Namazu: [説明]

        Q&A本文(No8251-8400)

No
Q(お客の質問) A(答え)
8251 オシダとは(綿馬根、めんまこん/綿馬、めんま) 北海道、本州(近畿以北)、四国(剣山、石鎚山)に自生。サハリン、南千島、朝鮮半島、中国にも分布する。

オランダ医学渡来後に登場:江戸時代のオランダ医学や薬学は、わが国に大きな影響を与えたが、初めて見るオランダ渡来の医薬品について、当時は大いにとまどったであろう。どのような性状のものか、天然産の生薬であるならばわが国に該当するものがあるのではないかと、いろいろ知恵をしぼったに違いない。      
文政11年(1828)に出た、宇田川榛斎訳述で、宇田川榕庵校補の「新訂増補和蘭薬鏡」によると、オランダから輸入された薬の中に「ポレイポジウム・ヒリキスーマス」があり、これを駆虫薬であると記した。「薬鏡」ではこれをわが国のオニワラビとし、薬用部分の根茎に対し、綿馬(めんま)という生薬をあげた。当時の正しい名称は、ポリポジウム・ヒリッキスーマスである。  
「和蘭薬鏡」から58年後に公布された「日本薬局方」(1886年)ではこの綿馬をとり上げ、綿馬根の生薬名で収載し、オシダの根茎をこれにあてた。

オニワラビとオシダ:「本草和名」(918年)や「和名抄」(932年)には、漢名を貫衆(かんじゅう)と書き、和名としてオニワラビをあてているが、 今日のオシダであるかどうかははっきりしていない。貫衆はヤブソテツ(シダ植物)とする説もあるが、いずれにせよ、綿馬の漢名に該当するシダ植物は、「和蘭薬鏡」以前のわが国の本草書には出てこない。

成分:駆虫効果のあるフロログルシノール誘導体のアスピジン。

条虫・十二指腸虫駆除に:エーテルエキスを用いる。駆虫作用が強いがこのエキスによる中毒症状は、視力障害、血尿、ケイレン、虚説、下痢などが起こるので、必ず医師の指導で使用のこと。素人療法は危険(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら
8252 サンシチとは(さんしち) 中国原産で、江戸時代の初めにわが国に入った。「物類品しつ」(1763年)では、「按ずるに此のもの本邦にも昔はなかりしにや。駿府政事録に曰く。慶長十六年辛亥八月十二日、金森出雲守可重初て山漆草を献ず。其葉三七にして、本草網目図経を考見するに相同 じ……いまは世に多くあり」と、慶長16年(1611)夏に、わが国に山漆草の名で入ってきたいきさつを記している。  
「中国高等植物図鑑第四冊」(1975年・北京)や「中葯大辞典上冊」 (1978年・上海)には、共通した図をのせ、三七草にギヌラ・セゲツ ウムの学名を用いている。中国では揚子江より南に多く、低山、 路傍、草地、林下に常に見られるとしている。

金魚の薬に:「和漢三才図会」(1713年)には、「三七は血分之薬人皆識るところなり、また金魚を養うに、将に死なんとするとき、山漆草(三七草のこと)の葉をもみ、汁を魚の口に入れれば、即ち活す、ゆえに魚池の傍に必ずこれを植える」とある。この時代、 一般に血分の薬として、止血、吐血、鼻血の薬に使用することは知っていたのであろう。そのほかに、金魚の起死回生の方法を教えているのがおもしろい。  
そのころ、雲州(島根県)ではチドメと呼び、肥前(佐賀・長崎県)ではオランダグサと呼ぶと、「本草綱目啓蒙」(1803年)に出ているが、オランダとは無関係である。

栽培法:砂質の上がよい。4月ごろに根茎苗を植えつける。新芽2〜3個ついたものを30cm間隔で、深さ3〜5cmに植え込む。

採取時期と調整法:9〜10月の間花期に、根、葉をとって日干しに。また必要時に生の葉をとって使う。

成分:未精査。

薬効と用い方:
毒虫刺され・止血に:
生の葉汁をつける。
吐血・衂血(じんけつ)の出血に:根の乾燥したものを15gを水300ccで半量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8253 ゼンマイとは わが国全土に自生。中国、朝鮮半島、台湾、アジアの東部に広 く分布。紫き(くさかんむりに其)(しき)また薇(び)の漢名をゼンマイとしているが、薇の一宇を ゼンマイとする場合が多い。

乾燥品を利用:「徳川禁令考」によると、貞享3年(1686)5月の禁令に、「野菜右の之儀、節に入候日より売出之事」とあり、季節の前に出荷するのを禁止した。たとえば、「わらび三月節より」 「つくし三月節より」と明記し、それ以前は出荷することができない。ところが、ゼンマイにはこの明記がなかった。わらびやつくしは生野菜として扱われていたが、ゼンマイは乾燥したものであるため、この禁令にふれなかった。香川修庵の「一本堂薬選」 (1729年)には、「乾薇」と書き、俗にゼンマイと呼ぶとしてある。当時、ゼンマイは干物が売られていたようである。

乾燥法のいろいろ:「本朝食鑑」(1697年)は、「近世多く用いている。関西のものは長大で、やわらかくておいしく、塩漬け、晒乾(さらしぼし)にして出荷する」と記している。また一度、湯通しして乾燥したものを赤乾(あかぼし)、青松葉で燻蒸して乾燥したものを青乾(あおぼし)とするが、 どちらがおいしいかは、人の好みによるとも記してある。

調理メモ:干しぜんまいは熱湯に浸しておき、水洗いして適当に切り、ひたひたにだし汁を加えて煮る。煮立ったら酒、塩、砂糖を加えてしばらく煮てから、しょうゆ少量で味をととのえる。

採取時期と調整法:春に若い葉をとり、湯通ししてから乾燥。地上部は夏にとって日干しに。

成分:一般成分としてタンパク質やペントザンのほかは未精査。

薬効と用い方:
催乳に:
信州の山間地では、干しぜんまいのみそ汁を飲むとよいとの民間療法がある。
貧血・利尿に:1回量として地上部の乾燥したもの5〜10gを水300∝で1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8254 通経作用とは(つうけいさよう) (漢方用語)遅れがちな生理周期を一般的な周期に戻す作用を言う。
8255 ウラジロとは 関東以西(まれには、福島県いわき市付近、新潟県下にも見ら れる)の各地暖地に、普通に自生するシダ植物。韓国、中国、東南アジア、インドにも分布する。

名前の由来:シダというと、一般シダ植物の総称名になっているが、古くはウラジロをさした名という。葉の表面は緑色、裏面は白色。このことからウラジロの名になった。シダの語源については、谷川士清の「和訓栞」(1777年)に「しただる物ゆえに名づく」 とあり、シダ(ウラジロ)が葉先を下にたれるようになることから名づけられたと記してある。

特徴ある伸び方:ウラジロの葉の伸び方は独特で、葉柄は光沢が あり、かたい茶褐色で針金のように細く、その葉柄の頂点から左右に2分して葉片がつく。その分岐点の頂端に芽がある。翌年には、この芽からさらに葉柄を伸ばし、その先端から左右に葉片を 出すことを繰り返すので、大きいものでは高さが3mほどになる ものもある。地上に茎は出さず、地下茎を横に伸ばして、これから地上に葉を出して繁殖する。日当たりよい乾燥地に多い。

正月の飾りに:正月の飾りに広く用いられているが、ウラジロの方言モロムキが縁起をかつぐきっかけになったのではないか。葉柄の先端に左右同じ葉が向き合って出るのを、夫婦が仲むつまじ く向き合っているのにたとえたというのである。また、モロムキは長崎の方言の諸向きで、風が吹くと、あちこち向きが変わるが、元は離れない。つらいことがあっても夫婦は離れないものだ ということからきているとされている。

採取時期と調整法:冬に地上部をとり、刻んで日干しに。

成分:タンニン様物質を含むが、精査されていない。

薬効と用い方:
利尿に:
1回4〜8gを水300ccで約1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8256 ハコネシダとは(箱根草、はこねそう) 本州(山形・岩手以南)、四国、九州に自生。台湾、韓国の済州島にも分布する。 

名前の由来:「本草綱目啓蒙」(1803年)は石長生(せきちょうせい)の漢名にハコネグサ、オランダソウ、イチョウシノブなどの和名やタマボウキの別名をあげ、形状を記したのち、「この草、元禄中、紅毛人相州箱根に於て採取し、産前産後に殊効ありと云う。それによってハコ ネグサと名づく」と記した。

古くから知られていた薬効:「本草綱目啓蒙」に、元禄中、紅毛人とあるのは、ドイツ人エンゲルベルト・ケンペルで、オランダ船の船医として元禄3年(1690)に長崎に着き、翌年1月、江戸に向かう途中、箱根山でこのハコネシダに出会った。彼の「日本記」(日本語訳[1973年]非売品)によると、元禄4年(1691)3月11日、箱根関所を通過するところで、次のように記している。  
「眺望は絶佳で、遠く北東北方向の山並みの彼方に大海を望み、 左右の岩間には、緑濃い樹木や各種の植物が繁茂している。この他の野草は、概して医者から特に薬効ありとして採集されている ものが多い。たとえば、ここでよく見かける『ヴィーナスの髪』 の別名で呼ばれているアジアンタムは、茎も葉柄も光沢のある暗紫色を呈し、他の土地のものより、はるかに薬効が高いとして珍重される。この山を旅する人で、これをわが家の薬籠に蓄えるべ く持ち帰らぬ者はない。他の一般のものとは比較にならぬ特効があるので、箱根でとれるものは『箱根草』と称して、珍重されている」とある。これによると、紅毛人(ケンペル)に教えられて、この草が有名になったという説とは、大きく違ってくる。

採取時期と調整法:秋に全草を採取し、水洗い後日干しに。  

薬効と用い方:
通経・去痰・利尿に:
1日量6〜10gを、水 400ccで約1/3量に煎じて3回に分け服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8257 ヒトツバとは(石韋、せきい) 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄に自生。韓国、台湾、中 国、インドシナにも分布する。

名前の由来:平安時代の「本草和名」(918年)や「和名抄」(932年)では、石韋の漢名に対し、和名のイワノカワ、イワクサをあげている。江戸時代初期の林道春の「新刊多識編」(1631年)になると、 イワカシワのほか、ヒトツバとも言うと記してある。石韋の和名 ヒトツバは、このころから出ている。岩の上などに出て、葉が厚いことからイワのつく古名が多く、葉が1枚ずつ出ることからヒ トツバとなった。

本草書の薬効:「神農本草経」に記載されている薬効をもとに、 「本草網目」(1590年)をはじめ、その後の多くの文献が石韋の薬効を述べている。たとえば、「和漢三才図会」(1713年)はヒトツバの図に「治小便淋通及便前有血者」と書いた。これは小便をするときに痛みがあり、血がまじって出るという症状で、今日ではこれを淋病としている。また、石韋は水腫のときの利尿薬にも用いられているが、わが国では、この生薬はあまり利用しないし、市販品も少ないようだ。しかし中国では現在、尿路結石、腎炎などの治療に、よく利用されている。

類似植物:中国では揚子江以北、朝鮮半島では全域に産し、わが国にはない植物にコヒトツバがあるが、これを小石韋とし、中国南部、台湾産のオオヒトツバを大石韋として、石韋同様に用いている。またヒトツバには、薬のほか、古くから盆栽にもしていて、葉の先端が分裂する獅子一葉という園芸品種もある。

採取時期と調整法:秋に全草をとり、日干しにする。

成分:ベータ・ジトステロール、ジプロプテンなどを含む。

薬効と用い方:
利尿に:
1日6〜12gとし、水400ccより1/3量に煎じ3回に分け服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8258 ミツデウラボシとは(鵞掌金星草、がしょうきんせいそう) 北海道、本州、四国、九州、沖縄に自生、関東南部より以西に 多く見られる。朝鮮半島、台湾、中国にも分布する。

よく観察して正しく判定:シダ植物は梅や桜のような花が咲かず、葉にできる胞子嚢の様子や葉の形状などで種類を区別することが多い。そのため、種類の区別や判定にはよく観察することが必要。薬にするには、まちがえないように採取しなければいけない。その意味で、ミツデウラボシは葉が3裂したものばかりならば、ミツデの名に合致するが、ヒトスバタイプで、葉が1枚のものや、2裂しているものがあるので、注意すること。葉質はヒトツバのような厚みはなく、薄い。表面は緑色であるが、裏面は白みを帯び、支脈がはっきり見える。胞子嚢の集まりを一般に胞子嚢群と呼ぶが、これが円形で、葉裏の中央に走る脈の両側にある支脈と支脈の間に、一つずつはさまれるように並んでいる。ウラ ボシ(裏星)の名はこれに由来する。

本草書の混乱:江戸時代の本草書の中で、ミツデウラボシを正確に伝えているものは少ない。「大和本草」(1708年)や「和漢三才図会」(1713年)は、金星草の漢名に、数種類のシダ植物をあてている。 また「本草綱目啓蒙」(1803年)は、金星草の解説の中で、ミツデウ ラボシなるものがあるが、これは金鶏脚であるとしている。現在は鵞掌金星草の漢名を用いている。

霊草に:中国ではミツデウラボシとユキノシタの全草を乾燥した ものを等量煎じて、小児の驚風(ひきつけ)に用いる。わが国では古くは、日蓮宗の信者が霊草として薬用に用いたと言われる。

採取時期と調整法:秋に全草をとり、水洗い後、日干しにする。

成分:クマリンを含み、この配糖体ポリポジンも合まれる。

薬効と用い方:
利尿・解熱・解毒に
:1日量8〜20gを水400ccで1/3量に煎じ、3回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8259 マンネンスギとは(玉柏、ぎょくはく) わが国全土、中国、北米に分布する。マンネンスギは万年杉の意だが、別名をマンネングサとも呼ぶ。「物類品しつ」(1763年)では漢名の玉柏は日光方言で万年草と言うとし、「其の形杉の如く、長 さ5〜6寸、はなはだ愛すべし」としたあと、高野山に産するのは万年草とは別なりと述べている。これはよく似た名前のコウヤ ノマンネングサというコケをさしたもの。

まぎらわしい名称:マンネンスギはヒカゲノカズラ属に属するシダ植物だが、スギゴケ、ジャゴケなどの蘇苔植物類に属するもので、まぎらわしい名称のコウヤノマンネングサ、別名をコウヤノ マンネンゴケと呼ぶ植物がある。ネームバリューからみると、マ ンネンスギより、コケのコウヤノマンネングサのほうが上。高野山の特産とか霊草と称し、乾いたものを水に浸すと、また縁にな るので、水中花として、縁日の夜店などで売られていたため、一 般によく知られている。高野山に限らず、全国に自生する。

類似植物:
マンネンスギと同じヒカゲノカズラ属で、この属を代表する植物にヒカゲノカズラがある。各地の高山の日の当たる所に産し、茎は地上を長くはい、その茎のところどころから直立茎 を立て、その先に胞子を入れる胞子嚢の集まった穂をつける。胞子は黄色の粉末状で、これを集めたものを石松子(せきしょうし)と呼び、傷口 に散布したり、丸薬の衣にする。マンネンスギも同じような胞子ができるので、石松子と同じ目的に使用される。

採取時期と調整法:夏に採取し、地下部分を除いて、地上部を日 干しにする。

成分:アルファ・ベータ・オブスクリンやリコポジンを含む。

薬効と用い方:
のどが渇き、利尿を促進するときに:
よく乾燥した地上部のみをとり、1日量8〜15gを 水400ccで1/3量に煎じ、3回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8260 カニクサとは(海金砂、かいきんしゃ) 本州(能登半島、福島以南)、四国、九州に自生。韓国、中国に分布する。
地下に地下茎があ地上には茎がない。2〜3mに伸びるつるは、葉の中軸であって茎ではない。シダ植物でありながら、つるになって他のものにからみながら繁殖するのも特殊なら、つるが茎でないという点も変わっている。

名前の由来:「大和本草」(1708年)は海金沙の漢名をあげ、京都近辺 ではカニグサ、江州(滋賀県)ではタタキグサの和名をあげてい る。「用薬須知続編」(1757年)ではスナクサ、カニクサ、サミセングサをあげ、江戸の花屋ではツルシノブと言うとしている。京都の方言カニグサがのちにカニクサになったと解されるが、これは子どもがこのつる草を蟹を釣り上げるのに用いることに由来している。タタキグサは胞子をたたき落とすこと、またツルシノブは葉がシノブに似てつるになることから。サミセングサは三味線草の意で、「本草綱目啓蒙」(1803年)は、「子どもがこのつるの両端を強 く引き、弾ずれば声あり。ゆえにこの名あり」と述べている。

胞子を薬用に:「用薬須知」は、「葉を陰干しにして紙上にたた けば、黄点落つ。是を用いる」と胞子採取法を記した。また、あるやぶ医者が海金沙の名から、海底の砂であろうと、それをとっ てきて用いたという笑い話も紹介している。わが国では、従来と も胞子のみ用いるが、中国では金草も、海金沙草の生薬名で、 解熱、解毒、淋病、利尿などに煎用して効ありとしている。

採取時期と調整法:夏から秋に、胞子嚢のついた葉を陰干しし、 紙の上で葉をたたいて、黄褐色の胞子だけを集める。

成分:脂肪油を含むとされるが、特殊成分については未精査。  ゛`    

薬効と用い方:
利尿に:
海金砂1日8〜15gを水300ccで半量に煎じ、3回に分け服用する。
★以前は淋病薬に用いられたが、いまは使用しない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8261 コフキサルノコシカケとは わが国全土のほか、外国にも広く分布する。サルノコシカケは 「猿の腰掛け」の意。表面に褐色の粉のようなものがつくことが多いので、粉吹の名がついたキノコ類の一つ。木材腐朽菌で、これに寄生されると、その木は枯れる運命になる。

類似植物:コフキサルノコシカケの菌は、木材の構成要素のセルロースをとかして栄養分にするが、木材は褐色に腐朽し、ぼろぼろになる。これを一般に褐色ぐされと言う。また、木材構成要素のもう一種、リグニンをとかして栄養にするものもある。これはモミサルノコシカケなどのキコブタケ科のもので、この場合は、 白く海綿状にぼろぼろになり、一般に白腐れと呼ばれる。  
また、コフキサルノコシカケの内部がコルク質で褐色なのに対 して、内部が木質で白いものに、ツガサルノコシカケがある。

ガンとの関係:古典の本草書を見ても、サルノコシカケとガンに関係する文献的な報告はない。ガンに効くと言いだしたのはだれであろうか。食道ガンなどに、漢方の茯苓杏仁甘草湯、小半夏加茯苓湯の処方をよく用いるが、共通しているのは茯苓を用いていること。この茯苓もキノコで、サルノコシカ ケ科のもの。このあたりから、それでは樹上にできるあのキノコ は、樹木にとってはガンだが、ガンをもってガンを制すからよかろうとして飲んだことから始まったのであろう。実際には、サルノコシカケ類に含まれる多糖体の免疫賦活作用 によって、人間本来の自然治癒力を増強するねらいがある。

採取時期と調整法:必要時にキノコ全体をとり、砕いて日干し。

成分:トリテルペンカルボン酸、多糖作。ツガサルノコシカケはステロー類、多糖類ほか、メチルエステル含有の報告がある。

薬効と用い方:
制ガン剤に:
1回2〜6gを水400ccで1/3量に煎じ苦いときは砂糖少量を加えて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8262 マツホドとは(茯苓、ぶくりょう) 本州、四国、九州に産し、中国、朝鮮半島にも分布。アカマ ツ、クロマツの根に寄生するキノコで、地上では見られない。

茯苓さがしの専門家:以前は、松の根元を掘り起こし、マツホ ドをとり出して、生薬茯苓として出荷することを業にした、茯苓突きの人たちがあった。木製丁字形の先端に先がとがった鉄棒を つけたものと、大型の草刈り鎌で、クロマツ、アカマツの伐採後 4〜5年たった切り株を目当てにさがす。株の腐朽程度によっ て、地下のキノコの有無を判断し、周囲を鉄棒で突き剰して、その感触と、鉄棒についた白いとうふのようなものがあれば、地下 20〜30cmのキノコを鎌で掘りとる。  
外面は暗褐色でかたく、内部はやわらかく白い。球形、楕円形など形は多様で、重さ1kgになるものもある。これを1週間ほど 水に浸し、外皮がやわらかくなったら、輪切りにして日干しにす る。これが生薬茯苓。現在のわが国では、茯苓突きの姿は見られなくなり、生薬茯苓は、中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国などから輸入している。漢方処方によく使用するので、わが国で人工栽培の研究が行われているが、まだ成功していない。

採取時期と調整法:松の根を掘ったときに入手したら、4〜5日間水につけ、外皮がやわらかくなったら輪切りにして日干し。

成分:多糖類のパキューマン、四環性トリテルペンカルボン酸の エブリコ酸、その他エルゴステリンを含む。  

薬効と用い方:
排尿異常による心悸亢進、めまい、胃部停滞感、口舌の乾燥:
茯苓飲(ぶくりょういん)(茯苓5g、朮4g、 人参・生姜・陳皮各3g、枳実1.5gが1日量煎剤)を用いる。吐きけ、胸やけ、尿量減少ぎみ、胃炎、胃アトニー、胃下垂、胃神経症などにもよい。漢方処方に用い、単独では使わない。その他、茯苓を用いる漢方処方に、五苓散や五積散がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8263 ヤマトリカブトとは 有毒部分:全草。地下の根に毒成分が多い。アルカロイドのアコニチン、メサコニチン、アコニン、またこれらより毒性の弱いアテシン、ソンゴリン、コブシンが含まれ、さらに毒性が弱くて強心効果のあるヒゲナミンも含まれている。全草は毒性強く、ケイ レンによる中毒症状で死亡する。

特徴:本州中部地方より東北地方に自生し、林の中や日の当たる草原などに見られる多年草。茎の高さは80〜150cm、曲がって伸 び、根に近い部分以外には曲がった短毛が生え、上部は枝分かれする。葉は3〜5裂して深く裂け、各裂片は披針形で、鋸歯がある。花柄は長さ2〜4cmで、曲がった短毛が生え、雄しべにも毛が生える。地下の根はウスバトリカブトと同じようなかぶ ら状の塊根をつくる。本州中北部より北海道に自生するオクトリカブトの変種がこのヤマトリカブトになっている。母種のオクトリカブトは葉の裂け方が浅く、茎が直立する点が違っている。

生薬:塊根を乾燥させている。 「草烏頭、そううず」の名称で生薬にするが、ヤマトリカブト以外の日本産の野生トリカブトもすべて「草馬頭」として、中国産と区別する。また、毒性をやわらげるために石灰をまぶして乾燥したものが「白河附子(しらかわぶし)」の名で生産されている。いずれも漢方で、専門医が使用するもので、「附子」「烏頭」と同じよ うに鎮痛、鎮痙、強心の目的に用いられる。

まちがえやすい植物:ここにあげた二種類のほか、山野に自生するトリカブトは、早春のころ、同じキンポウゲ科のニリンソウの葉とまちがえて食用にしたため、死亡したというニュースが伝えられる。ニリンソウの地下の根にはふくらんだ塊根はないので、 葉が似ていても、地下にふくらんだ塊根があれば毒草と思って採取しないこと。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8264 ウスバトリカブトとは 有毒部分:全草。地下の根は特に毒成分が多い。アルカロイドのアコニチン、メサコニチン、イサコニチンなどを含み、中毒症状は強いケイレンを起こして死亡する。

特徴:北海道の高山帯の草原に自生する多年草。茎は円柱形で1m以上に伸び、ほとんど枝分かれしないで直立する。茎の下部以外には曲がった毛が生える。葉は三つに大きく裂け、左右の小葉 も深く裂けて、葉柄の長さは約3cm。葉の両面の脈上と葉柄にも曲がった毛がある。花は夏から秋に青紫色のカブト状の左右相称花を散房状につけ、大きくて美しい。花柄の長さは1,5〜4cmで、曲がった毛が生えている。これによく似たエゾトリカブトは、花柄が長さ2〜3.5cmで、わずかに短く、茎が曲がって枝分かれすることが多い。  
根は倒円錐状か、かぶら状で、外面暗褐色。秋に掘ってみる と、この根のかたわらに、小さい子供の根がついている。そのままにしておくと、いつの間にか親根は腐って消え去り、春先に小 さい子根が勢いよく地上に新芽を伸ばす。

生薬:漢方処方に用いられる「附子」、「烏頭」という生薬は、これと同類の中国産の根を原料にして調製したもので、強心、鎮痙、鎮痛の薬効がある。ただし、これは専門医が用いるもので、 一般には、毒性が強くて危険であるから使用すべきではない。

類似植物:北海道にはエゾトリカブトのほか、テリハブシ、セイヤブシ、カラフトブシ、ダイセツトリカブト、シレトコブシ、ヒダカトリカブトなどが自生する。  
アイヌは古くから秋にこれらの根を掘り、シダ植物のクサソツの枯れた茎葉に包んで炉の上につるして保存しておき、猟に出 る前に、一晩炉の灰に埋めてやわらかくし、石の上で唾とともに たたきつぶして粘らせたものを毒矢に塗った(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8265 アズマレイジンソウとは 有毒部分:全草。アルカロイドのリコクトニンを含むがアコニチンより毒性は弱い。しかし、口にすれば、ケイレンの症状となるので危険である。

特徴:本州近畿地方以北に自生し、多くは林のへりなどに見られる多年草で、根はトリカブト類のように地下にかぶら状の塊根をつくらないで枝分かれし、やや斜めに地中に入っている。トリカ ブト類の根はまっすぐに地中に入っているのが多い。
 茎は斜めに伸び、長さ80〜130cm。根元から出る根出葉は長い葉柄があり、長さ15cmのハート型の葉は5〜7裂し、裂片にはあらい鋸歯があって、両面とも毛が生えている。茎に出る茎出葉は根出葉より小さく、多くは3裂する。花は8〜9月ごろに、総状花序の花茎を茎から垂直に立て、淡紅紫色の花をつける。花弁の外側に曲がった毛がある。雄しべには毛がない。

類似植物:これに近いものにレイジンソウがある。花柄に出る毛は直角であるが、アズマレイジンソウは曲がった毛が出るところが区別点になる。レイジンソウの自生地は関東地方以西、九州あたりまで見られる。アズマレイジンソウ同様、アルカロイドのリコクトニンを含むので、これも有毒植物である。これらには薬用 としての利用はない。  
ヨーロッパには花が黄色の種類があり、日本でもオオレイジンソウやエゾノレイジンソウは淡黄の花をつけるが、いずれも有毒である。

名前の由来:花が美しく、その形が舞楽のときに伶人が使う冠に似ていることからつけられた。アズマは東で、このものの自生する地域が近畿より以北、主として関東、東北にあるので、関東より以西に分有するレイジンソウと区別するため、東伶人草の名称 となった (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8266 アメリカチョウセンアサガオとは 有毒部分:全草。特に種子に多い。アルカロイドのスコポラミン、ヒオスチアミン、アトロビンなど、ナス科アルカロイドの代表的な有毒成分を含んでいる。これらのアルカロイドは共通した 性質を持つので、トロピン型のアルカロイドと呼ぶ。このうちア トロピン、ヒオスチアミンは副交感神経末梢をマヒさせる毒薬で、初めのうちは大脳を刺激して狂噪狂乱の状態にし、しばらく して酩酊、深い眠りに入る。スコポラミンもこれに似た作用を持つが、特に催眠作用や散瞳作用はアトロピンより強い。  
これらの中毒症状が狂乱の状態になることから、キチガイナス ピの別名がある。

特徴:アメリカ原産の1年草で、初めは薬用の目的で栽培されていたが、種子の自然脱出などによって野生化し、花が大きいこと もあって、庭先に植えられる。日本のような温帯地方では1年草であるが、亜熱帯地方では低木状の多年草となる。茎は高さ1m 以上に伸びて四方に広がり、葉は長さ8〜18cmの卵形で、先端はとがり、基部はくさび状に狭くなって左右不均衡のことが多い。上面は青緑色、両面にやわらかい短毛が密生する。茎の全面にも短毛が密生していることから、別名をケチョウセンアサガオという。  8〜9月に開花。葉腋かまた葉瞼の近くから一つの花を上向きにつける。がくは長い筒状で、先は5裂する。花冠はロート状 (じょうご形)で白色、径8〜10cm、上から見ると円形で、へりに小さな5個の突起がある。開花の初めには強い芳香を放つ。果実はさく果を結び、球形で下垂し、表面に細いとげを密生し、褐色、扁平の多数の種子を生ずる。

種子から医薬品:スコポラミンの原料として重要な薬用植物で、 臭化水素酸スコポラミンとしても日本薬局方の医薬品になっている。麻薬の禁断症状の鎮痙、パーキンソン症候群にも用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8267 ヨウシュチョウセンアサガオとは 有毒部分:全草。アメリカチョウセンアサガオと共通する成分の ヒオスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどのアルカロイドを主要成分とし、いずれも毒成分は強力である。種子に毒成分が最も多く、根にも多い。

特徴:熱帯アジア原産の大形の1年草。薬用の目的で世界中で栽培されていたのが、種子が自然脱出して野生化し、荒地、あき地へと広がっていった。もともと頑強な性質であったため、大 きな広がりになったが、現在では、どこが原産地だったのか、不鮮明になっている。日本には明治になってから入ってきたもので、それ以前の文献には出ていない。  
茎は1m以上に伸び、枝分かれして大きく広がり、表面はなめらか。葉は卵形で長さ8〜16cm。先はとがり、基部はくさび状で 狭くなり、葉柄につづく。葉のへりにはとがった大形鋸歯があって、両面とも無毛。夏に大形のロート状(じょうご形)の淡紫色の花をつける。  
果実はさく果で上向きにつく。表面にはとげが生え、熟すと4裂し、扁平で楕円形、黒色の種子があらわれる。

葉から医薬品:これに似たものに花が白いシロバナヨウシュチョ ウセンアサガオがあり、これら二種類の葉だけを乾燥して「ダツ ラ」の名で生薬にし、鎮静、鎮痙薬にしたこともある。  「ダツラ」はマンダラ葉と呼んだり、曼陀羅葉とも書く。現在はほとんど薬用にはしていないが、「ダツラ」の名で、日本薬局方 に医薬品として出ていたころは、東京近郊や長野県、北海道などで栽培され、その葉を乾燥して出荷していた。  
外国では西ドイツ、フランス、ハンガリー、アメリカでも栽培 された。刻んだダツラを火にくべて、その煙を吸って、喘息の発作を軽くすることに用いられた (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8268 チョウセンアサガオとは 有毒部分:全草。スコポラミン、ヒオスチアミン、アトロピンなどナス科アルカロイドを含有量が多い。中毒症状は狂乱の興奮状態となるが、時間の経過と ともにこの興奮から覚める。

特徴:熱帯アジア原産の大形1年草。茎は高さ約1m、淡緑色。 葉は互生し、卵形か長卵形で先はとがり、基部は左右不均衡。へりには浅い鋸歯がある。茎葉は特異の臭気を持つ。夏から秋に開花し、葉腋か枝の分かれ目に上向きにつく。がくは筒状で淡緑 色、先は5裂する。花冠はロート状で五つの突起があって白色。 果実は径2.4cmほどの球形のさく果を結び、表面にはとげがあり、熟して4裂する。種子は扁平で三角形、淡褐色。チョウセンアサガオは寒さに弱いので、いまの日本ではあまり見られない。

外科コロシの地方名:小野蘭山の『本草綱目啓蒙』(1803年)には曼陀羅花をあげて、チョウセンアサガオの和名を記したあと、外科コロシや外科ダオシの地方名をのせ、この花や葉を食べると狂乱するが、毒気がなくなると自然に元に戻るとしている。外科コロ シやタオシの名は、外科医の代役をしたとの意であろうか。  
いまから200年前の百井塘雨着『笈埃(きゅうあい)随筆』に次の話がある。  
日向国(宮崎県)本荘八日町の町はずれの寺に、職人風の三人づれの男が訪ねて来て、「豊後国(大分県)で働いている者だが、 明日は私の親の命日だから御回向(ごえこう)をして頂きたい」と一人の男がいい、一包の金と、豆腐と一樽の酒をさし出した。親孝行に感心 した住職はお経をあげたあと、その酒を飲むが、三人の男はみな 下戸だからといって飲まなかった。住職はまもなく狂乱し、深く 眠り込んでしまったが、三人の男はその間に金や衣類を盗んで逃 亡したというのである。酒樽の中にこの花と葉が入っていたのであった(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8269 スズランとは 有毒部分:全草。特に根と根茎に毒性分が多い。全草に強心配糖体のコンバラトキシンが含まれ、これが有毒成分である。ドイツスズランにも含まれて毒草として知られている。またコンバラト キシンにグルコースが結合したコンバロシドも、スズランの毒成分である。これらの毒成分の作用はジギタリスに似ていて、強心、利尿の作用があり、コンバラトキシンはジギタリスよりさら に強い作用があるともいう。コンバロシドは血液の凝固作用があり、この毒草を多量にとると、心不全の状態になって死亡する。

