Namazu: [説明]

        Q&A本文(No4801-4950)

No
Q(お客の質問) A(答え)
4801 外傷性頸部症候群とは(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん) 追突事故のみならず、交通事故、労災事故、スポーツ外傷などにより、頸部の骨、関節、靱帯、神経、血管などが損傷を受ける。頭部外傷・打撲で受傷の瞬間、頸部への障害がでる場合がある。このようにしておこる諸症状を外傷性頸部症候群という。
どんな現れ方か :外傷性頸部症候群の症状は多様で、損傷部位で違う。
@頸部軟部組織に関する症状
頸部の筋肉・筋膜の疹痛およびこれに伴う運動が制限。頭痛、頭重感、肩こりも現れる。
A神経根に関する症状
神経根の支配領域に疼痛やしびれ感(知覚異常)、筋力(腕、手指) の低下。慢性期には筋萎縮。
B椎骨動脈に関する症状
椎骨動脈の狭窄や閉塞で無症状のこともあるがめまい、難聴蝋、言語障害(ろれつ が回らない)、視機能(視野など)の障害、平衡感覚の障害、手指のふるえ、千鳥足のような歩行といった小脳症状、意識消失など
C脊髄損傷
上下肢の運動まひおよび知覚の損傷が現れる。尿意、便意がなくなり、たれ流しなどの膀胱直腸障害がでる。
治療:対症療法や手術。
@対症療法
薬物療法、マッサージなどの理学療法、 末梢神経ブロックなど各種症状に対応した治療
A牽引、固定
頸椎が安定している損傷の場合は安静とネックカラーなどによる頸部の固定、対症療法
B手術的治療
不安定性損傷は椎体などの固定術。また、脊髄、神経根、椎骨動脈による症状は手術。
4802 結膜異物とは(けつまくいぶつ) 結膜に異物が入ると激しい疹痛を感じ、 涙が流れる。大部分はまばたきで涙とともに流しだされる。異物が流れてでると、異物感はなくなるが、眼瞼結膜に付着すると疼痛は持続する。この様なときは眼科を受診する。
4803 角膜異物とは(かくまくいぶつ) 原因は鉄片、木片、石片、飛来するゴミなどさまざまで旋盤、グラインダー、 サンダーなどの作業中に鉄粉が飛んで入ることが多い。 これらの異物の中で、通常、問題となるのは鉄粉による鉄さびで、色素が残ると刺激症状が続くために、なかなか症状が改善しない。治療は鉄粉とともに鉄さびも摘出することと、感染予防に注意すること。
4804 眼内異物とは(がんないいぶつ) 金槌の破片、旋盤作業中の破片、電動草刈り機によって発生する事故が多い。角膜全層にわたる癖痕(傷あと)があれば、虹彩、水晶体、硝子体、網膜にまで穴があいている可能性が高くなる。目に入った直後は、軽い異物感しか感 じないが、日がたつにつれて充血、疹痛、視力障害が進行するので、眼科を受診し、異物が目に入っていないかをX線などで検査する必要がある。異物が発見された場合には磁性、非磁性を問わず、原則的にはすみやかに摘出することが望ましい。異物が網膜まで達している場合は、硝子体手術、眼内光凝固などが必要
4805 瞼の裂傷とは/まぶたの裂傷とは(まぶたのれっしょう) 眼瞼を裂傷した場合には止血し、できるだけ早く受診する。傷口に異物が入っていないか、眼窩の骨折がないかを確認し、さらに眼球にも異常がないかどうかも検査する。 皮膚だけならともかく、眼瞼縁やまぶた深部まで切れている場合は、傷を縫合するだけでは術後にまぶたの変形が残る。そのため眼瞼縁、瞼板を正しい位置に合わせて縫合する。眼瞼下垂を合併している場合は挙筋(まぶたをあげる筋肉)に直接外傷 が及んでいるので、挙筋縫合などの処置が必要。眼瞼の鼻側の裂傷の場合は、涙小管断裂を合併していることが多いために、放置すると、後に涙が流れて止まらないことがある。早いうちに顕微鏡によって切れた端を見つけ、細いチューブなどを通して、正 しく縫合する必要がある。
4806 眼球の裂傷とは(がんきゅうのれっしょう) 鋭利な物体で眼球外膜(角膜と強膜) が損傷をうけ、全層にわたって傷が生じ た場合をいう。幼小児では、箸、鉛筆、ハサミを持って転んだときにおこりやすく、大人では交通事故でのフロントガラスの破損によっておこる外傷が多い。穿孔創(穴のあいた傷)から、ぶどう膜、水晶体、硝子体などの眼内組織が脱出することがある。眼内炎や眼内の諸器官の障害が強い場合には、失明することも多い。傷口を閉じて感染予防に注意し、同時に外傷性白内障や硝子体出血、網膜剥離を合併する場合は、それぞれに対する手術も加えて行う。時期を逃すと、視力の回復は望めない。
4807 前房出血とは(ぜんぼうしゅっけつ) 虹彩、毛様体に傷を受け、前房が出血 し、血液が流入した状態をいう。急激な視力低下をきたし、出血によって緑内障を合併するときには、眼痛、悪心、嘔吐を伴う。血液は吸収されるが、4〜7日頃に再出血することがあるので、約7日間は安静が必要。 高度の出血、再出血、眼圧上昇、角膜染色の危険のある場合は、外科的手術を行う。
4808 虹彩離断とは(こうさいりだん) 前房出血に伴い、虹彩根部が毛様体から離れてしまった状態をいう。ひどいときは瞳孔の変形、偏位をきたし、二重瞳孔(ひとみが二つになる)となると複視(ものが二重に見える)を訴える。治療としては外科的に瞳孔を形成する。
4809 水晶体脱臼とは(すいしょうたいだっきゅう) 水晶体を支えているチン小帯が断裂し、水晶体が前房内、硝子体内に脱臼した状態。無症状の場合は様子をみながら保存的に治療し、視力低下や、眼圧上昇をみるときは、白内障手術、緑内障手術 を行う。
4810 外傷性白内障とは(がいしょうせいはくないしょう) 受傷後、水晶体の混濁が徐々に進行し、 視力低下を訴える。日常生活に支障がある場合には、手術を行う。ほかに合併症がない場合は、人工水晶休の移植も可能。
4811 網膜振盪症とは(もうまくしんとうしょう) 打撲による一過性の網膜浮腫(むく み)が原因で視力低下を訴えるが、数日で吸収され、あとを残すことなく治る。
4812 強膜破裂とは(きょうまくはれつ) 非常に強い鈍的打撲の時にみられることがある。高度の結膜下出血を伴い低眼圧を示す。強膜の裂傷が疑われる場合には、ただちに外科的に結膜を開いて裂傷を発見し、 縫合する。
4813 脈絡膜破裂とは(みゃくらくまくはれつ) 強い衝撃により、脈絡膜が出血を伴っ て断裂した状態。眼底の中心部に多 く発生し、黄斑部にかかると視力は低下する。
4814 視神経管骨折(ししんけいかんこっせつ) 交通事故や転倒、転落などで眼部を強打し、受傷直後から、急激な視力低下、視野欠損を生じる。診断がつき次第、視神経管開放術を行う。傷を受 けてから日数がたった場合には、視力回復の可能性は少なくなります。
4815 眼窩底骨折とは(がんかていこっせつ) 眼球の鈍的打撲で、眼窩(眼球を収め る顔面の骨のくぼみ)の底にあたる下壁が骨折し、眼窩内の組織が上顎洞内に嵌頓(とび出す)した状態をいう。受傷直後から、複視を訴え、ときには、悪心、嘔吐を伴う。できるだけ早期に嵌頓した組織を手術で整復する。
4816 眼瞼気腫とは/眼窩気腫とは(げんけんきしゅ、がんかきしゅ) 眼部打撲で眼窩壁に骨折を生じた場合、 眼窩周囲の副鼻腔との間にトンネルができ、鼻出血のため強く鼻をかんだとき、 眼瞼皮下や眼窩内に空気が侵入し眼瞼腫脹や、眼球突出をきたす。鼻を強 くかまないようにして、自然吸収を待つ。
4817 目の薬傷(めのやくしょう) 工場や研究室で誤って薬品の飛沫を浴びて受傷することが多い。とくに、洗剤、毛染め剤、整髪剤などの化粧品による受傷、コンタクトレンズ洗浄液、水虫治療薬などを誤って点眼する場合などがみられる。まず応急処置として、手元の水でただちに洗眼する。水道水で眼部を洗ったり、また、水を満たした洗面器に顔をつ けて、眼を開いたり閉じたりしてもよい。十分に洗眼してから眼科を受診。重症の場合は、視力障害や、眼球癒着をおこしやすく人院治療、手術が必要。
4818 耳介血腫とは(じかいけっしゅ) 耳介はおもに皮膚、皮下組織と耳介軟骨でできている。耳介血腫は、その耳介の皮膚と軟骨の間、あるいは軟骨膜と軟骨の間に出血して血液がたまる状態で、外耳道入口の後ろのへこんだ場所や耳介の前面などにできる。
どうして病気がおこるのか: 耳を何かにぶつけたり、すったり、殴られたりしたときに、皮下や軟骨膜下に出血することによっておこる。力士、ポクサー、レスラー、柔道家などはこのような機会が多く、これを繰り返しているうちに、軟骨膜の炎症も繰り返すため、耳介の変形がおこる。いわゆる力士耳というのはこれを指す。
治療:軽症の場合は血腫が自然吸収されることがあるが、あまり期待できない。また、その場所の外傷や擦過傷(すり傷)から細菌の感染がおこる危険があるので、なるべく早く血腫に無菌消毒した針を刺して血液は抜く必要がある。血液を吸引したあとは、その場所を圧迫するが、圧迫しにくい場所に血腫ができることもあって、その後、再び血腫ができることもある。
4819 外耳道損傷とは(がいじどうそんしょう) 外耳道入口部から故意に入れた、あるいは誤って入った異物で外耳道に傷がついた状態。その原因として最も多いのは、耳かきやマッチ棒、 ヘアピンなどを用いた耳掃除です。 子どもの場合には遊びでビーズ玉や玩具の一部などを入れることによって外耳道損傷をおこすことがある。また、昆虫などが耳に入り、それが動 くために外耳道に傷がつくこともある。
どうして病気がおこるのか:外耳道は、皮膚の下に皮下組織や汗腺 (耳垢腺)があり、周囲に軟骨のある軟骨部外耳道と、薄い皮膚におおわれた骨 の部分の骨部外耳道から成っている。皮膚が薄い骨部外耳道は、少 しの力が加わっても傷つきやすく、外耳道損傷になる。
治療:外耳道を消毒液などで清潔にして、感染がおこらないようにする。また、同 じ理由で抗生剤や消炎剤を使う。
4820 鼓膜損傷とは(こまくそんしょう) 耳かき、マッチ棒、ヘアピンなどで外耳道をいじっていて、本人又は他人の不注意や誤りで鼓膜を突いて鼓膜の損傷(穿孔)をおこす場合がある。ま た、外耳道圧力の急な変化のために、 鼓膜がその圧力の変化に応じきれなくて損傷を受ける場合がある。圧力の変化には平手打ち、爆風、飛行機の昇降時などがある。
病気がおこる理由:鼓膜は厚さ0.5〜0.9mmと非常に薄いので、直接的な外力にきわめて弱 く、また圧力の変化のような間接的な力でもその加わりかた次第で容易に傷を受け、鼓膜の穿孔をおこす。
損傷を受けると同時に、難聴や耳鳴、耳の塞がった感じがおこる。難聴の程度はさまざまで、外力の加わり方によっては重大な難聴になることがある。また、外力の影響が鼓膜だけ にとどまらずにもっと深部まで達するとめまいや悪心などの症状も現れる。
治療:鼓膜だけの損傷であれぼ、鼓膜の閉鎖 (多くの場合は自然閉鎖する)を待つ。なるべく早く閉鎖するよ うな処置も加えて行う。また、感染をおこさないように、抗生剤や消炎剤を使う。鼓膜の穿孔が大きくて自然閉鎖が無理な場合には、手術が必要になる。
4821 外耳道異物とは(がいじどういぶつ) 耳道に異物を故意に入れたり、誤って入った状態をいう。前者は子ども の場合に多く、後者は大人の場合に多くおこる。
子どもでは、興味本意に耳や鼻の中に 異物を入れることがしばしばある。 一方大人では、横になっているときにゴキブリが耳に入ったり、突然蚊や蛾が耳に飛びこんできたりして異物になる。
治療:異物を取ればよいわけですが、子どもでは痛みのためや、異物の形状のため (丸くて外耳道にはまっているようなも の)に専門医でも取り除くのが難しいこともあり、ときに全身麻酔で異物を取り出すこともある。大人の場合の昆虫異物では、もし昆虫が生きているならば、まず昆虫を殺すか動けなく する必要がある。さもないと、昆虫をとるときに外耳道内で昆虫が動き、痛みがおこる。
4822 鼻骨骨折とは(びこつこっせつ) 鼻は顔の中央に突出しているために損傷を受けやすい。 スポーツ、けんか、交通事故などで鼻を固いものにぶつけたときにおこるが、同時に鼻骨のまわりの骨も折れることが多い。鼻骨が正面や横からの力で折れると、それぞれ鞍鼻(鼻がつぶれてあぐらをかく)や斜鼻 (鼻すじが曲がる)になって、変形が明 らかになる。その際、ほとんどの場合に鼻血が出て、鼻の粘膜が血腫などで腫脹して通りが悪くなる。耳鼻科や形成外科を受診。
治療:受傷後3〜4時問もたつと、骨折周囲のはれのため鼻のゆがみはわかりにくくなるので、それまでに骨折部を整復するようにする。それが不可能なときは、はれもひいて再び鼻のゆがみが目立つようになる受傷後1週間前後に治療する方がよい。鼻の中に鉗子を入れて骨折片を押し上げたり、指で整復する。それ以後は日時がたつほど周囲の骨が癒着して治療が難しくなる。癒着した骨を剥がしたり、骨切りしたり、新たに骨折させて整復しなければならない。
4823 口の外傷とは(くちのがいしょう) 口の中には歯や舌があって、食べたり しゃべったりして外界にさらされているためにさまぎまな外傷を受けやすく、それが不潔になっていれば感染を生じる。例えば、子どもに多いものとして、鉛筆や箸、スプーンなどをくわえたまま前方に転倒したり衝突Lた際に、口蓋(上あご)や頬をつらぬき、ときにその尖端 が折れて刺さったり、頬の脂肪がヘルニ アのように飛びだすことがある。このような場合、大きな動脈を傷つけている以外は出血は少なく、まもなく止まるが、小さな尖端が折れていて、 しかもX線写真に写らないものは摘出が困難。折れた残りのものを持って口腔外科や耳鼻科を受診。また、小児が転倒したり、鉄棒から落ちて下唇や舌をかんで傷つけることも多い。とくに、舌は血管に富んでいるため出血しやすい。
治療:含嗽剤などを用いて、絶えず口の中を清潔に保つことで。痛みやびらんが激しいときはリドカイソゼリーやステロイド軟膏などを塗る。
4824 歯冠破折とは/歯根破折とは(しかんはせつ、しこんはせつ) 歯冠・歯根の破折は歯冠が破折して歯髄(いわゆる歯の神経)が露出しているときは、強い痛みを伴う。この場合は、根管(歯髄が入 っている管)から歯髄を除去して治療した上で、歯冠の形を元の状態に修復。破折が歯根深くまで斜めに生じている場合は、やむを得ず抜歯しなければならない。歯根だけが破折した場合は経過をみて、異常を感じなければそのままにする。破折によって歯髄が壊死して、後で歯根の先端や破折した部分にX線写真でみられるような病巣があれば歯髄の処置とともに破折した部分を除去。それによって歯根が短くなって動揺する時は、インプラントのように金属やセラミックスを根管内を通して歯槽骨内に打ち込み、歯のぐらつきを抑える。
4825 歯の打撲とは(はのだぼく) 歯に加わる力が比較的弱けれぱ打撲をおこし、歯根と歯槽骨をつないでいる歯根膜の線維の一部が断裂して、歯がぐらぐらする。この場合は3週間程度は安静にして、その歯で物をかまないよ うに注意する。かみ合わせたとき、 ぐらついている歯が対合歯(反対側の歯)とぶつかるような場合は、どちらかの歯を少し削って強くあたらないようにする。歯髄に感染があれば根管の治療をする必要があるが、乳歯はいずれ永久歯に置き換わるので通常、歯髄処置の必要はない。
