをとり、水を加えてつき砕き、しばらくして布袋でしぼる。また然した果実を食用に。

成分:未熟果は柿渋を作る原料になる。カキシブタンニンを含んでいて、これはビタミンPに似た化学構造で、血管の透通性を高 め、高血圧を防ぐ効果がある。葉にはシナノガキと同様のミリチトリンを含む。

薬効と用い方:
血圧降下に:
柿渋さかずき1杯に大根おろしをまぜ、空腹時に1日3回に服用する。
食用に:初冬のころ、黒みがかって熟した果実を食べる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8497 ナナカマドとは 北海道から九州までの山地に自生する落葉高木。朝鮮半島、サハリン、南千島に分布する。幹は直立に伸び、高さ約10m。樹皮は濃い黒褐色から灰色。葉は奇数羽状複葉、小葉は9〜15枚つ き、小葉は披針形、縁に鋭い鋸歯があって無毛。花は6〜7月 に、白色の小花多数を枝先に散房状につける。花径は6〜10mm、 がくは先端が5裂し、花弁は5枚、内側に短い毛が生える。雄しべ20個は、花弁とほば同じ長さ。果実は径約5mmの球形で、秋に熟して赤くなる。

名前の由来:この木の材質がかたくて燃えにくいので、かまどに七度入れてもまだ燃え残りが出るということから、この名がある と、一般にいわれているが、中村浩氏は『植物名の由来』の中で、七度入れたり出したりするのでなく、質がかたくて、堅炭で極上炭をつくる工程で蒸し焼きを含め、7日間を要する。それで この名となったとしている。

類似植物サビバナナカマド:葉の裏面の中風に沿って褐色の軟毛があるものがサビバナナカマドで、本州、四国、九州に分布。

採取時期と調整法:樹皮は必要時に必要量だけを採取して、新鮮 なものを用いる。

成分:樹皮に青酸配糖体のアミグダリンが含まれることを「日本生薬学会」(1974年)において近畿大学薬学部の高石清和教授らが発表している。同じバラ科のウメ、アンズ、モモなどの種子の中にアミグダリンを含むことは早くから知られているが、樹皮に含まれるのは珍らしい。北海道のアイヌは悪い病気が流行するときに、 この枝を戸口や窓においたり、水桶に浸したり、家の中でたき火に して煙を充満させたりするという。樹皮成分との関係であろう。

薬効と用い方:
疥癬、あせもに:
1回量に約10gを水600〜800ccで1/3に煎じ、この煎液で患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8498 アベマキとは 本州中部以西、四国、九州に自生する落葉高木、特に岡山、広島、鳥取の諸県に多い。朝鮮半島、中国に分布。樹皮は縦に深い裂け目のあるコルク層が発達し、その厚さは10cmに達するものもある。葉はクヌギに似ているが、アベマキの葉の成長した下面には白色の毛が密生するので、灰白色となる。クヌギの成長葉は無毛。雌雄同株。花は4〜5月。雄花は新しい枝の下部より長さ10cmほどの花軸を下げ、これに密生する。果実は球形で、2年目に熟して褐色になり、細いとがった鱗片多数によっ て包まれる。これがどんぐりである。

名前の由来:『牧野新日本植物図鑑』(1977年)版によると、アベは岡山県の方言でアバタのこと。コルク層の発達で、表面がでこぼこになるのをアバタに見立て、マキは薪からであろう。コルククヌギはコルク層の発達から、アベクヌギは、アベマキ、クヌギ両種を混同しての方言。オニクヌギは、コルク層の異常な発達から。 ワタマキはコルク層がやわらかいことからであろう。

コルクの代用に:コルクは地中海沿岸地方産のブナ科のコルクガシのコルク層が異常に発達しだのをはぎとったもので、スペイン、 ポルトガル(南部)、モロッコ(北部)が主要産地で輸出している。コルクガシは常緑高木で、栽培から20年目で第1回のコルクがとれるが、これは質が悪く、それ以後9年目ごとに本格的な採取ができる。酸、アルカリ、熱におかされない利点から、多くの用途があるが、アベマキはこの代用になる。

成分:コルクは細胞膜質がスベリンで、フエロン酸、フロイオン酸、スベリン酸などの高級飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸よりなる。

薬効と用い方:
国産コルクに:
コルクの代用にコルク層を用いる。
デンプン用に:果実にデンプンが多いので原料に(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8499 ハダカホオズキとは(ハダカホウズキ) 本州、四国、九州、沖縄、小笠原の山地に自生する多年草で、 多くは日陰地に見られる。中国、台湾、東南アジアに広く分布。 茎は60〜90cmで、二また状に枝分かれして広がる。葉は長さ約20cmの長楕円形で先端はとがり、基部は狭くなって、葉柄につづき、質は薄く無毛。花は8〜9月に開き、葉腋より短い花柄を出し、その先に数個の花を下向きにつける。花冠は鐘状で淡黄色。 5裂して先がとがり、外側にそり返る。がくの先は分裂せず、平坦。果実は径8〜10mmの球形で熟して紅色になる液果を結ぶ。

名前の由来:ホオズキはがくが発達して果実を包んで袋状にな り、その外側が紅色になる。このハダカホオズキのがくは花後も 発達せず、果実を包まない。果実が外から見えて裸というのでこの名となる。別名のキツネノホオズキは、ホオズキのようでホオ ズキでないということから。アカコナスビは赤い実ができる、ヤマホオズキは山地に自生することを意味する。

中国では竜珠(りゅうじゅ):中国では広東、広西、貴州など南部に分布。果実つきの全草を乾燥したものを竜珠の生薬名で呼び、つき砕いたものをおできの外用薬として用いる。赤い果実が竜の目のようであるというのでこの漢名となった。わが国で竜珠はハダカホオズキの漢名ではないと書いた本もあるが、『中国高等植物図鑑』そ の他の最近の中国の文献ではいずれも竜珠をあてている。

鳥取地方の民間薬:『因伯産物薬効録』(1860年)では「竜珠、ヤマホ オズキ、ハダカホオズキ、全草は熱を涼(すずしう)し毒を解す」とある。

採取時期と調整法:夏から秋に果実つきの全草を水洗い後、刻んで500ccの広口びんに入れ、食酢を注ぎ、冷暗所に数カ月おく。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
おできのはれものに:
食酢につけたものをしぼって患部に当て、落ちないように止める(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8500 ダンチクとは(芦根/ろこん) 本州(房総半島南端部以西)、四国、九州、沖縄、小笠原など、 温暖な海岸線に沿って自生する大形の多年草。中国(南部)、台湾より東南アジア、地中海沿岸地方までに分布。高さ2〜4mに なる。葉は幅2〜5cm、長さ50〜80cm。粉をかぶったような緑色 で厚い。地下には太い根茎があって横に伸び、年とともに大きな 株立ちとなる。花は8〜11月、長さ30〜80cmの円錐花序に、多数 の小穂を密生する。小穂は長さ8〜10mm。花穂は淡色か、ときに わずかに淡赤紫色で光沢がある。花序の枝には短毛が生えていてざらつく。

名前の由来:ダンチクは筑前福岡の方言という。初めはヨシタケと呼んでいた。これは京都での呼び名で、ヨシに似て、竹のようだというのでこの名となったが、福岡地方では暖地の竹の意味のダンチクが一般に行われていた。今日ではヨシタケは別名にな り、グンチクの名で呼ばれるようになる。トウヨシはヤシ科のトウ(籐)に似ていることから。中国ではグンチクを芦竹と書き、 根茎を芦根の名で生薬にする。 筍が排毒『大和本草』(1708年)は、ダンチクの筒筍は、味ははなはだ苦く食べられないが、これを日にさらして乾燥し、「楊梅瘡」の薬に加えて用いると、よく毒を排除する妙薬であると述べている。楊梅瘡とは梅毒性の皮膚疾患。

採取時期と調整法:夏に根茎を掘りとり、水洗い後、細根を含めて細切りし、日干しにする。

成分:葉よりβーアミリン、ルペオールのトリテルペノイド。カンペスチロール、βージトステロール、スチグマステロールなどのステロイドが含まれている。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量5〜10gを水600ccで、1/2量にまでに煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8501 ワタとは(綿実子/めんじつし) 中央アメリカ原産の1年草の葉は互生し、広卵形で径5〜12cm。掌状に3裂、まれに5裂することもある。裂片は広い三角状の卵形で先端はとがり、下面はやわらかい毛が生える。葉柄は長さ約10cm。托葉は早落性。花は葉柄より短い花梗の先に単生する。小苞片3は分離して基部は心形。がくは杯状で先は5裂、花冠は白色か淡黄色。雄しべ多数が合生し、1本にまとまって花冠中央にある。花は朝咲いて、夕刻にしぼむ1日花。
果実のさく果は長さ約5cmの卵形で、成熟すると3裂し、それぞれの室に5〜7個の種子があり、表面に長い綿毛が生える。

名前の由来:綿を『訓蒙図彙(くんもうずい)」(1666年)でメンと読ませ、またの名 をヮタとしている。メンは中国語mianの発音に由来したものであろう。ヮタはハラヮタのヮタではないかともいう。筋が錯綜することが、大腸、小腸の様子に似ているからという説もある。

綿小史:『農業全書』(1697)に、唐には木と草の二種があり、一つ は木綿、他は草綿で、木は大木になる。今わが国で作るのは草であるのに、木綿(もめん)というのはおかしいと記してある。戦国時代に、 近畿地方でヮタの栽培が始まり、綿布が衣服に用いられるようになった。それ以前庶民は麻やカラムシ、コウゾなどでつくった衣服を寒いときには重ね着していた。綿布は麻のようにごわごわせ ず、肌ざわりがよくて、着てあたたかいので、急速に綿布の時代になった。貝原益軒が『大和本草』(1708年)に「四民寒苦をまぬかる誠に万世の利、群国の宝也」と絶賛している。

調整法:種子の市販品を求める。綿実子が商品名。

成分:脂肪油20%、パルミチン酸、オレイン酸、ゴシポールなど。

薬効と用い方:
催乳に:
母乳の出をよくする。5gを水600ccで1/2量に煎じて服用する。
綿実油に:サラダ油の代用や、マーガリンの原料になる (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8502 マコモとは 北海道より沖縄まで、各地の小川、沼地、湿地などに群生する大形の多年草。中国、朝鮮半島、台湾、インドシナ、東シベリアに分布する。泥の中に横走する太い根茎から、春に新芽を出し、 茎(稈)と葉が高さ1〜2mとなる。葉の下部は、茎を包んで鞘となり、上部の葉は扁平に伸びる。鞘と葉の境に関節があり、その内側に三角形の葉舌(ようぜつ)がある。8〜10月、約50cmの大形円錐花序 の上部に淡緑色の雌花穂、その下に赤紫色の錐花穂をつける。

名前の由来:わが国の原始時代住居で、枯れたこの草をあんで敷物をつくった。これが菰(こも)である。その後に、稲作が行われて稲わらが使われるようになり、わらで菰をあむようになる。稲作以前の菰を本物だとする考え方で、それを真菰と呼んで区別した。マ コモの名はこのようにしてできたのである。

菰筍(まこもだけ):春先、若い茎に黒穂菌の一種が寄生し、茎は長く伸びず、 ずんぐりしてやわらかいものになる。これが菰筍で食用にする。そのままにしておくと胞子が熟して黒くなり、これを干したもの をマコモ墨と呼んで、眉墨や、洋画でセピア色に染めるときに用いる。菰筍は中華料理に使用するので、中国からカン詰めが輸入 される。『和名抄』でコモツノというのは菰筍をさしたもの。北米産マコモは子実の成熟したものを採取して食用にし、これをワイルド・ライスと呼んでいる。わが国では行われていない。

採取時期と調整法:秋に根また根茎を採取し、水洗いして刻み、 日干しとする。

成分:地上部にはトリテルペンのアルンドイン、シリンドリンを含むことが知られている。  

薬効と用い方:
利尿:
乾燥した根または根茎を、1日量と して5〜10g、水600ccで1/2量までせんじて 服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8503 ササクサとは(淡竹葉/たんちくよう) 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄の各地の林の中に自生する多年草。朝鮮半島(南部)、中国(華南)、台湾、マレーシア、 インドに分布。  
根茎は短く、茎は40〜70cmに伸び、葉は披針形で幅2〜5cmと広い、広披針形。基部は急に狭くなり、先端はとがる。花は8〜10月に、円錐花序で一側にのみ、まばらに小穂をつける。小穂は 秋深くなると衣類につきやすく、遠くに運ばれて落ちる。これは 花には剌毛のある短い芒(のぎ)があるからである。

名前の由来:葉が笹類に似ていて、これは草である。それでこの名になる。別名のツカミグサは小花が衣類などにひっつくことから。イチロクはよくわからない。クサノハグサは、草葉草で竹に 似ているが草の葉であるという意味。

生薬としての淡竹葉:淡竹葉は『本草綱目』に記載されている生薬である。生薬淡竹葉はわが国産のものが少なく、市場にあるのは、中国よりの輸入品が多い。ササクサと同じ産地にトウササクサがあって、これよりの生薬淡竹草もある。薬効上はほとんど差 はない。このものは小穂がやや幅が広い。淡竹葉は中国で利尿に用いるほか、解熱、口渇、口腔炎、歯齦腫痛などにせんじて服用する。また糖尿病の予防にも、せんじてお茶がわりに服用している。

採取時期と調整法:8〜10月開花期の全草を採取し、水洗いして 日干しとする。

成分:茎葉にトリテルペンのシリンドリン、アルンドインのほ か、βージトステロール、スチグマステロールなど.のステロ イドを含んでいる。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量5〜10gを水600ccで1/2量に煎じて服用する。
糖尿病の予防に:上と同じ分量で服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8504 ミヤマシシガシラ 本州(関東北部、東北、北陸、山陰)の一部の山地に見られるシダ植物で、日本特産のもの。
根茎は塊状で斜め上に伸びて、根茎の先から多数の葉が集って出る。葉は高さ20〜30cmになり、中でも胞子嚢群をつける葉は40〜50cmの高さになって、普通の葉よりも高く伸びる。葉柄の基部には、褐色で線形の小形鱗片がつき、葉柄と中肋は褐色である。