特徴:本州の長野、群馬両県以北、北海道に自生し、それより南にはまれ。山地、高原に生える多年草で、横に伸びる地下茎から 長い柄を持つ卵状長楕円形の葉を2枚相対して出す。葉の下につ づく葉柄は膜質の葉鞘に包まれる。葉には毛がなく、裏面は表面よりやや白みを帯びる。花は5〜6月に開き、葉鞘から伸びる花茎の先に10個ほどの花を総状花序につける。花は径1cmほどの鐘形で、白色、香気が強い。下向きに開き、花被は浅く六つに裂けてそり返る。雄しべは6個で、葯は鮮黄色、花糸は無毛。果実 は径6〜8mmの液果を結び、赤く熟す。

スズランの魅力:
春の明るい草原や、陽光のさし込む林の草の中 に、純白な花を持つこのスズランの小さな野草に出会うと、だれしもかわいいなと思うに違いない。花言葉のように純潔、繊細まさにそのとおりの可憐な花で、花に香りのあるのも魅力的である。別名の君影草(きみかげそう)の名も情趣があってよい。

ドイツスズラン:庭先に栽培されているのはヨーロッパ原産のドイツスズランが多い。このほうが多くの人にスズランとして知られている。日本のものは花序が葉より低くて葯が黄色、ヨーロッパ種は花序が葉とほぼ同じ高さで、葯は淡緑色。だが、ほとんど日本種との区別はできない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8270 オモトとは 有毒部分:全草。特に根茎に毒成分が多い。根茎には強心配糖体のロデインを多く含み、葉には強心配糖体のロデキシンA、B、 Cとステロイド系サポニンのロデアサポニンを含んでいる。これらの中毒症状は呼吸がはげしくなったのちに、緩慢になって運動マヒに移り、全身のケイレンが起きて死亡する。

特徴:関東以西より四国、九州の暖地の山林に自生する常緑の多年草。中国にも分布。地下の根茎は短く横や斜めに伸び、太い 数の根を出す。葉は根茎の頂点から出て叢生し、葉質は厚く暗緑色で光沢があり、広披針形、先はとがり、下部は狭く葉の全長は 30〜50cm。5〜7月のころ、叢生する葉の葉腺より肥厚した花茎 8〜18cmを伸ばし、淡緑白色の小花多数が穂状花序に密につく。 一つの花は横向き、半球形で、肉質の花披片は、下部で合生して筒状になり、上部は6個に裂け、内側に曲がる。雄しべは6個で花糸は短い。子房は球状で、花柱は短く先端が3裂。秋に液果を結び、赤、または黄色に熟す。中に種子1〜3個ができる。

万年青(まんねんせい):中国では万年青と漢字で書く。葉が常緑で、衰えを見せない長寿であるの意をもって万年青としている。オモトの和名は 「大本」に由来していて、株が太いことからオオモトのオの字がつまってできたものとされている。

園芸栽培:江戸中期から盛んに園芸的に栽培されたが、順応性があり、どの地方でもよく青つことのほか、オモト愛好家は、葉の美しさが茶道のわび、さびに通じ、禅の厳しさも兼ね備えているという。元禄時代、多くの園芸品種がつくり出され、天保のころには大流行になって、各地で万年青展示会や展覧会が聞かれている。常緑であることから長寿の意をもって祝儀用の生花に用いら れたり、転居のとき、この盆栽を人よりも先に新居に移しておくと、方位の難を免れることができるとされた(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8271 コシアブラとは
学名 Acanthopanax sciadophylloides Franch. et Savat. 和名 コシアブラ(漉油)。
葉は掌状複葉、小葉は5枚、やや倒卵形、基部には短い柄がある。樹肌は白い。 同じウコギ科のタラノキやウド同様、山や丘、林道脇など、開削・伐採された日当たりのよい明るい斜面に多く、春先に伸びる独特の香りを持つ新芽は食用となり、山菜の一種として扱われる。 食用とする場合は、まだそれほど大きく伸びていない芽を摘み取り、元のほうにあるハカマの部分を除いたものを調理する。肥沃な土地にあるものは、太いだけでなく養分が多く美味である。 強い苦味があるため、苦味を和らげる天ぷらにすると食べやすい。またおひたしや和え物などにも調理され、塩漬けにして保存食とされる。 コシアブラの木材は、米沢市に伝わる木工工芸品の笹野一刀彫り(おたかぽっぽ)を作る際の材料として用いられる。また、幹を傷つけたときに得られる樹脂は加工を施すと黄金色に輝く塗料を作成することができ、古来「金漆(ごんぜつ)」と呼ばれ、工芸用塗料として珍重されたが、長くその加工法は忘れ去られ、断絶していた。近年その加工法の再現に成功したとの報道も聞かれる。コシアブラの和名は「漉し油」を意味し、この樹脂の利用に由来する名称である。 「刀の木」とも呼ばれる。コシアブラの枝は、皮をこするときれいに抜け、芯と皮とが分離する。これを刀と鞘に見立て、かつて子供の玩具とされたことに由来する (出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8272 シイタケとは シイタケ(椎茸、香蕈)とは、キシメジ科シイタケ属の食用キノコ。学名はLentinula edodes(Berk.) Pegler。日本、中国、韓国などで食用に栽培されるほか、東南アジアの高山帯やニュージーランドにも分布する。日本では食卓に上る機会も多く、最もよく知られたキノコの一つである。 かつてはマツオウジ属Lentinusに入れられていたが、菌糸構成などの違いから分離された。なお、種小名edodesを「江戸です」から採ったとする説があるが、バークリー(w:en:Miles Joseph Berkeley)による1878年の原記載論文には学名の由来は記されていない。ギリシア語で「食用となる」という意味の語はεδωδιμο?であり、ラテン文字に置き換えるとedodimosとなるため、これに由来すると考えられている。なお、江戸にちなんで命名された学名ではyedoと表記される例(ソメイヨシノ)がある。本菌の原記載論文はチャレンジャー号探検において1875年に日本で採集された標本に基づく。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8273 マイタケとは マイタケ(舞茸、英:Hen of the Woods)は、担子菌門サルノコシカケ科のキノコ。学名はGrifola frondosa (Dicks. ex Fr.) S. F. Gray。食用として馴染み深いキノコである。中国語名は「灰樹花」。
マイタケは世界中の暖温帯から温帯北部にかけて分布し、ナラ類、カシ類、シイ類といったブナ科樹木の大木の根株で心材に寄生して白色腐朽を引き起こす木材腐朽菌である。白色腐朽を起こした宿主心材にはオレンジ色の幅1-2mm幅の縞模様が生じる。 子実体は塊を形成し成長する。はしばしば直径50cm以上、重さ10kg以上にも達する巨大なものも見られる。秋、9月下旬から10月上旬に掛けて宿主樹木の根元に毎年ではないものの、幾年にも渡って繰り返し発生する。子実体の形状は太い柄から何回にも渡って分枝し、その先端にへら状の小型の傘を群生するマイタケ型と呼ばれるタイプである。傘の裏には白色の細かい管孔が群生し、その内面に非アミロイド型の胞子をつける。
食材としての利用 :食材としては香りに優れ、また、歯切れも良く、基本的に生食以外ほとんどの調理法でおいしく食べられる。炒め物、鍋料理、天ぷらなどによく利用される。ただし、タンパク質分解酵素を多く含むので、茶碗蒸しに生のまま用いると固まらなくなる。従って、茶碗蒸しに入れる場合は、この酵素を熱で失活させるため、数分間加熱してから用いるとよい。煮物、吸い物や卵とじなどには、料理そのものの色に影響を与えることから、料理店では慎重に取り扱いが行われる。逆にこの性質を利用し、細かく刻んだ生のマイタケと肉をまぶした後に調理することで、固い肉も軟らかくなり旨みが増す(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8274 オオバタンキリマメとは(大葉痰切豆) 吐切豆/マメ科/タンキリマメ属。 山野の林縁に生えるマメ科の蔓性多年草。別名オオバタンキリマメ(大葉痰切豆)。 葉は3小葉からなり、小葉は卵形で薄く先端が細く尖る。夏に葉腋より短い花序を出し、多数の蝶形の黄色い花を付ける。豆果は扁平な楕円形で熟すと赤熟して裂開し、黒い光沢のある2個の種子が現れる。 花期6〜9月。
この豆が痰を切る薬として使われたのでこの名があるそうです。同属のタンキリマメと比べ葉の形が違い、トキリマメともいう。マメ科の蔓性植物で日本の暖地から東アジアに分布する(画像はこちら)。
8275 タラヨウとは(多羅葉) モチノキ科の植物の一種。学名Ilex latifolia。 本州関東以西〜九州、中国に分布する常緑高木。雌雄異株で花期は4〜5月頃、淡黄緑色の花を咲かせる。秋には球形の赤い実がなる。 葉の裏に傷をつけると黒く変色するので字を書くことができる。この性質がインドで経文を書くのにつかわれた貝葉の原料であるヤシ科のタラジュ(多羅樹、Corypha utan)という木に似ていたことがタラヨウ(多羅葉)名前の由来となっている。葉書の木、郵便局の木ということもある。 中国では苦丁と呼ばれており、葉を煎じて飲用に供している(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8276 フサザクラとは フサザクラ科(ふさざくらか、Eupteleaceae)は双子葉植物の科。落葉高木で、日本(本州から九州)に自生するフサザクラ(房桜、Euptelea polyandra)と、中国南部からアッサムに自生するEuptelea pleiosperma の、1属2種(および両者の人工的雑種)からなる。花は両性で、花被はなく、多数の雌蕊と雄蕊からなる。 フサザクラは3-4月頃、葉が出る前に開花し、紅色の雄蕊のやくが房状に垂れ下がって美しい。雌蕊はゴルフのクラブ状で雄蕊より短い。果実は偏平で周囲が翼状になり、風で飛ぶ。 APG植物分類体系ではキンポウゲ目に入れる。(画像はこちら
8277 アキグミとは アキグミ(秋茱萸、学名Elaeagnus umbellata)はグミ科グミ属の落葉低木。 果実は食用となり、果実酒などに利用される。和名は、秋に果実が熟すことから。 ヒマラヤ山脈から日本にかけての東アジアに分布する。日本では、北海道の道央以南、本州、四国、九州などに広く分布し、日当たりの良い河原や林道脇によく生える。 低木の落葉樹で、樹高は2-3m程度に成長する。葉は白っぽい緑色。初夏に黄色の花を付け、秋に朱から赤色の直径8mmほどの実を付ける。実は食用となるが、タンニンを多く含むため強い渋みを感じさせる。また、実にトマトの7〜17倍のリコペンを含む。 窒素固定を行い痩せた土地にも生育すること、挿し木による増殖も可能なことから砂防や治山の緑化工事などにも用いられる。 北アメリカでは、各地で帰化しており、侵略的外来種と考えられることがある(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8278 ナツグミとは ナツグミとはグミ科の植物の一種。学名Elaeagnus multiflora。 本州の関東〜中部、四国の山地に自生する落葉小高木であるが、庭木にされることもある。4〜5月頃に淡黄色の花(正確には萼筒)を咲かせる。果実(正確には偽果)は6月頃に赤く熟して食べることができる。
変種
1)トウグミ(学名E. multiflora var. hortensis) これがよく植栽されている。ナツグミ、トウグミはよく似ているが、葉の表をルーペで拡大し鱗状毛があればナツグミ、星状毛があればトウグミである。
2)ダイオウグミ(学名E. multiflora var. gigantea) 特に果実が大きい。ビックリグミともいう。鑑賞用兼食用(果実)として栽培されることが多い(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8279 クロマメノキとは(黒豆の木) クロマメノキ Vaccinium uliginosum var. japonicum。日本に自生するブルーベリーの一つがクロマメノキです。ブルーベリーの野生種・ヌマスノキが北米の荒地に生えるのに対し、クロマメノキは亜高山から高山にかけての砂礫地で見られ、火山性の山に多い傾向があります。生育環境は異なりますが、いずれも土壌が酸性であることでは共通しており、この仲間はこういった土質を好むようです。ブルーベリーにくらべると果実の直径は半分程度ですが、味はけっして負けていません。特に汗だくになって登った山の稜線でつまむ果実の味は格別です(野生植物写真館より引用)(画像はこちら)。
8280 アーティチョークとは アーティチョーク(Artichoke、Globe artichoke、学名Cynara scolymus)は、キク科チョウセンアザミ属の多年草。和名:朝鮮薊(チョウセンアザミ)。若いつぼみを食用とする。地中海沿岸原産。高さは1.5-2mで、葉は50-80cmに達し、つぼみは8-15cmに達する。江戸時代にオランダから日本に渡来した。 元は野生のアザミであったが、古代ギリシャ・ローマ時代以降、品種改良が進んで今日の姿となった(近縁種のカルドン(Cardoon、Cynara cardunculus)はとげが鋭いが、同様に食用になる)。 食用とするには、まずつぼみをレモンなどと共に茹でるか、蒸す。そして、花及び果実の冠毛になる繊毛を取り除き、蕚状の苞片を外から剥き、苞片基部の肉質部分を歯でしごくように食べ、最後に花托部分を切り分けて食用とする。食用部分はでんぷんに富んでおり、食感はいもに似ている。水溶性食物繊維に富む。 ヨーロッパやアメリカでは広く食用とされているが、日本では栽培条件が合わないこともあって野菜としてはあまり普及していない(観賞用が多い)。 イタリア料理では、イタリア語由来のカルチョーフィ (carciofi 複)(またはカルチョーフォ (carciofo 単))と呼ばれ一般的な野菜として前菜などに使用される。 ちなみに、英米ではキクイモとチョロギもArtichokeと称する(画像はこちら)。
8281 エビヅルとは/エビズルとは(蝦蔓) 属名 ブドウ科ブドウ属 、学名 Vitis thunbergii 、 落葉つる性木本。 雌雄別株。 葉は単葉で互生。 葉身は五角状で、長さ8〜16cm、幅は5〜10cm。 葉の表面は濃緑色で葉脈上に毛がある。 裏面は赤褐色で全面にクモ毛がある。 葉縁は3〜5裂し、各裂片は低い鋸歯がある。 葉先は鋭頭または鈍頭。 基部から5本の掌状脈がでる。 花は葉と対生し、長さ6〜12cmの円錐花序を出し、黄緑色の小さな花をつける。 果実は液果で直径6mmの球形で、黒く熟す。 食べられる。 類似種のサンカクヅルは葉は三角形状。 分布 本州、四国、九州の丘陵帯から山地帯下部の林縁部に生える。 六甲山系では山麓〜中腹でよく生えている。 花期、果期  花期 6〜8月  果期 10月 (神戸市と六甲山の自然のホームページより引用)(画像はこちら)。
8282 オオミノトケイソウとは(大実時計草) Passiflora quadrangularis L.  オオミノトケイソウは中央・南アメリカ原産のつる性多年草である。  茎は細長く、四稜形で(学名の属名 quadrangularis はラテン語で「四角形」の意)葉柄の付け根に翼状の小葉(托葉)があり、葉は広卵形から卵状楕円形で長さ10〜25cm、幅8〜12cm程度。葉柄には最大6個(3対)の疣状腺体がある。  ブラジルトケイソウに似るが葉柄状の疣状腺体の数や果実の形態で区別ができる。花は1つの葉に対して1つ発生し、下向きに開花し、直径10〜12cm程度で、やや強い芳香がある。5枚ある萼片の内側は白色から赤色または紫色を帯び、外側は黄緑色、萼片同様5枚ある花弁の内側は桃色から赤紫色、外側は密な赤点があり、ひげ状の副花冠は基部が赤紫色と白色の縞模様で、中央部は青みを帯び、先端は桃色がかった薄青色になる。 オオミノトケイソウは雄蘂先熟性 protandrous nature であること、日本国内では適当な花粉媒介昆虫がいないこと、異株間での受粉でないと結果率が下がる傾向があるらしいことなどから人工授粉を行うことにより結果率を上げることができるとされる。  沖縄では開花は周年見られるが、結実するのは6〜11月が多い様だ。 オオミノトケイソウの花、果実はトケイソウ属(Passiflora 属)中で最大となり、長楕円形から卵形、長さ20〜30cm、果重約2kgに達する。果皮は熟すと薄黄色から黄緑色になる。種子を包む半透明の仮種皮を食用とするが、味が淡泊で生食よりも加工に向くとの評が多い。インドネシアでは果汁で作った marquesa(一般名は markeesa)と云う清涼飲料が一般的とのことです(熱帯果樹写真館より引用)(画像はこちら)。
8283 ガンコウランとは(岩高蘭) ガンコウラン(岩高蘭、Empetrum nigrum)は、ガンコウラン科の常緑樹。主に北海道や本州中北部などの高山の岩場や海岸近くに生える。
ガンコウランは、高山に咲く花でも開花の時期が6月頃と非常に早く、また他の植物に混ざり目立つことない常緑樹のため、見ることは難しいとされている。長さは3mmから6mm、大きいもので8mm前後あり、茎が地面を這うように生えている。果実は黒く食すことができる。実際に採取してジャムなどにする人もいる。果実はビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富である。そのためか果実は鳥のえさともなっている。
生息地:日本では主に北海道や本州中北部に繁殖している。また寒冷地などに多く生息している。代表的なのはアラスカ、カナダである(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8284 シラタマノキとは(白玉の木) シラタマノキ(白玉の木 Gaultheria miqueliana)はツツジ科の常緑小低木。同属のアカモノの果実は赤く、本種は白い果実をつけることから別名シロモノと呼ばれることもある。 中部以北の亜高山帯以上の草地等、比較的乾燥した場所に生える。高さは30cm程度。葉は互生し、鋸歯を持つ楕円形で3cm程度の大きさ。花期は7-8月で、5mm程度のドウダンツツジのような釣鐘型の花をつける。9月頃、萼が肥大して果実を覆い、白い玉状になることからシラタマノキの和名がある。これを潰すとサリチル酸の臭いがする(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8285 セイヨウバクチノキとは( 西洋博打の木 )

学名 Prunus laurocerasu 、科名 バラ科。サクラ属、 花期 4月〜5月。ヨーロッパから西アジア原産の常緑樹です。 セイヨウバクチノキの名は、バクチで身包み剥がされたように、樹皮が剥げ落ちるのでこの名がついたとのことです(四季の花より引用)。
用途:鎮咳、去痰、喘息、咳、呼吸困難。
成分:青酸配糖体、プルナシン。(画像はこちら

8286 ナワシロイチゴとは(苗代苺) 学名 Rubus parvifoius 和名 ナワシロイチゴ ナワシロイチゴ(苗代苺、学名:Rubus parvifoius)とは、バラ科キイチゴ属に分類される植物の一種。別名アシクダシ、サツキイチゴ、ワセイチゴ、サオトメイチゴ。 茎は木質化するが、立ち上がらず、他の草の上に覆い被さるように育つ。その茎から出る枝は短く立ち上がる。茎には棘がある。葉は3出複葉、時に5出、あるいは繋がって三裂の場合もある。小葉の葉先は丸く、あらい二重の鋸歯がある。葉の表は明るい黄緑で、葉脈がくぼむのでしわがあるように見える。葉裏は白い綿毛を密生する。葉は落葉性。 花は短く立ち上がる枝の先に散房状につく。花は赤っぽい紫だが花弁が小さいので目立たない。苗代の頃に赤い実が熟すため、この名がある。日当たりの良いところに生え、雑草的に生育する。赤紫色の花をつける。果実は食用になるが、あまりうまくない。 日本、朝鮮半島、中国などに分布。畑地や道路脇などによく出現する雑草的低木である。 (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用)(画像はこちら)。
8287 ナンテンハギとは マメ科の多年草で、高さ0.5〜1メートルになる。日本各地の山や土手で普通に見られる。別名をフタバハギやアズキナという。名の由来は、葉がナンテン、外見がハギに似ているところからついた。六月から十月にかけ、紅紫色の蝶(ちょう)に似た花を咲かす。豆のさやに数個の実(種)が入っている。岐阜県などでは、爪(つめ)で軽くちぎれるような若い葉と茎を食用にしている。味にくせがなく、比較的まろやかな味らしい。そのまま揚げたり、油炒(いた)め、汁の実、ゆでて和(あ)え物、おひたしにできるという。花は、穂ごと収穫して、爪でしごいて集め、さっとゆでて、水気をきり、三杯酢で食べられる。 (わち山野草の森より引用)(画像はこちら)。
8288 ヒメハギとは ヒメハギ (ヒメハギ科ヒメハギ属:多年草:草丈 〜20センチ:花期 〜7月。
薬効:滋養強壮、疲労回復、病後の回復。
日本全土の草地・山地の日当たり良い乾いた場所に自生する日本特産種 。
戦前は日本の各地の山地に普通に自生が見られた常緑の多年草 根はやせて長く、茎は硬く、根元から数本が出て斜めに高さ10センチ、花後は約20センチになる。葉は、柄があり互生、長楕円形、無縁、先端は尖り、茎・葉には細かい毛がある。 花は、4〜6月ころ茎の上部に、美しい小型の紫色の蝶形花をつける。花後、さく果をつけ円形褐色の種子が2個入る。採集と調整:根を秋に掘り取り、水洗いして天日で乾燥する 中国原産の生薬・遠志(おんじ)・イトヒメハギの根と同様の成分が含まれる。
有効成分:マンギフェリン、テヌイゲニンなど。
滋養強壮、疲労回復、病後の回復には、ヒメハギの根を乾燥したものを、根3グラム、水0.4リットルで、約半量まで煎じて、朝夕に服用する。
その他:名の由来は、花の色が紫色でハギの花にみたて、全草が小さいことから、ヒメハギの名になった。イトヒメハギとヒメハギ ヒメハギは日本特産種で、中国に自生するイトヒメハギの根を乾燥した生薬名の遠志(おんじ)は、すぐれた滋養強壮効果と疲労回復、虚弱体質改善、病後の回復薬として有名で、日本産のヒメハギと同様の成分テヌイゲニンを含み、遠志(おんじ)と同様の薬効が期待できる。日本の記録には、天平勝宝8年(756)に、崩御された聖武天皇の冥福祈願のために、光明皇后が、東大寺に献納した貴重な60種の生薬の第七番目に、遠志(おんじ)が「小草」の名で記述されている (イー薬草・ドット・コムより引用)(画像はこちら)。
8289 ミヤコグサとは(都草) ミヤコグサ(都草、学名:Lotus corniculatus var. japonicus)はマメ科の多年草。道端などに普通に見られる野草。春に黄色い花を多数つける。
茎は根元で分枝して、地表を這う。茎には節ごとに葉をつける。葉は5枚の小葉をもつ奇数羽状複葉であるが、実際には葉柄の先端に三出しているように見える。あとの二枚は、葉柄の基部にあって、大きな托葉に見える。葉は白っぽい緑で、かすかに粉を吹いたように見え、やや厚みがある。 春に花が咲くが、その他の季節にも少しづつ咲く。花は長い花茎の先にあって、植物体からやや上に抜けて出る。柄の先に1-3個まとまって着き、放射状に外を向く。花の基部には苞があるが、普通の葉の小葉三枚とほぼ同じ形である。萼は筒状で先は裂ける。花はいかにもマメの花、といった形で、鮮やかな黄色。なお、開花後にしだいに赤くなるものがあり、特にニシキミヤコグサ(forma versicolor Mkino)と呼ぶ。 果実はいわゆるマメの形で、小さいがインゲンに似た細長い円柱形。熟すると二つに割れて種子を散布する。 道端から海岸沿いまで、背の低い草原で、よく日の当たるところに多い。田畑の周辺にもよく姿を見る。耕作地に侵入する雑草ではないが、その周囲によく見かける野草としてよく親しまれている。元来は帰化植物であるようで、ムギ類の栽培に付随して持ち込まれた史前帰化植物であるとも言われる。 日本では北海道から南西諸島までに広く分布し、国外ではインド以東の東アジア一帯に広く分布する。 [編集] 名称 名前は「都草」の意味であると思われるが、この都は奈良の都であるという説、京の都であるという説がある。いずれにしても、古い時代には分布がさほど広くなく、当時の中心的都市近郊に多かったことを意味するのではないかと言われる。しかし、都草ではなく、実は脈根草、すなわちミャクコングサであったものが訛ったものだとの説もある 別名として、烏帽子草の名もある。花の形に由来するようである。 [編集] 利用等 雑草に近いものではあるが、畑にはびこるものではなく、特に害はない。むしろ、可愛い花を咲かせる野草として親しまれてきた。一部では食用にされたらしい。後述のセイヨウミヤコグサ、ネビキミヤコグサ、L. glaber などは家畜飼料として栽培される。カナリア諸島原産のL. berthelotii などは観賞用にもされる。 しかし近年、モデル生物としての利用が注目されている。栽培が比較的容易で生活環のサイクルが比較的短く(播種から2月ほどで開花)、染色体数2n=12、ゲノムサイズは約4億5千万塩基対(作物の中では短いイネと同程度、シロイヌナズナの3.6倍ほど)と小さいことから、マメ科のモデル生物として優れたものとなりうるという。また作物改良への応用も期待され、ゲノムプロジェクトが進められている。共生する根粒菌はMesorhizobium loti(ゲノム解析済み)(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8290 モミジイチゴとは(紅葉苺) モミジイチゴ(紅葉苺、学名:Rubus palmatus var. coptophyllus)とは、バラ科キイチゴ属に分類される植物の一種。東日本に分布。葉がもみじに似ているためこの名がある。黄色い実をつけるため黄苺の別名がある。果実は食用になる。 ナガバモミジイチゴの変種で基本変種が近畿以西に分布するのに対して、この変種は東日本の型である。葉の形がやや幅広いものが多いことからこの名がある(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8291 ヤマブドウとは(山葡萄) ヤマブドウ(山葡萄、学名Vitis coignetiae)は、ブドウ科の蔓(つる)性植物である。主として東アジアに分布する野生のブドウで、日本では山地に自生する。 [編集] 特徴 葉は10〜30cm程の大きさで互生し、柄元に窪みのある五角形様で、裏面に茶褐色の毛が生える。蔓は、葉に対生する巻きひげで他の植物等に巻き付き、高く上る。 初夏に開花し、花は葉に対生する花柄に黄緑色の小花が多数着花する。がくは輪形で、花弁及び雄しべは五つ、雌しべは一つからなる。 果実は球形で秋に熟し黒紫色になる。甘酸っぱく、生食できる。品質は安定しないが、日本の在来種として見直す動きがある。 日本では近年、ワインの原料としても注目されており、他種との交雑など品種改良の動きも見られる(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8292 エゾウコギとは(蝦夷五加)
エゾウコギ(蝦夷五加、学名:Eleutherococcus senticosus。 シノニム Acanthopanax senticosus (Rupr. et Maxim.) Harms)はウコギ科の落葉低木で、薬用植物。
日本の北海道に自生することから、北海道(蝦夷地)の五加(ウコギ)ということで、この名で呼ばれる。他にロシアのアムール州、サハリン州、中国の黒竜江省、吉林省にも分布する。高さは2〜3m。 根皮を薬用として用いる。これは、刺五加(しごか)または五加皮(ごかひ)という生薬名がある。 シベリア人参(Siberian Ginseng)とも呼ばれるが、トチバニンジン属の植物ではなく、代表的な薬用「人参」であるオタネニンジンとの類縁関係は薄く、有効成分も異なる(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら
8293 アサツキとは ユリ科ネギ属:多年草:草丈 40〜50センチ:花期 5〜 6月。
薬効:滋養強壮、食欲増進、切り傷。
北海道、本州北部の海岸、土手、山地などに自生 、日本海側の海岸に多い 野菜として全国で栽培 シベリアにも分布 。本州中部以北〜北海道の高山帯に自生するシロウマアサツキ 。

見分け方・特徴:ネギより小型で茎も細く空洞。 根は、ラッキョウ形の狭卵形の鱗茎(りんけい)で、表面は褐色 花茎は30〜50センチ、葉は細い円柱形で2〜3枚つき、茎葉ともに食用にする 花は、5〜6月、茎頂に淡紅紫色の小花を球状につけ、花被片は約1センチ 採集と調整 アサツキの茎葉を乾燥したものを、生薬名で、細香葱(さいこうそう)という。

薬効・用い方:アサツキの、葉茎、鱗茎(りんけい)には、精油、ペントース、マンナン、カロチンなどの有効成分を含有していて、食欲増進や抗菌作用があるといわれる。 葉や鱗茎をすりつぶして、止血に切り傷、擦り傷に塗布。 また、食欲増進には、おひたし、汁の実などに食べる。 その他 アサツキは、エゾネギの変種とされていて、日本古来の植物とされる。 名前の由来は、葉の色が、ネギの緑色より薄い(浅い)ということから、浅っ葱(ねぎ)から、浅っ葱(あさっき)から転訛(てんか)して、アサツキになったという。 浅葱色(あさぎいろ)とは、アサツキの葉の色からついたものだという。 また、別名で、アサツキの葉の形から、糸葱(いとねぎ)や千本分葱(せんぼんわけぎ)などの名前があるという(イー薬草・ドット・コムより引用)(画像はこちら)。
8294 オニバスとは(鬼蓮) オニバス(鬼蓮)とはスイレン科の一年生の水生植物である。浮水性の水草であり、夏ごろに巨大な葉を水面に広げる。
植物全体に大きなトゲが生えており、「鬼」の名が付けられている。特に葉の表裏に生えるトゲは固く鋭い。葉の表面には不規則なシワが入っており、ハスやスイレン等と見分ける事が出来る。また、ハスと違って葉が水面より高く出ることはなく、地下茎(レンコン)もない。 春ごろに水底の種が発芽し、矢じり型の葉が水中に現れる。茎は塊状で短く、葉は水底近くから水面へと次々に伸びていき、成長するにつれて形も細長いハート型から円形へ変わっていく。円形の葉は、丸くシワだらけの折り畳まれた姿で水面に顔を出し広がる。円形葉の大きさは直径30cmから2m程度と巨大で、1911年には富山県氷見市で直径267cmの葉が見つかっている。 花は水中での閉鎖花が多く、自家受粉で100個程度の種子をつくる。種子はハスと違って球形で直径1cm程度。8月から9月ごろに葉を突き破って花茎を伸ばし、紫色の花(開放花)を咲かせる事もある。種子はやがて水底に沈むが、全てが翌年に発芽するとは限らず、数年から数十年休眠してから発芽することが知られている。また冬季に水が干上がって種子が直接空気にふれる等の刺激が加わることで発芽が促されることも知られており、そのために自生地の状態によってはオニバスが多数見られる年と見られない年ができる事がある(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8295 ガガイモとは ガガイモ (ガガイモ科ガガイモ属:多年草:草丈 〜 センチ:花期 〜8月)。
薬効:滋養強壮、腫れ物、解毒・虫刺され。
日本全土の日当たりのよい道端、空き地、原野、土手に自生。

見分け方・特徴:日当たりのよい空き地や土手に普通に見られるつる性の多年草です。 つるや葉を切ると白い汁が出ます。 地下茎は長く横に這います。 茎は、長く伸びて他の植物の上に覆いかぶさります。 葉は、長い心臓形で、少しつやがあり裏面は白っぽくなっています。 花は、夏に葉脈の脇から柄を出して、淡紫色で5裂で、おしべと雌しべがくっついている花を数個つけます。 果実は、大型の袋果で船形、長さ8〜10センチ、表面には不規則な突起があります。 熟すと、果実が割れて、扁平楕円形の長い白毛を持った種子が風で飛びます。

採集と調整:初秋に果実、種子、葉を採取して、日干しにして乾燥させます。 果実を乾燥したものを生薬で、羅摩子(らまし)といいます。 生の葉は、随時採取します。

有効成分:プレグナン誘導体サルコスチン、ブレグラリン、ネタプレキシゲニン、ベンゾエルラマノンなど。
滋養強壮に、乾燥した種子、茎葉を粉末にして1日2回2〜3グラム服用します。 茎葉の粉末と、クチナシの果実の粉末を、酢で練って、腫れ物などに外用として塗布します。 生の茎葉は、解毒、腫れ物に、細かく切ってから、麦粉・酢と良く練って外用で患部に塗布します。 茎葉から出る白い汁は、イボやヘビ、虫刺されに患部に塗布します。 種子の白毛は、切り傷の止血になります。 若芽は、熱湯でゆでて、水にさらしてアク抜きをしてから、油いため、煮物、混ぜご飯などにして食べます。 その他 ガガイモの名前の由来は、カガミ(かがむ)という動作を意味していて、これは、かがむような低い場所に太い茎があるということからついた名ということです。 また、葉が亀の甲のような形をしていることから、栃木の放言でゴガミ(亀)のことを、ガガということから、ガガと、果実が熟すと、イモのような色・形から、ガガイモと名がついたなどがあるようです。 また、古事記には、大国主命の国造りをしたといわれる、クナビコナ(少彦名神)が、「天の羅摩(カガミ)の船にのって・・・」という記述があります。 これが、ガガイモの果実のサヤに乗って小さな神様が来たとされていて、日本では古くから、ガガイモが親しまれていたことがわかります。 ガガイモ科の植物は、つる性が多くあり、良く似たイケマがありますが、花が白く区別がつきます。 イケマも、ガガイモと同様に、茎葉を折ると白い汁を出し、似たような薬効がありますが、根には、アルカロイドを含み毒性があります(イー薬草・ドット・コムより引用)(画像はこちら)。
8296 カントウタンポポとは カントウタンポポは,関東周辺で見られる在来種のタンポポ。帰化種が増えて在来種が少なくなっているのは,程度の差こそあれ全国で見られる現象だが,その中でもカントウタンポポは,最も減少傾向が著しいと感じる。 中部地方などでは,農村に行けばまだまだ在来種のヒロハタンポポの方が優勢なところも少なくないが,関東でカントウタンポポを探そうと思うと骨が折れる。 分布の中心が首都圏にあり都市化が進んでいるためだろうか,それとも,カントウタンポポ自体がもともと微妙な生態系のバランスの上に乗っていたからなのかもしれない。 ここではとりあえず旧来の分類に従ってあるが,最近の研究では,日本のタンポポの多くを1種にまとめる見解もあり,それに従うとカントウタンポポもカンサイタンポポも同じニホンタンポポという種に入れられることになる。 確かに分布域の境目ではカントウタンポポとエゾタンポポ,カントウタンポポとヒロハタンポポの中間的なものを見かけることがある(植物図鑑・撮れたてドットコムより引用)(画像はこちら)。
8297 キバナオウギとは(黄花黄耆) キバナオウギ(黄花黄耆)とはマメ科の植物の一種。学名Astragalus membranaceus。別名タイツリオウギ。 中国、朝鮮半島に分布する多年生草本。花期は7〜8月頃で淡黄色の蝶形花を咲かせる。

