Namazu: [説明]

        Q&A本文(No6751-6900)

No
Q(お客の質問) A(答え)
6751 バリスムとは バリスムとは不随意運動の一つです。上下肢全体を投げ出すような、または振り回すような大きく激しい不随意運動です。バリスムスは視床下核の脳梗塞や脳出血による障害で反対側の上下肢に起こるものがほとんどです。この場合は自然に消える場合がほとんどですが、ハロペリドール(セレネース)の投与が比較的有効です。
6752 アテトーゼとは アテトーゼとは不随意運動の一つです。手足や頭をゆっくりとくねらせるような動きをする不随意運動です。脳性麻痺や代謝異常などでみられます。アテトーゼ自体は薬物療法による治療効果は乏しく、強い筋肉の緊張を伴う場合にジアゼパム(セルシン)などで筋肉の緊張を軽くさせる程度です。
6753 ジストニアとは ジストニアとは不随意運動の一つです。ジストニアは筋肉の緊張の異常によって異常な姿勢、肢位をとるものをいう。頸部の異常姿勢を示す痙性斜頸や、字を書く時にだけ手に変に力が入り字を書きにくくなる書痙も、局所の特発性ジストニアです。アテトーゼと同様に代謝異常でみられることもあるが、それ以外にパーキンソン病治療薬や抗精神病薬の副作用でみられることもある。トリヘキシフェニジル(アーテン)などで効果がある。
6754 ミオクローヌスとは ミオクローヌスとは不随意運動の一つです。ミオクローヌスは、手足、全身のビクッとする素早い動きのことで、健康な人でも入眠時にみられることがある。代謝異常でみられることが多いが、まれな病気で、亜急性硬化性全脳炎やクロイツフェルト・ヤコブ病ではミオクローヌス自体が主症状でみられる。ミオクローヌスの治療は代謝異常では原疾患の治療でよくなりますが、クロナゼパム(リボトリール)が有効です。
6755 口ジスキネジーとは 口ジスキネジーとは不随意運動の一つです。口をもぐもぐさせたり、舌をペチャペチャさせるような不随意運動です。パーキンソン病治療薬や抗精神病薬の副作用で起こることがある。
6756 フライバーグ病とは/第2ケーラー病とは(ふらいばーぐびょう、だいにけーらーびょう) 繰り返し圧迫力がかかることによって中足骨骨頭部への血行が一時的に障害されて生じる足部骨端症(無腐性壊死)のひとつです。初期治療が大切で、早期より徹底した治療がなされなければ関節変形を来し、疼痛が残りやすいので注意が必要です。
症状:外傷に続発することもあるが原因不明のことが多い。徐々に強くなる足前方の荷重時の痛みで始まる。好発年齢は12〜18歳で、女性は男性より3〜4倍ほど多く、両側例が10%程度にみられる。踏み返しの時に患趾の付け根の関節に疼痛があるため、その部位への荷重を避けた歩き方をします。罹患した中足骨骨頭に一致する疼痛・圧痛・腫脹がみられる。趾の軸方向に力を加えると疼痛を訴える。関節の可動域制限がある。第2中足骨が最も多い傾向にあるが、他の中足骨が罹患する場合もる。
治療:足部骨端症のなかでは、フライバーグ病だけが早期診断・早期治療が重要な病気です。中足骨頭を変形なく治癒することが治療の目的です。そのためには、血行が再開し骨頭が修復されるまで中足骨頭への荷重を避けることが重要です。初期の疼痛が強い時期には、3〜4週間ギプスを巻いて荷重を避ける。その後も、罹患した中足骨頭の除圧のための工夫をした靴敷きを、数年にわたって使用する。踵の高い靴の使用、ランニングや長時間の歩行などは厳禁です。関節に障害を残した例や治療開始が遅れた例では、手術治療も考慮される。
6757 平滑筋肉腫とは(へいかつきんにくしゅ)

比較的めずらしいものですが、近年、悪性線維性組織球腫の一部に平滑筋肉腫が混在しているといわれており、実際は以前考えられていたより多い。平滑筋肉腫全体では、軟部組織より胃や子宮に多く発生します。軟部組織の平滑筋肉腫は、発生する部位から3つのタイプ(後腹膜・腸間膜型、皮膚・皮下型、血管起源型)に分類される。後腹膜(腹部の腹膜の外の部分で、腎臓などがある場所)・腸間膜型が圧倒的に多く、予後も不良です。後腹膜に発生する悪性腫瘍では、平滑筋肉腫が最も多い。血管起源型は大静脈などの大血管に発生する非常にめずらしいものですが。平滑筋肉腫の発生原因は不明。女性に圧倒的に多く、また妊娠した時に発生する場合もあり、女性ホルモンとの関係が推測される。
症状:後腹膜・腸間膜型は60代が発生のピークで、その約3分の2が女性です。腫瘤を自覚することもあり、痛み、体重減少、吐き気、嘔吐などさまざまな症状を伴う。手術でも腫瘍を取りきれないことが多く、死亡率の高い腫瘍です。5年生存率は10〜30%といわれる。皮膚・皮下型は40〜60代に多く発生します。皮膚にできるものと皮下にできるものの二通りがあり、皮膚にできるものは数cmまでの小さいものが多く、皮膚色の変化や潰瘍などを伴う。皮下のものは皮膚の変化はない。
治療:基本的にいずれの平滑筋肉腫も化学療法(抗がん薬)や放射線療法が無効のため、手術が主体となる。皮膚・皮下型は、広範切除(腫瘍をできるだけ広めに正常組織で包むようにして切除する)すればほとんど問題はない。後腹膜・腸間膜型も広範切除が必要ですが、巨大なものが多く、また実際には切除不能のものも多いので、根治が困難な場合が多い。腫瘍を取り残した場合や広範切除ができず腫瘍のみの摘出にとどまった場合は、放射線治療を補助的に行う場合があります。補助的に化学療法を行う施設もあります。近年、分子標的療法といって、がん化している原因となっている部分を選択的に攻撃する薬剤が開発されている。

6758 閉塞隅角緑内障とは(へいそくぐうかくりょくないしょう) 緑内障を発症メカニズムから分けると、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障の2つのタイプがあります。正常な眼では角膜と水晶体の間にある房水が絶えず生成、排出され、そのバランスを保っています。閉塞隅角緑内障は房水の出口にあたる隅角が虹彩によってふさがれることにより排出が困難になり、房水がたまり眼圧が高くなる。
原因:隅角が虹彩によってふさがれてしまう原因としては、解剖学的因子と加齢変化、散瞳孔が広がるような条件があります。解剖学的因子としては前房が浅い、眼軸長(眼球の長さ)が短い(遠視)、角膜直径が小さい、水晶体が厚い、水晶体が前のほうに移動している、などがある。水晶体の変化は加齢変化に伴うものとしても重要で、そのほかの加齢に伴う変化としては縮瞳(瞳孔が小さくなる)がある。散瞳は急性発作(急性閉塞隅角緑内障)の誘発原因として重要です。眼科検査薬である散瞳薬や興奮、暗い所(暗所では瞳孔が広がる)などによって起こる。また、読書やうつ向き作業では水晶体が眼球の前方へ移動することから、急性発作の誘発原因とされる。閉塞隅角緑内障には房水の排出口が軽く閉じたり開いたりを繰り返し、症状が治まったり悪化したりしているうちに排出口が慢性的に閉じてしまい、じわじわ眼圧が上がる慢性型と、房水の排出口が急にふさがる急性型がある。
6759 急性閉塞隅角緑内障とは(きゅうせいへいそくぐうかくりょくないしょう) 症状:急性発作が起こると、突然眼圧が高くなり、激しい眼の痛みや充血、眼のかすみ(虹視)、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が起こる。頭痛、吐き気などから内科を受診する人もいます。放置しているとひどい場合は失明する。50歳以上の遠視の女性に高頻度でみられる。検査では急激な眼圧上昇(通常は60〜80mmHg)と隅角検査で閉塞隅角、充血や瞳孔の散大を認めます。
治療:治療の第一選択は点滴や内服、点眼による薬物治療とレーザー治療です。薬物でできるだけ眼圧を下げたあと、排出口を閉じている虹彩にレーザーで孔をあけ、通りをよくします。この治療をレーザー虹彩切開術といいます。これは外来で行うことが可能で、入院の必要はない。発作が片眼の場合、予防的に反対の眼にもレーザー治療をする。レーザー治療で眼圧が下がらない場合や、レーザー治療が不可能なほど急性発作の程度が強い場合は、眼圧を下げる薬物治療や手術が必要にる。
6760 慢性閉塞隅角緑内障とは(まんせいへいそくぐうかくりょくないしょう) 症状:慢性型は急性型と病気の機序は同じですが、自覚症状のないままに徐々に房水の排出口の閉塞が広範囲に進むことが多く、中期〜末期になってから発見されることが多いす。検査所見としては、中等度の眼圧上昇と、隅角検査で広範囲の隅角閉塞を認めます。急性と慢性の中間型として、軽度の発作を伴う亜急性というタイプもある。
治療:治療は急性型と同様に、レーザー虹彩切開術が第一選択で、それによっても眼圧が下がらない場合は薬物治療や手術が必要です。慢性型は中期〜末期の進行した時点で初めて発見されることも多いことから、手術治療が必要になることが多いという特徴がある。
6761 ヘモグロビン異常症とは(へもぐろびんいじょうしょう) 赤血球に含まれるヘモグロビンはα鎖グロビンとβ鎖グロビンの各2本がヘム(鉄を含んだ色素)と結合した構造です。ヘモグロビン異常症はグロビン鎖の構造異常によるもの(異常ヘモグロビン症)とα鎖β鎖のいずれかの合成障害によるもの(サラセミア)とに大別される。ここでは日本人で問題になる異常ヘモグロビン症のひとつである不安定ヘモグロビン症(ハインツ小体貧血)を取りあげる。不安定ヘモグロビン症はグロビン鎖の異常により構造が不安定なヘモグロビンが形成される。この不安定ヘモグロビンは赤血球内で自動的に酸化しやすくなる傾向(自酸化傾向)が強く、ヘムを脱落・崩壊して尿中へと排出される。一部は赤血球内で変性・沈殿してハインツ小体を形成し、活性酸素を生じて赤血球膜に障害を与え、溶血(赤血球の破壊)を起こす。
症状:多くの場合では小児期に脾腫を伴う慢性的な溶血性貧血として発症する。溶血は赤血球の酸化を促す薬剤や感染症によって悪化する。とくにパルボウイルスB19の初感染(伝染性紅斑=リンゴ病)に際し、本症のような溶血性貧血の患児では一過性無形成発作と呼ばれる急激な貧血・黄疸の進行が認められることがあり、注意が必要です。
治療:溶血発作は感染症とそれに伴う発熱、薬剤が原因となるので、軽い感染症でも注意深く観察することが必要で、非酸化的薬剤で早期に解熱を図る。輸血をしばしば必要とする場合は、鉄過剰症への注意が必要です。
6762 変形性頸椎症とは(へんけいせいけいついしょう ) 頸椎は背骨のうちで首の部分を構成する骨で、7つの椎骨からなる。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、いちばん下が第7頸椎です。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっています。椎間板は椎骨と椎骨の間でクッションのようなはたらきをするが、加齢とともに変性してその弾力性が失われ、クッション作用が弱くなる。その結果、椎骨同士がぶつかったり椎間関節がすり減ったりすると、椎骨は刺激されて骨棘と呼ばれる骨の突出ができたり、椎骨の並びにずれが生じて変形する。これが変形性頸椎症です。
原因:頸椎における年齢的な変化で、その主因は椎間板の変化です。椎間板は車のタイヤのような役割をするが、これが変性を起こすと、タイヤの空気圧が減ったような状態になる。この状態で頸椎にいろいろな運動が負荷されると、その他の部分に生理的範囲を超えた負荷が加わる。
症状:漠然とした、頸部、肩にかけてのこりや疼痛が主な症状です。
治療:変形性頸椎症自体は、とくに心配のない疾患であり、除外診断的な診断です。日常生活に気をつけることで症状はかなり改善される。姿勢を正し、同一姿勢を長時間続けないように気をつける。また、肩や首の筋力アップのための体操を習慣づける。実際には息を吸いながらゆっくり両肩を上げ、息を吐きながら下げる「肩の上げ下げ運動」や、手で頭を押しながら、それに抵抗するように前後左右に頭を倒す「抵抗運動」などの体操を行う。こりや痛みの強い場合は非ステロイド性消炎鎮痛薬や筋弛緩薬、湿布薬などを投与して経過をみる。
6763 変形性股関節症とは(へんけいせいこかんせつしょう) 股関節に対する血液循環が不十分であったり、関節の酷使によって関節軟骨に変性が起こり、軟骨下骨には骨改変が起こって、それらの結果として股関節の変形や破壊が起こった状態です。
原因:特発性のものと続発性のものとに分けられる。特発性のものは解剖学的には正常に発達したのちに、成人になってから発症したものです。続発性の場合の原因疾患には先天性疾患が多く、先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全がある。そのほかペルテス病、大腿骨頭壊死、大腿骨頭すべり症などでも起こります。欧米では特発性股関節症が約50%を占めるのに対し、日本では大多数が続発性股関節症です。その他の要因として、女性の発症が極めて多いことから、遺伝的な因子や、肥満、加齢などが考えられる。
症状:関節滑膜に神経はないが、滑膜に繰り返し刺激が加わると炎症が生じ、疼痛を引き起こす。疼痛は股関節痛とは限らず、臀部痛、大腿部痛、あるいは膝上部痛を訴えることがあり、注意が必要です。疼痛に引き続き筋萎縮が起こり、筋力の低下が認められます。次に関節変形と運動制限が起こり、股関節屈曲拘縮になる。小・中臀筋に機能不全が起こり、歩行が困難になる。
治療:保存的治療と手術的治療とに分かれる。保存的治療はX線所見が認められても、疼痛が軽微であったり、持続時間が短い場合に行う。具体的には体重のコントロール、筋力の強化が中心になります。体重のコントロールは、管理栄養士による食事指導、運動処方によって行う。手術的治療では、臼蓋形成術、寛骨臼回転骨切り術、キアリ骨盤骨切り術、大腿骨骨切り術が多く行われる。股関節形成術、とくに人工関節置換術は60歳以上の末期股関節症の患者さんに多く行われる。近年、人工関節置換術が増えていますが、頻度は少ないものの術後に肺塞栓、血栓性静脈炎、異所性骨化などが起こることがあるので注意が必要です。
6764 変形性骨関節疾患とは(へんけいせいこつかんせつしっかん ) 高齢者の関節痛、腰痛の原因で最も多いものが、変形性関節症と変形性脊椎症です。両者を合わせて変形性骨関節疾患という。これは骨や関節での軟骨や椎間板が変性や摩耗を起こして骨が硬くなったり骨棘(脊椎や関節の骨から出るとげのような骨)ができたりして、全体に変形していくものです。この2つは同じような変化なので、ひとりの患者が変形性関節症と変形性脊椎症を合併する場合が多く、一方で、骨粗鬆症が強い場合は、一般に変形性変化が少ないといわれる。症状を伴わない関節の変形や脊椎の変形は加齢現象であり、治療の必要はありません。逆に、痛みが強かったり、関節の動きが悪いなどの機能障害がある場合は、整形外科を受診する。変形性関節症の頻度が多い関節は膝関節、股関節、手の遠位指節関節(指先の関節)です。また、変形性脊椎症は頸椎と腰椎に多く、胸椎は肋骨の支えがあるために負担が軽く、変形性の変化が起きにくい。
6765 変形性頸椎症とは(へんけいせいけいついしょう) 成人の頭は5〜7kgと重く、これに加えて両側の上肢の重さも頸椎にかかり、頸椎は寝ている時以外はかなり大きな負担を強いられていることになる。変形性頸椎症はこうした負担に耐えている頸椎が、徐々に傷んでくる状態です。椎間板変性、椎体の骨硬化、骨棘形成(骨の出っ張り)、黄色靭帯の肥厚などがその本体で、それらをまとめて変形性変化と呼ぶ。頸椎が変形性変化を起こすこと自体は、自然な加齢に伴う変化です。しかし、これに伴い頸部の痛みや肩こりが起こることがある。こうした症状が続く時は、整形外科でX線検査をするとよい。X線写真では、変形性変化の進み具合がわかる。
治療:温熱療法や牽引療法などの理学療法、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などの薬物療法を主に行う。
6766 頸椎症性脊髄症とは/頸椎症性神経根症とは((けいついしょうせいせきずいしょう、けいついしょうせいしんけいこんしょう) 変形性頸椎症に伴い、はれあがったり飛び出したりした椎間板、骨棘や肥厚した黄色靭帯によって、神経圧迫の症状が出る。脊髄が圧迫される場合を頸椎症性脊髄症、神経根(脊髄から出る神経の枝の付け根)が圧迫される場合を頸椎症性神経根症という。頸椎のレベルで脊髄が圧迫されると、手がしびれる、字を書いたりはしを使ったりという手の細かい動作がうまくできない、歩く時にふらつく、足がしびれるといった症状がみられます。進行すると手足の知覚が鈍くなったり、ふらついて歩けなくなったり、膀胱の障害が現れることもある。また、神経根の圧迫でも、肩から手にかけて痛む、手がしびれたり知覚が鈍くなる、手の力が入りにくくなるといったことがある。脊髄症と神経根症とでは、治療法はやや違う。
1)・神経根症の治療:
神経根症は治療をしなくても治る傾向があります。内服薬としてはビタミンB12剤などを使うが、効果は低い。頸椎の牽引は神経根の出口である椎間孔を広くする効果があり、症状の改善につながる。また、頸椎カラーで頸部の安静を保つことも有効です。症状が強い場合、手術を行うこともあるが、保存療法で改善することが多いため、とくに高齢者の場合は手術については慎重に検討する。
2)脊髄症の治療:
脊髄症の場合は、自然経過での改善はあまり期待できない。また、脊髄は脳と同じで神経細胞と神経線維の両方があるため、一度傷んでしまうと改善しにくい性質がある。脊髄症が原因で手が思うように動かない、ふらついて歩けないなどの症状が生じた場合は、できるだけ早期に治療を始める必要がある。  頸椎の牽引はあまり効果がないが、頸椎カラーは1カ月ほど装着すると症状が改善することが多い。一方、薬剤はあまり効果がない。症状が6カ月以上続くと改善の見込みが低い。したがって、歩行困難や膀胱障害などの強い症状が出る場合や、急激に症状が進んでいく場合などは、全身状態が許せば手術がとなる。手術は脊髄の通り道を広くする脊柱管拡大術がよく行われています。  ほかに頸椎で神経の圧迫を来す疾患には、頸椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症などがある。
6767 変形性足関節症とは(へんけいせいそくかんせつしょう) 変形性関節症は関節の軟骨が破壊され退行性変化が起こった状態です。足関節は体重がかかる関節ですが、膝関節、股関節に比べて変形性関節症が少ない。
原因:原因が明らかでない一次性のものはまれで、足関節脱臼骨折後の関節面の不適合や、靭帯の損傷による足関節の不安定症、化膿性関節炎後などに続いて起こる二次性のものが多いと。また、小児麻痺、脳性麻痺による麻痺足や、ほかの関節を固定することによるストレスでも発症するといわれる。
症状:痛みやはれが主な症状ですが、それに伴って関節に水がたまったり関節の動きが悪くなることがある。初期の症状として多くみられるのは、長時間の歩行や運動後に起こる痛みです。その後、徐々に足関節のはれや動きが悪くなる。最後には痛みのために歩行や正座ができなくなる。
治療:保存療法はサポーターや弾性包帯による足関節の安静と局所の温熱療法、消炎鎮痛薬の内服、湿布を行う。症状が強い場合にはステロイド薬の関節内注入を行う。二次性変形性関節症の初期は原因疾患に対する治療を行う。進行している患者は変形性関節症そのものに対して関節固定術を行う。また、逆側の足などがすでに固定されていたり、隣接する関節が固定されている場合は、人工関節置換術を考慮する。
6768 変形性肘関節症とは(へんけいせいちゅうかんせつしょう) 肘関節の軟骨が変性したために起こる退行性疾患です。変形性関節症のうち、肘での発生率は1・2%といわれています。 原因がはっきりしない加齢に伴う退行性変化は、一次性変形性肘関節症といわれる。二次性のものは、関節内骨折や靭帯損傷など大きな外力が加わったあとなどに起こる。また野球などのスポーツで生じた障害や、振動機械などによる損傷でも生じることが多い。
症状:多くは運動痛ですが、尺骨神経麻痺などの症状も現れます。
治療:関節症が軽い時期には、保存的に治療する。保存療法の効果がなく、関節可動域制限(関節の動きが悪い)や尺骨神経麻痺が明らかな場合は手術を考える。保存療法には理学療法と薬物療法がある。薬物療法には内服薬のほかに、関節局所の湿布や関節内注射がある。手術療法には次のものがあります。
1)肘部管症候群:
尺骨神経をしめつけている場合は、オズボーン靭帯の切離と上腕骨内側顆部切除術を併用して行う。
2)橈骨頭切除術  
橈骨頭骨折ののちに前腕の動きが制限され、日常生活活動が不自由になった場合には、橈骨頭切除術が必要になる。
3)関節形成術  
関節可動域制限の改善を目的として、積極的な病巣清掃を行う手術です。関節内の遊離体を摘出し、骨棘や炎症滑膜も切除します。
4)人工関節置換術
最近、上腕骨と尺骨とが別々になった人工関節置換術の開発が進んでいる。
6769 片側顔面けいれんとは(へんそくがんめんけいれん) 顔面神経麻痺では眼のまわりや口のまわりの筋肉(表情筋)が動かなくなるが、これとは逆に表情筋が自分の意思とは関係なくピクピク動いてしまう病気です。片側の眼のまわりの軽いピクピクした動きから始まり、次第に額、口へと広がる。また緊張するとけいれんが強くなる。中高年の女性に多くみられる。脳の血管により顔面神経が圧迫されて生じることが多く、顔面神経麻痺とは病気の原因が異なる。一方、末梢性顔面神経麻痺の後遺症として顔面けいれんが生じることもある。
治療:症状が軽い場合は精神安定薬や抗けいれん薬などによる内服治療が行われる。心身の安静も大切です。薬の内服で改善がなく、症状が悪化する場合は、手術療法(血管による神経の圧迫を除く手術で、脳外科で行われる)やボツリヌス毒素の注射(筋肉の動きをブロックすることによりけいれんを抑える)が行われる。病状に合わせて治療法を選択することになるので、脳外科、神経内科専門医を受診する。末梢性顔面神経麻痺の後遺症の場合はボツリヌス毒素の注射が有効です。耳鼻咽喉科、神経内科専門医を受診する。
6770 放射線肺炎とは(ほうしゃせんはいえん)