名前の由来:ミヤマは深山に生えることから。シシガシラは獅子頭の意で、根茎の先端からまとまって出る葉が、四方に放射状に 出る様子を、獅子のたてがみに見立てたもの。

類似植物シシガシラとの区別点:シシガシラは北海道から屋久島 までに自生するが、ミヤマシシガシラよりも低山性で、山村などに普通にみられるもの。これも日本特産である。ミヤマシシガシラは胞子嚢群のつく葉(実葉)が、普通の葉(裸葉)より長く、 約2倍の長さがあるのに対して、シシガシラは実葉と裸葉との長さの差はほぼ同じか、やや長い程度であることで、区別される。

シシガシラが一般的:ミヤマシシガシラは産地が限られているので、一般にはシシガシラのほうが入手しやすく、これらの使用をすすめたい。薬効はどちらも同じである。

採取時期と調整法:春から夏に、地上部の葉を採取し、水洗いして、そのままを使用する。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
はれものに:
生の葉をこまかく刻んで、さらにつき砕き、これを患部へ直接はりつける。上にビニールなどを当て、落ちないようにテープで止めておく(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8505 フユノハナワラビとは 本州、四国、九州の各地の林の中や草地に自生するシダ植物。朝鮮半島、中国、台湾、ヒマラヤまでに分布、地下に黄褐色の根茎があり、根茎より出る葉は高さ10〜30cmになる。葉質はやわらかく、五角状の広卵形で、4回に羽状深裂して、緑にはこまかい鋸歯がある。胞子嚢群をつける葉(実葉)は普通の葉の約2倍の高さに伸び、先端はこまかく4回羽状に分かれた実葉となる。ここには緑色の部分はなく、黄色の胞子嚢が密につく。胞子嚢は大きく、肉眼でも見え丸形で2列に並んでいる。胞子の成熟期は、9〜10月になる。

名前の由来:原野で他の草が枯れている冬でも、この草の葉はまだ緑色を保ち、よく目立つこと、胞子嚢をつける黄色の花穂様の 部分を花に見立てたことから、この名となった。別名に、寒とか、冬とかの名があるのも、同じ考え方からである。

中国名陰地蕨:中国では「陰地にあるシダ」の意味で、陰地蕨と書く。感冒や百日咳、解熱薬に用い、全草を春、秋に採取して、 水洗いした後、日干しにして、せんじて服用している。

類似植物オオハナワラビ:大小の差はあるが、フユノハナワラビによく似たものにオオハナワラビがあり、秋から冬に緑の葉が出るのは、この2種類である。オオハナワラビの葉は3回羽状(フユのハナワラビは4回羽状)に深裂し、裂片には、先のとがった鋭くてこまかい鋸歯がある。9〜10月が胞子成熟期。

採取時期と調整法:秋に全草を採取して、さっと水洗いしてか ら、日干しにする。

成分:フラボンのルテオリンが含まれている。

薬効と用い方:
腹痛、下痢に:
全草をよく乾燥したものを、1日量として約10gを水600ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8506 マンネンタケとは(霊芝/れいし) わが国各地にあるほか、中国をはじめ、北半球の温帯に広く分布する。ウメ、クヌギ、コナラ、ミズナラなどの広葉樹の枯れ木、または生の立木の幹や根元に生える。傘は腎臓形で、赤褐色から紫褐色となり、光沢がある。傘の裏側は黄白色 で、無数の小穴があり、この穴の内壁に多数の担子胞子ができる。胞子は褐色の卵形で、小さくて肉眼では見えない。

名前の由来:乾燥させると、傘、柄を含めた子実体(しじつたい)はそのままの 形で長年保存することができるために、万年茸の名となった。万年は縁起のよさにも通じて、サイワイタケ(幸茸)、カドデタケ (門出茸)ともよばれるようになる。中国では霊芝とよぶ。

『神農本草経』の記載:中国最古の薬物書『神農本草経』上薬の部に霊芝の記載があり、「主胸腹結、益心気、補中、増知恵、不忘。久食軽身不老、延年神仙」とある。主として胸や腹に血や気が滞ってできた病を治し、心臓の機能を益し、内臓の働きを補い、頭の働きもよくなり、知恵も増して物忘れもしない。久しく食べると、身も軽く、年をとらず、神や仙人の境地に達して長寿を保つという意味である。

採取時期と調整法:人工栽培が行われ、市販品がある。天然のものは、夏から秋に採取する。刻んで日干しに。

成分:糖質トレハロースを含む。これは菌類共通成分として知られ、非還元性の二糖類。ステロイドのエルゴステロールも含まれ 菌類共通成分で、紫外線照射によりビタミン玖に変化する。

薬効と用い方:
肝臓疾患、更年期障害に:
1日量2.5〜5.0gを水600ccで1/2量に煎じて服用する。
血圧降下、抗血栓症、抗胃潰瘍、抗アレルギーに:これらに用いるという報告がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8507 シイタケとは 北海道より九州までのほか、韓国、中国(華南)、台湾、その他東南アジアに分布する。最近は人工栽培の技術が進んで、年間 を通じて入手できるようになった。天然ではコナラ、ミズナラ、 クヌギ、クワ、シイ、カシなどの枯れた枝に春と秋の2回に発生する。表面は赤褐色から暗褐色など。裏面のヒダは密で白色。

名前の由来:シイノキに出るキノコの意味である。別名のニラブサは山形県庄内地方の方言、ニラはナラノキ、ブサは野菜の意味 の方言という。ニラムサはニラブサの変形。ナバはナラノキの菜、ナラノコケはナラノキに発生したキノコの意味である。漢字 で椎茸と書くが、漢名ではなく、シイタケの読みを漢字におきかえただけのもの。中国では香ジンと書く。

制ガン効果は疑問:動物実験で、移殖ガンの阻止に効果があったとしても、人間の場合については、まだ疑問である。

採取時期と調整法:予実体(傘と柄の部分)を用いる。市販品を求めるとよい。

成分:エルゴステロール(乾燥品では約0.3%)のほか香気成分は含硫化合物のレンチオニンで、うまみの本態は5-グアニール酸 ナトリウム。ビタミンB2は干しシイタケ100g中1.7mgと多い。うまみ、香りともに干しシイタケのほうが生のものより高い。

薬効と用い方:
二日酔いに:
『新編食用植物誌』梅村甚太郎著(1910年)には、シイタケを煎じてねめば酒の酔いをとり、魚類の毒を解す、程よく食えば胃腸がととのうとある。

栄養的に有効な植物性健康食品:タンパク質、脂肪、糖質、繊維、灰分、カルシウムや鉄、ビタミンB2など、栄養的に不可欠な成分が多く、味と香りもよい。生でも乾燥品でも、基本的には同じ成分が含まれているので、健康食品として食べることで、よりよい体質づくりに役立つものであろう(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8508 ヨコワサルオガセとは(松蘿/しょうら) 北海道、本州、四国、九州の山地または高山の樹木に寄生する地衣植物。サハリン、朝鮮半島、中国、台湾に分有。寄生する樹 木から糸状にたれ下がり、長さ15〜30cmで、二また状に分岐するが、ときには不規則に分岐して、先端部は細くなる。全体は黄緑色。地衣体の表面に横に筋が見え、規則正しく輪をつくるように並んでいる。のちに横筋が割れ目になり、この割れ目を強く引き離すと中軸があらわれる。

名前の由来:横に輪をつけたように見えるので、ヨコワサルオガセとなる。カセは麻や苧などの繊維を糸状に長くしたものを絡ませる道具で、麻糸をカセにかけ、長くたれ下がった様子が、これに似ている。さらにそれを強調する意味で猿の語を上にのせたのである。『和名抄』(932年)には、サルオカセの和名が出てくる。またマツノコケの名もあげ、これらを漢名の松蘿にあてている。『大和本草』(1708年)では、誤って石松子(シダ植物のヒカゲノカズラ)と松蘿を同一のものと説明している。「猿尾風」語源説はまちがっている。

別名雲の花、霧藻:日光、秩父、信州などの山間地では、霧の多い深山に見られるので、雲の花や霧藻の別名がある。乾燥したものを布袋に詰めて「霧藻枕」の名の枕を作り、よく眠れるという。最近は、香水をしみ込ませて室内アクセサリーにもする。

採取取期と調整法:夏に全植物体をとり、日干しにする。

成分:ウスニン酸の黄色結晶を含むほか、ジフラクタ酸を含んでいる。ウスニン酸は多くの地衣類に含まれている。ジフラクタ酸に炭酸アンモニアを加え発酵するとリトマス色素になるので、リ トマス試験紙に利用する。

薬効と用い方:
利尿、去痰に:
1日量5〜8gを水600ccで1/2に煎じて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8509 キツネノチャブクロとは わが国の全国各地に見られるほか、世界的に広く分布している。8〜10月、山林、原野などに群生するキノコで、洋梨形、高さ4〜6cmで、径2〜3cm。初めは白いが、後灰褐色となる。表面は小さいいぼ状の突起が密生する。成熟すると内部は緑褐色の胞子ができて、くず綿状のものがつまり、軽くなる。のちに頂部にできる小さい穴から緑褐色の粉状の胞子が飛び出す。キノコ全体が若いときには、白くて食用になる。

名前の由来:踏みつけたりすると、煙のように緑褐色の胞子があたり一面に飛び散る様子から、狐の茶袋となった。静かな山林で煙が立ちのぼる、これは狐のしわざリ!! と古い時代には考えたのであろう。胞子が飛び出すころは、キノコの本体は袋状になるので茶袋にたとえたもの。別名ホコリタケも胞子の散る様子から。

類似のタヌキノチャブクロ:別名ケムリタケというタヌキノチャブクロは、主に枯れた木や枝に発生し、柄の部分が細く、表面は最初はすべすべして白く、のちにキツネノチャブクロのように暗褐色になると、いぼ状の突起が出る。若いものは食用にする。

類似生薬「馬勃(ばぼつ)」:ホコリタケ科のオニフスベLasiosphaera nipponica Kobayasiは竹やぶなどに、夏から秋の間に発生する大形のキノコで、径30cmほどのフットボール形。外側内部も白色のころは食用になる。成熟すると黄褐色になり、胞子を放出する。 生薬馬勃として、キツネノチャブクロと同様止血薬に用いる。

採取時期と調整法:熟して胞子を放出するようになったキノコを静かに採取し、ビニール袋に入れ、振りながら袋の中に胞子を集め、あきびんなどに保存する。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
止血に:
切り傷、すり傷などの出血のときに、直接患部へ胞子を振りかける(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8510 カワラタケとは わが国の各地の平野部から山地に最も普通に見られるもので、針葉樹や広葉樹の枯れた幹に、また倒木、切り株などに群生す
る。世界各地に分布。傘は薄くて革質。表面は黒色、灰色、褐色と変化があり、半円形で、短毛が密生し、同心紋をあらわす。多くは重なりあって群生する。裏面は白か灰色で、多数の小穴がある。材を腐らせる作用は強い。

名前の由来:傘が重なり合って群生するのを屋根瓦に見立てたもの。別名サルタケは猿茸であるが、この語源はわからない。

自然治癒力を増強して制ガンに:制ガンに効果があるといわれているが、このキノコの制ガン作用も、同じサルノコシカケ科のコフキサルノコシカケの場合と同様に、多糖体の免疫賦活作用によって、人間本来に備わっ ている自然治癒力を増強することにある。

採取時期と調整法:1年生のキノコであるが、革質で強靭であるので、すぐ枯死することはなく、1年や1年半ぐらいは、そのままの外観を保っている。しかし、なるべく新しいものがよく、春より秋の間にさがして採取するとよい。虫害などにかからないよう、金網の上で加熱乾燥するとよい。

成分:抗悪性腫瘍作用が認められたキノコである。その本体をクレスチンという。カワラタケの一系統CM−101株をタンク培養して 得た菌糸体を、さらに熱水で抽出し、それを精製した粉末で、褐色から茶褐色、かすかに特異臭があって、味はなく、水にとける。メタノール、ピリジン、クロロホルム、ベンゼン、ヘキサノンなどの有機溶剤にはほとんどとけない。

薬効と用い方:
制ガンに:
キノコを細切りし、1日量5〜7gを水600ccで1/2量に煎じ1日3回に分けて服用する。ガンの予防薬ということで服用をつづけること(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8511 マイタケとは 北海道から九州までの、山岳地帯に多く生えるキノコで、ヨー ロッパ、北米、アジアの温帯以北に分布する。東北地方ではミズナラ、クリ、関東以西の暖地ではシイなどの老木の根元に、多くは、9〜10月に発生する。このキノコの茎部にあたる部分が枝分かれし、その先に扇形の傘を数多くつけて、傘が重なり合うようになる。傘の表面はネズミ色で、裏面は白く、小さい管の穴が密生する。

名前の由来:舞茸と書く。傘が多数重なり合うのを、舞をする様子に見立てたとする説。おいしさのあまり、喜んで踊ったとする説。ワライタケという別の毒キノコで中毒し、笑って踊ったのを、このキノコの名にしてしまったという諸説がある。別名のクロブサは山形県地方の方言である。

制ガンキノコになる?:制ガン作用があるといわれるマンネンタケ、コフキサルノコシカケ、カワラタケなどと同じサルノコシカケ科であることから、このところ急速にマイタケの需要が伸びている。前述のマンネンタケ、コフキサルノコシカケ、カワラタケは、木質化してかたくて食べられないが、マイタケはやわらかくて、味も極上であるから、日常食べていれば、制ガン作用は別に しても、健康にプラスになるのではないかと考えられたのであろう。