4826 歯の脱臼とは(はのだっきゅう) 歯に強い力が加わると、歯根膜の線維のほとんどが断裂して歯は著しく動揺し(不完全脱臼)、あるいは脱落 (完全脱臼)する。不完全脱臼した場合は、指で脱臼した歯を元の位置に戻し、ワイヤーや線副子 (アーチバー)などで隣り合わせた歯に 約3〜4週間固定する。完全脱臼(脱落)しても1〜2時間以内であれぼ歯根をもとの歯槽窩に戻し再植することができる。 したがって、衝突などで歯が脱落してもその歯を捨てずに、湿したガーゼなどに包んで、できるだけ早く歯科や口腔外科受診。再植は早いほど成功する。再植までの時間が長ければ歯根の細胞は壊死して、 いずれ歯根は異物として吸収されて、5〜6年で歯は脱落する。脱落後30分内に再植すれば、歯根の吸収は約10%にみられるだけですが、1時間たつと50%にまで増加する。
4827 歯の嵌入(はのかんにゅう) 脱臼とは逆に歯槽内に歯が嵌入(押し込まれる)した場合も、周囲の歯槽骨や歯肉の損傷がひどくないかぎり、歯を元の位置に引き出して隣接した歯に固定する。ただし、嵌入した乳歯が内部にある永久歯の歯胚を傷つけると、はえてくる永久歯の歯根が曲がったり、歯冠の形がゆがんだり、ときには永久歯がはえてこないこともある。
4828 顔面骨骨折とは(がんめんこつこっせつ) 交通事故や転落・転倒、けんかなどで顔面に暴カ的な力が加わることでおこる。鼻骨だけでなく頬骨や頬骨弓、上 ・下顎骨などを骨折することが多くなる。交通外傷では同時に、眼の外傷や頭部、胸部、腹部の損傷を合併していることが多い。例えば、比較的弱い力が歯や周囲の歯槽骨に加わると、二`一二本の歯を含んで 歯槽骨が骨折し、ひと塊となって動くようになる。
治療:多くの場合、緊急手術の適応ではない。
顔面骨骨折の治療目的は、機能の修復と形態の修復に大別される。顔の骨折による機能的障害の代表的な症状は、眼窩骨骨折に伴う複視(眼球の動きが障害され、物が二重に見える)と頬骨や下顎骨の骨折に伴う開口障害(口が充分開かない閉まらない)、また、上顎・下顎の骨折に伴う咬合不全(噛み合わせ異常)が代表的な症状となる。形態の異常は必ずしも手術治療の適応とはならず、本人が形態異常を気にする場合に手術治療を検討する。
4829 鼻骨骨折とは(びこつこっせつ) 治療の目的は形態の回復にあるので、鼻の変形がどの程度かよく見極めて治療の適応を決める。骨折による形態異常は、鞍鼻(つぶれた鼻)、斜鼻、くの字型といった変形をきたす。骨折の程度が強いと、鼻腔の狭窄(鼻づまり)の原因となることもある。変形の程度が軽い場合には、腫れが十分軽快し変形の程度をみてから治療することもある。治療は、鼻骨の整復鉗子を用いて折れ曲がった骨を元に戻す。通常局所麻酔下に治療するが、受傷から時間が経って整復が困難な場合や子供の場合、全身麻酔下で行うこともある。
4830 眼窩骨折とは(がんかこっせつ) 頬骨骨折などに合併するものの他に、眼部にソフトボールや肘・膝などがあたって眼の奥の薄い骨が折れる骨折がある。こうした打撲の後、物が二重に見えるなどの症状があれば、形成外科、眼科などの専門医を受診。手術の適応(手術を行うか行わないか)を決定することが難しい骨折の一つ。
4831 頬骨骨折とは(きょうこつこっせつ) 交通事故あるいは殴られて頬部を打撲することで骨折することが多い。機能的には開口障害を認めることが多く、複雑な眼窩骨折を伴うと眼球運動障害をきたすこともある。骨折の程度・症状により手術の内容は大きく異なる。
4832 上顎骨折とは/下顎骨折とは(じょがくこっせつ、かがくこっせつ) いずれも、受傷後、歯の噛み合わせ異常を自覚するようになる。治療は咬合(噛み合わせ)の回復が主目的となり、手術に噛み合わせを修復した後、上顎と下顎をワイヤーや輪ゴムで固定する顎間固定という処置を数週間行う。
4833 胸部打撲傷とは(きょうぶだぼくしょう) 胸部の外傷は、刺創、銃創なとの鋭的外傷と交通事故なとの鈍的外傷に分ける。胸部打撲傷はこのうちの鈍的外傷に属す。交通事故の増加により、車外ではねられて地面にたたきつけられて生ずる胸部打撲以外にも車内で自動車のハンドルにぶつかるハンドル外傷、ダッシュボードにぶつかるダッシュボード損傷、シートベルト損傷などがみられる。胸郭は弾力のある12本の肋骨、左右の鎖骨、胸骨および胸椎で囲まれており、これによって、肺、心臓、気管、大動脈、 食道、横隔膜などが保護されている。 軽い打撲傷では、その部分に疹痛や皮下出血がみられるが、これらは湿布や消炎鎮痛剤で軽快する。挫傷を伴っている場合は、その部分の洗浄、消毒を行う必要がある。
4834 肋骨骨折とは(ろっこつこっせつ) 胸郭を形成している胸骨、肋骨、肩甲骨、鎖骨、胸椎の損傷のうち、肋骨骨折は胸部の外傷で最もよくみられる。肋骨骨折では、直接的に加わる外力では肺損傷を、間接的に加わる外力では心大血管損傷を伴いやすい。年少者では肋骨に弾性があるために肋骨骨折はきたしにくく、逆に高齢者では軽い外力によっても肋骨骨折をきたしやすい。好発部位は第4〜10肋骨。第1肋骨骨折では鎖骨下動・静脈損傷、第8以下の肋骨骨折では、右側では肝臓や右腎損傷を、左側は脾臓や左腎損傷を合併しやすい。鎖骨下動脈損傷では同側の腕の冷感、橈骨動脈の拍動が弱い、さらには低血圧となる。肝臓や脾臓損傷は腹腔内出血による腹部の痛み、膨隆、低血圧がみられる。腎損傷では血尿がでる。このように、肋骨骨折はそれ自体が治療上で問題となることは少なく、同時に合併する胸腔内臓器の損傷が問題となることが多い。
治療:肋骨骨折時には胸腔内臓器損傷の合併 が予後を左右することが多いので、ただちに救急施設に収容する。
4835 心挫傷とは(しんざしょう) 強い胸部打撲傷、とくに胸骨部へ強い外力が加わるハンドル外傷などによって生じる。心電図所見が正常または梗塞所見を示すくらいの単純損傷から、急性心嚢血腫と心タンポナーデを伴う心房破裂、さらに致命的な完全心室破裂まである。心房破裂、心室破裂の場合は緊急手術にて破裂部を修復するのが唯一の救命手段。とくに心室の挫傷では血液所見でLDH、CK、M8、トロボニン値の上昇がみられ、その推移をみる。放射性同位元素(ピロ燐酸)を用いた診断も有効。不整脈を伴う徐脈(脈が弱く、遅くなる)には、体外式べースメーカーによる緊急べーシングが必要となることもある。心挫傷によりあとから心室瘤が生じることもあり、経過観察が大切。
4836 血胸とは(けっきょう) 胸膜腔内に血液がたまった状態。外から加わった力により、胸腔内の臓器組織が損傷を受けて出血し、胸膜腔内に血液がたまった状態になる。レン トゲン上肺であることを示すX線透過性の部分(黒い領域)が減少、消失するので診断できる。損傷を受ける臓器組織は肋骨、肺、心臓、大血管、横隔膜、食道、胸椎などがある。胸腔内の臓器にまで損傷が及ぶような外力で胸部を強打した場合、胸膜腔内に出血がおこり、胸痛と呼吸困難を生じる。胸痛は単なる肋骨骨折でもおこるため、胸痛だけで血胸と診断することはできない。胸膜腔内への出血が急激な場合はショック症状をきたし意識消失、心臓停止をおこすことがある。
治療:胸膜腔にたまった血液を取り除くことが治療の目的となる。胸腔ドレーンと呼ばれる管を局所麻酔をした状態で胸膜腔内に挿入し、胸膜腔内の出血を体外へ導く。通常、胸腔 ドレーンは2週間以内に取りはずす。血胸の原因が心大血管損傷による場合は、短時間(2〜3分)のうちに大量の血液が胸膜腔内に出血するため、血圧の急激な低下と循環不全によって心臓停止をおこすことがある。この場合は緊急手術を行っても救命することは困難。
4837 外傷性気胸とは(がいしょうせいききょう) 胸部外傷(打撲、刺創、銃創)によって肺を包む胸膜が裂けたり、損傷を受けて肺の中の空気が胸膜腔内に漏れた状態。まれに気管支が断裂するような損傷を受けると吸い込んだ空気が大量に胸膜腔内に漏れて気胸をおこす。また、刃物が刺さったり銃弾を受け胸壁に穴が開くと、外部から直接胸膜腔内に空気が吸い込まれ気胸をおこす場合もある。
どんな現れ方か:胸膜腔内に漏れた空気により、肺が膨張収縮を効率的に行うことができなくなり、呼吸困難をきたす。漏れる空気の量が大量になると、肺が押しつぶされ、呼吸に関係しなくなるばかりでなく、 肺の外にたまった空気が心臓や大血管を圧迫し、循環不全をおこす。
治療:胸部レントゲソ写真や胸部CTなどの検査によって外傷性気胸であることが診断された場合は、胸腔ドレーンを胸膜腔内に挿入し、胸膜腔内にたまった空気を体外へ導きだして、通常の呼吸状態を取り戻す。空気漏れの原因が胸膜や肺の損傷であれば、時間の経過とともに治癒することが多いので、胸腔ドレーンを挿入して、空気漏れが止まるまで経過を観察する。 気管支損傷が合併している場合は、開胸手術によって破裂した気管支を修復する必要がある。
4838 フレイルチェストとは(ふれいるちぇすと) 連続する3本以上の肋骨か、それぞれ2カ所以上で骨折した場合や、両側の肋軟骨が骨折した場合に骨折部と他の胸郭との連続性が断たれるために胸郭が息を吸うときに陥没し息を吐くときに突出する。このように正常の呼吸運動と全く逆の呼吸運動をする状態をフレイルチェストという。
どうして病気がおこるのか:交通事故や労働災害、高所からの墜落により胸部を強く打撲し、肋骨や胸骨の多発骨折をおこすことが原因になっている。胸部に外傷を受けた後、胸痛、とくに呼吸運動に伴う胸痛を訴え、徐々に呼吸困難、チアノーゼ、皮下気腫などがひどくなり、血痰を吐く。 患部の胸郭が他の部位と全く正反対の呼吸運動を しているためにシーソー様の呼吸になる。
治療:気管の中へ人工呼吸用の管を入れ(気管内挿管)、人工呼吸器に接続して約2〜3週間の間、人工呼吸を続ける。 この方法は胸の内側から圧力をかけて胸郭の不安定部を固定しようとするもので内固定法と呼ばれる。
これに対し外科的に肋骨骨折部を固定する方法もある。
4839 心タンポナーデとは(しんたんぽなーで) 心臓を包んでいる心膜の炎症(心膜炎)により心膜内に浸出液がたまった場合にもみられるが、外傷に続発する心タンポナーデについて述べる。刺創や銃創などの穿通性の胸部外傷、鈍的胸部外傷により心臓に傷がつくと、心臓内の血液が傷から漏れて心膜内にたまるため、心臓が十分拡張できなくなる。このため全身から心臓に戻ってくる静脈血が心臓に戻り切れず、その結果、心臓から全身に押しだされる動脈血が著しく減少して血圧低下をきたし、最終的に心停止に至る。
どうして病気がおこるのか:心臓を刃物で刺されたり、拳銃で撃たれたり、あるいは交通事故などで胸部を圧迫された結果、心臓が破裂した場合などにみられる。傷を受けてから短時間のうちに胸内苦悶、頻脈、血圧低下が現れ、症状は急激に悪化する。進行すれば頸静脈怒張、四肢冷感、冷汗などのショック症状、意識消失、心停止に至る。
治療:心膜に針を刺してたまった血液を取り除くか、緊急手術を行い、損傷された心臓を修復しない限りは通常助かることはない。胸部外傷のなかでは最も重症で致命的である。
4840 外傷による腹腔内出血とは(がいしょう、ふくくうないしゅっけつ) 外部から何らかの衝撃が腹部に加わり、腹腔内の臓器、とくに血液が大量に流れている肝臓、脾臓、腎臓などや大血管が損傷を受け、腹腔内に多量の血液がたまる病気。
どうしておこるのか:交通事故や転落などの不慮の事故による出血、まれにナイフによる刺創やピストルによる銃創によっておこる。大血管が損傷すると急速に出血性ショックの状態になるが、腹腔内臓器損傷の場合には症状は徐々に進行する。打僕した部位を中心とする疼痛や圧痛が最初にみられ、時間の経過とともに腹腔内にたまる血液量が増えてくると、腹痛が激しくなる、腹部がふくれるなどの症状に加え、皮膚温低下、冷汗、頻脈、意識の混濁などのショック症状が現れる。
治療:腹部症状やショック症状が認められる場合は本損傷が疑われ、救急病院に患者を運ぶ。
4841 外傷による急性腹膜炎とは(がいしょう、きゅうせいふくまくえん) 外から加わる衝撃で腹腔内の管腔臓器(胃、小腸、大腸、胆嚢、膀胱など)が破裂して、腹腔内に胃や腸の内容物や胆汁が漏れ出て腹膜炎を おこす病気。
どうしておこるのか:外傷による腹腔内出血と同様の原因で急性腹膜炎がおこる。交通事故の場合はハンドルで腹部を打撲した際に胃や腸が挫滅して破裂するか、シートベルトの間にはさまれた腸管の内圧が上昇し破裂するかのいずれかによることが多い。損傷を受けた管腔臓器によって、腹膜炎の発症時期やその強弱に違いがある。胃や十二指腸が損傷を受けた場合は酸性の内容物が腹腔内に漏れるため、早い時期から腹痛、嘔吐などの症状が現れる。大腸が損傷すると、 内容物に多量の細菌を含んでいるため早い時期から腹膜炎の症状が現れる。一方、胆嚢損傷による胆汁の漏れ、膀胱破裂による尿の漏れ、小腸破裂による小腸内容物の漏れによる腹膜炎の場合は症状の発現は多少遅れる。これは胆汁や尿、小腸内容物の腹膜に対する化学刺激が弱いためと考えられる。
治療:症状や医師の所見により外傷性腹膜炎が疑われたときは超音波検査や腹部CTスキャンなどの検査を行い診断を確定する。診断が確定したら、すぐに全身麻酔し手術を行う。
4842 中皮腫とは(ちゅうひしゅ) 肺や心臓、胃腸・肝臓などの臓器は、それぞれ胸膜、腹膜、心膜などの膜に包まれていて、これらの膜の表面をおおっている中皮から発生した腫瘍を中皮腫という。石綿を吸い込むことによって発症するとされる。悪性中皮腫はがんの一種である。石綿(アスベスト)にさらされてから発症までの期間は個人差が大きいが約15〜40年前後。治療法としては、肺を取り囲む胸膜ごと摘出する手術以外、今のところ有効な治療法はない。悪性中皮腫は既存の抗がん剤への反応性が低い。
4843 脊髄損傷とは(せきずいそんしょう) 脊髄(背骨=脊柱の通路を走る中枢神経)と脊椎(背骨を形作る33個の骨片=椎)は異なります。 『脊髄損傷(神経マヒ)』と、その原因症病名の『脊椎損傷(骨折)』は異なります。 脊髄損傷が重篤なマヒ(障害)を起こすので、脊椎損傷(骨折)だけではマヒは起こりません。脳と同じ中枢神経系の脊髄は、その位置によって、頭部側から脳と延髄に続いて、首の部分の頸髄から下へ、胸髄、腰髄、仙髄(一部を尾髄と言う事もある)と呼ばれる。 損傷部位も、その位置によって、頸髄損傷・胸髄損傷・腰髄損傷・仙髄損傷と呼ばれる。これに、骨盤と尻尾(尾てい骨)の部分にある、脊髄末端に続く末梢神経系の馬尾神経の損傷を含めた総称が『脊髄損傷』、略して『脊損』です。
1)損傷部位による麻痺の状態
脊髄損傷者は損傷部位により運動・感覚マヒ、直腸膀胱マヒがおきる。 胸・腰髄損傷(胸・腰損)は、手の機能は健全で、主に下半身にマヒを持ち、内、第8胸損以上は、内臓機能不全等を伴う体幹マヒと、腹・背筋マヒによる座位不安定(もたれる必要)があります。 更に、ほぼ第5胸損以上は、発汗体温調整機能不全を併せ持ちます。反面、腰髄下部以下の損傷の多くは不自由ですが脚が動きます。頸髄損傷は、以上の障害のほかに手もマヒ(四肢マヒ)し、特に心肺機能(呼吸)や自律神経機能(血圧の反応など)が低下する。 また、頸髄損傷者はくしゃみやせきが困難になる。第4頸髄損傷より高位の損傷では嚥下に障害が出るので、誤飲に注意。肺炎の原因になる。