肺がん、食道がん、乳がん、胸壁に発生したがんなどの治療のため、やむなく正常な肺に放射線を照射することが避けられないことがある。放射線肺炎は、この治療として行われる放射線照射で肺に間質性肺炎を起こし、さらに線維症を起こす病気です。放射線が照射されている部分のみに起こるものと、照射部位から離れたところにもできる2つの病態がある。
原因: 直接肺に当たる放射線量が約40Gy(グレイ)以上になると現れる頻度がさらに高率になる。過去に照射歴がある場合、同一部位に放射線照射を行うと本症の発症率はさらに高くなります。また、がんに対する化学療法薬(ブレオマイシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ブスルファン、ビンクリスチン、シクロホスファミドなど多数あり)の併用により、放射線肺炎を発症する率が高くなる。とくに、放射線照射と同時に服用しているとより高率になる。
症状:放射線照射後、すぐ現れず、1〜3カ月後に現れることが多い。早期では無症状ですが、発熱、咳、呼吸が速くなるなどの症状がゆっくり現れる。
治療:軽症であれば、自然に軽快することが期待できます。重症になれば、ステロイド薬(メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンなど)が投与される。しかし、これらの治療の効果に疑問を投じる意見もある。そのほかに、アザチオプリンなど免疫抑制薬の投与を行う場合もある。プレドニゾロンで治療した場合は、プレドニゾロンをゆっくり減量することが多く、その減量中に再び放射線肺炎が悪くなることがあるので注意が必要です。進行した放射線肺炎では、呼吸不全に対する治療が必要になる。続いて発症する感染症や、放射線照射を行うことになった原因疾患のがんに対する治療も必要です。

6771 放射線皮膚炎とは(ほうしゃせんひふえん) 放射線照射による皮膚障害です。短期間に過度の放射線を浴びて起こる急性放射線皮膚炎と、少量の放射線を繰り返して浴びたために起こる慢性放射性皮膚炎がある。通常は起こりませんが、悪性腫瘍の治療時や放射線被曝の事故、または仕事で少量の放射線を繰り返し被曝することにより発症します。
症状:放射線は細胞のDNAを傷害し、細胞分裂に対して強い影響を及ぼします。放射線には数種類の性質の異なるものがあり、このため被曝による症状の強さは放射線の種類、強さ、被曝時間などによって異なります。しかし、放射線の種類を問わず、皮膚症状としては同様のものが現れる。短期間に大量に被曝したために起こる急性放射線皮膚炎では、重症度によって現れる症状は異なる。軽症の場合は局所がはれて赤くなり、軽度の痛みを伴う場合があるが、その後、褐色の色素沈着を残して治る。中等症の場合は、受傷3〜6日後に患部がはれて小水疱、びらんが現れ、痛みも強いものとなる。軽快するまでに数カ月を要し、色素沈着や脱毛などの変化を残しやすくなります。重症の場合は、熱傷と同様の症状が現れ、難治性の潰瘍を残す。慢性放射線皮膚炎では、病巣部から皮膚がんが発生することもある。
6772 疱疹状膿痂疹とは(ほうしんじょうのうかしん) 妊娠をきっかけに、うみをもった地図状の赤い発疹が全身に生じる病気です。発熱などの症状を伴うこともあり、膿疱性乾癬のひとつのタイプと考えられる。
原因:妊娠を契機に発病することから、妊娠に伴うホルモンの変化が原因と考えられるが、どのような内分泌的な異常が生じているかは明らかではない。
症状;妊娠5〜6カ月ごろから発病することが多く、初めは腋や股などのこすれやすいところに、うみをもつ赤い発疹が出る。その後、発疹は徐々に拡大して地図状になり、体や上肢、下肢にまで広がる。発熱や関節痛、寒気・震え、悪心・嘔吐、下痢、リンパ節腫脹などの症状を伴う。出産を境に軽快傾向に向かい、出産後6カ月から1年で治療を必要としなくなることが多い。
治療:膿疱性乾癬の場合と同様に、内服薬や点滴が主体になります。妊娠への影響の少ないステロイド薬が使用される。外用薬としてもステロイド薬が多く用いられ、うみが多量に出る場合は肌を保護するためにガーゼをあて包帯をします。ビタミンA類似物質であるレチノイド(チガソン)は催奇形性があるため使用は難しく、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)の内服も、ステロイド薬の内服や点滴の効果がない時に限って使用されるべき薬です。いずれの場合も産婦人科医と相談しながら、母体と胎児の両方に負担の少ないように薬を選ぶ。
6773 抜毛癖とは/トリコチロマニアとは(ばつもうへき、とりこちろまにあ) 自分で毛を引き抜いたり、毛を根元で折ることにより頭部に毛の短い部分が現れる。頭の毛だけではなく眉毛、まつ毛が抜けていることもある。
原因:欲求不満や精神的ストレスが原因になる。多くは小学生、幼稚園児などの小児に現れますが、大人にも発症する。爪を噛んだり、指を吸ったり、チックと呼ばれる周期的に繰り返す筋肉の収縮などが同時に認められることもある。本人が毛を抜いていることを自覚していることもあるが、まったく気づいていないこともある。
症状:境界がはっきりした髪の短い部分が前頭部、側頭部などに認められる。眉毛、まつ毛、腋毛、陰毛に現れることもある。手の届く範囲や、利き手側に多く現れる。脱毛部が類円形の時は円形脱毛症のように見えることがある。毛の先端は折れたように、あるいは引きちぎられたようにざらざらしている。円形脱毛症のように毛が抜けやすくなっていることはない。
治療:自分で毛を抜いていることを指摘することにより脱毛が止まることがある。難治の場合は心理カウンセリングや精神神経科での治療を必要とする。
6774 バルサルバ洞動脈瘤破裂とは(ばるさるばどうどうみゃくりゅうはれつ)

心室中隔欠損症をもつ日本人のなかで、大動脈弁に比較的近い心室中隔(左心室と右心室を隔てる壁)の場所に孔があいている人が30%近くいる。この人たちは、ほかの部位にあいている孔をもつ人たちに比べて、大動脈弁の変形を起こす頻度が高い。心室中隔欠損をとおる血流が大動脈弁を引っ張ることと、もともと大動脈弁を支える組織が弱いことが原因です。大動脈弁の変形は、中隔欠損から右心室方向へ弁が豆粒大に引っ張られることもあれば、中隔欠損をほとんどふさぐほど大きいこともある。長年(通常10年以上)大動脈弁が引っ張られていると、次第に細長い袋状に伸びる。これをバルサルバ洞動脈瘤という。
症状:バルサルバ洞動脈瘤だけでは、なんら症状はない。通常は18歳以上の人で、ある日突然、重い物を持った時や、いきんだ時に、前胸部に激痛が走り、病院で「昔、小さい時に心雑音や心室中隔欠損があるといわれたことはないですか」と聞かれ、「そういえばそうです。もう何年も診てもらっていません」という答えがあれば、典型的なバルサルバ洞動脈瘤破裂です。 治療:手術で動脈瘤の切除を行う。もちろん治療の前には、心筋梗塞、狭心症、大動脈疾患など、ほかの病気を除外する必要がある。聴診器で雑音を聞いたり、心エコー(超音波)で検査すれば本疾患の診断がつく。心室中隔欠損症の患者は医師がフォローアップのための通院を不要と診断するまでは、生涯の通院が必要です。

6775 バレット食道とは(ばれっとしょくどう) 食道は体表の皮膚と同じ扁平上皮という粘膜でおおわれている。その扁平上皮の粘膜が胃の粘膜に似た円柱上皮に置き換わった状態を、その報告者の名前からバレット食道と呼んでいます。
原因:逆流性食道炎が長期的に続くことに起因する。欧米では、食道がんの多くはバレット食道から発生する腺がんであり、バレット食道は腺がんの発生母地として注目される。日本でも、その増加が危惧されている。本来の食道胃接合部(食道壁と胃壁の境界部)から食道側への円柱上皮のはい上がりが3cm未満(SSBE)と3cm以上(LSBE)とに大きく分けます。欧米の報告ではLSBEが多くなっていますが、日本ではSSBEのほうが多くみられます。この理由は、現在のところヘリコバクター・ピロリ(HP)の胃内での感染率の差と説明されている。  症状:逆流性食道炎にみられる胸やけや苦い水が上がるなどを訴える人が多いのですが、まったく無症状の人も多い。とくにLSBEの症例では、まだ証明はされていませんが、酸逆流に対する知覚のメカニズムが荒廃している可能性がある。そのため無症状のままLSBEが継続し、がんが発生・進行して症状が出るまで気づかないというケースがある。
治療:日本では、がん発生の頻度が少ないことから、酸分泌抑制薬の内服だけで経過をみることが多い。
6776 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症とは〈ばんこまいしんたいせいおうしょくぶどうきゅうきんかんせんしょう、新5類〉 バンコマイシン(VCM)耐性黄色ブドウ球菌感染症は、現在までのところ米国で報告された3つの症例のみで、日本ではまだ報告はない。
1)MRSAとバンコマイシン  
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSA)からバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(以下、VRSA)の発生が危惧されていますが、もともとMRSAは健常者に発症することはまれな日和見感染症の原因菌です。手術後の患者やお年寄りなど感染防御機能が低下した患者に感染しやすい。このMRSAは、既存のほぼすべての抗菌薬に耐性を示し、1980年代までは有効な治療方法が少なく、不幸な転帰をもたらした。1991年からグリコペプチド系の抗生剤で、この菌に有効な特効薬とされるバンコマイシンの注射薬が日本でも認可され、広く医療現場で使用されるようになり、MRSAによる感染症は峠を越えたかのように思われました。
2)VRSAの出現  
しかし、すでに1992年には、黄色ブドウ球菌がバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)からその耐性遺伝子を獲得することが実験的に示され、VRSAの出現が臨床的にも危惧された。1997年には、日本でバンコマイシンに低感受性を示す黄色ブドウ球菌の分離が報告され、その後同様な株の報告も国内外で散見されるようになりました。  これらの株はいずれも形態学的には細胞壁の肥厚が観察されますが、その原因となる特定の遺伝子がいまだに特定されていません。それどころか、細胞壁合成に関与する不特定の複数の遺伝子の変調でバンコマイシン低感受性が発現することが、一般的な認識となりつつあります。
2002年になると米国のミシガン州、ペンシルバニア州から相次いで高度なバンコマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌の分離が報告され、2004年にはニューヨーク州でも報告された。これらの菌はいずれも、バンコマイシン耐性腸球菌のもつバンコマイシン耐性遺伝子(vanA)と同じ遺伝子をもっていることが確認されました。 幸いなことにこれらの菌は、感染した患者の家族やほかの患者、医療関係者に伝播されることはなかった。
6777 鼻咽腔血管線維腫とは(びいんくうけっかんせんいしゅ) 鼻の奥にできる良性の腫瘍で、思春期の男児に多く、その他の年齢および女児ではほとんどみられない。頭蓋内にまで進展することがある。
原因:思春期の男児に多くみられることから性ホルモンの関与が疑われる。諸説があり、依然論議の多い。
症状:鼻出血や鼻づまりを訴えて病院を受診する。初めは少量の鼻血でしばらくすると止まるので放置していることが多く、進行してくると出血量も多くなり、鼻血を繰り返す。鼻づまりも著しくなり、さらに大きくなると滲出性中耳炎による難聴や、眼球突出などの顔面の変形を生じる。
治療:手術が第一選択ですが、血液が豊富な腫瘍で、腫瘍が顔面の深部にあるため視野が悪いので、術中の出血を少なくするために血管造影と栄養血管の塞栓術を術前に行う。最近では、内視鏡を補助的に用いて視野の悪さを改善する方法もとられている。ほかに放射線照射やホルモン療法があるが、適応は良性疾患で若年者で、限られた治療法です。
6778 ビオプテリン異常症とは( びおぷてりんいじょうしょう) フェニルケトン尿症の原因はフェニルアラニン水酸化酵素の異常ですが、フェニルアラニン水酸化酵素が正常にはたらくためにはテトラヒドロビオプテリンという物質が必要であることがわかってきた。このような酵素のはたらきを助ける物質のことを補酵素と呼ぶ。ビオプテリン異常症とはビオプテリンの代謝経路の異常によりテトラヒドロビオプテリンが欠乏し、フェニルアラニン水酸化酵素活性が低下する病気です。そのため、フェニルケトン尿症と同様にフェニルアラニンが体内に蓄積する。新生児マススクリーニングでフェニルアラニンが高いために病院を受診し、フェニルケトン尿症が疑われた新生児10人に1人くらいの割合でビオプテリン異常症が発見されている。
症状:フェニルケトン尿症と診断され、低フェニルアラニン食事療法を行っているにもかかわらず、知能障害やけいれんが改善しないのが特徴です。かつては原因がわからなかったので悪性高フェニルアラニン血症と呼ばれていた。
治療:本症はフェニルアラニンが体内に蓄積するだけでなく、脳内で信号や情報を伝える役割をもつ物質(神経伝達物質)が欠乏することがわかっている。そのため、治療にはテトラヒドロビオプテリンを投与するだけでなく、体内で神経伝達物質に変化する薬物を投与することが必要です。
6779 鼻疽とは(びそ) 鼻疽菌(バークホルデリア・マレイ)が病原体で日本には存在しない感染症です。主にウマ、ロバ、ラバなどの奇蹄類の病気ですが、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギなども感染します。ヒトには感染動物の鼻汁、潰瘍部、うみ、粘膜などとの接触によって感染します。モンゴル、中国、インド、フィリピン、インドネシア、イラン、イラクなどで報告がある。
症状の現れ方:感染経路によって皮膚の局所的病変、肺炎、敗血症、あるいはこれらが混合した症状が現れる。局所感染の場合、潜伏期は1〜5日とされている。頭痛、発熱、筋肉痛など非特異的症状が認められますが、そののち全身感染を起こす。 治療の方法 :セフタジジム、イミペネムなどの抗菌薬が有効とされている。治療しない場合には、100%近くの死亡率といわれる。慢性になる場合も知られる。
6780 類鼻疽とは(びるいそ) 類鼻疽菌(バークホルデリア・シュードマレイ)が病原体で日本には存在しない感染症です。熱帯地域の水や土壌に常在している細菌による感染症です。ブタ、ウマ、ヤギ、ウシなど多くの動物に感染します。ヒトには、流行地でのアウトドア活動によって傷ついた皮膚などから感染します。また、汚染した水、食肉などからも感染します。東南アジア、オーストラリア北部などにみられます。鼻疽も類鼻疽も、バイオテロに用いられる可能性が指摘される。
症状の現れ方:いくつかの病型を示します。皮膚における急性の化膿性結節あるいは膿瘍では、リンパ管炎あるいはリンパ節腫脹を伴い、発熱、倦怠感を示し、その後、急速に敗血症へと進む。肺における急性感染では、軽度の気管支炎から致死的な重症の肺炎までと多様です。亜急性ないし慢性に進行する場合もあるが、多臓器に膿瘍を形成し、結核結節との区別が必要です。また、不顕性感染も知られる。潜伏期は数日から数年に及ぶ場合も知られる。健康な人にも感染するが、患者の多くは糖尿病、腎不全などの基礎疾患をもっている。
治療の方法 :セフタジジム、イミペネムなどの抗菌薬が有効とされる。
6781 ビタミンE欠乏症とは(びたみんいーけつぼうしょう) ビタミンEのはたらき:脂溶性ビタミンであるビタミンEには、生体膜に存在する不飽和脂肪酸のフリーラジカルによる過酸化を防止する作用がある。そのために、ビタミンEには抗動脈硬化作用、免疫増強作用や抗がん作用などの健康に有益な作用があると考えられている。ビタミンEの抗酸化作用に伴う抗不妊作用も知られている。
原因:胆汁がたまることなどによる脂肪吸収障害、未熟児の場合や無βリポ蛋白血症によってビタミンEの運搬障害がある場合などの特殊な状況下で、ビタミンE欠乏症がみられる。また、不飽和脂肪酸の過剰投与時に発症したという報告がある。
症状:過酸化脂質が赤血球膜に増えるために溶血性貧血が現れる。神経系の異常として脊髄後索障害(深部感覚低下)、小脳性運動失調、腱反射消失、筋力の低下や多発性ニューロパチーなども知られている。そのほかに、抗酸化作用の低下によると考えられる白内障、不妊や習慣性流産も報告されている。治療:ビタミンEの1日所要量は成人で7〜8mgですが、大量の不飽和脂肪酸を摂取している場合は、より大量の摂取が必要になる。また、無βリポ蛋白血症の場合は、体重1kgあたり100mgの連続投与が必要です。
6782 鼻中隔弯曲症とは(びちゅうかくわんきょくしょう) 鼻中隔は左右の鼻腔を分ける壁で、軟骨と骨で形成されて、これらの両面は鼻の粘膜でおおわれる。この鼻中隔がゆがんで左右のどちらかに突出すると、凸側は鼻腔が狭くなり、凹側は広くなる。そのため、鼻のなかでの空気の流れが影響を受け、鼻づまりが生じる。これが鼻中隔弯曲症です。
原因:鼻中隔は、小児期にはほぼまっすぐです。思春期になると鼻中隔を形成する軟骨が急激に大きくなり、鼻を高くするように発達します。しかし、頭蓋骨や顔面骨はそれほど発達しないため、軟骨がゆがんだり、骨と軟骨の接合部に変形を来す。その結果、鼻中隔は左右のどちらかに突出したような形態をとることになる。その程度は個人によってさまざまですが、女性よりも男性に多いとされる。
症状:最も代表的な症状は鼻づまり(鼻閉)です。一般に、鼻づまりは鼻腔が狭い側(凸側)に強いのですが、広い側(凹側)でも生じることがある。これは、凹側の鼻甲介(鼻腔にある粘膜におおわれた骨の突起)の粘膜が肥厚し、空気のとおりが悪くなるためです。また、鼻中隔弯曲症はいびきの原因にもなります。鼻づまりが高度の場合は睡眠呼吸障害を起こすこともある。さらに、鼻内の気流の乱れのため、粘膜に炎症を起こせば副鼻腔炎や滲出性中耳炎も引き起こすことがある。鼻出血も、凸側の鼻粘膜が吸気で常に刺激を受けるため起こりやすくなる。
治療:鼻中隔弯曲症のため、鼻づまりが高度の場合、いびきや睡眠呼吸障害の原因となる場合、さらに副鼻腔炎や滲出性中耳炎の原因となる場合、あるいはアレルギー性鼻炎を伴ってさらに高度の鼻づまりを引き起こしている場合は、鼻中隔矯正術を行う。これは、曲がっている鼻中隔の軟骨と骨を除去する手術です。その結果、左右の鼻腔の隔壁の一部は粘膜のみとなる。
6783 鼻閉とは(びへい)