採取時期と調整法:子実体(傘と柄を含めたキノコ全体)を秋に採取する。また、人工栽培が行われ、市場に出回っているので、それを求めてもよい。乾燥品もある。

成分:特殊成分はまだわかっていない。

用い方:健康食品に エルゴステリンがわりあいに多く、含まれ、ビタミンB2とタンパク質が生シイタケより多いことなど、健康食品としての価値がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8512 アブラナとは 中国が原産地とされ、古い時代に朝鮮半島経由で渡米したもの。明治以降ヨーロッパより輸入されたアブラナはセイヨウアブラナと呼ばれた。両種とも世界各地に栽培される。  
2年草で、茎は直立に伸び、高さ1.5mほど。全株緑色、質はなめらかでやわらかい。根生葉は、柄が長く太く、葉は長倒卵形、少数の裂片があって羽状に裂ける。ときに製けないものもあり、裂片の緑に鋸歯がある。上部の葉は柄がなく、茎を抱くようにつく。3〜4月、茎の上部に鮮黄色の4弁の花を総状花序につける。萼片4、雄しべ6本のうち4本が長い。果実は長いくちばし状の長角果を結び、熟すと下より2片に裂けて、黒褐色の種子を出す。

類似植物セイヨウアブラナ:明治時代より栽培が見られる。このものは茎葉が粉白緑色、花弁が1〜1.5cmと長く大きく、萼片が上を向く ようについている。在来種は茎葉が鮮緑色、花弁の長さ1cmと少し短 く花はセイヨウアブラナより小さく、萼片はほぼ水平につく。

名前の由来:種子より油をとるときにアブラナの名を、若い茎葉を野菜として利用するときにはアオナ、花を主として見るときにはナノハナと、見方によって名前が変わる。漢字で油菜、青菜、菜の花と書く。  アブラナも別名のナタネナも、種子をしぼり油をとることに由来するが、搾油し始めるようになってからアブラナ、ナタネナの名前がで きたものであろう。それ以前『本草和名』(918年)に壼V(うんたい)の漢名をあげ、和名乎知(おち)としている。また19年後に出た『和名抄』(937年)に、「壼V 本草云壼V、雲薹二音和名乎知とし」と、『本草和名』と同様に記してある。「本草云」は、この時代にわが国に入っていた唐の本草書『新修本 草』(659年)をさし、壼Vはそのころ煮て食べる野菜であった。そして今日のアブラナの名はなく、オチと呼び、室町時代になってアブラナの名が出てくる。
室町時代から灯火用油に:『古事記』『万葉集』のころは、アブラナは野菜として用いられ、種子より油を利用することはなかった。もともと栽培種で、わが国の原産ではなく渡来品であるが、いつごろ伝えられたかはっきりしない。わが国の搾油の初めは貞観時代(859〜877年)という。しかしこのナタネ油が灯火用として用いられるのは室町時代以後からで、それまではシソ科のエゴマからの荏油(えあぶら)であった。灯火用、 食用油としてのナタネ油の需要は、時代が進むとともに莫大な量とな り、各地に栽培地が展開。春先にナノハナ畑の風景がどこにでも見られ、春の風物詩となる。  

菜の花や月は東に日は西に 蕪村。
菜の花の中を浅間のけぶりかな 一茶。
菜の花の中に用あり渡し舟 子規。
など、これを詠んだ名歌や秀句が多い。

千葉県の県花ナノハナ:千葉県房総地方はナノハナの切り花産地として有名。このことから県花になったものであろう。切り花のナノハナは主にチリメンハクサイの改良種で、切り花業者はハナナ(花菜) と呼んでいる。

採取時期と調整法:初夏に種子をとり集めて日干しにし、ナタネ油をとる。

成分:ナタネ油は、脂肪油を38〜44%含み、脂肪酸のグリセリエステルで、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸などよりなる。

薬効と用い方:
日本薬局方のナタネ油は:
ナタネ油は軟膏およびリニメント剤の基剤、油性注射剤の溶剤に用る。
その他ナタネ油の用途:食用、灯油、機械油に用い、しぼりかすは肥料とする。
食用に:つぼみをつけた若い葉茎は、春を告げる菜として、早春の食卓を楽しませてくれる。ゆでて、おひたし、あえ物、サラダに。また 煮物にと広く利用される(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8513 カントウタンポポとは(蒲公英/ほこうえい) 関東地方に特に多く見られ、中部地方まで分布している。  
日光のよく当たる路傍、原野に生える多年草。根生葉は、多くのタ ンポポの種類と同じように倒披針形で、羽状に浅くまた深く裂け、長 さ10〜25cm、幅2〜6cm。地中の太い根より伸びて車輪状に四方に展開し、広がる。開花期は3〜5月。径約4cmの美しい黄色花を花茎の先に開く。花茎は葉の長さと同じか、やや長い。総苞と葉は緑色。外側の総苞片は卵形か長楕円形で、花のときに外側にそり返らずに上向 きにつき、その面に突き出す小角(つの)がある。これによく似たエゾタンポポには小角は出ない。

類似植物エゾタンポポ:関東地方北部より東北地方、北海道に産し、 外側の総苞片は広卵形か卵状長楕円形で直立、小角は通常はない。花 期は3〜5月。

ヒロハタンポポ(トウカイタンポポ):千葉県房総以西より和歌山県までの太平洋側に産す。葉は倒披針形かへら状披針形で羽状に浅く裂 け、幅広くなるのでこの名がある。総苞片は長さ1.4〜2cm、上部に大 きい小角がある。カントウタンポポは、ヒロハタンポポとエゾタンポ ポの雑種とされるが、現在カントウタンポポは独立種として扱われている。

名前の由来:関東地方に多いのでこの名となる。

採取時期と調整法:根と葉は開花中に採取し、水洗いしてから刻み、 日干しにする。また、必要時に根を採取して用いてもよい。花は、春先に採取し、そのまま日干しにする。

成分:トリテルペノイドのタラルペノール、タラルペノールアセテイ トなどのほか苦味質タラクサシン、ステロイドのタラクサステロールなどを含む。ほかにタンニンも含む。

薬効と用い方:
健胃に:
根の乾燥したもの1日量として5〜10gを水400〜600ccで煎じて3回に分けて服用する。食前約30分に服用。服用のつどあたためる。苦味質により食欲が出るようになり、胃痛も軽くなる。
乳ばれに:刻んで乾燥した根1日量として5〜10gに、金銀花(スイ カズラ科のスイカズラのつぼみを乾燥したもので、生薬名金銀花)約 3〜5gを加え、水400〜600ccでせんじ、3回に分け服用。服用のつどあたためる。
催乳に:母乳の出をよくするのに、乾燥した根のみをせんじ、茶こしでこして、あたたかいうちにお茶がわりに服用する。1日量5〜15g を用いる。
血清肝炎(B型肝炎)に:黄疸症状があられれるようになると、体がだるくなり、皮膚が黄色に、白目が黄色になる。このようなときに、刻んだ根の乾燥したもの10〜20gを水400〜600ccを加えてせんじ、これを1日量として3回に分けて服用する。
いぽとりに:花茎や根を折ると白い汁が出るが、この汁を直接患部に塗る。1日何回か繰り返す。
鎮咳や去痰に:花、葉、根を含めた全草を採取し、刻んで水洗いののちよく日干しにする。これを1日量15〜20gに水400〜600ccを加えて煎じ、1日3回に服用。服用のつどあたためる。
解熱に:かぜなどで発熱したとき、乾燥した花を適量茶こしに入れ、 熱湯を注いでお茶がわりに飲む。
切り傷に:生の葉をもんで出た汁を、患部に塗る。
強壮に:全草のエキスを還少丹(かんしょうたん)という。毎日少量を服用すると、筋骨を強くし、老化防止薬となる。今日では市販品がないので、自家製のタンポポエキスを作るより方法はない。あるいは、乾燥した全草10〜20 gを水400〜600ccでせんじ、これを1日量として、3回に服用してもよい。服用のつどあたためること。
その他の用途:コーヒーの代用に:セイヨウタンポポ参照 (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8514 シロバナタンポポとは(蒲公英/ほこうえい) 本州(関東以西、四国、九州)、沖縄に産す。  
日の当たる路傍や原野に生える多年草。多くのタンポポの仲間は花が黄色であるのに、これは白い。根生葉は倒披針形で羽状に中裂し、長さ20cm内外、幅3〜5cmで薄い緑色。開花は3〜5月。
総苞は薄い緑色、外側の総苞片は開花のとき外側にそり返らない。 長楕円形か卵形で、先に小さいとさか状の小角が突起するが、ときに小角のないものもある。

類似植物:ウスギタンポポ:本州中部地方以北に産し、花は白に近い淡黄白色。外側の総苞片は卵形で小角突起は小さい。

名前の由来:花が白いタンポポからこの名となった。前項のカン トウタンポポも、このものもタンポポであるが、タンポポの名の由来は諸説が多い。そのなかで、中村浩著『植物名の由来』に、 『柳田国男とその原郷』(朝日選書)の説を引用し、次のように記し ている。その要点を述べると、「鼓を打つときのタン・ポンポンという音からの連想に由来したものではないか。花茎を切り、両端をこまかく裂いて水につけると、そり返った両端が鼓の形になっ たからだ」と書かれていた、と記し、みずからこの実験をすると、 柳田先生のいわれる鼓形になったとし、タンポポ説はこれからではないかとの説を立てた。またの一説は、「田菜ほほ」で花か終わり、白い冠毛が風によってほほけることからという。

採取時期と調整法:開花期に根を掘り、水洗いし、こまかく刻み、日干しにする。葉も同様に日干しにする。花は春先につんで、洗わずにそのまま日干しにする。あき缶などに防湿剤とともに入れて保存しておくと、必要なときに使えて便利。

成分:カントウタンポポに同じ。

薬効と用い方:カトウタポポセイウタポポ同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8515 セイヨウタンポポ(蒲公英/ほこうえい) ヨーロッパ原産で、わが国のほか世界各地に分布する。明治37年ごろ、北海道 で蔬菜用に栽培された記録かおり、のち広く北海道に繁殖する。これとは別のル ートで太平洋戦争後、本州南部に帰化植物として上陸、各地に広まった。  太くまっすぐな根より出る葉は羽状に裂け、裂け方は、浅く深くさまざまで一定しない。花茎はほぼ直立に伸び、先端に1個の頭花をつける。頭花は緑黄色で径4〜5cm。総苞は長さ 2cm、総芭外片はつぼみのときから下向きになって、上向きにならないのが特徴である。花は舌状花のみで、単為生殖(処女生殖ともいう)により多数の種子ができるので大繁殖する。

類似植物:カントウタンポポ、エゾタンポポが似ている。花のと き、総苞外片が外側にそり返るのがセイョウタンポポ。カントウタンポポ、エゾタンポポはそり返らない(図参照)。

名前の由来:ヨーロッパ原産でわが国に帰化した植物から、セイ ョウ(西洋)タンポポの名となる。

採取時期と調整法:カントウタンポポ参照。

成分:カロチノイドのフラボキサンチン、セスキテルペノイドのジハイドロタラキシンなどを含む。

薬効と用い方:
カトウタポポ同じ
その他の用途:コーヒーの代用のタンポポコーヒー: 根を据りと り、洗って刻み、フライパンで気長にいると、味がコーヒーに似る。カフェインを含まないので、鎮静、催眠作用がある。ヨーロッパで普及しているが、材料は豊富なので利用をすすめたい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8516 ヤマザクラとは(桜皮/おうひ) 本州(宮城県、新潟県より南西)、四国、九州の山地に産し、朝鮮半島南部に分布。  
山地に生える落葉高木で、高さ15〜25mになり、樹皮は暗紫褐色。
新芽の若葉は、茶色、赤、赤褐色、黄色、緑色と変化が多い。成葉は 長楕円形か卵状長楕円形で、長さ8〜12cm、幅3〜5cm、先は鋭くとがり、基部は丸く、縁には鋭い鋸歯があり、裏面は白緑色。葉柄の上 部に2個の腺点がある。花は4月、葉の展開と同時に開き、散房花序 に2〜5個をつけ花径2.5〜3cm、花弁は広倒卵形で淡紅色。雄しべは35〜40本で無毛。果実は球形で、5〜6月に紫黒色に熟す。

類似植物:ベニヤマザクラ(オオヤマザクラ、エゾヤマザクラ):本州の中部以北に分布する落葉高木。5月ごろ花と葉は同時に展開する。 若葉は赤褐色、成葉は緑色で、広い楕円形か卵状楕円形、先はとがり、 基部は丸いか浅い心形、縁に鋭い鋸歯がある。葉柄は1〜2.5cmで無毛。 花は淡紅色で径4cmと大きく美しい。花弁は広い楕円形か円形で、先はへこむ。雄しべは多数で花弁より短い。萼片は金縁で無毛。果実は 紫黒色に熟す。ヤマザクラの花は散房花序につき、ベニヤマザクラは散形花序につく。花の色がヤマザクラより赤みが強いのででベニヤマザクラとなり、花が大きく枝も太いのでオオヤマザクラの名が生まれた。北海道に多いのでエゾヤマザクラとも呼ばれる。

名前の由来:本居宣長の有名な和歌に「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」がある。宣長は、淡泊な花で散りぎわがよい、これが日本人の気性に合うということで、ヤマザクラをことのほか愛した。 また、そのころの日本人は心の象徴としていた。  サクラは古くは佐久良、佐区羅と書き、桜の字は用いていない。漢字の桜が出てくるのは『万葉集』からで、そのころ唐の文献に桜桃が見え、桜桃の桜をサクラの漢学名に当てた。中国にはヤマザクラがないので、このものに対し中国名はない。桜桃はわが国にはないカラミザクラ(別名シナミザクラ)の中国名で、日本で栽培されるセイョウミザクラ(サクランボ)ではない。『古事記』の木花開耶姫(このはなさくやひめ)の木花はサクラをさしたもので、開耶が転訛しサクラになったとする語源説がある。