生薬:本種または同属のナイモウオウギ(A. mongholicus)の根は黄耆(オウギ)という生薬である(日本薬局方に収録)。 本薬中の有効成分はフラボノイド・サポニン・γ-アミノ酪酸(ギャバ、GABA)など。 黄耆には止汗、強壮、利尿作用、血圧降下等の作用がある。黄耆を含む漢方方剤は防已黄耆湯、桂枝加黄耆湯、黄耆建中湯などがある(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8298 サルナシとは(猿梨) サルナシ(猿梨 - 学名:Actinidia arguta)とは、マタタビ科マタタビ属の植物。別名:シラクチカズラ、シラクチヅル。果実はしばしばコクワと呼ばれる。 日本、朝鮮、中国などに分布する雌雄異株の蔓性の落葉樹で本州中部以南の温暖地では、概ね標高600m以上の山岳地帯に自生する。花色は白で、また果実は雌株に近縁のキウィフルーツを無毛にして小さくしたような緑色の2〜3cm程度のものが熟し、果実酒などに使用したり、味もキウィフルーツによく似て生食にも適する。野生果実としてはかなり美味で、栽培果樹にも匹敵すると評価されることもある。 キウィフルーツの日本での栽培の開始は、本来サルナシ果実の味に魅せられた農家が栽培果樹化を試みたが、その困難さにこれを断念し、近縁なキウイフルーツが中国南部からニュージーランドに導入されて栽培果樹化されていることを知って、これの日本導入に切り替えたことに始まるというエピソードもある。 野生動物ではニホンザルやツキノワグマ、ヒグマなどが好んで大量に摂食して種子散布に貢献し、クマ類がこればかりを大量に食べた後の糞の外見はキウィフルーツのジャムに酷似する。このように、ヒトを含む哺乳類の味覚の嗜好に適する点、鳥類による種子散布に頼る植物の果実の多くの色が赤色か黒色である点、哺乳類に発達した嗅覚を刺激する芳香を持つ点から、主として哺乳類の果実摂食による種子散布に頼る進化を遂げた植物であると考えられる。 かずら橋ツルは直径約5cm、長さは50mにも伸びることがある。非常に丈夫で腐りにくいことから「祖谷のかずら橋」(吊り橋)の材料にも使用されている(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8299 シラカバとは 高さ20〜30m、直径0.3〜1m。落葉高木で雌雄同株。 幹はまっすぐ、枝は細くよく伸び、多岐に分かれ卵形の樹冠を作る。 小枝は暗紫褐色、初めはジグザグ状で、腺点と皮目がある。 外皮は薄く、目立った帯黄白色に淡い光沢がある。 多少隆起した狭くて長楕円形ないし円形の皮目(濃色)が多数あり、 薄い鼠色の油脂腺点がある。それらは紙状に剥離することが出来るが、 自然には剥がれたりしない。内皮は、淡い褐色で脂蝋分が多く、生木 でもよく燃える。古枝の皮は黒褐色をしている。 無果実の枝には明確な腺点があり、やや粘液質である。皮目は横線形。 有果実の枝はほとんど滑らかで腺点がない。皮目は顕著で散在し、淡い 帯紅褐色である。冬芽は長さが約12mm、直径約4mmで細長い楕円状 紡錘形、先端は幾分、鋭尖形をしている。表面は栗褐色で樹脂で覆われ、 やや光沢をなしている。新芽は、精油の香りがあり、べとつきがある。 葉は、互生で有柄。主枝では螺旋状に、短枝では対生し、三角状広卵形や 卵状菱形で長さ4.5〜10cm、幅3.5〜6.5cm位である。先端は 鋭尖形、基部は広いくさび形かハート形をしている。 又、他の広葉樹(ハルニレ、アサダ、ミズナラ等)と混交したりもする。 陽樹ではあるが短命で、害虫・風害にも弱く、剪定不可能。老成後は 移植力に乏しい。暖地での肥大限度は直径0.2mとされる。 材質は堅く、木目が細かく、帯黄白で磨くと美しいため、家具材や建築 の内装に使用される。他に、各種器具材として、パルプ材及び割り箸 などに使用される。樹皮は、木工細工等、紙の代用、雨天での松明 (たいまつ)などに使われる。 (中川木材産業株式会より引用)(画像はこちら)。
8300 シロバナエンレイソウとは/ミヤマエンレイソウ(白花延齢草、深山延齢草) 別名ミヤマエンレイソウ(深山延齢草、学名:Trillium tschonoskii)は、ユリ科の多年草。

特徴:日本では本州、四国、九州の山林の樹陰に生える。 太く短い根茎から、高さ20〜40cmの茎が一本伸び、その先端に3枚の葉を輪生する。葉は葉柄を持たず、茎から直接生ずる。葉の形状は丸みを帯びたひし形で、直径は10〜20cm程度。3枚の葉の中心から短い花柄が伸び、花弁がなく、白い萼片(がくへん)のみを持つ花を生じる。萼片は、長さ2〜3cm、緑色から薄紫色、先端がとがる。 シロバナエンレイソウは根を薬として使用し、韓方医学では芋児七(ウアチル)と呼ぶ。中風(脳卒中の発作の後遺症として半身不随となる状態)、血液循環、高血圧、鎮痛、止血、痰止め、胃腸障害などの治療に使われる(画像はこちら)。
8301 シロバナタンポポとは 日本在来種であり、本州関東以西、四国、九州に分布し、西の方ほど多い。 2月〜5月にかけて白い花をつける。頭花(花に見える部分全体)のサイズは直径3.5〜4.5cmほどになる。白く見える部分は舌状花(頭花を作る1つ1つの小さな花)の花冠(「花びら」に見える部分)で、中央の花柱部は黄色である。 舌状花は1つの頭花におよそ100個ほどで、他種と比べて比較的少ない。ゆえに結実する種子も比較的少ないが、他の日本在来種の主なタンポポとは違い単為生殖が可能である。 他のタンポポより舌状花が少なく白色なので区別は容易である。 根茎には、健胃の薬効がある。根を炒ったものは、タンポポコーヒーとして人気がある(画像はこちら)。
8302 スミレサイシンとは(菫細辛) スミレサイシン (スミレ科スミレ属:多年草:草丈20センチ。花期 5月。
薬効:便秘、不眠症、関節炎、はれもの・できもの、 打撲傷(うちみ)。 科名:スミレ科/属名:スミレ属。 和名:菫細辛。北海道南部から本州全土の日本海側の多雪地域に自生 葉は、ハート型で大きく、葉の端が丸まることから区別がつく。根は太く、トロロのように摩り下ろして食べる。また、若葉は天ぷら、熱湯で茹でて水にひたして、汁のみ、おひたしなどで食べる。 名前の由来は、葉がサイシンに似るという、別名では、トロロにしたことから、トロロスミレや、紙すきの糊を作ったことから、ノリスミレという。 花は、大きく淡紫色から濃紫色や淡赤紫色まである(イー薬草・ドット・コムより引用)(画像はこちら)。
8303 セイヨウスモモとは/プルーンとは 中心に大きな種を持つ。水溶性食物繊維が豊富である。 半生状のドライフルーツや、ペースト状のプルーンシロップに加工されて食されるのが主だが、新鮮なものは生のままでも食される。
産地:世界的には、アメリカ合衆国のカリフォルニア州が一大産地となっている。
日本国内の産地:プルーンは雨により裂果が起こりやすいため、日本国内では比較的雨の少ない長野県(日本国内生産量のおよそ6割)、青森県、北海道などで栽培されている。日本国内で生産されたプルーンの多くは、生食用として出荷・消費される。

栄養素:プルーンは鉄分が豊富である」との通説があるが、これは誤りである。生プルーンの鉄分含有量は100グラムあたりわずか0.2mgであり、これは同量のバナナの0.3mgと比べても少なく、同量のほうれん草の2.0mgにも遠く及ばない。 成人1日あたり必要な鉄分12mgをプルーンだけで摂取するには、生または乾燥プルーン果実を150個食べなければならず、プルーンの栄養素を凝縮した特殊な加工食品でない限り、現実的な量ではない(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8304 チョウセンゴヨウとは チョウセンゴヨウとは朝鮮半島や中国東北省、まれに本州北部に自生する常緑樹でチョウセンゴヨウマツです。この松の種子を海松子(カイショウシ)です。。食用にされるのはこの松のものだけで、大半を中国や韓国から の輸入に頼っています。言い伝えで仙人が不老長寿のため、常食としていたといわれているだけに カロリーも高く、その他の栄養素も多く含んでいます。成分として、良質の脂肪分、タンパク質、 灰分、ビタミンB1が含まれています。滋養強壮、 咳、頭痛、吐血、便秘、十二指腸虫の駆除に効果があります。 また、葉も不眠、健胃、高血圧といった症状に効果が期待されています。 (くすり・サプリメントの成分百科 より引用)(画像はこちら)。
8305 ナガイモとは(長芋) ナガイモ(長芋)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物、あるいは芋として食用にされる、その肥大した担根体。中国原産で、日本へは17世紀以前に渡来した。最も高緯度で栽培されるヤマイモ類のひとつである。学名はDioscorea batatas。雌雄異株のつる植物で、夏に花を付ける。 ヤマノイモ同様、長く伸びる芋を食用にし、すりおろしてとろろにする調理法が代表的。これは、澱粉質を分解する消化酵素であるジアスターゼ(アミラーゼ)を多く含んでいるので、加熱に弱く、生食が適することによる。

芋の形状その他により数種類の品種群に分類されている。
1.ナガイモ…円柱状の芋を持つ。芋の粘りは少なく、きめも粗いが、生産は比較的容易。≪主な産地・・・青森県上北地方、北海道帯広市≫
2.ツクネイモ…芋は丸みを帯びる。粘り、きめの細かさがナガイモやイチョウイモよりも強く、ヤマノイモ(自然薯)と並び、最も美味とされる。≪主な産地・・・兵庫県丹波市・篠山市(丹波ヤマノイモ:黒皮種)、奈良県・三重県(大和イモ、伊勢イモ:白皮種)≫
3.イチョウイモ(ヤマトイモ)…芋は扁形で、下は広がる。ナガイモよりは粘りが強い。≪主な産地・・・群馬県太田市≫
ヤマノイモ同様、むかごも食用になる(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)(画像はこちら)。
8306 ナンタイブシとは(男体附子) キンポウゲ科 トリカブト属 Aconitum komatsui 。高さ1m程度。葉は互生し、長さ10cm程度の円心形。茎はほとんど無毛、葉柄や花柄も無毛。秋に開花。 関東地方北部、中部地方東部に産する多年草。日光男体山に多く自生することからこの名称がついた。本品の塊根を生薬として使用するが極めて毒性の強い成分が含まれ、有毒植物の代表格である。アルカロイドのジテルペン系で、毒性の強いアコニチン、メサコニチン、アコニン、ヒバコニチンを含み、低毒性成分のアチシンの他ソンゴリンなどを含む。毒性を低くした加工附子が漢方処方に用いられ、鎮痛、鎮痙、強壮などに用いられる。素人療法には不向き。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8307 ヒトリシズカとは(一人静) 学名: Chloranthus japonicus )は、センリョウ科 チャラン属の多年草。
分布と生育環境:北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の林内、林縁に自生する。

特徴:高さは10〜30cm。葉は4枚が輪生状に付き光沢があり、縁には鋸歯がある。花期は4〜5月で、茎の先に1本の穂状花序を出し、ブラシ状の小さな白い花をつける。 一本で生えるのは稀で、普通群生する。 名称の由来はこの花の可憐さを愛でて静御前になぞらえたもの。近縁種のフタリシズカが花穂を2本以上出すのと対比させた。 (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8308 バイケイソウとは 有毒部分:全草。特に根茎や根に毒成分が多い。ベラトラミン、 ジエルビン、ルビジエルビン、バイケインなどの多数のアルカロイドを含み、いずれも毒性が強い。これらのアルカロイドをベラ トルムアルカロイドと総称している。血管反射作用によって血管 を拡張させ、血圧降下、さらに、呼吸減少となって呼吸マヒ作用 により死亡する。

特徴:北海道から四国、九州に自生する壮大な多年草。朝鮮半島 や中国にも分布する。山地の林の中の湿地や日のよく当たる草原の湿地に生え、根茎は太く、根も多数出て、地下深く斜めに入る。茎は中空で太く、直立して1.5mにも伸びる。葉は互生し、広卵形で長さ10〜30cm、幅約20p、先端はとがり、葉縁には鋸歯がなく、縦じわが通り、表面は無毛で、裏面の脈上には毛状の突起が多い。これは個体によっては無毛のものもある。茎の下部につ く葉は退化して繊維状の束となって茎を包んでいる。  
花は7〜8月に開き、花被片は長楕円形で緑白色、縁に毛状の小鋸歯がある。雄しべ6個は花被片の1/2の長さ、花糸は無毛であるが、子房には縮れ毛が密生。果実は長さ約2cmのさく果を結ぶ。

漢字で梅尅吹F『日本産物志』伊藤圭介著(1872年)に梅尅垂フ漢字をあげ、花が梅に、葉は宸ノ似ているので、この名があるとし、宸ヘシラン(ラン科)というとしている。ほかに、ハエノドクの名もあげて、「根は味辛し之を飯に和し蝿に食はしむれば死す」、 また山民の説として、厠の中に入れておくと蛆(うじ)は絶えて生じない とも記している。『コタン生物記』更科源蔵ほか著(1977年)には、 北海道日高沙流谷で聞いた話として次のようなことが出ている。 男性が性不能になったとき、この草を相手の女性の股のところに さげて神に祈ると、元気がでてくるという。ほんとうかどうか、 試してみてはいかがなものであろうか。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8309 コバイケイソウとは 有毒部分:全草。特に根茎や根に毒成分が多い。ベラトラミン、ジエルビン、ルビジエルビン、バイケインなどのアルカロイドを含んでいて、血管反射作用による血管拡張から血圧が降下し、呼吸減少となって、呼吸マヒを起こして死亡する。

特徴:本州の中部以北から北海道に自生する大形多年草。亜高山帯、高山帯などの高地の湿った草地に生えるが、北海道では低地にも見られる。  茎は高さ60〜100cm、太く直立して伸びる。葉は広楕円形、長さ 10〜20cm、先はとがり、基部は鞘になって茎を包み、互生する。 葉の両面とも無毛。花期は6〜8月で、茎の先に円錐花序に白色の花多数をつける。花被片は長楕円形で6個、長さ約6mm。雄しべは6個で花被片より少し長く花外に突き出ている。  
バイケイソウでは雄しべが花被片の1/2ほどの長さで短い。また、このコバイケイソウの子房は無毛であるが、バイケイソウは縮れた毛が密生する。  花は両性花と単性花の二種類が一つの株につく、これはバイケイソウと異なる。まっすぐに伸びた茎の上のほうにつく円錐花序の中の花が両性花で、のちに果実(さく果)を結ぶが、側枝とな った花序につく花は単性花で、雄花のみで、果実はできない。

同類二種:
1)ミカワコバイケイソウ(三河コバイケイソウの意):

愛知県の三河地方や長野県の低地の湿地に自生する多年草で、花が小さく、雄しべが花被片の2倍も長い。
2)ウラゲコバイケイソウ:
 本州の東北、北陸地方の高山の湿地に見られる多年草で、葉の裏面の脈上には、こまかいいぼ状の突起 があって、さわるとざらつく。この両種ともコバイケイソウの変種である(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8310 ドクウツギとは 有毒部分:全株。特に果実に多い。果実、種子中にコリアミルチンとツチン、茎葉にはコリアミルチンのみで、いずれも猛毒を含み、秋に赤く熟した果実を子供が食べて中毒することが多い。

特徴:北海道から近畿地方までに自生する落葉低木。多くは川原や山の斜面で日当たりのよいところに生え、雌雄同株で、1本の株に雄花と雌花が別々につく。若枝は四角形で、葉は3脈が目立 ち、卵状披針形で基部は丸いが、先端はとがり、対生する。  花は5〜7月に開く。雌花は肉質のがく片5枚、その内側に小さい花弁5枚、花柱は5本で花外に突き出していて鮮紅色。雄花 は雄しべ10個、葯は長く、がくから外に突き出している。雌花は 花後、花弁が大きく肥大して多肉となり、これで果実を包む。径1cmほどで熟すると紫黒色になり、多汁でなめると甘い。果実は花弁の肥大したもので包まれているため、外からは見えない。

名前の由来と別名:ドクウツギの名は、葉の形がウツギに似て、毒であることから、ほかにイチロベコロシ、ネズミコロシ、カワラウツギ、ナベワリウツギなどの別名がある。

いぼとりやねずみとりに:『日本産物志』伊藤圭介著(1872年)には次の記事がある。多摩川の傍にある府中で、往年名主を務めていた某の庭先に、ドクウツギがあって実が紅熟し、子供たちが終日そのあたりで遊んでいた。その子供たちが帰宅後に腹痛を起こ して苦しみ始め、医者にみてもらったが手の施しようもないほどで、激しい者は大吐血して死亡。中には腹痛吐血が軽くて助かった子あり、問いただすと、名主の家のドクウツギの赤い実を食べたことがわかったということである。この記事のほか、木曾では この実をいぼに塗れば、自然にいぼが落ちるので、イボノキと呼ぶということ、また、葉を飯にまぜてねずみとりに用いるという ことも、あわせて記されている。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8311 フジウツギとは 有毒成分:全株。有毒物質の化学的研究がまだ精査されていないが、サポニン様の物質ではないかと見られる。
特徴:本州、四国の山地の谷間や川岸などの日当たりのよい林のへりに生える落葉性の低木。幹は四角でひれ状の翼があり、枝分かれが多い。葉は対生につき、長楕円形で短い柄があり、長さは 8〜20cm、幅2〜5cm。下面は淡緑色でまばらに淡褐色の星状毛が生える。  
花は7〜9月、枝先に細長い花穂をつくり、淡紫色の花を一方 に傾くように多数開く。花冠は筒形で、外面に星状の綿毛が密生 し、先は4裂。雄しべ4個は花筒の内壁中央より下につく。

名前の由来:花の色が藤、葉がウツギ(ユキノシタ科)に似ていることからこの名前となる。別名にカクフジ、日光ウツギ、箱根ウツギ(スイカズラ科に同名があり)がある。カクフジは幹が四角いことから。漢名の酔魚草(すいぎょそう)、中国揚子江以南に自生し、わが国 でもときに栽培されるトウフジウツギにつけられたもの。両種と もよく似ているが、トウフジウツギの花冠外側には綿毛がなく、 腺点のみであることが違っている。

毒流し草:江戸時代に出版された『新刊多識編』(1631年)には酔魚草の名をあげ、ドクナガシクサの和名をあてている。この和名は、毒流し草の意である。また『和漢三才図会』(1713年)では、こ の酔魚草の図をあげ、次のように記している。「茎はハマゴウに 似て稜があり、外皮は薄黄色。枝ははびこりやすく、葉はカワヤナギに似て対生。7〜8月に開花、穂を成して紅紫色、さながら キガンピやコガンピのようである。漁人花と葉をとり、これで魚を毒すればことごとく苦しみて死す。池沼のあたりに植えてはいけない(原文を現代文風にした)」。  フジウツギによって浮き上がった魚は、有毒で食べられない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8312 ハシリドコロとは 有毒部分:全草。特に根、根茎などに毒成分を多く含むが、茎葉も危険である。アルカロイドのヒオスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどトロピン型アルカロイドを含む。チョウセンアサ ガオと同じ成分であるが、ハシリドコロは毒成分の含量が多いので、ロにした場合は狂乱状態がはげしく、死亡することが多い。

特徴:本州、四国、九州の深山で、陰湿地などに自生する日本特産種の多年草。太い根茎は曲がって、先端から地上茎を出す。葉は長楕円形で両端はとがり、脈は裏面に隆起している。花は4〜 5月、葉腋からぶら下がってつく。花冠は鐘形、先は浅く5裂 し、外面は暗紅紫色、内面は緑黄色。雄しべ5個。花柱は1本で 雄しべより長い。

名前の由来:中毒症状が、狂乱状態になって、泣き、わめきなが ら走り回ることと、根茎がトコロ(オニドコロ・ヤマノイモ科) に似ているのでこの名前となった。オメキグサ、ホメキグサ、ナ ナツギキョウ、ユキワリソウ(サクラソウ科に同名あり)などの別名もある。漢名で莨(ロウ)トというのは、同じナス科で中国産のヒヨスという別のものの名で、ハシリドコロには漢名はない。

山菜とまちかえて中毒:春先に若苗を、 ほかの山菜とまちがえて食べ、中毒する例が多い。『日本産物志』(1872年)には、天保8年(1837)の春、全国各地に農作物不作による飢饉があり、餓死者多数が出たとき、木曾の山村 で起きた悲劇として、地下の根茎をアマドコロの根茎とまちがって熱した灰の中で焼き、一家で食べて中毒した話か記してある。

医薬品として利用;古くから莨(ロウ)トの漢名を使用してきたため、いまさらこれを変えることもできず、根茎や茎葉のエキスはロート エキスの名称で日本薬局方に収載され鎮痙、鎮痛薬に用いられ る。劇薬で一般に素人は使用しない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8313 フクジュソウとは 有毒部分:全草。特に地下の根と根茎に毒成分が多く、強心配糖体のシマリンを含んでいる。また強心作用のないアドニリドという物質も含まれている。

強心の語に惑わされると危険:強心配糖体とか、強心という名前から、心臓病で悩む人の中には、これを採取して試してみようとすることもありうるが、危険であるから絶対に用いないこと。強 心、利尿作用があって、まれにジギタリスの代用をすることもあ るが、いずれにせよ専門医のすることである。中毒は心不全で死 亡する。

特徴:北海道から四国、九州まで全国各地の山地の林の中や縁に自生する多年草。シベリア東部、サハリン、千島、朝鮮半島、中国北部にも分布する。茎は10〜30cmの高さに直立して伸び、枝分かれする。根茎は短くて暗褐色、根茎から出る根はひげ状で多数。根茎に近い下部の葉は膜質で鞘状となって縁には鋸歯がな い。これより上部に出る葉は3〜4回羽状に細裂した複葉で、広卵形、両面ともほとんど無毛で互生する。  
花は3〜5月に、新芽とともに開花する。花は径3〜4cmで黄色。がく片は緑紫色の卵形で数個。花弁は20〜30枚で、がく片よ り長く、日中開き、夕刻にはしぼむ習性がある。正月用として暮れのころから店頭に出回るのは、促成栽培されたものである。

名前の由来:江戸時代には、元旦に花があるというので、元日草(がんじつそう)と呼び、フクヅク草とも呼んだ。別名を福寿草といっていたが、 現在では江戸時代の別名フクジュソウを正名とするようになっ た。開花期が長いことから長寿にあやかること。江戸時代から正月の祝儀の花としてめでたいときに用いられ、黄金色の花から黄金を連想するなど、すべて幸福につながる花というところから、 長寿と幸福を組み合わせて、福寿草の名になったといわれている。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8314 ドクゼリとは 有毒部分:全草。ケイレン毒のチクトキシンを含む。中毒症状はよだれを流し、手足をこわばらせてケイレンシ、脈拍か増加 して呼吸困難となったあと急に静かになって死亡する。

特徴:四国、九州より本州、北海道に自生するが、近畿地方以北に多い。水辺や沼地に生える大形の水生植物で多年草。根茎は太くて緑色で、接近して節があり、丸くて中空。ときに緑色の根茎が水面に浮いていることがある。茎は高さ1mになり、多く枝分かれする。葉は2回羽状に裂け、小葉は披針形、先はとがり、へりに鋸歯がある。花は6〜8月に、小白花多数が複散形花序に咲 く。花弁5枚は内側に曲がってつく。雄しべは5個。果実は平たい球形で長さ2.5mmぐらいになる。

毒草の危険を再認識:毒成分が強いので、民間薬に使用するという話はほとんど間かないが、危険なので注意して扱いたい。  ときに、食用になるセリやパセリとまちがえて、これの若葉を 料理のつまに使うということが、山間地帯の旅館などで起こる場合もある。また、水中にある根茎はよく肥厚して、外面が緑色 で、ところどころに節があり、節の間が中空になっていて、太い青竹の感じがする。これを万年竹などと呼んで、置物に飾ること がある。いずれにしても危険なのでやらないのがよい。

古くからある中毒例:江戸時代の飢饉のときに、信州の伊那地方でこの根茎を削り、塩をつけて焼いて夫婦で食べた。妻のほうは 少量しか食べなかったが、それでも鼻血を出しながら苦しみもだえた。幸いに妻は死を免れたが、夫はもだえ苦しみながら死亡したという話が『日本産物志』(1872年)に記載されている。  
また、北海道の開拓が行われた当時(明治初年ごろ)、放牧牛がドクゼリを食べて中毒を起こした例があり、アイヌは毒矢にす るため、トリカブトにこれをまぜたという記録がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)(画像はこちら)。
8315 ドクニンジンとは 有毒部分:全草。特に果実。全草に有毒アルカロイドのコニインを含み、これは中枢神経を興奮させた後、マヒさせる毒成分である。また運動神経末端をマヒさせ、呼吸マヒで死亡する。

ソクラテスを毒殺:古代ギリシアの哲人ソクラテスは死刑の宣告を受け、このドクニンジンで毒殺されたと伝えられている。  
茎が中空で太いので、ロンドン郊外の子供たちが、これで笛を作り、吹きながら遊んでいるうち、数人の中毒者を出したという記録もある。

特徴:ヨーロッパ原産。北アフリカ、アメリカ、中央アジア、カ ナリー島、中国などに広く帰化した2年草。茎は太く中空、高さ 3mに達し、大きく枝分かれする。葉は対生し数回羽状に全製する複葉、菜は長さ30cmになり無毛。花は白色の小花で複散形花序 につく。花弁は5枚。1枚が特別に大形で、あとの4枚は大形弁の約1/2の長さで、いずれも花弁の先がへこんで内側に曲がる。 雄しべは5個。ガクはない。開花期は夏。果実は長さ2.5〜3.5mmの球形で成熟すると2個に分かれ、果皮の表面には低い稜線がある。ドクゼリと達って、これは湿地帯でない乾燥地に生える。

名前の由来:葉が野菜のニンジンに似て、有毒であるからつけら れた。英名はヘムロック、ときにポイゾン・ヘムロックともい う。ヘムロックは元来は北米産のツガ(針葉樹)につけられた名称である。

医薬品研究のために栽培:日本にはドクニンジンの野生はない。
古くはこの草のエキスを破傷風の治療薬に用いたが、現在では医薬品としての利用はない。ただ、日本ではこの中に含まれる有毒成分コニインをとり出して、医療品の研究に使用する目的で栽培 されることがある。そのようなところから種子が外部に逃げだし、ときに野生化するものもある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8316 トウダイグサとは 有毒部分:全草。茎や葉を折ると白色の乳汁を出し、これが皮膚にふれると刺激し、ときには水泡となる。また全草の一部を飲んだりすると、吐きけ、腹痛、下痢など、消化器官に異常が出たり、脈拍が速くなって、ケイレンを起こす。死亡するほど強くは ないが危険である。有毒成分の本態は未精査。有毒物質ではない が、クエルセチンやトリヒマリンなどのフラボノイドや、べータ・ジハイドロフコステロール、ヘリオスコピオールなどがある。

特徴:本州から沖縄までの路傍や草むらなどに自生する2年草。 朝鮮半島、中国のほか、アジアの各地、ヨーロッパ、北アフリカ などにも分布する。高さ20〜40cmに伸び、根元から枝分かれするので、多くは束生するように群生する。葉は互生し、長さ3〜4 cmの倒卵形で先端は円形、基部はくさび状で縁に細い鋸歯がある。茎の先端には5枚の葉が輪生し、茎の中間に出る葉よりもやや大きい。4月 ごろに、輪生葉から5本の枝を出し、各 枝の先端に杯状花序をつける(図参照)。 湯飲み茶わんの底にあたる部分から一つの雌花が伸び、茶わんの外に傾いて突き出る。この茶わんにあたる部分が、葉が変形してできた総苞。雌花は花弁、がく片がなく、先端のふくら んだ部分が雌しべ、その下に一つの関節があって、それより下の部分が、雌しべを支える雌花の本体となるところ。この長く伸び た1本こそ、独立した雌花なのである。雄花も途中に関節があっ て、それより上が雄しべである。総苞の縁に4個の腺体があって黄緑色、蜜を分泌する。

民間療法でいぼとりに:茎や葉から出る乳汁をいぼに塗り、いぼとりに用いるところもあるが、乳汁を飲んでは危険である(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8317 ナツトウダイとは 有毒部分:全草。特に根に多い。毒成分の化学的性状はよくわかっていないが、トウダイグサと同じ白色乳汁を分泌 し、これにふれると皮膚を刺激して痛む。口にするとはげしい下 痢症状となる。死亡するほどはげしい毒成分ではないが、毒草であることにまちがいないので取り扱いに注意する。

特徴:北海道から九州までの山地に生える多年草。朝鮮半島、中国、サハリンの南部、干島の南部に分布する。根茎は地中を横に伸びる。茎は円柱形で直立し高さ20〜40cm。葉は互生し長楕円形、長さ3〜5cm、幅1〜2cm、縁に鋸歯はなく、先端は鈍円形、基部は狭い。茎の先端に4枚の輪生葉があって、茎に互生す る葉より大きい。この輪生葉から5本の枝を伸ばし、枝先に杯状花序をつける。花序のすぐ下の苞は緑色、卵状広楕円形で2枚が対生する。杯状体につく腺体は、上より見ると三日月形で両端がとがり、赤紫色である。ナツトウダイの名があるが開花は夏ではなく、春4〜6月ごろとなる。

名前の由来:上段のトウダイグサもナツトウダイも、灯台草の意。海上を照らす現代の灯台ではなく、神仏に供える燈火を乗せた燈明台の飾りが輪生葉に似ていることに由来する。

中国では下剤:中国にも分布し、勾腺大戟(こうせんだいげき)と書いて、根を下剤に用いている。漢薬で狼毒(ろうどく)と呼ぶ生薬は、中国の東北地区より内蒙古、河北に自生する狼毒大戦(学名ユーフォルビア・フィシェリ アナ)の根を乾燥したもので、煎剤を殺虫剤や疥癬に使用しているが、ナツトウダイに似ているので、わが国では、ナツトウグイ の根を狼毒とした時代もあった。また、これとは別に漢薬甘遂(かんすい)を ナツトウダイの根とされた時代もあったが、これも誤りであっ た。これは、多年草で、中国名は甘遂(学名ユーフォルビア・カ ンスイ)で、利尿葉に用いている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8318 ノウルシとは 有毒部分:全草。有毒部分は根に多い。茎葉や根茎を折ると白い乳汁を分泌し、これが皮膚を刺激する。トウダイグサ、ナットウダイ、ノウルシを含めて、ここにあげたトウダイグサ科のものは、いずれも古くから毒草として知られてきたが、有毒成分の化学的な精査はまだ完全ではない。「薬学雑誌」第86巻・6号(1966年)に当時東北大学の竹本常松教授らがノウルシの成分を発表している。それによると、地上部についての成分は五環性トリテルペンのタラクセロンとタラクセロール、四環性トリテルペンのサイク ロアアテイノールとユーフォールなどを分離しているが、毒性との関係にはふれていない。なお、蝋様物質と、ベータ・ジトステロールも分離したとしている。

特徴:北海道、本州、四国、九州の川岸の草地や湿地のみに見ら れ、そこが乾燥地になると姿を消す多年草。根茎は太く、横に伸 びる。茎は直立して伸びて太く、高さ30〜40cm。葉は互生し、長 さ5〜9cm、幅1〜2cmの楕円形で先は丸く、基部は狭くなり、 縁に鋸歯はない。茎の先端に輪生につく総苞葉は、開花期の4〜 5月になると、鮮やかな黄色に染まって、遠くからでも目立つ。 花序の縁につく腺体は腎形で、径約2mmと小さい。果実はさく果を結び、径約6mmで、表面にいぼ状の突起がある。