2)完全麻痺と不全麻痺
脊損には、完全損傷(完全マヒ)と不完全損傷(不全マヒ)があり、その損傷の程度と位置によって、マヒの重さと広がりが違い、特に頸損の場合は著しい障害差がある。また、頸損に多い不全マヒの多くは不自由ながら歩行できるが、手にマヒの残ることがある。
4844 脊椎損傷とは(せきついそんしょう) 脊椎とは頸椎(首)、胸椎(背中)、腰仙椎(腰)、及び尾骨など33個の骨片(椎)から成り、その中には脊髄などの重要な神経が収まっている。脊椎損傷とは脊椎の骨折のことでマヒは起こりません。脊椎の中の脊髄が損傷されると麻痺が起こる(『脊髄損傷)。
4845 四肢の開放性損傷とは(しし、かいほうせいそんしょう) 開放損傷は損傷が皮膚表面にとどまらず皮下組織(皮下脂肪、筋肉、神経、血管、骨)まで及ぶ傷をいう。 そのため、その損傷に対し縫合処置が必要。 皮膚は感染に対してバリアー (防御因子)の機能をもっているが、 開放損傷では皮下組織が直接に汚染物や外気に触れるため傷口の感染(化膿) が懸念される。
包丁やナイフによる切創、強い打撲や交通事故などの鈍的外傷による挫創や挫滅創、咬傷、釘、杭などが刺さったために生じる刺創、杭創などがある。
治療:開放損傷は汚染創(細菌が付着している)とみなして次の処置する。
@傷および傷口周辺を十分に洗浄
Aハサミやメスで、傷の内外の挫滅や壊死した組織を除去。
B受傷してから6時間以内(ゴールデンタイム)に、十分に@Aが行えれば、皮膚の縫合。
C6時間以上経過した損傷や、@Aが十分に行えなかった損傷では、皮膚縫合は行わず開放したままにしておき、後日、傷口に感染がないのを確認して、縫合を行う。
4846 四肢切断とは(ししせつだん) 1)切断肢指の再接着
顕徴鏡下での手術が進歩し、いったん切断された肢指の再接着が可能。しかし、すべての場合に再接着ができるわけではない。以下の条件を満たす場合に可能。
@ナイフ、包丁、電気ノコギリなどによる挫滅の少ない切断(交通事故や機械にはさまれて受傷した挫滅の強い切断は再接着は困難)。
A切断されてから常温保存で6時間以内。 氷などによる冷蔵保存で10時聞以内。
B65歳以下で血管病変・血液凝固系疾患がなく、全身状態が良好な場合。
2)切断肢指の処置
上記の条件が満たされれば、切断された肢指をポリエチレン袋にそのままの状態で密封し、この袋ごと氷片の入った容器に入れて冷却保存する。なお 切断肢指を直接氷水につけることは避ける。
3)再接着できない場合
組織が広範囲に挫滅して傷口の修復が不可能な場合や血管損傷があって末梢部が壊死に陥った場合は切断肢指を除去し切断面を縫合。この場合、義肢を装着することになる。
4847 鎖骨骨折とは(さこつこっせつ) 鎖骨骨折は新生児から老人までどの年代にもみられる骨折ですが、活動の盛んな学童期から青年層に多い。鎖骨は胸骨と肩甲骨や肩関節との間のつっかい棒のような役割をしているため、鎖骨が骨折すると肩幅は狭くなる。
どうしておこるのか:転倒、転落して肩の外側を下にして体重をかけた場合によくおこる。
安静時でも痛み、腕を動かすと痛みがさらに激しくなり、骨折した骨同士が触れ合ってゴリゴリとした音を感じることがある。骨折部は通常突出して皮下出血を伴い、押さえると痛みが強くなる。
治療:皮下骨折は鎖骨バンドや八字帯などで固定する保存的治療が原則で、通常4〜8週間固定する。ずれが大きい場合は骨を元の位置に戻してギプス包帯を巻く。開放骨折では傷の処置と同時に手術し骨折部を固定するのが一般的。
4848 上腕骨骨折とは(じょうわんこつこっせつ)) 上腕骨頸部骨折(近位端の骨折)は老人に多く、肩関節脱臼を伴うことがあり、粉砕型になることもある。そのため肩関節の運動障害を残すこともある。顆上骨折、顆部骨折(末端の骨折)は学童期に多い。いずれの部位の骨折も、転倒、転落なとによるものが多い。
症状;骨折部の痛み、腫脹、変形、皮下出血、動かせないなどの機能障害が骨折した直後から現れる。
治療:上腕骨頸部骨折はハンギングキャスト(ギプスの重みで骨折部を整復する方法)で治療するが、関節部の整復が困難な場合には手術。中央部の骨折もハンギソグキャストや機能的装具療法が行われるが、ずれの大きな骨折や橈骨神経まぴを合併している場合は手術。
4849 上腕骨橈側顆骨折とは(じょうわんこつとうそくかこっせつ) 顆上骨折と同様に学童期に多く発生。 肘の外側にある骨の突起(橈側顆)には手首や指を背屈する(甲の方へ反らす)筋肉がついている。この筋肉の収縮で骨が剥離して、骨折をおこすのが大部分。原因は転倒、転落によっておこる。
症状:肘関節外側の痛みとはれ、運動痛、肘をぐるぐる回すと痛みが増す。顆上骨折と異なり、はれが肘関節全体に及ぶことはない。
治療:骨折部のずれの程度で治療法が異なる。軽度のものはギブス固定、ずれが大きなものは手術療法。
4850 前腕骨骨折とは(ぜんわんこつこっせつ) 肘関節の関節面を含んだ骨折(肘頭骨折、橈骨頭骨折)から橈骨、尺骨骨幹部の単独骨折、橈骨尺骨両方の骨折、手関節部付近の骨折(老人に多い)、骨幹部骨折、近位や遠位橈尺関節の脱臼を伴う骨折など多くのタイプがある。
肘を伸ばしたまま手をついた、直接重量物に挟むまれた、手首を伸ばしてあるいは曲げて手をついた、ローラーに巻き込まれたなど種々の原因でおこる。
症状:骨折部のはれ、変形、痛みによる手の運動障害などの原因によっては開放性骨折になったり、切断されたりすることがある。また両前腕骨骨折では骨折部は背側に突出するように変形し、橈骨末端骨折ではフォーク状、あるいは逆フ才ーク状変形をおこす。骨折部が不安定で内出血、はれがひどい場合には、阻血性拘縮をおこし、手の機能を損なうことがある。
治療:整復ギプスで固定し、様子をみながら治療を行う。 しかし両前腕骨骨折でずれが大きい場合は、徒手による整復ができても安定が悪く、ギブスの中で再びずれてしまうので手術を行う。肘関節、手関節の関節面にかかる骨折でずれが大きなもの、筋力によってずれたものは手術。
4851 やけどとは/火傷とは/熱傷とは(やけど、かしょう、ねっしょう) やけどは、熱による障害のこと。
原因 :火事や台所仕事、職場等で、火や熱に皮膚が触れることで起こる。
症状:
第T度・・・表皮に紅斑、浮腫、痛み
第U度・・・真皮まで達する、紅斑、水泡、痛み
第V度・・・皮下脂肪まで達する、皮膚の壊死
子供の皮膚の1割以上、大人では2割以上のやけどを負うと、生命に危険がある。
治療:まず第一に患部を冷やす。ショック状態には、足高に寝かせ、水分補給をする。植皮手術を要する場合もある。
4852 大腿骨頸部骨折とは(だいたいぶけいぶこっせつ) 大腿骨のつけ根の関節(股関節)の骨折のこと。高齢者、とくに骨が弱くなった骨粗鬆症の人におこる。 ちょっとした外力が加えられても骨折しやすく、例えば路上でつまずいて転倒したり、風呂場ですべったりしたときにおこる。けが直後は骨折した側の大腿の股関節付近が強く痛み、立って歩けなくなる。また、股関節を曲げたり伸ばしたりできない。
治療:骨折が疑われるなら安静にしているだけでは治らないので整形外科を受診。手術療法もしくは骨折した側の足を引っ張る牽引療法。
4853 膝蓋骨骨折とは(しつがいこつこっせつ) 膝の"お皿"と呼ばれている部分の骨折。膝を強くぶつけたり、膝から転倒した場合におこり、けがをした直後は打撲とは違って痛みが強く、歩いたり膝を曲げたりができない。また、しばらくすると膝関節の中に出血がおこり、強くはれ上がる。 ひびが入った程度の骨折では、最初はそれほど痛くない。しかし、後になってはれてきたり痛みが残る場合は骨折が疑われる。
治療:膝蓋骨は膝関節を曲げたり伸ばしたりするための靱帯がついており、骨折の程度が大きければ手術。 また、骨折の程度が小さい場合は、ギプスなどの固定療法。大腿骨側の関節面での障害が強い場合は、痛みが残ったり、膝の曲がりが悪いことがある。
4854 脛骨骨折とは(けいこつこっせつ) 膝から足首までの前面にあって、触れると平たく感じる長い骨の骨折。原因はオートバイ事故が一番多く、 次いでスキーや転倒など脛骨に直接強い外力が加わった場合におこる。膝の関節や足首の関節(足関節内側) の近くでは、膝や足首を強くねじった場合によく骨折する。
治療:痛みが強い場合は骨折部を動かさないようにすることが大切。治療方法は骨の折れ方によりギプスなどの固定療法、足を引っ張る牽引療法や手術療法。 足首から1/3付近での骨折は骨への血行が少なく、骨折が治りにくい場合がある。
4855 腓骨骨折とは(ひこつこっせつ) 膝の外側から足首の外側まで続く細い骨の骨折。腓骨に直接物があたったり、交通外傷などの強い外力を受けて脛骨骨折と合併しておこる。また、足首を強くねじった場合に、 外側のくるぶしでの骨折や、腓骨がねじられて膝近くで折れることもある。
治療:足首を強くねじったときに外側のくるぶしがはれ、痛みで歩けない場合は腓骨の足首での骨折が疑われる。しかし 腓骨は足首の関節(足関節)以外では、機能的にあまり重要ではないので、けがをした直後でも歩くことかできる。このため治療も足関節近くの骨折では、折れかたが強ければ手術療法を行うが、 それ以外の部位での骨折では、ずれが強 くてもギプスなどの固定療法を行う。
4856 踵骨骨折(しょうこつこっせつ) 足のかかとにある四角い骨の骨折。高いところから飛び降り、かかとから着地したときにおこる。 けがをした直後はかかとの部分がはれて、痛みが強く歩くことはできない。骨折の程度が強い場合は足の裏が偏平化して内出血がみられる。はれは時間がたつにつれ強くなり、痛みも強くなるため、局所を冷やして足を高くする。
治療:骨折の程度が強く足の偏平化が強い場合は手術療法。骨折の程度が軽ければギプスなどの固定療法。この骨は歩行時に、骨折後はしばしば長期 にわたって痛みを残す。
4857 骨盤骨折とは(こつばんこっせつ) 骨盤は内臓を支え上半身の体重を両足に伝えたり、股関節の運動のために、多くの筋肉が付着して複雑な構造です。このため、スポーツ時に筋肉の付着部が剥がれる剥離骨折から、 交通事故や高所からの転落など強い外力によっておこる重度骨盤骨折まで多様な骨折がみられる。重度骨盤骨折では数時間以内に出血多量で死んでしまうこともある。
症状:骨折した原因によって、ケガをした直後の症状も異なる。剥離骨折の場合は骨折した部位が歩くときに痛み、はれが現れる。重度骨盤骨折の場合は骨盤の痛みが強いため動くことができない。 最初に意識がはっきりしていても、骨盤からの出血によってショック症状をおこし、数時間以内に意識がなくなる場合がある。
治療:骨折の程度が軽ければベッド上で安静にしておくだけで治るが、骨折の程度がひどい複雑骨折の場合は、輸液や輸血療法で出血性ショックの治療を行う。次に全身状態が安定後、骨折に対して手術療法。
4858 毒蛇咬傷とは(どくじゃこうしょう) 日本では北海道から九州にかけてマム シ、奄美群島以南ではハブが毒蛇として 棲息しています。ヤマカガシという蛇は 従来無毒とされていましたが、咬まれ具 合によっては、毒がでてくるとされてい ます。 毒とは数多くの種類の酵素が混じった 唾液のことで、蛇は牙を突き立てて毒を 注入します。ただし、注射針のように牙 の尖端から毒がでているのではなく、尖 端から数ミリ離れた側孔からでているた め、咬■まれたら必ず毒が体に入るとは限 りません。 チクッと刺されたような痛みが、次第 に焼けつくような耐えがたい痛みとなり、 二〇⊥一一〇分もすると、はれがでてくる ようなときは、毒が淺入されています。 その場へ□、商一切な処帷セ{唯ヅな`・叱-一・
いと、竈の作用は全身に及ぴ、量思時に は命を落とLたり、ひどい後遺症を残す ことになります。 ■受傷したときの注意 咬まれたら、まずは慌てず対処するこ とです。急いで走ったりすると、毒の吸 収が速くなり、重症になってしまうから です。次いで、咬まれた箇所より心臓寄 りの場所をしばります。しぼるものは、 なるべく幅広いものを利用し、手足の脈 が触れる程度のしばり方で十分です。も Lしばるものがなければ、咬まれた手足 は心臓の高さよりも下にしておきます。 そして、毒を体外にだすために、口で がEん 吸いだします。その際、牙痕を数ミリ切 開するとさらに効果が⊥がります。その 後、急いで病院に運びます。 毒蛇に咬まれたら、抗毒素血清療法が しゆちよう 行われます。また、腫脹の程度が著しい ときには、減脹切開という処置が施され ます。
4859 イヌ咬傷とは/ヒト咬傷とは/動物咬傷とは(いぬこうしょう、ひとこうしょう、どうぶつこうしょう) 動物の口の中に数多くの細菌が存在する。咬まれても単に歯形がつく程度なら問題はないが皮膚が切れ、牙が刺さったような傷は口腔内の細菌が奥深く侵入したと考えられる。したがって、.咬傷はカミソリなどの傷とは違う汚染創として厳重な処置を行わなう必要がある。
治療: 救急処置として傷口を水道水で洗 い流した後、清潔なガーゼでおおい医療機関を受診。
4860 クラゲ刺傷とは(くらげししょう) 海水浴中に電気が走るような激しい痛みと、はれを生じるのがクラゲ刺傷です。以前に刺されたことのある人やアレル ギー体質の人は顔面紅潮、浮腫、激しいせき、胸内苦悶、嘔吐など全身に症状に及ぶことがある。クラゲは数本、数10本の触手を持ちその表面に毒の入った刺胞を持っている。その刺胞の毒により焼けるような痛みを生じる。治療:刺されたらただちに2リットル程度の食酢をかける。局所の痛みは氷で冷や してやわらげる。痛みが続いたり、全身症状の強い場合は医療機関を受診。
4861 蜂刺傷とは/ハチ刺傷とは/はち刺傷とは(はちししょう) ツバチ、スズメバチなどハチは小さいため、注入される毒量はわずかですが、ときとして激しい全身症状を急激に引きおこしたり、ハチの大群に襲われ死亡することがある。
治療:ミツバチの針は魚の釣針状になって抜けにくくなっている上に毒嚢が残 り、これが収縮して毒を注入し続ける。従って、針を取り除くときはピンセツトなどでつまむのではなく、ナイフでそぎとるのが良い。アンモニアを塗るのはハチの毒が酸性とアルカリ性の毒が混じり合ったものなので効果は期待できまない。痛みに対しては冷やすのがよい。
4862 熱中症とは(ねっちゅうしょう) 熱中症とは体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる、様々な体の不調であり、専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」とされている。熱中症は、いくつかの症状が重なり合い、互いに関連しあって起こる。また、軽い症状から重い症状へと症状が進行することもあるが、きわめて短時間で急速に重症となることもあります。  熱中症は、大変に身近なところでおきていいます。そのため、十分にその危険性を認識しておくことが必要です。  従来、医学的には治療方針をたてる上で、暑熱障害、熱症として、以下の3つの病態に分類されています。
@熱痙攣(heat cramps)
A熱疲労(heat exhaustion)
B熱射病(heat stroke)
4863 熱疲労とは(ねつひろう) 高温の環境下で、とくに蒸し暑いところで、大量の汗をかき、体内の水分や塩分が不足することで起こる。異常なほど汗をかきながらも、皮膚は青白くてじっとりしている、疲労感や頭痛、めまい、吐き気、強い口の渇きなどの兆候が現れたら熱疲労を疑う。暑さに慣れない中での急で激しい運動や肉体労働、また、乳幼児や衰弱した高齢者などに起こりやすく、体内の水分が不足することで起こる。また、水分だけを取って塩分を摂取しない場合にも症状が起こり、強い疲労や頭痛、けいれんなどが起こりる。手足を先端から身体の中心に向かってマッサージするのが効果的。
4864 熱失神とは(ねつしっしん)   運動中、血流を促すポンプの役目を果たしていた筋肉の動きが運動をやめることで止まり、合わせて、発汗によって脱水状態となってしまうと、身体を循環する血液の量が減少し、脳にも血液を十分に送ることができなくなり、一時的に脳の虚血状態を起こすことでめまいや失神が起こる。高温の環境の中で急激に運動を行った場合などに注意が必要。
4865 熱けいれんとは/熱痙攣とは(ねつけいれん) 高温多湿の環境での重労働や、夏場のジョギングなどの運動中などに起こる。たくさんの汗をかいたのに水分を取らなかったり、塩分を含まない水分だけを補給したことで、体内電解質が不足することが原因となり、筋肉がけいれんしてしまう。発汗や痛みをともなう筋肉のけいれんに伴って、吐き気や腹痛を起こす場合もある。熱けいれんが起こってしまったら、スポーツドリンクを薄めて飲んだり、けいれんが起きた部分を冷やす、ストレッチを行うなどの処置をする。
4866 日射病とは(にっしゃびょう) 直射日光の下で長時間過ごしているときや、高温の中で急激に運動した場合に、めまいを起こしたりや失神したりするのが日射病。頭や首に直射日光があたっていることで末梢の血管が広がり、身体を流れる血液の量が減り、熱失神とほぼ同じしくみで症状が起こる。強い日射しを頭や首に直接受け続けるとこの日射病にかかりやすくなりますので、草むしりの際は帽子やタオルなどでカバーするなどの対策を行う。日射病になったら、すぐに涼しいところに移動して服をゆるめて安静にし、水分を補う。
4867 熱射病とは(ねっしゃびょう) 身体が熱を十分に発散できず、熱が体内にこもってしまい、高い体温に身体が対応しきれなくなる状態が熱射病。水分や塩分の不足から体温調節機能が異常をきたし、死に至ることもある重度の症状。高温多湿の下での長時間の労働や激しい運動のときに気をつける。汗はかかず、皮膚が乾燥して赤く熱っぽくなり、体温は39度以上になることが多く、めまい、吐き気、頭痛などのほか、意識障害や錯乱、昏睡、全身のけいれんなどを伴うこともある。体温が長く続くと、全身の臓器障害が起こる危険性が高まる。熱射病になったら緊急な対応が必要。一刻も早く医療機関を受診。
4868 日やけとは(ひやけ) 夏の暑い日差しの中での海水浴、スポーツ、作業でおこり、皮膚は軽い〃やけ ど〃の状態となる。皮膚は赤くなってヒリヒリ痛み、ときに水庖ができることがある。日やけが全身に及ぶときは、軽い脱水状態となりのどが渇く。
治療:痛みやかゆみは冷たいタオルやカーマインローションで抑えることができ、アスピリンの内服も有効。
4869 電撃傷とは(でんげきしょう) 軽症の場合はピリピリとしびれるだけですが、重症になると心臓が止まったり、ひどいやけどをおこす。 一般的に低電流より高電流、低電圧より高電圧、乾燥した皮膚より湿った皮膚、直流より交流が重症になる。多くの電撃傷は高電圧の電気を取り扱う人にみられるが、私たちが日常使用している100ボルトの電圧でも心室細動という不整脈がおきて致命的になることがある。幼児がいたずらでコンセントに金属片を差し込んで指に受傷したり、電化製品のコ ードを咬んで口、顔両に受傷したりする。
治療:電撃傷でのやけどは通常のやけどとは異なり、見た目以上に深部にまで及んでいる場合や、受傷直後は何ともなくとも、 数日してから損傷が明らかになることもある。感電して意識を喪失した人、やけどがある人、胸痛、血尿のある人、筋肉痛、背骨の痛み、全身倦怠感、頭痛を訴える人は医療機関を受診。
4870 凍傷とは(とうしょう) 組織が冷気にさらされると血管が収縮する。皮膚の温度が25度まで下がると、組織の活動に必要な酸素が不足し、チアノーゼ(暗紫色)になる。皮膚温度が15度まで下がると、逆にピンク色になる。この頃より組織の損傷がはじまり、皮膚の温度がマイナス4度になると凍傷がおこる。これは組織の水分か氷結し、シャーベット状になった状態といえる。凍傷の部分は白色で冷たく硬く、感覚がない。温めると、水ぶくれとはれをおこし、赤色、青色、黒色になって強い痛みを覚える。そのようになると、全身も冷えて低体温の状態になっているので、全身を温める。
治療:凍傷の部分を、40〜42度の温湯で15〜20分ほど温める。直火やストーブを使うと温める熱の調節が難しいので避けること。また凍傷部分をこすったり、動かして温めないこと。
4871 化学損傷とは(かがくそんしょう) 皮膚や粘膜に障害をきたす化学物質はたくさんある。とくに家庭内では消毒剤、漂白剤、さび落とし、トイレ洗浄剤の誤った使用で問題が生じる。これらは、子どもの手の届かない場所に置くとか、鍵の掛かった戸棚に保管する気配りが必要。化学損傷の中で多いのが酸とアルカリによる損傷です。酸やアルカリが皮膚に触れると"やけど〃を生じるが、酸によるやけどは通常は浅いもので、発赤やびらんを伴う。アルカリのやけどは深く、蒼白でなめし皮のようになる。 酸とアルカリでは、アルカリのほうが重症になりやすい。
治療:家庭内で使用されている酸・アルカリ剤のほとんどは成分が弱いのであまり問題とならないが、これらを付着したままにしておくと、後でかぶれたりするので十分な水で洗い流す。工業用、実験用の酸やアルカリは強いので、皮膚を腐食する可能性がある。付着した液剤を中和することなど考えずに、ただちに大量の水で洗い流し、これを最低30分続けた後、医療機関を受診。
4872 不安神経症とは/パニック障害とは/心臓神経症とは(ふあんしんけいしょう、ぱにっくしょうがい、しんぞうしんけいしょう) 不安神経症とはパニック障害とも心臓神経症ともいわれ、次の2つの症状から構成される。   
1)不安発作(パニック発作)     
動悸、胸痛、窒息感、めまいなどが突発的に起こり、同時に死の恐怖や発狂する恐怖を感じる。発作は数分間でピークに達してその後消腿する。1度だけのこともあるが、通常短期間に数回くりかえすことが多い。 心電図等の循環器の検査には異常は認めない。   
2)予期不安(2次的不安)     
不安発作に対する不安が強くなり電車やバスに乗れなくなったり、外出がいやになったり、 床屋や美容院、会議などの長時間そこにいなければならない場所が不安になったりする。 予期不安が重症になると、行動範囲が著しく制限され、家から出られなくなったり、 日常生活(例えば入浴など)が困難になることもある。         
治療:不安神経症(パニック障害、心臓神経症)は、生理的な要素が強い不安発作と、心理的要素が強い予期不安とからなっている。そのために発作の出現しやすい急性期には抗不安薬等の薬物療法が必要となり、準急性期〜慢性期の予期不安に対し心理的な治療が必要になる。
4873 強迫神経症とは(きょうはくしんけいしょう) 強迫神経症とはどうでもいいと思うような考えや不快な考えが、自分の意思に反して繰り返し頭に浮かんできて止めたくても自分の意思で止められず、それに抵抗しようとすると強い不安が起こる病気。自分の意思に反して意識に浮かんで、払いの除く事が出来ない考えを「強迫観念」と言う。不合理だと解かっていてもある行為をしないではいられないものを「強迫行為」と言う。強迫神経症では強迫観念と強迫行為が起こるのが特徴です症状:
1)敵意や攻撃に関すること:他人を傷つけたり殺したりするのではないか、という考え  
2)不潔に関すること:糞尿や細菌で汚れたのではないか、という考え  
3)詮索癖:些細な事でも理由を知りたくなり、確かめないと気が済まない  
4)計算癖:敷き石・電柱・階段など目に付いた物の数が気になって数えずにはいられない
などがある。強迫行為は、強迫観念に抵抗すると強い不安に襲われてしまい、何かを実行することでその不安が解消できると感じる行動。  
4874 神経症とは/ノイローゼとは(しんけいしょう、のいろーぜ) 神経症(ノイローゼ)は心因性精神障害のひとつで、疾患等の原因なく、心身に障害が起きるものである。
原因 : 多くは、目前の環境に適応できず、不安感にとらわれて精神的バランスが崩れることで起きる。症状により、強迫神経症、不安神経症、ヒステリー、恐怖症等に分類される。
症状:
強迫神経症・・・ささいな考えが頭から離れなくなる。
不安神経症・・・過剰な不安感が続き、動悸や息苦しさ、手足のしびれ等がある。
ヒステリー・・・声が出ない、立てない等の身体症状が人前で出る。健忘、二重人格もある。
恐怖症・・・赤面恐怖、対人恐怖、高所恐怖、閉所恐怖、不潔恐怖等。
治療:抗不安剤、抗うつ剤、精神療法、行動療法、暗示療法、麻酔分析療法等を行う。
4875 ヒステリーとは(ひすてりー) ヒステリーには転換型ヒステリーと解離性ヒステリーがある。
転換型ヒステリーは心理的次元の問題が身体的次元に姿を変えてあられるもの。症状としては嚥下困難、失明、二重視、難聴運動麻痺、失立失歩、視野狭窄、けいれん発作、意識消失などがある。これらの症状には神経学的所見がなく、症状出現に暗示が大きな影響を与えていて、症状を持つことで本人に都合がよくなるという疾病利得を得ていて、病状に対して無関心で不安がらないといった特徴がある。
解離型ヒステリーは、本来ひとつになっている人間の人格がゆるみ二つ(もしくはそれ以上に)分離する症状です。具体的な症状には、自分とは違う別の人格と入れ替わって時間を過ごす二重人格や多重人格、自分がだれでどこに住んでいるといったこれまでの生活のことが部分的もしくは全てにおいてわからなくなってしまう生活史健忘、別の人格が現れるのではないが知らぬ間に常日頃自分のおかれている立場や役割から突然外れて放浪する遁走などがある。ヒステリーには起こしやすい性格があり、虚栄的、顕示的、気まぐれ、自己中心的で依存的、わがままで性格全体で未熟性が目立つ傾向がある(このような性格の人が必ず発病するわけではありません)このような性格傾向をヒステリー性格と呼ぶ。
4876 恐怖症とは(きょうふしょう) 不安神経症は対象のない漠然とした不安をもつが、 恐怖症は特定の対象や状況に対して、強い恐怖や不安を感じる神経症のことを言う。恐怖症には物理的空間に関する恐怖(閉所恐怖、高所恐怖、広場恐怖など)、対人状況に関する恐怖(対人恐怖、赤面 恐怖、視線恐怖、体臭恐怖、醜貌恐怖など、青年期に多発)、物体に対する恐怖(先端恐怖、細菌恐怖、動物恐怖)などがある。
4877 離人神経症とは(りじんしんけいしょう) 離人神経症とは自分の周囲や自分の身体や自分の存在などが頭では理解できるが実感を持って体験できない、非現実感があり、環境との疎外感がある状態を言う。「喜怒哀楽がなくなった」「ガラスを通 してみているよう」「自分の頭で考えている実感がない」などと訴える。身体の酷使、疲労や対人関係などの緊張状態が持続し、精神的、身体的エネルギーの枯渇が見られる。
4878 抑うつ神経症とは(よくうつしんけいしょう) 抑うつ神経症は肉親との死別、失恋、左遷、失業などの心的外傷を機に発症するもので、症状は抑うつ感情、悲哀感、絶望感などです。内因性のうつ病と比較すると、気分の日内変動がなく、抗うつ薬の効果が利きにくく、思考や行動の制止、自責感が軽いなどの違いがある。
4879 心気神経症とは(しんきしんけいしょう) 心気神経症(心気症)とは些細な身体感覚や身体的変化を重篤な病気の症状と疑い、諸検査の結果や医師の診断でその可能性を否定されても、そのこだわりをなかなか捨てられない状態をいう。患者は頭痛、疼痛、食欲不振、耳鳴り、嘔吐などさまざまな症状を訴える。
4880 不定愁訴症候群とは(ふていしゅうそしょうこうぐん) 何となくモヤモヤして,はっきりと特定できないような体の不調(不定愁訴)には疲れやすい,だるい、胃がもたれる、食欲がない、手がしびれるなどがある。こうした体の不調に対し、いろいろな身体的な検査をしても、はっきりとした疾患(体の病気)などの異常が認められないものを不定愁訴症候群と呼ぶ。本人は体の不調を訴えているにもかかわらず、検査では身体的な障害がみつからないのですから、いわゆる神経症とも密接な関係がある。しかし、この場合に問題になるのは、とくに自律神経失調症との関連です。 検査を行うと、不定愁訴症候群にも三つのタイプがある
1.自律神経症タイプ: 本当の意味での自律神経失調症で、自律神経機能検査で異常の認められるもの
2.心身症タイプ :自律神経機能検査で異常が認められ,同時に心理的な要因が関連した体の不調や症状の現れてくるもの
3.神経症タイプ:自律神経機能検査で異常が認められず,もっぱら心理的な要因が関連して症状が現れてくるもので、とくに女性に多いといわれ,一般に精神状態が不安定になりやすい春や季節の変わり目に症状が現れやすくなる。
4881 性行動異常とは/性障害とは(せいこうどういじょう、せいしょうがい) 性行動異常は性欲の異常な亢進、減退、性対象の倒錯等によるものである。
原因:異常性格、躁病、うつ病、内分泌障害等である。心理的、社会的要因も大きい。
症状:自己愛、同性愛、幼児愛、老人愛、死体愛 ・露出症、サディズム、マゾヒズム
治療:精神分析治療、カウンセリングを実施する。
4882 神経質とは(しんけいしつ) 神経質という言葉は昔からいろいろな意味に使われてきた。医学の常識的な用法では神経症と関係の深い性格傾向を指すことが多い。その反対は、のんきとか、ずぼらといわれ。 同じ神経質でも、その関心の対象は人により異なる。例えば病気に神経質で、子どもがかぜで軽い咳をしても、肺炎から肺結核、肺がんまで心配して、おろおろする母親がいる。 対人関係に神経質な人は、「あんなことを言って、あの人を傷つけた」と思うと、夜もおちおち眠れず翌日思い切って詫びを言うと、相手はまったく何も気にとめていなかった、という具合になる。身の回りのことに神経質な人は食器を毎日一時間かけて洗い、本と鉛筆を必ず平行に並べ、外出するときはガス栓を三回閉め直すなどの行動をする。この3つの例はそれぞれ心気症、対人恐怖、強迫神経症と関係の深い神経質と言える。そしてどの場合も安心できるまで確かめなけれぱ不安だという意味で、不安神経症もつながりがある。 神経質とは要するに心配性で不安になりやすい性格と言ってもよい。それは別の面から言うと、気がかりなことは落ち度なくやり遂げたいという、完全欲の強い性格とも言える。それだけに神経質の人はゆっくり心の休まるときがなく、一生懸命になりすぎ疲れ気味になる。
4883 スチューデントアパシーとは/通勤拒否とは(すちゅーでんとあぱしー、つうきんきょひ) 1960年代の初め頃から大学で留年する学生が急に増えた。従来のような、単純に成績が悪くて卒業できなかったり、お金や健康の問題のために出席ができず単位が取れなかったのではなく、意欲をなくしてしまったことが原因であることが分かった。そこでこういった症状を「スチューデント・アパシー(学生の無気力状態)」と呼ぶようになった。五月病もスチューデント・アパシーのうちのひとつと言える。アメリカでは九月から新学期が始まるので、十月病というのがあるそうです。 特徴としては、ちょっとしたきっかけで、急に勉強する意欲がなくなってしまうけれど、それでいて勉強以外の活動には熱心なことが多い。たとえば、授業に出てもどうせ寝てしまうからと、授業をサボるようになり、サークルやアルバイト、パチンコや麻雀などには人一倍打ち込む。 性格的な特徴はおとなしい、まじめ、几帳面、頑固、積極的でない、なんでもきっちりやらないと気がすまない(完全主義的である)、人と争えない、大人になるのが怖い、睡眠パターンが逆転している、家庭教師のような深い対人的接触が必要なアルバイトを避ける、期末試験を放棄し就職試験は受けない、などの特徴がみられる。
4884 リストカットとは/手首自傷症候群とは(りすとかっと、てくびじしょうしょうこうぐん) これは自分を傷つける自傷行為の中でも、特に刃物で手首を切る行為のことを言う。1960年代にアメリカで大流行し、それが世界的に拡がった。リストカットに付随する症状としては、神経症、摂食障害、薬物依存、引きこもり、性的逸脱、鬱病などがあるが、境界例と診断されるケースが多い。類似の自傷行為として分裂病の末期症状によるものなどがあるが、これは幻覚や妄想によって引き起こされるもので、自傷内容としては非常に凄惨で残酷なものが多く見られる。リストカットは主に10代から20代の若者に多く見られ、中でも特に未婚の女性に多く見られる。傷のほとんどは手首の内側で、1〜3回試みた傷が多いようです。手首の他には腕、足、顔、腹部などを切ることもある。リストカットは繰り返されることが多く、習慣化する傾向があるが、その割りには自殺にまで至るケースは少ない。
4885 テクノストレスとは(てくのすとれす) コンピュータを扱うことが原因で起きる精神的な失調症状の総称で、コンピュータに適応できないために生じるテクノ不安症と過剰に適応したために生じるテクノ依存症の2種類がある。  
1)テクノ不安症はコンピュータを扱うのが苦手な人が無理をして使ううちにストレスを感じ、体調を崩してしまう症状。動悸、息切れ、肩こり、めまいなどの自律神経の失調や、鬱状態を引き起こす。仕事で突然コンピュータを使わなければならなくなくなった中高年ホワイトカラーに多い症状である。  
2)テクノ依存症はコンピュータに没頭しすぎることで現れる失調症状で、コンピュータがないと不安に感じたり、人付き合いを煩わしいと感じるようになる症状のこと。コンピュータ愛好者の若い男性に多い。
4886 心身症とは(しんしんしょう) 心身症は神経症のひとつで心理的な原因によって、自律神経系の臓器に疾患が起こる。
原因:ストレスや心理的葛藤、過剰適応型の性格等が原因となる。心身症は通常の神経症と違い、精神症状が出ずに、身体症状のみが出る。
症状:循環器系、呼吸器系、消化器系、産婦人科系、泌尿器系等ほとんど全身にわたり疾患が起こる。
治療:身体症状と心理的原因の治療を同時に行う。抗不安剤投与や自立訓練法、行動療法等を実施。
4887 燃え尽き症候群とは/燃えつき症候群(もえつきしょうこうぐん) 燃えつき症候群は看護師など極度のストレスがかかる職種、あるいはそれ以外の職種でも一定の期間、過度の緊張とストレスの下に置かれた場合に発生する。会社の倒産と残務整理、リストラ、家族メンバーの不慮の死と過労など。この言葉は、1970年代半ば、アメリカで対人サービスのメンタルヘルスが注目されるようになり、H.J.フロイデンベルガー(Freudenberge)のケース分析の中で始めて使われたという。 朝、起きられない、会社、職場に行きたくない、アルコールの量が増える、イライラが募るなどから始まり、突然の辞職、職場に対する冷笑感、無関心、過度の消費などにはけ口を見出したり、最後は仕事からの逃避に終わるという。 30代の女性、特に30代前半の独身女性に多いという。職業は看護師に多い。
4888 空の巣症候群とは(からのすしょうこうぐん) 40代から50代の女性によく見られる抑うつ症状。子育てが終わり、子どもが家を巣立っていったあたりから出てくることが多いので、こう呼ばれる。燃えつき症候群、五月病などとも似通ったもの。子どもが自立し、夫は仕事で忙しく、構ってくれず、夫婦生活もないに等しくなり、涙もろくなり、夫の定年が近いというと、退職、即離婚といった方に展開していくこともある。
4889 摂食障害とは(せっしょくしょうがい) 摂食障害は食事を拒否したり、反対に過剰に摂取したりするものである。
原因:若い未婚女性に多く、「やせてきれいになりたい」等、精神的な要因で、食事を拒否したり(拒食症、神経性食欲不振)、過剰に摂取(過食症)する。
症状:食欲不振 ・激しくやせる、無月経、低血圧、肥満 、食欲不振でも、行動は活発になるのが特徴である。
治療:点滴等の栄養補給、精神療法、カウンセリングを行う。
4890 自律神経失調症とは(じりつしんけいしっちょうしょう 自律神経失調症はストレスなどにより自律神経のバランスが崩れ、体調不良を起こすもの。男女ともに起こり、発症年齢も子供から老人まで幅広い。
原因 :人体が活動するために必要な心臓をはじめとする内臓器官は個人の意思ではなく、自律神経によってコントロールされている。この自律神経に異常が起きることで、自律神経によってコントロールされている様々な部分にも症状が現れる。 自律神経失調症の原因の多くは、ストレスなどの心因性のものである。自律神経の中枢は間脳の視床下部および脊髄にあり、大脳皮質の作用を受けるため、心理的・社会的ストレスといった原因が直接体調に神経に影響を与えるものと考えられる。 原因が心因性ではなく自律神経そのものにある場合は、体質と性格が影響していると考えられる。
症状:体が冷えやすい ・疲労感 ・失神 ・息切れ ・咳 ・あくび ・便秘や下痢 ・食欲不振 ・嘔吐 ・めまい ・頭痛 ・動悸 ・胸痛 ・筋肉痛 ・腰痛 ・肩こり ・発汗
通常、上記の症状が複数現れる。ただし、内臓のみに症状が現れることもある。
治療:自律神経失調症はストレスに起因することが多いため、まずは規則正しい毎日を心がけ、リラックスして心身を落ち着かせることが重要である。また、抗うつ剤。抗不安定剤、自律神経調整剤などの薬物療法を行う。
4891 統合失調症とは/精神分裂病とは(とうごうしっちょうしょう、せいしんぶんれつびょう) 統合失調症(精神分裂病)は現実との接触喪失(精神病性の症状)、幻覚(主に幻聴)、妄想(誤った思いこみ)、異常思考、感情の平板化(感情の幅が狭い)、意欲の欠乏、職業的・社会的機能の低下などを特徴とする精神障害です。症状は突然発症することもあれば、数日から数週間かけて発症することもあり、また何年にもわたって徐々に水面下で発症していくこともある。重症度と症状のタイプは人によって異なりますが、多くの場合、仕事、対人関係、身の回りのことをする能力が損なわれるほど重度の症状が生じる。中には、精神機能が低下した結果、ものごとに注意を払う能力、抽象的に考える能力、問題を解決する能力が損なわれる場合もある。精神の損傷の重症度が、統合失調症になった人の全般的な能力障害の主な決定要因となる。多大な緊張を強いられる出来事といった環境的ストレスが引き金となって症状が現れ、悪化することがある。マリファナなどの薬物も症状の引き金となったり、症状を悪化させたりします。全体的にみて、統合失調症の症状は大きく分けて、陽性症状(非欠陥症状)、陰性症状(欠陥症状)、認知障害の3種類になります。3種類のすべてに該当する症状がある人もいれば、いずれか1〜2種類の症状だけの人もいます。
1)陽性症状
妄想、幻覚、思考障害、奇異な行動などがあります。妄想は誤った信念のことで一般に知覚や体験の誤った解釈に関係している。たとえば、被害妄想がある人は、いじめられている、後をつけられている、だまされている、見張られているなどと思いこむ。
2)陰性症状
それまであった性質や能力が失われる症状で、感情鈍麻、会話の貧困、快感消失、社会性の喪失などがある。感情鈍麻とは感情が平板化する。表情に動きがなく、人と目を合わせず、感情表現が欠如します。普通の人なら笑う、あるいは泣くような状況でも、何の反応も表さない。
3)認知障害
集中力、記憶力、整理能力、計画能力、問題解決能力などに問題があることをいう。集中力が欠如しているために、本が読めなかったり、映画やテレビ番組のストーリーが追えなかったり、指示通りにものごとができなかったりする。
4892 うつ病 とは/鬱病とは(うつびょう) うつ病は気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安、焦燥、精神活動の低下などの精神的症状、食欲低下や不眠といった身体的症状などを特徴とする精神疾患である。しばしば自殺企図を伴う。「心のカゼ」と考えられ、誰でもかかりうる可能性がある。 以前は単なる「怠け病」であるとか「詐病」(病気であると嘘をつく事)の一種では無いかと考える人も居たが、最近の病理学的な研究の成果から実際に脳に生理的・器質的な変化が起こっていると考えられる様になって来た事と、病気拡大に伴う社会的な認知の変化とから、現在では確かに存在する生理学的な要素の非常に強い病気だと考えられている。 うつ病の生涯有病率は男性15%、女性25%と言われ、ありふれた疾患である。発症年齢は小児期から老年期までにわたり、個人差が大きい。
4893 躁うつ病とは(そううつびょう) 躁うつ病は気分の激しい高揚(躁)と、ひどい落ち込み(うつ)が交互に繰り返し現われる。
原因:不明である。遺伝的、性格的な要因が関係すると言われる。
症状:
単極型うつ病・・・最多のもので、うつ状態を繰り返す。単極型躁病、双極型躁うつ病もある。
初老期うつ病・・・老化が原因と言われ、うつ状態が45歳〜65歳ぐらいで起こる。老年期うつ病もある。
更年期うつ病・・・閉経期にうつ状態が出る。ホルモンの変化が原因とされる。
仮面うつ病・・・うつは軽く、頭痛、腹痛、めまい、不眠、動悸等の身体的症状が前面に出る。初老期・老年期・更年期うつ病に多い。
治療:抗うつ剤、抗躁剤等の薬物投与をする。
4894 仮面うつ病とは(かめんうつびょう) 仮面うつ病はうつ病でありながら身体の症状が全面に出てくるため、精神症状がマスク(仮面)されているという意味で、「仮面うつ病」と呼ばれている。特にサラリーマンに増加しており、仮面うつ病患者では自殺することがあるので注意が必要。学生や、猛烈サラリーマンタイプに多い。外出したくない、人に会いたくない、ボーッと閉じこもって何もしない、出社しない、登校しないなどが特徴です。症状は便秘や食欲不振などの消化器症状、頭痛・めまいなどの神経症状、身体各部の慢性的な痛みなどの身体症状を訴え、うつ症状についてはあまり訴えません。
診断と治療法:身体症状を強く訴えるため、内科の病気として処理されることが多く、内科で自律神経失調症と診断されて、その治療を続け、長引く場合もある。子供でも身体症状を訴えて学校を休みがちな場合にも、仮面うつ病の可能性がある。精神科を受診し、うつ病の治療を受ける。
4895 コルサコフ症候群とは/健忘症候群とは(こるさこふしょうこうぐん、けんぼうしょうこうぐん) アルコール依存症の人や、脳の病気 (ヘルペス脳炎、頭部外傷など)の後遺症としてまれにみられる特殊な記憶障害の型で、一つの疾患ではありません。老年期痴呆でも記憶障害のこの型を強く示すことがある。強い記銘力低下(二、三分前に話したことを憶えていない)、見当識障害(ここがどこか、今日が何日か、といった自己の位置づけが驚くほどできない)、健忘(ある期間のことがすっかり忘れられている)があり、作り話(間違った、思
いつきのような話で記憶の欠損を補う) がみられることもある。健忘症候群とも呼ばれる。コルサコフ症候群は、原因によっては 一過性ですっかり治ることもあり、逆に長く固定的に持続することもある。
4896 アルツハイマー型老年痴呆とは/アルツハイマー病/老年痴呆(あるつはいまーがたろうねんちほう、あるつはいまー、ろうねんびょう) アルツハイマー病は初老期に記憶力の低下や物忘れがひどくなり、日常生活に障害となるものである。老年期に起こるものを老年痴呆(アルツハイマー型痴呆)と言う。
原因:老化によって、脳全体が萎縮するために起こる。
症状:物忘れがひどくなる、場所の見当識がなくなる、言動の日常生活への不適合、トイレ以外で排便等、恍惚状態、寝たきり
治療:脳を改善する薬物療法や、周囲の声かけ等をするが、有効な治療法はない。
4897 脳血管性痴呆とは(のうけっかんせいちほう) 脳血管性痴呆は脳血管の出血、梗塞によって起こる痴呆である。
原因 :重篤の脳出血や、一時的な失神、頭痛等の繰り返しである。
症状 :まだら痴呆 ・感情の激化
治療:脳の代謝、循環改善の薬物を使う。血圧コントロール、バランスの良い食生活、適度な運動も不可欠である。
4898 初老期痴呆とは/初老期認知症とは/ピック病(しょろうきちほう、しょろうきにんちしょう、ぴっくびょう) 老人でない人の痴呆(認知症)のことを言うが、初老期痴呆、若年性痴呆、非高齢期痴呆、早発性(型)痴呆などいろいろな呼び方、用語が使われ、未だ一定した名称がない。原因となる疾患に、アルツ八イマー病、ピック病、前頭葉型痴呆、前頭葉側頭葉型痴呆、脳血管障害、レビー小体病、頭部外傷、クロイツフェルトヤコブ病などがある。そのほか、プリオン病、感染性疾患、中毒性疾患、腫瘍性疾患などによっても初老期に痴呆を生じることがある。介護保険法において、初老期痴呆は、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)が、給付を受けられる15種類の特定疾病の中に含まれているので、初老期痴呆で要介護、要支援の認定を受けた場合には、介護保険の給付を受けることができる。
4899 頭部外傷後精神障害とは(とうぶがいしょうごせいしんしょうがい) 頭部の強い打撃後(数時間以上の意識喪失があった場合)、昏睡から覚めていく過程で数週間の間、興奮したり妄想的になったり、健忘症候群を示したりする。このような過渡期の精神障害は可逆性でよく治ります。 一方、外傷後数週間から数カ月たった後、性格変化が残って、本人や周囲を悩ませることがある。性格変化としては、感情や意欲が低下する場合や、気分が不安定で怒りっぽくなるなどがある。痴呆をおこすことは実際にはまれです。てんかん型のけいれん発作が外傷直後から、はじまったり、1〜2年たってからおきることがある。外傷を受けた直後の意識喪失が数分以内なら、後遺症を心配する必要はない。 ただし、老年者の場合は注意。老人は意識を失わない程度のちょっとした頭部打撲の後、3〜4週間 してから徐々に意識が混濁してくることがある。これは慢性硬膜下血腫です。
治療:それぞれの症状に対して、向精神薬や抗けいれん薬を用いて対処する。
4900 症状性精神病とは(しょうじょうせいせいしんびょう) 内科的疾患のうち重症で意識障害を伴う全身疾患や内分泌疾患、産褥期、手術後などにみられる精神障害。 身体的疾患に基づく意識障害、体調の変化、疲労、不安などでおこる。精神障害をおこす基礎的疾患としては、肺炎などの重い感染症、心臓疾患、肝臓障害、悪性貧血、尿毒症、膠原病、甲状腺機能低下症、クッ シング病などの内分泌疾患が考えられる。また、産褥期や開心手術、脳外科的手術後など体力が落ち、心が不安定な時期に精神障害がおこることがある。
症状は、せん妄、朦朧状態、幻視、幻聴、 幻触、見当識障害、健忘症、被害妄想、 不眠、不安、興奮、神経過敏、疲労、脱力感、食欲低下、気力低下、注意集中困難、情緒不安定などがおもに現れる。
治療:原因となる基礎疾患の治療を優先。興奮を鎮める精神安定剤、睡眠導入剤の投与なども行う。 それと同時に不安を引きおこす環境要因や心理的・身体的ストレスを減らすことが大切です。
4901 ICU症候群とは/術後精神病とは(ICUしょうこうぐん、じゅつごせいしんびょう) ICUとは24時間、手術後などの重症患者を集中治療するための施設。重篤な外傷患者の治療や、抵抗カの弱った心臓、腎臓などの大手術も可能になった。 一方、ICUによって発現する精神障害が増えている。原因は手術のため脳のむくみや血流障害などが発現する。 もう一つの原因とはICU特有の治療環境。濃厚な医学的管理処置など拘禁度の極限状態におくために心理的反応が障害をおこす。気管内チューブの装着での人工呼吸、気管内吸飲、各種ドレーン、コードの装着、抑制帯の使用による手足の拘束などは、不安、恐怖、生命の危機感を引きおこしやすい要素になる。 さらに意識水準の変動による知覚的混乱、思考や認識力の低下、見当識の障害などが基礎にあるために不眠、不穏、幻視、幻触、幻聴、被害妄想、興奮などが生じやすくなる。
治療:状況を繰り返し十分説明することで不安、絶望感を取り除くこと、不眠、疲労の回復、カーテンをひく などしてブライバシーを確保することも大切。また、1CU在室期間を短縮し、普通病室へ移して家族との面会など外界とのコミュニケーションを行う。患者の人格を尊重し、患者の心理的側面について治療者側が十分に配慮することが必要。 さらに事前によく説明を行い、信頼関係を確立し家族が付添い安心感を与え発現の予防する。
4902 産後の精神障害とは/マタニティー・ブルーとは(さんご、せいしんしょうがい、またにてぃー・ぶるー) 出産後3〜10日頃みられる、涙もろさ、不安、集中力低下などを伴う感情不安定状態をマタニテイー・ブルーと呼ぶ。この症状は一般の出産婦の半数以上にみられ、一過性で軽い。さらに産褥期には内分泌環境の急激な変化や心身のストレス、病前性格などのストレスが重なって、より重篤な精神障害がおこりやすい。発症の時期は出産後1ヵ月以内が最も多く3カ月目までは発現率が高くなる。
症状:不安、焦燥、不眠、抑 うつ、心気症、幻覚、被害妄想、興奮、衝動的行動、自殺を図る、昏迷など神経症、うつ病、精神分裂病などさまざまな精神障害が誘発される。ほとんどが急性に発症し、予後は比較的良好。
治療:結婚した女性が安心して働くためには、 妊娠中および産前、産後の心身のケアが重要。とくに精神面の健康の維持、精神障害の発症予防のための注意を怠ると、母子心中や育児ノイローゼなどの悲惨な結果に至る場合が多い。過去に精神障害を経験した妊婦の場合、 産後に再発する頻度が高いので、 出産直後から予防的に精神安定剤を服薬 し、睡眠不足、授乳、育児、家事などの身体的負担や疲労を減らすこと。
4903 アルコール依存症とは(あるこーるいぞんしょう) アルコール依存症は慢性アルコール中毒とも呼ばれ、アルコールが切れると、日常生活に支障をきたすような症状が現われ。
原因:長年のアルコール摂取によって起こる。社会的、家庭的ストレス等も誘引となる。
症状:
酒量が増える
禁断症状・・・発汗、手のふるえ、不眠、幻覚
脳や肝臓、胃の合併症を起こしやすい。悪化すると、コルサコフ症候群(時間、場所の見当識を失う)等に罹患することもある。
治療:禁酒をし、精神安定剤、向精神薬を使う。
4904 薬物依存症とは(やくぶついぞんしょう) 薬物依存症は薬物を長期に繰り返し使用することで、その薬物なしではいられない状態になるものである。
原因:原因となる薬物はアヘン、コカイン、覚せい剤、睡眠薬等の有機溶剤等が多い。薬物を使用すること自体が快感となるものである。
症状
・無気力、不活発
・禁断症状・・・幻覚、被害妄想
・自律神経失調症
治療:向精神薬を使い、精神療法を行う。薬物使用をやめるのが一番である。
4905 子供のうつ病とは(こども、うつびょう) うつ病とは、非常に強い悲しみの感情です。うつ病は最近起きた喪失体験や悲しい出来事などの後に生じることもあるが、そのような出来事と不釣り合いなまでに悲しみが強くなったり、しかるべき期間を過ぎてもその悲しみが続くことをいう。
うつ病は子供の1〜2%、青年期の若者の8%にみられる。うつ病の原因は不明ですが、脳の化学作用の異常がかかわっていると思われる。遺伝的にうつ病になりやすい人もいる。甲状腺機能低下症などの病気が原因となることもある。
症状:非常に強い悲しみや自分は無価値だという感情、罪悪感などと似ている。子供はスポーツやビデオゲーム、友達と遊ぶなど、普段は喜んですることに対する興味を失う。食欲は増加する場合も減退する場合もあり、著しい体重の変化を引き起こす。睡眠障害もよく起こり、不眠症と睡眠過剰の両方がみられる。うつ病の子供は活気がなく身体的にも活発でないことがよくある。
治療 子供や青年期の若者に処方される抗うつ薬は選択的セロトニン再取りこみ阻害薬(SSRIs)のフルオキセチン、セルトラリン、パロキセチンなどです。イミプラミンなどの三環系抗うつ薬は、子供には大人ほど効果がなく副作用が大きいので、ほとんど用いない。
4906 自閉性障害とは/小児自閉症とは(じへいしょうがい、しょうにじへいしょう) 1943年に、アメリカのレオ・カナー教授が報告したもので最初は幼児期にみられる精神病の一つと考えられた。 現在は発達障害と考えられ中枢神経機能の成熟の遅れにより3歳までに症状がみられるアンバランスな発達の遅れ。原因は脳機能の障害または成熟の遅れが原因で障害の種類(例えば、感染症、外傷、血管障害、生化学的な代謝障筈、遺伝子の異常)か、脳のどの部位の障害か、どのくらいの拡がりかなどは不明。乳幼児に現れる特有な発達障害に対し、不安に満ちた養育がなされ続けると典型的な自閉症状が形成される。
症状:年齢によって症状の現れ方は異なる。 一般的に表情に乏しく、視線を合わせず、ほかの子どもに無関心で遊びの輪に入ることができない。睡眠のリズムが不規則で極度の偏食や奇妙なこだわりがみられる。バターン化したものの真似や記憶(例えばテレピ のコマーシャル、時刻表)はできるが、場面に合った行動をおこせず、思うようにならないとカンシャ クをおこすか、わけのわからないことを 早口で、単調にしゃべりはじめる。自閉症に最も特徴的なこれらの症状は、3〜6歳頃までの症状で、年齢と発達段階によって大きく変化していく。
治療:それぞれの段階で必要な治療、指導を根気よく行う。 乳幼児期は大きめの声で場面に即した言葉かけ(母親がその場面を実況放送するように話しかけ)を根気よ く続けること、全身筋肉を使いながら協応運動(三輪車あそび、ボール遊び、あやとり、折り紙など)をさせることがポイント。
4907 チック症とは(ちっくしょう) チック症は、身体の一部を無意識に動かすものである。
原因 :主な原因は心因性で、感受性、自己主張の強い子供が、過保護や過度なしつけで緊張するために起きる。脳炎、マンガン中毒等が原因となることもある。7歳前後の発症が多い。症状は、不安、緊張感のあるときに出る。睡眠中は出ない。成長によって治癒するこもあるが、強迫神経症への移行もあるので、専門医に相談すべきである。
症状:一定時間を置き、首振り、顔をゆがめる、鼻を鳴らす、手足をびくっとさせる等
治療:家庭環境の中で、子供に緊張感を与えない教育方針の検討が必要である。
4908 吃音とは(きつおん) 吃音は、いわゆる「どもり」のことで、スムーズな発音ができなくなるものである。
原因:子供や成人男性に多いが、原因は不明である。何らかの心理的ストレスによるのではないかと言われる。
症状:言葉をすらすら言えない、冒頭音の反復、言葉の途中でつかえる
治療:発音訓練やカウンセリングによって、心理的な障害を取り除く。幼児の吃音についても、周囲が暖かく見守り、緊張感を与えないことが大事である。
治療:鎮痙剤等を使うこともある。
4909 習癖異常とは(しゅうへきいじょう) 体を揺する、頭を打ちつける、自分の体を叩いたりかんだりする。歯ぎしりす る、絶え間なく鼻をほじる、髪を引っ張 り抜いてしまう、空気を飲み込むなどのさまざまな症状がみられる。幼児は生理的に運動過剰なので、健康な子どもでも体をいつも動かしているこ とがある。またちょっとしたことで赤ちゃん返り(退行)をし、奇妙な行動 を表すことがある。このようなごくふつうの行動を行動異常と誤ってとらえてしまうことがある。また舞踏病、アテトーゼ、ミオクロー ヌス発作などで、よく似た動作がみられることがある。
4910 夢遊病とは(むゆうびょう、) 深い睡眠の段階から急激に覚醒する過程でみられるもので、「覚醒の障害」といわれる。睡眠ポリグラフや終夜脳波記録で確認できる。
症状:寝ているときにいきなり起き上り、 毛布やシーツをつついたり、歩き回り、服を着たりドアを開けたり、何かを食べるなどの目的があるような行動をする。うつろな表情で視線を動かさず、いくら呼びかけても反応しない。数分で目を覚ますことがあるが、多くはまた眠 り続け、翌朝、何をしたのかを覚えていない。
治療:家族はびっくりし、いつおこるかと不安になり、眠れなくなる。思春期が 終わる頃には、自然に症状が消失するので、心配ない。しかし、エピソー ドの間に階段から転げ落ちたり、窓から転落してけがをすることがあるので、再 び寝入るまで安全に保護してやる配慮が必要。 恐怖感をあおるような本やテレピは避ける。あまりに頻繁にみられる場合、抗不安薬や睡眠導入薬を用いる。
4911 夜驚病とは(やきょうびょう) 深い睡眠の段階から急激に覚醒する過程でみられるもので、「覚醒の障害」といわれる。睡眠ポリグラフや終夜脳波記録で確認できる。
症状:寝ているとき突然ベッドから起き上がり、恐怖に満ちた表情で強い不安を示し、汗を かき、坪吸が荒く、落ち着かせようとし ても反応がないことがある。
治療:家族はびっくりし、いつおこるかと不安になり、眠れなくなる。思春期が 終わる頃には、自然に症状が消失するので、心配ない。しかし、エピソー ドの間に階段から転げ落ちたり、窓から転落してけがをすることがあるので、再 び寝入るまで安全に保護してやる配慮が必要。 恐怖感をあおるような本やテレピは避ける。あまりに頻繁にみられる場合、抗不安薬や睡眠導入薬を用いる。
4912 精神遅滞とは(せいしんちたい) 精神遅滞は10代で知能低下、性格異常が現われるものである。
原因:染色体異常、先天性代謝異常、分泌異常、分娩時等の外傷、妊娠中の感染症、中毒等があげられる。原因不明の場合もある。
症状:知能低下、性格異常、発育不全、骨格、皮膚等の奇形、運動障害、てんかん
治療:長期の薬物療法を行う。早めの治療で知能低下を予防できる。リハビリ、しつけも重要となる。
4913 学習障害とは(がくしゅうしょうがい) ある限られた領域の発達(学習能力、言語、運動)が、その子どもの教育レベルや知的能力から期待されるレベルに到達しないものを「特異的発達障害」という。このうち、学習能力について特異的に発達の遅れを学習障害という。計算、書取り、読み方、構音、話し言葉、言葉の理解のどれかがその子どもの全体的なレベルからみて明らかに落ち込んでいる場合です。脳の情報処理機構に機能的な成熟の遅れがあると想定される。
注意が散漫で落ち着きがなく、カンシャクをおこしやすい。自閉性障害、精神遅滞などと診断されるケースでは学習面の困難性はあっても「学習障害」とはいわない。
治療:子どもの能力を正しく評価し根気よく教えていく。指導の仕方には専門的な知識が必要。与えられた刺激(情報)が、その子どもにどのように受け入れられ、それまでに経験したり学習してきた事柄と比較、照合しながら反応(行動)を しているのかを検討し、その子どもにあった個別指導を行うことが大切。 課題の組み方、刺激入力の選択の仕方、フイードバックのかけ方など工夫する。やる気がない、根性 がないと頭から怒っても、全く効果がなく、子どもを不安にしイライラさせる。
4914 多動性障害とは(たどうせいしょうがい) 多動で落ち着きのない子どもは多いが、その原因には気質(生まれながらにもっている行動型)、中枢神経系の機能障害、親の養育態度やしつけなどの環境要因などが考えられる。発達レベルや年齢に比して、著Lく不 相応な注意散漫、多動、衝動性の3徴候 が7歳以前に場合に多動性障害(または注意欠陥障害)と診断される。以前、微細脳機能不全症候群(MBD)という呼び名が用いられたことがあるが、現在では使わない。多動性障害の子どもは、しつけが悪い、やる気がないなどと評価され、厳しく叱られたり、体罰を与えられることが多々ある。しかし、叱られると一時的におとなしくはなるが、間もなく落ち着きのない多動な行動を示し、繰り返し叱られていると反抗、乱暴、こだわりを示す。情報処理機構は大脳辺縁系、間脳の機能と関連する。適切な刺激を与え協調運動の訓練などでその機能的成熟が促進されれば、15歳ころまでには行動のコントロールが可能となる。
治療:情報処理機構を成熟させることが基本。感覚総合療法で用いる訓練法、すなわちバランスをとる運動、協調運動、目と手の協応を根気よく教える。脳代謝賦活剤を併用することもある。 しかし、情報処理機構が十分に成熟するには長い期期間が必要。
4915 睡眠障害とは(すいみんしょうがい) 睡眠障害は眠れない、睡眠過多、睡眠中の呼吸停止等、睡眠に障害が起こる。
原因:原因不明の場合が多い。精神疾患、薬物、体質、過労、老化、遺伝等が関係すると言われる。睡眠時無呼吸症候群は肥満、耳鼻科疾患等が原因である。
症状:
1)ナルコレプシー・・・毎日日中に突然強い眠気によって、居眠りする。脱力症状。
2)不眠症・・・入眠障害、浅眠、途中覚醒、早朝覚醒
3)過眠症・・・睡眠時間の過多
4)睡眠時無呼吸症候群・・・睡眠中、頻繁に呼吸が止まる。進行で心臓肥大等を併発する場合がある。
治療:原因疾患の治療をする。睡眠薬、精神刺激剤、抗うつ剤等を使う。森田療法、精神療法、呼吸補助装置の使用等もある。
4916 不眠症とは(ふみんしょう) 不眠症は平常時と比較して睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる症状のことで、睡眠障害ともよばれる。 不眠症の症状は、寝つきが悪い「入眠困難」、夜中に目が覚める「途中覚醒」、朝早く目が覚める「早朝覚醒」、そして眠りが浅く寝た気がしない「熟睡困難」の4タイプにわけられる。入眠困難とはなかなか寝付けない状態で、不眠の訴えとしては中途覚醒とともに最も頻度が高い。診断としては、就床後1時間以上眠れない場合が目安。中途覚醒は夜中に目が覚め、その後眠れない状態。うつ病、睡眠時無呼吸症、脳変性疾患(脳卒中、痴呆など)などでは多く発現。高齢者では睡眠が浅くなり中途覚醒が出やすい。また、アルコールを飲むと寝つきはよいが、睡眠はむしろ浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が出やすくなり睡眠全体の質は低下する。 朝、意図したよりも早く目が覚め、そのまま眠れない状態を早朝覚醒という。高齢者に多く見られるが、これは加齢に伴い睡眠パターンが変化するためで、生理的な現象。また、早朝覚醒は、うつ病の特徴的な症状。最後の熟眠困難は、熟眠したという満足感がない症状で、目覚めた時に睡眠不足を感じる状態。睡眠が中断されたり、睡眠が浅い場合に起こりやすくなるが、中途覚醒の場合はほとんど熟眠困難を伴う。 
4917 過眠症とは(かみんしょう) 日中に病的に強い眠気があって昼間の生活に差し支える場合を過眠症あるいは睡眠過剰という。その原因は夜間の睡眠に重大な障害があって睡眠が不足している場合(睡眠時無呼吸症候群など)と、脳を覚醒させる仕組みに障害があって眠気がおこる場合(ナルコレプシー、周期性傾眠症など)があある。
4918 ナルコレプシーとは(なるこれぷしー) 居眠り病ともいわれ前夜からかなり眠っているのに昼間に強い眠気がおこる状態が長く続く。昼間の持続的な眠気のほか、「睡眠発作」といって仕事中などに突然耐えがたい眠気がおこり、人前でも眠り込んでしまう発作もある。 しかし、10〜20分間でも仮眠すると眠気は一時的になくなるのが特徴。そのほか驚いたり笑ったりしたときに急に力が抜ける「情動性脱力発作」(カタブ レキシーともいう)が為こる。また、入眠時に強い現実感を伴う「入眠時幻覚」(恐ろしい人の顔の幻視、身体に触 られる幻触など)がおこったり、恐ろしい夢を見て起き上がろうとしても全身が金しばりになって動けない「睡眠まひ」 がみられたりする。
遺伝的要因も関係するといわれる。
治療:居眠りをするので怠け者と誤解されがちですが、病気なのだということを周囲によく理解してもらうことが大切。強い眠気かおこったときには、短時間でも人目につかないところで仮眠がとれれば最良。薬物療法として、眠気にはメチルフェニデイトなどの中枢刺激薬が有効で、脱力発作、入眠時幻覚、睡眠まひには三環系抗うつ薬、夜間に不眠があるときにはふつうの睡眠薬のほかにフェノチアジン系の抗精神病薬が有効。我が国では、ナルコレプシーの人が「なるこ会」という組織をつくって互助や啓蒙の行動を行っている。
4919 周期性傾眠症とは(しゅうきせいけいみんしょう) 反復性過眠症とも呼ばれ、数日から数週間の過眠状態が続き、これが一年に2〜3回というふうに一定の無症状期を隔てて反復する。睡眠過剰期には一日中寝床に入ってうとうとしているが、食事や大小便は起きてすること ができる。ナルコレブシーとは異なり、眠っても眠気は解消しない。眠気というよりも、軽い意識混濁に近い状態。過眠期が終わった直後の数日間、通常よりも多弁、多動になり、軽躁状態を示すこともある。10歳代に初発し、男性に多い症状で、最初はかぜなどが誘因で発症。30歳頃までには傾眠がおこらなくなり、予後は良いのがふつうです。周期性傾眠症の特殊型として傾眠状態に食欲や性欲の異常亢進を伴う「クライネ・レヴィン症候群」がある。
原因は不明。
治療:過眠状態にはメチルフェンデートなどの中枢神経刺激薬を使用。躁病の治療に使う炭酸リチウムやカルバマゼピンが予防効果を示すことがある。
4920 時差症候群とは(じさようこうぐん) 時差が数時間以上(ふつうは4時間以上)ある場所へ高速ジェット機などで急速に移動するときに、身体の内的な生体リズムと外的な社会生活のリズムとの間 にズレ(非同調)が生じ、心身にさまざまな不調がおこる状態。時間帯域変化症候群ともいい、一般的 には「時差ぼけ」と呼ばれる。時差ぼけに似た症状は交通機関、医療関係、生産工場などの交代勤務者(昼間勤務と夜間勤務を頻繁に交代する人)でもみられ、これら全体を含めて「概日リズム(日内リズム)睡眠障害」という。昼間活動して夜間に眠る生活をしていると、体温は午後3〜5時に最高、午前3〜5時に最低になり、体温の最低点付近では心身の活動レベルが低下し、睡眠もおこりやすくなる。海外旅行先などで社会生活の時刻は昼間であっても生体時計が夜であるという「非同調」の状態になると昼間に眠気が強く、疲労、倦怠感その他心身の不調が現れる。逆に社会生活の時刻は夜でも、生体時計が昼ならぼ、不眠がおこる。
治療:時差症候群を根本的に治す方法はないが、海外旅行のときには到着直後から現地時間で活動するのがよい。不眠には短時間作用型の睡眠薬を使う。
4921 睡眠相後退症候群とは(すいみんそうこうたいしょうこうぐん) 夜の遅い時間帯(午前2時〜6時)に ならなければ寝つけず、正午頃にならなければ覚醒できない病気です。しかしいったん寝入ればその後の睡眠には問題はない。
こういった状態を、睡眠の位相が遅れている(後退している)という。従来は夜ふかし、朝寝坊の怠け者とされることが少なくないが、 概日リズム(日内リズム)の障害の一つで、病気であるため、努力しても睡眠の時間帯を早めることは困難。これは睡眠そのものの障害ではなく、睡眠の位相を望ましい時間帯に同調させる機能の障害。そのため、朝の学校、勤務などの時間に間に合わず、無理に起きても 眠気が強く、社会生活に大きな支障がおこる。ふつうは思春期に目立つが、子どもの頃から朝起きが苦手の人が多い。原因は不明ですが、素因が関係すると考えられる。
治療:睡眠時問帯を前にずらすことは困難ですが、遅らせることはできるので、一日 に3時間くらいずつ就寝時問を遅くしていき、一回りして就寝時間が午後10〜12時になったときにそこで固定すれば、治る。これを時間調節療法という。入眠を助けるために、作用持続時間の短い睡眠薬を使用することもある。朝起床後に強い光をあてる光療法もある程度役に立つ。
4922 人格障害とは(じんかくしょうがい) 人格障害は性格的な偏りの激しいものである。
原因:主な原因は成長過程の環境である。
症状:
・社会的不適応
・自信喪失、自殺願望
・共同生活で周囲に迷惑をかける
治療:精神分析療法を行う。完治は困難である。
4923 成人呼吸窮迫症候群とは(せいじんこきゅうきゅうはくしょうこうぐん、ARDS) 成人呼吸窮迫症候群(ARDS):もともと肺の病気をもっていなかった人が、交通事故や大手術などを受けた後、1〜3日後に肺胞内外に水分が貯留する肺水腫と呼ぱれる状態が出現することがあり、治療に反応せず進行性で生命の危険もある。この状態は原因が単一ではなく複合的な要因が重なって生じる可能性が高く、その本態は、肺胞の周囲にある毛細血管の壁から水分が外へ出やすくなるためと推定される(透過性肺水腫)。
ARDSは肺胞でのガス交換が不十分となるため動脈血の酸素が低下し(低酸素血症)、呼吸作用が不完全となる(急性呼吸不全)。このため次第に呼吸困難が増加し、呼吸数も1分間に20回を超え、胸部レントゲン写真では両肺にびまん性に拡がるモヤモヤした陰影が出現する。動脈血液中の酸素分圧は60%以上の酸素濃度の吸入しても50mmHg以上にならない。心臓病によるもの、慢性呼吸器病によるものは除外するとする。
治療:大手術後、重い病気の回復過程に出現する上、原因が明らかでないため、治療は困難なことが多く、酸素吸入は濃度を高めずに人工呼吸器による呼吸管理で回復を待つことが行われている。
4924 横隔膜まひとは/横隔膜麻痺とは/横隔膜マヒとは(おうかくまくまひ) 横隔膜は両側の胸腔と腹腔を隔てている筋肉の膜で、横隔神経に支配されており、意識的、無意識的に収縮を繰り返すことによって、他の胸壁の呼吸筋群とともに、呼吸運動では大切な役目を果す。横隔膜まひは神経や筋肉の病気や損傷(とくに頸部損傷)、悪性腫瘍の横隔神経への浸潤などでおこる。最も多いのは肺がんの横隔神経への浸潤(多くは転移リンパ節からの浸潤) で横隔膜がまひする。頸部のがんでもおこる。横隔神経が頸部から胸腔内を下って横隔膜に達しているからです。神経に異常がなくても、筋萎縮症などでも横隔膜の運動が悪くなる。特殊な病気として、神経と筋肉の接合部で刺激情報がうまく伝わらない病気である重症筋無力症で病気が進むと横隔膜まひ(呼吸まひ) がおこる。また頸部や胸部のがん(とくに肺がん)の手術で、がんを完全に取り切るために横隔神経を一緒に切除せざるをえない場合があり、この場合には、手術後横隔膜まひ(一側のみ)がおこる。
4925 しゃっくりとは/横隔膜のけいれんとは(しゃっくり、おうかくまくけいれん) 日常、健康な人にもよくみられる間欠性、不随意的収縮による横隔膜のけいれんです。原因もいろいろあり、中枢神経への刺激によるもの(脳の病気や尿毒症)、 末梢神縫への刺激によるもの(頸部・ 胸部・上腹部の腫瘍や炎症)、心因性 のものなどがある。多くの場合はしばらくすると自然に治る。しかし長時間(何日も)続くか頻回におこる場合には治療が必要となる。とくに重い病気で入院中の人や、手術後の人、高齢の人は大変気にする し、また実際かなりつらい。
治療:眼球や頸動脈の圧迫、咽頭(のどの奥)の刺激、鎮静剤や精神安定剤などを使う。
家庭では、
@冷たい水を一気に多めに飲ませる
A胸や背中をたたく
B深く息を吸わせて、息こらえをさせる
C舌をしっかりつかんで(ガーゼなどで)強く前に引っ張り続けるなどを試みる。これらの方法で止まらない、頑固なしゃっくりは、何か原因となる病気があるかどうか、近くの医師を受診する。
4926 産瘤とは(さんりゅう) 皮下の軟部組織に局所的におこった浮腫やうっ血で。胎児が産道を通過する際、先頭で進む部分が狭い産道で圧迫されるためにおこる。出生直後にみられ、腎部、上下肢などにもできる。指で押すとやわらかく、 押したあとに凹みができる。 何もしなくても2〜3日で自然になくなってくるので、その間その部位の皮膚を清潔に保つだけで十分。
4927 頭血腫とは(ずけつしゅ) 頭蓋骨とそれをおおっている骨膜の間に血液がたまった状態(骨膜下血腫)。分娩の際、頭部が強く圧迫されると頭蓋骨から骨膜がはがれ、その間に出血する。多くは生後2〜3日してから気づく。触れると内部に液体がある感じ(波動性)がし、押しても縮小せず、凹みもできない。
治療は不要で穿刺や切開は行わない方がよい。1〜2カ月から数カ月で血液は吸収されるが、そのあとが骨になり、硬い瘤になる。この瘤も 数年すれば吸収され、丸い頭になる。黄疸が強くなる、熟がでる、元気がなくなるなど、ほかの症状がなければ放置 してかまわない。
4928 頭蓋内出血とは(ずがいないしゅっけつ) 頭蓋の内部に出血がおこったもので出血した場所により、硬膜下出血、くも膜下出血、脳(実質)内出血、脳室内出血などに分けられる。難産や器具を使った分娩で、頭部が強 く圧迫されておこるものや、血液の酸素不足や血管が弱いなどで出血しやすい場合におこる。出生直後から数日の間に症状が現れる。泣き声がかん高い、呼吸を止める、後にそりかえる、眼つきがおかしいなどの症状がある。
治療:呼吸や循環を良好に保つ、けいれんを止める、脳圧が上昇するのを防ぐ、腰椎穿刺を繰り返して血液を排除する、脳外科手術など専門家の治療が必要。頭部を高めにして安静にし、ただちに新生児集中治療室(NICU)など新生児専門の治療設備のある病院へ移送する。
4929 分娩時骨折とは(ぶんべんじこっせつ) 難産で胎児の頸や上下肢が強く引かれたり、圧迫された場合に、骨が折れたり、ひびが入ったものです。痛みで泣くこともあるが、多くは手足の動きが悪い、はれがあるなどで気づく。
治療:鎖骨骨折は、たすきがけ姿位(たすきをかけたときのように両肩が後方へ引かれているような姿勢)にしておけば1〜2週で自然治癒し、頭蓋骨線状骨折も自然治癒する。その他の骨折は、整復、 牽引、固定など、専門的な治療が必要。頭蓋骨骨折は脳外科に、その他の骨折は整形外科を受診。
4930 分娩まひとは(ぶんべんまひ) 上肢、横隔膜、顔の筋肉を動かす末梢神経が傷害されて麻痺したもの。骨盤位分娩で頸や肩の通り抜けが悪 く、引っ張られたり、産道で顔が強く圧迫され、薄い皮膚と皮下組織の下にある末梢神経が傷ついたり、 切れておこる。出生直後から症状がある。腕神経叢まひには、指や前腕は動くが上腕がだらんとして上がらない上位型まひ(エルブのまひ)と、上腕は上げられても前腕や指が動かず握れない下位型まひ(クルンプケのまひ)があり、多いのは前者。横隔膜神経まひは無症状のこともあり、顔面神経まひは口角が下がり、口から乳がこぼれるので気づく。
治療:腕神経叢まひは上位型では肩を直角に開いた状態に、下位型では手首を中間位に固定しておけば2週間前後でよくなるのが普通。下位型の方が治りは不良。神経が切れている場合には手術(神経形成術)。横隔膜神経まひも、呼吸障害の治療で多くは数カ月で回復。回復せず手術(横隔膜縫縮術)が必要と なる場合もある。顔面神経まひは2〜3週問で自然に治るものが多い。小児科(新生児科)、整形外科を受診 。
4931 胎便吸引症候群とは(たいべんきゅういんしょうこうぐん) 胎便が気管や気管支を詰まらせたり刺激したりして、吸い込んだ空気が肺胞までいくのを妨げている状態。胎内で胎児に酸素が不足すると、腸の動きが高まり、肛門括約筋も緩んで胎便が排泄される。この胎便の混ざった羊水を、胎内でまたは出生時に吸い込んだためおこる。 出生直後から呼吸が速く、胸もビヤ樽 のようにふくらむ。皮膚や臍帯も胎便で汚れている。 気管や気管支の洗浄、呼吸や循環を良好に保つ、感染予防など、専門的な治療が必要。病気に気づいたら、ただちに新生児集中治療室(NIC U)など新生児専門の治療設備のある病院へ送る。
4932 呼吸窮迫症候群とは(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん) 肺胞をふくらませておくために必要な肺表面活性物質(サーファクタント)が不足し、肺胞がしぼみ、空気が入らず酸素が体内に取り入れない状態。
肺表面活性物質が十分に産生されるのは妊娠33週頃からなので、それ以前に生まれた未熟児では不足している。呼吸筋、心筋、腎臓などの未熟性、動脈管開存も症状を悪化させる原因。未熟児で、生後まもなく呼吸が速くなり、息を吸うとき、肋骨の間や胸骨の下がへこみ、息を吐くとき、うなり声(坤吟)を出し、チアノーゼもみられる。 次第に悪化し、生後24〜48時間頃に 最も悪い状態になりますが、これを乗り越えると次第に呼吸状態が改善し、4〜5日で症状がなくなる。
治療:保育器、人工呼吸器、輸液などで保湿、呼吸や循環を良好に保ち、感染予防を行い、人工肺表面活性物質(サーファク テン)を気管から肺へ注入する。病気に気づいたらただちに新生児集中治療室(NICU)など新生児専門の治療設備のある病院へ移送する。
4933 気管支肺異形成症とは(きかんしはいいけいせいしょう) 肺胞やその周囲の組織、気管支等が傷害を受け、肺胞壁が傷つけられたり、空気の通り方が不均衡となって肺胞が拡がりすぎたり、逆にしぼんだりして、吸った空気と血液の間で酸素と炭酸ガスの交換がうまくいかず、血液の中に酸素が不足したり、炭酸ガスがたまったりした状態。未熟な肺が、新生児期に傷害を受けたためにおこる。呼吸窮迫症候群など 、生後重症の呼吸困難がある新生児(ほとんどが低出生体重児)に、高濃度酸素や人工呼吸器などを使って呼吸を補助した時に、酸素の毒性や人工呼吸器で吸気にかけた圧力により、肺が傷害を受ける。
治療:水分摂取を制限し、利尿剤を使って肺浮腫を防ぐ。気管支拡張剤、 ステロイドホルモンを併用することもある。全身管理、適切な呼吸困難対策、 感染防止なども重要。長期間にわたって酸素便用が必要となるため、在宅酸素療法に移行する例も多い。
4934 未熟児とは/低出生体重児とは(みじゅくじ、ていしゅっしょうたいじゅうじ) 出生体重が少なく、さらに、母から独立して生きていくために必要な諸種の生理機能が未熟なものが多いので、いろいろな合併症をおこしやすく、死亡することも多い。早産で胎児の体重が十分に増加しない うちに、また諸臓器が十分成熟しないうちに生まれたためにおこることが多いが、胎児の病気のために胎児の体重が増えなかったり、多胎や母からの栄養供給が不足した場合などにもおこる。早産が原因のものでは未熟性が著しく、 身長に比べて頭や腹が大きく、四肢は細く、皮膚は薄くてしわが少なく、皮下脂肪も少ないので肋骨が浮き出る。身体のうぶ毛は豊富ですが頭髪は薄く、 陰嚢も小さくてしばしば睾丸を触れず、 大陰唇の発育も不良です。爪は柔らかく、 指先まで伸びていないこともある。
治療:専門の施設で、保温、呼吸・循環の管理、感染予防、適切な栄養を与える。とくに、極・超低出生体重児は、新生児集中治療室(NICU) で治療する。うぶ湯は使わず、保温、呼吸の維持に心がけ、専門施設に入院。
4935 胎盤機能不全症候群とは(たいばんきのうふぜんしょうこうぐん) 胎内で栄養と酸素が不足した状態。胎内にいる期間が長すぎて胎盤の機能が衰えたり、母が妊娠中毒症や高年齢で胎盤が異常に小さいときに、母からの栄養と酸素が胎児に十分供給されないためにおこる。頭髪が多い、四肢関節が硬い、眼を開いているなどの傾向 がある。治療は合併症の治療が主。 早期に授乳開始する。状態によるが、合併症も多く、専門施設での養育が重要。
4936 過熟児とは(かじゅくじ) 胎内に長くとどまりすぎて、胎盤機能不全症候群となる。 妊娠が異常に長期化すると、胎盤が変性して機能が低下するので、胎盤機能不全症候群の症状をもった新生児が生まれる率が高くなってくる。妊娠が長くなる原因は多くは不明。症状や治療法は、胎盤機能不全症候群のときと同じ。
4937 巨大児とは(きょだいじ) 胎内で肥満したもの。我が国では出生体重が4,000g以上の新生児を巨大児と呼ぶ。高出生体重児ともいう。糖尿病の母親から生まれることが多く、胎内での高インスリン血症の影響や、糖代謝異常が考えられる。先天異常や原因不明のものもある。症状としては、まるまるとよく太った顔(満月様顔貌、リンゴ様顔貌)と身体で、頭髪も豊富です。
治療:合併症の治療が主。合併症があれば、専門施設で治療。母親に糖尿病のあることが多い ので、母親も内科医を受診要。
4938 生理的黄疸とは(せいりてきおうだん) 生理的黄疸は正常な新生児が子宮外生活に適応していく過程で、ビリルビン代謝が未熟なためにおこる黄疸。 発症機序は次のとおり。
@赤血球の寿命が短い。
A血漿ビリルビンの肝細胞への取り込み未熟。
B肝でのグルクロン酸転移酵素の値が低いためビリルピン抱合能が不十分。
Cビリルピンの胆汁中への排泄が未熟。
などです。症状は生後2〜3日頃から、皮膚、眼球結膜の黄染がみられるが、生後10日頃には自然に消える。ときには、生後3〜4日の最も強く現れるときに哺乳力がやや減少する。母乳栄養児では、母乳中に含まれる物質がピリルピン抱合を阻害し黄疸を遷延するが、一般には母乳を中止する必要はない。黄疸が強い場合、1カ月以上も遷延する場合、あるいは便の黄色が薄い場合は、専門医を受診。
4939 新生児高ビリルビン血症とは(しんせいじこうびりるびんけっしょう) 血漿ビリルビンの値が、成熟児で17mg/dl以上、未熟児で15mg/dl以上の高い値に達し、生理的新生児黄疽からはずれた状態を新生児高ビリルピン血症という。原因としては、閉鎖部位での出血(帽状腱膜下出血など)、多血症、飢餓、消化管の通過障害、薬剤、細菌(おもにグラム陰性桿菌)やウイルス(おもに巨細胞封入体、風疹、ヘルペス)感染症、体質性黄疸などがあげらる。黄疸の出方は原因となる疾患により異なるが、いずれも出生後数日で黄疸の増強がみられ、なかには貧血、肝脾腫大を伴うものがある。重症例では核黄疸に進展するので、適切な時期に光線療法または交換輸血を行う。黄疸が急に増強したり、元気がなかったり、哺乳力の低下がみられるような場合は、専門医を受診。
4940 新生児溶血性黄疸とは(しんせいじようけつせいおうだん) 新生児期の黄疸の中で溶血を原因とする一群の疾患のこと。核黄疸をおこす危険性があるので、早期治療に対応し得るよう、血漿ビリルピンなどの注意深い経過観察が必要。原因疾患には先天性球状赤血球症、G6PD欠乏症、薬剤によるものがあるが、日常、最も問題となるのは血液型不適合です。胎内ですでに溶血が進行 している場合は胎児氷腫として出生し予後が不良。一般に生後24時間以内に、黄疸が急速に増強し、貧血を来す。血液型不適合、またはその他の新生児溶血性疾患が考えられる場合は、臍帯血や出生直後からの新生児の血漿総ビリルビン値の推移を注意深く観察し必要に応じ光線療法、交換輸血、アルブミン投与などを早期に適切に行う。 また、血液型のRh不適合の場合は第一子の分娩直後に、ガソマーグロブリンを妊婦に投与することにより、第二子の不適合による溶血を防止できる。
4941 核黄疸とは(かくおうだん) 新生児の間接型高ビリルピン血症が高度の場合ピリルピンが脳基底核を中心に沈着し、それによって生じた脳障害を核黄疸という。おもに、血液型のRh不適合やクリグラーナジャール症候群のように黄疸が高度の場合におこりやすい。しかし、未熟児、仮死、アシドーシス、低アルブミン血症、感染、遊離脂肪酸の増加など、核黄疸促進因子を伴う場合は血漿ビリルピン値が比較的低い状態でも、核黄疸をおこす危険性がある。症状はRh不適合による場合は生後2〜4日頃、それ以外の場合は、生後4〜6日頃に嗜眠、哺乳力の低下がみられ、その後は落陽現象、四肢強直、後弓反張、けいれんなどを生じる。しかし 未熟児ではチアノーゼ、坤吟、呼吸数の減少のみを呈することが多い。予後は不良で救命し得た場合でも脳性小児まひを生じる。新生児溶血性疾患、新生児高ビリルピン血症が疑われる場合、核黄疸促進因子が認められる場合は適切な時期に光線療法、交換輸血、アルブミン療法などを行い、核黄疸の発症を未然に防ぐことが重要。
4942 新生児肝炎とは(しんせいじかんえん) 生後1カ月頃に発症した乳児の閉塞性黄疸のなかで、原因不明の肝内胆汁うっ滞性の肝炎のことを新生児肝炎という。肝組織は肝細胞が巨細胞化する。生後1カ月頃から、黄疸、濃い色の尿、淡黄色から灰白色の便が現れ肝腫大を伴う。しかし元気はよく、哺乳力もある。黄疸は生後3〜4カ月、肝機能の異常は生後6〜12カ月頃までに自然軽快する。
治療:一般には特別な治療は不必要。黄疸、灰白便が長期化した時は脂溶性ビタミンA,D,E,K欠乏、と くにくる病を生じることがあるので、その補償療法を行う。また、生後2カ月になっても先天性胆道閉鎖を除外診断できない場合は、開腹 して胆管造影を行い、胆管の疎通性を確認することが重要。また、糞便の色調は本症の診断の手がかりになるので、受診時は糞便を持参し、主治医に提示する。
4943 新生児肺炎とは(しんせいじはいえん) 感染の経路は子宮内での感染、産道通過時の感染、生後の感染がある。子宮内で感染し、出生時にすでに肺炎症状が認められる場合ばかりでなく、生後後2〜3日頃に発症した場合も、子宮内で羊水あるいは経胎盤的に感染Lた先天性肺炎が生後の発症が疑われる。陣痛がはじまる前に羊膜が破れ破水する前期破水は膣から細菌が上昇し羊水中で増殖し、この汚染された羊水を胎児が飲み込み肺炎がおこる。破水後時間がたってからの分娩や、出生前に母親が発熱した場合、羊水が強度に混濁したり、悪臭を伴う場合も肺炎の危険が高くなる。
症状:呼吸数の増加、チアノーゼ、坤吟呼吸(呼吸時にうなる)、陥没呼吸(呼気時に肋間や胸骨上などが陥没)などの呼吸困難。生後4〜5日以降に発症する肺炎は産道通過中に細菌に汚染された分泌物を吸収した場合や、生後に感染した可能性が強い。
治療:敗血症、髄膜炎などの感染症を合併することも多く治療は抗生物質の投与が基本。それだけでなく保育器に収容し酸素投与、保温、気道の清掃、アシドーシスの矯正、輸液を行うなど、厳重な管理のもとで治療。
4944 新生児敗血症とは(しんせいじはいけつしょう) 血液内に細菌が認められるのが敗血症 で、大人や年長児ではきわめて重症感染症。新生児は感染防御力が未発達なため、細菌感染が存在すると全身に拡がり、敗血症になり重症化しやす い特徴がある。生後72時間以内に発症する早期型敗血症は、おもに子宮内または産道感染により、それ以後の遅発型敗血症は分娩時やその後の感染によるものが多い。外科的疾患に伴って敗血症が認められることもある。
症状:発熱、元気がない、哺乳力の低下、呼吸障害、肝脾腫、循環不全を生じ、皮膚色の不良、 尿量の減少、消化管活動の低下による腹部膨満などの症状が認められる。
治療:重症になると死亡率が高い疾患。早期に発見し治療を開始することが重要。治療は原因菌に適合した抗生物質の投与によるが、交換輸血、顆粒球輸血、 ガンマーグロブリンの投与などの処置。
4945 新生児髄膜炎とは(しんせいじずいまくえん) 新生児は感染がおこると全身に拡が り敗血症になりやすい。血液を介 して拡がった細菌が脊髄液中に侵入したものが細菌性髄膜炎。
症状:元気がなくなり、哺乳力が低下、皮膚色が悪くなるなど、敗血症の際にも認められる全身感染の症状が現れ、さらに進行するとけいれんがおこる。脳圧が高まり大泉門は膨隆。
治療:髄膜の通過性の良い抗生物質を投与するが、早期に十分な治療が行われないと死亡率が高くなるだけでなく、てんかん、水頭症、発達遅延などの後遺症が残ることがある。しかし、発見が早く適切な治療が行われれば、治癒し正常な発育をする。
4946 新生児出血傾向(しんせいじしゅっけつけいこう) 新生児は出血しやすい傾向がある。血液が凝固する時は血液中の凝固因子や血小板か関与するが、新生児期には凝固因子の産生が不十分で感染や母親の疾患で血小板が減少しやすい。新生児は血管が脆弱なため出血が多い。凝固因子に関しては出生直後には哺乳量が不十分で、また腸内細菌による ビタミンKの産生もないので、ビタミンKの供給不足で、欠乏が生じ、このためビタミンK依存性凝固因子(第U、Z、IX、X因子)が肝臓で十分産生されないのが新生児の特徴。ピタミンK不足の場合は凝固時間が延長するほか、PIVKAと呼ばれる本来はピタミンKの存在下に凝固因子と なるべき不完全な蛋白質が血中に増加することにより診断される。
4947 モビラート軟膏は心臓疾患に禁忌か? 出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者に対して、本剤に含まれるヘパリン類似物質は血液凝固抑制作用があるので、出血を助長する恐れがあるので使用は控えた方がよい。
4948 新生児メレナとは(しんせいじめれな) 新生児は吐血または下血することがある。新生児自身の消化管から出血している場合を新生児メレナと呼び、出生時に母体血を飲み込んだり、乳首が切れて乳汁に混じって嚥下された母体血が吐物または便にでる場合を仮性メレナと呼び区別する。新生児メレナはピタミンK欠乏によるものも多いが消化管潰瘍が原因のこともある。通常は、ピタミンKの投与が行われる。しかし、出血量が多い場合や、なかなか出血が止まらない場合は少量の新鮮血の輸血が有効。
4949 血管腫とは(けっかんしゅ) 皮膚に認められる「赤あざ」のこと。血管が異常に拡張あるい増殖。血管腫の種類により、自然に縮小、消失するものと消失しないものがある。
1)新生児の前額中央部、ときに鼻の周囲や口唇部に拡がる火炎状の発赤は火炎状血管腫あるいはサーモンバッチと呼ばれる血管腫で、通常1歳まで遅くとも2歳までに自然に消失。
2)項部、後頭部にウンナ母斑と呼ばれる偏平な血管腫を伴い約半数は自然消退せず、成人まで残るが、通常、頭髪の中に隠れるので問題はない。
3)いちご状血管腫は出生時あるいは出生後間もなく生じる皮膚から盛り上がった紅色の血管腫で生後3カ月から6カ月頃までは増大するが、その後、次第に縮小。治療はとくに必要なく、自然に消退するが、潰瘍化し出血する場合には皮膚科での処置要。
4)単純性血管腫(ポートワイン母斑)は皮膚から盛り上がっていない赤ブドウ酒色をした血管腫で出生時からとくに増大はしないが、消退もしない。
5)海綿状血管腫は軟らかな圧縮性のある皮下の腫瘤として触れる血管腫で淡青色にすけて見えることもある。この血管腫は自然消退傾向はないが、いちご状血管腫との混合では腫瘤のかなりの部分が自然に吸収される。
4950 新生児痙攣とは/新生児けいれんとは(しんせいじけいれん) 新生児のけいれんは脳内の病変や代謝性の全身疾患により中枢紳経の機能に異常をきたした場合に認められ適切な治療が行われないと予後が悪い。脳内の病変は新生児仮死後の低酸素性虚血性脳症、頭蓋内出血、未勲児の脳室内出血、中枢神経系奇形、細菌性髄膜炎、先天性ウイルス感染症などがある。代謝性疾患では低血糖症、低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、アミ ノ酸代謝異常、ピリドキシン欠乏症、高 ピリルビン血症などが原因となる。
治療:原因疾患の処置が重要ですが、けいれん発作が二次的な脳障害を招くことがあるので、抗けいれん剤を用いる。また、脳の代謝を改善するため呼吸、循環、体温、血糖値の維持や、アシドーシスの矯正なども重要。