採取時期と調整法:夏期に樹皮をはぎとり、日干しにする。葉は葉桜のころ採取、日干しに。

成分:フラボノイドのサクラネチンとこの配糖鉢のサクラニン、ゲンカニンとこの配糖体のグルコゲンカニンなどを含む。

薬効と用い方:
鎮咳に:
よく乾燥した樹皮を1日量15〜20gに水400〜600ccで煎じて3回に服用する。煎じるとき少量の砂糖を加えるとよい。
解熱に:乾燥した樹皮1日量15〜20gを水600ccで煎んじ、3回に分け、あたためて服用。
打撲傷に:乾燥した樹皮1日量15〜20gを水400〜600ccで煎んじ、その煎汁をタオルなどに含ませて、患部に当てる。
二日酔いに:乾燥した樹皮1回量5gを水400〜600ccで煎じて服用する。酒を飲む前に飲むと二日酔い防止になる。
魚肉による食中毒に:乾燥樹皮1回量5〜7gを水400ccでせんじ、服用。
スペインかぜの流行と樹皮のエキス:第一次世界大戦が終わった大正7年、スペインかぜがわが国にも大流行し、死者15万人となった。当時のわが国の人口は約7000万人である。かぜ薬が払底したとき、熊本市のある医院で、医院のお手伝いさんが、「私の生まれた五木村では、サクラの木の皮をせんじて飲ませると、せきが止まるといってよく用いる」と知らせた。さっそく樹皮のエキスを作り患者に与えると、鎮咳・去痰の効があった。フラボノイドの配糖体が薬理効果をあらわしたものであろう。のちになって製薬会社がブロチンの名で製品化している(ホームページ管理者注:製品名ブロチン、会社名:第一三共 処方薬:桜皮エキス末 、薬価:散 1g 6円40銭、2008年8月現在)。
その他の用途:安眠枕に エドヒガンに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8517 オオシマザクラとは(桜皮/おうひ) 伊豆半島、伊豆諸島の特産。房総半島、三浦半島、関東地方南部の温暖な地域に分布する。  
山地に生える落葉高木で、高さ8〜15m、樹皮は暗紫褐色。葉は倒卵状長楕円形で長さ8〜13cm、緑には鋭くとがる鋸歯があり、葉質やや厚く光沢があって、両面無毛。裏面は淡緑色で脈が隆起 している。葉柄は無毛で、上部に2個の腺点がある。開花は3〜4月、花と葉は同時に展開し、新葉は鮮緑色。花は白く、径3〜4cm、3〜4個を散房状につける。花弁は5枚で先は浅く2裂し、 芳香がある。萼は筒状部が長さ7〜8mmで無毛、裂片は5で長さ 6〜7mm、披針形で緑に鋸歯がある。雄しべ多数で花柱とほぼ同じ長さ。雌しべは無毛。果実は球形で紫黒色に熟す。

類似植物:ソメイヨシノ、エドヒガン 

名前の由来:伊豆の大島に古くより野生のサクラが見られたので、 オオシマザクラとなった。

採取時期と調整法:夏期に樹皮をはぎとり、日干しにする。葉は 葉桜の時期に採取し、日干しに。桜餅用には葉を1枚ずつ重ねて束ね、塩漬けにする。重い石をのせ、半年以上漬け込む。

成分:フラボノイドのサクラネチン、この配糖体のサクラニン、 ゲンカニンとこの配糖体のグルコゲンカニンなどを含む。葉にはクマリンを含む。葉が塩漬けにされているとき、加水分解の反応によって芳香性のクマリンが遊離する。生の葉には芳香性はない。

薬効と用い方:
鎮咳、解熱、打撲傷、二日酔い、魚肉による食中毒:
ヤマザクラに同じ。
その他の用途:桜餅に:伊豆半島の海岸線にオオシマザクラが多い。菓子屋は塩漬けにした葉を仕入れて、桜餅を作る。芳香と塩味を楽しむ。
安眠枕に:エドヒガンに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8518 エドヒガンとは(桜皮/おうひ) 本州、四国、九州の山野に生える落葉樹で、済州島に分布する。高さ20mに達し、径は約1mとなる。樹皮は縦に裂け、暗灰褐 色、皮目が散在する。葉の出る前に開花。開花期は4月上旬、淡紅色の5弁花を数個、散房状につける。花柄は長さ1.2〜3cm、微 毛が生える。萼筒は基部がふくらむ。萼片は長楕円形、こまかい鋸歯があり、萼筒とともに淡紫紅色。花弁5枚は楕円形で先端は へこむ。花柱の下部に微毛がある。よく展開した葉は倒卵状長楕円形か長楕円形、平行し斜上する側脈が多く、先はとがり、こまかい鋸歯がある。表面には軟毛があり、裏面は脈に沿って毛が生える。

類似植物:コヒガンザクラ(ヒガンザクラ):エドヒガンとマメザクラとの雑種とされ、野生はなく、庭などに栽培される。エドヒガンより小木であるので、コヒガンザクラと呼ばれる。花柱が無毛であるのでエドヒガンと区別がつく。

名前の由来:江戸彼岸の意で、春の彼岸に咲き、江戸に多かった ためこの名となる。別名のアズマヒガンは東彼岸で、東国(関 東)に多いのでこの名となり、ウバヒガンは葉(歯)のないときに花が咲く、というので、姥(うば)にたとえたもの。

採取時期と調整法:寒い冬期を除き、春、夏、初秋に樹皮をはぎとり、日干しにする。

成分:フラバノンの配糖体サクラニンのデヒドロ体グルコゲン力カニンを含む。

薬効と用い方:
鎮咳、解熱、打撲傷、二日酔い、魚肉による食中毒に:
ヤマザクラに同じ。
その他の用途 安眠枕に:葉桜のころ葉を採取して、日干しにして、枕のしんにして使用する。安眠の効果がある。他のサクラの葉でもよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8519 ソメイヨシノとは(桜皮/おうひ) エドヒガンとオオシマザクラの自然雑種。北海道、本州、四国、九州の暖帯から温帯にかけて植栽される。落葉高木で、高さ約7m、樹皮は暗灰色、枝が横に伸びる特有の性質がある。葉は互生し、広卵状楕円形で先はとがり、縁には鋭い重鋸歯がある。花は4月上旬、葉の展開する前に開花、前年に伸びた枝の葉腋に3〜5花を散形花序につける。花弁は5枚で淡紅色、雄しべ多数、雌しべ1本、花柱の下部は白毛を密生。萼は筒形。果実は球形、紫黒色に熟す。生長が早く、花つきがよく、花期には花が見えないほど爛漫と咲き誇る。全国各地に栽培され、サクラというとソメイヨシノをさすようになった。

ソメイョシノの命名と普及:江戸末期から明治の初め、駒込の染井村(現在の豊島区駒込あたり)の伊藤という植木屋が、このサ クラの広まるきっかけをつくった。幕末、戊辰戦争で彰義隊が上野の山に立てこもり、一帯が焼け野原となった。戦も終わり、世の中が平静となって、伊藤と配下の職人たちが上野の山にサクラの苗木を植え始める。それからしばらくたって、その中にヤマザクラと違うサクラのあることに気づく。職人たちは、これをヨシノまたヨシノザクラと呼んでいた。明治17年か18年、上野にあっ た文部省博物局の植物学者藤野寄合により、大和吉野山のヨシノザクラと区別するため、染井村の村名をつけ、ソメイヨシノと命名された。このサクラは、最初アメリカの樹木専門学者ウィルソ ンが、エドヒガンとオオシマザクラの雑種であろうと予言した。 のちに日本の国立遺伝研究所の研究員竹中要により、2種の雑種であることが実験的に証明され、世界的な話題となった。

採取時期と調整法:オオシマザクラに同じ。

成分:オオシマザクラに同じ。

薬効と用い方:オオシマザクラ、エドヒガンに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8520 ミツマタとは ミツマタはコウゾとともに、和紙の原料として、古くから日本文化に大きなかかわりをもってきた植物である。  
中国、ヒマラヤが原産地。わが国には古い時代に中国から渡来。
自生のミツマタはなく、全国各地で栽培されている。温暖な気候を好むので、特に高知県を中心とする四国で盛んに栽培され、ほ かに島根、岡山、鳥取の各県も産地として知られている。  
高さ1〜2m、幹は直立し、全株が絹状の長い栗毛か硬毛におおわれている。枝は赤褐色で、通常枝先が三つに分かれ、皮目があるのが特徴。和紙の原料には、この樹皮が用いられる。葉は互生し、長さ8〜16cm、幅2〜3.5cmの披針形で、葉質は薄く、表面は鮮緑色、裏面は多少白みを帯びる。葉の縁はなめらかで、表面には長い毛が生えている。2〜4月にかけて、ほのかな香りのす る、ジンチョウゲの花に似た形の頭状花を下向きにつける。花びらはなく、萼は円筒形で先が4裂し、内側は濃い黄色で無毛、外 側は白色でやわらかい細毛が密生している。雌しべは1本。8本ある雄しべは、萼の内側に上下2列に4本ずつ並んでいる。ミツマタは花が咲き終わってから葉が出てくるのが特徴。

名前の由来:枝先が三つに分かれていることから、ミツマタ(三叉)と呼ばれる。漢名は黄瑞光(おうずいこう)。

採取時期と調整法:つぼみのうちに、頭状のかたまりごとつみ、 水洗いしてからばらばらにほぐし、風通しのよい日陰で2週間ほ ど乾燥する。生薬名は夢花(むか)というが、市販されていない。

成分:ステロイドの24ーメチールコレスター5ー8ー17(20)トリエンー3ーべーターオールを含む。

薬効と用い方:
多涙症の改善に:
1日量として乾燥つぼみ4gに水300ccを注ぎ、弱火で2/3量に煎じる。熱いうちに茶こしでこし、3回に服用。服用のつどあたためる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8521 アボカドとは(アボガド) コロンビア、エクアドル、メキシコ南部など熱帯アメリカ原産で、世界の暖地に広く栽培される。わが国でも、静岡、和歌山、高知、愛媛、鹿児島、沖縄の諸県など温暖な地方で栽培されている。  
常緑高木で7〜20mになる。樹皮は灰色で樹肌はざらつく。若枝は緑色でなめらか。葉は披針形か倒卵形で長さ約20cm、幅約6cm、全縁で濃緑色。革質で表面無毛、裏面には微毛が生え、白みを帯びる。長柄により互生する。1〜4月に開花。上部葉腋より円錐花序を出し、黄緑色の花を多数つける。花径8〜9mm、花被に細毛があり6枚。雄しべは3輪に並び9本。内側の雄しべの基部に黄色の腺体があり、子房は1室、1胚珠、柱頭は1個。果実は大きい洋梨形で長さ20cm、幅10cmに達する。果皮は緑色、褐色、黒紫色など。果肉は黄緑色、種子は球形で大きく1個、中に子葉がある。

主な品種:アボカドには多くの品種がある。
(1)メキシコ系:葉と果実にアニス(セリ科)やサッサフラス(クスノキ科)の香りに似た芳香があり、果皮が薄くやわらかい。
(2)西インド系:アニス、サッサフラスに似た香りがなく、果皮は厚く革質でなめらか。
(3)グァテマラ系:アニス、サッサフラスに似た香りがなく、果皮は厚く、 ざらざらしている。  
果形も、洋梨形のほか球形、卵形、細長うり形、なす形などがある。
果皮も黄、黄緑、緑紅、暗紅褐色など多様。

名前の由来:アボカドの名はメキシコアステカ族の土語アウアカトルに由来し、1696年、イギリス人のスローン卿によってアボカドと名づけられ、今日この名称が一般に用いられるようになる。別名にアリゲー ターペアがあって、和名はワニナシ。ワニのうろこに似ているというのでつけられたが、ワニナシよりアボカドのほうがわが国では広く通用している。

採取時期と調整法:果実は、産地で1〜8月まで出荷され、わが国では果物屋の店頭で求めるのがよい。種子は水洗い後、刻むか砕いてから陰干しにする。果肉を食べたあとの種子で作り、缶に乾燥剤ととも に入れて保存しておくとよい。

成分:『四訂日本食品標準成分表』(1991年)によると、可食部100gあたりの含量を次のように記してある。エ不ルギー191kcal、タンパク質2.5g、 脂質18.7g、糖質5.2g、繊維2.1g、灰分1.4g、カルシウム9mg、リン55mg、鉄0.7mg、ナトリウム7mg、カリウム720mg、ビタミンA・カロチン 120μg、ビタミンB1 0.1mg、ビタミンB2 0.2mg、ナイアシン2mg、ビタミンC 15mg、 このほか、成熟した果実中にアバカチン、ペルセイタという糖分を含む報告がある。植物性脂肪、タンパク質、カリウム、ビタミンA、カロチンなどの多い健康食品である。

薬効と用い方:
神経痛に:
砕いて乾燥した種子を、1日量10〜15gに水400〜600ccを加えてせんじ3回に分服。
利尿に:むくみのあるときに用いるとよい。よく乾燥した葉5〜10g を1日量として、水400〜600ccでせんじ、3回に分服。
糖尿病患者の食事療法に:
デンプン質、糖分などを含まないほか、植物性脂肪を30%、タンパク質10〜20%を含み、栄養価の高い果物である。「バターフルーツ」、「森のバター」とも呼ばれ、この脂肪は不飽和脂肪酸なのでつ血管中のコレステロールがたまる心配がない。糖尿病のときの栄養食として利用するとよい。
その他の用途 果物として:縦に切って種子を抜き、果肉をスプーン ですくいながら食べる。種子のあとのくぼみに少々の食塩を加え、まぜ合わせながら食べてもよい。酸味と合うので、くぼみにパイナップルやグレープフルーツ、レモンなどを盛り、フルーツサラダとしてもよい。