名前の由来:
乳汁が皮膚にふれると強い刺激となってうるしかぶれの症状になること、またこのものが野原に生えるので、「野漆」 の意でつけられた。別名にサワウルシがある。

漢名は不適当:草リョジョまたリョジョや沢漆(たくしつ)、ときに大戟などの漢名(中国名)があげられる。が、ノウルシそのものは、中国には自生していないので、漢名は存在しない。沢漆はわが国のトウダイグサ、大戟はタカトウダイにあたる。草リョジョ、リョジョは中国のどの植物名かよくわからない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8319 ムラサキケマンとは 有毒部分:全草。この毒草を飲むと、涙と唾液の分泌が増え、心筋運動に障害が現れて、毒性ではない。アルカロイドのプロトロンビンが含まれていることが早くから知られていた。近年になって、神戸女子薬科大学の谷千秋教授らによって「薬学雑誌」第82巻・4号(1962年)に詳細 な「ムラサキケマンのアルカロイドの研究」が発表され、数種のアルカロイドの存在が明らかになった。サングイナリン、テトラハイドロコリサミン、コリサミンなどである。  
プロトピンはムラサキケマンばかりでなく、多くのケシ科植物に含まれていて、軽い鎮痙、鎮痛の作用がある。

特徴:北海道から沖縄まで各地のやぶ陰などに自生する2年草で、朝鮮半島、中国にも分布する。茎はやわらかく、高さ20〜40cmで直立に伸び、無毛で稜がある。葉は根元から出る根出葉に長い葉柄があって、2回3出複葉に裂け、葉全体は三角状の卵形で 長さ3〜8cm、小葉は羽状に裂けて鋸歯がある。  
4〜6月に開花、花は花茎の上部に10cmほどに伸びる総状花序 につき、長さ12〜18mmで紅紫色か微紅紫色、まれに白色のもあ る。花弁は4枚、外側の2枚は大きく、上側の1枚は距(きょ)となって 後ろに突き出す。雄しべ6個。がく片は左右に2枚できわめて小さく、それぞれが糸状に裂けている。苞は扇状で、くさび形の刻みがある。果実はさく果を結び、線状長楕円形で、ぶら下がるように下向きにつく。

名前の由来:花の色からムラサキ、ケマンは中国原産で、わが国 に栽培されるケマンソウ(ケシ科)に似ていることから。別名は、やぶなどに多いのでヤブケマンの名がある。苞が裂けていること から、中国では刻裂紫菫また裂苞紫菫と書く。紫董はムラサキケ マンに近いもので、学名コリダリス・エズリス(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8320 キケマンとは 有毒部分:全草。中毒症状と毒成分はムラサキケマンとほぼ同じである。アルカロイドのプロトピンを含むほかは、まだ不明の点が多い。

特徴:本州の関東地方南部より四国、九州、沖縄までの海岸に自生する2年草。茎は中空で丸く赤みを帯び、高さ40〜60cmで太く て軟質。折ると特異な悪臭がある。ミヤマキケマンは黄色の乳汁を出すが、これは黄色乳汁を出さない。葉は2回3出複葉で、全体の形は広い卵状の三角形、長さ幅ともに20cmほどにな る。茎葉ともに無毛で、粉白色を帯びている。  花は4〜5月に、長さ10cm前後の総状花序につき、黄色でやや唇形。花の長さは約2cm。苞は披針形で先端はとがり、全縁(へ りに鋸歯がない)で、花の柄よりも短い。果実はさく果を結び、長さ3cmの披針形。類似植物のツクシキケマンの果実には、じゅず状にくびれのあるのが目立つが、これにはくびれがない。種子は黒く、表面に微細な突起が密生して、さく果の中に2列に並んでいる。

名前の由来:花の黄色から、黄色のケマンソウという意である。

植物分類上から見た区別点:ムラサキケマン、キケマン、ミヤマキケマンの三種の有毒植物はいずれもケシ科で、コリダリス属に 属し、地下部にふくらんだ塊茎を形成しない。  
これに似たコリダリス属のエゾエンゴサク、ジロボエンゴサ ク、エンゴサク、ヤマエンゴサク、ミチノクエンゴサクなどは地下に塊茎を形成する。これらはそれぞれその塊茎の部分を採取し て、生薬名を「延胡索」として、鎮痙や鎮痛薬に用いられる。  
塊茎のできないコリダリス属のものは、薬用には供していな い(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8321 ミヤマキケマンとは 有毒部分:全草。中毒症状と毒成分はムラサキケマンとほぼ同じである。このものもアルカロイドのプロ トピンを含んでいる。

特徴:山形、岩手両県の南部より近畿地方までが自生地、中国に も分布する。山地の日当たりのよいところに生える2年草で、全株が軟質で、粉白色を帯びていて、叢生する。茎を析ると黄色の 汁液が出て、なめると苦い。高さは30〜50cmに伸びる。  
葉は2回羽状に細裂、小葉は広卵形で切れ込みがある。葉全体の形は長卵形。花は4〜6月ころ、茎の先の総状花序に、黄色の長さ2cmほどの花多数をつける。苞は広披針形で切れ込みがあり 花柄よりも短い。がくは2片で小さい。花弁は4枚、唇形で、後部は距となってふくらんでいる。雄しべは6個。果実はさく果を結び、長さ2〜3cmでじゅず状のくびれがある。種子は黒色で径 1‐7mmの扇球形、表面に小突起が密生している。

名前の由来:深山(みやま)キケマンの意で、山地に生えることからつけら れた。中国にも分布しており、中国名を日本名にならったのか、 深山黄董と書く。黄董はキケマンをさす。

中国での利用:全草を皮膚病の頑癬に外用している。日本では用 いない。

ケシ科の異端児コリダリス属:ケシやクサノオウ、ハナビシソウ などの花は、梅花状の放射相称の花で、雄しべは多数、がく片は開花と同時に脱落する。しかし、同じケシ科でも、ムラサキケマンなどのコリダリス属のものは、花は左右相称のシソの花型で、 上唇、下唇に分かれ、がく片の多くは脱落性ではない。雄しべは 6個、花弁に距があることなど、ケシ科の中では異色の存在。そのために、ケシ科から分離してムラサキケマン科に入れることもある。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8322 ヤマウルシとは 有毒部分:樹液、葉。漆器に用いられる生漆(きうるし)はウルシ(本ウルシ)から採取され、これが皮膚を刺激してかぶれの症状をおこすことは、よく知られている。このヤマウルシには、本ウルシほどのはげしさはないが、人によってははげしいかぶれの症状にな ることがある。かぶれを起こす物質はウルシオールで、デヒドロウルシオールもともに含まれている。安南ウルシ、ビルマウルシはラッコールを主要成分としている。ウルシオールは局所的に刺激する作用が強い。

うるしかぶれに個人差:人によってウルシオール敏感度に差があり、樹液を直接皮膚に塗っても炎症を起こさない人もある。うる しかぶれによって死亡するということはないが、炎症がはげしい場合は苦痛である。このほか次のツタウルシのほかヤマハゼ、ハ ゼ(リュウキュウハゼ)も同じようにうるしかぶれを起こす。

特徴:北海道、本州、四国、九州の山地に自生する落葉樹で、南干島、朝鮮半島、中国に分布する。  
幹の高さ5〜8mの小木。葉は奇数羽状複葉、長さ40〜60cm、 小葉は11〜17枚で卵形から卵状長楕円形まであって全緑、または若木の葉にはふぞろいの鋸歯のあることもあり、先端はとがって いて長さ6〜12cm。下面の脈上に黄褐色の毛を密生する。また葉の軸にも毛がある。雌雄異株。  
花は5〜6月、枝先の葉腋から褐色の毛のある円錐花序を出 し、黄緑色の花をつける。雄花は花弁5枚、がく片5枚、雄しべ 5個、雌しべは小さく退化している。雌花は柱頭が三つに分かれ た雌しべと、発育不全の雄しべがある。果実はゆがんだ扁球形の 核果を結び、表面に淡黄色の短い剌毛を密生する。ウルシ(本ウ ルシ)にはこの刺毛はないので、区別するのに都合がよい。ヤマ ウルシの紅葉は美しい。ヤマウルシよりは生漆を採取しない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8323 ツタウルシとは
有毒部分:樹液、葉。有毒物質はラッコール、カルドール、トキシコデンドロールなどでいずれも皮膚に強いうるしかぶれの炎症を起こすから、注意しなくてはならない。

「草木図説」の記述:飯沼慾斎はツタウルシについて「草木図説」(1856年)に次のように述べている。「柄蔓共に傷処より白汁を出す、 触之ば細疹掻痒を発すること漆葉に於るが如し、故にツタウルシの名を得」と。

特徴:北海道から本州、四国、九州の山地に自生するつる性落葉 木本。南千島、サハリンにも分布する。雌雄異株。つるには多くの気根を生じ、他の樹木に絡みつき、また岩を登り、つるの長さ は10mにもなる。若枝は褐色の細毛があるが、のちに無毛とな る。葉は3出複葉で、葉柄は3〜6cmの長さ、褐色の短毛があ る。3小葉のうち頂小葉は短い柄があり、側方の2小葉は無柄。 頂小葉は楕円形、先端はとがり、基部は広いくさび形。側小葉は 卵形、先端はとがっている。各小葉とも全縁。上面は無毛、下面は脈の上と葉脈分岐点に褐色の短毛が生える。  
5〜6月に開花し、葉腋に円錐花序をつけ、花序には褐色の短毛がある。小花は黄緑色で多数。雄花は花弁、がく片各5枚、雄 しべ5個。花弁は外側にそり返っている。雌花は1個の子房と小 さい発育不全の雄しべ5個。果実は核果を結び扁球形で、表面は 無毛。秋に美しく紅葉する。  

ホンウルシとの比較:ホンウルシは栽培品のみで、はげしい炎症を起こすが、わが国の山地に自生するヤマウルシやツタウルシにはホンウルシほどの強い炎症はない。また、ホンウルシの樹液からは生漆が生産され、漆器類に使われるが、ヤマウルシ、ツタウルシともヽ生漆にはならない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8324 ヒメビシとは 本州、四国、九州の池や沼に生え、朝鮮半島、中国に分布。  
1年草で、茎は泥中から水面まで伸び、水面に放射状に鋸歯のある葉多数を浮かべる。葉柄は中央がふくらみ、長さ5〜50mm。 葉は卵状ひし形で横径1〜2cm、上部の縁に鋸歯がある。表面に光沢があり、裏面の脈上にわずかに毛が生える。7〜10月に、葉の中心部に、一日花の白い花を1個ずつ開く。花弁4、萼片4、 雄しべ4.果実は萼の変形した4本のとげがある。

類似植物 ヒシ:ヒシもヒメビシも葉はひし形。ヒメビシは横径 1〜2cm、ヒシは3〜6cmと約3倍。果実に2本のとげがあるのがヒシ、4本のとげのあるのがヒメビシ。

名前の由来:葉がひし形で、ヒシより小さいのでこの名となった。

採取時期と調整法:9〜10月に果実をとり、日干しに。

成分:多量のデンプンのほか、ステロイドのベータ・ジトステロールを含む。  ’   ゛  
薬効と用い方:暑気あたり、消化促進に:1日量として干した果実20〜30gをを水400ccで煎じ、3回に服用。 中国の本草書『本草綱目拾遺』(1765年)に、「果実を生のまま食すと胃を健やかにする、止渇し、津を生じる、肝気を平らかにす る、腎水を通す、血を益し食滞を消す、の効能がある。古くなっ たものを煮て食せば牌を健やかにする、泄痢を止める、の効能が ある」とある。これを現代風にいうと、「果実を生のまま食べると、 健胃の効があって、のどの渇きを止め、体にうるおいが出て、血をふやし食欲が出る効能かある。古くなったものを煮て食べれば胃腸の働きがよくなり、下痢を止める効能かある」となる。

滋養強壮に:果実を生食したりゆでて食べる。

制ガン剤に:干した果実1日量として10〜20gを水600ccでせんじ、 お茶がわりに飲むとよい (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8325 フッキソウとは(富貴草) フッキソウ(富貴草、Pachysandra terminalis)はツゲ科の常緑小低木。わが国各地の山地樹陰下に群生する常緑多年草。日本庭園の日陰地に植えられる、中国、サハリンにも分布。
地下茎は横に伸び、茎の高さ30cm。葉は厚く光沢があって、 茎に互生し、輪状に集まづでつく。葉が厚いため木本小低木の感 じがする。3月下旬より5月ころ、茎の先に穂をつくって花を開く。雄花は多数で穂の上部に、雌花は数個で穂の下部につく。 雄花、雌花とも花弁がない。雄花が白く見えるのは4本の雄しべの花糸が太くて白いためで、その先端の褐色の部分が葯である。 雌花の柱頭は2個で、先がそり返っている。果実はやや白みかに帯 び、初秋に熟す。長さ1.5cmの三角状卵円形。         
名前の由来:富貴草、また吉日草、吉祥草の別名はともに、その樹形から繁殖を祝う意味にちなんだ。
採取時期と調整法:秋に然した果実を採取し、日干しにする。

成分:ステロイドのステロイダル、アルカロイドのOーヂアセチ ールパキサンドリンA、OーヂアセチルパキサンドリンB、パキサントリオール、テルミナリン、トリテルペノイドのパキサンジオールB、パキサンジノールA、パキソノールなどを含む。

効と用い方:強壮に:果実数個を水400ccでせんじ服用する。
中国での民間療法:全草を月経過多、リウマチ、消炎解毒薬に用いる。
最近の研究:わが国では次のような報告かおる。アイヌ族が古くより全草を胃腸薬に用いていることにヒントを得、その成分を研 究。一種のアルカロイドを抽出し、薬理作用を検討した結果、胃の中の胃酸分泌を抑制して、ストレス潰瘍を抑制する作用のある ことがわかった(『和漢医薬学会誌』巻1・No1I・1984年)。この発表は、 フッキソウより胃潰瘍治療薬が生まれる可能性を示唆したものと みられている (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8326 レンゲツツジとは 有毒部分:花と葉。葉にはアンドロメドトキシン、花にはロドジャポニンという有毒成分が含まれている。これらはケイレン毒で、呼吸停止を起こして死亡する。  
アンドロメドトキシンはツツジ科の多くの種類に広く含まれていて、グラヤノトキシンと化学的に同じものとされている。グラ ヤノトキシンはハナヒリノキの成分として知られている。またアセビの葉の中にもグラヤノトキシンを含んでいる。レンゲツ ツジは有毒植物として知られ、薬用には利用しないが、ハナヒリ ノキやアセビは有毒成分と同じ物質を含んでいて、殺虫剤や皮膚寄生虫の駆除薬に応用されている。

特徴:北海道の西南部、本州、四国、九州の日のよく当たる高原の草地や湿地帯に自生する落葉低木。群生することが多く、開花期は美しいので、訪ねる人も多い。高さ1〜2mで、枝分かれが多く、葉は互生して、枝先に集まってつき、倒披針形で、先端は丸みを帯び、基部は細いくさび形。鋸歯のない全縁で、表面、裏面とも初めは短毛が生えるが、のちに、表面は縁とともに剛毛が生える。裏面は粉白色を帯び、脈上に短毛が生える。  花期は4〜6月で、朱橙色の径5〜6cmの花冠を開く。花冠は深く5裂し、外面に細毛がある。雄しべ5個、雄しべの花糸の基部には白色毛が生え、雌しべ1個で雄しべより長く突き出し、花柱に毛は生えない。

名前の由来:高原の草原に大群落を作ることが多く、それは春先のたんぼに緋毛氈(ひもうせん)の風景をつくる、レンゲソウの群落に似ている ことからつけられた。別名にウマツツジやベコツツジの名があるのは、馬も牛(方言でベコ)も、有毒を知っていて食べないこと から。ジゴクツツジ、ドクツツジ、オニツツジの方言もある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8327 ホツツジとは 有毒部分:花。この花から染めハ蜂密を飲んで中毒したということがあって、ホツツジが有毒植物に加えられるようになった。蜂蜜を遠心分離器にかけて沈澱物か集め、それを顕微鏡でみると花粉粒が見られる。花粉粒は人の指紋のように、植物それぞれの形や大きさ、表面の紋様がきまっている。そこで、花粉粒を見て、どの植物の花からとれた蜂蜜かがわかるのである。このようにして、中毒した蜂蜜の中からホツツジの花紛粒が出たのであった。  
花の蜜の中に、アンドロメドトキシンやその関連物質が含まれていたのである。  
ホツツジは、まれに平野部にも自生するが、多くは山地、高原など高いところに群生することが多いので、養蜂蜜は採蜜に注意しなくてはならない。

特徴:北海道、本州、四国、九州の山地に自生する落葉低木。高さは2mほどになり、枝分かれが多い。小枝は赤褐色で、とがっ た3稜があって、無毛。葉は倒卵形で先端がとがり、長さ3〜6cm、基部は細く、葉縁に鋸歯なく全縁。裏面脈上に白色の毛が生 え、葉は対生する。花は8〜9月に開き、枝の先に円錐花序に多数の花が横向きに咲く。がくは杯状で、縁は浅く5裂し、こまかい毛が生える。花弁は離生する3個からなりそれぞれ長楕円形で白色、わずかに淡紅色を帯びて、開花すると、花弁は外側にそり 返る。雄しべ6個、雄しべの花糸は幅広く花弁より短い。雌しべ の花柱は直立して花冠の外に突き出す。これに似たミヤマホッツ ジは花が総状花序につき、がく片は5枚からなるのが異なる。

名前の由来:花が穂状につくことからきている。別名に枝分かれが多いので庭箒にすることから、ヤマボウキがある。またヤマワラも同じくわらぼうきの代用にすることから(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8328 シキミとは 有毒部分:樹皮、葉、果実、特に果実に毒性分が多い。アニザチン、ネオアニザチン、ジオキシアニザチンなどの毒成分を含んで いる。これらは強いケイレン毒で、呼吸困難、血圧上昇を起こし て死亡する。毒成分とは関係のない物質も含まれている。葉や果 実に精油が約1%含まれているが、その中に芳香性の強いサフロールやシネオール、オイゲノールなどの成分がある。また、樹皮 にはフラボノイドのクエルセチン配糖体のクエルチトリンがある ことも知られている。

特徴:宮城県以南、四国、九州、沖縄などの山中に自生する常緑樹で、大きいものは10〜12mに達する。台湾、中国にも分布して いる。樹皮は暗灰褐色であるが、若枝は緑色。枝葉には芳香があ る。葉は長楕円形から倒披針形で長さ5〜10cm、幅2〜5cm。やや厚くて光沢があり、無毛、全縁で両端がとがっている。葉柄があって互生する。  
花は3〜4月に、葉腋から径2.5cmほどの淡黄色花を開く。開花前のつぼみには多数の苞葉があるが、開花とともにこれらは落ちる。がく片、花弁は長楕円形で、12枚。雄しべは多数。雌しべは 8個で輪状に並ぶ。果実は数個の袋果が車座に集まり、その径が 2〜2.5cm、9〜10月ごろに熟し、袋果が裂けると、褐色で光沢の ある1個の種子をはじき出す。

名前の由来:シキミは悪しき実の意味。別名にハナノキ。また、 樹皮や葉で線香や抹香をつくったところからマッコウノキ(抹香の木)の名がある。木へんに佛(しきみ)の字は和製漢字。

古代人は猛毒を知っていた:古代の人びとは、土まんじゅうの新墓地に、狼が襲いかかるのを防ぐため、墓地の周りにシキミの枝 をさしていた。今日、墓地や寺にシキミの植えられるのはそのころの名残りである(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8329 ツルシキミとは 有毒部分:葉に有毒物質のアルカロイドを含むが、その毒性は弱く、このアルカロイトはジクタミンで猛毒のシキミアニンと化学構造がよく似ている。  
ツルシキミは、同じミカン科のミヤマシキミの変形したもので、植物学的に見て近い類縁関係である。しかし、ミヤマシキミ には猛毒のシキミンが含まれ、ツルシキミにはシキミンではなく 毒性の弱いジクタミンが含まれている。これは、天然物質と植物 との微妙な関係をあらわす珍らしい現象といえよう。

毒成分と植物の関係
植物名 科名 毒性分
ツルシキミ ミカン科 ジクタミン(ケイレン毒)
ミヤマシキミ ミカン科 シキミン(ケイレン毒)
シキミ シキミ科 アニザチン(ケイレン毒)

特徴:北海道から九州までの山地に自生する、雌雄異株の常緑低 木。幹は高さ30〜50cmほどになり、下部は地面をはい、上部は披 分かれして斜めに立つ。これに似たミヤマシキミは幹の高さは1 mほどになって、直立して伸びるので、区別がつく。  
葉は厚く、倒披針形から長楕形の形で、先端はとがり、基部は狭く、長さ4〜8cm。葉脈はミヤマシキミほど著しくあらわれな い。葉は幹の先に、やや密生してつく。春に白色4弁花の小花 が、葉の密生した葉腋より円錐花序につく。果実は夏から秋に、 球形で赤色に熟し、翌年の春ごろまでついている。

名前の由来:つるになるミヤマシキミの意味でツルシキミとなっ たが、別名に、ツルミヤマシキがあるように、ミヤマシキミとはよく似た関係にある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8330 ジギタリスとは 有毒部分:全草。特に、葉に含まれるジキトキシンやギトキシンの強心配糖体による中毒症状は嘔吐、不整脈、頭痛、めまい、耳鳴り、さらにケイレンを発して心室異常を起こし、死亡する。

専門医だけが使う医薬品:この毒成分が医薬品として使われる。 4〜6月の開花期に、成熟した葉の葉柄部分の厚みのあるところを残して採取し、日干しにしたものが「ジギタリス葉」の名称 で、日本薬局方に収載され、劇薬に指定されている。うっ血性心不全に用いられ、心筋梗塞、狭心症、弁膜障害などに卓効を示 し、心不全による浮腫にもよく利尿効果をあらわす。重要な医薬品であるが、投与量を誤ると異状脈、悪心、嘔吐などの副作用を起こして、心臓機能停止で死亡する。ジギタリス療法は、熟練の専門医師による使用以外は危険である。

特徴:ヨーロッパ原産の多年草で、世界各国で医薬品の目的で栽培されるほか、花が美しいので、在来種の2年草や改良種の1年草が、主として観賞用に栽培されている。  
草の高さは1〜1.5m、茎は直立に伸び、上部に30〜60cmほどの総状花序を伸ばし、多数の紫紅色の花をつける。花は片側につく 一側生で、花序の下部より順次上に向かって開花する。花冠は太い筒状で長さ5〜7cm、先端は上唇と下唇に分かれ、内面に暗紫色の斑点が散在する。雄しべ4個のうち、2個が長く、2個は短い二長雄蕊(ゆうずい)。柱頭は2裂している。

名前の由来:江戸時代後期、長崎に来ていたシーボルトによって 伝えられたが、当時はジギタリスの名で呼ばれ、学名ジギタリスをそのまま発音していた。語源はジギタス(ラテン語の指)に由来し、花が筒状であることによる。英語のフォックス・グローブを キツネノテブクロと訳して日本名にしたが、いつの間にかこの名は消え、ジギタリスの名が残った(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8331 ヨウシュヤマゴボウとは 有毒部分:全草。葉や根に硝酸カリやサポニンを含む。若葉をゆでて、ひたし物にして中毒する例があるのはおそらくこれらの成分によるものであろう。嘔吐、下痢、蕁麻疹様の発疹など、いずれも軽度の中毒症状が起こる。ゆでたり、水洗いしたりするときに十分な配慮が必要ではないか。水を何回もとりかえるのがよ いが、危険を伴うので、食用にするのはすすめられない。

薬草として注目:ヤマゴボウ科のヤマゴボウやマルミノヤマゴボ ウは、古い時代から根を商陸(しょうりく)の生薬名で、利尿薬として水腫に用いられてきたが、最近の研究では、特にヨウシュヤマゴボウの根の成分としてサポニンの一種フェトラッカサポニンEという物質に、感染防御と抗腫瘍作用が認められ、さらに、抗炎症効果、抗利尿と鎮痛の作用があると発表された。

果実の成分:夏の終わりに濃紅紫色の果実が熟し、つぶすと紅紫の汁が出るが、毒ではない。色素の大部分はフェトラッカニン で、サトウダイコン(アカザ科)の変種アカヂシャに含まれるものと同じである。

特徴:北米原産の多年草で、明治初年にわが国に入り、各地に野生化した帰化植物。茎は1〜2mに伸び、紅紫色で四方に枝分かれして広がるので壮大な株になる。葉も大きく楕円形、長さ30cm にもなり、互生につく。6月ごろ、淡紅色の花を穂状花序につける。
花には花弁はなく、がく片5枚、雄 しべ10個、子房は図のように10個の心皮 が合生する(心皮の図)。果実は熟すと果柄が下向きに下がる。

名前の由来:外来種であるので洋種の名がつけられた。アメリカヤマゴボウの別名がある。ヤマゴボウはわが国在来種。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8332 キツネノカミソリとは 有毒部分:全草。特に地下部の鱗茎に毒性成分が多い。アルカロイドのリコリンを含み、強い吐きけ作用がある。このリコリンは、 ヒガンバナにも含まれる。そのほか1962年に武庫川女子大学薬学部の高木修造教授らによって、アルカロイドのガランタミンが含まれることが発表された。  
ガランタミンはショウキラン(ショウキズイセン)、ヒガンバナ、ラッパズイセン、また、スノードロップ属のもの、スノーフ レークなどのレウコユム属などの鱗茎にも含まれて、小児マヒ後遺症の治療薬に用いられる。

特徴:本州、四国、九州各地の山野に自生する多年草。地下の鱗茎は黒褐色の外皮で包まれた径4cmほどの広卵形。春先に鱗茎から帯状で幅1cm、長さ40cmほどの葉を出すが、この葉は夏になって枯れる。その後、地下鱗茎から40cmほどの花茎を伸ばし、先端に3〜5個の大形の花を横向きにつける。開花期は8〜9月。花被片は黄赤色で6枚、倒披針形で長さ5 〜8cm、ヒガンバナのようにそり返らない。雄しべは6個で、花被片とほぼ同じ長さ。雌しべの花柱は花被片より長い。花柄は長 さ約6cmで、基部に長さ約4cm、披針形の総苞片がある。果実は球形のさく果を結び、種子は黒色、扁円形でしわがある。

名前の由来:葉の形をカミソリに見立てたもの。別名にキツネノ タイマツ、キツネユリ、キツネバナなど。狐との関係が深いのは、緑の葉がいつの間にか姿を消し、その跡にパッと紅い花が開 くという変幻の妙に、狐を利用したものか。ドクバナ(毒花)、 テクサレ(手腐れ)、ジゴクバナ(地獄花)、ハコボレグサ(歯こ ぼれ草)など凄味を利かした方言もある。

民間療法に:乳房の腫れにキツネのカミソリの鱗茎をすりつぶして塗るという民間療法もあったが、現在では行われていない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8333 サワギキョウとは 有毒部分:全草。アルカロイドのロベリンを含み、延髄の催吐中枢や呼吸中枢を刺激する作用があって、中毒症状は嘔吐、下痢につづいて虚脱の状態となるほか、最後に心筋マヒによって死亡す る。アルカロイドの口ベリンは最初に北米原産のロベリア草(キキョウ科)から発見された。この草を原料に塩酸口ベリンを製造 し、呼吸中枢興奮薬として、麻酔による呼吸マヒに緊急薬とされてきたが、いまはあまり用いられていない。

特徴:北海道、本州、四国、九州の山間の湿地や水辺に自生する多年草。中国、朝鮮半島、東シベリア、サハリン、台湾などに分布。根茎は太く、斜め横に伸びる。茎は50〜90cmの高さで直立に 伸び、中空で円柱形。葉は葉柄のない披針形で、へりにこまかい 鋸歯があり、長さ約6cm、幅約1cm、茎の上部になるほど小さく なる。茎葉ともに無毛。  
花は8〜9月ごろ茎の上方に総状花序をつくり、美しい濃紫色の花をつける。花冠は上唇、下唇に分かれ、上唇は二つに深く裂け、下唇は浅く3裂し、長さ約3cm。花冠裂片の縁に長い毛がある。果実はさく果を結び、長さ約1cmで楕円形。種子は褐色で光沢があり、卵形で約1.5mm。

名前の由来:沼地や湿地、山間の沢地などに多く見られること、 茎葉がキキョウに似ていることに由来する。別名にコノテバナ、 チョウジナ、イソギキョウなど。中国名は山梗菜(さんこうさい)と書く。

『大和本草諸品図』の絵:貝原益軒の『大和本草諸品図』(1715年)に 澤桔梗と書き「澤の中に生ず、秋に碧花を開く、桔梗色の如し」 (原文は漢文)として図があるが、この図はサワギキョウにあまり似ていない。

観賞用に:わが国のサワギキョウは薬用にはしない。花が美しいので、山野草愛好家の間では人気があり、栽培も盛んである(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8334 カギカズラとは 千葉県房総半島以西、東海、南畿、山陽、四国、九州の温暖な山地の常緑林内に自生するつる性木本。中国に分布する。『中国高等植物園亨第四冊』北京(1975年)によると、中国南部の福建、江西、 湖南、広東、広西の各省に産し、山地の谷や渓流または陰湿な林内 にあると記されている。
わが国でも自生地は限られたところにしかなくて珍しいもの。  
枝は長いつるになってほぼ水平に伸び、花のつく若枝は四角。葉は長楕円形か卵形で、長さは5〜12cm、幅3〜6cmで先端はとがっ ている。4〜5対の葉脈ははっきりと見え、下面はやや粉白色。葉柄は約1cmで対生につき、4個の線形の托葉があって、花の終わるころには、この托葉のほとんどが落下する。葉腋には小枝から変化 した、太く曲がって鋭いかぎが対生に出る。  
開花は7月上〜下旬で、淡黄色。一つの花は 長さ5mmほどの筒状の花冠で、先端は5裂し、がくは浅く5裂、花筒内壁に雄しべ5本がつき、雌しべの1本の花柱が花冠の外に突き出していて、葉腋から長く突き出ている花柄の先に頭状花序につ く。果実は紡錘形で長さ5mm、毛がある。

名前の由来:葉腋の左右に出る太い曲がったかぎによって、この名前になった。カズラはつる性植物をさしたもの。他の樹木の枝などにこのかぎをひっかけながら、10m以上につるを伸ばすものもある。

生薬名の変遷:中国の梁時代(502〜536)の陶弘景著『本草経集注』 巻五の草木下品に釣藤と記されているのがこの生薬である。わが国の延喜18年(918年)に刊行された深根輔仁著『本草和名』の下巻第14巻にも釣藤が記載され、中国の明時代の李時珍著『本草綱目ト(1590年) にも同じ釣藤、またこれをうけた林道春は『多識編』(1612年)に同じように記して、和名フチトリバリをあげた。その後わが国の本草書には釣藤や釣藤鈎が用いられている。  
最近の中国では、鈎藤と書き、釣藤はほとんど使用していない。
カギカズラのつるにできたかぎを採取して生薬にするので、かぎそのものを示す漢字を使用するのが正しい。かぎは鈎、ときに鉤とも書き、かぎという名を示す名詞。釣は、かぎで物をつり上げる動作 をあらわし、たとえば魚を鈎を使って釣り上げるというときに用いる動詞。したがって、カギカズラのかぎそのものを表現するには、 名詞の鈎か、鉤が該当する。『本草経集注』以来の生薬名も、今日の中国では鈎藤に変えられた。鈎は鉤の俗字である。

採取時期と調整法:8〜9月にかぎを中心に上下数センチを含めて 切りとり、日干しにする。

成分:インドール系アルカロイドのリンコフェリン、イソリンコフ ェリン、コリノキセイン、ヒルスチン、ヒルスティンなどを含む。

薬効と用い方:古くから小児の夜泣き、ひきつけ、大人のめまいなどに用いられてきた。
頭痛に:1日量として鈎藤の刻んだもの3〜6g、これに川キュウの刻んだものを同量加え、水400ccで1/2にせんじて飲む。
漢方処方 釣藤散(鈎藤散):鈎藤、半夏、茯苓、陳皮、麦門冬を 各3g、菊花、防風、人参各2g、甘草、乾生姜各1g、石膏5〜 7gが大人の1日量。水400ccで半量にせんじて服用。血圧降下作 用、鎮痙または鎮痛の作用があるので、脳動脈硬化による頭痛、肩こり、めまいなどの神経症状を除くのに用いられる。  
血圧下降作用は成分中のヒルスティンが効力をあらわしているのではないかと見られている。
抑肝散:鈎藤、当帰、川キュウ各3g、茯苓4g、柴胡2g、甘草1.5 g。水400cc加え半量にせんじて服用。虚弱体質で神経症、不眠症、 夜の歯ぎしり、脳出血後のふるえ、小児の夜泣きの症状に用いる (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8335 ゲットウとは 九州南部大隅半島より沖縄、小笠原の海岸に近い山野に自生し、 中国南部、台湾、インド、マレーシアなどにも分布する。高さ2〜 3mに伸びる大形の常緑多年草。葉は披針形で長さ40〜70cm、幅5 〜9cm、縁に毛が密生する。葉裏の中肋には短毛がある。花は5〜 7月に、花茎の先に長さ15〜30cmの円錐花序につき、花序は下向きにたれ下がり、花序の軸には褐色の短毛が密生する。花は唇形で大きく、4cmほどの花柄につき、唇弁の内側は帯黄白色で、紅色のぼかした線条があって美しい。果実はさく果を結び、卵球形で長さ2cmほどになって赤く熟す。種子は黒く、長さ4cmほどで、多数を含む。茎根は太い。