鼻閉とは鼻づまりのことで、すべてが病気によるものではない。片側の鼻が数時間で左右交代に起こる鼻閉はネーザルサイクルといわれ、生理的現象です。病的な鼻閉は両側の鼻閉といつも同じ側の鼻がつまっている場合です。
原因:病的な鼻閉には、鼻中隔弯曲症など鼻の骨の構造に原因のある構造的な鼻閉、アレルギー性鼻炎など炎症で鼻粘膜が腫脹(はれる)機能的な鼻閉、鼻腔内の腫瘍やポリープによる器質的な鼻閉がある。さらに、鼻は通っているのに鼻づまりや呼吸困難を自覚する心因的鼻閉や、手術などで鼻のなかが広くなりすぎて抵抗感がまったくなくなった場合の鼻閉感(エンプティーノーズ)もある。逆に、鼻閉感を訴えない人でも、いつも口を開けて口呼吸をしている時は鼻閉があるはずなので、調べる必要がある。鼻以外に原因がある鼻閉感もある。小児では鼻の奥にあるアデノイド(扁桃腺のはれ)が大きいために鼻呼吸ができないことが多く、成人であお向けに寝ると鼻呼吸ができない時は口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合があり、大きないびきや睡眠時無呼吸の原因になる。鼻には、吸い込んだ空気を加温・加湿する役目がある。鼻のなかには甲介骨という数枚の骨が突出して、ちょうどラジエーターの放熱板のように表面積を広くして呼気を加温・加湿しやすくします。とくに、下鼻甲介骨には海綿状静脈洞という分厚い血管網が表面を取り巻き、その表面をさらに粘膜がおおっていて、温かい血液と吸い込んだ空気の間で熱交換することで呼気は温められます。この海綿状静脈洞に自律神経の作用で血液が多く流れ込むと、血管が拡張して粘膜が膨張、鼻の空間が狭くなって鼻閉を感じる。

6784 びまん性軸索損傷とは(びまんせいじくさくそんしょう) 頭部外傷のうち、受傷直後から6時間を超えた意識消失がある場合を、臨床的にびまん性軸索損傷と定義する。通常は、明らかな脳組織の挫滅(脳挫傷)や血腫がない場合に付けられる病名で、意識のない原因を、脳の細胞レベルの損傷が広範囲に生じたためと考えたものです。
原因:頭部に回転性の外力が加わることにより、脳の神経細胞の線維(軸索)が広範囲に断裂し、機能を失うと考えられる。ヘルメットを着用したオートバイ事故のように、頭部に直接の打撲がない場合でも、強く脳が揺れることにより起こる。
症状:受傷直後から意識がない。重症例では脳の深部にある生命維持中枢(脳幹)が直接侵され、呼吸が損なわれたり急死することがある。
治療:効果的な治療法はない。脳挫傷や血腫を合併していれば、それに対する治療を行う。合併症を防いで全身状態を保ち、二次的な脳の障害を予防して(脳への十分な血液や酸素の供給など)、脳の回復を期待する。予後は一般的に昏睡の持続時間に比例する。受傷から24時間以内に意識の回復がなくて脳幹の障害が認められる場合は死亡率が約6割とされ、生命が助かっても意識障害などの後遺症が残る。びまん性軸索損傷は高次機能障害を来しやすく、知能や記憶などの後遺症を残しやすいとされる。
6785 病原性大腸菌食中毒とは(びょうげんせいだいちょうきんしょくちゅうどく) 下痢の原因となる大腸菌は、その病原性の特徴から、いわゆる狭義の腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管凝集性大腸菌などに分類されています。主にこれらに汚染された食品を摂取することで、食中毒を発症します。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6786 腸管出血性大腸菌中毒とは(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきんちゅうどく) 腸管出血性大腸菌(O―157:H7の血清型を示すものが多い)による腸炎は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、繰り返す水様便、さらに著しい血便とともに重い合併症を起こし、死に至るものまでさまざまです。多くの場合3〜5日の潜伏期間をおいて激しい腹痛を伴う頻回の水様便ののちに、血便となる(出血性大腸炎)。さらに、腸管外症状として腎障害を示すことがあり、とくに小児では溶血性尿毒症症候群という危険な合併症を起こして死亡することがあるので注意が必要です。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6787 腸管病原性大腸菌中毒とは(ちょうかんびょうげんせいだいちょうきんちゅうどく) 主な症状は、下痢、腹痛、発熱、嘔吐などで、乳幼児ではしばしば非細菌性胃腸炎や毒素原性大腸菌下痢症よりも重症で、コレラのような脱水症状がみられることがある。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6788 毒素原性大腸菌中毒とは(どくそせいだいちょうきんちゅうどく) 主な症状は下痢であり、嘔吐を伴うことも多いのですが、腹痛は軽度で発熱もまれです。しかし重症例、とくに小児の場合ではコレラと同様に脱水症状に陥ることがあります。  腸管病原性大腸菌と毒素原性大腸菌感染症における潜伏期間は12〜72時間ですが、それより短い場合もあります。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6789 腸管侵入性大腸菌中毒とは(ちょうかんしんにゅうせいだいちょうきんちゅうどく) 主な症状は下痢、発熱、腹痛ですが、重症になると赤痢(せきり)のような血便または粘血便、しぶり腹などがみられ、臨床的に赤痢と区別するのは困難です。潜伏期間は一定しませんが、通常12〜48時間です。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6790 腸管凝集性大腸菌中毒とは(ちょうかんぎょうしゅうせいだいちょうきんちゅうどく) 症状は2週間以上続く持続性の下痢として特徴づけられますが、一般には粘液を含む水様性下痢および腹痛が主で、嘔吐はまれです。腸管出血性大腸菌以外の大腸菌による腸炎は発展途上国でよくみられます。とくに毒素原性大腸菌は、発展途上国への旅行者にみられる下痢症では、最も検出頻度が高い細菌です。
治療:下痢症は、症状、季節、年齢などを考慮して適切に診断し、それに応じた治療を行う。
6791 病的骨折とは(びょうてきこっせつ) 正常な強度をもっていない骨、すなわち病的な状態にある骨は、普通なら骨折を起こさないような軽微な1回の外力によって折れることがある。これを病的骨折という。正常な骨に繰り返し外力が加わって発生する疲労骨折とは、その形態も経過もまったく違う。
原因:病的な状態を起こす原因としては、骨の腫瘍、がんの骨転移、化膿性骨髄炎、骨系統疾患(先天的な骨の病気で、多くは遺伝性)、副甲状腺機能亢進症などの病気もあるが、最も一般的なのは骨粗鬆症です。重い骨粗鬆症になると、つまづいただけで大腿骨頸部骨折を起こすこともあるし、明らかな外傷を受けた覚えもないのに、脊椎が次々に圧迫骨折を起こす例もめずらしくない。なかには階段を上るなどの日常の生活動作において少し脚に力が入っただけで恥骨が折れる例もある。
治療:病的骨折が発生してしまった後の骨折自体の症状や治療は、一般の外傷性骨折と同様です。ただし、病的骨折については原因になっている疾患の治療を併せて行う必要がある。なお、閉経後の女性に多い骨粗鬆症は薬や運動療法でその発生や進行を予防できる可能性の高い疾患なので、閉経後の女性は定期的に骨塩量検査を受けることが肝要です。
6792 鼻漏とは(びろう) 鼻漏とは鼻みず、鼻汁のことで、鼻の粘膜にある分泌腺と杯細胞から出た分泌液と、鼻の血管からにじみ出た血漿成分の合わさったものです。腺からの分泌は副交感神経という自律神経のはたらきで起こる脳を介した神経反射ですが、血管からのにじみ出しはアレルギーの時に出るヒスタミンなどの炎症性のメディエーター(化学伝達物質)の作用です。アレルギー性鼻炎の鼻汁では前者の成分が80%を占める。鼻腺からの分泌液は病的なものでなく、線毛運動という鼻に入ったゴミを取り除く仕組みに不可欠なものです。分泌腺や杯細胞からの分泌液には、さらさらした漿液とねばねばした粘液があり、鼻粘膜の表面を、下が漿液、上が粘液の二層でおおう。鼻に侵入したゴミや花粉などの異物はこの粘液層の上に付着します。鼻の粘膜の細胞には、線毛といわれる毛が生えていてムカデの足のように同じ方向に動き、粘膜層を移動させて、異物をのどに送り、痰として吐き出したり、飲み込んだりします。  
鼻汁が増える疾患には、急性鼻咽頭炎(かぜ)、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)などがある。急性鼻咽頭炎はウイルス感染の場合が多く、くしゃみと鼻汁はウイルスを排泄する反射ともいえる。アレルギー性鼻炎の鼻汁も、抗原を排泄する反射ともいえる。血管運動性鼻炎は高齢者や女性に多い神経性の鼻過敏症です。温かい食事を食べた時に鼻汁が出る場合や、片側だけの鼻汁の増加は、この疾患によるものです。慢性副鼻腔炎では膿性の鼻汁が出ます。
治療:蓄膿以外の鼻汁は神経性分泌が大半なので、抗ヒスタミン薬や抗コリン作用薬が有効です。また、手術で遠心神経切断をすることも有効です。ただ抗コリン作用の強い薬物は、口が渇き、前立腺肥大症や緑内障を悪くする原因になる。鼻汁と鼻閉への対応で最も注意しなければならないのは、鼻のかみすぎです。鼻を強くかむと圧の逃げ場がなくなり、鼻とつながっている中耳や副鼻腔に細菌を押し込み、中耳炎や副鼻腔炎を起こします。鼻閉は粘膜のはれなので、いくら鼻をかんでもよくならない。
6793 ブルセラ症とは/波状熱とは(ぶるせらしょう、はじょうねつ) ブルセラ症はブルセラと命名されたグラム陰性球桿菌を病原体とする感染症で、感染症法では4類感染症に分類される。  この病気は本来、家畜(ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ)などの動物の感染症はヒトにも伝播する「人獣共通感染症」のひとつです。動物にとっては終生持続する慢性疾患で、感染動物では乳汁、尿、胎盤などからブルセラ属菌が濃厚に検出される。この菌は世界中に分布しており、とくに地中海沿岸地方、アラビア半島、インド亜大陸などに多いが、今日の日本での発病者は極めてまれです。ヒトへの感染は感染動物との濃厚な接触、さらに低温殺菌されていない乳製品を摂食することなどで起こる。
症状:ヒトの体内にブルセラ属菌が侵入してから、通常2〜4週間で発病します。急性と慢性があり、症状としては発熱、発汗、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、背部痛、さらにうつ状態などがある。長期間にわたって治療をしなかった場合は、繰り返す発熱が特徴的で、これが波状熱という病名の由来です。
治療:最も基本的な治療法は、抗菌薬(抗生物質)の投与です。 しかし、抗菌薬のなかにはこの感染症に無効なものも多く、また、複数の抗菌薬を計画的に長期間(通常6週間)使い続けることが必要です。しかも再発することが多いため、治療開始前にブルセラ症であることをしっかり診断したうえで、抗菌薬投与を開始する必要がある。
6794 分娩後異常出血とは(ぶんべんごいじょうしゅっけつ) 周産期管理の発達により母体の死亡率は低下したものの、分娩時と分娩後の出血は産後の肺血栓塞栓症とならび死亡原因の上位を占めており、母体死亡の30%にのぼる。ほとんどは予見が困難で、発症すると母体の状態が急激に悪化する可能性がある。
原因:分娩後の異常出血の原因になりうる疾患および病態はさまざまで、また、原因が単独の場合と、重複して存在する場合とがあります。内科的な疾患、とくに血液疾患の合併が原因の異常出血にはより注意が必要です。分娩後の異常出血の主な原因を、次の2分類により示します。
1.分娩後出血発症までの時間による分類
a.早期分娩後出血(分娩後24時間以内):  
弛緩出血、胎盤遺残、産道損傷、子宮破裂、子宮内反、癒着(ゆちゃく)胎盤、先天性凝固障害
b.晩期分娩後出血(分娩後24時間〜6週まで):  
感染、胎盤ポリープ、先天性凝固障害
2.要因部位による分類
a.子宮外の要因による出血:  
血液学的疾患、出血性素因、軟産道の血腫、軟産道裂傷
b.子宮内の要因による出血:
弛緩出血、胎盤遺残、卵膜遺残、子宮内反、子宮破裂、羊水塞栓、産科DIC(播種性血管内凝固症候群)
6795 分娩麻痺とは/腕神経叢麻痺とは(ぶんべんまひ、わんしんけいそうまひ) 分娩時に腕の神経が損傷を受け、麻痺が生じたものです。
原因:腕神経叢は頸髄下部から胸髄上部にかけての脊髄神経根で形成され、そこから腕神経が腕に向かって伸びています。分娩時に頸部が側方に過剰に引き伸ばされることで損傷が起こる。損傷の受け方としては、神経が引き伸ばされたことによるものと、完全に断裂したものとがある。発生頻度は比較的高く、0・2〜0・5%に発生するとされる。
症状:損傷を受けた場所により、上位型(エルブの麻痺)、下位型(クルンプケの麻痺)、全型に分けられる。上位型では肩や肘を動かすことができず、腕全体がだらりとした感じになるが、指を握ることはできます。下位型では肩や肘を動かすことはできますが、指を動かすことができなくなる。全型では肩、肘、指のいずれも動かすことはできない。また、横隔膜神経が近くにあるため、横隔膜の麻痺を伴うことがまれにある。その場合はチアノーゼ、呼吸数の増加、呼吸困難がみられます。
治療:最初の1〜2週間は腕の安静を保つ。そのあと、関節の拘縮(変形して硬くなる)を防ぐためにリハビリテーションを開始します。多くの場合は3〜4カ月で完全に回復しますが、神経の完全断裂によるものでは回復を望めず、手術によって神経を修復することが必要になる。生後3カ月で手首を曲げられない場合、または生後6カ月で肘を曲げられない場合は手術を行うほうがよい。
6796 分離不安障害とは(ぶんりふあんしょうがい) 人は生まれた時から自立した存在ではありません。一般に、母親(またはそれに代わる人)に依存した存在から始まり、乳幼児期から学童期、思春期の成長・発達という段階をへて、やがて母親などの依存対象から分離・自立して大人になる。とくに、乳児期から学童期にかけて、母親などの依存対象者との物理的・心理的分離に伴う不安が現れやすくなる。これを分離不安といい、どのようにこれを克服していくかが、この時期の心の発達課題といわれる。この克服が年齢相応になされていないと、母親(依存対象者)などが不在の時に過剰な分離不安反応を起こし、いろいろな身体的・精神的な症状を示す。このような病的な状態を、分離不安障害という。
症状:この障害が比較的多くみられる幼児期から学童期前半には、分離に伴う不安を直接表現することは少なく、身体症状や問題行動として、間接的な表現をとることが多い。たとえば身体症状は、頭痛、腹痛、吐き気などの自律神経系のものが多く、問題行動は執拗な甘え(時には赤ちゃんがえり)、夜尿、遺尿(日中目を覚ましている時などに無意識に小便をもらすこと)、多動や乱暴行為などがみられる。学童期後半以降は少なくなりますが、時には抑うつ、怒り、無気力などの精神症状が表出して、不登校などの要因になる。
治療:親たちが子どもの不安を理解して、温かく受けとめる対応を根気よく続けるうちに、これらの症状は消失していくことが多い。実際の治療には、年少児には遊戯療法、年長児には認知行動療法などの精神療法が適用されることが多い。必要に応じて、親へのカウンセリングや家族療法なども並行して行われます。さらに、不安が強く症状の重い場合には、抗不安薬などの薬物療法が併用してなされることもある。もともと、分離不安の問題は親子関係の相互作用で形成されるものなので、親の心の安定を確保し、家族内の人間関係の調整を図ることが対応のポイントになる。
6797 ベル麻痺とは(べるまひ)

顔面神経は脳(脳幹部)から出たあと、耳の部分の硬い骨(側頭骨)のなかを通り、頬にある耳下腺を貫き、顔の表情をつくる筋肉に分布する。そのいずれかの部位で顔面神経が侵されると顔面の麻痺(顔面神経麻痺)が起こる。脳梗塞、中耳炎、側頭部の外傷、耳下腺腫瘍などに顔面神経麻痺を伴うことがあります。また、水痘・帯状疱疹ウイルス(みずぼうそうを起こすウイルス)が原因となり顔面神経麻痺が起こる場合がある(ハント症候群)。しかし、顔面神経麻痺の60〜70%は原因不明であり、また脳(中枢)より末梢で麻痺が生じるため、特発性(原因不明の)末梢性顔面神経麻痺、またはこの病気を報告した医師の名前をつけ、ベル麻痺と診断される。
原因:何らかの原因によって側頭骨内の顔面神経に炎症・浮腫が生じ、顔面神経が側頭骨内で圧迫され血流障害を来し麻痺が起こると推定される。ベル麻痺の原因はいまだに不明ですが、最近の研究では、単純ヘルペスウイルス1型が麻痺の発症に関係していることが疑わる。
症状:ある日突然に顔の片側が動かなくなり、顔が曲がります。額のしわが寄せられなくなり、眼が閉じにくくなる。また口から食べ物がもれ、頬をふくらませることができなくなる。麻痺は現れてから1週間以内に悪化することもある。また、耳の後ろやなかの痛みを伴うこともよくある。顔面神経は涙の分泌、味覚、大きな音に対する反射にも関係する。麻痺と同じ側の涙の分泌低下、味覚の低下や物音が響く聴覚過敏になることもある。
治療:薬物療法が中心です。神経の浮腫による側頭骨内での圧迫を除くことを目的として、副腎皮質ステロイド薬を投与することがすすめられる(米国神経学会の治療ガイドライン)。単純ヘルペスウイルス1型が発症に関係していることが疑われており、抗ウイルス薬を投与することも試みられていますが、まだ追加の臨床試験が必要な段階です。涙の分泌低下と閉眼不全に対しては点眼薬を用いる。ベル麻痺は治りやすい病気で、麻痺が軽度であれば1〜2カ月で完全に治ります。麻痺が高度な(まったく動かない)場合、治癒率は80〜90%程度であり、6〜12カ月経過して麻痺が残ったり、まぶたと口がいっしょに動く病的共同運動、けいれんやひきつれなどの後遺症を残す症例も少なからずみられる。

6798 便秘症とは(べんぴしょう) 排便回数が週に3回以下と少なく、排便困難を伴った場合とされる。排便困難とは便が硬いために排便時に痛みを伴い、便に血液がついてしまうようなことをいう。便が硬いこと、残便感、便成分で下着を汚すこと(オムツがとれている子どもで)も症状のひとつです。
原因:習慣性(機能性)便秘がほとんどですが、そのほかにはミルク不足などの食事性や症候性、薬剤性がある。症候性(器質的疾患に伴うもの)のなかには、ヒルシュスプルング病や消化管狭窄などの消化器疾患、筋神経疾患、クレチン症などの内分泌・代謝疾患が含まれますが、頻度としてはごくわずかです。  主に習慣性便秘について説明する。以下はその発生に至る経過です。  
大腸の便が肛門近くまで到達すると、その部分の腸が拡張して神経を刺激し、これにより便意が発生し、排便を促します。しかし、何らかの理由(遊びに夢中、学校でトイレに行きたくないなど)で便意を我慢すると、拡張した腸から伝わる神経の刺激に鈍感になり便意が起きにくくなる。また、水分が吸収されて便が硬くなり、排便すると痛くなるため排便を避けるようになる。この状態が続くと、たまった便によって直腸が広げられてしまい、便が到達してもほとんど便意が生じにくくなる。この悪循環によって習慣性便秘は起こる。
症状:便回数の低下、硬い便のほかに、残便感、遺糞症(便秘にもかかわらず自覚しないで便をもらす)、便成分で下着を汚す、腹痛、腹部膨満、嘔吐、食欲不振などがあげられる。また、尿路感染症を伴うこともある。
治療:基本は悪循環を断ち切り、排便のリズムを取りもどすことです。まず、下剤や浣腸で直腸にたまった便を十分に排便させ、その後も便がたまらないようにする。十分な量の便軟化薬を使用します。ヒトは起床し活動しはじめると、腸運動も活発になります。また、冷たい水分(たとえばオレンジジュース)も腸運動を促進させるので、起床後に冷たいジュースを飲ませて10分後、あるいは朝食後などの決まった時間に、トイレに行かせるように習慣づけるのも効果的です。便器に座ることにより腹圧が生じやすくなり、排便を促進します。大きい子はトイレに10〜15分を限度として座らせます。幼児は暗いトイレを嫌がるので、明るい場所でおまるを使うほうがよい。これを2〜3カ月続けると規則的な排便ができるようになる。食事療法も重要です。野菜や海藻、穀類、コンニャクなどで食物繊維を多く摂取するようにする。
6799 弁膜疾患とは(べんまくしっかん) 心臓には、4つの弁があります。右心房と右心室の間の三尖弁(さんせんべん)、右心室と肺動脈の間の肺動脈弁、左心房と左心室の間の僧帽弁、左心室と大動脈の間の大動脈弁で、それぞれの部位で血液の逆流を防いでいます。これらの弁に何らかの異常が起こった状態を総称して、心臓弁膜症とう。  
従来、成人の心臓弁膜症の原因としては、学童前期にかかったリウマチ熱により、のちに弁の変形を起こすリウマチ性弁膜症が一般的で、時に先天性の奇形のものがあった。しかし近年では、栄養状態や衛生環境の改善、診断法や抗生物質を中心とした治療法の普及により、リウマチ熱や先天性奇形によるものは減少し、加齢による心臓の弁や血管内膜の動脈硬化がもたらす弁の肥厚(厚くなること)、変性、カルシウム沈着による石灰化(硬くなる)が、日本をはじめとする先進諸国の高齢者弁膜症の重要な問題となってきている。
心臓弁膜症の特徴 :病気の原因によって、悪くなる弁や病態(弁の閉まりが悪く血液が逆流する閉鎖不全症、弁の部分が狭くなることを主体とする狭窄症、それらが合併する狭窄兼閉鎖不全症)に特徴がある。成人の先天性奇形では、大動脈弁二尖弁(通常は大動脈弁は3枚の弁からなる)、リウマチ熱では僧帽弁あるいは大動脈弁(ときに両方)の閉鎖不全症、狭窄症が高頻度にみられる。とくに僧帽弁の狭窄症のほとんどは、リウマチ熱によるものが多い。一方、加齢による弁や血管内膜の動脈硬化は、おもに左心系の僧帽弁の閉鎖不全症、大動脈弁の閉鎖不全症あるいは狭窄症を起こします。加齢に伴って、僧帽弁の付着部(弁輪)の石灰化もしばしばみられ、逆流や、まれに狭窄の原因になることがある。高齢者では、心筋梗塞などの虚血性心疾患による弁下部組織の乳頭筋機能不全や、腱索断裂による僧帽弁や三尖弁の閉鎖不全症、さまざまな原因による心不全に伴って右心室や左心室が拡大して三尖弁輪や僧帽弁輪が広がって起こる閉鎖不全症などの二次的なものがある。このほかに、弁や弁下部(僧帽弁や三尖弁の反転を防ぐ腱索、乳頭筋など)の組織が弱くなって起こる弁逸脱症、腱索断裂による閉鎖不全症がある。
6800 膀胱憩室とは(ぼうこうけいしつ) 膀胱の一部が膀胱外に突出したものです。膀胱から尿道口までに、何らかの通過障害があって膀胱内の圧力が高まった時に、膀胱壁の一部に圧力に弱い部位があると、その部分が膀胱外に突出して憩室と呼ばれる状態になる。原因としては、前立腺肥大症、神経因性膀胱などの下部尿路の通過障害によるものが多く、そのほか膀胱損傷の後遺症、膀胱手術の合併症、先天性などがあげられる。
症状:憩室は長期間のうちに徐々に大きくなる。憩室内に尿がたまるため、繰り返す膀胱炎、憩室内の結石、憩室炎などの原因となり、頻尿、排尿時の痛み、尿の混濁、残尿感、下腹部違和感などの症状が出ることがある。また、二段排尿(排尿後、時間がたっていないのにもう一度ある程度の量の排尿があること)がみられることもある。
治療:憩室が小さく自覚症状もなく、膀胱炎、憩室内の結石、憩室炎などの合併症がなければ経過観察する。ある程度の大きさがあるものや、強い症状や合併症のある場合には手術が考慮され、多くの場合は内視鏡で治療する。悪性腫瘍を合併しているものでは開腹手術が必要です。
6801 膀胱頸部硬化症とは(ぼうこうけいぶこうかしょう)

膀胱の出口部(膀胱頸部)が硬くなるために排尿障害を起こす病気で、主に男性にみられる。前立腺の手術後などにみられることがある。まれに、先天性のものや慢性膀胱炎・慢性前立腺炎などの炎症後にもみられる。詳しい機序(仕組み)は、現在のところ解明されていない。
症状:膀胱頸部の膀胱壁が硬く厚くなってこの部分が開きにくくなるため、前立腺肥大症と同様の症状を示す。頻尿や残尿感、尿が出始めるまでの時間が延長したり、出始めてから排尿終了までに時間がかかったりする。しかし、尿がまったく出なくなることはまれです。
治療:内視鏡を用いて経尿道的に狭窄部を広げたり、開腹手術をして広げたりする。

6802 膀胱損傷とは(ぼうこうそんしょう) 外傷による膀胱の損傷は、交通事故、労働災害、スポーツ、手術時の損傷などによって引き起こされる。解剖からみると膀胱は恥骨後面の骨盤内に存在するため、通常は外力を受けにくい状態にある。ただし、膀胱が尿で充満している時には、予期しない外力で容易に膀胱の破裂が生じる。たとえば、泥酔時に下腹部を蹴られたり、転倒時に鈍器にぶつけたりすることで発生します。この時の損傷では、多くの場合、腹腔内に尿の流出がみられる。骨盤の骨折を伴う時には、膀胱の損傷もいろいろな程度で合併しますが、とくに膀胱頸部や後部尿道は断裂しやすい箇所で、注意が必要です。泌尿器科で行う内視鏡操作でもまれに起こることがあるが、医療で多いのは骨盤内の悪性腫瘍手術時です。癒着などで剥離に困難を伴うことがその一因です。
症状:腹腔内に尿が流出する損傷では、自尿や血尿がなくなることで見当がつく。腹膜外の損傷では、強い尿意があるが、排尿ができないうちに下腹部が腫瘤状になることで推定できる。治療:救急処置が必要な重症例では、まずショックの対策や止血などに対する対応を優先する。膀胱壁の損傷が軽微な場合には、尿道カテーテルを留置するのみで損傷部位は閉鎖する。大きな膀胱壁の損傷や腹腔内と交通するタイプでは、外科的な治療が不可欠であり、できるだけ早期に行う。損傷部の膀胱壁は縫合するが、溢流した尿と血液の除去とともに、細菌感染予防のために抗菌薬の投与を行う。
6803 パーキンソン症候群とは(ぱーきんそんしょうこうぐん) パーキンソン病を含むパーキンソニズムを来す病気の総称で、無動、筋固縮、振戦(震え)などがみられる。
原因:多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などの神経変性疾患や、多発脳梗塞や脳炎などでの脳全体の機能障害、一酸化炭素中毒やマンガン中毒などでの大脳基底核の障害、薬剤による副作用などが原因となる。
治療:パーキンソン病治療薬が試されますが、パーキンソン病に対するほどの効果はみられないことがほとんどです。
6804 パンナー病とは/骨端症とは(ぱんなーびょう、こつたんしょう) 肘関節の上腕骨小頭と呼ばれる部位の骨端核(成長軟骨の中心部)の障害です。1927年、パンナーの報告以来、この名前で呼ばれる。5歳ころ〜10代前半に発症するが、非常にめずらしい病気です。男子に圧倒的に多く、右側に発生する患者が多いことにより、外傷やスポーツによる使いすぎも関係するものと思われる。
症状:肘関節の痛みや動きの制限が現れる。
検査と診断:骨端核が次第に破壊されていく特徴的なX線像が認められる。
6805 ポイツ・ジェーガース症候群とは(ぽいつ・じぇーがーすしょうこうぐん) 幼小児期から口唇や口腔粘膜、手足のとくに指趾の先のほうに色素性母斑(ほくろ)が点状に多発する。消化管にポリープの多発(ポリポーシス)が合併していると、この病名を用いる。常染色体優性遺伝です。色素斑はとくに症状がなく経過しますが、ポリポーシスによって慢性の腹痛や便秘、血便などが起きたり、ポリープを巻き込んで腸重積という激しい腹痛が生じ、緊急手術が必要になることもある。口唇周囲の色素斑だけで消化管の変化がないこともあるが、今述べた部位に色素斑が多発している場合は、一度消化管の検査を受けたほうがよい。まれに消化管の悪性腫瘍を合併することがある。
治療:色素斑については見た目の問題が優先される。切除や、レーザーによる治療がある。消化管のポリポーシスは、その程度にもよるが、内視鏡を使って摘出する方法が一般的です。
6806 ポリープ様声帯とは(ぽりーぷようせいたい) 声帯全長にわたり、声帯が浮腫状に腫大した(むくんだようにはれた)状態をいう。声帯ポリープや声帯結節は声帯の一部に限られた病変ですが、ポリープ様声帯では声帯全体が病変になる。多くの場合、両側に生じる。声帯ポリープ様変性と呼ばれることもある。
原因:のどの酷使との関連は指摘されておらず、患者にヘビースモーカーが多いことから、喫煙が原因といわれる。
症状:声がれ(嗄声)以外に、のどの違和感や乾燥感などの症状を示すこともある。
治療:禁煙が大切です。これが達成されるだけでも、声帯のはれが軽度のものであれば治ることある。また、消炎薬の投与やステロイドホルモンの吸入治療が効果を示すこともある。しかし、とくに声帯のはれが中程度から高度なものでは、保存的治療は無効なことが多く、声帯粘膜下の浮腫状組織を取り除く手術を行う。手術は、喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)として行われ、全身麻酔で行うため入院が必要です。また、病理組織検査で悪性化の有無をチェックするので、喉頭がんとの区別も同時に可能になる。この手術のあとには声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間が必要。
6807 マールブルグ出血熱とは(まーるぶるぐしゅっけつねつ) 1967年8月西ドイツのマールブルグ市で、突然、原因不明の熱性疾患が流行した。ワクチン製造のためにウガンダから輸入されたアフリカミドリザルの組織・血液に接触した25人が患者で、7人が死亡した。同じころ、フランクフルト市、旧ユーゴスラビアのベオグラード市でも同様にウガンダから輸入されたサルに接触した人が熱性疾患を発症した。マールブルグ市での患者を含めて合計32人の患者が確認された。これらの患者から原因ウイルスであるマールブルグウイルスが初めて分離された。このウイルスによる出血熱をマールブルグ出血熱と呼ぶ。ヨーロッパでのその流行後には、ケニアとジンバブエで散発的な発生が確認されていただけでしたが、1998〜99年にコンゴ民主共和国で100人以上にのぼる流行が確認された。患者の多くは洞窟に入っていたり、金鉱山で働いていたりしていることなどから、コウモリ、ラットなどの動物が宿主ではないかと推定されていますが、現在でも宿主は不明です。
症状:潜伏期間は3〜10日間です。症状は発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、吐き気・嘔吐、胸痛、腹痛、咽頭痛、下痢、紫斑、吐血、下血、意識障害などです。死亡率は20〜30%です。
治療:エボラ出血熱と同様、マールブルグ出血熱には特異的な治療法はない。安静、ショックに対する治療、輸液・循環の管理などの対症療法が基本です。
6808 埋状歯とは(まいふくし) 歯が生えてくる時期が過ぎても、歯(歯冠)の全部または一部が、歯ぐきの下またはあごの骨のなかに埋まって出てこない状態の歯のことをいう。1歯または数歯が埋伏しているものから、多数歯が同時に埋伏しているものまでさまざまです。
原因:埋伏歯は乳歯の早期脱落や晩期残存、あごの骨の不十分な発育などにより、永久歯の生えてくる場所が不足することで生じる場合がある。また、歯が骨と癒着してしまったり、歯を取り囲む周囲の骨や歯ぐきの肥厚、歯そのものの形や大きさの異常など、正常な萌出を妨げる要因があると、埋伏歯が生じる場合がある。多数の埋伏歯が認められる場合には、遺伝的要素、先天異常、内分泌系疾患、栄養障害などの原因が疑われることもある。
症状:乳歯の埋伏は永久歯のそれと比べて極めて少なく、ほとんどの場合は永久歯に認められる。乳歯では乳臼歯の埋伏が最も多く認められる。永久歯では上下の親知らず(智歯・第三大臼歯)、上あごの前歯および犬歯、小臼歯の順で多く、不正咬合の原因になることも少なくない。一般に埋伏歯は位置や方向の異常を伴うことが多く、その結果、周囲の歯の根を吸収し、動揺を引き起こすなど、さまざまな障害を引き起こす場合があります。また、歯冠の一部が埋伏している場合は、細菌感染が生じやすく、埋伏歯周囲の歯ぐきやあごの骨に炎症を引き起こす場合もある。
治療:埋伏歯の治療としては、噛み合わせや周囲の歯に悪影響を及ぼすおそれがある場合には主に抜歯が選択されるが、それ以外ではそのまま経過観察を続ける場合もある。また外科的に埋伏歯の歯冠の一部を露出させ、矯正装置を用いて口腔内に牽引誘導し、正しい位置に生やす治療を行う。
6809 マラセチア毛包炎とは(まらせちあもうほうえん ) 皮膚の常在菌である癜風菌(マラセチア・ファーファー)が、胞子の形のままで毛包内で増殖するために生じる病気です。  高温、多湿、多汗、不潔などの環境および皮膚の問題が関係し、光に当たったあとに生じることもある。
症状:男女差はなく、青年や中年に多くみられます。好発部位は胸部、背部、肩、上腕などで、毛包のところに小さい比較的均一な紅色丘疹や小膿疱がくっつき合うことなく多発する。かゆみは軽度のことが多い。
治療:癜風菌に抗菌力のある外用薬(主にイミダゾール系)を用いる。治りにくい場合にはイトラコナゾール(イトリゾール)を内服します。また清潔、洗浄、乾燥などのスキンケアも重要です。
6810 マルファン症候群とは(まるふぁんしょうこうぐん) 体のいろいろな臓器をつないだり支えたりしている線維や骨など、結合組織に異常を来す遺伝性の疾患です。背が高くやせており、長い手足と指をもつなどの特徴のある体型を示すが、臨床上問題になるのは大動脈の病変です。血管中膜の線維組織が弱くなっている場合は、血管内の圧力により少しずつ大動脈が拡大して大動脈弁閉鎖不全が生じたり、血管壁に解離が起こって危険な状態になることがある。早期に診断して定期的に検診を行い、症状によっては手術をすすめることがある。
原因:染色体の異常な遺伝子による病気で、常染色体優性遺伝を示す。この遺伝子は体に必要な細かな線維組織をつくるフィブリンという蛋白質の生産を調節するが、ここに異常が起こるため正常な蛋白質を生産できなくなり、線維組織が弱くなる。多くは遺伝で現れるが、約25%は親からではなく、遺伝子の突然変異による。
症状:側弯や亀背(などの背骨の異常、鳩胸や漏斗胸、関節の過可動性(曲がりすぎる)などがよく認めらる。心血管系の病態は重要ですが、無症状の段階で診断されやすいものとしては、大動脈弁を含む大動脈基部の拡大、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全があります。胸背部の激痛がみられた時には大動脈解離を考える必要がある。眼の症状としては水晶体亜脱臼、偏位、近視などがみられる。また、腰椎仙骨部の硬膜(脊髄を包む膜)の拡張が指摘されています。これらの所見の程度や現れ方は人によりさまざまです。
治療:心血管系の管理が最も重要です。大動脈基部が5cm以上に拡大したり、大動脈解離を生じた時は手術をする。待機的手術の成績は非常によくなる。治療に使用される薬剤は、血圧を下げたり血管を保護する目的としてβ遮断薬が中心になる。
6811 慢性中耳炎とは/化膿性中耳炎とは(まんせいちゅうじえん、かのうせいちゅうじえん) 急性(化膿性)中耳炎がひどくなると、鼓膜に穴があき、なかにあるうみを出し炎症を治そうとするはたらきがある。あいた穴は自然に閉じますが、中耳炎を繰り返したり、治り方が不十分だと、この穴が閉じなくなり慢性(化膿性)中耳炎になる。従って急性(化膿性)中耳炎になった時にはしっかりと治療することが大切です。なお一般に、急性中耳炎、慢性中耳炎という場合は、この化膿性中耳炎を指します。
症状:鼓膜にできた穿孔から細菌が入り、うみが出てきたり、じくじくしたりします。これは耳だれ(耳漏)と呼ばれる。穿孔のため伝音難聴が生じる。鼓膜穿孔が小さい時の難聴は軽度ですが、鼓膜穿孔が大きくなり感染が続くと、その影響が内耳にも及んで感音難聴、耳鳴りを引き起こす。こうなると聞こえはかなり悪くなる。
治療の方法
1)保存的治療:耳漏をとめて、感染をできるかぎり軽くするのが目的です。外耳道・中耳腔の清掃、耳洗、耳浴(抗生剤を耳に入れて、しばらく横になっている)などを行う。急性増悪の時には抗生剤を内服します。なお、点耳液のなかには耳に毒性をもつアミノ配糖体系抗生剤を含む製剤があるので注意が必要です。
外科的治療:手術には、大きく分けて2つの方法があります。中耳機能検査の結果が良好であれば鼓膜形成術を行う。
中耳機能検査で難聴が改善しない場合、鼓膜穿孔が大きい場合、炎症が高度の場合には鼓室形成術を行う。全身麻酔で伝音連鎖の再建と鼓膜の形成を行う。最近では手術方法が非常に改良されており、耳漏がとまるだけではなく難聴もかなりの率で改善する。外科的な治療には年齢制限はなく、高齢者の手術も増えている。
6812 慢性活動性EBウイルス感染症とは(まんせいかつどうせいいーびーういるすかんせんしょう) 伝染性単核球症様症状、さまざまな臓器障害が数カ月以上続く重症かつ予後不良の疾患ですが、最近では慢性白血病/リンパ腫の仲間であると考えられるようになっている。
原因:伝染性単核球症と同じEBウイルスが原因ですが、感染ウイルス量が100〜1000倍以上多いのが特徴で、始まりは1個の感染細胞からくるがんと同じクローン性の感染です。
症状:何カ月も続く発熱、リンパ節・肝臓・脾臓のはれ、発疹、蚊アレルギー、肺炎、慢性(活動性)肝炎、慢性・反復性下痢などが高頻度にみられる。合併症には死に至るものが多く、心筋炎、心内・外膜炎、冠動脈瘤、肝硬変・肝不全、腎炎、脳炎などがある。また、さまざまな悪性リンパ腫、横紋筋腫瘍など多種多様な悪性腫瘍を合併する。
治療:確立された治療法はなく、免疫療法、悪性リンパ腫に準じた抗がん剤の多剤併用療法、抗ウイルス療法などが試みられてきた。これらの治療はある程度有効ですが、その効果は一時的で、完治には至りません。造血幹細胞移植(骨髄移植や末梢血幹細胞移植)が唯一治癒可能な治療法ですが、成功率は約50%と低く、これからの研究課題です。数年の間に約半数が死亡する予後の悪い病気で、進行してからの移植では成功率が低くなるので、診断がつき次第、移植を前提とした治療が検討される。
6813 慢性色素性紫斑とは(まんせいしきそせいしはん) 多くの場合中年以降にみられる下肢の点状出血、毛細血管拡張、褐色調の色素沈着で慢性の経過をたどる。やや男性に多い。臨床症状によりシャンバーグ病、マヨッキー(血管拡張性環状紫斑)、紫斑性色素性苔癬様皮膚炎の3型に分けられています。
原因:真の原因は不明ですが、微小循環障害と血管壁の弱さが関係するようです。時に高血圧や静脈瘤を合併し、これらは静脈圧の亢進が要因と推定される。
症状:基本的には下腿に多数の点状紫斑が生じ、徐々に進行して大小の紅褐色の色素斑になる。繰り返すうち、下腿、大腿、腰臀部へと拡大していく。全身症状は伴わず、かゆみはないことが多いようです。シャンバーグ病では、斑と斑の間に拡張した静脈あるいは静脈瘤の存在が認められることがある。
治療:根治的な治療法は今のところない。対症療法は血管強化薬、止血薬、抗プラスミン薬などが使われる。副腎皮質ステロイド薬の外用が有効なことがある。長時間の歩行や立ち仕事を避ける。静脈瘤を伴う例には弾力包帯、弾力ストッキングをすすめる。慢性かつ進行性で一進一退を繰り返し難治性ですが、自然軽快もありえる。
6814 慢性精巣上体炎とは(まんせいせいそうじょうたいえん) 急性精巣上体炎が慢性化する場合と、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で炎症が長引く場合とがある。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いませんが、陰嚢内の違和感や、にぶい痛みが長期にわたり続く。
原因:尿路感染症を起こしやすい腸内細菌(大腸菌など)により、急性精巣上体炎が引き起こされる。この治療が不十分であると、細菌が精巣上体のなかにこもってしまい、慢性的な炎症を起こすと考えられる。しかし、慢性期には細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定はできないことがある。結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされる。尿中に結核菌を証明することが必要ですが、検出されずに手術で精巣上体を摘出し、その結果、結核感染が証明されることもある。
症状:急性期を過ぎても精巣上体に硬いしこりが残り、にぶい痛みや違和感が持続します。発熱を伴うことはない。結核性の場合も、痛みの程度はにぶいものの、精巣上体が数珠状に硬くはれる。抗生剤の投与によってもなかなかよくならない場合は注意が必要です。肺結核を患ったことのある人が多いのですが、知らないうちに感染している場合もみられる。
治療:抗生剤の投与ではよくならない場合が多く、痛み止めなどの炎症を抑える薬を長期間投与します。それでも不快な痛みが続く場合は、精巣上体を摘出することもある。結核性の場合は、腎臓や膀胱などのその他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、また結核菌は臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核薬による治療が必要です。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)にストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。
6815 慢性肉芽腫症とは(まんせいにくげしゅしょう) 好中球、好酸球、単球、マクロファージなどの白血球は食細胞とも呼ばれ、細菌や真菌などの異物を貪食し、細胞内で殺菌するはたらきをする。慢性肉芽腫症は先天性のまれな食細胞機能異常症です。
原因:殺菌機構(メカニズム)の中心的役割を果たすスーパーオキサイド(−O2)や過酸化水素(H2O2)などの産生低下が起こり、殺菌能障害を引き起こす。近年本症に対する遺伝子の解析が進み、日本では伴性劣性遺伝形式をとり、男児に発症するgp91―phox欠損型が約4分の3を占める。
症状:生後数カ月から非H2O2産生カタラーゼ陽性菌である黄色ブドウ球菌や大腸菌、クレブシエラなどの細菌、およびアスペルギルスやカンジダなどの真菌に対する難治性の感染症を繰り返します。また機序(仕組み)は明らかではないが、皮膚やリンパ節、消化管などに肉芽腫を形成することがある。
治療:ST合剤(バクタ、バクトラミン)の予防投与が1970年代から行われ、有効性が確立している。インターフェロンγによる感染症抑制効果が1/3の症例で認められる。根治療法としては造血幹細胞移植が実際に行われており、海外では遺伝子治療の臨床試験も行われている。
6816 慢性剥離性歯肉炎とは(まんせいはくりせいしにくえん) 歯肉症とも呼ばれ、歯肉の表面の皮(上皮)がはがれ落ちてびらんを形成し、痛みを特徴とする病気です。一般に、生理不順あるいは閉経後の女性に多くみられ、2〜3歯に限られているものから、口のなか全体に及ぶものまでさまざまです。
原因:よくわかっていませんが、ホルモン、とくに女性ホルモンとの関連が否定できない。また、皮膚科疾患である炎症性角化症としての扁平苔癬、水疱性粘膜疾患としての類天疱瘡や尋常性天疱瘡などにかかると、その症状が口のなかに現れるとも考えられる。
症状:軽症のものは、10〜20代の女性に起こりやすく、痛みもなく、歯肉の縁や歯と歯の間の歯肉が赤くなる(紅斑)程度です。中程度のものは30〜40代にみられ、紅斑や灰白色の病変が起こる。また、歯肉の表面はつるつるした感じになり、灼熱感(ひりひりした感じ)があったり、水疱の形成がみられることもある。重症のものは、更年期あるいは閉経後の女性に多くみられます。歯ブラシや食べ物のこすれによって、簡単に歯肉の上皮がはがれ、鮮紅色を呈したびらん面が露出します。病変部は出血しやすく、食べ物による温熱刺激や化学的刺激に対して過敏になり、食事をするのが困難になる。また、接触痛もあるのでブラッシングも難しくなる。発現部位は、唇・頬側(外側)の歯肉に多くみられる。経過は極めて緩慢で長期にわたって再発を繰り返し、難治性です。
治療:軟らかい歯ブラシやデンタルフロスをていねいに使い、口腔清掃を心がけ、早めに歯科医を受診することです。副腎皮質ホルモン薬や抗生剤の軟膏の局所塗布が対症療法としてすすめられる。重症の場合は、内科主治医と相談のうえ、副腎皮質ホルモン薬の全身投与が行われることもある。また、対症療法で病変部がよくならない場合は、その部分を切り取ったり、上あごから歯肉を採取して移植することもある。
6817 慢性副腎不全とは(まんせいふくじんふぜん) 副腎不全が慢性的に続いている状態です。子どもに起こる原因としては先天性副腎過形成症が重要です。
症状:治療しないと、急性副腎不全の症状が出てきます。治療が適切であれば症状はなくなるが、それが不十分であれば倦怠感や食欲不振などを示します。副腎不全があると脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が高まり、その結果として皮膚のメラニン色素が増えるために皮膚が黒くなる。子どもでは成長発達に影響の出る場合もある。
治療:ステロイド薬の投与で、ほぼ通常の生活が可能です。何らかの負荷・ストレスのある場合には、投与量を2〜3倍に増やすことが必要です。
6818 マンソン孤虫症とは(まんそんこちゅうしょう) 条虫の一種、マンソン裂頭条虫の幼虫が寄生して起こる病気です。カエル、ヘビ、トリなどに寄生し、これらを食べると感染します。ヒトに感染した場合には成虫にならずに、幼虫のままでいることがほとんどです。幼虫の大きさは、数cm〜数十cmです。当初は成虫がわからなかったために「孤虫」と呼ばれていましたが、のちにネコやイヌの腸に寄生するマンソン裂頭条虫の幼虫であることがわかりました。
症状:マンソン孤虫は全身のあらゆる場所に寄生するが、最も多いのが皮下、とくに脂肪の多い場所です。皮下に寄生した場合は、しこりやこぶが感じられるが、急になくなったり、別の場所に現れたりします。これは、マンソン孤虫が体のなかで移動するためです。寄生する場所によって自覚症状がないことがあるが、脳に寄生した場合には、嚢虫症と同じような症状が起こり、命に関わることがある。
治療:手術でマンソン孤虫を取り除くのが、最もよい方法です。脳や内臓に寄生している場合は、抗寄生虫薬のプラジカンテル(ビルトリシド)を使用する。
6819 味覚障害とは 唾液に溶けた物質が口のなかにある味蕾(味を感じる受容器)と接触し、さらに関係神経を介することによって味を感じる。味覚障害は、唾液分泌、口腔粘膜、味蕾、関係神経の障害などによって起きる。味に関わる因子には、味覚以外に、香り、舌ざわり、歯ざわり、温度、審美、食欲、加齢など多様なものがある。味覚障害の原因には次のものがあります。
1)亜鉛欠乏
亜鉛は、体にとって必須の微量元素(ミネラル)で、普通に食事をとっていれば欠乏しない。しかし、薬剤、亜鉛代謝異常(腎臓障害など)、あるいは食事量の減少によって低亜鉛症となることがある。薬剤による味覚障害では、味覚異常、味覚減退、苦味が増すなどが生じます。亜鉛キレート作用(薬剤が細胞への亜鉛の取り込みを妨げること)により亜鉛が欠乏して味覚障害を起こしたり、薬剤による口の渇きから苦味を感じることがあるが、障害を起こす原因が不明な場合も多くある。味覚障害の原因になりうる薬剤を表に示します。  腎障害では亜鉛の吸収が悪くなったり、尿毒素が味蕾に影響を及ぼして味覚障害が起きることがある。

表.味覚障害の原因


2)神経障害
@末梢神経障害  
味覚に関わる神経は、舌の前方2/3あたりにある鼓索)神経(顔面神経)、舌の後方3分の1あたりの舌咽神経、軟口蓋の大錐体神経(顔面神経)です。これらの神経に障害があれば、味覚障害を起こすことがある。
A中枢神経障害  
脳腫瘍、脳卒中などによって味覚障害を起こすことがある。
3)風味障害  
感冒(かぜ)などに伴う嗅覚障害は味覚障害と密接な関連があり、併発すると食物の香りも味もよくわからない風味障害を起こす。また、高窒素血症の場合はアンモニア臭を起こすことから、風味障害を起こす。
4)味蕾への障害
@口内炎、口腔カンジダ症  口腔粘膜のはたらきに影響を及ぼすため、味覚障害を引き起こす。
A放射線照射  
腫瘍の治療のために口腔に放射線照射を行うと、高度の味覚障害が起きる。
B口腔乾燥  
口が乾燥すると苦味を感じる。口が乾燥する病気にシェーグレン症候群がある。
5)高齢  
高齢に伴って次のような変化が起きる。
@唾液分泌の減少  
唾液には味の分子を溶かす作用があるので、唾液の分泌が減れば味が変わる。高齢になると、多くの場合は唾液の分泌が減少する。
A味蕾  
加齢とともに減少
B食事  
偏食や食事量の減少があれば、亜鉛摂取量も減る。
C内臓機能の衰え  
亜鉛を消化吸収する機能が落ちれば、亜鉛摂取量も減る。その他、原因がわからないものもある。
6820 スズシロとは/すずしろとは/蘿蔔とは(すずしろ) 春の七草のひとつ。「すずしろ」は大根の昔の呼び名。 「清白」とも書く。花は白か、うすピンク色。 中央アジアまたは地中海地方が原産地。 中国経由で日本に渡来。 「古事記」には「大根(おおね)」と いう名で出てくる。油菜(あぶらな)科。 ・学名 Raphanus sativus Raphanus : ダイコン属 sativus : 栽培された,耕作した Raphanus(ラファナス)は、ギリシャ語の 「raphanos(早く割れる)」が語源。 発芽が早いことに由来。
6821 スズナとは/すずなとは/菘とは(すずな) 春の七草のひとつ。「すずな」は蕪(かぶ)の昔の呼び名です。 油菜(あぶらな)科。 学名 Brassica rapa Brassica : アブラナ属 rapa : カブラ形の Brassica(ブラシカ)は、 古いラテン名で「キャベツ」を意味する。
6822 ゴギョウとは/御形とは/オギョウとは(ごぎょう) ゴギョウは別名ハハコグサ(母子草、Gnaphalium affine )、キク科ハハコグサ属の越年草である。春の七草の一つでもあり、茎葉の若いものを食用にする。日本全国の人里の道端などに普通に見られ、成長した際の高さは10〜30cm。葉と茎には白い綿毛を生やす。花期は4〜6月で、茎の先端に頭状花序の黄色の花を多数つける。 ハハコグサの全草を採取し細かく裁断して日干しし、お茶にする。咳止めや内臓などに良い健康茶ができる。これには鼠麹草(そきくそう)という生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使わない。 かつては草餅に用いられていた草であったが、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」とされ、平安時代ごろから蓬に代わって行ったと言われている。
6823 春の七草とは(はる、ななくさ) 春の七草とは「せり、なずなごぎょうはこべら、ほとけのざ、すずなすずしろ。これぞ七草」と古くから歌われてきた。
1月7日の朝に七草粥を食べる風習があります。平安時代からこの習慣があったようです。平安時代に書かれた清少納言の「枕草子」には、”七日の若菜、六日、人の持て来……”という一文があります。正月6日から7日にかけての行事で6日の夜はヒイラギなどの刺のある木の枝や、蟹のはさみのようなとがったものを戸口にはさんで邪霊を払い、七草叩きといって、唱えごとをしながら七草を包丁でたたき、粥を炊き込みます。7日の朝、歳神に供えてから家族で食べると万病を払うとされていた。正月のごちそうで弱り気味の胃を休めるという知恵から始まったという説もあります。
6824 猫エイズとは/ネコエイズとは(ねこえいず) 猫エイズはは人間と同じく感染力自体はあまり高くない感桑症です。「猫免疫不全ウイルス」と呼ばれるエイズウイルスが感染することによって免疫力が低下して'くることが特徴です。人のエイズとは全く別のウイルスなので人に感染することはありません。 猫エイズの症状には3段階あり、感染してすぐの数ヶ月は風邪や下痢などの軽い感染症の症状を引き起こしリンパ節が腫れることもありますがやがて無症状になります(キャ'リアー)。一見健康な猫と変わらないのですが、体内ではウイルス が生き続けているため、少しずつではありますが病気は進行していきます。また、キャリアーの猫はウイルスを保持し続けているので、他の猫への感染源になるということも忘れてはいけません。こ のキャリアー期は4,5年、ともすると10年を超える場合もあるため猫エイズを発症せずに天寿を全うする猫も少なくありません。 キヤリアー期を過ぎると、いわゆる猫エイズを発症するわけですが、発症してしまうと免疫カが下がるため、口内炎ができたり慢性の下痢になったりして次第にやせ細って死に至ります。感染経路としては食事の際の唾液、喧嘩の咬み傷が原因の場合がほとんどです。性交渉での感染確率は低いのですが、親猫のどちらかが感染 している場合、子猫が先夫性に感染していることがあります。 日本ではまだワクチンの使用が開始されていないので予防はできません。外飼 いの猫だと10%は感染していると言われており、外に出さないのが1番の予防といえます。また、有効な治療法も確立していないので、治療は症状が出たところから手当てをする「対症療法」しかありません。
6825 神経プロック注射とは(しんけいぶろっく) プロックとは遮断するという意味で神経プロックは神経の伝わりを遮断する方法です。具体的には、ブロック針(注射針の一種)の先端を神経やその近くに導き、そこへ薬液を注入して神経の伝達を遮断することで、痛みを取り除く。使用される薬剤は多くの場合は局所麻酔薬になる。薬剤の作用する時間は2 〜3時間程度と短いが、いったん神経がプロックされて痛みが軽減すると、再び当初の痛みに戻るまでかなりの時間がかせげる。 からだに痛みが存在すると交感神経が緊張し、血管を収縮させたり筋肉が緊張する。こうなると、緊張した組織への血流が悪くなり、十分な酸素が運び込まれなくなる。また組織には痛みのもととなる物質を含んだ老廃物が滞る。 こうした状態が続くと痛みはさらに増していき、痛みの悪循環ができあがってしまう。神経プロックは、この悪循環を断ち切ることで、障害部位への血流を改善し老廃物の蓄積も解除する効果がある。これにより痛みがとれ、自然治癒も促される。
6826 ミクリッツ症候群とは(みくりっつしょうこうぐん) 唾液腺(唾液を作る器官で、左右の耳下腺、顎下腺、舌下腺と涙腺涙を作る器官で上まぶたの奥にある)が痛みを伴わずに、対称性に腫脹を来す独特な病変を、1892年にミクリッツが発表した。しかし、これらのなかには原因不明なものと、白血病、悪性リンパ腫、結核、サルコイドーシスなど原因が明らかなものが含まれている。そして、前者をミクリッツ病、後者をミクリッツ症候群と呼び分ける。すなわち、ミクリッツ症候群はひとつの独立した病名ではなく、ある病気によって生じる症状ということができる。
原因:白血病は血液のなかの白血球が悪性化して異常増殖するもので、悪性リンパ腫は免疫を司るリンパ系のがんです。  結核は結核菌による感染症で、類上皮肉芽腫という特殊な細胞の塊を作ることが特徴です。サルコイドーシスは主に肺やリンパ節に結核とよく似た類上皮肉芽腫を形成するが、その原因は不明です。このような悪性化した細胞の塊や類皮肉芽腫が涙腺や唾液腺にできると、腫脹となって現れることになる。涙腺や耳下腺、顎下腺が徐々にはれるが、必ずしも左右対称性とは限らず、普通、痛みはない。
治療:それぞれの原因疾患に対する治療を行う。
6827 ミトコンドリア異常症とは(みとこんどりあいじょうしょう) ミトコンドリアは細胞のなかで主にエネルギーを産み出し、細胞活動を支えている。一つひとつの細胞が正常にはたらかないと、細胞からできている組織や臓器の機能が損なわれて病気になる。たとえば、筋肉であれば収縮運動、心臓であれば血液を送るポンプ機能が低下し、脳であれば神経が麻痺したりけいれんが起きたりと、さまざまな症状が現れる。ミトコンドリアの異常では、細胞のエネルギーがうまくつくられずに、このようないろいろな臓器の症状が現れる。
原因:細胞のなかの核にDNA(デオキシリボ核酸)があり、そのDNAが遺伝子という意味のある情報を担っているのですが、実はミトコンドリアのなかにも核DNAとは別のDNAが存在しています。多くの病気が核DNA上の遺伝子変異で起きますが、ミトコンドリア異常症の場合は、核DNAとともにミトコンドリアDNAの変異でも起きます。ミトコンドリアは不思議です。母の卵子と父の精子が受精して、命の始まりである受精卵ができる時、その受精卵のなかのミトコンドリアはすべて母の卵子由来なのです。ミトコンドリアDNAに変異があっても、母からは子には伝わるが、父からは伝わらない。これを母系遺伝という。ただし、ミトコンドリア異常症がすべて母系遺伝なのではない。ミトコンドリアDNAは変異が起きやすいので突然変異で起きる場合もあるし、核DNAにある遺伝子変異でも起きるから、優性遺伝や劣性遺伝のこともある。
6828 ミトコンドリア脳筋症とは(みとこんどりあのうきんしょう ) 筋肉のエネルギー源は筋細胞内に蓄積されたグリコーゲンと中性脂肪です。脂肪は細胞内のミトコンドリアのなかで代謝されて、ATPをつくり出す源となる。とくに、マラソンのような持続的な運動に使用されるエネルギー源が脂肪です。したがって、ミトコンドリアが異常になるとエネルギー代謝がうまくいかず、運動異常が現れることになる。ミトコンドリアは全身の細胞にあるので、筋肉だけではなくほかの場所の機能異常も現れる。脳神経と筋細胞のミトコンドリア異常が主にみられる病気がミトコンドリア脳筋症です。さまざまな病気が報告されているが、主な病型は3つです。ミトコンドリアのDNA異常で発症する病気は、母系遺伝(体細胞遺伝)で子孫に伝えられます。脳筋症では、ミトコンドリアのDNA異常があることが明らかになった。いずれの病型にも決定的な治療法はない。
主なミトコンドリア脳筋症
@カーンズ・セイヤー症候群(慢性進行性外眼筋麻痺:KSS)この病気は眼球運動麻痺、心伝導障害に網膜(もうまく)色素変性症を伴った病気です。3つの症状が常にそろうわけではありません。ミトコンドリアDNAの一部が欠けています。
A脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(メラス:MELAS)脳卒中のような症状と高乳酸血症を示し、若年で発症します。低身長で筋力低下がみられます。ミトコンドリアDNA内のロイシンtRNAの点変異(DNAの1塩基の欠失、置換、挿入のこと)が、日本の研究者によって明らかにされました。
Bミオクローヌスを伴うミトコンドリア脳筋症:MERRF)  
このタイプは小脳症状、ミオクローヌス(不随意(ふずいい)運動の一種)、筋症状、てんかんが主な症状です。この病気もミトコンドリアDNAのリジンtRNA内の点変異で起こります。
6829 未破裂脳動脈瘤とは(みはれつのうどうみゃくりゅう) 脳ドックなどでMRA(磁気共鳴血管撮影)を行った時に発見される病気です。自覚症状はまったくなく、診察をしても異常がないのが普通です。なかには眼の動きが悪くなって調べたら、未破裂脳動脈瘤であったという場合もある。小さい脳動脈瘤を含めると、100人に2〜3人はいるといわれる。
原因:脳の動脈の一部が内側からの圧力に耐えかねて、こぶのようにふくらんで起こる。脳の血管の先天的な弱さに、高血圧や血流の影響が加わって起こると考えられる。内頸動脈、脳底動脈、中大脳動脈、後大脳動脈など、あるいはそれらの動脈の分岐部に起こる。
症状:普通はまったく症状がなく、たまたま検査で見つかる。動眼神経の近くの内頸動脈に起こると、動眼神経を圧迫して、片側の眼が外方以外には動かなくなり、瞳孔が大きくなり、対光反射がなく、まぶたが下がってくる眼瞼下垂などの動眼神経麻痺の症状が起こることがある。
治療:最近の日本脳ドック学会のガイドラインは、70歳未満、動脈瘤の大きさが5mm以上、手術が可能な部位にある、重い合併症がない、という条件がそろえば、手術をすすめている。頭蓋骨を切開し動脈瘤に直接アプローチする方法が通常ですが、血管内手術を行う場合もある。また、治療をせずに半年後、1年後などにMRAで経過をみるというのもひとつの方法です。手術の危険性と、放置した場合のくも膜下出血発症の危険性を脳神経外科医と相談して、方針を決めることになる。
6830 無芽胞嫌気性菌感染症とは(むがほうけんきせいきんかんせんしょう) 嫌気性菌とは酸素が存在すると死滅するような細菌です。このうち、バクテロイデスやペプトストレプトコッカスなどは無芽胞嫌気性菌と呼ばれ、破傷風やボツリヌスなどの原因菌である芽胞形成嫌気性菌と区別される。無芽胞嫌気性菌は健康なヒトの皮膚や粘膜に広く存在(常在)しており、とくに消化管には、ほかの菌の合計より千倍も多く存在する。普段は無害で、ヒトと共生関係にあるともいえる無芽胞嫌気性菌が体のなかで本来無菌状態であるべき部位(たとえば血管内や腹腔内)に入り込むことによって感染が成立します。このような感染の多くは、外傷や腹部外科手術後など、組織が虚血状態に陥って酸素の供給が不十分な時に起こる。感染部位から好気性菌(酸素が存在するところで生育する細菌)が同時に検出されることが多いのも、この感染症の特徴のひとつです。これは、好気性菌が酸素を消費することによって嫌気状態をつくり出し、それが嫌気性菌の増殖を促進するためと考えられる。
症状:無芽胞嫌気性菌が血液中に入って増殖すると、敗血症が起こる。敗血症とは、細菌の感染によって症状が全身に及んだ最も重症の状態で、発熱、寒け、吐き気・嘔吐、不安、興奮、血圧低下、顔面蒼白、皮膚の出血などが現れる。虫垂炎などが原因の腸の穿孔や腹部外科手術後の急激な発熱には、無芽胞嫌気性菌(とくにバクテロイデス)による敗血症を考慮しなければならない。女性生殖器に関連する感染症として、腟炎、骨盤内炎症性疾患、婦人科領域の術後感染などがあり、敗血症に至る場合がある。ほかに、ペプトストレプトコッカスによる糖尿病性足部潰瘍などが知られる。
治療:抗菌薬の投与が中心です。穿孔の閉鎖、排膿、潰瘍の創面切除などの外科的処置が、必要に応じて行う。
6831 無機質代謝異常症とは/ウイルソン病とは(むきしつたいしゃいじょうしょう、ういるそんびょう) 銅の輸送に関与する蛋白(ATP7B)の障害によって、肝臓、腎臓、脳、角膜などに銅が蓄積することで発症する。
症状:小児期には肝機能障害で気づかれることが多く、進行すると黄疸が現れ、肝硬変となる。思春期以降では不随意運動、振戦(震え)、構音障害、知能障害などの神経症状が現れ、角膜への色素沈着もみられる。
治療:銅キレート薬の内服と銅制限食による食事療法を行う。早期に治療を開始すれば、予後は良好とされる。
6832 無痛性甲状腺炎とは(むつうせいこうじょうせんえん) 何らかの原因により甲状腺が壊れ、なかに蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出して、一過性の甲状腺機能亢進症を示す病気です。亜急性甲状腺炎と違って、甲状腺に痛みがないので無痛性甲状腺炎と呼ばれる。
原因:出産をきっかけに起こることがよく知られるが、とくに誘因がなく発症する場合もある。甲状腺機能亢進症になる機序(仕組み)は不明です。
症状:動悸、暑がり、体重の減少などの甲状腺機能亢進症の症状が、比較的短期間に認められる例が多い。甲状腺機能亢進症の5〜10%くらいが無痛性甲状腺炎です。症状が比較的軽度であること、病気で悩む期間が短いこと、眼球突出などの眼症状はないことなどがバセドウ病との違いですが、紛らわしいのでしばしば誤診されていました。しかし、バセドウ病では治療しないと甲状腺ホルモンは低下しないのに対して、無痛性甲状腺炎の甲状腺機能亢進症は一過性で、治療しなくても正常化するので、治療法は異なり、両者の区別は重要です。
治療:甲状腺から血液中にもれ出てしまった甲状腺ホルモンを減らす治療法はない。動悸や手の震えなどの症状が強い時は対症療法としてβ遮断薬を使い、過労を避けるようにして甲状腺ホルモンが低下するのを待つ。
6833 無脾症とは/無脾症候群とは(むひしょう、むひしょうこうぐん) 各内臓は左右非対称に形作られていますが、先天的に左右対称性に形成される場合がある。たとえば心臓であれば、2つの心房がともに右心房の形態で、心室も右心室の形のみで左心室が痕跡的という、心臓の右側の成分だけで形作られたかのような状態になる。逆に、左側の成分だけで形作られたかのような状態になることもある。この対称性は全身の臓器に共通する傾向にある。脾臓は胃の左側にある握りこぶし大の臓器で、主に古くなった赤血球を取り除いたり、免疫のはたらきに関与する。全身の臓器が右側の成分だけで形作られた場合は脾臓がないことが多く、無脾症といわれる。逆に左側成分が主体の場合は、複数の脾臓が認められることが多く、多脾症という。あくまでも脾臓の有無が問題の本質ではないため、心房内臓錯位、心房相同などと呼ぶのが一般的です。
原因:確定された原因は不明ですが、いくつかの遺伝子異常の関与する。
症状:無脾症の場合、心臓に関しては肺動脈や肺静脈の異常を伴うことが多く、出生直後からのチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)で気づくことがある。一方、多脾症の場合は、主に肺血流が増加して心不全症状で気づく。また、不整脈が認められる場合もある。腹部の症状は腸の走行がおかしいために腸閉塞の症状(突然の嘔吐、腹痛など)が出たり、胆道系の病気になったりすることがある。また脾臓がない場合、免疫系の異常から重症の感染を繰り返すことがある。
治療:肺血流の減少、増加による症状があれば内科的にコントロールする。外科的には心臓の形態に合わせた手術が必要になる。無脾症の場合、乳児期の早期に肺静脈の異常や弁逆流に対する手術が必要になる場合が多いが、これらは非常に難しい手術であり、残念ながら外科的治療が不可能と判断せざるをえない症例もある。最終的には、フォンタン型手術を目指す人が多くなる。また、不整脈に対する治療や、ペースメーカーが必要になる人もいる。
6834 ムンプス髄膜炎とは(むんぷすずいまくえん) ムンプスウイルスによる髄膜炎で流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)を発症した患者さんの約3〜10%に合併するといわれる。ムンプスウイルスは中枢神経系に親和性がある。そのため、ムンプス(おたふくかぜ)患者さんの合併症として最も頻度の高いものがムンプス髄膜炎です。その他、ムンプスの中枢神経合併症としては、髄膜脳炎、脳炎がある。感染した単核球を介して中枢神経系に侵入するといわれる。
症状:通常、耳下腺の腫脹(はれ)から5日くらいたってから発症することが多いといわれるが、耳下腺の腫脹より前に発症したり、耳下腺の腫脹を認めずに発症する場合もある。
症状は年齢によって多少違いがある。年長児や成人では頭痛、嘔吐、項部硬直などが多く認められるが、年少児ではこれらの症状がはっきりしない場合が多い。米国のコロンブス小児病院に入院したムンプス髄膜脳炎の患者51人の検討結果では、発熱94%、嘔吐84%、項部硬直71%、嗜眠傾向69%、耳下腺腫脹47%、頭痛47%、けいれん18%、腹痛14%、咽頭痛8%、下痢8%、譫言(せんげん)(うわごと)6%と報告されている。
治療:髄膜炎を合併した場合は通常、入院治療が必要。ウイルスに特異的な治療法がないため、対症療法が行われる。髄液検査(穿刺)をすると、頭痛や嘔吐がある程度改善する。一般的に予後は良好で、後遺症を残すことはほとんどない。髄膜脳炎を合併した場合でも、他の原因による髄膜脳炎に比べると予後は良好です。
6835 メタノール中毒とは(めたのーるちゅうどく)

メタノールを、お酒(エタノール)と間違えるなどして誤ってのんだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込むと、頭痛、めまい、悪心(おしん)(吐き気)や、視神経の障害による視力低下・失明が起こる。
原因:メタノールもエタノールも、体に入ると“酔い”をもたらします。ただし、エタノールは体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸に分解されます。この蟻酸がたまることにより、頭痛などさまざまな症状をもたらすとともに、とくに視神経を傷つけて、視力障害さらには失明が起こる。  メタノールは、燃料、溶剤として、また各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられる。そのため誤飲の機会も多く、また工場などで、急性、慢性に吸入することも多い。
症状:急性中毒の場合、メタノールをのむ、あるいは吸入してから半日〜1日程度は、エタノールをのんだ時と同じような酩酊状態が起こるだけで、ほかにはとくに症状は出ません。ただし吸入した場合には眼や鼻の刺激を訴えることがある。翌日から頭痛、めまい、腹痛、悪心、嘔吐のほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、代謝性アシドーシス(血液が酸性になること)も生じる。1週間以内に、視神経萎縮と視野狭窄のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸麻痺を起こし、死ぬこともある。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。
治療:メタノールをのんで1時間以内なら、吐かせたり、胃を洗浄して、できるだけメタノールが体内に入らないようにする。メタノールもエタノールも同じ酵素(アルコール脱水素酵素など)で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなります。したがって、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になる。重症の場合には、透析によって血液中のメタノールを取り除く場合もある。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行う。

6836 メネトリエ病とは(めねとりえびょう) 胃の巨大皺襞(しわ、ひだ)と低蛋白血症を特徴とした病気で、過形成性胃炎とも呼ばれることがある。まれに小児にも起こることがあるが、一般的には中年以降に発症する。
原因:低蛋白血症は胃の粘膜から血液中の蛋白がもれ出ることで起こる。成人ではグラム陰性菌のヘリコバクター・ピロリ、小児ではサイトメガロウイルスが重要で、いずれもそれぞれの感染症の一部として理解されています。
症状:初期は主に上腹部痛や嘔吐、あるいは下痢などの消化器症状が現れる。進行すると、低蛋白血症のために貧血や浮腫がみられ、疲れやすい、全身がむくむなどの症状が出てくる。治療:潰瘍を併発していれば、胃酸分泌抑制薬などの抗潰瘍薬を服用します。低蛋白血症に対しては、高蛋白食を数回に分けて摂取するようにします。ヘリコバクター・ピロリやサイトメガロウイルスの感染が証明されれば、それぞれの治療を行う。これらの治療が無効な場合で、胃粘膜からの蛋白漏出の程度が強いことが証明されれば、胃の部分切除術を考慮する。
6837 毛孔性角化症とは/苔癬とは(もうこうせいかくかしょう、たいせん) 上腕や大腿伸側の毛孔毛穴)に一致した、角化性丘疹が生じる慢性の病気です。思春期の女子に多くみられる。
原因:家族にこの病気の人がいると発症しやすいことから、常染色体優性遺伝が推測される。遺伝的因子にホルモン代謝異常、ビタミン代謝異常、脂質代謝異常などが関与して発症すると考えられる。
症状:毛孔に一致した、粟粒大ないし帽針頭大の硬い角化性丘疹が、四肢の伸側(とくに上腕)または大腿に現れる。肩部、背部、臀部、耳前部にも両側に集まって、または散らばって現れる。丘疹は、正常な皮膚の色あるいは淡紅色、褐色調を帯びる。融合することはなく、一般に自覚症状はないん。小児期に発症し、思春期で顕著になる。思春期以後は加齢とともに減少し、消退、軽快する。この病気は、耳前部に毛孔性小丘疹が多発して、紅褐色面となる顔面毛包性紅斑黒皮症をしばしば合併する。
治療:
@5%サリチル酸ワセリンを1日2〜3回患部に塗ります。
AビタミンA軟膏を1日数回患部に塗ります。
B尿素軟膏を1日数回患部に塗ります。
Cケミカルピーリング(古い角質を除去する)を行います。
6838 毛孔性紅色粃糠疹とは(もうこうせいこうしょくひこうしん) 毛穴に一致して白っぽい垢を伴う赤い発疹が現れ、長期になると発疹がくっついて乾癬様になる病気です。若年型と成人型がある。
原因:原因はいまだはっきりとしていません。若年型は遺伝傾向があり、常染色体優性遺伝が考えられる。
症状:手指背、膝、肘、腹部などに、一つひとつは粟粒ほどの大きさで毛穴に一致した赤く硬い小隆起が現れる。白っぽい垢を伴い、一部はくっついて乾癬様になる。手のひら、足の裏が赤く、がさがさし、垢の層が厚ぼったくなる。重症になるとすべての発疹がつながり、全身真っ赤になる紅皮症といわれる状態になり、発熱や関節痛も起こるようになる。
治療:外用薬にステロイドが多く用いられる。そのほか、活性型ビタミンD3外用薬も使用され、一定の効果が得られる。がさがさがひどい時は、角質溶解薬(尿素軟膏)なども併せて使用します。重症の場合は、ビタミンA類似物質の内服薬であるレチノイド(チガソン)を用いる。ビタミンAの多量の内服が効くこともあります。治りにくい場合は光線療法(PUVA療法)も行われる。
6839 毛巣瘻とは(もうそうろう) 腰にある仙骨と尾骨の結合部またはその近辺の皮下に、単発または多発の難治性膿瘍を形成する病気です。毛巣洞炎、毛巣洞、毛巣嚢胞などとも呼ばれる。
原因:先天説と後天説とがある。先天説は胎生期に受精卵から臓器ができあがっていく時の不具合が原因となる。これに対し、後天説は体毛の皮膚への刺入が原因で、瘻孔や肉芽腫、嚢胞を形成する。本症が体毛の多い人にみられ、瘻孔内には毛嚢のない死んだ毛しかみられず、毛髪の刺激を受けるほかの部位でも発症する。多くがホルモン活動の活発な20代までに発症し、男女比は3対2といわれる。
症状:肛門後方から仙尾部の正中線上に腫脹・硬結、疼痛、排膿が現れる。毛深い人に多く、典型例では瘻孔から毛髪が出ることがある。痔瘻とは、原発口や肛門管との連絡が見当たらないことから区別できる。
治療:根治的には外科的切除が原則です。創(傷)が開いたり再発する頻度が15〜20%と高いので、術後の予防がポイントになります。切除後の再発予防に局所の剃毛や永久脱毛、除毛クリームの使用なども行われる。手術は切除と創縫合が基本ですが、創が開きやすいので、皮膚を縫う場合に次のような工夫がされる。
@切除単純閉鎖法
AZ型筋皮弁形成術、皮膚のW型形成術
B皮膚のローテーション・フラップ法
C造袋術(創底と皮膚の縫合)
6840 毛嚢炎とは/毛包炎とは(もうのうえん、もうほうえん) ひとつの毛包(毛穴の奥で毛根を包んでいるところ)にブドウ球菌が感染して起こる皮膚の病気です。
原因:黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(主に表皮ブドウ球菌)、あるいは両方が同時に感染する場合がある。毛包部にごく軽い傷がついた時、皮膚の湿った状態が長く続いた場合、あるいは、副腎皮質ステロイド薬を塗っている場合などが誘因となる。
症状:毛包の上部だけの浅い部分の感染症で、個々の発疹は毛包に一致した赤い丘疹(ぶつぶつ)ないしは中央にうみをもった丘疹(膿疱)で、まわりに赤みがある。かゆみはなく、痛みもほとんどない(表在性毛包炎)。丘疹や膿疱の部分がやや硬く触れる根をもったものは、おでき(せつ)の軽い、ないしは小さいもので、軽い痛みがあり、表皮ブドウ球菌より黄色ブドウ球菌による場合が多い(深在性毛包炎)。首の後ろ・太もも・お尻などにできることが多く、1個あるいは数個〜数十個になることもある。
治療:数が少ない場合はとくに治療の必要はなく、自然に治ります。次から次にたくさんできる場合や、痛みがあるおできには抗菌薬(化膿止めののみ薬)を3〜4日間内服する。
6841 毛髪奇形とは/ネザートン症候群とは/捻転毛とは/連珠毛とは(もうはつきけい、ねざーとんしょうこうぐん、ねんてんもう、れんじゅもう)

正常な毛は円柱の形をしている。毛の形が、でこぼこになったり、ねじれたり、割れたりなどの形の異常を示すのが毛髪奇形です。
原因:毛の形が異常になるのには、先天的な原因と後天的な原因とがある。先天的なものは毛を作るために必要な物質の遺伝子異常で発症します。後天的なものは、毛に対する機械的な刺激が原因になって発症します。
症状の現れ方:
1)ネザートン症候群  
この病気では頭の毛は重積裂毛になる。重積裂毛では毛に竹の節のような結節を作り、折れやすくなる。結節の部分で毛の遠位端が近位端に刺さり込んだようになっています。重積裂毛は竹状毛とも呼ぶ。毛は折れやすいので、短くまばらになっている。ネザートン症候群では、重積裂毛以外に先天性魚鱗癬様紅皮症あるいは限局性線状魚鱗癬とアトピー性皮膚炎の症状を伴う。ネザートン症候群は常染色体劣性遺伝の先天的疾患です。
2)捻転毛  
毛が扁平になり、ねじれた形になる。毛がもろいために折れやすく、短くなる。捻転毛には先天的な原因と後天的な原因とがある。全身性強皮症、扁平苔癬、感染症などがあると毛包に変化が生じて捻転毛になる場合がある。
3)連珠毛  
毛が一定の間隔で周期的に細くなり、毛髪は玉をつなぎ並べたような形になる。また、毛は折れやすくなる。連珠毛は常染色体優性遺伝の先天的疾患です。小児期〜10代で初めて症状が出る。
治療:頭の毛の形の先天的な異常に対する治療法はない。毛がもろくなっているので、機械的な刺激で毛を折らないように注意する。

6842 網膜静脈閉塞症とは(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)

網膜静脈に血栓ができて、血液の流れが悪くなる病気です。血液が血管外にあふれ出して、網膜に出血やむくみを起こす。詰まる部位によって中心静脈閉塞症と分枝静脈閉塞症がある。 原因:動脈閉塞症と同様、年齢が高いほど起こりやすいので、加齢が大きな要因です。やはり糖尿病、高血圧症、動脈硬化症の人では起こる率が高い。分枝静脈閉塞症は交差部で静脈が動脈に圧迫されて血の流れが悪くなることが、血栓形成の一因と考えられる。
症状:中心静脈閉塞症と分枝静脈閉塞症では違い、同じ分枝静脈閉塞症といっても詰まる部位によって違う。出血や浮腫が網膜の中心に及んだ場合、視力が低下するが、症状の現れ方はゆっくりです。一般に、中心静脈閉塞症では症状が強く出ます。分枝静脈閉塞症では詰まる部位によって症状の現れ方は違いますが、まったく自覚症状がないこともある。静脈閉塞症は急性期(静脈が詰まった直後)には、出血やむくみによる症状が主体ですが、何年かのちに突然、硝子体出血を起こすことがある。硝子体出血を起こすと、黒い塊が眼の前に現れて浮遊したり、出血量が多ければほとんど物が見えなくなったりする。 治療:経過観察、薬物治療、レーザー網膜光凝固術、硝子体手術がある。静脈閉塞症は詰まる部位、出血の範囲・程度、経過など人によって千差万別です。軽症であれば、経過をみているだけで自然に治ってしまうこともあります。  薬物治療では血管を拡張させる薬、血管を強くする薬、出血やむくみの吸収を促進する薬などが内服で使われます。  レーザーによる網膜光凝固の目的は2つあります。ひとつは急性期での出血、浮腫の吸収を促進することで、網膜中心部にむくみがある場合に行われる。もうひとつは、硝子体出血を予防することで、静脈閉塞の程度が強く、かつ範囲が広い場合に行う。硝子体手術は、硝子体出血を起こした場合の治療として以前より行われていましたが、最近は網膜中心部のむくみを取るためにも行われるようになりました。詰まっている部位で血管の鞘を切り開く手術(血管鞘切開術)もあるが、今のところ一般的ではない。

6843 網膜動脈閉塞症とは(もうまくどうみゃくへいそくしょう) 網膜動脈が詰まり、血液が網膜に行き渡らなくなる病気です。血液の供給が途絶えた網膜の細胞は、酸素不足に陥って死んでしまいます。眼の病気としては重いもののひとつです。詰まる部位によって中心動脈閉塞症と分枝動脈閉塞症があり、詰まり方には血栓(動脈のなかに血の塊ができて内腔を塞ぐ)と塞栓(心臓など他の部位から血の塊が流れてきて詰まる)がある。
原因:年齢が高いほど起こりやすくなるので、加齢による血管や血液の変化が基礎にあると考えられます。糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、心臓弁膜症の人は起こる率が高い。若い人にも起こることがあり、その場合の原因には膠原病など自己免疫疾患、動脈の炎症、経口避妊薬の内服などがある。
症状:血の通わなくなった網膜はすぐに機能を失うので、症状は突然現れます。中心動脈閉塞症では視野全体が暗くなり、視力も大きく低下します。分枝動脈閉塞症では、閉塞した部分に対応する視野が暗くなります。視力は閉塞した部分に網膜の中心が含まれるかどうかにかかっています。中心が含まれれば視力は低下し、含まれなければ低下しません。一瞬、片方の眼が暗くなってしばらくして治るというような前駆症状が何回か起こり、その後本格的に発症することもある。
治療:血管を拡張する薬物や血栓を溶かす薬物、副腎皮質ステロイド薬の内服、点滴を行うのが一般的です。角膜を切開して前房水を排出することもある。これを前房穿刺といい、眼圧を急激に下げて血管を拡張させるのが目的です。視機能がもどるかどうかは、血管が詰まっていた時間の長さによる。早い段階で血流が再開すればかなり見え方はもどるが、長時間詰まっているともどりにくくなる。
6844 野球肩とは/水泳肩とは/スポーツ障害とは(やきゅうかた、すいえいかた、すぽーつしょうがい) 投球、投てきや水泳、バレーボール、テニスなど肩に力がかかるスポーツで使いすぎにより肩痛を来すことがある。これを野球肩、水泳肩などといいます。これらには種々の病態、すなわち回旋筋腱板(ローテーターカフ)、関節唇、二頭筋腱の損傷や炎症、関節周囲の異常骨化、亜脱臼障害、滑液包炎、神経障害、インピンジメント症候群などが含まれる。また、特殊なものとしてリトルリーグ肩と呼ばれる障害がある。8〜15歳の少年で過度に投球動作を繰り返すことによって、上腕骨近位の骨端線(成長線)が離開してしまう。
症状:投球、投てき、アタック、スマッシュ、水かき動作などの繰り返しで肩に運動痛が現れ、やがて安静時痛や不安感を来すようになる。回旋筋腱板の損傷では肩の外転(腕を側方から上に挙げること)が困難になり、関節唇損傷で引っかかり感やクリッという雑音を聞くことがある。
治療:病態によりまちまちですが、保存療法としては、スポーツ活動の休止、アイシング、ストレッチング、回旋筋群の等張性(一定の力かげんで動かす)の筋力トレーニング、ステロイド薬の局所注射を含めた消炎鎮痛薬の投与、最近ではヒアルロン酸の注射などが行われる。手術療法としては、回旋筋腱板断裂に対する縫合術、関節唇損傷に対する縫合や切除術などがあります。リトルリーグ肩では骨端線離開の程度がかなり大きな場合でも、多くは保存療法で治る。
6845 薬物性肝障害とは(やくぶつせいかんしょうがい ) いろいろな病気を治すために薬は使われます。しかし、薬はのんだ人の体質によっては、薬として期待する作用以外の好ましくない作用を体に及ぼすことがあり、これを副作用という。過去に報告された副作用の原因となる薬では抗生剤が最も多く、鎮痛薬などを含む中枢神経作用薬や細菌などを排除する化学療法薬などがこれに続きく。薬物が原因で起こる肝障害を薬物性肝障害と呼び、大きく分けて中毒性のものとアレルギー性のものとがあります。現在、日本で使われている薬剤は安全確保のため厳しい安全基準が定められており、使用量や使用法を間違えることがなければ中毒性肝障害を来すことはまれです。しかし、食品に分類されるサプリメントややせ薬、ハーブを含む自然食品ではこのような安全性の確保や注意事項の表示が義務づけられていないため、それ自身がもともと含む成分や意図的に添加された薬物により、しばしば中毒性肝障害が起こったり、死亡例が出るなど社会問題になっている。このため最近では「薬剤性肝障害」という言葉を使うのをやめ、「薬物性肝障害」と呼ぶようになり、日本肝臓学会では「薬物性肝障害」の診断基準の改定を進めている。
6846 有機酸代謝異常症とは(ゆうきさんたいしゃいじょうしょう) いろいろな有機酸血症が知られるが、そのなかでもメチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症)が比較的頻度の高い病気です。
症状:いずれも嘔吐、哺乳力低下、筋緊張低下、ケトアシドーシスなどで新生時期に発症し、けいれん、意識障害を起こす。
治療:急性発作時には、腹膜透析や血液透析で蓄積した有機酸を除去します。症状がおさまっている時期には、特殊ミルクと低蛋白食による食事療法を行う。メチルマロン酸血症はビタミンB12の投与で軽快する場合もある。
6847 有痛性外脛骨とは(ゆうつうせいがいけいこつ) 外脛骨は人口の約10%の人にみられるもので、アクセサリー骨(種子骨)のひとつと考えられる。有痛性外脛骨とは、その部分に痛みを感じることです。痛みが発生する原因は骨突出部が履物で圧迫されるためと考えられる。スポーツ活動が盛んになる小学校高学年から中学生に起こり、圧倒的に女子に多く発生する。
症状:起立した時の足の内側の膨隆(ふくらみ)と、同部位の圧痛が特徴的です。靴を履いた時に痛みを訴えるのが一般的です。痛みを避けるため、足全体を回外側荷重(外側に体重をかける)で歩いていることがある。
治療:立った時に足部が偏位するため、これを防ぐことが最も効果的な治療法です。靴の踵(かかと)の内側を高くする足底板を使います。足底板の材料には、通常用いられているインソール素材では、強度がなく運動使用には耐えられないため、特殊な素材(スポンジ硬度75)を用います。外脛骨を摘出するような手術は一般的には行われません。
6848 ライ症候群とは(らいしょうこうぐん) 小児にみられる急性脳症のひとつで、ウイルス感染が先行する場合と、薬剤との関連が指摘される場合があるが、はっきりとした原因はわからない。インフルエンザや水痘にかかった小児の解熱にアスピリンを使用したこととの関連が指摘されてから、これらの病気の解熱にはアスピリンは使用しないように勧告されている。アスピリンの投与を受けていない小児でも、この病気は認められます。急性脳症の症状以外に特徴的なのは、肝臓の機能異常です。肝臓の生検(針で肝臓の一部を採取して調べる)をすると、顕微鏡で脂肪滴、脂肪変性が認められます。脂肪酸の代謝異常がその病態に関連しているといわれる。  
また、ミトコンドリアの機能に異常がみられ、電子顕微鏡で見るとミトコンドリアが膨化しています。
症状:かぜ症状に引き続いて起こることが多いとされ、発熱、下痢、嘔吐に引き続いて、けいれん、意識障害が急速に進行します。数日で死亡することもある重篤な病気です。治っても神経系の後遺症を残すことが多いため、予後は良好とはいえない。 治療:この病気に特異的な治療法はないが、ブドウ糖液を点滴で投与しながら、急性脳症に対する脳浮腫対策が中心となります。肝臓や腎臓の機能異常に対する治療も必要です。脂肪酸の代謝異常に対しては、L―カルニチンが投与されることがあるが、発症早期でないと効果は低いといわれる。
6849 ライム病とは(らいむびょう) ライム病はスピロヘータの一種であるボレリアの感染に起因する細菌感染症で、全身性の多様な症状を示す。病原体を保菌しているマダニに刺されることによって感染する。ヒトからヒトへの感染、動物からの直接感染はない。病原体を媒介するマダニは日本の本州中部以北に分布するシュルツェマダニのほか、米国ではスカプラリスマダニ、ヨーロッパではリシヌスマダニなどが知られる。世界ではライム病ボレリアとして3種類が知られているが、日本ではボレリア・ガリニが主な病原体です。
症状:海外、とくに米国やヨーロッパでは、ライム病は慢性の全身性の疾患として知られる。これら渡航先で感染した場合、病状の進行に伴い、遊走性紅斑や萎縮性肢端皮膚炎などの皮膚症状、髄膜炎や神経根炎などといった神経症状、関節炎などがみられる可能性がある。
1)感染初期  
一般的にマダニの刺咬部を中心とする遠心性の紅斑(遊走性紅斑)が数日から数週間後に現れる。これと同時に筋肉痛、関節痛、頭痛、悪寒など、かぜのような症状がみられる。
2)播種期  
全身に病原体が運ばれることによって症状が現れる期間で、前述の遊走性紅斑に加え、神経症状、心疾患、眼症状、軽度の関節炎がみられることがある。
3)晩期  
感染成立から数カ月〜数年後、播種期(はしゅき)の症状に加え、重い慢性関節炎、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性脳脊髄炎がみられるようになる。国内感染例の場合、遊走性紅斑、顔面神経麻痺、神経根炎、軽度関節炎などの報告はあるが、一般的には重症化しない。
治療;病原体ボレリアは細菌の一種なので、抗生剤による治療が有効です。使用する抗生剤は神経症状の有無により異なります。マダニの刺咬後の遊走性紅斑にはドキシサイクリン(ビブラマイシン)、髄膜炎などの神経症状にはセフトリアキソン(ロセフィン)が第一選択薬として用いる。服薬期間は2〜4週間程度です。薬剤耐性(薬が効かなくなる)は今のところ報告されていません。マダニの刺咬によるエーリキアの共感染が疑われる場合にも、ドキシサイクリンが有効とされる。
6850 ラヌラとは(らぬら ) 典型的なものは、口腔底(口のなかの舌と下顎の間の部分)に唾液のたまった袋(嚢胞)ができ、はれる病気です。時には唾液のたまりが口腔底ではなく顎下部に生じ、下顎の下外側の皮膚がはれることもある。
原因:口腔底には左右にひとつずつ舌下腺という唾液腺があります。この腺に何らかの原因で炎症が生じ、傷がつき唾液が組織のなかに漏れるようになると考えられる。舌下腺の唾液は粘性が高くトロトロとしていて、漏れ出た唾液は組織のなかで嚢胞をつくり、嚢胞はだんだん大きくなる。
症状:通常、左右どちらかの口腔底の粘膜が水を入れた風船のようにはれる。はれがひどくなると、舌が押し上げられたようになることがある。噛んで一部が破れると、なかから粘性の高い液が出て、はれはなくなる。しかし、しばらくするとまた同じようにはれる。下顎の外側がはれてくる場合は、痛みもなく何となく軟らかくはれてくるため、唾液のたまりがかなり多くなるまでわからないことがある。症状と所見で診断のつくことがほとんどですが、下顎の外側がはれるタイプのものでは、リンパ管腫というリンパ液のたまる病気などとの見分けが必要です。
治療:確実な治療方法は原因となっている舌下腺を摘出する手術です。舌下腺を完全に摘出すれば再発はない。また片側の舌下腺を摘出しても口が渇くという問題は生じません。ほかに嚢胞壁の一部を切り取る方法もありますが、再発することが少なくない。
6851 卵巣機能低下症とは(らんそうきのうていかしょう) 卵巣機能が早期に低下する病態で、早期卵巣不全と呼ばれることもある。極端な場合は、早期に閉経となる場合があり、43歳未満で閉経になるものは早発閉経と呼ぶ。一方、このような状態で卵巣が排卵する能力を完全に失っているかというと必ずしもすべての人がそうではない。卵巣に卵胞が存在して排卵を誘発することが可能な場合と、卵巣に卵胞が残存していない場合とに分類され、前者をゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群、後者を早発閉経とする考え方もある。
原因:ほとんどの場合、原因は不明です。先天的に染色体異常があり、そのために早期卵巣不全になる人が多いことや、甲状腺や副腎、筋肉などに対する自己免疫性疾患(甲状腺機能亢進症、アジソン病、重症筋無力症など)をもつ人に多いことが知られる。とくに、自己免疫性疾患と早期卵巣不全との合併がよくみられることから、早期卵巣不全が卵巣に対する自己免疫性疾患である可能性が考えられる。また、卵巣や卵巣の周囲の手術、放射線や抗がん薬の化学療法などによって早期卵巣不全になったり、それ以外の薬剤によっても卵巣機能の低下につながることがある。嗜好品と卵巣機能の低下との間にも関連性が考えられており、とくに喫煙によって卵巣機能の低下が起こる。
6852 卵胞嚢胞とは(らんぽうのうほう) 卵胞から生じた嚢胞です。卵胞とは卵子を入れた袋のようなもので、月経から排卵までの間に増大し、直径2〜3cmで破裂して排卵します。この過程に何らかの障害が生じ、破裂しなかったもののなかに液体がたまることにより卵胞嚢胞は発生する。嚢胞の内壁は1層から数層の顆粒膜細胞で構成され、たまった液は一般に透明です。本疾患の性質上、排卵可能な卵巣機能をもつ、思春期から閉経期ころまでの女性に発生する。右または左どちらか一方のことがほとんどです。
原因:不明な部分が多くあります。卵胞の発育・排卵の過程に異常を来す間脳・下垂体系の内分泌ホルモンの分泌異常や、卵胞挟膜細胞・顆粒膜細胞の反応異常が考えられる。
症状の現れ方と治療:卵胞嚢胞は比較的多く発症するが、通常は症状に乏しい傾向にある。下腹部痛などがあることもあります。大きさはせいぜい5cm程度のことが多く、自然に小さくなることが多いため、ほとんどの場合は経過観察でよいのですが、茎捻転を起こした場合などには強い腹痛を伴うので、手術が必要になることもある。
6853 リウマチ性多発筋痛症とは(りうまちせいたはつきんつうしょう) リウマチ性多発筋痛症はリウマチという名前が使われているが、関節リウマチとは違う病気です。一般に50歳以上、とくに60歳以上の高齢者に起こる原因不明の病気で、体幹に近い部分の筋肉の痛みやこわばりが主な症状の慢性炎症性の疾患です。本症を確定できる特定の診断法はなく、関節リウマチとか不明熱などと診断されて、いくつかの医療機関を転々とすることも少なくありません。しかし、この病気はいったん診断がつけば、ほとんどの場合はステロイド治療で十分にコントロールできます。
原因:真の原因はわからないが、20%前後の患者には側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)という膠原病疾患を合併することが知られる。しかし、欧米に比べて日本では、側頭動脈炎を合併する頻度は少ないので、この病気の全体としての性質も人種などによって若干違う。こうした合併症の存在から、リウマチ性多発筋痛症や膠原病疾患には共通する原因があるのかもしれません。
症状:前兆になるような感染症などは、とくに知られない。体幹に近い部分、すなわち肩から上腕、頸、臀部から大腿などの筋肉の痛みやこわばりから始まり、それが2週間以上続くのが特徴です。こうした筋肉の症状以外では、発熱(多くは37℃台の微熱)、全身のだるさ、体重減少などの全身症状と、関節の痛みを伴う。ただし、関節がはれ上がるほどになることは少ないといわれる。症状は急に始まることが多いが、治療しないとそのまま続くため、数カ月にわたって徐々に進んだようにみえる。
6854 リソソーム代謝異常症とは(りそそーむたいしゃいじょうしょう) リソソームは細胞内で不要な物質を消化する役割を果たし、全身のすべての細胞に存在する。そのなかのひとつの酵素のはたらきが低下すると、リソソーム内に分解できない物質が蓄積されて発症する。そのなかで、脂質やムコ多糖が臓器に蓄積される場合、それぞれリピドーシス、ムコ多糖症といわれ、数多くの病型が知られる。ゴーシェ病、ファブリ病、テイ・サックス病など十数種類の病気が知られる。糖脂質(複合脂質の一種)が肝臓、脾臓、骨髄、脳神経系などの内臓に蓄積するため、肝脾腫、骨病変、眼病変、発達障害、神経症状が現れる。加齢により症状は進行する。
症状:ゴーシェ病は、肝脾腫、貧血、骨痛、出血傾向、発達遅滞、神経症状などを主な症状として、乳児期に発症する重症型から成人期の軽症型まで幅広い症状を示します。ファブリ病は、10歳ごろに四肢痛、無汗、発熱発作で気づかれき、年齢が進むと腎障害、心血管障害、角膜混濁が現れる。保因者である女性にも、加齢により症状が出ることがある。テイ・サックス病は、発達遅滞と退行、筋力低下、けいれん、神経症状、嚥下困難などの症状を示し、重症型は2〜4歳で死亡する。
治療:対症療法に加え、骨髄移植や欠損酵素の補充療法が可能な場合もある。
6855 リッサウイルス感染症とは(りっさういるすかんせんしょう ) 狂犬病と同じ、ラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスによって起こる病気です。これまでにヨーロッパ、オーストラリア、アフリカで9例が報告されていますが、日本での報告はない。多くの場合、リッサウイルスに感染したコウモリに咬まれて発症します。リッサウイルスが報告されている地域では、コウモリ(感染源動物)との接触を避けることが発症予防につながる。
症状:発症した患者は狂犬病でみられるような「発熱、食欲不振、倦怠感、感染(咬傷)を受けた四肢の痛みやかゆみ、咽頭痛、知覚過敏」といった初期症状と、これに続く「興奮性の亢進、嚥下困難、発声困難、筋痙縮、恐水症状や精神撹乱などの中枢神経症状」が現れる。病態は急性かつ進行性で、けいれんや攻撃的な神経症状が次第に強くなって持続し、四肢の弛緩、脱力が増強して、最後には昏睡状態となって呼吸停止とともに死亡する。標準的な潜伏期間は狂犬病ウイルスと同様に20〜90日です。オーストラリアで1998年に報告された事例では、コウモリによる咬傷を受けてから27カ月後に発症しています。
6856 淋菌性結膜炎とは/膿漏眼とは(りんきんせいけつまくえん、のうろうがん) 非常に重症の急性結膜炎で、大量のクリーム状の濃い目やに(眼脂)が特徴的です。新生児と成人に起こる。
原因:淋菌の感染が原因です。この菌は、性感染症である淋病を起こす菌です。成人では淋病をもっている人との性行為により、新生児では淋病をもっている母親からの産道感染により淋菌性結膜炎が起こる。
症状:成人では、性行為の1〜3日後、強い結膜充血、浮腫、眼痛が起こり、大量のクリーム状の濃い眼脂が出ます。新生児では、生後1〜3日で両眼性に強い結膜充血、浮腫、眼瞼腫脹が起こり、クリーム状の濃い眼脂が出る。成人でも新生児でも、重症化すれば角膜に孔があいてしまいます(角膜穿孔)。この場合は、失明の危険ふぁある。
治療:抗菌薬を頻回に点眼し、全身投与を行う。新生児では出産時に予防的に点眼します。
6857 淋菌性腟炎とは(りんきんせいちつえん ) 淋病は梅毒と並んで、古くからよく知られた性感染症のひとつで、本症は淋菌の感染によって起こる腟炎です。抗生剤の使用により減少の一途をたどっていたが、近年は性行為の多様化や、薬剤耐性菌の増加によって著しい増加傾向にあり、クラミジアに次いで多い性感染症です。性交により感染するが、幼児や小児の場合は下着や手指からの感染もある。まず子宮頸管、尿道、バルトリン腺、直腸に感染する。さらに上行感染によって、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎、肝周囲炎などに進展することもある。また最近は、性行為の多様化により、口を使ったオーラルセックスによる淋菌性咽頭炎が増加しています。咽頭の淋菌は、性器の淋菌よりも治療の効果が出にくく、消失しにくいともいわれる。
6858 レッシュ・ナイハン症候群とは(れっしゅ・ないはんしょうこうぐん) 細胞のなかの核酸という物質のなかに含まれているプリン体が、尿酸へと代謝されるためには、ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシールトランスフェラーゼという代謝酵素が必要です。この酵素のはたらきが先天的にほぼ完全に欠けている場合、ヒトの体で尿酸が過剰に産生されて高尿酸血症や痛風となる。この病気をレッシュ・ナイハン症候群と呼ぶ。レッシュ・ナイハン症候群の発症頻度は男児10万人に1人とされる。ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシールトランスフェラーゼの遺伝子は、性染色体のX染色体上に存在することがわかっているため、患者の母親が保因者となり、患者は男性に限られるはずですが、まれに女児の発症例が報告される。
症状:舞踏病様アテトーゼ(不随意運動のひとつ)、筋硬直、精神運動発達遅滞、唇や指先をかみちぎる自傷行為などの特異的な症状が現れる。そのほか、高尿酸血症が認められる。  乳児期の早期から哺乳異常や発育の不良がみられ、その後、運動発達の遅延が明らかになってくる。1歳を過ぎるころより不随意運動が現れ、2歳を過ぎるころに自傷行為が現れる。高尿酸血症は生後まもなくから認められます。おむつに赤褐色の尿酸結晶が付着することもある。
治療:対症療法が主体となる。自傷行為に対しては抗けいれん薬や向精神薬などが有効で、リップガードやマスクをつけるなどの工夫も必要です。高尿酸血症に対しては尿酸生成抑制薬であるアロプリノールを服用させることにより、腎障害の進行や痛風関節炎の発症を予防することが可能です。腎結石や尿路感染症の予防のために、十分な水分をとることも大切です。
6859 裂手症とは/裂足症とは(れっしゅしょう、れっそくしょう)

手・足の先天異常で、中央列(第2、第3、第4指・趾)が欠け、V字形の裂隙(切れ込み)を形成した状態を指す。出生2万人に対し1人の頻度で、男児に多くみられる。形成障害(発育停止)に分類されますが、しばしば合指症を合併することから、分化障害(分離不全)に近い状態と考えられる。
原因:裂手症、裂足症は単独でみられることもあるが、先天奇形症候群(EEM症候群など)の症状の一部としてみられることもある。
治療:裂手症の手術は美容上の改善と指の運動機能向上を目的とするが、この2つが両立しにくいこともある。一般的には離れた指を引き寄せ、深い切れ目を浅くするとともに、合指を分離します。裂足症の手術は多くの場合、美容上の改善が主目的で、切れ目を閉鎖ないし狭くします。しかし、普通の靴がはけずに困る例もある。このため時に骨切り術や装具療法も併用される。

6860 老人性脂腺増殖症とは(ろうじんせいしせんぞうしょくしょう ) 中年から高齢者、とくに男性の顔面に生じる特徴的外観を示す黄色調の丘疹または小結節で、ひとつの毛穴に開口する脂腺がブドウの房状に増殖しています。65歳以上の男性の約10%にみられるという。
原因:加齢による変化と考えられますが、シクロスポリンなどの免疫抑制薬や副腎皮質ホルモン薬の内服後に発症したり、内臓の悪性腫瘍に伴う症例もあり、免疫不全との関連が指摘されている。
症状:顔面とくに前額部、頬部、鼻の周囲に径数mmの黄色または白色の丘疹ないし小結節がみられます。表面は平滑で、中心部がへそのようにくぼんでいるのが特徴です。ひとつだけのこともあるが、多発することがしばしばです。
治療:美容的観点から希望により治療が行われる。切除が確実ですが、液体窒素による冷凍凝固術がよく効く症例もある。通常は自然に治ることはないが、副腎皮質ステロイド薬の内服によって誘発された場合は減量に伴って軽快したという報告がある。
6861 老人性紫斑とは(ろうじんせいしはん) 60歳を超える高齢者の両前腕から手背に好発する暗紫紅色出血斑で、加齢とともに皮膚の弾力がなくなってきたために、わずかな打撲でも不規則な形をした斑状の紫斑ができるようになる。
原因:老化に伴う皮膚結合組織の基質的な変化が指摘される。つまり、真皮の厚さが減り、膠原線維や弾力線維が萎縮して、毛細血管の抵抗力が減る。このため、機械的刺激により簡単に血管壁に障害が生じて内出血を起こす。
症状:外的刺激を受けやすい両前腕および手背に暗紫紅色調のしみ出したような斑状の紫斑がみられる。初めは赤紫になっていますが、そのうちに橙黄色になり、消えていく。一般的に痛みなどは伴わないことが多いが、ごくまれに刺すような痛みで発症することもある。
治療:数週間で退色し、消えていくので治療の必要はない。機械的刺激により発症するので、手袋や腕抜きなど皮膚の保護を考慮するようにする。
6862 老人性腟炎とは(ろうじんせいちつえん) 更年期、閉経を境に、卵巣からのエストロゲン(女性ホルモン)の分泌は低下する。これに伴い外陰、腟、子宮などの生殖器に萎縮、退行性の変化がみられる。皮下のコラーゲンや脂肪の減少、水分保持力の喪失が起こり、外陰部の皮膚は菲薄化(薄くまばらになる)し、乾燥する。また腟は短く狭くなり、表層細胞は減少し、腟壁は薄くなり、弾力性を失います。腟分泌物の量も減少します。腟内は温かく湿っており、本来、微生物の増殖に適しているが、常在菌のデーデルライン桿菌が自浄作用を行っている。ところが、閉経期にエストロゲンが減少すると、腟内のグリコーゲン産生の低下に伴い、デーデルライン桿菌が減少して自浄作用が低下し、細菌感染が起こりやすくなる。このようにエストロゲンの欠乏に伴う腟炎を、老人性腟炎または萎縮性腟炎と呼ぶ。
症状:細菌感染により、腟分泌物は黄色調でやや膿性で、悪臭を伴うこともある。腟壁からの微少出血が起こりやすくなり、性器出血を認めることもある。小陰唇や陰核周囲の不快感、排尿困難や尿失禁、尿道カルンケルなどを合併することもある。また、腟壁からの潤滑液の減少により、性交痛が起こる。性交痛には身体的、心理的両面の要素がみられ、これらが互いに原因と結果となって、次第に性生活を遠ざけてしまうことがある。
治療:原因の根本はエストロゲンの欠乏によるものであり、エストロゲンの補充が治療の第一選択になる。局所の病変に対しては、エストリオール(エストリール、ホーリンV)腟錠が最もよく使われます。このほか、エストリオールの内服もあり、更年期障害、骨量減少なども伴う場合は、結合型エストロゲン(プレマリン)やエストラジオール(エストラダーム)を用いることもある。性交痛に対しては潤滑ゼリー(リューブゼリー)の併用も効果的です。細菌感染を合併している場合は抗生剤を併用したり、外陰炎に対して副腎皮質ステロイド薬や抗ヒスタミン薬の軟膏を併用したりすることもある。
6863 老人性白斑とは(ろうじんせいはくはん) 高齢者の皮膚にみられる点状の白斑です。表皮の色素細胞の減少と、色素細胞の機能低下によるメラニン色素の減少により、皮膚の色素が薄くなり白斑になる。その原因はよくわかっていませんが、一種の加齢による影響であると考えられる。
症状:高齢者の四肢や体幹に、米粒大の白斑が出現します。女性よりも男性に多いといわれる。数個から数十個まで、白斑の数には個人差がある。基本的には、個々の白斑は拡大したり融合したりする。
検査・治療:特別な検査は必要ない。熟練した皮膚科医であれば、通常は診察をするだけで診断できますが、癜風と判別すべき場合もある。現在のところ有効な治療法はない。
6864 老年期うつ病とは(ろうねんきうつびょう) うつ病とは気分がめいる、興味や喜びがない、食事がとれない、よく眠れない、体がだるい、ものごとに集中できないなどといった症状が2週間以上にわたって、ほとんど毎日続く状態です。症状が重い場合は、死んでしまいたいと考えてしまうこともあります。とくに老年期のうつ病の場合、ふらつき、頭が重い、肩こり、腰痛、便秘などの身体症状が前面に現れることがある。老化による身体機能の低下が原因のひとつと考えられる。高齢者のうつ病の場合、身体状態についての配慮と痴呆との区別が大切です。具体的には、うつ病か痴呆のどちらか一方である場合と、うつ症状を伴った痴呆、つまり両方が同時にある場合がある。この2つは検査、治療、病状の経過の点で異なるため、見極めが大切になる。ときには区別が難しい場合もある。なぜなら、うつ病により気力や集中力が落ちてしまうため、記憶力や知的機能が低下し、一見痴呆にみえること、また、うつ病でも痴呆でも共通して認められる妄想や、意識の障害などの症状があるからです。診断には、専門医の診察と家族からの情報が重要です。うつ病になってしまうきっかけとしては、とくに高齢者の場合は病気やけが、配偶者の死などがあげられます。今後高齢化に伴って、老年期のうつ病は増加する可能性が高いと考えられます。
6865 老年期精神病とは(ろうねんきせいしんびょう) 老年期精神病という名称は、正式な診断名ではない。しかし、日常生活は普通に送ることができ、痴呆を疑わせるような症状が認められない高齢者でも、幻覚・妄想状態がみられることがある。これは若い人にみられる統合失調症と近い病気と考えられる。 
症状:体系的な妄想(訂正がきかない誤った思い込み)が主な症状で幻覚は伴うことも伴わないこともある。妄想の内容は、いやがらせをされる、家屋や敷地内に侵入される、物を盗られるといった被害関係妄想が最も多く、そのほか体の不調を過度に訴える心気妄想、嫉妬妄想、誇大妄想などがみられる。若年に発症する統合失調症に比べると、高齢者にみられる妄想の内容は現実的、具体的であることが特徴で、その人の日常生活の状況に即した、いかにもありそうな内容のものです。また、妄想の対象になる人物も隣人や家族、配偶者など身近な人がなりやすいといわれる。幻覚では、幻聴が最も多くみられる。音楽や、壁や床を叩く音などの非言語性の幻聴、あるいは誰かが自分のことを批評したり、話しかけてきたりする幻聴などがみられます。また、体に電気やレーザー光線をかけられるといった体感幻覚も、しばしば認められる。一方、若年に発症した統合失調症にみられるような思考障害や感情の平板化、自閉などの陰性症状を伴うことはまれです。また、人格の崩れは目立たず、周囲との意思の疎通も良好です。警察に訴えたり近隣とトラブルになったりするなど、幻覚妄想に左右された行動がみられる以外は、社会への適応も比較的良好です。
6866 ロタウイルス下痢症とは(ろたういるすげりしょう) ロタウイルスによる感染症で乳幼児の代表的な冬期下痢症として、主に1〜4月に発症します。ほとんどの子どもが感染し、保育園・幼稚園・学校などで集団発生することもあるが、多くは感染経路が明らかではあない。
症状:突然、嘔吐あるいは下痢から始まる。便が白色になることがある。通常1週間以内で下痢は軽快する。発熱、呼吸器症状を伴うこともあり、下痢の回数が多いと脱水症状が現れ、治療が必要です。まれですが、けいれん、脳症、腸重積を伴うことがある。
治療:嘔吐に対しては鎮吐薬を使用します。経口摂食が可能であれば、少量で回数を多くした食事が原則です。経口補液を行うこともある。経口での摂食が不可能な場合、あるいはその危険性がある場合は経静脈輸液を行う。止痢薬は原則として使わず、ラックBやビオフェルミンなどの生菌製剤を用います。
6867 1型糖尿病とは(いちがたとうにょうびょう) インスリンを合成・分泌する膵臓のランゲルハンス島ベータ細胞が、自己免疫性または突発性により破壊され、インスリンの絶対的不足がもたらされることから引き起こされる糖尿病である。幼少期から青年期に発症することが多く、日本の糖尿病患者のうち、約5%が1型糖尿病とされる。インスリンを注射で補う必要があるが、それ以外の面では食事・運動療法を行いながら普通の生活を送ることができる。
6868 陰イオン交換樹脂とは(いんいおんこうかんじゅし)

高脂血症の治療に使われる薬の一種。小腸で胆汁酸と結びつき、そのまま便中に排泄される。胆汁酸の原料となるコレステロールを大量に消費させて、肝臓への再吸収を抑制することで、結果的に血液中のコレステロールの値を下げる効果がある。

6869 インスリン抵抗性とは(いんすりんていこうせい)   インスリンに対する筋肉、肝臓、脂肪などの組織の感受性が低下した状態。インスリン抵抗性が高くなると、インスリンが十分に分泌されても血糖値が下がらなくなり、高血糖を引き起こす。肥満、2型糖尿病、高脂血症、高血圧、虚血性心疾患などの病気に深い関係があると考えられている。
6870 インスリン抵抗性改善薬とは(いんすりんていこうせいかいぜんやく) 筋肉、肝臓、脂肪などの細胞のインスリン抵抗性を改善し、血糖値を下げる薬。インスリン分泌を促す効果はなく、2型糖尿病の治療に使われるほか、インスリン抵抗性に伴う動脈硬化を抑制する働きを持つ。
6871 カルシウム拮抗薬とは(かるしうむきっこうやく)   血管平滑筋や心筋などの細胞にカルシウムイオンが入るのを防ぐことにより、血管の収縮を抑え、血管を拡張させて血圧を下げたり、心筋への酸素需給バランスを改善する働きを持つ薬。高血圧や狭心症、不整脈の治療によく使われる。
6872 クモ膜下出血とは(くもまくかしゅっけつ) 脳を包む3枚の膜(内側から軟膜、クモ膜、硬膜)のうち、軟膜とクモ膜の間に出血を起こしたものをクモ膜下出血という。突然の激しい頭痛で発症し、嘔吐や意識障害を伴うこともある。多くの場合、脳の血管に発生した脳動脈瘤(血管のコブ)が破れることが出血の原因になる。典型的なクモ膜下出血は50〜70代の健康な人に何の前ぶれもなく発症し、命を奪われたり、重大な後遺症が残ってしまうことの多い、恐ろしい病気です。
6873 脂溶性ビタミンとは(しようせいびたみん)   油脂類に溶ける性質をもつビタミンの総称。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどがある。食物中の脂質とともに吸収され、余剰なものは体内に蓄積される。過剰に摂取すると中毒症状が現れる。
6874 水溶性ビタミンとは(すいようせいびたみん)   水に溶ける性質をもつビタミンの総称。ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、パントテン酸、ビオチンなどのビタミンB群とビタミンC などがある。体内に蓄積されず、余剰な分は尿に排泄されるため、一定量を規則的に摂取する必要がある。
6875 代謝とは(たいしゃ)   食物などから、体を作る成分として必要なアミノ酸や脂肪酸、たんぱく質、核酸などの化合物を合成したり、糖などからエネルギーを得るために、体内で絶え間なく起こるさまざまな化学反応の総称。新陳代謝、物質代謝ともいう。
6876 糖尿病性網膜症とは(とうにょうびょうせいもうまくしょう) 糖尿病の三大合併症の1つ。糖代謝異常による高血糖が引き起こす網膜の血管障害のこと。症状は3段階に分けられ、比較的初期の単純網膜症では、毛細血管瘤や点状出血が見られる。続く前増殖性網膜症では、単純網膜症に加え綿花状白斑や血管閉塞、静脈拡張が認められ、これがさらに悪化して増殖性網膜症の段階になると、硝子体出血や牽引性網膜剥離などが生じ、失明に至ることもある。
6877 動物性脂肪とは(どうぶつせいしぼう) 肉類の脂身やラード、バターなど動物に由来する脂肪のこと。動物性脂肪には元来コレステロールが多く含まれ、コレステロールの合成を促進する飽和脂肪酸が多く含まれているため、過剰に取ると血中コレステロール値が上昇する。
6878 内臓脂肪面積100 とは(ないぞうしぼうめんせき100 )   内臓脂肪型肥満の診断における基準の一つ。日本肥満学会の診断基準では、腹部CT検査による測定で、内臓脂肪面積が100cm2以上の人は内臓脂肪型肥満と判定され、高脂血症、高血圧、2型糖尿病、などを合併し、動脈硬化を引き起こしやすいとされている。また、BMIが25以上の人で、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上あり、内臓脂肪面積が100cm2以上ある人は肥満症と診断される。
6879 2型糖尿病とは(にがたとうにょうびょう)   インスリン抵抗性が高くなることで高インスリン血症となり、引き続きインスリンの分泌量の低下が生じることで、引き起こされる。40歳以上に多く、遺伝的素因に過食、肥満、運動不足、ストレスなどが加わって発症する。治療には経口糖尿病用薬を使用する。日本人では、糖尿病患者の95%以上は2型糖尿病と考えられている。
6880 プラークとは(ぷらーく) 動脈の内膜に、脂質や繊維成分などが集まってできた小さな瘤状の塊のこと。コレステロールから成るものや、線維成分と内膜平滑筋細胞が多いもの、両者を含むものなどがある。プラークは被膜が薄くなると破綻を起こし、出血し血栓を作る。加齢とともにプラーク同士が融合し、サイズが大きくなると、アテローム(粥状)硬化への移行が考えられる。
6881 泡沫細胞とは(ほうまつさいぼう)   泡状の構造を持つ細胞。マクロファージが酸化したLDL(低比重リポ蛋白)を貪食し、細胞内に泡沫状の脂肪滴を蓄積し、泡沫細胞となる。また、血管中膜の平滑筋細胞も酸化LDLを取り込んで泡沫細胞となる。粥状動脈硬化や黄色腫などに現れ、血管の内膜肥厚を招き、動脈硬化を進行させる。
6882 発疹性黄色腫とは(ほっしんせいおうしょくしゅ)   黄色腫の一種。直径5mm以下の小型丘疹が、急速に全身または一部の皮膚に多発する。高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)に合併して現れる。
6883 マクロファージとは(まくろふぁーじ) 大食球、あるいは大食細胞ともいう。各種異物や脂肪などを消化する貪食機能を持つ大型の細胞で、血液やリンパをはじめとする全身の組織や臓器に存在する。血管壁にもぐり込んだ変性LDLを食べて泡沫細胞となったり、炎症などのサイトカインを分泌し、粥状動脈硬化にも関係している。
6884 末梢神経障害とは(まっしょうしんけいしょうがい)   中枢神経から分岐して全身に及ぶ末梢神経に起こる炎症のこと。しびれや知覚異常、神経痛、運動困難、めまいなどの症状が見られる。蛋白代謝にかかわるビタミンB6の摂取不足や代謝疾患で起こる場合がある。
6885 網膜症とは(もうまくしょう)   網膜に起こる病変をいう。循環障害、変性萎縮、支持組織の増殖などのために、出血、浮腫、剥離などの症状が現われ、最悪の場合は失明に至る。糖尿病が原因となるものを糖尿病性網膜症という。
6886 α-グルコシダーゼ阻害薬とは (あるふぁぐるこしだーぜそがいやく)   糖質をブドウ糖に分解する酵素、α-グルコシダーゼの働きを抑制することで、小腸での糖の吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を抑制する薬。食後の血糖値が高くなる場合に用いられ、比較的軽症の2型糖尿病の治療に使われる。
6887 ACE阻害薬とは(エースそがいやく)   アンジオテンシン変換酵素阻害薬のこと。アンジオテンシンIを、血圧上昇作用のある活性物質アンジオテンシンII(A-II)に変換させるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することによって血圧を下げる薬。代表的な成分に、カプトプリル、エナラプリル、テモカプリルなどがある。
6888 HDLとは (エイチディーエル)   高比重リポ蛋白のこと。血液中に存在するリポ蛋白の一種で、α-リポ蛋白ともいう。組織や血液中のコレステロールを回収して肝臓に戻す働きを持つ。動脈硬化の原因となる余分なコレステロールを減少させるため、動脈硬化の防止因子として善玉コレステロールと呼ばれる。
6889 HMG-CoA 還元酵素阻害薬とは(エイチエムジーコエーかんげんこうそそがいやく)   高脂血症の治療で最もよく用いられる薬。肝臓でのコレステロール合成に関わるHMG-CoA還元酵素を阻害し、また、LDLレセプター数を増やすことにより、血清コレステロールを下げる。この働きを持つプラバスタチンは世界に先駆け日本で開発され、スタチン系の薬とも呼ばれる。
6890 LDLとは (エルディーエル)   低比重リポ蛋白のこと。血液中に存在するリポ蛋白の一種で、血液中のコレステロールを運搬する。LDLが運搬するコレステロールが過剰になると、コレステロールは血管内皮に付着、内膜に沈着して動脈硬化を引き起こす。そのため、LDLは悪玉コレステロールとも呼ばれる。
6891 VLDLとは(ブイエルディーエル)   超低比重リポ蛋白のこと。血液中に存在するリポ蛋白の一種で、比重が1.006以下と極めて低い。肝臓で作られ血液中に入り、トリグリセリドを運搬する。LDLの前駆体でもある。
6892 玄米の効果とは 玄米の効果として血液をサラサラにする循環の促進、便秘の予防となる腸内の浄化作用、解毒作用による生活習慣病の改善などがある。その他、良く噛む事ができ、腹持ちが良い事からダイエット効果があると言われる。玄米は白米と比較すると食物繊維5倍、ビタミンB14倍、ビタミンB22倍、カルシウム2.5倍が含まれており大変栄養価が高い。しかし、フィチン酸の働きにより吸収が悪くなる。玄米は「生き米」であり発芽する事が可能である。その効果により多くのミネラルを吸収できる。
6893 深部静脈血栓症とは(しんぶじょうみゃくけっせんしょう) 深部静脈血栓症は主に下肢の大腿や骨盤内の静脈が炎症を起こして血管に血栓をきたすものです。欧米ほど高頻度ではないが、我が国でも増加傾向にあり、特に60歳以上の女性に多い。最近では、旅客機などの狭い場所に長時間押し込められたことによる下肢の静脈うっ血が原因で深部静脈血栓症を起こし、肺塞栓を合併して呼吸困難、ショック状態に陥る「エコノミークラス症候群、旅行者血栓症」が話題になっている。実際多いのは、手術後や脳卒中後の長期臥床によるものです。
6894 腹臥位療法とは(ふくがいりょうほう) 人間は四つんばいの動物から直立歩行に進化した。しかし、ヒトの赤ちゃんが最初に移動する時は進化の過程を翻って四つんばいから始める。その時、足の裏と手の平が自然に刺激されて、脳が活動しているものと思われる。 成人になれば、手は複雑な動作を受け持つために自然に脳は刺激される。しかし、老いて歩けなくなり寝たきり状態になると足や手の平の刺激は無くなる。さらに、内臓の血液は背中にうっ血状態となり腸や肺の働きは弱って来る。 そこで、1日に何回かうつ伏せになるだけのことで、排便が良くなり、痰が排泄され、気分が爽快になるということです。その時、手の平は床に付けるのがこつです。寝たきりの方は通常仰向けに寝ていて、しかも手の平はほとんど刺激が無い状態となっている。 平成9年に有働女医はこれまでの「うつ伏せ療法」に理論付けしてこの腹臥位療法を世に問うた。看護師らの協力を得てパーキンソン病や脳卒中後遺症、寝たきり者に良い成績を収めた。そして、平12年には聖路加の日野原重明先生の推薦も加わりより普及し始めた。
6895 CRPとは C反応性タンパク(C-reactive protein):体内で何らかの原因で炎症が起きているときに、血液中で増加するタンパク質です。細菌やウイルスなどに感染すると検査値が上昇します。正常値は施設により異なりますが、おおむね0.3mg/dL以下です。
6896 HVとは ヒアリン血管型(hyaline vascular type):キャッスルマン病の病型分類のひとつです。リンパ節を顕微鏡でみると、ヒアリンという透明性の高い物質がにじみ出ていて、血管とその周囲のものが増殖している様子がわかります。
6897 IgAとは 免疫グロブリンA(immunoglobulin A):涙、汗、鼻水、気道粘膜、消化管などに含まれています。主な働きは、身体の外からの微生物の侵入を妨げることです。
6898 IgGとは 免疫グロブリンG(immunoglobulin G):免疫グロブリンの中で血液中に最も多く存在しているのがIgGです。血液中のIgGは免疫不全症、感染症、腫瘍、自己免疫性疾患など、さまざまな抗体産生の異常をきたす疾患の、モニタリングの目的で測定されています。
6899 IgMとは 免疫グロブリンM(immunoglobulin M):多くの場合、血液中のIgMは感染症の診断のため測定されています。通常はIgGやIgAと組み合わせて測定し、判断やモニタリングに利用されています。
6900 インターロイキン6とは インターロイキン6(interleukin-6:IL-6)は白血球や腎臓の細胞などから産生されるタンパクでサイトカインと呼ばれています。サイトカインは特定の細胞に働き、細胞の増殖や分化、機能の発現を行います。インターロイキン6は炎症反応で中心的役割を果たしていることがわかっています