原産地では:通経剤として、乾燥したつぼみをせんじて服用している(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8522 ヤブツバキとは 北海道を除くわが国各地、朝鮮半島南部、台湾に分布する。  
常緑高木で高さ5〜6m、また15mに達するものもあり、直径50cmの大木もある。幹は灰白色でなめらか。葉は革質で、表面に光沢があって無毛。長楕円形で長さ5〜12cm、縁にこまかい鋸歯があり、先はとがり、基部は広いくさび形。葉柄により互生につく。開花期は11月〜翌年4月までと長い。萼片は多数の萼苞片と瓦重ね状に配列する。花弁は5〜6枚、下部で合生し、半開きが多い。花色は紅色、濃紅色、淡紅色、まれに白色もある。雄しべは多数で花糸は白く、葯は黄色、花糸の下半分は合着していて筒状。花弁は雄しべの筒状部とともにポトリと落下する。花後の果実は刮ハを結び、中に数個の種子ができる。

名前の由来:葉がつやつやしているから「つや葉木」、これが詰まってツバキになったという説がある。朝鮮半島ではツバキをツンパク(冬柑)と呼んでいるので、これから転訛したのではないかともいう。わが国特産のツバキには漢字がない。「春に花を咲かせ る木」という意味の椿は、昔の人が考えた和字である。

採取時期と調整法:開花直前の花、またはつぼみを採取し、水洗いし、陰干しにする。ツバキ油は、秋から冬に果実を採取し、天日乾燥ののち種子を砕き、蒸熱して圧搾、濾過し、精製する。わが国では、伊豆諸島、九州、五島列島の特産品。

成分:ユキツバキに同じ。

薬効と用い方:
ツバキ油を軟膏の基礎剤に:
オリーブ油の代用としてパスタ剤、軟膏の基礎剤の材料と して製薬会社が多く用いている。
整腸に:乾燥した花5〜10gを水600ccでせんじ、1日数回に服用する。服用のつどあたためる。便がゆるむときにもよい。
その他の用途:ユキツバキに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8523 ユキツバキとは 日本海側の秋田県より滋賀県北部までの多雪地帯の低山帯に分布する。 わが国の野生ツバキは、ユキツバキとヤブツバキがある。  
冬期に枝葉が雪の下にうずもれ、幹が上に伸びず、斜めに伸びて低木状になる。葉は網状の脈が透明に見え、葉柄は若いときは有毛。葉の横断面(図参照)は、クチクラ層の下に表皮細胞の2層が並び、その下に柵状組織の細胞が並んでいる。この表皮細胞の2層は、ヤブツバキの葉にはない。開花期は5〜6月。赤色の5弁花を開くが、花弁は質薄く、先が2裂する。雄しべは多数で基部のみ合着。

名前の由来:雪の多い地方にのみ見られるツバキによる。

採取時期と調整法:ヤブツバキに同じ。

成分:精製したツバキ油は、脂肪40〜65%を含み、その主要成分はオレイン酸グリセリドで、不飽和脂肪酸としてオレイン酸、リノール酸を含んでいる。花弁には、多量のタンニンを含む。

薬効と用い方:ツバキ油は軟膏の基礎剤に、花は整腸に:ヤブツバキ同じ
その他の用途 毛髪油、刀剣油などに:空気酸化がおそく、粘着しないので、整髪用に。また刀剣など金属類のさび止めに用いる。
江戸紫染めの媒染剤に:江戸時代に神田上水の水とムラサキの根、伊豆大島の椿灰による品質のよい江戸紫染めが有名になった。葉や枝を焼いた灰を媒染剤にすると、鮮やかな紫色が得られる。
釉薬に:陶磁器の表面にガラス状の被膜を作るのに椿灰を用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8524 オノエヤナギとは 沖縄を除いたわが国各地に産し、サハリン、カムチャッカ、千島列島に分布する。多くは川岸などの湿地帯に多い落葉高木。高さ約10mほどに伸びる。樹皮は淡褐色。古くなると不規則に縦に裂ける。葉は披針形で長さ10〜20cm、幅1.5〜2.5cm、先はとがり、基部はくさび形、緑には不明瞭な波状鋸歯がある。表面は暗緑色で光沢があり、裏面は淡緑色か粉白色。開花期は3〜5月。雌雄異株。雄しべ2本は両面白色の苞の内側につき、花糸は無毛で苞は有毛、腺体は1個。葯は黄色、雌花の子房は有毛、柱頭は2裂(図参照)。

名前の由来:『牧野新日本植物図鑑』によると、著者が初めてこのヤナギを土佐(高知県)で採取されたとき、山の尾根に生えていたので、オノエヤナギと命名したとある。

採取時期と調整法:4〜5月に葉と樹皮を採取し、水洗いしたあと日干しにする。よく乾燥したあと、手でもみ、こまかくする。

成分:樹皮と葉にはほぼ同じ成分を含み、フラボノイドのサルシンのほか、タンニンを含む。またジハイドロミリセチン、ミリセチンも含む。

薬効と用い方:
かぜの解熱に:
茶こしに乾燥した樹皮か葉、 また、これらをミックスしたものを入れ、熱湯を注ぎ、なるべくあたたかいうちに服用する。
血清肝炎のときの黄疸症状に:乾燥した樹皮のみを1日量として15〜25gに水400〜600ccを加えてせんじ、3回に分け服用する。服用のつどあたためるとよい。
あせもに:乾燥葉を適当量の水でせんじ、煎汁で患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8525 コゴメヤナギとは 関東より近畿地方までに産し、わが国の特産。  
日当たりのよい川岸や湿地に生える落葉高木で、高さ15〜25m。 遠方より見ると、樹形がシロヤナギに似ている。樹皮は黒褐色で縦に裂ける。若枝には灰色の毛があり、のちに毛は落ち、褐色でなめらかになる。葉が伸びて成葉となると長楕円状披針形で、長さ4〜8cm、幅8〜12mm、先端はしだいに細くなり、とがる。基部は鈍い円形、縁にこまかい鋸歯がある。表面に光沢があり、裏面は粉白色。開花期は4〜5月。雄花の花序は長さ約2cm、軸に白色の軟毛があり、雄花は雄しべ2本、腺体が2個、葯は黄色。 雌花の腺体は1個で、柱頭は紅色、子房は無毛。苞は淡黄色。刮ハは2裂し、白色綿に包まれた種子を出す。

類似植物 シロヤナギ:コゴメヤナギの子房が無毛なのに対し、 シロヤナギは有毛。葉裏はコゴメヤナギより白い。産地は本州北 部より北海道。コゴメヤナギは関東より近畿地方までに産する。  

名前の由来:飯沼慾斎著『草木図説』木部(1856年)に、コゴメヤナギの図をのせ、「その葉細きを以て邦俗之(これ)をコゴメヤナギの名を下す」とある。これより一般にコゴメヤナギと呼ぶようになった。
今日のコゴメヤナギの名づけ親は、飯沼慾斎であった。

採取時期と調整法:4〜5月に葉と樹皮を採取し、水洗いしたあと日千しにする。よく乾いてから、手でもみ、こまかくする。

成分:葉と樹皮にほぼ同じ成分を含む。フラボノイドのサルシンのほか、タンニン、ジハイドロミリセチン、ミリセチンを含む。

薬効と用い方:
かぜの解熱に:
オノエヤナギと同様に、お茶がわりに飲む。
血清肝炎のときの黄疸症状に:オノエヤナギに同じ。
あせもに:オノエヤナギに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8526 シュンランとは 北海道(奥尻島)、本州、四国、九州(種子島まで)に自生する多年草。  
根は白く、ほぼ同じ太ささのものが多数出る。かたくて常緑の細長い葉を四方に多数出し、葉の先はとがり、緑には微細な鋸歯が あってざらつく。中央部はゆるいV字形にへこみ、上半部は湾曲してたれ下がる。3〜4月、根ぎわより直立して出る花茎は緑色のない肉質で、数個の膜質鱗片でおおわれていて、その先端に1個の淡い黄緑色の花をつける。萼片は倒披針形でその質はやや厚い。花弁は萼片と同形だがやや短く、白色で濃い紅紫色の斑点がある。花後結ぶ果実は刮ハで、大きく直立し、長さ5cmにもなる。

名前の由来:中国特産のラン科の春蘭に似ているので、日本語読みでシュンランとなった。中国の春蘭はわが国には自生しない。

別名、方言のいろいろ:別名のホクロは、花弁(唇弁)の斑点をほくろに見立てたもの。方言にジイサンバアサン、ジジーババーがあるが、この花の雄しべ、雌しべから由来したと考えられる。

採取時期と調整法:必要時に根を掘リとり、刻んで日干しにし、 ミキサーなどで粉末にする。

成分:サポニン類を含むという報告があるほかは、解明されてい ない。

薬効と用い方:
ひび、あかぎれに:
乾燥した根の粉末を、ハンドクリームに練り合わせ、患部に塗る。
その他の用途:つぼみ、花を料理に:サラダの彩りとして生食するほか、薄い衣をつけて天ぷらに。少量の酢を入れた熱湯でさっ とゆでて、椀だねや酢の物にする。
花酒に:つぼみ、花を3倍量のホワイトリカーに漬けて花酒に。
蘭茶に:蘭茶は塩漬けにした花に湯を注いで香りを楽しむ飲み物で、古来からわが国ではおめでたいときのお茶として用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8527 アッサムチャとは 亜熱帯地方産で、インド、スリランカ、ベトナム、タイ、ミャンマー、中国西南部に産し、これらの地方で栽培する。わが国では冬期温暖な四国、九州以外での栽培は無理である。  
チャによく似ているが、チャより幹が高く、8〜15cmに達するものがある。葉も大きく長さ8〜15cm、幅3.5〜5cm、先端はとがり、葉の質は薄く、葉脈と葉脈の間は表面に盛り上がってしわが多い。白い花弁は7〜9枚、種子もチャより大きい。

名前の由来:インド東部のアッサムに多いので、この名となる。

紅茶として飲用:アッサムチャは直接薬用とせず、紅茶として飲用する。緑茶用のチャでも紅茶はできるが、葉が大きく葉質が薄くやわらかいアッサムチャのほうが適している。作り方は、若葉 を採取し、しおらせてもみ、発酵室で約1時間発酵させ、乾燥機で乾燥する。発酵室は20〜25度、湿度98%に保たれ、ここで紅茶特有の色と香りが出てくる。紅茶の発見は中国の宋の時代。イギリス人が17世紀のころ中国の厦門の港よりインド洋を通ってイギ リスに運んだのが始まりで、インドやイギリスは紅茶発祥の地ではない。インド洋を航海中に緑茶が発酵を起こし、イギリスに到着したとき紅茶になっていたというのは作り話である。緑茶は世界の茶の消費量の約20%だが、紅茶は80%にあたる。

紅茶の効用:紅茶はタンニンを多く含むので、この分解したカテキン類が肉食の消化を助ける効果がある。中国では肉食による食あたりのときに、紅茶5〜10gをせんじて服用している。紅茶にはビタミンCがないので、これを補うためにレモンを加えてレモ ンティーにするとよい。

烏龍茶と鉄観音茶:中国福建省、台湾に栽培されるアッサムチャを原料に、緑茶と紅茶の中間の発酵によって製茶されたもの。肉食の消化が促進されるという(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8528 イヌナズナとは 北海道より本州、四国、九州に産し、朝鮮半島、中国、そのほか北半球に広く分布する。  
日当たりのよいたんぼのあぜ道、小川の縁などに生える2年草。
高さ8〜25cm。全草に星状毛が生え、一本立ちに伸びる。根生葉は長さ2〜4cm、長楕円形で先端が鈍く、縁は低い鋸歯、葉柄はない。茎出葉は互生し、葉の基部は茎を抱き卵状楕円形で、長さ 1〜2.5cm、縁は鈍い鋸歯で先端は鈍い。4‐5月に黄色の小花を総状花序につける。花弁は長さ3mm、先端はややへこむ。雄しべ 6本、うち4本が長い。果実は、1〜1.4cmの長い果柄の先に短角果を結ぶ。種子は長さ4mmの楕円形。

類似植物 シロイヌナズナ:日当たりのよい海岸や草地に生える2年草で、北海道、本州、四国、九州に産し、朝鮮半島、中国、 ヨーロッパ、アフリカなどに分布する。茎の高さは1.5〜30cm、根生葉は倒披針形で長さ1〜6cm、茎出葉は小さく、葉柄はなく互生。葉の両面に二つに分かれる分抜毛が生え、茎には開出する単毛が生える。4〜5月に径約4mmの白色4弁花を総状花序につける。

名前の由来:ナズナは食用になるのに、これは食べられない、役に立たないという意味の犬ナズナとなった。

採取時期と調整法:果実が熟す一歩手前に全草を採取して日干しにし、種子をたたき落として集める。生薬名テキレイシ。

成分:まだ解明されていない。

薬効と用い方:
利尿に:
テキレイシは単味では用いず、次の処方で服用する。

十水散(じゅうすいさん):テキレイシ、大戟、沢漆、蜀椒、桑根、巴豆、芫花、甘遂、茯苓、雄黄(各等分)。
テキレイシ散:テキレイシ20g、藍葉3g、大黄1.5g。
★わが国ではテキレイシの生産はなく、中国より輸入する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8529 ザゼンソウとは 本州の日本海側を中心に、北海道まで分布。中国にも産する。 北アメリカには、悪臭が一段と強い変種を産し、スカンク・キャ ベジと呼ぶ。スカンクは強烈な悪臭を放つ北アメリカ産小形動物。  
多年草で山地の湿地帯に生え、根茎は多肉質で直立して大形。全草に特異の悪臭があるので、忌みきらわれることもある。3〜5 月、葉がまだ伸びないときに開花するが、大きい袋状の暗紫褐色をした仏炎苞が地上すれすれのところにあらわれる。その中に、 楕円形で長さ2〜4cmの1個の花序があって、この表面に多数の小花をつける。1個の小花は両性で、肉質に肥厚した4枚の花被、 4本の雄しべをもち、その中央に雌しべの柱頭が小さく頭を出し ている。花が終わると、長さ幅とも30〜40cmの大形の円心形の葉 が出て、四方斜め横に広がる。果実は初夏に熟し、やがて地上に倒れてくずれ落ちる。