名前の由来:古い時代に中国南部か台湾から渡来した帰化植物とも見られているが、台湾では月桃の名前があり、これを日本語読みに してゲットウとなった。また中国南部では、花が美しいので、艶山姜(えんざんきょう)の漢字を書く。中国では月挑とは呼ばない。
 沖縄地方では各地に見られ、人家近くの路傍や家の周辺の垣根に 植えられるほど普通のもので、方言も多く、サンニン、サニンのほか、サミ、サニなどとも呼ばれている。これは台湾産月挑からつく られる砂仁という生薬名に由来している。

類似植物二種;
(1)クマタケラン:
鹿児島県から沖縄に、古 くから観賞用として栽培された常緑の多年草で、これらの地方では 野性化している。中国南部や台湾にも分布。花序がたれ下がらないで、直生することがゲットウと大きく違う。葉の縁を除いてほとん ど無毛であることも違っている。また花序もやや無毛。6〜8月に 開花し、唇弁は大きく、黄と紅のぼかしの筋状の斑がある。果実は まれにさく果を結び、赤く熟す。名前はランの名があるが、ラン科ではなく、ショウガ科。花がランの花に似ていること、クマタケは 熊竹で、茎葉が強くて耐久力があることに由来する。

(2)アオノクマタケラン:クマタケランに似ていて、葉の縁は無毛、花序は直生。花は長さ約2cmで、クマタケランの花2.5〜5cmより小さい。クマタケランより全体に赤みがなくて緑色であるので、この名となった。クマタケランの自生地より北の伊豆諸島から和歌山県以西、沖縄に見られる。種子は芳香があり、香辛料として利用される。

生薬の品質:ハナミョウガの種子の白い仮種皮を除き乾燥したものを伊豆縮砂の黒手と呼ぶ。 また、ときにアオノクマタケランの仮種皮を除いたものを黒手とする。ゲットウの種子の白い仮種皮のついたままを乾燥すると、白みを帯びるので、これを白手伊豆縮砂として区別するが、黒手にくらべると品質はよくない。台湾産月桃からの生薬砂仁は、この白手にあたるものである。中国では艶山姜の種子を7〜8月に採取し、大草ズクという生薬として、健胃薬に用いている。

採取時期と調整法:秋に種子をとり、日干しにする。
成分:種子の白手伊豆縮砂の成分は、芳香性の精油を含み、この精油中にパルミチン酸、シネオール、ピネン、アルファ・カリオフェ レン、セスキテルペンアルコールを含んでいる。根茎にはジヒド ロー5・6デヒドロカワインと5・6―デヒドロカワインを含む ことが知られている。

薬効と用い方:
健胃薬に:
種子を1回量2〜3gとして、粉末にして使用する。
沖縄地方の民間療法:
(1)毒虫に刺されたとき:
太い根茎をとり、新しい切り口を火にあぶって、切り口があたたかいうちに、直接患部にすりつけるようにして塗る。

(2)健胃整腸薬に:7〜8月に種子のみを採取し、日干しにしてから、黒い小さな種子を1回量を3gとして、前もって粉末にしておき、粉末のまま服用する。オブラートに包まないこと(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8336 モロコシソウとは(排草香/はいそうこう)  千葉県房総半島以西、伊豆、紀伊、四国、九州、沖縄など、温暖な山地や海岸の近くの、常緑樹林内の陰地に自生する多年草。中国に分布し、台湾にはこれに似たジャコウモロコシソウが分布する。
茎は直立し、稜があって高さ30〜80cm。葉は長さ1〜2.5cmの葉柄 によって互生し、披針形で長さ5〜10cmで両端はとがっている。葉の両面は無毛で、葉脈は裏面に側脈5〜7対がはっきりと見える。 開花期は5〜8月で、径約1.5cmの黄色の花を開く。がくは深く5裂し、裂片は長さ4mmほどの先のとがった披針形で、縁に腺毛があ る。花冠は深く5裂し、その裂片は長楕円形で長さは8mmほどで、 先端がそり返っている。雄しべは5個で花糸は短く、葯は黄色で大 きくて、雌しべの花柱をとり巻くように並んでいる。一つの花は葉腋から3〜5cmに長く伸びた花柄の先端につき,下向きに咲く。  
果実は径約6mmで、球形のさく果を結び、灰白色になる。

名前の由来:飯沼慾斎は『草木図説』(1856〜1862年)で「産處不詳、漫にモロコシソウの名あり」と記したが、江戸後期、嘉永、安政のころすでに、モロコシソウの名は広く使われていたようである。唐土の国から来た外来種とまちがえてつけた名前である。学名にシコキアナとあるように、四国の土佐で初めて発見され、それを記念して この種名がつけられた。シコキアナは四国のという意味。モロコシ ソウは刈りとってそのまま乾燥させると芳香を放つのが特徴で、香 りがクネンボ(ミカン科)に似ているというので、別名にヤマクネンボがある。沖縄のヤマクニブーのクニブーはクネンボのことであり、アンググサは油草の意で、生葉が油ぎって見えることに由来する。
生薬名について:『本草綱目』(1590年)に排草香があって、牧野富太郎先生は、『頭註国訳本草綱目』(1930年)でこれをモロコシソウにあてた。またこれとは別に零陵香(れいりょうこう)という生薬があって、中国ではこれに中国名の霊香草をあてている。これがモロコシソウかどうかはよ くわからないが、『全国中草薬彙編』(1983年)北京・下冊によると図 を示し、茎の下半部が地面をほうようになると記し、その他はほぼモロコシソウに似ている。学名はリシマキア・フェヌウムーグラセ ウムである。なお同書の彩色図譜編の彩色図は霊香草としてあるが、モロコシソウのようである。したがって生薬零陵香の起源植物は、はっきりしていない。

採取時期と調整法:花が終わって果実を結ぶころ、地上部を刈りと り、茎の下の部分を束ねて、風通しのよい日陰につるして乾燥させ る。産地によって採取時期が異なるが、多くは7〜9月ごろである。乾燥中に生のときにはなかった香りが出てくるようになったと き、大きめのハトロン紙の袋に入れて保存するとよい。また採取し た地上部の茎葉を蒸してから干して使用するという方法もある。このほうが早く香りが出るので、沖縄地方で行われている。

成分:まだよく研究されていない。  

薬効と用い方:
防虫、防臭剤に:
乾燥したものを部屋の中につるしたり衣類をおさめあるたんすなどに入 れたりする。ナフタリンなどの防虫剤の役目をし、芳香を衣類などにつける。部屋につるすと、蚊やハエなどの虫を防ぐばかりでな く、香をたいたように部屋じゅうによい香りがただよう。
毒虫刺されに:生の茎葉をつき砕き、汁を直接患部に塗る。
零陵香の中国での利用法:根を含めた地上部を乾燥して、わが国のモロコシソウと同様に衣類の防虫に用いるほか、鼻詰まり。歯痛、感冒のときの頭痛、駆風薬などにせんじて服用したり、またせんじた汁でうがいをしている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8337 オオジシバリとは(剪刀股/せんとうこ)  北海道から沖縄まての全国各地の路傍、田圃のあぜ道など、日当たりのよい原野に生える多年草。朝鮮半島や中国に分布。  
花は4〜6月に、径3cmほどのタンポポに似た黄色の頭状花を 開くが、この頭状花は舌状花だけからなり、管状花はない。緑色 の総苞は長さ約13mmの筒状で、内側の総苞片は線形で約8個あっ て、外側の総苞片は短い。花茎は15〜25p。葉はへら状で、地面 をはう茎に互生する。葉の長さは5〜10cmで倒披針形。葉の幅1.5 〜3cmで、下半部は羽状に深く切れ込むが、ときに鋸歯状になることも多い。果実はそう果(痩果)を結び、長さは約4mmで上半 はくちばし状に伸びて、この部分は長さ約2.5mmになり、その先端に約7mmの長さの白色の冠毛がついて、そう果が成熟すると、風を受けてこの冠毛によって遠方に飛ばされる。

類似植物との区別点:よく似た植物のイワニガナは、オオジシバリより全体に小さく、葉は円形で小さい。そう果も全体の長さが 4〜6mmで、オオジシバリは全長7〜8mmであって長い。

名前の由来:地面をはう茎がところどころから根を出して、伸び ていく様子が、地面を縛りながら伸びるようであるという意味 で、ジシバリ(地縛り)となった。イワニガナのことをジシバリ と呼ぶが、これより大きいので、オオジシバリと呼ばれる。

採取時期と調整法:開花期の全草を採取して、水洗いして日干し にする。

成分:精査されていない。   

薬効と用い方:
副鼻腔炎(鼻詰まり)に:
乾燥したものを大 人の1回量として3〜5gを水300∝で1/2に せんじて服用する。
健胃に:1回15〜20gを水400ccで約1/2量に煎じて1日3回に服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8338 ニガナとは 北海道から九州までの各地、原野、路傍などに普通に見られる多年草地上茎はは20〜50cm前後の高さとなり、直立に伸びて上部は枝分かれする。根元からの根出葉は、縁は切れ込むが、それぞれの個体によって切れ込みの形に変化が多い。茎に出る茎出葉は倒披針形あるいは広披針形で、長さ3〜10cm、帽0.5〜3cm、基部は耳形になり、茎を抱くよ うについて、互生する。葉柄はない。  
茎の披分かれした先に多数の頭花をつけ、5〜7月に黄色花を 開く。頭花は径1.5cmほどで、黄色の舌状花5〜7個からなり、管状花はない。総苞は長さ7〜9mm、内側の総苞片は5〜6個。果実はそう果を結び、長さ4〜4.6mm。冠毛は茶褐色で長さ4〜4.5 mm。茎を切ると白色の乳汁を出す。ニガナの花に、ときに白いのがあり、これをシロバナニガナと呼ぶ。

名前の由来:茎から出る乳汁は、なめると苦いのでこの名となっ た。別名のチチグサは切れば乳汁を出すことから。また、オトコ ジシバリは、大きいジシバリという意味から。

類似植物ノニガナ:よく似たノニガナは、本州、四国、九州各地 の路傍、山野に自生する1〜2年草。朝鮮半島、中国に分布する。茎葉の基部は大きく2裂して茎を抱くように互生するが、その2裂した先が鋭くとがっている点と、頭花は果実ができるころに下向きにたれ下がる点、冠毛が白色である点が区別の要点。

採取時期と調整法:開花期に根を含めた全草をとり、水洗い後、 日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
副鼻腔炎(鼻づまり)に:
オオジシバリと同様に用いる。
健胃に::オオジシバリと同様に用いる。ォォジシバリと同じ用い方をする(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8339 オカオグルマとは(狗舌草/ぐぜつそう)  本州、四国、九州の日当たりのよい山地、平地の乾燥した草地に生える多年草。朝鮮半島、中国に分布する。  
地下の短い根茎から直立に伸びた茎は中空で、高さ20〜60cmに なり、5〜6月にその先端に黄色い径3〜4cmの頭状花を開く。
頭花の周辺には舌状花が並び、中心部には管状花がある。舌状花 は花冠の長さが約1.5cmで黄色、総苞片は長さ約8mmで緑色。葉は茎の上につくのは小さく、狭いい披針形で互生する。根出葉は倒卵状の長楕円形、長さ5〜10cm、へりに低い鋸歯が少々ある。茎、 葉ともに白い軟毛が生える。  
果実はそう果を結び、長さ約2.5mmの円柱形で、毛が密生する。 冠毛は白色。

名前の由来:乾燥地に生えることからオカ。オグルマは、同じキク科のオグルマからきているが、これは黄色の舌状花が車輪のように並んでいるのでオグルマの名となったもので、それにちなん でこの名がある。

類似植物サワーオグルマ:オカオグルマに似たものにサワオグルマ がある。区別の要点をあげると、サワオグルマは湿地のみに生 え、果実はそう果を結ぶが、その表面に毛が生えていない。

採取時期と調整法:開花期の全草を根を含めて採取し、水洗いのあと日干しにする。

成分:まだよく研究が進んでいない。

薬効と用い方:
寄生性皮膚病に:
できるだけこまかく、粉末にしてゴマ油と練り合わせてパスタ状にし、患部に外用する。

利尿に:刻んだもの約5〜8gを大人の1日量とし、水400ccでそ の約1/2になるまでせんじる。これを冷めないうちに、1日3回 食後に服用する。そのつどあたためるとよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8340 サワオグルマとは  本州、四国、九州、沖縄の各地の山間のよく日の当たる湿地に生える多年草。ときに群生することもある。  
茎は中空で直立に伸び、高さ50〜90cmになる。茎の先端に径約 4cmの黄色頭花多数が散房状につく。開花期は4〜6月。舌状花冠は長さ約1.5cmで、頭花の周辺に並び、管状花は中心にある。総苞片は披針形で、先がとがっている。果実はそう果を結び、円柱形で長さは4mmほど、毛は生えていない。無毛であるのが、オカ オグルマとの区別点てある。冠毛は白色で長さ1cmほどになる。 根出葉は厚みがあって長楕円形、長さ約20cm、先端は丸みがあっ て、とがっていない。葉の両面は初めは、長い軟毛が生えている が、のち無毛となる。茎出葉は卵状披針形で先端がとがり、基部 は広くなって、茎を抱くようにつく。サワオグルマはわが国のみ の特産である。

名前の由来:沢オグルマの意で、オカオグルマが乾燥地に生える ものと区別する意味でつけられた。沢地、湿地にのみ生えるもの。わが国特産であるから漢名はない。

採取時期と調整法:開花期に、全草を採取し、水洗いのあと、刻んでから日干しにする。頭花は一つ一つつんで、水洗いせず、そのまま日干しにする。

成分:まだ精査されていない。  

薬効と用い方:
利尿に:
頭花を日干しにしてよく乾燥したものを、紅茶こし用のネットにその約半量まで入れて、紅茶をいれる要領で熱湯を注ぎ、砂糖は入れずに服用する。  
また、全草の乾燥したもの約5〜10gを大人の1日量として、水400ccでよ1/2量になるまでせんじ、冷めないうちに飲むが、1日何回かに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8341 タネツケバナとは 北海道から沖縄までの各地の低地、たんぼ、小川のへり、路傍など、いたるところに生える1〜2年草の小草。中国、朝鮮半島 はじめアジア各地、北米、ヨーロッパにも分布する。  
茎は下部から枝分かれし、高さ約15〜25cm、下部は暗紫色で短毛が生える。葉は奇数羽状に分裂し、先端に出る小葉は側小葉より大きい。花は3〜7月ごろまで見られ、白い4弁花が総状につ き、下から上に順序よく咲く。花弁は約4mmでがく片の約2倍の長さがある。暗紫色のがく片4枚は開花後落ちる。雄しべ6個の うち、4個が長く、雌しべは1個。果実は線形で長さ2cm、幅1mmほどで、熟すると2片が急速に裂け、その勢いで種子を遠方に はじき飛ばす。

名前の由来:苗代作りの前に、種もみを水につけるころに開花するので、この名前となったといわれているが、この花が咲き始めたのを見て、種もみつけが始まったのであろう。農家の作物暦だったのではないか。中国では、曲技とか、わん曲を上に書き、その下に砕米セイを書いてタネツケバナとしている。

類似植物オオバタネツケバナ:山間の谷川などの清流に生える多年草で、タネツケバナより大きく、30cm以上に伸びるオオバタネツケバナがある。全草に辛みがあり、山菜として利用される。熱湯にくぐらせてから塩漬けにすると、特異な香りと辛みが出る。

採取時期と調整法:開花期に全草を採取し、水洗いのあと、刻んで日干しにする。

成分:まだ精査されていない。  

薬効と用い方:
利尿に:
大人1日量としてよく乾燥した全草5〜10gを水400ccで約1/2量に煎じて1日3回に分けて服用する。
整腸に:下痢ぎみのとき、上記と同じ分量で服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8342 ヤブニンジンとは(藁本/こうほん) 北海道から九州まで、各地の山野林の陰に生える多年草。朝鮮半島、中国、台湾、南干鳥、サハリン、シベリア、アムール、ウスリー、インド、さらにカスピ海と黒海に接するカフカズ山地に分布している。  
茎は直立して約50cmの高さになり、枝分かれする。葉は2回3出複葉で、小葉は先がとがった三角状。葉質はやわらかい。茎や葉の両面は長い白毛が多い。花は4〜5月に咲き、枝の先が傘状に数本に分かれた複数形花序となって、白い小さな5弁花をつける。小散形花序は5〜10個の花をつけ、その下に披針形の小総苞片 が5〜6個つく。果実は倒披針形で長さ約2cmになり、上向きの あらい毛が密生する。根茎は太い。

名前の由来:生える場所が、日陰でやぶのようなところに多く、 葉が野菜のニンジンに似ていることなどによってこの名がある。

類似植物ヤブジラミ:同じセリ科のヤブジラミは開花期がヤブニ ンジンより遅れて6〜7月。茎、葉ともにあらい短毛が生え、葉質は厚くかたい感じがする。果実は長さ約3mmで、表面に上向き の曲がった毛が生えるが、ヤブニンジンの果実は約2cmで長く、 そのためナガジラミの別名もあるほどである。

採取時期と調整法:開花期に根茎を掘り、水洗い後陰干しにする。

成分:根茎の成分については「薬学雑誌」昭和42年(1967年)に木島正夫、秦清之諸氏の研究がある。精油分にアネトール、オルト・ メチールキャビコールなどを含むとされた。

薬効と用い方:
腰痛、腹痛、頭痛などの鎮痛と鎮痙に:
1日量5〜10gを水400ccで約1/2量に煎じて服用。
生薬藁本に:わが国ではセリ科のカサモチの根茎が藁本とされているが、ヤブニンジンもまた藁本として用いら れている(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8343 サクランボとは  黒海沿岸、カスピ海沿岸地方原産の落葉樹。高さ4〜5mで、 太い枝を分けて円錐状の樹形をつくる。葉は楕円状卵形で先のとがらない鋸歯があり、裏面に短毛が生え、互生する。花は5月上旬に開き、5枚の花弁は白く、先がサクラのように凹入しない。 果実は核果を 結び、長い柄にたれ下かり、淡黄、紅色また黒みがかった紅色に熟す。

名前の由来:サクランボは桜ん坊の意味。花は一般のサクラに似ていることから、坊は赤い宝石のような果実に愛称の気持ちを込めてつけられた。桜桃は中国名で、サクランボに似たシナノミザ クラ(中国原産、わが国でも栽培)につけられた漢名。サクラン ボは別名セイヨウミザクラとも呼ぶ。

山形県で多く栽培:わが国には、明治7〜8年に、政府がヨーロ ッパから多数の品種を輸入したのが始まり。その後、明治42年 (1909)に山形県農事試験場で本格的な栽培が行われるようになり、 山形県での栽培が定着した。現在山形県で栽培されるものの大部分は「ナポレオン」という品種で、全体の7〜8割を占め、次に「佐藤錦」「日の出」「黄玉」とつづく。5月初めに開花し、果実 は6月に入って早生の「日の出」次に「佐藤錦」「黄玉」が出て、 下旬に「ナポレオン」が出荷される。

成分:リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸のほか果糖、ブドウ糖などが含まれている。

薬効と用い方:
疲労回復に:
サクランボ酒を薬酒に、サクランボ(品種はどれでもよい)500gを水洗いして水けをきり、グラニュー糖50〜80gを加えて35度のホワイトリカー0.9gに、3〜6ヵ月漬ける。1回30〜50ccを限度に飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8344 ヤマブキとは(棣棠花、棣棠/ていとうか、ていとう) 北海道から九州まで、各地の山間の小川の縁や山の斜面などに、ときに群生する落葉低木。また、開花時に花が美しいので、 広く栽培もされる。沖縄では、観賞用として栽培念れるだけで、 自生しない。中国、朝鮮半島にも分布する。花は4〜5月に開 き、がく片5、花弁は黄色で5、雄しべは多数。果実は5個できるが、全部は成熟しない。ヤエヤマブキは果実ができない。

名前の由来:万葉集に「花咲きて実はならねども 長き日に 念(おも)ほゆるかも 山振(やまぶき)の花」(巻十・1860年)のほかヤマブキを詠 んだ歌が十七首あって、それぞれ夜麻夫伎、夜麻夫枳、山吹など と書きあらわしている。この歌は実はならないというので、ヤエヤマブキであろうが、山振の振は、春先黄金色の花をつけている緑の細い枝が、振り動いている様子をさしたもの。古代には「振る」という語は「ふく」と同意義に用いられていたので「振る」 は「ふく」になるという。春風に振り動くのでヤマブキの名にな ったというのが、ほぼ今日の定説になった。中国では棣棠の漢名 で書く。  
『和漢三才図会』(713)の著者寺島良安は「千弁深黄単葉の者は花大なり、其の色艶山吹の黄金の如し。故に名づく」と記している。干弁深黄はヤエヤマブキのこと。

採取時期と調整法:開花期に花のみをとり、日干しにする。

成分:花の黄色色素はカロチノイドのヘレニエン、ルテインのほかパルミチン酸などを含んでいる。

薬効と用い方:
止血薬に:
わが国では古くから民間薬としてこの目的に使用されてきた。 切り傷などの止血に乾燥した花をもみ、直接患部につける。また乾燥した花をも み、この1/3量の煎茶を加え、せんじた汁の冷めかげんのもので患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8345 コンロンソウとは(菜子七/さいししち) 北海道から九州まで、各地の川辺の湿地や陰地に生える多年草で、朝鮮半島、中国、シベリア、サハリンなどに分布する。高さ は60cmぐらいになり、4〜7月に、白色4弁の小花を花茎の上に、総状につける。  
葉はあらい鋸歯のある小葉が5〜7枚つく奇数羽状複葉で、葉の裏には毛を密生する。

名前の由来:崑崙草の意であるが、なぜ古代中国神話にちなむ崑崙の名をつけたかは不明。

類似植物ヒロハノコンロンソウ:コンロンソウによく似たヒロハ ノコンロンソウは、葉の裏が無毛、葉柄の基部、茎と接するところに耳形の付属物がある点などが異なる。

調整法:根を含めた全草を水洗いし、日干しとする。

成分:よく研究されていない。

薬効と用い方:
茶の代用に:
わが国では薬用にしないが、中国では採取したものを刻んだものを日干しにし、お茶がわりにせんじて飲む。
せき止めに:中国民間薬療法の一つで、乾燥したものを粉末に し、蜂蜜でねって内服する。乾燥粉末1回10〜15gを用いる。
日本での利用法 
(1)漬け物に:
山地の日の当たる川沿い、日陰の湿地などに5月ごろ群生することが多いが、花の咲く前、なるべ くつぼみのときに葉をつけたままの全草を刈りとり、熱湯をかけたあと、水で洗ってから水きりし、塩を振りかけながら漬けて、 中蓋の上より軽く重しをしておく。
(2)山菜料理のおひたし、あえ物に:花が咲く前の4月ごろ、若い茎葉をつみとって、なるべく早くアク抜きする。塩大さじ1杯を 加えた熱湯でさっとゆでてから、水に20分ほどさらしてアク抜きする。これを、おひたし、あえ物にする(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8346 ワサビダイコンとは 北ヨーロッパ、特にフィンランドあたりを原産地とする多年草。明治の初め、北海道開拓使が北米より輸入し、原産地の風土に似ている北海道でよく繁殖したもの。中には野生化したものもあって、アイヌワサビの別名で呼ばれているが、古い時代からあったものではなく、明治初年からのもの。  
葉は長楕円形で、葉縁に歯状の切れ込みがあり、葉面にはちりめん状のしわがあって、気温によって葉の形が変わる。低温では切れ込みの深い形になる。花は白色4弁花を4〜5月に開くが、 わが国では寒冷地でないと開花しにくい。根は円筒形の直根で、 多数の分枝根を出す。古株の根は外面は黄白色で内部は白い。

栽培地:主に、北海道と長野県で栽培される。

名前の由来:根がワサビのように辛く、葉が大根に似ていること から。英名は「ホース・ラディシュ」、仏名は「レホール」と呼ぶ。

成分:アリル芥子(がいし)油を含み、これが辛みの本体。配糖体のシニグリンとしてワサビダイコンに含まれていて、これをすりつぶした とき、いっしょに入っていた酵素ミロシナーゼが活性化して、シニプリンを分解し、辛みと刺激の強いイソチオシアン酸アリルが 生じ、これによって辛みを感ずる。

薬効と用い方:
食欲増進に:
ドイツ、イギリス、北米などで、古くから薬用に使用されいた根の粉末また生のおろしたものを服用する。
リウマチ、神経痛に:粉末を水でねり、パスタ状になったものを布にのばして患部にはる。刺激を感じたらとり除く。
粉わさびに:根の粉末は白いが、本物わさびに似せるために葉緑素などで着色したものを粉わさびに使用。本物わさびより価格が安いので、普及している。 (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8347 ヘビイチゴとは(蛇苺/じゃも) 北海道から沖縄までの野原や路傍などの各地にみられる多年草で、朝鮮半島、中国に分布する。花は4〜6月、ほふく茎の葉腋から花柄を伸ばし、黄色5花弁の花を単生する。がく片5個は披針形で、その外側に幅の広い緑色の副がくがある。花後は赤く熟 したイチゴ果になるが、表面に点々と赤い粒状のものが真正の果実で、これをそう果と呼ぶ。このそう果の表面には、こぶ状のこまかい突起があり、拡大鏡で見るとよくわかる。

類似植物ヤブヘビイチゴ:ヘビイチゴのイチゴ果の大部分を果床 というが、類似植物のヤブヘビイチゴの果床は、赤色が濃く、光沢があって無毛。そう果の表面に突起がなくてなめらか。また、 ヘビイチゴの果床は白みがかって細毛があり、葉は黄緑色だが、 ヤブヘビイチゴの葉は濃緑色。

名前の由来:ヘビイテゴもヤブヘビイチゴも甘みが全く含まれず、他のイチゴ類のような味はない。まずいので蛇が食べるのだろうと考えて、蛇苺の漢字をあてたのは古い時代の中国人。この漢字からヘビイチゴの和名をつくったのは日本人。

名前はこわいが果実は無毒:横浜市のある病院から「いま、ヘビ イチゴの実をたくさん食べたという子と親が来ているが、毒でし ょうか」という電話がかかったことがある。すぐ無毒であること を告げた。『和漢三才図会』(1713年)に「俗に伝ふるに、之れを食へば能く人を殺すと。亦た然らずしてただ冷涎を発するのみ」(人を殺すような毒はなく、よだれが出るのみ)と記してある。

成分:蛇苺の成分としてヤブヘビイチゴからウルソール酸その他 を日本生薬学会第29回(1982年)で徳島文理大学が発表している。

薬効と用い方:
解熱、通経に:
全草の乾燥したものを1日量5〜15g、400ccの水で半量にせんじて服用。
痔に:上記の分量を300ccの水で1/3量にせんじた汁で患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8348 オヘビイチゴとは(五葉草/ごようそう、蛇含/じゃがん) 北海道から九州まで各地の日の当たる野原、路傍に自生する多年草。朝鮮半島、中国に分布する。  
茎の下部は地面にはうように伸びるが、半ば以上は斜め上に立ち上がる。根出葉は長柄があって、5裂する掌状葉をつけ、へりに鋸歯があり、下面脈上は有毛。花は5〜7月に、黄色花を散房状につける。がく片は5個で卵形。副がく片は細くてヘビイチゴのように目立だない。そう果は白色のしわが多い。花床はヘビイ チゴのように赤くはならない。

名前の由来:ヘビイチゴに似て、それより大きいことから。

生薬名について:中国最古の薬物書『神農本草経』に蛇含が記載され、薬効が幾つか記されている中に、悪瘡傷がある。これは悪性の皮膚のおできや、頭にできるおできを治すという意味である。わが国では『延喜式』(927年)に蛇含をウツマタクサの和名とともに記してあるので、早くから薬草として利用されていたの であろう。
五葉草は勢州(伊勢・三重県)の方言で、葉が五つに裂けていることからつけられ、また、オヘビイチゴをキランソウと呼ぶ地方がある。小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1803年)に真正のキランソ ウとまぎらわしいので、黄花ノキランソウの名で区別するのがよいと記している。

調整法:根を含む全草を水洗いし、適当な大きさに刻んでから、 日干しにする。カビなど生じないように、よく日光に当てて乾燥することが必要。ハトロン紙の袋に保存するとよい。

成分:タンニン様物質が含まれている。

薬効と用い方:
頭部のおできに:
乾燥した全草(蛇含)を1回5gを水400ccで約1/3量に煎じて、この液で患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8349 カルドンとは 地中海沿岸地方原産の多年草。野生の壮大なアザミに似た一種である。高さ1.5〜2mになり、葉は大きく、羽状に深く裂け、葉の裏には白い綿毛が生える。頭花も壮大で、径10〜15cmになり、 6月ごろから夏の終わりまで次から次へと開花する。外側の先のとがった総苞片は、かたくてふれると痛い。花はアザミ類と同様、管状花だけから成り立ち、紫青色をしている。

江戸中期に渡来:江戸中期に、オランダ人によって伝えられたとみられるが、当時は観賞用に注目の的となったとみえ、『草木図説』(1856〜1862年)には、この図と解説をのせている。この解説で、 花床やがく片も食べられるという外人の説を紹介している。

名前の由来:別名にあげたように、チョウセンアザミの名で知ら れている。朝鮮とは関係がないが、江戸時代、名前の不明種には、朝鮮より渡来したものだろうとあて推量して命名する風潮があり、 アザミ類に花が似ているのでこの名となったが、アザミ類と違っ て、チョウセンアザミ属(シナラ属)に属している。ノアザミ、ノハラアザミはアザミ属(キルシウム属)となる。カルドンは英名より。
葉柄と総花床を薬用、食用に:ヨーロッパでは古くから利尿や強壮のために用いられていたもの。夏の終わりごろ、葉柄の何本かを茎についたまま、わらで縛り包んで半月ほどおき、白く軟化させて用いる。また、とがった総苞片を除き、総花床のみを使う。

成分:クロロゲン酸、カフェー酸、シナリンを含んでいる。

薬効と用い方:
食欲増進に:
利尿と強壮的作用のため、食欲増進に利用する。軟化した葉柄をマヨネーズなどで生食。また、カルドン酒として、総花床を日干しにし、約 1g容量の広口びんに半分量のカルドンとグラニュー糖100g、35度のホワイトリカーをびんいっぱいに入れ、2ヵ月後に食前に約 20〜40ccを飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8350 アーティチョークとは 地中海沿片地力から中央アジアの原産。カルドンから変化したものではないかとみられる。カルドンとほぼ同じ1.5〜2m の高さになり、6〜8月に大形の紫色の頭花を開く。カルドンのように総苞片はかたくなく、先端のとがりもなく多肉質である。
食用、薬用にするのは、つぼみのときの総苞片を用いるので、開花直前に採取する。総苞片をばらばらにとるのでな く、頭花の下の花茎から一つの頭花ごととる。イタリア、フランス、ドイツに栽培される中でフランスが盛んに栽培。わが国にも 6月ごろに主としてフランスまた北米より輸入されるが、房総半島や三浦半島の暖地にわずかに栽培されている。

名前の由来:英語のartichokeより。フランス語ではアテイショウartichautという。わが国ではアーティチョークと呼ばれ、 『四訂日本食品標準成分表』(1982年)にもこの名で出ている。別名は チョウセンアザミである。

成分:カルドンと同じである。シナリンを主成分とし、クロロゲン酸、カフェー酸を含んでいる。四訂の食品成分表によると、総苞部は、100g中、タンパク質2,7g、糖質11.4g、繊維1.6g、カルシウム60mg、カロチン230μg、ビタミンC12mgとなっている。

薬用、食用部分は総苞片:利尿薬や強壮薬として用いられ、また野菜食として利用する。総苞片のついた全形のまま塩ゆでにして 料理するが、料理の方法は種類が多い。

薬効と用い方:
利尿・強壮薬に:
カルドンと同様、アーティチョーク酒として用いる。総苞片を1枚づつとり、日干しにする。残りの総花床の部分もナイフで刻み、日干 しにして、よく乾燥したものを1g容量の広口びんに半量ほど入 れ、グラニュー糖100gと35度のホワイトリカーをびんいっぱいに 入れて2ヵ月漬ける。1回量20〜40ccを食前か食後に飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8351 カキツバタとは 北海道から九州までの水湿地に生える多年草で、ときに観賞用として栽培される。朝鮮半島、中国の東北地区、シベリアに分布する。根茎は枝分かれして多数の繊維におおわれる。葉は長さ30 〜90cm、幅1〜3cmで広く、主脈がない。花茎は直立して40〜80cmに伸び、その先に2〜3花をつける。5〜6月に開花し、濃青紫色で径約8cmになり、外花被片は大きく外にたれ、基部の中央は白色から黄色の細い筋がある。内花被片は小形で直立する。

類似植物アヤメ:「いずれあやめかかきつばだ」の古いことわざのように、このカキツバタとアヤメはよく似ている。アヤメの葉幅は約1cmで狭く、外花破片の基部は広い黄色の部分が目立ち、 さらに紫色の細い脈が著しい。カキツバタは葉幅が広く、外花被片基部の中央部にだけ、白か黄の細い筋があって、紫色の細い脈 はない。

名前の由来:書付け花の転訛とされている。万葉集の巻十七「加吉都播多(かきつばた) 衣に摺りつけ ますらをの きそひ獵する 月は来に けり」は天平16年の歌で、カキツバタの花の汁を衣にすりつけて、ますらをたちが摺染めにした衣を着飾って薬狩りする月 (5月5日)はいよいよやってきたという意味。当時の大宮人た ちは衣装をととのえて、薬にする鹿の角や薬草を採取する薬狩り を、一つのフェスティバルとして行っていた。カギツバタの名は、花被の汁を衣につけて染めることに由来している。

採取時期と調整法:夏に根茎を採取し、繊維や細枝を除いて水洗いしてから、刻んで日千しにする。

成分:まだよく精査されていない。

薬効と用い方:
去痰に:
刻んで乾燥させた根茎を1回2gを水300〜400ccで1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8352 アサツキとは(胡葱/こそう) 北海道、本州、四国などの山地、草原に自生する多年草で、ときに栽培される。朝鮮半島、中国、シベリアに分布。葉は円筒状で長さ20〜40cm、径3〜5mm。5〜7月に、花茎の先に淡紅紫色で、6花被片の多数の花が傘形に集まって咲く。雄しべは花披片より短い。鱗茎はラッキョウに似て卵形披針形で、長さは1〜2cm。新しい鱗茎は辛みがある。

名前の由来:ネギの葉は緑が濃いが、アサツキは淡緑色で色が淡いのを浅いと表現し、浅葱と書き、葱はソウのほかキとも読むので、アサツキとなった。平安時代の『和名抄』(932年)にアサツキの和名があり、漢名の島蒜(とうびる)にあて、葷菜類(くんさいるい)に記載してある。そのころすでに食用として 利用していたのであろう。『本朝食鑑』(1697年)には胡葱の漢名をあげてアサツキにあて、気を下し、食を消し、また能く食を進めるなどの薬効を述べている。気を下すとは漢方で病は気からと表現するように、気が体内に蓄積されると病気となるので、これを体外に排除することをいう。

福島県で古くから栽培:福島県北部の山間地帯で、江戸時代から栽培され、11月から翌年3月まで、冬物野菜、特に正月用として出荷されている。地上部の枯れる夏の初めに鱗茎を掘り上げ、軒 下につり下げて乾燥し、8〜9月、葉や根を除き、鱗茎を一つ一 つに小さく分けて植え、種球の3〜4倍の厚さに土をかける。

採取時期と調整法:野生、栽培物とも、花の咲かない時期、葉は 2〜3月、鱗茎は3〜4月に採取し、水洗いして生のまま利用。

成分:鱗茎と葉はペントーズ、マンナンのほかビタミンA(カロチン)の含量が多い。

薬効と用い方:
食欲増進、消化促進、滋養強壮に:
生のまま鱗茎や葉に味噌をつけて食べる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8353 スミレとは 北海道、本州、四国、九州の各地山野に生える普通の多年草。 南千島、朝鮮半島、中国(東北地区)に分布する。4〜5月、花茎の先に濃紫の花を開く。花弁の後ろに突き出した袋状の部分を距(きょ)というが、短い円筒状で内に蜜がたまっている。葉は三角状披針形で先は鈍くとがり、茎部はくさび形。低い鋸歯があって、葉柄、花茎に毛が生えるが、また無毛のものもある。

名前の由来:花の距を含めて、形が大工道具の「墨壷」に似ていることから。古くは「墨壷」を「すみいれつぼ」と呼び、これを短縮した「すみいれ」がのちに一般に用いられるようになる。それが略されて、スミレとなったという語源説がある。別名のジロッコタロッコは、次郎と太郎の子供が花のついた2本の花茎を花 のところで絡ませて引っぱり、どちらが早く切れるかを競う遊びから。スモウトリバナも同じ語源である。

漢名菫菜(きんさい)と地丁(じちょう):『中国高等植物図鑑・補綴』(1983年:北京)にはわが国のスミレに東北菫菜と書き、ノジスミレには紫花地丁の中国名をあてている。平賀源内は『物類品シツ』(1763年)に紫花地丁をあげ、一名董董菜、和名スミレ、またスモトリグサというとしているが、これは、スミレとノジスミレをいっしょにしていることになろう・大蔵永常は『山家薬方集』(1847年)に、はれものの妙薬として「董に塩を少し入れ、ねりてねばく成たるをぬり、紙をふた にしておく也」として、菫の一字をスミレとじている。

採取時期と調整法:開花期の全草を採取し、水洗い後日干しに。 また、生のままも用いる。

成分:まだよく精査されていない。

薬効と用い方:
はれものの解毒に:
生の全草を塩でもみ患部に直接当る。乾燥したもの1回2〜6gを水400ccで半量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8354 ニオイスミレとは ヨーロッパ南部から中近東地方原産の多年草で、主として観賞用に広く栽培されている。
葉は心臓形で大きく、縁には鈍い鋸歯がある。花は径2cmほどの濃紫色で、芳香がある。距(きょ)は短くて太い。3〜4月に開花する。フランス南部では特に芳香の強い改良種を栽培し、花から香料を生産している。早朝に採取した花を原料にニオイスミレ油をとり、香水の調合に利用される。

名前の由来:花の芳香が強いことからこの名となったが、学名の中の種名も芳香があるという意味のオドラタとなっている。

国産の香りのあるスミレ:わが国には、ヨーロッパ原産のニオイスミレのような強い芳香のものはないが、ニオイタチツボスミレが香りのある野生種として知られている。そのほかエイザンスミ レ、ヒゴスミレなども香りがある。

採取時期と調整法:開花期の全草を採取し、水洗いしたのちに、 風通しのよい場所で陰干しにする。

成分:ニオイスミレの花の芳香成分はケトン化合物のパルモンと呼ばれるものに、オイゲノールの少量が含まれる精油で、花を早朝に採取し、ただちに脂肪に吸収させ、これを溶剤で抽出し、ニ オイスミレ油という精油を得ている。葉にも芳香成分のバイオレットリーフアルデハイドを含み、溶剤によって抽出する。  これらの芳香成分は化粧品、せっけんなどの香料に利用される。しかし、近年は合成香料の出現によって、南ヨーロッパの二オイスミレ栽培は、以前のような活気はみられないということである。

薬効と用い方:
せき止め、鎮静、浄血に:
乾燥したものを1日量は約5〜8gとして、水400〜600ccから 1/2量になるまでせんじ、分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8355 エンレイソウとは 北海道、本州、四国、九州の山林に生える多年草。サハリンに分布する。  
根茎は太くて、横にはうが短く、多数の根を出す。茎は直立して約30cmに伸び、先端に3枚の葉を輪生する。葉は菱形の卵円状で先端はとがり、3〜5脈あって、両面とも無毛。開花期は4〜 5月。3cmほどの花柄の先に1個のやや横向きになった紫褐色の花をつける。外花被(がく片に相当のもの)3片のみで、内花被片(花弁に相当)はない。雄しべ6個。果実は球形の液果で紫黒色に熟す。

名前の由来:延齢草の意であるが、語源は不明。『和漢三才図会』 (1713年)には恵連草(えれんそう)と恵礼牟草(えれいそう)の名が見え、記載文からすると、今日のエンレイソウにあたるが、エンレイソウの名はない。また、「其の根は半夏の如し。陰干しにし、食傷薬となす」とある。食傷薬は食あたりのこと。

採取時期と調整法:開花期の根茎を採取し、水洗い後、刻んでから日干しにする。果実は夏に成熟したものをとって生食する。

成分:まだ精査されていないが、シロバナエンレイソウも 同じように根茎にエクディステロンが含まれているとの報告がある。これは昆虫変態ホルモンで、ステロールの一種であるが、多くの植物に発見されている。ほかにサポニンの一種を含むとされているが、アルカロイドのような強い作用の物質の報告はない。 食傷によいというのは、サポニンによる催吐作用によって、食べ たものを吐き出させるという緊急薬の意義があるとみられる。

薬効と用い方:
胃腸薬に:
食傷(食あたり)の薬にする。刻んで乾燥した根茎を1回2〜4gを水400ccで1/2〜1/3量に煎じて一度に服用する。
生食に:成熟した果実には甘みがある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8356 シロバナエンレイソウとは 北海道、本州、四国の山地や林の陰に生える多年草。サハリン、朝鮮半島、中国に分布する。エンレイソウの近縁種。根茎は太くて短く、多数の根がある。3cmほどの花柄の先に、 4〜5月、やや横向きに1花を開く。外花披3片は緑色で披針形、内花被3片は白色、広披針形で外花披片より少し長い。液果は球形で然して黒紫色となる。

名前の由来:花が白いのでこの名となる。別名のミヤマエンレイ ソウは、深山に多いことから。アマチャは熟した果実は甘みがあるところから。ヤマソバは実の大きさこそ違うが、形がソバの実に似ていることからつけられた。

中国名頭頂一顆珠:中国では、秋に紅い(実際は紅よりも黒紫色になる)果実が茎の先端に1個つくという意味の字を書く。また 別名を地珠と書く。根茎は高血圧、神経衰弱などに6〜9gを1日量としてせんじて服用するとあるが、わが国ではこのような用法はない。また、神経性の頭痛や高血圧に、成熟した果実を1回 に3〜5個せんじて服用することも行われている。

採取時期と調整法:夏か秋の初めに熟した果実をとり、水洗いしてから、そのまま用いる。

成分:上記のエンレイソウとほぼ同じ成分とみられる。  

薬効と用い方:
滋養に:
生のままを食する。甘みがあって、うまいが、食べすぎないように。大人で1回 7〜8個、子供で5個内外にとどめておきたい。
保存食に:洗って水けをとり、砂糖煮にする。やわらかく砂糖で 煮て、一度乾燥し、2回目に同じように砂糖液で煮て、広口びんなどに入れ、砂糖を振りかけながら蓋をしておく(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8357 カラスノエンドウとは 本州から沖縄までの暖かい地方の原野、路傍、土手など、日のよく当たるところに自生する2年草。朝鮮半島、台湾、アジア、 ヨーロッパに分布。  
茎は根元で分枝し、細い四角形で草地をはい、巻きひげで他の物に絡みつきながら伸びて、草むらのように生い茂る。葉は互生 し、長さ5cmほどの羽状複葉で、3〜7対の小葉をつけ、その先が巻きひげになる。葉、茎にはやわらかい毛が少し生える。春から初夏、葉腋に1〜3個の紅紫の蝶形花が開花。果実は豆果を結び、扁平で、中に10個ほどの種子がある。

名前の由来:この近縁種スズメノエンドウに似て葉、花ともに大きいことから、雀より大きい烏の名がつけられた。 別名のヤハズエンドウは小葉の先端がくぼんでいるので、弓矢の矢筈(やはず)に見立てたもの。

中国名救荒野腕豆:中国にも同じカラスノエンドウが自生し、救荒野碗豆という救荒は、蔬菜として食用になるという意味をあらわし、野碗豆の漢名はわが国にも自生するイブキノエンドウにもあてている。また、救荒野沢豆は別名を大巣菜と書き、全草を乾燥したものは大巣菜の生薬名にし〈『中葯大辞典・上冊』(1977年)〉 によると中国ではせき止め、去痰に、全草を乾燥したものをせん じて服用しているが、わが国ではそのような用法はない。

採取時期と調整法:4〜5月に、豆果、また花のある全草を採取 して、水洗後、日干しにする。

成分:葉にはフラボノイドのクエルチトリン、アピインを含むほ かは精査されていない。

薬効と用い方:
胃炎に:
血行をよくする作用をあり、軽い胃のもたれがあるときに、1日量約5gを適当量の水で煎じて服用する (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8358 ナンテンハギとは 北海道から九州までの山野に自生する多年草で、朝鮮半島、中国にも分布する。  
茎に稜があって高さ1mほどに伸び、葉は2枚の小葉よりなる 複葉で、葉軸の先から巻きひげが出ない。小葉は広披針形で無毛。托葉は腎臓形で茎を囲むようにつき、両端は鋭くとがる。花は6〜10月、赤紫色の蝶形花を総状花序につけ、多くは茎の片方に向いて開く。果実のさやは広披針形で表面無毛。

名前の由来:葉がナンテンの葉に似ているというのでつけられ た。別名のフタバハギは一つの節より小葉が2枚ずつ出ることによる。アズキナは小豆葉のこと。この若葉は山菜として利用されるが、おひたしなどにするのに煮ると、アズキを煮るときのにおいがすることからこの別名となった。アズキッパも同じである。
形が似ているというのではない。

中国名歪頭菜(わいとうさい):中国ではこのナンテンハギに歪頭菜と書き、秋に全草を採取し、疲労回復の目的で、その煎液を服用する。

山菜アズキナ:飛騨高山付近では古くから小豆菜の名称で、山菜料理に用いている。最近ではおみやげ用の加工品が、朝市や観光客のためのみやげ物店、駅売店などで販売され、駅弁などにも利用されていて、飛騨高山の高冷地で盛んに栽培されている。

採取時期と調整法:秋になって、開花期の全草を根も含めて採取 し、刻んでから水洗いして、日干しにする。

成分:葉は、フラボンのルテオリンの配糖体を含み、種子には、 アミノ酸のガンマ・ハイドロオキシオルニチンを含むことが知ら れている。

薬効と用い方:
めまい、疲労回復に:
1日量約5〜10gを水 600ccより1/2にせんじ、1日数回、適当なと きに分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8359 ニリンソウとは 北海道から九州までの山地、特に山すその林の下や、湿った半日陰に群生する多年草。朝鮮半島や中国に分布する。根茎は横に短くはい、根元から出る葉は葉柄が長く、3〜5裂してやわらかい。3〜5月に根出葉の間より20〜30cmの花茎を出し、その先に総苞葉が3枚輪生し、その中心から2本の花柄を伸ばして、先端 に白い2輪の花を開く。花弁はなくてがく片が白く、花弁のように見える。花後結実すると、地上部は夏には枯れ、地下部は翌春まで休眠する。

名前の由来:2本の花柄の先にそれぞれ1輪ずつ2輪の花をつけることから。中国では林蔭銀蓮花と書き、黒褐色の地下根茎を乾 燥して地烏(じう)という名の生薬にし、リウマチの薬に煎服している。

毒草の中に生えるニリンソウ:セキナ、フクベラなどの地方名で ニリンソウは東北、北海道で盛んに山菜料理にして、汁の実、おひ たし、あえ物、天ぷらに利用されている。花の咲かない早春のころに地上部をつみとるが、毒草であるトリカブトが同じ場所に生えているので、これをまちがって食べて死亡するという事故のニュ ースが、近年また多くなった。トリカブトは地下に塊状をした根 があるのに対し、ニリンソウは横にはう根茎があるので、地下部を掘ってみること。トリカブトのつみとった切り口は淡い桃色で三日月形、ニリンソウは淡い緑色で円形。どちらも菜の形が似ていることがまちがいのもとになるが、ニリンソウは白い花の咲くもの、トリガブト類は青紫色の花が咲き花茎は1m以上伸びるもの。
花の咲かない若苗をとるときには地下部を確かめることが必要。

採取時期と調整法:春〜夏に根茎を採取、水洗いして日干しに。

成分:まだよく研究されていない。

薬効と用い方:
リウマチに:
―日量に根茎約6〜10gを、水 600ccで1/2にせんじて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8360 セリバヒエンソウとは 中国原産の1年草で、久内清孝著『帰化植物』(1950年)によると、わが国では『改正増補植物名彙』(1895年)に最初に記載されているので、明治後半に帰化植物として入ったものであるとし、「東京駒場の旧帝大農学部趾、いまの東大教養学部に 多い」と記されている。
茎は高さ30cmほど。葉は羽状に裂けてセリに似ている。花は4 〜5月に開き、淡紫色。花弁状の5個はがく片で、後ろは長い距(きょ)になっている。花弁は2個で小形、その先は蜜槽になって距の中 に入っていてこれはトリカブト類の花弁に似ている。外から花弁の大部分は見えない。一つの花の終わったあとに、1〜3個の果実を結び、両端がとがった楕円形の袋果になり、長さ約1.5cm、熟すと裂けて、黒褐色の種子の数個を出す。種子は円形、中央がへこみ、外側にらせん形に突き出した帯状の突起物によって巻かれている。底にあたる部分は常に下になっている。さかさまにする と、起き上がりこぼしのように、また自然の位置に戻って静置す る。

名前の由来:近縁種のヒエンソウはキンポウゲ科ヒエンソウ属。このセリバヒエンソウも同じヒエンソウ属で、花が似ていて、葉がセリのようであることからこの名となった。中国では還亮草(かんりょうそう)。別名を魚灯蘇(ぎょとうそ)という。

採取時期と調整法:
春の開花期の全草をとり、水洗後日干しに。

成分:アルカロイドを含むが、その本質についてはまだ精査され ていない。

薬効と用い方:
おできに:
全草の乾燥したもの約5〜10g を、水400〜600ccで約半量にせんじ、その汁で 患部を洗うか、脱脂綿に汁を含ませたものを患部に当てる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8361 ニセアカシアとは 北米原産の落葉高木。明治の初めに輸入されて、当時東京府下の練兵場に植えられたのが始まりで、現在は北海道から沖縄まで各地の林のへりや河原などに野生化している。葉は9〜17枚の小葉を持つ複葉で、柄の基部に托葉の変形したとげがある。4〜5 月、白い蝶形花を房状につけてたれ、開花すると芳香がある。この芳香と花の蜜は養蜂家の蜜源となっている。また、樹木の材質がかたく、腐朽に強いために土木用材などに利用されるが、枝に 刺針が多くて嫌われ、街路樹、庭木にはあまり好まれない。

名前の由来:最初からニセアカシアの名で呼んでいたのではな い。白井光太郎著『樹木和名考』(1932年)に「近来移植の草木に云ふ、農業雑誌五十六号(明治11年)明石屋樹二三年前に渡ると云 ふ、此樹は維新前にも種子を伝へ発生したるも、繁殖するに至ら ず……」とある。このように明治11年(1878年)明石屋樹の和名で登場するが、明治19年(1886年)に、植物学者松村任三はハリエンジュ、間もなく、林学者本多静六はニセアカシアと命名した。

採取時期と調整法:花は春から初夏、つぼみのときに房ごと採取 して日干しに。葉はそのまま使用。樹皮も同じころに採取、日干 しに。

成分:葉にはフラボノルのアカシイン、クエルセチン、花にはロビニンを含んでいる。根部にはアスパラギン、メチオニン、チロジンなどのアミノ酸を含むという報告がある。

薬効と用い方:
利尿に:
葉を蒸して、火の上にかざしてもみながら乾燥。茶代わりに飲む。樹皮は1日量5〜10gを水600ccで1/2にせんじて服用。花穂も1日量10gを同 じようにせんじて服用。
止血に:生の葉をもんで、その汁をつける。花穂の天ぷらはおいしい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8362 クヌギとは(樸そく/ぼくそく) 本州、四国、九州、沖縄までの各地の山林に自生する落葉高木。朝鮮半島、台湾、中国に分布。高さ15〜25mに直立に伸び、 樹皮は灰褐色で、縦に深い裂け目がある。葉は長楕円状披針形で12〜16対の側脈があって先端は鋭くとがり、互生。雌雄同株。花 は5月ごろ、雄花は黄褐色多数の花を長さ10cmの房状につけてた れ下がる。雌花は新しく伸びた枝の上部、葉腋に1〜3個つく。 果実は2年目の秋に堅果を結ぶが、一般にこれをドングリと呼ぶ。

名前の由来:「国の木」が変形したもの。クニノキからクノキ、 さらにクヌギに転訛したとされている。わが国では櫟、橡の字 をあてるが、最近の中国では「麻櫟」と書く。わが国では樹皮を乾燥させた生薬を「樸そく」の名で呼ぶ。
『一本堂薬選』と樸そく:香川修庵は著書『一本堂凛選』(1729年)で樸そくについて「梅毒性疾患、悪性の腫物、打撲による腫物などにより、血液が滞りがちであるのを取り除くのに用いる」とし、 「今わが国ではこの木をクヌギと呼び、薪や木炭として利用している」と述べ、さらに「これに似て皮の薄いものは「ははそ(木へんに羽)」であって、 これを用いるときには、水にて洗ってから刻んで使用する」としている。「ははそ」はコナラのことでクヌギ同様に使用される。

『和漢三才図会』と赤竜皮(せきりゅうひ):『和漢三才図会』(1713年)にはクヌギの樹皮は赤竜皮で、苦く渋く、煎服すると、血便を伴う下痢によいとし、悪性のおできには、せんじた汁で洗うとよいと述べている。

採取時期と調整法:夏に樹皮をとり、水洗後日干しに。

成分:タンニン類、クエルチトリン(フラボノイド)など。

薬効と用い方:
打撲に:
せんじた汁で洗う。また、治打撲一方の漢方処方で撲ソク、川キュウ、川骨、桂枝各3g、甘草1.5g、丁子、大黄各1g、以上1日量水400ccでせんじ 食前3回に服用。飲んで治す打撲の薬(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8363 ギョウジャニンニクとは、行者ニンニクとは 南千島四島、北海道、本州は近畿地方まで、多くは深山の林の下に自生する多年草。カムチャッカ、千島、サハリン、中国、朝鮮半島、シベリアなどに分布。地下の鱗茎は披針形で淡褐色のシュロ状の毛でおおわれ、そこから地上に伸びる花茎は40〜70cmの高さになり、下部には長楕円形の葉2〜3枚が出る。先端には白色(ときに淡紫もある)の花が散形花序に多数集まって咲く。開花期は6〜7月。花被片6、雄しべは6個で花被より長い。全草に強い臭気がある。

名前の由来:昔の山岳信仰の行者が荒行に耐える体力、精力をつ けるためにこの草を食べたことからこの名となった。行者蒜(ぎょうじゃひる)の意である。古くは茖葱(かくそう)の漢名をあて「こびる」の和名で呼ばれていた。日光二荒山(男体山)では、山僧が食べるので二荒蒜(ふたらびる)と呼び、 比叡山ではエイザンニンニク、天台ビル、またゼンジョウニンニク (禅上蒜)というが、いずれも山岳信仰の行者仲間の呼び名である。

採取時期と調整法:春から夏に、地下のラッキョウ形の球茎を掘 り外側のシュロの毛状の皮を除く。

成分:ニンニクと同じアリインが含まれる。

薬効と用い方:
滋養強壮に:
ギョウジャニンニク酒を次の処方によって作る
@ギジニニクの鱗茎部分の毛をむしりとってから水洗いし、水けをふきとる。
Aギョウジャニンニクの採取量の倍以上の容量がある広口びんを用意 し、中に鱗茎を切らずにそのまま、びんの半分量まで入れる。
B 採取した鱗茎の重量の約1割の重さのグラニュー糖を加え、35度のホワイトリカーをびんにほぼいっぱいに注ぐ。
C冷暗所において、2ヵ月後から1日1回20〜40ccを限度に服用する。臭気が強いので就寝前に服用するのがよい。また、量を過ごさないように注意すること(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8364 タチシオデとは 北海道南部から九州までの各地の山野に生える雌雄異株の多年草。中国、朝鮮半島に分布する。地下茎は横に伸び、地上の茎は他の物に寄りかかって伸びて1〜2mになる。葉は長柄があって互生し、卵状長楕円形で下面は緑白色、上面は5本の脈が平行に出る。花は黄緑色の小花で5〜6月に開花。葉腋から出る長い柄の先に集散花序につく。雄花は花被片6、雄しべ6、雌花には卵形の子房がある。果実は球形の液果で、黒色に熟して白粉をかぶ ったようになる。

名前の由来:立ちシオデのことである。シオデの語源はアイヌ語のシュウオンテから転訛したものとされているが、このアイヌ語がどのような意義かわからない。中国にもタチシオデを産し、白背牛尾菜(はくはいぎゅうびさい)と書く。葉の下面が緑白色であるのでこの名となる。わが国にも自生するシオデには牛尾菜をあてている。

類似植物シオデとの区別:シオデは開花期が夏、タチシオデは春。葉の裏面に光沢があって緑色なのがシオデ。光沢がなく緑白色で直立し、つる状に伸びるのがタチシオデ。シオデの雄しべの花紛粒を入れる葯(花粉の袋)が1.5mmの長さであるのに対し、タチシオデはその約1/2の長さで短い。

採取時期と調整法:花が終わった夏に、根を含めた根茎を採取 し、よく水洗いし、日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
通経、血行促進に:
乾燥根と根茎を1日量3 〜10g、水600ccで1/2にせんじ3回に分服。
関節リウマチに(中国での利用法):上記と同じ根茎15g、ハクチョウゲ(アカネ科)地上部30g、アリドオシ(アカネ科)根と地上部30g、メナモミ(キク科)地上部15gを水よりせんじ服用。わ が国ではこのようなことに使用していない(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8365 チョロギとは 中国原産の多年草で、塊茎を食用にするために栽培される。茎は直立し60cmほどに伸び、4稜が著しく、下向きのとげが生えてざらつく。葉は対生し、卵状披針形で基部は心形、先端はとが り、縁に鋸歯がある。7〜9月上旬に淡紅紫色花を開く。唇形の花は下唇が3裂。がくは先が5裂。9〜10月に地下茎の先がしだいにふくれ、両端が細くジュズ状にくびれた塊茎ができる。

名前の由来:朝鮮語のミミズの意味の「チョロイン」由来説があるが、まだはっきりしていない。江戸時代に中国より渡来したもので、草石蚕(そうせきさん)、甘露子(かんろし)の漢名とともに知られるようになった。

元禄時代の記録:『農業全書』(1697年)には「甘露子・甘露子又草石蚕とも地瓜兒とも云ふ。今俗に、てうろぎと云う物なり。苗の時 四五寸長じて後は茎ながくつるのごとし。かどありて節ごとに葉向ひ合ひて生じ、薄紫の小花をひらく以下略」。『本朝食鑑』(1697年) には「知也宇呂岐・つまり草石蚕のこと。一名は甘露子という。 古来、わが国にこれがあったということをまだ聞かない。近世になって、華船が種を移し、このごろは家々で栽培している。以下 略」とある。元禄のころは珍しい作物であったようだ。和名を、テウロギ、チヤウロギと呼んで、今日のチョロギの発音ではなかった。『本草綱目啓蒙』(1803年)にはチョロギの名が出てくる。

採取時期と調整法:夏から秋に塊茎の部分を採取し、水洗いし て、生のものをそのまま用いる。

成分:糖質のスタキオースが塊茎に特に多量に含まれていて、体内でブドウ糖に分解する。タンパク質を2.5%も含む。

薬効と用い方:
打撲に:
生の塊茎をまかく砕き患部にはる。
食用に:赤く梅酢漬けになったチョロギは黒豆とともに、正月のおせち料理に用いられる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8366 ジュウニヒトエとは 本州の北部から四国までの原野にのみ生える、日本特産の多年草である。  根茎は短く、茎は4稜で、高さ10〜25cmになり、基部に葉の退化した鱗片葉がある。葉は倒卵状のさじ形で、縁に少数の鈍い波状鋸歯があり、柄は細くなって対生する。全体に白い毛が目立ち、特に茎や葉柄に多い。  
花は4〜6月に開花し、花茎の先に穂状に集まって咲く。唇形の花冠は淡紫色、上唇は浅く2裂、下唇は大きく3裂するのが、この属の特徴である。

名前の由来:花が苞の間に重なって密に咲くのを、女官の十二単衣の装束に見立ててつけられた。日本特産であるから、これに対する漢名はない。
『中国高等植物図鑑』(1974年)の図 この図鑑の第三冊の図に、ジュウニヒトエの学名アユガ ニッポネンシスマキノを記した図が出ている。  
江南各省に産するように記載されていて、紫背全盤の漢名をあげているが、どう見てもこの図はジュウニヒトエの形態ではない。ジュウニヒトエは、日本以外には産しない。

採取時期と調整法:春の開花期に全草を採取し、水洗いしてから そのまま、または刻んでから日干しにする。

成分:苦味成分としてジテルペンのアユガマリンや、フェニルプロパノイド配糖体、イリドイド配糖体などが含まれていることを、日本生薬学会第27回年会(1980年)と同じく第29回年会(1982年) で、東京薬科大学の下村裕子教授らが発表している。

薬効と用い方:
健胃に:
よく乾燥している全草を、約5〜8gを1日量として水400〜600ccで約1/2量になるまで煎じて1日3回に分けて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8367 レンゲソウとは 中国原産の2年草で、わが国各地で栽培され、また野生化している。帰化植物の一つである。台湾にも野生化している。茎は根元より枝を分け、地面を横にはうが、上部は10〜30cmの高さになる。葉は奇数羽状複葉で、葉質は薄い。葉の先が丸いかややへこむ。花は4〜5月、葉腋より長柄を出し、その先に紅紫色で長さ 約12mmの蝶形花を5〜10個輪状につける。果実は黒色のさや状果を結び、表面無毛、中に数個の種子ができる。

名前の由来:花の形から蓮華(れんげ)となったが、京の人は、蓮華はハスの花であるから、仏の花であると忌みきらって「レ」を「ゲ」と して、ゲンゲと呼ぶようになったと、江戸末期の本草家小野蘭山が述べている。このことから蓮華草が本名で、ゲンゲは別名であることがわかる。

たんぽの緋毛氈(ひもうせん):子供のころ、春、レングソウの花盛りに緋毛氈のようになっているところで遊んだ情景が懐かしい。『和漢三才 図会』(1713年)にも「其の多き処、錦を地に敷くが如し。人以って 野遊の一興と為す」とあって、昔も今も人の心情は同じであるとの感がある。近年、米作りの方法が変化して、たんぽにレンゲソウを栽培しなくなった。レンゲソウの花は重要な蜜源植物であっ たので、これが少なくなって困ったのは養蜂家であろう。

採取時期と調整法:開花期の全草をとり、水洗いしたあと、日干 しにする。また、生の葉の汁を用いる。

成分:アミノ酸のアルギニンのほか、緑肥として窒素、リン酸、 カリ、石灰などがバランスよく含まれている。

薬効と用い方:
利尿、解熱に:
乾燥したものを1日量として約5〜10g、水400〜600ccで1/2量にせんじて服用する。
やけどに:生の葉をしぼり、その汁を患部に塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8368 キュウリグサとは 北海道から沖縄まで、全国各地の路傍、畑などに普通にみられる2年草。朝鮮半島、中国に分布。根ぎわから出る葉は、長柄があって冬を越し、花の咲く春には枯れる。春に新しく伸びる茎は 10〜30cmで、茎の下部は多数枝分かれし、茎の葉は互生につき、 細長い卵形で、こまかい毛が生え、さわるとざらつくが、全草はやわらかい感じがする。花はルリ色で、径2mm、深く5裂する。 花筒内部に五つの鱗片がつく。花のつく茎の先端が渦巻き状になるのがこの草の特徴。

名前の由来:生の茎葉を手で強くもむとキュウリもみのにおいがするというのでこの名となった。別名のタビラコは、春の七草の タビラコとは別。七草のほうはキク科のコオニタビラコをさし、 食用になる。

類似植物ハナイバナ:ムラサキ科のハナイバナ属のハナイバナは、キュウリグサによく似ているが、茎の先が渦巻き状に巻かないし、一つ一つの花は苞のつけ根から出ている。キュウリグサの花序は基部に苞があるだけで、それ以外に苞はない。キュウリグサ、ハナイバナともに、同じ草原に混生することが多い。

漢名:中国ではキュウリグサを附地菜と書き、ハナイバナを柔弱斑種草と書く。

採取時期と調整法:
(1)開花期の全草を水洗いして、そのまま使用する。
(2)同じころに全草を採取して、日干しにする。

成分:精査されていない。

薬効と用い方:
手足の軽いしびれに:
水けをとり去った生の全草に少量の食塩を加えて、よくもみ、しびれている患部に直接厚めに当て、包帯などで止めておく。
利尿に:干した物を1日量に3〜8g、水400〜600ccで1/2になるようにせんじ、2〜3回に服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8369 エゾノウワミズザクラとは 我が国では北海道のみの山地に自生する落葉高木。サハリン、 朝鮮半島、中国、シベリア、ヨーロッパと北半球に広く分布。幹は高さ10〜15m、樹皮は紫褐色。葉は卵形で先端はとがり、縁にこまかい鋸歯があって、葉柄上部の左右に蜜腺がある。花は、5 〜6月に白色5弁花多数を総状花序につける。雄しべ多数があっ て、花弁とほぼ同じ長さである。果実は球形の核果を結び、黒く熟する。

名前の由来:同じバラ科の落葉樹ウワミズザクラに似ていて、蝦夷(北海道)のみに自生していて、それ以外のところにないのでこの名となった。

類似植物ウワミズザクラとの区別点:ウワミズザクラの雄しべは花弁より長く、葉柄の腺は葉柄の上部、葉脚にある。エゾノウワ ミズザクラは雄しべが花弁より短い。腺は葉柄の上部にある。

採取時期と調整法:夏に葉を採取し、風通しのよいところで陰干しにする。樹皮も夏に採取し、陰干しとする。葉も樹皮も、生の うちに細切りしてから干すとよい。

成分:花よりβ-ジトステロール、ルペノール、樹皮と葉には青酸配糖体のプルナシンを含み、近年になってヨーロッパの学者がプルナシンの分解物ベンズアルデヒドやチアン水素も含まれているとの報告をしている。

薬効と用い方:
あせもに:
生の葉をそのままでも良いし、乾燥した葉でもよい。生の葉ならば1gほどの布袋に詰め、風呂に入れて入浴する。また、乾燥葉ならば一握りほどを水600ccで1/2量にまでせんじて、このせんじた汁で患部を洗う。
腹痛、カゼに:樹皮の乾燥したもの、1日量5〜8gを水400〜600ccで1/2にせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8370 テリハノイバラとは 宮城県以南、関東以西、四国、九州、沖縄の海岸、河川敷、がけなど日のよく当たるところに自生する落葉低木。朝鮮半島、台湾、中国に分布。枝は地面をほうように長く伸び、鋭くとがったとげが多い。葉は5〜9個の小葉よりなる奇数羽状複葉、小葉は 濃緑色の革質で、光沢があり、縁に鋸歯を持つ楕円形。花序は円錐形で、花径約3cmの白色の数個の花をつけ、芳香があり、開花期はノイバラよりおそく、6〜7月。果実は球形の偽果で、赤熱する。托葉は縁に鋸歯があり、その鋸歯の先端には小さい腺を持 っている。

名前の由来:ノイバラによく似ていて、葉は革質、表面光沢があることからこの名となるが、ノイバラの葉には光沢はない。

類似植物三種:
(1)ノイバラ:地面をほうことなく、幹は上に伸び、葉は薄く光沢はない。托葉 の縁は歯牙状に分裂。
(2)ツクシイバラ 九州(熊本、宮崎、鹿児 島県など)に自生し、ノイバラよりやや大形。花は淡紅色、花序に長い腺毛が密生。
(3)フジイバラ (富士、箱根に多い)托葉の縁は分裂しない。小葉は紙質で5〜7枚。これらの偽果はいずれ も生薬の営実とされる。

採取時期と調整法:秋に赤熱した果実(偽果)を採取し、日干し をする、乾燥すると赤みが暗褐色になる。

成分:フラボノール配糖体のムルチフロリンA、B、クエルセチンなどを含み、これらは瀉下や利尿作用がある。

薬効と用い方:
利尿、下剤、おでき、にきび、はれものに:
市販生薬に営実があるが、野生のテリハノイバラから採取して使用するとよい。便通をよくし、利尿の効果があるので、美容料としても用いられる。1日量2〜5gにヨクイニン(ハトムギ)10gを加え、水400〜600ccで1/2にせんじて服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8371 チョウジソウとは 北海道(石狩以南)、本州、九州などの川岸や草地の湿地帯に自生する多年草で、朝鮮半島、中国に分布する。根茎は横に伸びて、多数の細根が出る。茎は円柱形で直立して70cmほどになり、上部で枝分かれする。葉は深緑色、披針形で両端がとがっていて互生。開花期は4〜6月、青紫色の花が集散花序につく。花冠は筒状、上部は5裂して平らに開く。雄しべは5個で、花筒内壁上部につく。果実は二またに分かれた袋果を結び、長さ約5cm。

名前の由来:花を側方からみると、漢字の「丁」の字にみえるので、この名前となったものであろう。花の形がチョウジ(丁子) に似ているという説もあるが、丁子(丁香)には似ていない。

北米原産のヤナギバチョウジソウ:Amsonia tabernaemontana Walt. 切り花用としてわが国に栽培されている。葉の先端が、チ ョウジソウより細くとがっていて、一般の露地でもよく生育する。

採取時期と調整法:春の開花期に地上部を刈りとって日干しにする。水湿地のものなので、よく乾燥させてカビないように注意。

成分:全草にIアルカロイドを含み、特にβーヨヒンビンを含むほか、エルリプチシンも知られている。ヨヒンビンは最初アカネ科のアフリカ産ヨヒンベという樹木の樹皮から発見され、アフ リカ原住民が古くからこの樹皮を媚薬に用いていたので有名になった。ヤナギバチョウジソウからアルカロイドの夕ベルゾニンその他多数の成分が北米の学者によって分離されている。ヨヒンビンと媚薬との関係は、塩酸ヨヒンビンを製造して、催淫薬に用いられるようになっていくが 副作用もあって、あまり普及していない。いずれにせよ、国産チョウジソウにヨヒンビンが含有されていることは、興味深いことである。

薬効と用い方:
小児の風熱に:
カゼの熱に乾燥したものを1回量1.5gを水400ccで約1/2量に煎じて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8372 ツルニチソウとは ヨーロッパ原産のつる性常緑の多年草で、耐寒性が強く新潟、長野県などの山間地帯の人家近くに野生の状態で繁殖している。 葉は卵状、全縁で対生し、夏に茎の上部の葉腋に花柄を伸ばし、 淡紫色の花をつける。花冠は深く5裂し、裂片はやや旋回する。 がくは5裂し、縁に毛がある。花が終わると、つるはさらに伸び、初めから花を持たないつるも1mにも伸びて、地面をはうようになり、つるの先から根を出す。葉に黄白色の斑の入ったものを覆輪(ふくりん)ツルニチニチソウと呼ぶ。

名前の由来:ニチニチソウに似て、つる性であることから、この名前となった。

類似植物ニチニチソウとの区別:ニチニチソウは、茎が直立する 1年草。葉は長楕円形で先に円みがあり、基部が狭くなっていて、葉柄は短く、花は無柄で筒部は長い。熱帯原産で寒さに弱 い。これに対して、ツルニチニチソウは、茎がつる状になって伸 びる多年草。葉は卵形で、先は細くとがり、基部は円みをもって 広く、葉柄は長い。花は有柄である。ヨーロッパ原産で寒さに強い。以上のような点で区別できる。

採取時期と調整法:夏の間花期に全草を採取し、水洗いしたの ち、日干しにする。

成分:ニチニチソウアルカロイドのペリビンチン、ビンカミン、 ビンカメジン、レゼイルピン、レゼルピニン、マジョリジンなど 多くのニチニチソウアルカロイドが明らかになった。またウルソ ール酸も含まれているほか、タンニン質も含まれている。  

薬効と用い方:
腸出血などの止血に:
1日量として乾燥した約5gを水400〜600ccで1/2量に煎じて1日3回服用する 。また、腸出血のほかに子宮出血にも 同じ分量で、服用することもある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8373 ヤマグルマとは 山形県以西、四国、九州、沖縄(石垣、西表両島自生。多 くは山中の落葉樹林内に生える常緑の高木。台湾、中国南部、朝鮮半島南部に分布する。葉は無毛の革質で光沢があり、両端のとがった倒卵形で、上部の縁に鋸歯があって互生するが、多くは枝先に輪生状につく。5〜6月、枝先に黄緑色の花が総状花序に集 まってつく。花はがくも花弁もなく、多数の淡黄色の雄しべと5 〜10個の心皮のみからなる。果実は心皮の数と同じ5〜10個の袋果ができる。

名前の由来:葉が枝先に輪生状につくので山車を意味する。

鳥もちを作る:伊藤圭介著『日本産物志』(1872年)に「五六月此枝の表皮を削り去り、清水に浸すこと三十日許、朽腐せしめ、後日 に入れ餅を搗くが如くにし、或は復水中にて屡引きて、ことごと く皮屑を去り、純粋の品となす」と記してある。なお同書には紀州熊野山家の製法として「梅雨の頃より土用まで皮を剥ぎ、地を掘りて田の如くし水を引き、其中に浸し置き、或は田の泥中に埋 め置き土用に至りて、その初入れし者を、逐次に取出して、臼にて搗き、水中に揉み流せば、皮の滓は、分離し流れ去る、此モチを 浴桶の湯中に投じ、振蕩すれば、モチは水面に浮散す、之を取り出 し、冷定すれば、そのモチ即凝固す」と、記載している。

成分:鳥もちの強力な粘着性は化学的には脂肪酸と高級一価アル コールのエステルによるワックス(蝋)の系列に入る。ヤマグルマの鳥もちは、パルミチン酸、セロチン酸、リノール酸などの脂肪酸と、オレアノール酸、βーアミリン、ルペオールなどの 高級一価のトリテルペンアルコールとが結合したもの。

薬効と用い方:
あかぎれに:
鳥もちの適量を患部に詰める。 鳥もちの製法は前出。
ハエ、ネズミとりに:鳥もちを紙に塗りつけて使用する。 (伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8374 ヤブデマリとは 関東以西、四国、九州の山野に自生する落葉低木。朝鮮半島南部、 中国、台湾に分布する。葉は倒卵形で、先端は急にとがり、基部 は丸いかくさび状、縁に鋸歯がある。側脈は10〜15対で、裏面にわずか突出し、淡緑色。花は5〜6月に咲く。白色の大形花は無性花で飾り花。これが花序の周辺に並び、その中心に小さい両性花がつく。花冠は深く5裂し、雄しべ5個、雌しべの先端の柱頭は 3裂する。秋に広卵形の果実をつけ、赤色から黒色になって熟す。

名前の由来:テマリバナ(別名オオデマリ)に花が似て、これはやぶに生えることからこの名となった。『大和本草』(1708年)に聚ハ仙をあげ、「京畿にてカイバと云、筑紫にてヤブデマリと云、林 中に多し形テマリバナに似て光あり大葉なり」と記してあるよう に、ヤブデマリの名は古くから用いられていた。  
近畿地方のカイバの語源はわからないが、この柱を京都の丹波地方では牛の鼻木を作るのに用いていたので、それとの関連があるのではないか。カイバを飼馬と書くと、語源との関係が強い。

オオデマリはヤブデマリの園芸品:類似植物のオオデマリ(テマ リバナ)は、江戸時代から庭木として栽培される落葉低木。花は白色。花序は球形になって、中性の装飾花から成り立つ。関花期 は5〜6月。

採取時期と調整法:開花期に花のみを採取し、そのまま日干しに してよく乾燥し、ハトロン紙の袋に保存する。ビニール袋ではカ ビを生じやすい。

成分:花よりフラボノイドのケンフエロール、ルチンが知られて いる。

薬効と用い方:
寄生性皮膚病、いんきん、たむしに:
1回量として乾燥してある花約5〜10gを、本400〜 600ccで1/3にせんじ、冷めかげんのときにこれで患部を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8375 ヤナギイチゴとは 千葉県以西、四国、九州、沖縄に自生する落葉低木。台湾、中国に分布。高さ2〜3mとなり、多数の長い枝を伸ばし、葉は披針葉か長楕円形で、先端は急にとがる。縁に鋸歯があり、上面は暗緑色でやや光沢があり、裏面は白色の綿毛が密生して、葉脈が目立つ。花は春早く、葉が伸びる前に1〜3個の花が球形にかたまって咲く。雄花は雄しべ4個、雌花はめしベ1個がある。5〜 6月に、果実は球形の集合果て橙黄色に熟し、多汁で甘みがあ る。

名前の由来:葉は柳のようで、果実は甘みがあり、イチゴのよう だ、ということからこの名前となった。学名については、属名の ドブレジャーシアはフランスの海軍士官プロスペル・ジュスタ ン・ドゥ・プレジャにちなんだ。彼は1836年極東への探検の航海の艦長であった。種名のエズリスは食べられるの意味である。
樹皮を麻の代用に:樹皮は強靭であるため、土用のころに樹皮をはぎとり、水につけて繊維をとって、麻の代用で縄に利用してい た。わが国でも以前は行われていたが、近年はあまり使われてい ない。中国ではヤナギイチゴを水麻(すいま)、または水蘇麻(すいそま)と書くが、これは繊維を麻の代用にすることから、この漢名になった。

採取時期と調整法:果実、葉ともに、6〜7月に採取。果実は水洗いしてから、そのまま食べる。葉は水洗い後、日干しにしてかびないようによく乾燥させ、ハトロン紙の袋に入れて保存する。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量としてよく乾燥した葉5〜8gを、水400〜600ccで約1/2にまでせんじて、1日3回に服用する。
果実を食用に:特別な薬効はないが、果実には甘みがあるので、 よく洗って生食することをすすめたい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8376 キリンソウとは 北海道、本州、四国、九州の山地や海岸の上などに自生する多年草。サハリン、カムチャッカ、千島、朝鮮半島、中国に分布する。葉は厚くて多肉質、倒卵形で先端はやや丸みがあり、縁に低い鋸歯があって互生する。茎は根茎から多数出て、高さ30cmほどになる。花は6〜8月、鮮黄色に開く、花弁は5、がく片 5、雄しべ10個は花弁より短い。果実は5個の袋果を結ぶ。

名前の由来:動物園にいる首の長いキリンではなく、中国の古い時代に、文献上に出てくる想像の動物、麒麟(きりん)によるものだという説がある。実在する動物ではないので、これに由来するという説があっても、イメージアップしにくいものである。

中国名費菜(ひさい):『中国高等植物図鑑』第二冊(1972年)の図はキリンソ ウで、中国名は費菜と書いてある。陜西、山西、河北、内蒙古に自生し、シベリア、日本に分布すると記してある。

類似植物二種:
(1)ホソバキリンソウは葉がキリンソウより細く、 先がとがり、縁の鋸歯が目立つ。
(2)ベンケイソウはキリンソウと同じベンケイソウ科であ るが、これは別属ムラサキベンケイソウ属で、ごの属のものは秋に花が咲き、白、紅、淡緑花である。キリンソウはマンネングサ属で、この属のものは、花は黄色、春から夏に開花する。

江戸時代の救荒植物:
江戸時代には、ききんに備えてキリンソウの全草をゆでて日干しにし、乾燥させて保存食にしていた。

採取時期と調整法:春から秋まで、葉がある時期の必要時に、葉を採取して、そのまま用いる。

成分:全草に枯漿性物質を含むほか、セジノンやざエルーセグミンな どのアルカロイドが含まれていることが明らかになった。

薬効と用い方:
虫さされ、小さい切り傷に:
生の葉を水で洗ってすりつぶし、葉汁を患部に塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8377 ユキザサとは 北海道、本州、四国、九州の山地の、林の下などの陰地に自生する多年草。朝鮮半島、中国北部、沿海州などに分布。地下の根茎は横に伸びて太い。茎は高さ約30cmの円柱形で、弓なりに曲がって出る。葉は笹の葉に似て長さ6〜12cmの楕円形、基部は丸みがあるが、先端はとがっていて葉の両面に粗毛があり、長い柄によって互生する。5〜6月、茎の先に小さい白色花多数を円錐花序につけるが、花序にも短毛がある。花被片は6枚、雄しべ6個 は花被片より短い。果実は球形で、秋に赤熟する。

名前の由来:白い花を雪に、葉を笹に見立てて雪笹となった。北 海道でアズキナの別名で呼ばれるのは、この若芽をゆでるとき、 アズキ(小豆)を煮るときのにおいがすることから。しかし、ナ ンバンギセルやマメ科のナンテンハギにもアズキナの別名がある。  『本草綱目啓蒙』(1803年)は漢名鹿薬(ろくやく)に、ユキザサの和名をあげ、 「春宿根から苗を発す、形状アマドコロに似る」としている。

類似植物二種:ユキザサは花が両性花であるが、
(1)ヒロハユキザサの花は単性で雌雄異株。雌しべの柱頭は深く3裂し、花被片は 著しく反曲して、果時に紫褐色になる。
(2)オオバユキザサ(ヤマ トユキザサ)の花は、単性で雌雄異株。雌しべの柱頭の裂片は反曲せず短い。雌花の花被片は果時に白色。

山菜料理に:春先、若芽を山菜として利用する。甘みがあり、やわらかく、アクがほとんどないので、天ぷら、汁の実、ごまあえ、酢みそあえなどに利用する。

採取時期と調整法:春から秋に根茎を採取し、生のままを使用。

成分:根茎に粘漿性物質を含むほかは精査されていない。

薬効と用い方:
はれものに:
根茎を砕き、または、すりおろして、その汁を患部に塗る(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8378 ウワバミソウとは 沖縄以外の全国各地、山間渓流の陰地、岩壁などに自生する雌雄異株の多年草。中国長江以南に分布。茎は多肉質でやわらか く、赤みを帯び、高さ30〜50cmになる。茎は斜めに立ち、葉はゆ がんだ長楕円形で、縁に鋸歯があって互生。根茎は短く、横にはう。花は4〜6月、雄花は葉腋より長い柄を出し、その先にかたまり咲く。雄株の雄花は緑白色、4花被片と4雄蕊(ゆうずい)よりなる。 花は雌株の葉腋より柄のない球状の花序につき、花植被は3。秋に茎の節がふくらんで地面に倒れ、そこから発芽して、新しい苗 をつくる。

名前の由来:生育する場所が水けが多くて、日が当たらない、いかにもウワバミ(大蛇)でも出そうなところということでこの名となった。別名のミズ、ミズナの呼び名のほうがウワバミソウよ り一般化している。山菜として食べるので、ウワバミの語感を嫌うからであろう。この別名も水けの多い場所に由来する。

類似植物:
(1)ウワバミソウ属
に雌雄異株のウワバミソウと雌雄同株のヤマトキホコリがあって外観が似ている。ヤマトキホコリの花序は葉腋より無柄で球状に出る。
(2)ミズ属は葉が対生、ミズ (ウワバミソウの別名と同名)、アオミズなどウワバミソウに似るが、葉が互生するのはウワバミソウなので区別しやすい。

採取時期と調整法:春から夏に、茎、根を採取。

成分:精査されていないが、根と茎に粘漿性物質を多く含む。

薬効と用い方:
軽い切り傷、虫さされに:
生の茎や根を含めて、これをたたき、その汁を塗る。
山菜料理ミズト口口に:根や茎(葉を除く)を水洗いして茎の皮をとり除き、塩少々を加えてゆでる。鮮やかな緑色になったら冷水にとり、水きりして、すりこ木などでたたきつぶす。さらに包丁でこまかく切り、酢、みそ、砂糖を加えてよくすりよぜる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8379 ハクモクレンとは 中国原産の落葉高木で、公園樹や庭園樹として栽培されている。幹は直立して、大きいものでは高さ15mに達するものもある。樹皮は灰白色。花は3〜4月、葉の出る前に白色大形花を枝先に開き、香りが高い。がく片3枚、花弁6枚、がく片は白色で花弁ように見えるので、がく片、花弁の外観上の区別がない。雌 しべ、雄しべともに多数。果実は集合果て長さ10pほどになり、 秋に成熟するとおのおのの袋果は裂開し、赤色の種子を出す。

名前の由来:花が白いモクレンの意味。中国名は玉蘭、木蘭と書 く。わが国では紫の花を開くほうをモクレンと呼び、中国ではこれを辛夷と呼んで、別名を紫玉蘭とも書く。わが国では、一般に当て字の「白木蓮」がハク モクレンの和製漢字として、詩歌の題材に使われている。

生薬辛夷:わが国ではコブシのつぼみを生薬の辛夷に利用してきたが、最近ではこれより香りの高いタムシバが用いられるように なった。モクレン、ハクモクレンともに観賞用に栽培されるため、花のつぼみを採取することは好ましくない。

採取時期と調整法:薬用のためには春早く、花のつぼみを採取 し、陰干しにする。なるべく風通しのよいところで乾燥させる。

成分:花のつぼみには芳香成分が含まれ、チネオール、シトラー ル、オイゲノールのほか、根にはマグノクロリン、根皮にザリチフォリンを含むことが報告されている。最近(1981年)、日本生薬学会で、名古星市立大学薬学部伊藤一男教授らによって、ネオリグナンの新化合物ブルセリンの発表があった。

薬効と用い方:
蓄膿症、鼻炎に:
葛根湯(市販品のせんじて使用するものを購入、エキス剤、粉剤、錠剤でないものがよい)によく乾燥したつぼみを1日分として5〜10 g加えて、せんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8380 モッコクとは 関東以西、四国、九州、沖縄に自生する常緑高木。台湾、済州島、中国、東南アジアに分布する。暖地の海岸に自生するものが多く、また庭木として普通に見られる。  高さ1.5mに伸び、樹皮は灰褐色、枝は灰赤褐色で、2〜3本に分枝する。葉は革質で厚く、長楕円状倒卵形、毛はなくて全縁。 赤みを帯びた葉柄で互生する。花は6〜7月、新しく伸びた枝の下部に、長い花柄の先に白色5弁花が下向きに咲き、芳香がある。がく片5.雄しべ多数。

名前の由来:芳香のあるキク科の多年草で、インド産のモッコウ(木香)とまちがって、モッコウをモッコクと呼んでしまったの ではないかという説がある。中国名は厚皮香(こうひこう)と書き、わが国では木斛 (もっこく) と書く。樹形がよいので、古くから庭木に植えるが、縁起をかつぐ人は、これにセンリョウ、マンリョウを加え、さらにアリ ドオシを添えて庭作りをする。千両、万両のお金が木の斛 (ます) でかき 集められ、お金が何時も有通(ありどおし)という、恵比須顔のおめでたい樹 木である。

採取時期と調整法:樹皮は夏期、土用のころに採取するのがよ い。葉は必要時に採取し、樹皮も葉も日干しにする。

成分:樹皮にはタンニンを含み、材部にはサポニンの一種、種子には脂肪油、ヒドロオキシエリスロジオールを含むことが知られている。葉の成分については精査されていない。  

薬効と用い方:
痔に:
乾燥葉1回量5〜10gを水600ccで1/3にせんじ、服用する。
食あたりに:乾燥した樹皮は1回量3〜6gを水400ccで1/2にせんじて、服用する。
染料に:樹皮を煮出し、硫酸第一銭を媒染剤に、天然繊維、特に絹、羊毛などが褐色によく染まる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8381 ヤマシャクヤクとは 北海道(石狩、十勝以南)、本州、四国、九州などの山地の樹陰下に自生する多年草。朝鮮半島に分布。根茎は横に伸びて短 く、多数の太いい根を出す。茎は30〜50cmに伸び、葉は2回3出複葉で茎に3〜4個出る。葉の下面は白みを帯びた緑色、上面は光 沢のない緑色。花は5〜6月、茎頂に1個のみつける。花の径4〜5cm、がく3枚、花弁は白色で5〜7枚。雄しべは多数、雌し べは2〜4個、果実は大きい袋果を3〜5個生ず。

名前の由来:山に自生するシャクヤクということでつけられた。

類似植物ベニバナヤマシャクヤク:似たものに北海道、本州、四 国、九州に自生するほか、朝鮮半島、中国(東北地区)に分布す るベニバナヤマシャクヤクがある。ヤマシャクヤクによく似る が、花弁が淡紅色、雌しべの先端柱頭が、著しく長く伸び、外側に渦巻き状に曲がっている。ヤマシャクヤクは、多少外に曲がる が、渦巻きにはならない。葉の下面が有毛であるが、無毛のものを特にケナシベニバナヤマシャクヤクとして区別する。

シャクヤクとの区別:ヤマシャクヤクの小葉は中軸と離れ、中軸にひれ状のものはなく、葉の下面は粉白色で、花は半開球状に咲 く。これに対してシャクヤクの小葉は中軸に沿うようにひれ状物 がつき、葉の下面の白みがなく、花は展開するように開く。

田舎芍薬:丹波、伊勢の山中自生の根を乾かしたもの、また、木曾のものは蒸しやわらげて伸ばして乾かしたものが田舎芍薬とし て薬舗に出ると、『日本産物志』(1872年)に見えている。

採取時期と調整法:9月中に根を掘り、水洗い後刻んで日干しに。

成分:未精査だが、シャクヤクの根と、近縁の成分があるのではないかと見られている。

薬効と用い方:
鎮痛に:
腹痛の時に1日量5gを水400ccで1/2量に煎じ服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8382 ジロボエンゴサクとは 関東以西、四国、九州に自生。台湾、中国に分布。山林や原野に見られる軟弱な多年草で、花茎5〜15cmに伸び、地下に丸形ま たは不定形の小さな塊根がある。この塊根から春になると数本の花茎と根出葉を伸ばす。根出葉は2回に分裂、小葉は深く2〜3 裂し、裂片は倒卵形か倒披針形。4〜5月に開花し、紅紫色の花 が一方に向き、総状花序につく。花の長さは1.5〜2cm。果実は長 さ2mmほどの朔果を結び、種子は黒色で球形、表面に微細な突起がある。

名前の由来:次郎坊延胡索の意味である。スミレを太郎坊に例え、この草を次郎坊に見立てて、両方の花を互いにひっかけて引 き、早く切れたほうが負け。この小児の草木遊びからジロボエン ゴサクの名になったと、小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1803年)に記している。また、それによると、勢州粥見にてこの花を次郎坊というのが始まりとある。現在の三重県飯南郡飯南町で、当時の粥見は宿場町として発達していた。エンゴサクは古く中国から延胡索の漢名で輸入されていた漢薬を日本読みにしたもの。

類似植物:ジロボエンゴサクはケシ科のキケマン属(コリグリス)に所属。この属には地下に塊根のあるものと、初めから塊根のできないものとに、大きく区別できるが、塊根を薬用にするものとしては、このほかにエゾエンゴサク、ヤマエンゴサク、ミチノクエンゴサクなどがある。

採取時期と調整法:4〜5月、塊根のみを掘りとり、水洗い後、 日干しにする。

成分:アルカロイドのコリダリン、プロトピンを含み、これらは鎮痛、鎮痙作用がある。

薬効と用い方:
月経痛、腹痛などの鎮痛に:
1日量2〜5gを水400ccで1/2量に煎じ、3回に分服する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8383 ハナイカダとは 北海道(西南部)、本州、四国、九州の各地山地の木陰に自生する雌雄異株の落葉低木。中国に分布。高さ約2mで、枝を多く出して小枝は緑色、葉は長い葉柄によ って互生し、縁に細い鋸歯があり、先端は細くとがる。花は5月ごろ、葉の表面中央に短柄のある緑色花をつける。雄花は花弁3 〜4枚、雄しべ3〜4個、雌花は花弁3〜4枚。果実は球形、初め緑色、9月ごろに成熟すると黒くなる。

名前の由来:葉の表面中央に花をつけ、花後は黒い果実ができ、 この葉をいかだ、果実を船頭に見立てて花筏(はないかだ)となった。中国では青莢葉、または葉上珠と書く。

山菜として利用:春になるべく若葉を採取し各種ハナイカダ料理の材料に用いる。古くからこの葉をつくだ煮として利用していたのは、富士山麓の須走(すばしり)にある旅館であった。貝原益軒著の『大和本草』(1708年)の巻十三・雑木類にツキデノ木として、ハナイカダについて次のような記載がある(原文を読みやすくした)。「ツキ デノキ、潅木なり、葉はチシヤの木より細軟なり、食ふべし、美味なり、冬は葉脱つ、木皮緑色、西土深山中にこれあり」これでみると、各地で山菜として食用にしていたことがわかる。

松茸の香りがする:葉を煮るとき、松茸に似た香りが出てくる。生の葉には香りはない。

採取時期と調整法:晩春から夏に、葉または果実つきの葉を採取 し、水洗い後、日干しとする。

成分:まだ精査されていない。果実は熟すと甘みが強い。

薬効と用い方:
下痢止めに:
1回に乾燥葉約5gを水400〜600ccから1/2量に煎じ服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8384 ミツバウツギとは 北海道、本州、四国、九州の山野に自生する落葉低木。朝鮮半島、中国に分布。灰褐色の枝をこまかく出し、葉は3出複葉で枝の節ごとに対生する。葉の縁には鋸歯があり、卵状楕円形で、先はとがる。花は5〜6月、枝先に白色5弁花を開く。がく片5個は花弁とほぼ同形で白色。そのため10花弁のように見え、半開きの状態に咲く。雄しべ5個、雌しべは1個でのち花柱は2個に分 かれる。果実は2室で扁平の軍配状になる。

名前の由来:ウツギ(ユキノシタ科)の仲間でないが、花が似ていることや、葉が三つに分かれていることなどからこの名となっ た。別名のコメノキ、コメゴメは、米の木、米米を意味する。春先に若葉をつみ、水洗い後、日干しにしてよく乾燥させて保存しておき、必要時にこれをゆでてしぼり、炊きたてのごはんにまぜる。このことから別名となった。また、ハシノキは、この材で箸を作ることに由来する。この材は縦に割れやすく、質がかたいの で、箸のほか、木釘を作ることもある。

木曾方言は『和名抄』から?:『和名抄』(932年)に「荊(けい)」につい て、「これは奈木江乃木(なまえのき)という和名で木の名である」という短文がある。白井光太郎著『樹木和名考』(1932年)では、ミツバウツギ の項でこれにふれ、木曾方言ナマエノキや日光方言ナンマイダは 『和名抄』の荊の植物名の名残りではないかとしている。

漢名は省沽油:中国ではミツバウツギを省沽油と書き、東北地区に多く、種子の脂肪油はせっけん、ペンキの原料に使われる。

採取時期と調整法:初秋に果実をとり、日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
下痢止めに:
1日量に乾燥した果実5〜10gを水400〜600ccで1/2量に煎じ服用する。
消炎に:打撲傷のときにせんじた汁で患部を湿布する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8385 クワズイモとは 四国南部、九州南部、沖縄に自生する大形多年草。台湾、中国南部、マレーシア、ポリネシア、インドに分布。根茎は太く、葉は長柄に盾形につき、基部は矢じり形で、先端はとがる。花期は 5〜8月。太いい花柄の先端に長さ8〜16cmの黄緑色の苞がつき、 この中に棒状に伸びて肉質に太くなった花茎が立ち、その下部に多数の花被のない裸出した雌花がついている。苞の下半分は筒状、上半分は舟形に開いていて、裸の雌花は筒状の中にあるため外からは見えない。雌花の上部には花被のない中性花と雄性花の集まったものがついている。  

名前の由来:サトイモに似ているが、これは食用にならない。食べられない芋という意味でこの名となった。

中国名は海芋:中国の明時代の李時珍著『本草綱目』(1590年)に海芋が記載され、腫物や熱病に用いると記されている。わが国の本草家のうち、京都に住んでいた小野蘭山は、実物を見ていないら しく、『本草綱目啓蒙』(1803年)で海芋をミズバショウとしている。 山本亡羊は『百品考』巻上(1838年)で海芋の和名をマンシウとし、 薩摩にはこれに類したクワズイモがあると記し、さらに飯沼慾斎 は『草木図説』(1862年)に、実物からクワズイモを描写したと見られる図をのせている。

採取時期と調整法:必要時に葉柄を採取し、生のままを用いる。

成分:シュウ酸カルシウム、フィトステロール様物質、果糖、ブ ドウ糖のほかに根茎には約3%のデンプンを含む。

薬効と用い方:
切り傷に:
新しく採取した葉柄の切り口を火にあぶり、泡が出てくるようになったところで、その切りロを傷口に当てる。沖縄地方での民間療法(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8386 フクギとは 原産地はアジアの熱帯地方で、古い時代に沖縄に渡来したものであろう。沖縄各島では人家周辺に防風垣として植えられている。雌雄異株の常緑高木で、20mにも達する。若枝は4稜で緑色、短毛が生える。葉は厚く光沢があって革質、卵状楕円形で先は丸みがあって対生。花は5〜7月に黄白色花を開き、葉腋に出る短い柄の上に束生する。果実は球形の石果を結んで黄熟し、径 2.5cmほどで柿に似ているが食べられない。台湾にはラクギより低木のタイワンフクギが自生しており、フクギは産しない。

名前の由来:フクギは福木、または福樹であるが、語源は不明。 フクギの名は、沖縄諸島から発生したものであろう。現在沖縄各島で、フクジ、フクンまたはプクイキの方言で呼ばれている。

防潮、防風林に利用:熱帯性低気圧によるはげしい台風に襲われる沖縄諸島では、フクギは日よけ、防火にも適しているので、家屋の周囲、または海岸に植え、栽培される。主幹は直立に伸び、 常緑の厚い広い葉が密生し、樹木そのものが強固、強靭であるので、このように利用されるようになった。

採取時期と調整法:必要時に樹皮をはぎとり、日干しにする。

成分:樹皮にはフクゲチン、イソフクゲチン、ガルキニンという黄色色素を含んでいる。

用い方:薬用にはしない。
染料に:樹皮を褐色染料に用いる。特に沖縄地方の八重山上布とみんさー織の染色には、フクギのほか石垣、西表(いりおもて)、竹富の諸島に産するもので、クールと呼ばれ、紅露の当て字を書くヤマノイモ科の 塊根を用いている。これは学名Dioscorea cirrhosa Lour.で、和名ソメモノイモ、漢名は薯莨(しょろう)で、中国南部にも産する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8387 スナズルとは 種子島、屋久島、小笠原、沖縄各島の海岸砂地に自生する寄生性つる植物。つるは細長く伸びて、草や低木に絡みつく。葉はな く、花は柄がなくて、直接花茎につく。花は小さく、花被片は6枚で淡黄色、外輪の3枚は小さい。雄しべ9個、3個ずつ3輪に並び、葯は2室で弁裂する。果実は球形、花被が多肉質に発達し て、これに包まれる。熟すると淡黄色となる。  
クスノキ科は、クスノキ、ニッケイなど樹木であるのに、わが国ではこのスナヅルのみが草本である。

名前の由来:生育するところが砂地で、つるになっ ているので、この名となった。

漢名は無根藤:中国では林の中に生える寄生植物で、根のないこのものを無根藤の名で呼び、他の植物に有害なものとしているが、また全草を利尿薬に用いている。

類似植物イトスナヅルとケスナヅル:沖縄諸島にはスナヅルのほかにこれによく似たイトスナヅルがある。茎がより細く、赤みを帯び、花も小さい。茎に褐色の毛が生えて茎も細いのが、ケスナ ヅルである。これらのものを含めたスナヅル類の沖縄方言は、ニーナシカッチヤ(石垣)、アンダカッツア(西表)、二ーナシ力 ンダ(沖縄本島)、ニーナシカジラ(与論)などである。

採取時期と調整法:必要時に採取して、刻んでから水洗いの後、日干しにする。

成分:全草中にアポルフィン型アルカロイドのカッシフィリンを含むことが、京都大学薬学部の研究として、富田真雄教授らによ り「薬学雑誌」第85巻、7号(1965)に発表された。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量5〜10gを水400〜600ccから1/2量に煎じて、服用(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8388 オウバイとは 中国原産の落葉小低木。つる性でがけなどからたれるように栽培したり、盆栽にも広く用いられている。枝が緑色で四角く、細長く伸びて、地面に接するとその部分から発根する。葉は3小葉の複葉で対生する。開花期は2〜3月、花は径約2cmで黄色、6 片に深く裂け、筒状部が長い。がくは深く6裂して緑色。雄しべ 2個は花筒内壁につく。  
果実ができないので、繁殖は挿し木により、新しく伸びた枝を7月に挿す。株分けは3月がよい。

名前の由来:わが国で最初に記録されているのは、三之丞伊藤伊兵衛の『花壇地錦紗』(1695年)で、「黄梅 花形梅花のごとく黄色な り。木はかづらにもあらず、れんぎょうのるい」とある。この 『花壇地錦紗』は元禄8年に出ているので、元禄の初めころには、 中国より渡来して、栽培されるようになったものであろう。  
梅の種類でないが、花が似ていて、黄色であるということから 黄梅の名となった。梅花と違って特有の香りはない。中国の漢名は迎春花。早春、春を迎えるように咲くことからこの名となっ たものであろう。

中国の迎春花の産地:山西、山車両省より以南、雲南省までに分布するが、海抜700〜2550mの高地に自生し、中国でも栽培が盛んで ある。中国でも、わが国の場合と同様に、ほとんど果実を結ばないため、繁殖は挿し木によっている。

採取時期と調整法:春の開花期に花を採取して、水洗い後、日干しにする。

成分:茎葉には、苦味質のジャスミピクリン、配糖体のシリンギン、ジャスミフロリンなど含まれることが知られている。

薬効と用い方:
利尿に:
1日量3〜6gを水400〜600ccから1/2量に煎じ、3回に分服する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8389 キリとは 日本海に浮かぶ韓国の鬱陵島を原産地とする説、中国が原産地で遼東半島より以南に栽培しているという中国説、わが国の九州 に野生地があるので、そこが原産地とするなど、諸説紛々。アジアの東が原産地ということになろう。以前はゴマノハグサ科に所属していたが、いまはノウゼンカズラ科に移った。5月ごろ、まだ葉の出そろわないとき、円錐花序に淡紫色の大形の花多数をつける。花は先が5裂する唇形花冠で、がくは5裂し、質が厚く黄褐色の毛を密生する。雄しべ4個、うち2個は長い。果実はさく果を結び、熟して2裂、膜質の翼を持つ種子多数を生ずる。

名前の由来:『大和本草』(1708年)に「白桐 此木切れば早く長ず故にキリと言う」とあるように、切ったあとから新芽を出して、その生長の早いことからこの名となった。なおこの『大和本草』の白桐は、一般にいう桐で、梧桐はアオキリをさしている。

桐材の広い用途:狂いがない、耐湿、耐乾性で燃えにくい、軽質、木目が白く美しいなどの桐材の性質より、たんすその他の家具材に、木炭は花火の火薬、懐炉灰にと広い用途がある。古くから筑前琵琶や琴の材料にも用いられている。

採取時期と調整法:枝は必要時にとり、細切りして日干し、葉は 6〜8月に採取、水洗い後、日干しに。葉汁は生の葉を用いる。

成分:葉にトリペノイドのウルソール酸、樹皮に配糖体のシリンギン、材部にリグナン類のαーセサミン、パウロウニン、グメ リノールなどを含んでいる。

薬効と用い方:
いぼに:
生の薬の汁を患部に塗る。
やけどに:乾燥葉か枝のせんじ汁で洗う。
利尿に:乾燥葉1日量3〜5gを水400〜600ccから1/2に煎じ服用。
養毛料に:乾燥葉、枝5gを水400ccでせんじた液で毛髪を洗う(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8390 タニウツギとは 北海道から本州の主に日本海側に自生。東京都、千葉、埼玉、神奈川、山梨、 静岡の各県にはない。日の当たる山地に普通にある落葉低木。葉 は卵状楕円形で、表面は短毛を散生、ときに無毛もある。裏面は白毛を密生。短い葉柄で対生する。開花期は5〜6月。その年に伸びた枝の先や葉腋から2〜3個の花をつける。花冠はロート状で淡紅色。外面にはわずかに毛があるか、または無毛。がくは5裂し、先は細くとがる。雄しべ5個は花冠より短い。

名前の由来:谷間に咲くウツギの意味である。形状がハコネウツギに似て、谷間に咲くことからつけられた。ハコネウツギ、タニウツギなどを近畿地方で俗に卯の花とかウツギと呼ぶことから、 何々ウツギと名づけるようになる。一般にいうウツギはユキノシタ科の別の種類である。

類似植物三種:
(1)ハコネウツギ:
箱根にはなく、海岸に生え、葉の裏は毛がほとんどないので白くなくて、葉質は厚く、上面には光沢がある。
(2)ニシキウツギ:太平洋側の各地に生え、花は白色より紅色に変化、葉は革質で光沢なく、下面脈上に短毛がある。
(3)ヤブウツギ:東海地方から四国までの各地にあり、日本海側にはない。花冠外側には毛を密生し紅色で、色は変わらず、葉の上、下面に毛が密生する。

取時期と調整法:開花前の若葉をとり、水洗後、日干しに。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
健康茶に:
日干しにした葉を水に浸してから、約10分間蒸したのち、日干しにして乾燥させて保存する。これを煮立てて飲む。
食用に:乾燥葉を砕き、上と同様に水に浸して蒸してから、よく しぼり、炊きたてのごはんに食塩少々とまぜてウツギ飯にする(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8391 カツラとは 北海道、本州、四国、九州の山地で渓流に沿って自生する、わが国特産の雌雄異株の落葉高木。老木の樹皮は浅く裂けて、薄片状にはげ落ちる。葉は広卵形で先はほぼ円形、基部は心臓形で、縁に浅い鋸歯があり、裏面は帯白色。葉柄は長さ1〜3cmで、対生する。葉がまだ出ない4〜5月に開花。
雌花は2〜6個の雌しべからなり、紅く糸状に突き出して見えるのが花柱である。花弁、がく片ともなく、小さい膜質の苞から雌しべが出ている。雄花も花弁、がく片がなく、小形の膜質の苞より多数の雄しべが出て、葯は紅紫色である。

類似植物ヒロハカツラ:カツラは樹皮が若い木から裂けるが、ヒロハカツラはわが国中部以北に自生し、老木になって樹皮が裂け、葉の基部は、より深く切れ込んでいる。

名前の由来:『牧野新日本植物図鑑』(1977年)には「カツラのカツは香出(かづ)であろうと言われる。そうだとすると香気のある木でなければならない。この樹に香りがあるという人もいるが、どうであろうか」と記してある。確かに枝にも樹皮にも葉にも香気はないが、秋に葉が黄変し、淡く紅葉すると、芳香が出てくる。
別名の中には、マッコノキ(抹香の木)、コウノキ(香の木)、オコウノキ(お香の木)があって、この樹木が自生する山間地帯で は、秋に葉を粉末にし、抹香に用いていた。カツラは香りを出す 「香出」で、ラは語尾の添え言葉である。

成分:緑の葉をすりつぶしても香りがないのに、紅葉には香りがあることに気づいたのは、近畿大学の高石清和教授であった。紅葉の過程で、新しい物質マルトールが生産されるのを突き止めた。マルトールは甘みと温和な芳香を持つ白い結晶である。

用い方:
芳香料に:
紅葉した葉を粉末にし、食品に無害の天然香スパイスとして用いる(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8392 フサザクラとは 宮城県以南、四国、九州などの山地の渓流沿いに自生するわが国特産の落葉高木。樹皮は灰褐色で、幹の高さは10mに達し枝はよく分枝する。葉は互生し、長い葉柄があって葉身は広卵か扁円形で、先はとがり、基部は卵形、縁はふぞろいの鋭くとがった粗大な鋸歯がある。葉脈は7〜8対で、裏面に脈が突出する。花は 3〜4月、両生花を開き、花弁、がく片がないカツラと同じ裸花。雄しべ8〜18個、葯は暗紅色、雌しべ8?18個。果実は袋果で細い柄があり、その先に扁平な果実の本体があり、翼状で片方の一部がへこんでいる。10月ごろに成熟すると黄褐色になって、裂開する。

名前の由来:花は短い枝の先端より房状に出ることから。別名の タニグワ、サワグワは葉がクワに似て、谷や沢に生えることに由来する。コウヤマンサク、ナツマンサクも、マンサクの葉に似ていることからで、高野山に特別多いというものではない。

シーボルトか世界に発表:シーボルトによる『日本植物詰』(1835年) で世界に最初に発表された。学名のうち、ユープテレアは果実がニレの果実に似ているので「美しいニレ」の意味のギリシア語から、ポリアンドラは多数の雄しべの意である。  
中国とヒマラヤに仲間が二種類ほどあるほかは、他の国では発見されていない。

採取時期と調整法:夏に葉をとり、水洗後、細切りして日干しに、さらによくもんでこまかくする。

成分:葉にはドクダミの花穂にも含まれ、血圧調制作用のあるイ ソクエルチトリン(フラボノイド類)が、また、抗菌性配糖体のユープテロシドA、Bやユープテロゲニンも知られている。

薬効と用い方:
健康茶に:
乾燥葉をお茶がわりにして飲む。 血圧が高いときに降圧効果がある(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8393 ノウゼンカズラとは 中国原産のつる性落葉高木。古い時代に中国から渡来したもの。盛夏のころに咲く花が美しいので、各地に栽培される。つるは節より出る気根(付着根)によって、他の物に寄りかかるように伸びて5〜6mの高さになる。葉は小葉が5〜11個つく奇数羽状複葉で、小葉にはあらい鋸歯があり、対生。7〜8月に開花。 花はロート状で先は5裂して朱橙色。円錐花序につくが、多くは たれ下がって、花は横向きに咲く。がくは5裂。雄しべ4個で、うち2個は長く、柱頭は2裂。わが国では果実を結ばない。

名前の由来:平安時代に出た『本草和名』(918年)、『和名抄』(932年) の両書に凌霄の漢名をあげて、「乃宇世宇(のうせう)」、「農世宇(のせう)」、 「未加也岐(みかやき)」などの和名をあげている。江戸初期の『多識編』 (1631年)には乃宇世宇をあげたあと、いまでは乃宇世牟可豆良(のうせんかずら)というと記している。「ノセウ」または「ノウセウ」の語源はよくわからないが、平安時代のころに、わが国で栽培されていて、江戸時代になってノウゼンカズラの名で呼ばれていたのは確かである。カズラはこの植物がつるになっていることに由来する。

類似植物アメリカノウゼンカズラ:ノウゼンカズラに似たものに、別名コノウゼンカズラで、北米東南部原産のものがある。大正時代の終わりごろ渡来し、観賞用に栽培される。花は朱橙色 で、細長くトランペットに似て、ノウゼンカズラの花より小さ い。葉の下面に毛があるが、ノウゼンカズラにはない。8〜9月 に開花。栽培はノウゼンカズラよりまだ普及していない。

採取時期と調整法:夏の開花期に花を採取し、日干しにする。

成分:まだよく研究されていない。花の蜜が有毒というのは『本草綱目』(1590年)によるもので、科学的根拠のない伝承にすぎない。

薬効と用い方:
利尿、通経に:
1日量として乾燥花約5gを水600ccから1/2量に煎じ、3回に分服(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8394 カナビキソウとは 北海道(南部)から本州、四国、九州、沖縄の路傍、草地など、日のよく当たるところに自生する半寄生の多年草。朝鮮半島、中国、シベリアに分布する。  茎は根元から多くの枝分かれをして、高さ30cmほどになり、葉は線形で互生する。茎葉ともに粉白色で全草無毛。花は4〜6月に開花する。花は葉腋に1個ずつつき、両性花で花被は筒状になり、先端は4〜5裂する。雄しべ5個。花は2個の線形の小苞の上についている。果実は球形で、表面に網状の脈が隆起し、その先端には花披片が残ってくちばし状に突き出している。

名前の由来:金挽草(かなびきそう)の意があろうと考えられるが、語源はよくわ からない。カナビキソウの名は、イチビ(アオイ科)やイカリソウ(メギ科)の別名でもある。中国では、『中国高等植物図鑑』 (1980年)その他の文献にはいずれも百蕊草(ひゃくずいそう)を中国の正名として用いている。

類似植物カマヤリソウ:カナビキソウ属は、カナビキソウとカマヤリソウの二種があって、カマヤリソウは北海道、千島など北部に自生し、中国、朝鮮半島に分布する。果柄は6〜18mmで長く湾曲して立ち、果実の表面は縦線のみで網状脈はない。中国では東北地区に多く急折百蕊草と書く。

採取時期と調整法:初夏に全草を採取して、よく水洗いしたのち に、日干しにする。

成分:まだ精査されていない。

薬効と用い方:
頭のおできに:
大人の1日量に乾燥した全草5〜8gを水200ccで1/2量に煎じ、この汁でおできを洗う。  
古くは、わが国で民間療法に淋病薬として用いられたこともあったがヽ効きめのないことがわかり、自然に使われなくなった(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8395 ギンバイカとは 地中海沿岸地方の原産で、明治の初めにわが国に入った常緑低木。南ヨーロッパ、北アフリカ、中東など、乾燥して気温の高い地方の丘の斜面などでは5mに達する。わが国ではI〜2m。葉は披針形で厚く、革質で対生し、暗緑色で芳香がある。花は5〜 7月に開き、梅に似て白色か、クリーム色。花弁は5個で、長い花柄の先端に上向きに咲く。雄しべは多数で、花弁より長く突出する。果実は液果を結び、青黒色で、表面は蝋様の粉におおわれる。果肉は甘みがあるので生食する。

名前の由来:白い梅の花に似ていることから銀梅花となった。別名のイワイノキ(祝の木)はヨーロッパやアメリカで結婚式の花環に使うことから。ヨーロッパでは古くよりミルテ、ミルトールの名で呼ばれ、花や葉に芳香があるのでスパイスに用いられてき た。学名のミルツスはギリシア語の香料に由来する。コンムニス は、普通の、という意で、ヨーロッパでは珍らしくない一般の樹木ということからつけられた。

明治の初めに渡来:北海道開拓使長官黒田清隆が在任中(明治3 〜7年)に、北海道に入ったのが初めとされている。北海道のような冬の寒い地方での栽培は不適。地中海沿岸の温暖な地方の原産であるので、関東以西でないと無理である。

採取時期と用い方:葉は必要時、花は6月ごろ、果実は夏にそれぞれを採集して、陰干しにする。

成分:葉にはピネン、シネオール、ジペンテンなどの芳香成分を含む。最近、葉にアルブチンという配糖体を含む研究発表があっ た。ツツジ科のコケモモや北欧産ウワウルシの葉には、アルブチ ンが含まれ、尿道防腐薬に用いられている。

用い方:
香辛料(スパイス)に:
肉類、野鳥の料理のスパイスに用いる。(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8396 イジュとは 奄美大島、徳之島、沖縄本島、久米島、石垣島、西表島に自生する常緑高木。台湾、中国南部、インドシナなど東南アジアに広く分有する。  
葉は長楕円形で、先端はとがり、基部はくさび形。革質で厚く、両面とも無毛で、縁には鈍い鋸歯があり葉柄は約2cmの長 さで、枝の先のほうに集まるように互生する。開花期は4〜6 月。がく片は卵状円形で、5片に浅裂する。花弁は白色か淡黄色で、上部は5片に分かれ、基部は合着している。雄しべは多数 で、基部は合着し、花弁のもとにつく。果実は扁円形で、熟すと5裂する。

名前の由来:この樹木の沖縄方言がイジュ、ところによって、イズ、イジュキ、イチョ、イドウーなどとも呼ぶ。古い時代より沖縄地方広く、この樹皮を魚毒として使用している。新鮮な樹皮を砕き、川に流すと魚が浮き上がってくる。これをとって食べるが、人まで中毒するほどの毒性はない。  
イジュの語源は、琉球語の魚と関係があるのではないかと考えられる。魚は琉球語でイユ、その魚をあらわす琉球語の変化過程にイズ、イジュなどがあることなどからすると、この樹木の名も、魚の名と関連するのではないか。魚をとるのに古くから利用 していたのであろうとみられる。

採取時期と調整法:必要時に樹皮を採取し、生のままを使用するのがよい。気温の高い夏の季節には、樹皮がはがれやすい。

成分:毒成分、その他の成分も解明されていない。毒成分が強いので、内服したりすることは危険である。

用い方:
魚毒用に:はぎとった新鮮な樹皮を砕き、小川や沼に投げ入れると魚が浮かび上がってくる。このようにして魚を捕るのに利用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8397 アマチャズルとは 北海道から沖縄まで、各地の山地の樹陰下に、また藪の縁などに自生するつる性多年草で雌雄異株。朝鮮半島、中国、インドシナに分布。つる状の茎は地上をはうか、巻きひげを他の物に絡ませてよじ登るなどして繁殖する。葉は薄く、普通5小葉の複葉であるが、 まれに3小葉や単葉もある。葉の両面には白色の短毛がまばらに生える。花期は8〜9月で、黄緑色花を開く。花冠は深く5裂し、雄花には雄しべ5個、雌花には球形の子房がある。果実は球形で、上半部に横線1本がはち巻き状につき、熟すと黒くなる。葉に甘みがあるが、産地によっては甘みがなく、苦味のあるものがある。

名前の由来:生の葉をなめると甘いので、この名前になった。ツルアマチャは、アマチャヅルにつけられた別名。漢名は紋股藍(こうこらん)で、今日の中国でも用いられている。ほかに七葉胆、小苦薬、小葉五爪龍とも書くが、胆とか小苦など、苦みをあらわす名があって、甘みを意味する名称がないのはどうしてだろうか。

中国での記録:明の時代、呉其濬の編になる『植物名実図考』(1880年) に、『救荒本草』に出ているとして絞股藍をあげて、これははは甘みがある、葉をとってゆでて水に浸してアクをとり、流水中に泡をすすぎ、洗ってきれいにして、油と塩で調理し食用にするとの意で、山菜としての用法を述べている。これでみると中国のアマチャ ヅルの葉も、わが国のもの同様に甘かった。  
中国は広いので、苦いアマチャヅルも一方に生えているのであろうから、小苦薬や七葉胆の名を与えても問題にするものでもないであろう。だが、次のことだけは誤りである。

五葉参は別のもの:わが国で、最近、アマチャヅルの健康茶を発売しているところがあり、この漢名に五葉参をあてているが、これは誤りである。五葉参は中国の四川、雲南の森林地帯にあるつる性の樹木で、ウコギ科のPentapanax Leschenaultii(wight et Arm)Seemを学名とするもので、ウリ科のアマチャヅルとは関係がない。

化学成分研究かブームの引きがね:現在、街の薬局にはアマチャヅルの乾燥したものが、袋詰めになって並んでいて、まさにアマチャ ヅル・ブームである。最近のブームは、路傍の雑草に等しい草の中 から、突拍子もなく、すばらしい成分が発見されたということがきっかけであろう。まさにひょうたんから駒ということだ。  
日本生薬学会第23回年会(1976年)に、当時星薬科大学の永井正博助教授(現在同大学教授)が「アマチャヅルのサポゲニン」の研究発表をされた。それによると、甘みのあるもののみを集めて、甘み成分の本態究明の研究を進めた結果、従来、朝鮮人参の成分として知られていたパナキサジオールを結晶として抽出することに成功された。アマチャヅル成分研究としては、これがわが国最初であったが、翌年、日本生薬学会第24回年会(1977年)で、徳島文理大学の竹本常松教授が「アマチャヅルの成分研究(第1報)新サポニンの構造」を発表以来、昭和58年(1983年)の11報まで研究発表をつづけて、 朝鮮人参と共通する多くの成分を発表した。

津軽地方では洗濯剤:古いころから、青森県下の農山村では、アマチャヅルの全草を刈りとって日干しにし、たらいに水といっしょにこの草を入れて、洗濯物をもみ洗いすると、泡が出て汚れが落ちる。電気洗濯機が普及するまで、この地方では洗濯剤として利用さ れていたが、これこそ無公害の天然洗剤である。

採取時期と調整法:夏に全草をとり、有効成分のサポニンが水に溶出しないようにさっと水洗いしてから、日干しにする。

成分:前出。

薬効と用い方:
朝鮮人参と同効であるかどうかは目下不明。
せき止めに:1回3〜5gを水400〜600ccで半量にせんじて服用する(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8398 エゾウコギとは 北海道(東部)にのみ自生する落葉低木で、森林の樹陰下に生え、木の高さは2mほどに伸びる。サハリン、千島、シベリア、中国北部、朝鮮半島に分布。枝は灰褐色でとげを密生し、長い葉柄の下部にもとげがある。葉は5枚の小葉からなる掌状複葉で、小葉は長倒卵形〜倒卵形で、先端はとがり、基部はくさび形。縁に鋭くとがった鋸歯があり、両面に帯褐色のかたい縮毛が生える。5枚の小葉の柄とその柄が合わせ着くところにも褐色の毛が生える。  
8月ごろ新しく伸びた枝の先に、緑白色の小花を散形花序に開 く。花弁の5枚は卵状三角形でたれ下がってそり返る。がく片は浅 く5裂。果実は9〜10月、黒紫色に成熟し、楕円形で先端に5裂し た花柱が残り、表面は無毛。種子は扁平の三日月形で5個を生ずる。

名前の由来:ウコギに似て、蝦夷(北海道の古名)地にのみ自生することから、この名となった。ハリウコギの別名は、幹に下向きの鋭くとがった刺針が生えることに由来する。

属名の名称変更:大正4年(1915)3月発行、樺太廳・宮部金吾と三宅 勉の共者『樺太植物誌』、昭和12年(1937)6月菅原繁蔵著『樺太の植物』、また昭和15年(1940)3月、菅原繁蔵著『樺太植物誌第三巻』など、樺太(サハリン)の植物を収載した植物誌には、いずれ もエゾウコギの和名をあげ、これに学名Eleutherococcus senticosus Maxim.をあげている。昭和6年(1931)12月発行、牧野富太郎・根本莞爾共著『訂正増補日本植物総覧』はエゾウコギの学名を1898年版 エングラーの植物分類大系によって、学名Acanthopanax senticosus Harmsを用い、従来の学名を旧名とした。これによってエゾウコギに関しては、この学名を用いるようになった。旧学名はギリシア語の黒く、 とげのある果実の意味で、日本流の発音では「エレウテロコククス」となって、発音しにくい。現在世界中で一般に用いられている学名「アカントパナックス」も、ギリシア語のアカンタからで、とげのあるという意味。それに朝鮮人参に関係のあるオタネニ ンジン属のパナックスとの合成語よりなっている。種名の「センチコスウス」はとげの密生したという意である。最近この植物の薬効が話題となっているが、この植物を多くはエレウテロコックスという名称で呼んでいる。これはソ連の文献そのままを直訳したものであろう。およそ50年前に廃棄同様になった旧学名を、今日なお用いるのはよくない。

中国名は:中国では刺五加(しごか)、刺拐棒(しかいぼう)と書く。中国東北区に自生し、開花期は7月、果実は10月で、この根皮は他のウコギ類と同様、生薬名を五加皮としている。中国のエゾウコギは根皮を「舒筋活血、 去風湿」の効果があるとして、筋肉を伸ばして血行をよくし、リウマチなどの痛みをとるのに利用している。

トゲナシエゾウコギ:エゾウコギの産地にあるもので、剌針のない ものをトゲナシエゾウコギという。エゾウコギの品種である。

採取時期と調整法:夏に根の皮だけをとり、水洗いして日干しに。

成分:ソ連保健省・薬事審議会は、1962年にこの根皮の液状エキスを、強壮剤として医療に使用することを承認し、2年後の1964年に生産が開始された。その間、ソ連で成分研究が進み、エレウテロサイ ドといううサポニン配糖体を含むことがわかった。これは薬用人参 に含まれるサポニン成分に類似していて、多くの期待が寄せられている。

薬効と用い方:
強壮、疲労回復に:
根皮を1回量として約5gを水300〜400ccから1/2量に煎じ服用。
健康薬酒に:根皮80g、グラニュー糖150gを35度のホワイトリカー 1gに漬け、冷暗な場所に静かにおいておき、2〜3ヵ月後にこしてから、1回量20〜40ccを限度に服用するとよい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8399 カワラケツメイとは 本州、四国、九州の日当たりのよい原野、川原などに群落する1年草。朝鮮半島、中国東北部に分布する。茎は高さ30〜60ccに伸び、ときに根元から枝分かれし、上部はかたい短毛があり、下部は 木質で無毛。茎は内部が充実し、中空ではない。葉は互生し、奇数羽状複葉で、多数の左右不均衡な小葉をつけ、小葉の縁には短毛がある。葉柄上に無柄の黒いいぼ状の腺点がある。8〜10月、葉腋から短い花柄を出し、1〜2個の黄色花を開く。がく片、花弁とも5枚。がく片は披針形で先がとがり、花弁は倒卵形で、5枚とも同じ形。雄しべ4個、花柱は上に向くように曲がってつく。果実は豆果で長さ3〜4cmで扁平、表面には短毛を密生し、縦に裂けて種子8〜11個があらわれる。

名前の由来:川原に生えるケツメイという意味である。ケツメイと は中国生まれの生薬名「決明子(けつめいし)」に由来する。中国古代の薬物書 『神農本草経』に「決明子は主として物が見えないあきめくらの病や、ただれ目や、目のまわりのただれ、目の中に自腹が出る病気、 目が赤く、痛んだり、異常に涙が出て止まらない病気によく、久し く服用すれば精光、軽身」とある。精光は元気、軽身は身の動きが軽快になる意。決明子は緩下、利尿、強壮の効があり、需要の多い生薬である。決明というマメ科の植物の種子が決明子であるが、決明、決明子ともに、外観はカワラケツメイには似ていない。おそらく薬効が決明子の薬効に似ているのでこの和名になったのであろう。

別名さまざま:コウボウチャ(弘法茶)、弘法大師(空海)が茶と しての飲み方を教えたことから。ハマチャ(浜茶)、海岸砂浜に群生することから、マメチャ(豆茶)、夏に採取するとき、さや果の豆がついていることから。ネムチャ(合歓茶)、葉が合歓木の葉に 似ていることから。キツネザサ(狐笹)、語源はわからない。オワリリケツメイ(尾張決明)、尾張(愛知県)地方の方言。このほかにノマメ(野豆)、キジマメ(雉豆)、カワラエンドウ(川原豌豆)、 ノチャマメ(野茶豆)のように全国に広く別名があるのは、カワラケツメイが古くから盛んに利用されたことを物語っている。

中国では豆茶決明:カワラケツメイは中国では東北地区に多く、全草をわが国と同様に茶の代用として飲用する。『中葯大辞典・上冊』 (1977年)には功用主治として「清肝明目、和脾利水」としている。

類似植物クサネム:似たものにクサネムがあり、カワラケツメイが乾燥地に生えるのとは異なり、たんボのあぜ道、川べりなどの湿地に生える。同じマメ科ではあるが、別属のクサネム属になる。茎は中空、花は蝶形花冠、がくが2片に深く裂け、雄しべ5個、さや果の種子は6〜8個で、成熟すると節ごとに離れ落ちる点が異なる。

生薬山扁豆(さんべんず)は別の植物:わが国では古くからカワラケツメイに山扁豆の生薬名をあてる習慣があるが、これは誤りである。山扇豆は、 中国に北アメリカの原産で、学名Cassia mimosoides L.という半灌木状草本が帰化植物になって、広東、広西、雲南地方の路傍や水辺に普通にみられるものである。30〜45cmの高さになり、葉がカワ ラケツメイに似て、黄色花をつけ、雄しべは10個。カワラケツメイの雄しべは4個。中国名は「含羞草決明」で、生薬名を山扁豆と書 く。わが国にこの草は自生していない。

採取時期と調整法:さや果(豆果)が未熟のころの夏に全草をとり、 刻んでから日干しにする。

成分:全草中に少量のアントラキノン類やフラボノール類を含み、 利尿、緩下の効果がある。種子中には脂肪油を含み、ベータ・ジト ステロールも含まれている。

薬効と用い方:
利尿・健康茶に:
1回量として約10gを水400〜600ccで沸騰させてからお茶のように飲む(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。
8400 テングサとは 北海道松前付近から青森県の太平洋岸を南下し、奄美大島に至るまでに広く分布する。暖流の影響を受ける澄んだ海中の岩礁上に生育し、干潮線から20mくらいの深いところにもあるが、普通は5〜 7mの間にある。特に、伊豆半島、伊豆諸島、紀伊半島、室戸岬、 足摺岬など、太平洋の荒波が寄せるところに品質のよいものを産出する。また、日本海側の青森県から山口県までの間でも、良質のテングサが採取されている。 新鮮なものは紅紫色で軟骨質、扁平で、枝の幅は0.5〜2mm、大きさは10〜30cmになる。枝は横断面が菱形か楕円形で、下から密に羽状に分岐し、互生または対生し、さらに小枝を出す。本州中部海岸では、3〜4月に繁殖が進み、5〜6ヵ月で老成期になる。

名前の由来:ところてん(心太)をつくる草がテングサ。古くはトコロテングサと呼んでいたが、いつの間にか、この呼び名の頭の部分のトコロが省略されて、テングサとなった。

ところてん(心太)の歴史:『和名抄』(932年)は大凝菜の漢名をあげ、凝海藻を別名とし、これにコルモハの和名と、一般には心太の2字を用い、これをココロブトと呼ぶと記している。また『延喜式』(927年)には上総と阿波から凝海菜を貢献している記録がある。
この海藻を煮とかしたものを、寒いところに出しておくと凝(こご)り固まる。コルモハは凝る藻のこと。凝海藻、凝海菜の同意味である。  
奈良、平安朝の仏教全盛時代には、テングサを煮とかし、こしてから冷ましてところてんをつくり、精進料理に用いていた。平安時代には心太をココロブトを呼んでいて、太いという言葉は俗に「ふてい」ともいうところから「ココロブテイ」となり、さらに「ココ ロテイ」「トコロテン」と変化したという説がある。

寒天の発見:徳川四代将軍家綱時代の万治元年(1658年)、冬の寒い日 に山城国(京都府)伏見の本陣美濃屋太郎左衛門方へ、江戸への参勤交代の途中の薩摩藩主島津大隅守の一行が泊った。そのときに出 した料理の中に、テングサを煮て作ったところてんがあったが、その残りを美濃屋では屋外に捨てた。ところが、あとになってみると、捨てたものが軽くてがさがさした干物のようになっていた。発明とか発見というものは、ちょっとしたことも見のがさぬことがポイント。主人の太郎左衛門は、捨てたところてんがこのようになったことを知り、これを水に入れて煮たところ、よくとけて、そのまま冷ますと再びところてんになり、しかも、元のところてんより白 く、海藻特有の磯くさいにおいもなくなって、美味であることに気 づいた。その後、いろいろと苦心、研究の結果、寒天の製法を発明 したのである。  
寒天は美濃屋太郎左衛門の発明で、当時は「ところてんの干物」 の名称で販売していたが、宇治の黄柴山万福寺の隠元禅師が「寒天」と命名した。これは江戸時代後半から、世界じゅうに向けて輸出されるようになった。
寒天の製法:テングサを主として、その他の紅藻類の海藻を配合して、水に入れて長時間煮てからろ過し、木製の「舟」と称する浅いバットに流し込んで、煮こごり状に固まったとき、短冊形に切って、早朝、氷点下10度前後の屋外に並べて凍結させる。その後、日中の太陽熱で融解し脱水させ、これを繰り返すと、多孔質の寒天ができ上がる。寒天製造は長野、山梨、岐阜県など、冬期の寒冷地の山間地帯で盛んである。

成分:多糖類のアガロース、アガロペクチンなどからなっている。

用い方:
慢性便秘の緩下剤として用いるほか、細菌培養基、柔軟オブラート、軟膏、坐薬、粘滑薬の医薬品、または原料のほか、食品関係の需要が大きい(伊澤一男著:薬草カラー図鑑より引用)(画像はこちら)。