類似植物 ヒメザゼンソウ:ザゼンソウは花が終わってから葉が出るが、ヒメザゼンソウは葉が出てから咲くところが違う。北海道から本州の日本海側に産し、中国に分布する。

名前の由来:仏炎苞の中の花序が、においもいとわず僧が座禅をしている姿に似ているのでこの名となった。別名ダルマソウともいう。花が終わってから出る葉が、牛の舌に似ているというので、 ベコノシタの名もある。

採取時期と調整法:必要なときに、葉柄を含めた葉をとり、洗って生のまま用いる。

成分:よくわからない。

薬効と用い方:
毒虫に刺され、かゆみのあるときに:
葉や葉柄の汁を直接患部にはる。
アメリカでの民間療法:葉や葉柄を採取し乾燥させてから利尿、吐きけを止める目的で、 煎じて服用している(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8530 ウシハコベとは わが国各地に産し、ヨーロッパ、北アフリカ、アジアの広い地域に分布し、北アメリカ東部に帰化している。山野にふつうに生える2年草、ときに多年草。下部は地面をはうように伸び、上部は斜めに立ち上がり、高さ30〜50cm。茎は枝分かれが多く、上部は毛や腺毛が生えている。葉は広卵形で長さ 3〜8cm、幅8〜30mm、先端はとがり、基部は浅い心形か円形。 花期は4〜10月。花は白色で集散花序につく。花弁は5枚で、深く2裂する。萼片は長卵形で長さ4〜5mm、表面に腺毛を散生す る。花弁、萼片は同じ長さで、雄しべ10本、花柱5本。花柄は花後に下向きに曲がる。果実は5裂し、さらに2裂する。種子は卵円形で長さ約1mm、表面に突起がある。

類似植物 ハコベ、コハコベ:ハコベは小鳥の餌にするおなじみの草。コハコベは、ハコベ、ウシハコベによく似るが、雄しベ1〜7本、種子は表面に低い小突起がある。ハコベは雄しべ4〜10 本、種子の表面にとがったいぼ状突起がある。

名前の由来:ハコベによく似て、ハコベより犬きいので、牛の名前がついた。

採取時期と調整法:春〜夏に全草を採取、水洗いのあと陰干しに。

成分:フラボンのアピゲニン型のアピゲュンー6、8−ジーCー グルコシールフラボンを含む。

薬効と用い方:
歯茎の出血、歯槽膿漏の予防に:
ジューサーなどで生の全草から青汁を取り油気のないフライパンに移し、弱火で熟し、あら塩を加えながら乾燥させ、 緑のハコベ塩を作る。これを指先につけて歯を磨くとよい。
催乳に:乾燥した全草1日量10gを水600ccでせんじ、数回に服用。
痔に:青汁を脱脂綿などに含ませ、患部に塗る。
おできに:乾燥した全草を水よりせんじ、煎汁で患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8531 ディコとは インド原産、アジアの熱帯に広く分布する。わが国では沖縄各地に栽培されて、街路樹、公園樹などふつうに見られ、沖縄の県花になっている。小笠原にも分布、ここでは野生化している。  
落葉高木で高さ10〜20mに達し、枝は大く、淡褐色。枝には多数のとげがある。葉は3出複葉で互生。小葉は広卵形かひし形状広卵形で、長さ8〜18cm、幅12cmほど、先は細長くとがり、基部は切り形か円形。小葉の両面は無毛か、ときに短毛が生える。開花期は3〜4月、茎上に長さ2.5cmほどの総状花序を出し、蝶形花を密生させる。花は朱赤色で大きく美しい。雄しべ10本で、うち 1本は離れてついている。萼は長さ約4mmで先は5裂。豆果は長さ10〜30cm、帽約2mmで、くびれのある数珠状、黒褐色に熟す。

類似植物 カイコウズ:南アメリカ原産の落葉高木。小集は卵状長楕円形か卵形、葉柄にとげがある。開花期は6月、蝶形花は紅 色で美しい。鹿児島県の県木となっている。和名のカイコウズは漢名の海紅豆(かいこうず)から。別名はアメリカデイコ。

名前の由来:中国地方南部に古く渡米して栽培され、梯姑(ていこ)と漢名を当てていた。これを音読みし、テイコ、のちにデイコとなった。 沖縄地方では、デイゴ、デーク、ディーグと呼ぶ。

採取時期と調整法:開花期のころ樹皮をとり、日干しにする。

成分:エリスリナアルカロイドのエリスラルチン、イソフラボノイドのアルピヌウムイソフラボン、エリスリニンA・Bを含む。

薬効と用い方:
腰痛に:
1日量として乾燥した樹皮10〜15gを水600ccで煎じ数回に分けて服用する。
寄生性皮膚病に:乾燥した樹皮200gを水600ccでせんじ、この汁で 患部を洗う。
その他の用途:
(1)海岸防風樹として植える。
(2)漆器の素材とする。
(3)花が美しいので街路樹、公園樹に植える(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8532 トキワイカリソウとは 本州(東北地方より山陰地方)の日本海側に多い多年草。  
葉は2回3出複葉、厚くかたく、表面に光沢があり、縁に剌毛があり、冬にしぼまず越冬する。小葉は長さ5〜12cm、幅3〜6cmの長楕円形か卵状披針形で先端は鋭くとがり、基部はゆがんだ心形。裏面は粉白色。開花期は4〜5月。萼は花弁状で8枚、内側の4枚が大きく、外側の4枚は早く落ちる。花弁は4枚、距は長く約1.5cm、雄しべ4本、円錐花序に花をつける。花の色は北陸では白、福井県以西では紅紫色。

類似植物 イカリソウ:よく似ているが、イカリソウは冬に地上部は枯れる。イカリソウも産地により白花、紅紫色花がある。

名前の由来:イカリソウに似ていて、冬も葉がしぼまないので常磐(ときわ)の名がつけられた。別名のオオイカリソウは、葉も花もイカリソウより大きいので名づけられた。

採取時期と調整法:地上部(茎、葉、花)を6〜8月に採取し、 水洗いののち刻んで、陰干しとする。

成分:葉にフラボノール配糖体のイカリインを含み、根と根茎にアルカロイドのマグノフロリンを含む。イカリインは動物実験の結果、これを与えた雄動物の精液が増量することが知られている。

薬効と用い方:
強壮強精に淫羊霍(インヨウカク)酒を:
乾燥した地上部(淫羊霍)の細かく刻んだもの50〜80gを広口ビンに入れ、25度のホワイトリカー1.8gを加え、密閉して冷暗所におく。2〜4ヵ月漬け込んでから用いる。1回量20〜30ccをナイトキャップとして服用する。利尿作用が強いので、真夜中の排尿にならないよう、なるべく昼から夕方に飲むとよい。酒の飲め ない人は、乾燥葉10〜20gを水400〜600ccでせんじて服用。
利尿に:利尿作用が不調でむくみのあるときに用いる。乾燥した地上部5〜10gを1日量として、水400ccでせんじ、3回に服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8533 ホザキノイカリソウとは 天保年間(1830〜1844)に薬用植物として中国からわが国仁渡来。
本来は常緑多年草だが、わが国では冬になると枯れることが多い。  
草丈は20〜30cm。茎の上部から柄が伸びて、その先に長さ6〜10cm、幅3〜5cmの矢じり形の葉が3枚ずつつく。縁にはこまかい鋸歯があり、表面には光沢がある。4〜5月、黄色い花が総状花序につく。萼片は8枚で2輪に並び、外側の萼は小さく、紫色の 斑点があり、内側は白色で花弁状。花弁は4枚、雄しべ4本、雌しべ1本。卵円形の袋果を結ぶ。

名前の由来:同しメギ科のイカリソウの仲間で、花が穂状をなすのはこれだけなので、穂咲きの錨草(いかりそう)という名がつけられた。イ力 リソウは、花が錨に似ているのでつけられた。

生薬「淫羊霍」の命名と成分:ホザキノイカリソウの茎葉を乾燥させたものを、中国では淫羊霍と言い、古くから強壮強精薬とし て名高い。李時珍の『本草綱目』(1590年)には、「四川の北部に淫羊という動物がいて、一日に百回も交尾する。それは霍という草を食うからということだ。そこでこの草を淫羊霍と名づけた」とある。経験的に知られていた淫羊霍のこのような薬効を、科学的に 明らかにしたのは、日本の研究者だった。  
昭和初期、東北大学医学部の研究者たちが、ホザキノイカリソウの茎葉からフラボノール配糖休のイカリインという物質をとり出し、動物実験を行った結果、イカリインを与えた雄動物の精液分泌が増量することを発見。つまりイカリインには、男性ホルモ ン様の作用があることが証明された。

採取時期と調整法:トキワイカリソウに同じ。

薬効と用い方:
強壮強精に淫羊霍酒を:
トキワイカリソウに同じ。
利尿に:トキワイカリソウに同じ(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8534 エノキとは 本州、四国、九州の山野に生え、朝鮮半島、台湾、中国南部に分布する。  落葉高木で、高さ30m、径2mに達する。樹皮は灰色でいぼ状の突起があるが、ほぼ平らでなめらか。小枝は細毛が生え、2年目になると無毛。葉は有柄で互生し、厚い膜質、葉の長さは4〜12cm、幅3〜5cmで広い卵形か楕円形、先はとがり、基部は広いくさび形。葉の緑は基部を除き、鈍い鋸歯がある。雌雄同株。4〜5月、淡黄色の小花を開く。雄花は新枝の下部、雌花は新枝の上部に1〜3個つける。果実は石果を結び、径約6mmの球形。

名前の由来:果実を小鳥がよく食べるので、餌の木からエノキに なったという説がある。また、枝がよく燃えるのでモエノキ(燃えの木)、このモがとれてエノキとなったという説がある。枝が多くよく茂るので、枝の木よりエノキとなったという説もある。

採取時期と調整法:樹皮は夏に採取し、水洗い後刻んで日干しに。 葉は晩春より夏に採取し、水洗い後陰干しに。果実は秋に採取し、 水洗い後日干しに。根は必要なときに採取し、洗って日干しに。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
手足のしびれ、軽い中風に:
樹皮50gを木綿の袋に入れ、水400〜600ccを加え煮出したものを浴槽に入れ、ふろに入る。
ジンマ疹に:樹皮5gを水400ccでせんじ、1日2回に服用する。
うるしかぶれに:葉5〜10gを水適当量でせんじ、煎汁で患部を洗う。
腰痛に:根3〜6gを水600ccでせんじ、1日3回あたためて服用。
のどの痛みに:果実5〜10gを水600ccでせんじ、1日数回に分けて、うがいをするようにして服用する。 食欲不振に:樹皮5gを水600ccでせんじ、1日3回、食前に服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8535 セイヨウバクチノキとは ヨーロッパ南東部よりバルカン半島の原産。ヨーロッパに広く 分布する。わが国でも庭木としてときに栽培している。  
高さ2〜6mの常緑樹。若枝は淡緑色で、老木になると樹皮は 黒褐色となり、はがれ落ちる。葉は革質で厚く、上面濃緑色で光 沢があり、長さ5〜18cmの長楕円形か倒卵形。先はとがり、基部は円形かくさび形、緑に小鋸歯があり、短い葉柄により互生につ く。開花は4〜5月、前年伸びた枝の葉腋より10〜12cmの総状花序をほぼ直立に伸ばし、白色の小花多数をつける。花は径1cm、花弁は卵円形で長さ8mm。雄しべは18本。花には芳香がある。果実は長さ1.2cmほどの広卵形か球形で、秋に紫黒色に熟す。

類似植物 バクチノキ:バクチノキの花序は3〜5cmで横向きに出るのに対し、セイョウバクチノキは10〜12cmと長く、直立に伸びる。バクチノキの開花が9〜10月なのに対し、西洋種は4〜5月で、花が大きく、芳香も強い。

名前の由来:西洋博打の木より由来する。バクチノキは博打の木で、樹皮が絶えずはがれ落ち、裸のようになっているのを、博打に負けて裸になるのにたとえたもの。別名のチェリーローレルは、 イギリスでの一般の呼び名だが、花に芳香があるからであろう。

採取時期と調整法:春に葉を採取し、細切りにし、水蒸気蒸留でラウロセラズス水を作るが、素人には無理。果実は秋に採取する。

成分:葉にシアン配糖体のプルナシンを含み、酵素の加水分解によりベンズアルデヒド、シアン水素、ブドウ糖になる。

薬効と用い方:
鎮咳に:
タウロセラズ水を1回20〜40cc、そのまま服用する。
疲労回復に薬用酒を:秋に、熟す直前の果実を採取し、洗わずそのままをワインまたはホワイトリカーに漬け、数カ月おく。1回 30ccくらいを1日1回食事の前後に飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)
8536 オドリコソウとは 春から初夏に山野の半日陰の道端に生える多年草。わが国はもとより、アジアに広く分布する。  
一茶の句に「梢からはやす蛙や踊花」があるが、一茶や蛙でなくても、この花に近づいて見ると、造化の妙に心打たれ、花弁の内側はどのように、とのぞきたくなる。茎は四角くやわらかく、 高さ約40cm。葉は心形で対生し、長さ5〜10cm、縁にあらい鋸歯があり、表裏とも毛が生えている。対生する葉のつけ根より、白ときに淡紅色の唇形の花を輪生する。花の長さは2cmと大きい。
花の一つをつまんで、蜜を吸うと甘い。

類似植物 ヒメオドリコソウ:ヨーロッパ原産で、明治中期にわが国に帰化した。関東地方に多く、オドリコソウより開花期が早く、3月ごろより花が見られる。花は赤紫色で、オドリコソウより小さく、ヒメの名がついた。

名前の由来:花が、笠をかぶって踊る姿に似ているため、踊子草の名がつけられた。単に踊子ともいう。中国では野芝麻と書き、 別名竜脳薄荷ともいう。

採取時期と調整法:開花期に全草をとって洗い、日干しにする。

成分:テルペノイドのラマルピド、アルカロイドのスタキドリンを含む。この成分は同属のヨーロッパ産オドリコソウのもので、 わが国のものとほぼ同じであると思われる。

薬効と用い方:
腰痛に:
木綿の袋に乾燥した全草一つかみを入れて、浴槽に入れ、浴湯料とする。
中国での民間療法:月経不順や泌尿器系の疾患には、花だけをつんで乾燥したものをせんじて服用する。また、腰痛や打撲傷には、 全草を濃くせんじた液で湿布するか、浴湯料にしている。
その他の用途 山菜に:若芽をつんで、塩一つまみ入れた熱湯でゆでて水でさらし、あえ物、ひたし物に利用される(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8537 スミレサイシンとは 北海道南部、本州は日本海側の山地の湿った樹木の下などに生える多年草。  根茎が肥厚し太く、横に伸びて節が詰まり、まばらに分岐。地上茎はなく、葉は花よりあとに伸びる。株の根元に鱗片状の托葉 が集まっている。開花期は4〜6月。葉の出る前に淡紫色の花を開く。径約2cm、側弁は無毛、唇弁の距は太く短く長さ4〜5mm。 刮ハは閉鎖花(つぼみのままで開かず、自花受精により結実する花)よりできる。スミレ類にはこのような閉鎖花をもつものが多 く、刮ハが熟して割れ、多くの種子がこぼれ落ちて発芽する。

類似植物 ナガバノスミレサイシン:葉が細長いので区別がつく。 葉は花後に大きくなり、三角状長卵形で裏面に光沢がある。根茎はスミレサイシンのように太くならない。関東地方より以西、太平洋側の山地に多い。

名前の由来:ウマノスズクサ科のウスバサイシンに葉の形が似ているのでつけられた。別名のト口口サイレンは、根茎を刻むと粘ってとろろのようになるため。

採取時期と調整法:スミレサイシンの太いい根茎を薬用とする。開花期に根茎を採取し、水洗いのあと、そのまま生のものを用いる。

成分:糖質のビオルチンを含むほか、その他の粘液質を含む。

薬効と用い方:
足くびなどの捻挫に:
生の根茎を金属製以外のおろし器ですりおろし、そのまま患部に厚く塗る。上をビニールなどでおおい、包帯をする。乾いたらぬるま湯でぬぐいとり、また塗るを繰り返す。
食物による中毒の解毒に:根茎を刻み、5〜10gを茶こしに入れ、 熱湯を注ぎ、服用する。
滋養強壮に:根茎をこまかく刻むかすりおろし、しょうゆなどで 味つけして食べる。とろろの味がするという(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8538 キバナオウギとは 中国原産。中国東北地区、山西、遼寧、四川、シベリア、朝鮮半島北部に見られる。わが国では昭和40年ごろより北海道で栽培。 その後、青森、岩手、山形、茨城、群馬県などでも栽培される。  
多年草で高さ60〜100cm。根はまっすぐ棒状に伸びる。葉は奇数羽状複葉、小葉は4〜13対、卵状披針形で裏面に白い長い毛が ある。托葉は狭い披針形で長さ6mmほど。葉腋より花茎を伸ばし、総状花序に淡黄または淡黄白色の蝶形花を多数つける。萼は鐘状で先は浅く5裂。花の旗弁は長楕円形。両側の翼弁と竜骨弁には 長い距がある。雄しべ10本、子房は無毛。豆果は膜質、半卵形でふくらみ、先端は刺針のようにとがる。

類似植物 タイツリオウギ:北海道、八ヶ岳、富士山、白山、北アルプス、南アルプスなどの高山砂礫地に見られるわが国固有種。 萼に黒褐色の毛があり、豆果に短毛がある。キバナオウギの萼にはこのような毛はない。豆果の形が、鯛を釣り上げた格好に似ていることから、この和名となる。これは薬用にしない。

名前の由来:中国ではこの根を生薬名黄耆(おうぎ)と呼んでいた。耆はシ、 またギとも呼び、老(老人)の意。生薬の色が黄色で、根が綿のようにやわらかいことから香をつけたのであろう。わが国ではオウギと発音し、生薬として中国より入り、用いられてきた。

採取時期と調整法:秋に根を掘り、水洗いのあと日干しにする。

成分:ステロールのβージトステロール、スチグマステロー ル、トリテルペンのβーアミリン、フラボノイドのジハイドロオキシ・ジメトオキソフラボン。

薬効と用い方:
強壮、止汗、強心、利尿、血圧降下に:
単品では用いず、漢方処方に配合されて使用する。黄耆を配合する主な処方は、「黄耆建中湯」、「十全大補湯」、「補中益気湯」、「帰脾湯」、「桂皮加黄耆湯」、「七物降下湯」などがある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8539 ケマンソウとは 中国原産の多年草。わが国には江戸時代の享保年間に、 観賞用植物として中国より渡来した。わが国ではもっぱら観賞用だが、中国では薬用植物として珍重されている。  
高さは30〜60cm、茎も葉も全休が白っぼい緑色をしているのが特徴。茎から伸びた柄には、3回羽状複葉が対生し、長さは4〜7cm、葉質はやわらかく、形はボタンの葉に似る。花期は4〜5月。 茎の先端に心形の花を1列につける。4枚の花弁は内側と外側に 2枚ずつ分かれ、外側の花弁は長さ2cmほど。薄紅色をしていて、 下部は袋状、先端は細くなっていて外側にくるりと巻いている。 内側の花弁は白色で細長く、雄しべと雌しべを包むようにして、 外側の花弁から5mmほど突き出している。

名前の由来:花は茎の先端に1列につくが、花の重みで茎が大きな弧を描いてたわむ様子は、ちょうど仏殿の装飾に用いられる華鬘という仏具を思わせる。そこからケマンソウと名づけられた。

採取時期と調整法:開花期に根茎をシャベルで掘りとり、よく水洗いし、こまかく刻んでから天日で1週間ほど乾燥する。

成分:鎮痛作用のあるアルカロイドのプロトピンとケレリトリン を含む。

薬効と用い方:
うんで痛むできもの、はれものに:痛みをやわらげきれいに治すの飲んで効果がある妙薬として知られている。乾燥した根茎を1日量5gに水400〜600ccを加え、火にかける。沸騰したら弱火にし、3分ほどせんじ、 熱いうちに茶こしでこし、3回に分け、食後に飲む。これ以上の量を用いることは禁物。
わが国全土で栽培可能:園芸店で苗が売られているので、庭やプランターで育てるとよい。株分けもできる。日当たりのよいとこ ろなら全国各地で栽培できる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8540 ゲッキツとは 中国南部より台湾、東南アジアに広く見られる。わが国には、 古く台湾からハ重山諸島に入り、北上し奄美大島まで分布していて、庭木や生け垣などに植えられる。  
常緑の小高木で石灰地帯に多い。高さ3〜8m、全株無毛。樹皮は灰白色で薄く、材は緻密でかたい。葉は互生、奇数羽状複葉、 長さ8〜15cm、薄い革質。小葉は3〜7枝よりなり、長さ2〜7cmでひし形、鋸歯はない。花は白色で芳香があり、長さ以下1.5〜2cm。 液果は卵形、赤く熟す。中に長さ約1cmの2個の種子がある。

名前の由来:台湾で月橘の漢字名で呼ばれていたので、沖縄地方に渡ってからもこれを日本語読みにして、ゲッキツとなった。花の芳香が遠くまで届くという意味で、中国では九里香と呼び、ま た四季橘ともいう。

採取時期と調整法:春から夏に枝葉を採取、日干しにする。

成分:枝葉にはジシンドルアルカロイドのユチュクチシン、コウルマリンのコウムライン、イソメキソチン、ムルパ二シン、ムルパニジン、ムラガチンなどを含む。花には、シトロネロール、オイゲノールなどのほかにムラインという芳香性の強い精油を含んでいる。最近の研究では、葉に真菌類を抑制する作用のあることが知られている。

薬効と用い方:
リウマチの鎮痛に:
乾燥枝葉を25度のホワイトリカーに漬けた月橘酒を患部塗布する。
その他の用途 
レモン汁の代用に:果実は酸味が強く生食に向かないが、果汁をレモン汁の代用にする。
つくだ煮に:花を集めてつくだ煮にする。
カレーの香辛料に:葉を油でいためると、香ばしい香りがするので、カレーの香辛料に利用する。この木をカレーの木とも呼ぶ。
香料に:芳香性の強い精油ムラインより香料を作る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8541 キタコブシとは 北海道と本州北部に産し、わが国以外に分布しない。  コブシより大形、枝は太く、樹木の姿はコブシのように美しくない。葉はコブシより大形で、広倒卵形、先は急にとがり、基部はくさび形で細くなる。開花期は4〜5月、花はコブシよりやや大形、白色、まれに淡紅色のものもある。

類似植物 コブシ:葉は広倒卵形で長さが6〜13cm、幅3〜6cm。 キタコブシはこれより大きく、18〜20cmの長さとなり、幅も6〜8cmと広い。コブシの花は白色がふつう。キタコブシは白または淡紅色であり、花が大きいので区別される。

名前の由来:コブシによく似ていて、産地が本州北部より北海道に産するので、キタコブシとなった。

採取時期と調整法:4月ごろつぼみを採取し、陰干しにする。

成分:精油4.69%を含む。コブシの3.34%より1.35%も多く含んでいる。 その主要なものは、シネオール、アルファ・ピネン、メチル・カビコール、シトラールを含むが、特にシトラールの含量の多いのが特徴である。

薬効と用い方:
蓄膿症、鼻炎、花粉症に:
乾燥つぼみ1日量3〜10gを水600ccで、煎じ3回に分けて服用する。
頭痛に:1日量として乾燥つぼみ5〜10gを水600ccでせんじ、3 回に分けて服用する。
アイヌの用い方:木部に芳香があるので、アイヌ人はキタコブシを「オマウクシニ」と呼ぶ。これは「いい香りを出す木」の意味をもち、伝染病が流行したときに病魔を防ぐ目的で、樹皮や枝を刻んでせんじ、お茶がわりに飲む。
その他の用途 まないたなどに:材質が軽くやわらかいので、まないた、製図用具、彫刻の材料に利用される(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8542 サンダンカとは 中国南部、マレーシア地方が原産。わが国には江戸時代の初期に渡来した。チョウジに似た十字形の花がかれんなため、古くから園芸植物として栽培される。温暖な沖縄や九州南部では、古くから戸外で栽培されていたが、現在ではそれ以外の各地でも温室栽培されるようになった。  常緑低木で本の高さは50〜200cm、小枝は深い褐色。葉は楕円形で長さ約10cm、幅約5cm、濃緑色で厚く、対生する。両側の葉柄の間に、やわらかいとげ状の突起がついた托葉がついているのが特徴。開花期は、温室栽培では4〜5月。新しく伸びた枝の先に、 赤く細長い筒状花が直径4〜5cmに密生して、散房花序に開花す る。一つ一つの花は光沢があり、先は4裂。花びらは円形で十字形に並び、開花すると直径1cmほどになる。この花は咲く直前、つぼみのときの花序全休が風船のように丸い形になる。その姿は開花したときとはまた違った、愛らしい風情を感じさせる。

名前の由来:『琉球産物地誌』(出版年代不明)に三段花があるが、 これが和名の由来となったものであろう。花がときに三段重ねのように咲くことがあるので、つけられたのであろう。

採取時期と調整法:花を開花期に採取し、流水で洗ってばらばらにほぐし、ざるに広げて日干しにする。

成分:イリドイドのイキゾロシド、イキゾシドを含み、同種のシロバナサンダンカにテルペノイドのイキゾロールを含む。

薬効と用い方:
高血圧の予防と治療に:
乾燥した花5gに水600ccを加えて沸騰させ、そのまま4分ほど煎じ、火を止める。これを1日量とし、熱いものを3回に分け服用する。食前でも食後でもよい。
中国での民間療法:月経不順に、乾燥花約15gを水400〜600ccでせんじ、これを1日量として3回に分け服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8543 カシワとは 北海道より九州まで各地の山地に自生するほか、人家の庭先に栽培される。南千島、朝鮮半島、中国に分布する。  
落葉高木で、大きいもので高さ15m、径50cmになるものがある。
樹皮は厚く灰褐色、縦に不規則に裂ける割れ目がある。葉は枝先に集まって互生、倒卵状長楕円形で先は鈍くとがり、基部はくさび形、縁に波形のあらい鋸歯がある。葉の長さ15〜25cm、幅10〜15cmと大きい。表面に星状毛があるが、のちに無毛となり、裏面は 灰白色の星状毛と短毛が密生し、黒褐色の腺点がある。秋に褐色となって枯れるが、そのまま枝について冬を越し、春に落葉する。 雌雄同株で5〜6月に開花。堅果(どんぐり)は長さ1.5〜2cmの楕円形か球形で、秋に褐色に熟し、椀形の殼斗(かくと)(辱の変形したもの)におおわれる。

名前の由来:古い時代に広い葉を利用し、食物を盛ったり、包んだり、焼いたり蒸したりしたので、炊葉(かしきば)と呼ばれ、カシキがカシワとなった。別名のモチガシワは、この葉で餅を包むことから。

採取時期と調整法:夏期に樹皮を採取、水洗い後、刻んで日干しにする。葉は夏に、種子は秋に採取し、水洗い後、日干しにする。

成分:樹皮にタンニン10〜15%を含む。そのほかフラボノイドの配糖体クエルチトリンを含む。葉にも同じように含み、種子にはタンニンのほか、多量のデンプンを含む。

薬効と用い方:
収れん剤として下痢に:
乾燥樹皮3〜6gを1日量として水400ccで煎じ、2回に服用する。あたたかいうちに飲む。乾燥葉は5〜10gを1日量、乾燥種子は 1日量3〜6gを用いてもよい。

その他の用途 染色に:樹皮を用いる。アルミ、スズ、灰汁の媒染で土器色に、銅媒染で茶色に、鉄媒染で黒ねずみ色に染まる。 食用に:種子は砕いて水でさらし、渋抜きして食用に(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8544 スギとは 本州(青森県より西、四国、九州(屋久島が南限)、太平洋側に多い。わが国の特産品。  
常緑高木で、大きいもので高さ65m、径2〜6mに達するものがある。樹皮は暗赤褐色か赤褐色で、縦に裂ける。葉は鎌状針形で、らせん状に並び、長さ5〜12cm、断面はひし形で、中に1個の樹脂道が通っている。葉は緑色だが、秋より冬に赤黄褐色に染まることがある。これは、葉の中にアントチアンの色素ができたもので、間もなく分解し緑色となる。雌雄同株。雄花は淡黄色で 葉のつけ根につき、雌花は小枝の頂に1個をつける。毬果を結ぶ。

名前の由来:『大和本草』巻11(1708年)で園木(えんぼく)にスギをあげ、「木直 ナリ故スキト云スキハスク也」と記し、幹がほぼまっすぐに伸びる木よりスギとなったとしている。漢字の杉は、中国産コウョウ ザン(広葉杉)の中国名。

採取時期と調整法:
材部は必要時、樹皮は夏に採取し、風通しのよいところで陰干しに。葉は春より夏に採取し、本洗いののち陰干しに。樹脂は夏に樹皮の表面ににじみ出るのを採取。

成分:材部、葉部に精油を含む。

薬効と用い方:
うるしかぶれに:
材部を砕き、約100gを水600〜800ccで煎じ、さましてから患部を洗う。
やけどに:乾燥樹皮約100gを木600〜800ccでせんじ、患部を洗う。
利尿に:乾燥した葉約10gを水400〜600ccでせんじ、3回に分服。
杉脂硬膏に:『第五改正日本薬局方』に収載されている。杉脂40、 単鉛硬膏40をとり、低温でとかし、これに精製パラゴム5を加え てねり、冷ましながら棒状に伸ばし固めたもの。皮膚刺激薬として製薬関係に利用される。
その他の用途 線香の原料に:製粉したものに着色料と香料を加 えて水でねり、細い棒状に伸ばし、乾燥して線香を作る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8545 タイサンボクとは 北アメリカ原産で、わが国には明治の初めに入り、観賞用樹木として、庭園や公園に植えられている。世界の温帯地方に広く栽培される。  
常緑高木で25〜30mになる。葉は厚く革質、長楕円形で長さ10 〜25cm、幅5〜120cm、基部、先端とも鈍形。上面は濃緑色で光沢があり、下面は褐色鉄さび色の毛がある。葉柄によって互生する。 5〜6月、直径12〜20cmの大きな白色花を上向きに開き、強い香気を放つ。花弁は6枚、ときに9〜12枚で広倒卵形、萼は3枚、 雄しべは多数で花枝は紫紅色、雌しべは多数で円柱状につく。果実は集合果を結び、11月に成熟すると一つの果実(袋果)が開裂 し、白糸状の種柄より紅色の種子2個を下垂する。

類似植物 ホソバタイサンボク:北アメリカ原産でわが国にも栽培される。葉質は薄く、下面にも毛が少ない。葉の幅は狭く、長楕円状披針形。耐寒力はタイサンボクより強い。

名前の由来:明治初年にわが国に入り、そのころはトキワギョクラン(常碧玉蘭)と呼び、明治12年にアメリカのグラント将軍夫妻の来日を記念するかのように、グランド玉蘭と呼ばれた。グラン ドは雄大なという意味をもつ英語であり、この花の雄大にも通じ、 グランド玉蘭の名はしばらく用いられた。その後、将軍の勇壮、 雄大な意味を含めた泰山木となった。大山木、大盞木とも書く。

採取時期と調整法:つぼみを採取し、陰干しに。葉は開花期に採取、刻んで陰干しにする。

成分:つぽみ、花、樹皮に精油を含むほかは精査されていない。

薬効と用い方:
高血圧症に:
乾燥菓5〜10gを1日量とし、水600ccで、煎じ数回に服用する。
鼻詰まり、花粉症、頭痛に:乾燥つぼみ5gを1日量とし、水300ccでせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8546 オオサンザシとは 中国原産の落葉小高木で、享保年間(1716〜1736年)の初め、ときの八代将軍徳川吉宗が、外国産の薬用植物の国内栽培に力を入れ始めたころに、中国から薬用植物として渡来した。さっそく小石川の御薬園に植えられた。枝先にいくつもかたまって開く白い花が美しいことから、現在ではもっぱら観賞用の庭木として、北海道から九州まで各地で栽培されている。  
木の高さは3〜6mほどで、盛んに枝分かれする。同じ仲間の サンザシには、小枝の変化したとげがたくさんあるが、オオサンザシはとげのないものがほとんどで、あっても短いのが特徴。葉は長さ5〜9cm、幅4〜8cmで、浅く5〜7裂し、縁にはふぞろいな鋸歯がある。葉の表面はつやがあり、表裏両面とも葉脈に沿ってこまかい毛が生えている。開花期は4〜5月。直径約2cmの白い5弁花が、枝先に5〜8cmのかたまりをなして開く。花の中央は黄色みを帯び、花柱は5本、雄しべ20本。花が終わると、赤または黄色で、径2.5cmばどの丸い果実(偽果)を結ぶ。

名前の由来:サンザシより全休に大形なのでこの名となった。

採取時期と調整法:完熟一歩手前の果実を採取、水洗いし、二つ割りにして、10〜14日ほど日陰で乾燥する。

成分:
タンニンのクロロゲン酸やクエン酸、酒石酸などを含む。

薬効と用い方:
健胃に:
乾燥した果実5〜6個に、水400〜600ccを加えて火かけ沸騰したら弱火して 5〜6分せんじる。熟いうちに茶こしでこし、朝夕2回、食後に飲む。飲むたびにあたため直すこと。かすかな苦みと酸味があるが、飲みにくくはない。

その他の用途 中国では砂糖漬けに:果実はかたくて渋みが強いため、そのままでは食用にならないが、砂糖漬けや ゼリーにして食べる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8547 セイヨウサンザシとは ヨーロッパ、北アフリカ原産の落葉小高木で、世界各地に栽培される。わが国には明治中期に渡来し、観賞用として栽培される。  
木の高さは5mほどになり、枝には7〜25mmの長い剌針がある。 葉は葉柄が2〜5cmで互生につく。広卵形か倒卵形で、基部は広いくさび形、上部は3〜5裂に浅く裂け、縁に鋸歯がある。開花期は4〜5月。直径約1.5cmの白色5弁花を開き、多数の雄しべが あり、花柱は2〜3本、枝先に5〜12花を穂状花序につける。花序は無毛。秋に果実(偽果)を結び、形は球形か卵形、長さ1cm、 直径8mmくらい、黄色か赤に熟す。

類似植物 アカバナヤエサンザシ:
セイョウサンザシの変種で、 わが国では盆栽や庭木に栽培される。木の高さ5〜8m、花は重
弁で紅色、葉はセイョウサンザシと同じ。果実はできないので、 接ぎ木で繁殖させる。薬用にはしない。

名前の由来:ョーロッパより渡来したので、セイョウサンザシ(西洋山査子)となる。

採取時期と調整法:葉は春に、果実は秋に採取し、洗って日干し にする。

成分:トリテルペノイドのオレアノール酸、ウルソール酸、サンザシ酸、フラボノイドのクエルセチン、ビテキシンー4-ラムノ シドなどを含む。

薬効と用い方:
ヨーロッパで強心、利尿に:
わが国では薬用にしてないがIパヨーロッパでは強心利尿の民間療法として用いる。果実や葉に血管拡張作用があり、血圧 を下げて心臓の冠状動脈に働き、狭心症発作を緩和するので、高年者の心臓、循環系不全の初期症状に用いる。乾燥した果実を1日量として5〜10gを水600ccでせんじて飲む。
葉は10〜20g用いる。
★サンザシ、オオサンザシには強心、利尿作用はない (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8548 マンサクとは 関東以南の太平洋側の山地に自生するわが国特産の落葉小高木。  
木の高さは3〜10m。葉は長さ4〜12cmで互生し、葉脈上に星状毛があるのが特徴。星状毛は肉眼では見えないが、一つの点か ら放射状に5〜6本毛が生えている状態をいう。3〜4月、まだ葉の出ていない枝に、黄色の直径2cmほどの花がびっしりとつく。 花には4枚の花弁があり、花弁が線状でねじれているため、花は実際より大ぶりに見える。マンサクは、花があでやかなことから、 わが国ではもっぱら観賞用に栽培されているが、アメリカでは、 葉や樹皮を盛んに薬用に使っている。使われているのは同じ仲間 のアメリカマンサクで、成分はマンサクとほとんど変わらない。

名前の由来:花の咲いているさまが、稲穂の実りを連想させることから、豊年満作にかけて、マンサクと呼ばれるようになった。 また、ほかの花に先がけて春いちばんに咲くことから、「まず咲く」 花と呼ばれ、それがなまってマンサクになったともいわれている。

採取時期と調整法:6〜7月に葉と小枝、樹皮を採取し、水洗いしてからこまかく刻み、1週間から10日ほど風通しのよい日陰で 干す。

成分:葉にタンニンのハマメリタンニンを含み、収れん作用が強 い。

薬効と用い方:
収れん化粧水に:
乾燥した葉や樹皮一握りをほうろうなど金属製以外のなべに入れ600ccの水を加えて火にかけ、沸騰したら火を止める。冷めてからふき んでこし、あきびんに移し、全体量の1%にあたるグリセリンを加え、分離しないようによく振ってまぜる。冷蔵庫で保存すれば1カ月はもつ。朝夕の洗顔後、この化粧水をコットンに含ませ、 ていねいにパッティングすること。有効成分、ハマメリタンニンが皮膚を引き締め、張りのある肌になる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8549 トキワマンサクとは  三重、熊本、静岡の諸県の常緑樹林内にまれに生える。中国、ヒマラヤ東部などに分布。  
常緑低木で高さ3〜5m。葉は卵状長楕円形で、長さ3〜5cm、幅約2.5cm、全縁。先端は円形、基部は円形かゆがんで左右が不同。葉の上面は濃緑色、下面は帯白色で葉脈が隆起し、両面とも星状毛が生える。5月ごろ開花、枝の先に白い花を4〜5個束生。萼は4枚で長さ約2mm、外側に黄白色の星状毛を密生する。花弁はひも状で長さ1‐8〜2.5cm、 黄白色か白色。雄しべは短く、4本。朔果は長さ約7mmの広卵形で木質、表面に密毛が生える。10月ごろに熟して二つに割れ、黒色で光沢のある種子2個を出す。 ★星状毛は図を参照。星状に伏した毛で、10倍以上拡大のルーペで見ることができる。

名前の由来:葉が革質で常緑樹のため、トキワマンサクとなった。 中国名は継花。

採取時期と調整法:開花期に花を採取し、風通しのよい日陰で干す。葉は夏に採取し、風通しのよい日陰で干す。

成分:トキワマンサク特有の成分は解明されていない。クエルセチン、イソクエルシトリンを花部に含むという報告がある。

薬効と用い方:
鎮咳に:
1日量として乾燥花5〜8gを水600ccでせんじ3回に分けて服用する。服用のつどあたためること。
止血に:鼻出血、血便のときに、乾燥花5〜15gを水600ccでせん じ、これを1日量として3回に服用。服用のつどあたためる。
下痢に:乾燥葉を1日量として10gを水600ccでせんじ、数回に分けて服用。服用のつどあたためる。
その他の用途:観賞用として栽培される (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8550 ヒトリシズカとは  わが国各地、朝鮮半島、中国東北地区、サハリンの草原や道端に多く見られ、中国では銀線草と呼ばれる。  
高さは10〜25cmで、ところどころに紫色を帯びた節がある。葉は、茎の先端に4枚が対生しているのが特徴。広卵形あるいは楕円形で、長さ約9.5cm、幅約6.5cm、紙のように薄く、 縁には鋸歯がある。葉の上面は暗紫色、下面は淡緑色。4月ごろ、茎の先端に長さ4〜8cmの柄が伸び、その上部2〜3cmの部分に、 白色の小花が穂状をなして多数開く。小花には、図のように花びらも萼もない(裸花とい う)。根元のふくらんだ部分が緑色をした雌しべ、その裏側から3本伸びているのが雄しべ。葯は、外側2本の雄しべの根元にだけついている。つまり、雌雄両性の花である。

名前の由来:清楚な感じが静御前に似ているというのでこの名と なる。

採取時期と調整法:4〜7月に全草をとり、刻んで陰干しに。

成分:セスキテルペノイドのクロラントラクトン、シズカコラジノール、シズカノリッドを含む。

薬効と用い方:
血行をよくし、体調を整える:乾燥全草1日量2〜4gを水400ccで煎じ、朝晩2回飲む。飲むたびにあたためること。妊婦は飲まないでください。
中国では古い時代から薬草に:わが国では山野草として親しまれているが、中国では、血のめぐりをよくし、神経痛やリウマチ、 ノイローゼ、ストレス、痛風などを改善し、体毒を排出して体調をととのえるとし、広く用いられている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら