Namazu: [説明]

        Q&A本文(No4651-4800)

No
Q(お客の質問) A(答え)
4651 ステロイドとは(すてろいど) 医学的にステロイドとは、ステロイド核(六角形の輪が3個,五角形の輪が1個繋がった形)を持つホルモンの総称。 この4つの輪(基本骨格)にいろいろな側鎖がついて,さまざまな物質を形成し,さまざまな名前で呼ばれている。水に溶けにくく脂溶性。脊椎動物のホルモンでは、精巣・卵巣から 分泌される性ホルモン、副腎皮質ホルモン、肝臓、胆汁中のコレステロール、胆汁酸、および一部の植物がこれに属する。
1)副腎皮質ホルモン (コルチゾン)
いろいろな代謝を調節したり,炎症を押さえる。
2)男性ホルモン(テストステロン)
体を男性っぽくする。
3)女性ホルモン(エストロゲン)
体を女性ぽっくする。
4)コレステロール(コレステロール)
本来は細胞を丈夫にする役割が,過剰では動脈硬化の原因になる。
5)胆汁酸(コール酸)
脂質の吸収を助ける消化液成分。
6)ビタミン( ビタミンD)。
骨を丈夫にする
7)植物成分のくすり( ジギタリス)
心臓を強くする。
8)動物成分のくすり (センソ)
心臓を強くする。
4652 黄熱病とは(おうねつびょう) 黄熱病は黄熱ウイルスの感染で起こる。
原因 :黄熱ウイルスは、南米、アフリカのネッタイシマカに刺されて感染する。
症状:1週間以内の潜伏期間である。
高熱、嘔吐 、頭痛 、熱 、黄疸、黒色吐血。
重症の場合、無尿、心不全合併で死亡。
治療:黄熱病ワクチンで予防する。発病後は対症療法を行う。
4653 エボラ出血熱とは(えぼらしゅっけつねつ) エボラ出血熱はアフリカのエボラウイルスの感染で起きる国際伝染病である。
原因:エボラウイルスが皮膚の傷等から感染して起こる。
症状:潜伏期間は2週間以内である。
高熱、頭痛、咽頭炎 、胸痛、嘔吐、下痢 、発疹など。 約50%は死亡する。
治療:回復期に、血清注射をする。
4654 腎症候性出血熱とは(じんしょうこうせいしゅっけつねつ) ネズミを介するハンタウイルス(Hantavirus )の感染による出血性腎疾患で、スカンジナビア型の良性腎症(流行性腎症:nephropathia epidemica:NE、良性流行性腎症:benign epidemic nephropathy: BEN)、および重症型の多いアジア型の腎症(流行性出血熱:epidemic hemorrhagic fever:EHF、韓国型出血熱:Korean hemorrhagic fever:KHF、出血性腎症腎炎:hemorrhagic nephroso-nephritis:HNN)などの総称である。
1)臨床症状
軽症から重症まで様々な段階があるが、重篤な症状としての腎不全に注意する。軽症型では上気道炎症状と微熱、軽度の蛋白尿と血尿が見られる程度で、重症型では、有熱期、低血圧・ショック期(4〜10日)、乏尿期(8〜13日)、利尿期(10〜28日)、回復期に分けられる。約1/3は出血傾向を伴う。重症型の致死率は3〜15%である。
2)治療・予防   
対症療法が治療の中心となる。低血圧性ショック、および重篤な症状としての急性腎不全の存在に注意する必要があり、人工透析などを要する場合もある。
4655 マールブルク病とは(まーるぶるぐびょう) 1967年8月西独マールブルクで、突如、原因不明の熱性疾患が発生。ワクチン製造のためウガンダから輸入したアフリカミドリザルに接触した25名が発症し、7名が死亡。
1)病原体  
マールブルグウイルス(フィロウイルス科)は、エボラウイルスと同じ科で、形状も類似。
2)感染様式  
不明(ネズミなどの小動物と考えられています)。
3)症状  
3〜10日の潜伏期の後に前頭部と側頭部の頭痛、倦怠感、筋肉痛(とりわけ腰部)吐き気、嘔吐とともに発症。発熱は39-40度に達し、半数に結膜炎を伴う。発症から1〜3日後に、水様の下痢(時に高度)、昏睡や精神活動の変化が出現。第1週中に口蓋と扁桃の粘膜疹及び頸部のリンパ節腫大が出現。5-7病日には掻痒感のない斑点状丘疹による発疹が顔と首に出現、遠心性に四肢に広がる(特徴的)。発疹後4,5日後に手足に落屑。一般的に出血は発症後5〜7日目に、消化管、尿路系、膣、結膜から見られる。死亡は7〜9日目であることが多い。その時期を抜けると回復期に向かうが、回復は長引き、3〜4週間を越えることがある。
4)治療方法  
対症療法のみで、確立された治療法は今のところありません。
4656 発疹チフスとは(はっしんちふす) 発疹チフスは発疹チフスリケッチアの感染で起こるものである。
原因 :シラミからヒトに感染する。4類感染症のひとつである。
症状:潜伏期間は1週間〜2週間である。
寒気、高熱、頭痛 、筋肉痛 、目の充血、赤い発疹など。
重症例は血圧降下、脈拍は速まる、意識障害等で死亡することがある
治療:抗生物質のテトラサイクリンを早急に投与する。
4657 つつが虫病とは/ツツガムシ病(つつがむしびょう) つつが虫リケッチアが体内に侵入しておこる全身的な感染症。リケッチアは、ツツガムシというダニの幼虫の体内にいる。リケッチアは リンバ液や血液の流れに乗って全身に拡がり、リソパ節をはらせたり熱をだし、全身に発疹がでる。発疹は粒状だったり蕁麻疹ふうだったりする。刺し口はかさぶたにおおわれ、それもいずれ剥げ落ちてあざを残すだけとなる。発熱とそれに伴う症状、リソバ節のはれ、発疹は適切な治療が行われない場合は長く持続し、いろいろな合併症をおこして、ときには生命を失うこともある。
治療
適切な抗生物質を使うと治る病気です。
発病の前に山地か草原に行ったこと、つつがむしの刺し口があって近くのリンバ節がはれていること、熱がでて発疹がでたことなどから、この病気の診断は、医師にとって難しいものではない。受診して病歴、病状を正確に伝え、診断を受けた上で適切な抗生剤(この場合はテトラサイクリソ系の薬剤)を用いてもらえば劇的に良くなる。
4658 デング熱とは(でんぐねつ) 熟帯地域の病気で、デングウイルスによる熱性疾患です。日本では太平洋戦争中にかなり発生したが、戦後はほとんどみられない。南方で勤務してかかったり、旅行から帰って発病することがまれにある。発熱、発疹、全身の痛みがおもな症状で大体5日くらいで自然に治る。まれに出血傾向やシヨツク症状を呈することがあるが、病院で適切に対処すれば問題ない。
4659 レジオネラ症とは/在郷軍人病とは(れじおねらしょう、ざいごうぐんじんびょう) 1976年アメリカのフィラデルフィアでの在郷軍人の集まりで、それまで未知だったタイプの肺炎が集団発生した。レジオネラと呼ばれることになった細菌が会場のエアコンから噴きだして、集まった人たちに病気をおこした。その後、この菌による肺炎や熱性疾患があちこちで報告され、日本には在郷軍 人病の名で紹介された。この菌は水のあるところを好み、ピルの給水塔あたりによく生息する。
細菌性肺炎や敗血症の形をとり、高齢者や喫煙者、糖尿病、慢性の呼吸器疾患をもつ人、それに他の病気の治療によっ て免疫機能の低下Lた人などにおこりやすく、重症化しやすいのが特徴です。
治療:レジオネラは細胞内寄生細菌であるので、宿主細胞に浸透するエリスロマイシン、リファンピシン、ニューキノロンなどの抗菌薬を使用する必要がある。有効な抗菌薬の投与がなされない場合は、7日以内に死亡することが多い。
4660 敗血症とは(はいけつしょう) 敗血症は身体内の細菌が血中で増殖して、全身に感染するものである。
原因:膠原病、がん、白血病等で、血液の免疫力が落ちたときに感染する。身体内の大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌等が血中で増殖し、全身を循環して、臓器、組織に感染する。
症状:寒気 、汗 、高熱、
急性:血圧降下、無尿、意識障害、細菌性ショックで数時間で死ぬこともある。
肺:気管支炎、肺炎
心臓:心内膜炎
治療:抗生物質を投与する。
4661 梅毒とは(ばいどく) 梅毒は病原体(スピロヘータ)、梅毒トレポネーマの感染で起こる。
原因:性行為により、粘膜や皮膚から感染する。妊婦の感染で胎児死亡、生後に先天性梅毒となる場合がある。近年は、海外での感染が多い。
症状 :潜伏期間は3ヵ月程度までだが、症状が10年間程度の長期にわたる。
1)第1期:性器、唇、指先等のしこりが潰瘍性水ぶくれとなり崩れる、
2)第2期:全身に菌が蔓延。微熱、倦怠感、リンパ節の腫れ、発疹、瘤状のふくれ
3)第3期:結節性梅毒、ゴム腫が全身に出る
4)第4期(晩期梅毒):脳、脊髄に障害で思考障害、性格障害、歩行障害、大動脈瘤等も
治療:抗生物質のペニシリン、テトラサイクリン等を投与する。
4662 軟性下疳とは(なんせいげかん) 軟性下疳は軟性下疳菌が感染して発症する。
原因:性行為によって感染する。HIVを合併しやすい。
症状:潜伏期間は、数日〜1週間である。
・男性・・・亀頭溝に豆大の潰瘍
・女性・・・陰部、膣に豆大の潰瘍 ・リンパ節の腫れ、痛み、化膿、発熱
梅毒の合併で硬性下疳となる。
治療:サルファ剤、ミノサイクリン、セリフトアキソン等を使用する。
4663 鼠径リンパ肉芽腫症とは/第四性病とは(そけいりんぱにくげしゅしょう、だいよんせいびょう) クラミジア・トラコマティスでおこる性病。日本ではきわめてまれ。外陰部の小水疱にはじまる。 梅毒や軟性下疳のように、いわゆる下疳の症状は少なく、リンバ節炎、直腸、膣、外陰部の症状が主体。性交による感染がおこっても、潜伏期は比較的長く、ときには2〜3週間たって症状がでてくることもある。最初の症状は、外陰部に小水庖がでるが、痛みやはれがないので気づかない場合が多い。 水疱はただちに浅い潰瘍を形成し、痛みもほとんどなくすぐ治るので、たいしたことはないと思っているうちに、2〜4週問くらいたつと鼠径部(股)のリンバ節が次第にはれてくる。鼠径部より骨盤部リンパ節へと進んでいく。このリンパ節炎は、互いにリンバ節の団塊を形成して大きくなる。 さらに進行すると、その中心部に膿瘍が形成され、ついにはうみが皮膚の破れ目を通して排出される。長い間にわたって膿汁が分泌され、膿汁分泌も少なくなってくると、 後はひきつれとなって残る。 そのほか外陰部のリンパ浮腫は表皮が硬くなり、あたかも象の皮膚のようになり、「象皮症」 となる。 また、大腿部や腎部にひきつれとともに膿汁を排出する状態がみられる(エスチオメーヌ)。陰茎も同様の状態とな り、これを「サクソホーン陰茎」と呼ぶ。直腸の方向に進むと、肛門周囲炎、直腸肛門炎などがおこり、膿瘍を形成し膿を出す孔が沢山でき狭窄として残る。
治療:テトラサイクリンかマクロライド系抗生物質を用いる。病気が進行してからでは合併症を治療することが難しい。
4664 淋疾とは(りんしつ) 接触のしかたによって、性器、尿道、直腸、咽頭、眼などの粘膜に感染し、化膿する。まれに(乳幼児など)入浴時や衣類を通してなど、セックス以外での感染もある。クラミジアと同時に感染することもある。
病原体:淋菌(潜伏期2〜10日[3〜7日が多い])
症状:性器の炎症や膿が出る。男女で症状が違う。菌が血液に入ると関節炎にもなる。
女性:症状はかなり進んでから気づくことが多い(黄色い濃いおりものや、尿からの膿)。 子宮内膜炎、卵管炎、子宮外妊娠、不妊症。
男性:ペニスの先からの膿、下着のよごれで気づく。 包茎では感染しやすい。前立腺や、精巣上体(副睾丸)に炎症が広がることもある。
新生児:母親が感染していると、生まれるときに感染し結膜炎、失明。
治療:抗生物質(ペニシリン、ニューキノロン)が有効だが、最近はこれが効かない淋菌がある。
4665 非淋菌性尿道炎とは(ひりんきんせいにょうどうえん) 一般にクラミジア感染症として一括して呼ばれることもあるが、非淋菌性尿道炎は淋菌以外の原因で起きる尿道炎すべてを指すので、クラミジア以外にも一般の細菌や原虫によっても引起こされる。 尿道炎の症状は尿道からの分泌物、ときに膿が出てくること、排尿時に痛みを伴い、尿道に不快感があることです。 発病までの期間はまちまちですが、1〜2週間で症状が出ることが多い。ほとんどは性行為によって感染するが、病原体の種類によっては、移らないこともある。 特に女性においては病原体は保持しているが、自覚症状がまったくないことも、しばしばです。 感染経路はほとんど性行為による。原因は大きく3つに分けられる。
1)一般細菌によるもの(嫌気性菌尿道炎・カンジタ尿道炎)
2)特殊な細菌によるもの(クラミジア尿道炎・マイコプラズマ尿道炎・ウレアプラズマ尿道炎)
3)原虫によるもの(膣トリコモナス尿道炎・大腸アメーバー尿道炎・赤痢アメーバー尿道炎など)。
4666 エイズとは(えいず) エイズはエイズウイルス(HIV、ヒト免疫不全ウイルス)が白血球のリンパ球を破壊して起こる。
原因:エイズウイルスが免疫の中枢である白血球内のT細胞を破壊するために起こる。この破壊により、微生物、病原菌が感染して、さまざまな病気を引き起こす。輸血、母子感染、性行為が感染経路となる。以前は死の病だったが、現在は薬物療法による改善が望めるようになった。
症状:潜伏期間が長く、5年〜10年後に発症することが多い。 微熱 、倦怠感、下痢 、体重減少、リンパ節の腫れなど。進行するとカリニ肺炎、食道カンジダ症、悪性腫瘍になる場合もある。
治療:プロテアーゼ阻害薬のインジナビルと逆転写酵素阻害薬のAZT、3TCを併用する。
4667 回虫症とは(かいちゅうしょう) 回虫症は回虫の卵が体内に入り、孵化して寄生することで起こるもの。
原因:回虫の卵のついた食べ物から感染し、孵化した後、腸に寄生する。近年、衛生環境の向上で発症が激減している。
症状:下痢、腹痛 など。
治療:ピランテルパモエイト剤(商品名:コンバントリン)の駆虫薬が主である。
4668 鉤虫症とは/十二指腸虫症とは(こうちゅうしょう、じゅうにしちょうちゅうしょう) 鉤虫症(十二指腸虫症)は鉤虫の幼虫が体内に入り、成虫となって病気を起こすもの。
原因:鉤虫の幼虫が野菜について、これを食べることでヒトの体内に入る。小腸に寄生し、1pほどの成虫とな る。
症状 :腹痛、下痢 ・貧血など。重症になると手足のむくみ、動悸など。
治療:駆虫のために、ピランテルパモエイト剤(商品名:コンバントリン)の駆虫薬が主である。
4669 蟯虫症とは(ぎょうちゅうしょう) 蟯虫は夜間睡眠中に雌虫が肛門周囲に卵を生み、その卵は数時間で感染できる子虫に成長する。そのとき、雌虫が肛門の周りをはい回るので、かゆくなり、子供は指や爪で掻き、虫卵が爪について自分に再び感染しその数を増やしていく。女児の場合は膣部に成虫が入り込み腹痛の原因になる。さらにその虫卵は衣服や寝具に付いて他の子供たちや家族に感染する。
治療:ピランテルパモエイト剤(商品名:コンバントリン)の駆虫薬が主である。家族内感染が多いので、家族全員で飲む。家族ぐるみで集団駆虫をする。
4670 糞線虫症とは(ふんせんちゅうしょう) 糞線虫症は糞線虫が身体に入って病気を起こすもの。
原因:糞線虫は田んぼ等に生息して、裸足の足から幼虫が身体に入り、小腸で成虫となって病気の原因となる。
症状:食欲不振 、下痢、血便、貧血、むくみなど。治療:チアベンタゾール(商品名:ミンテゾール)を投与する
4671 糸状虫症とは/フィラリア症とは(しじょうちゅうしょう、ふぃらりあ) ヒトに感染するおもなフィラリアはバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、オンコセルカ、ロア・ロアの四種す。熱帯地方に広くみられ、流行地域に住んでいる人だけが発病する。日本では以前は九州南部、奄美諸島、 沖縄などにバンクロフト糸状虫症患者が多くみらたが、現在では新しい感染はまったくない。バンクロフト糸状虫成虫は長さ10cmくらいのきわめて細い虫で、リンパ管の中に住んでおり、ミクロフィラリアと呼ばれる仔虫を産出する。その仔虫 は、夜だけ血液中にででる。アカイエカなどの蚊が血を吸うときに この仔虫も蚊の体内に入り成長し、その蚊が再び吸血するときに、ヒトに感染する。この蚊に長い間繰り返して刺されると、高熱発作をおこしますが、やがて、足がはれてむくみ、象の足のようになる象皮病や、陰嚢にリンパ液がたまって大きくなる陰嚢水腫、尿が牛乳のように白く濁る乳び尿の症状がでる。
治療:早期に駆虫薬一般名:ジエチルカルバマジン(商品名:スバトニン)やアイバーメクチンを服用。
4672 イヌ回虫症とは(いぬかいちゅうしょう) 本来はイヌの回虫なのでイヌ糸状虫と同じように人に幼虫移行症をおこす寄生虫。最近のペットブームでイヌの糞がいたるところに放置され、小児への感染の機会が増える。ヒトは、仔犬の腸管に寄生している成虫から産出された虫卵を、仔犬と遊んだり、砂場で遊んだりしているときに偶然に飲み込んで感染する。そのため、6歳以下の小児に とくに感染が多くみられる。また、最近ではその虫卵に汚染された飼料を食べた鶏や牛の肉や内臓を生で食べて、感染する人も増えてきた。 感染するとせき、発熱、発育不良、異味症がみられ、白血球数も多くなる。肝臓もはれる。眼がキラキラと光 る猫眼になって失明もある。 有効な治療薬はない。
4673 顎口虫症とは(がくこうちゅうしょう) ネコ、イヌ、ブタ、イノシシなどの胃に寄生する顎口虫の幼虫(0.5〜4mm)はヒトに侵入した場合、成虫とならないで幼虫のままヒトの体内を動き回る。幼虫は雷魚やドジョウなどにいる。このような魚を生で食べると、幼虫が人に侵入する。幼虫が体内に入って症状が現れるまでの期間は、3週〜2年と一定していない。幼虫が皮下を移動しているとき(皮膚の発赤腫脹がある)に、医師の診察を 受けることが重要。一週間前後ではれは消失するが、再び他の部位に現れる。はれが消失したとき(幼虫が 内臓などへ侵入したとき)の診断は困難。 近年、日本での発症例の感染源は中国から輸入したドジョウの「おどりぐい」が主です。有効な薬はない。治療は皮膚を切開して虫体の摘出が行う。ドジョウは十分加熱して食べること。
4674 アニサキス症とは(あにさきす) イルカ・クジラの回虫の幼虫(一般に アニサキス幼虫と呼ぶ)が、人の胃や腸壁に穿入する病気。 ニシン、タラ、サバ、アジ、イカなどの海産魚の内臓表面や筋肉内にはアニサキス幼虫(2〜3cm)が高頻度にいる。刺身とともに食べた幼虫か胃や腸壁に 穿入する。一般に刺身を食べて1〜8時問後に悪心、嘔吐を伴う腹痛が周期的におこる。胃に穿入した場合、診断も治療も容易で、内視鏡下に虫体を摘出できる。腸壁に穿入した場合、診断は非常に困難で、開腹手術を受けることもある。 アニサキス幼虫は酢漬では死なないので注意が必要。
4675 旋毛虫症とは(せんもうちゅうしょう) 旋毛虫はほぼすべての哺乳動物に感染する寄生虫。成虫は腸に、幼虫は筋肉に寄生する。幼虫(約1mm)のいる肉を生で食べるとヒトは腸に成虫を宿す。成虫は幼虫を産みだしただちに死ぬので、成虫による病害 (下痢、腹痛)は軽くてすむ。しか し、産みだされた幼虫は腸から体の各所の筋肉に運ばれ、そこで長年生き延びるので、感染者は種々の症状を訴える。これまで日本で発生した患者の感染源はすべてクマの肉の刺身でした。短期 問の冷凍肉は危険で、有効な薬はないの で、肉やソーセージは十分加熟して食べ ることが必要。
4676 条虫症とは(じょうちゅうしょう) 一般に症状は軽いが、突然テープ状の薄く長い条虫(さなだ虫)の成虫 の一部が自然に排出されたり、肛門から 垂れ下がるのでショックを受ける。激 しい下痢や腹痛を訴えることもある。条虫の成虫は腸に寄生する。幼虫の いる肉を生で食べると、ヒトは小腸に成虫を宿すことになる。ヒトに感染する条虫には数種類があある。日本で最も感染者の多い日本海裂頭条虫の感染源は、サケ、マスです。日本では感染の危険はないが、外国で感染の危険のある無鉤条虫の感染源は牛肉、有鉤条虫は豚肉です。十分熱を加えれば感染の危険はない。
4677 肺吸虫症とは/肺ジストマ症とは(はいきゅうちゅうしょう、はいじすとま) 大きさ、形ともにコーヒー豆様の虫が 肺またはその周囲に寄生する病気。まれに脳にも寄生。川にいるカニ(サワガニ、モクズガニ の二種)か、イノシシの肉を刺身で、あるいは十分に熱を加えないで食べるのが原因。カニなどを生で調理したまな板や包丁を、よく洗わないでその上で野菜などを切り、その野菜を生で食べるのも危険。肺に寄生すると、せきと血痰(錆色) が特徴的で、肺がんや結核とよく間違える。熱はあまりない。胸膜に寄生すると熱がでて胸痛も強く、胸に水が貯ったり気胸をおこすこともあるが、 血痰はでない。プラジカンテルという薬があるので容易に駆虫できる。
4678 包虫症とは/エキノコッカス症とは(ほうちゅうしょう、えきのこっかすしょう) 多胞条虫、単胞条虫と呼ばれる寄生虫が、嚢胞(袋状のできもの)の形で体のいろいろな臓器に寄生する病気。キツネ、イヌがこの寄生虫の虫卵を、糞便とともに自然界へまき散らす。汚染された土、水などから虫卵が知 らないうちに口に入り、感染する。キタキツネを頻繁に見る北海道がおもな流 行地。おもに肝臓、肺に大きな嚢胞をつくる。病巣が非常にゆっくり大きくなるため、数年間はほとんどが無症状で、検診時にたまたま見つかる。10数年を経て症状が現れる。まれに一 部が脳などの重要臓器に転移することも あり、このときは重症になる。薬物療法も試みられてはいるが、今 のところ外科的に病巣を切除し、取り除 く以外に完壁な方法がない。 自覚症状のほとんどない病気なので予防が肝心。
4679 日本住血吸虫症とは(にっぽんじゅうけっきゅうちゅうしょう) 腹の血管の中に長さ1cmほどの虫が寄生し、産みだされた多数の卵(0.05mm)が肝臓の小血管に引っかかるために長い間には肝硬変になる病気。流行地の川や池の水(淡水)に入っただけで、傷口のない健康な皮膚から虫が 侵入する。かつて日本にもあった病気ですが、現在は国内での感染の心配はない。最近は、熱帯地を旅行中に川や湖で泳いで感染することが問題となってきました。国内では、昔の古い感染の痕跡が、甲府盆地や筑後川流域に住んでいた人たちに、たまたま見つかることがほとんどです。この場合、症状があるとすれぱ、後遺症としての肝硬変によるものです。熱帯地で感染すれば、水に浸った部分が皮膚炎をおこし、1〜2カ月後には発熱と ともに下痢、血便などがはじまる。新しい感染に対Lては、プラジカソテルという駆虫薬で治療が可能。しか し、後遺症には対症療法しかない。
4680 肝吸虫症とは/肝ジストマ症とは(かんきゅうちゅうしょう、かんじすとま) 小さな木の葉状の虫が、胆管内に寄生 しておこる病気。モロコ、モツゴ、タナゴ、ウグイ、フナ、コイ、ハヤ、ワカサギなどの淡水魚を刺身、または十分に熱を加えないで食べると感染する。 ふつうは虫の数も少なく、軽い一般的 な胃腸症状、胆嚢炎症状を示すにすぎない。気づかないで長期化、または虫の数が多く重症化すれば肝硬変様の症状が現れる。プラジカンテルで治療する。
4681 横川吸虫症とは(よこがわきゅうちゅうしょう) 大きさ1mmほどの小さな虫が多数小腸に寄生する病気。病害はほとんどない。アユ、ウグイ、シラウオ、ポラなどを刺身で食ぺたり、熱を十分に通さないで食べると感染する危険がある。多数寄生すれば、下痢、食欲不振、腹痛などの症状があるが、少数寄生ではまったく無症状で、検便などで偶然引っかかる。 放っておいても一、二年で自然治癒るので、少数寄生で症状がなければ治療しなくても大丈夫です。最近はプラジンテルが試用されはじめた。
4682 アメーバ赤痢とは(あめーばせきり) 世界に広く分布するが、熱帯・亜熱帯に多い原虫性疾患で、赤痢症状を呈する場合は、法定伝染病として扱われる。我が国では戦後各地に流行し、その後は 次第に激減したが、最近では輸 入感染症のほか、新たに男性同性愛者間の国内感染例が増加の傾向にある。通常は赤痢アメーバの嚢子に汚染された飲食物や手指を介して経口感染する。感染源としては、急性期患者よりも、嚢子を排出する回復期患者や無症状患者の方が危険。潜伏期は不定で数日から数カ月に及び、 無症状のものから、軽度の軟便や下痢、 あるいは回盲部圧痛としぶり腹を伴うい ちごゼリー状の粘血便を、一日数回から10数回排出する赤痢症状まで多様です。
治療:どの病型にもメトロニダゾールやチニダゾールが奏効するが、重症患者には デヒドロエメチンも使用される。また、肝膿瘍の場合は排膿を促進する外科的措置の併用が治癒を早める。
4683 マラリアとは(まらりあ) マラリア原虫が体内で繁殖して起こる。
原因:ハマダラカに刺され、マラリア原虫が体内に入って繁殖し、赤血球を破壊するのが原因となる。症状:潜伏期間は、1カ月以内である。
発熱、貧血、脾臓の腫れ
合併症・・・異常高熱、意識障害、腎不全、心不全等で生命の危険がある。
治療:キニーネ、クロロキン等を服用する。早期治療で治癒する。
4684 トキソプラズマ症とは(ときそぷらずま) トキソプラズマ症はトキソプラズマの原虫に感染して起こる。
原因:豚肉、鶏肉、動物の糞に生息するトキソプラズマの原虫から感染する。
症状:発熱、発疹、リンパ節炎、脳脊髄膜炎、肺炎、脈絡網膜炎など。
多くは無症状である。妊婦が感染すると、流産、早産の危険がある。
治療:サルファ剤、ピリメタミンを服用する。
4685 ジアルジア症とは/ランブル鞭毛虫症(じあるじあしょう、らんぶるべんもうちゅうしょう) 全世界に分布し、ときに先進国での突発的流行もみられるが、熱帯地の衛生環境の悪い地域に多い原虫性疾患。まれに国内感染もあるが、最近は海外旅行者下痢症の重要な原因になっている。ランブル鞭毛虫の嚢子に汚染された飲食物を摂取して経口感染するので、ランブル鞭毛虫症ともいわれる。感染しても無症状のものから、軽度の軟便、さらに重症例では悪臭のある脂肪性下痢をきたすが、血便はみられない。また、また胆管炎や胆嚢炎様の症状をおこすこともある。 治療にはメトロニダゾールやチニダゾ ールがよく効きます。
4686 クリプトスポリジウム症(くりぷとすぽりじうむ) 世界に広く分布するクリプトスポリジウムによる原虫感染症で、1987年に はじめて知られた疾患。免疫機能が正常な成人が発症しても、通常1〜2週間で自然治癒するが、エイズや免疫不全患者の場合は激しい下痢が長く続くため衰弱し、ときに致死的な代表的な日和見感染症の一つです。本虫のオーシストに汚染された飲食物を介して経口感染すると、小腸でそれから遊離したスポロゾイトが粘膜の徴絨毛の中に侵入して分裂増殖を繰り返し、細胞を破壊するため発症すると考えられるが詳しい機序は不明。また、微絨毛の中では有性生殖も行われ、これにより生じたオーシストが糞便中に排出され、感染源になる。健常者の初感染例では、数日間の潜伏期を経て下痢をきたすが、一過性で 数日から二週間で自然治癒する。しかし、エイズや免疫不全患者では、一日数リットルから10数リットルに及ぶ水様性下痢、腹痛、 腹鳴が持続して脱水や栄養障害をおこし、重症例では胆管、胆嚢、呼吸器、尿路まで病巣が拡大することがある。
治療:特効薬はないが、スピラマイシンが若干有効。免疫抑制剤投与中の患者は、その一時中止により症状が軽快する。
4687 ニューモシスチス・カリニ肺炎とは(にゅーもしすちす・かりにはいえん) 宿主の免疫不全に乗じて発症する特異な肺炎で、世界各国から報告されている。各種の免疫不全患者に日和見感染をおこすが、最近はエイズの関連疾患としても注目されている。ニューモシスチス・カリニと呼ぼれる病原体はヒト、獣類の肺に広く不顕性感染するが、宿主が健康であればその増殖を阻止して発症することはない。ところが、免疫不全に陥ると急激に増殖して、呼吸困難を主徴とする致命率の高い肺炎をおこす。通常、エイズ、多量の免疫抑制剤、抗がん剤または放射線治療を行った白血病、 悪性腫瘍、臓器移植患者などに併発する。症状は乾いたせき、発熱、息苦しさから呼吸困難、チアノーゼと進む。胸部のレントゲン写真では左右の肺門部の蝶形陰影から、病状の悪化とともに肺全体がすりガラス様に変化するのが特徴。また、血液中の酸素が少なくなり、 喀痰量が少ないのも特徴。適正な治療を加えないと致命的になるが、エイズ患者では本症の併発が死因の大きな比率を占める。治療にはトリメトプリムとサルファ剤の合剤やベンタミジンの早期投与が有効。
4688 腸炎ビブリオ食中毒とは(ちょうえんびぶりおしょくちゅうどく) 腸炎ビブリオ食中毒は魚介類内の腸炎ビブリオ菌の感染で発症。
原因:保菌する魚介類を生食することで感染する。代表的な細菌性食中毒である。夏に多く発症。
症状 :潜伏期間は8〜16時間。
激しい腹痛、嘔吐 、高熱、下痢 など。
治療:輸液や抗生物質を使う。
4689 黄色ブドウ球菌食中毒とは(おうしょくぶどうきゅうきんしょくちゅうどく) 黄色ブドウ球菌食中毒は黄色ブドウ球菌によって発症。
原因:皮膚や喉にいる黄色ブドウ球菌が、食品に付着して毒素を生成し、この食品を食べることで発症。
症状 :吐き気、激しい嘔吐・腹痛、下痢など。
治療:胃洗浄や下剤を使う。治療の必要がない場合が多い。
4690 サルモネラ食中毒とは(さるもねらしょくちゅうどく) サルモネラ食中毒とは細菌性感染型の食中毒であり、夏に多く発生する。これは腸チフスの原因ともなるサルモネラ菌が腸の中で増殖し、発生した毒素が小腸の粘膜に炎症を起こす。
原因:サルモネラ食中毒は牛や豚、犬や猫などの人間と密接な関係のある動物についているサルモネラ菌により起こる。サルモネラ菌のついた肉を食べたり、サルモネラ菌を保有する人間が調理した食べ物を食べることで感染し、食中毒を起こす。
症状:6〜48時間の潜伏期間、発熱 、腹痛、嘔吐 、下痢など。
重症になると、ショック状態に陥ることもある。
治療:サルモネラ食中毒の治療には、輸液や抗生物質の薬剤を用いる。
4691 カンピロバクター腸炎とは(かんぴろばくたーちょうえん) カンピロバクター腸炎は細菌のカンピロバクターの感染で起こる。
原因:カンピロバクターは、豚、鶏、犬、牛等の腸管にいて、生肉や汚染水によって人の大腸に感染する。ペットの便から経口感染することもある。
症状:潜伏期間は5日以内。
発熱、下痢 、腹痛など。
治療:化学療法剤、輸液、抗生物質を使う。
4692 病原大腸菌食中毒とは(びょうげんだいちょうきんしょくちゅうどく) 病原大腸菌食中毒は大腸菌が大腸や小腸で増殖する等で起こる。
原因:通常は病原菌とならない大腸菌の中で、O-157等のように、病原体となって、腸内で毒素を生成したり、出血させたり、増殖したりして発症。
症状 :潜伏期間は8〜20時間。
発熱、腹痛、下痢、嘔吐 、血便など。
治療:抗生物質や輸液を使う。
4693 ボツリヌス菌食中毒とは(ぼつりぬすしょくちゅうどく) ボツリヌス菌に汚染された食品を食べるて発症
原因 :すじこ、ハム、ソーセージ、蜂蜜が原因となり、汚染された食品が調理不十分の状態で保存されることで、菌が増殖し、毒素が生成される。
症状:倦怠感、嘔吐 、下痢 、腹痛、視力障害、発声障害 、呼吸困難など。乳児は、蜂蜜が原因となって呼吸麻痺を起こして死亡することが多い。
治療 :抗毒素血清を使う。
4694 有毒植物での食中毒(ゆうどくしょくぶつ、しょくちゅうどく) 植物性自然毒による食中毒は、ほとんどが毒キノコによるもので、それ以外の植物毒によるものは少ない。なお、植物性自然毒による食中毒は、 被害者の年齢によっで、原因植物の種類が異なることも特徴。 乳幼児では家屋内にある観葉植物を食 べておこすことがある。学齢前後の子どもでは、庭の植物、成人は野草、山菜の食用あるいは誤食に よるものが多い。有毒植物による食中毒を症状別に整理 すると次の通り。
1)下痢・嘔吐をおこす
ヨウシュヤマゴボウの根、ルイヨウハポタンの果実などの誤食による中毒。この原因物質は、サポニンですが、摂取されたサポニンが加水分解され、 トリテルペン化合物になって胃に作用。中毒は、摂取後2〜3時間で発症し、症状は唾液の分泌が高まり、10時間にわたる嘔吐、下痢も48時問にわたり続く。
2)摂取後、時間を経て胃腸炎をおこす
この型の中毒には、クロッカス、イヌサフランの葉、種子、球根、あるいは花などの摂取によっておこるが、原因物質はコルヒチンです。 このほか、ヒマの種子やトウアズキの成分トキシアルブミンによる中毒や、ナス科の植物、ホウズキなどの果実に含まれているステロイドによる中毒がある。 このほか、強いけいれんをおこすドクゼリのチクトキシン、心臓や血管系に作用するジキタリス、キョウチクトウなどに含まれているジキトキシンがある。
4695 毒キノコ中毒とは(どくきのこちゅうどく) 毒キノコ中毒とは食中毒の一種であり、特定のキノコを食べることにより起こる。
原因:毒キノコ中毒を起こすのは、毒素をもつテングダケ、ワライダケ、ツキヨダケなど。
症状:毒キノコ中毒の症状は、下記の3つに大別される。
1)胃腸炎型:毒キノコを食べてから約1時間後、嘔吐、腹痛、下痢が起こる。
2)コレラ型:毒キノコを食べてから約10時間後、激しい嘔吐や下痢が起こる。最悪の場合、ショック状態に陥り、死亡する。
3)脳炎型:毒キノコを食べてから2時間以内に発汗、けいれん、昏睡などの神経症状が起こる。最悪の場合、死亡に至る。
治療:毒キノコ中毒の治療法は、コレラ型や脳炎型の場合、胃の洗浄、下剤の服用、輸液や人工呼吸などである。胃腸炎型であれば自然に治るのを待つ。
4696 ふぐ中毒とは(ふぐちゅうどく) ふぐ中毒は、昔からよく知られており、 中毒による死亡者は日本で年間75名以上。毒素はテトロドトキシソで、 毒力はシアン化ナトリウムの1000倍。 なお、人に対する最少致死量は1kg中2mgです。
ふぐの種類は多く有毒なも のは50種前後。なお、 一般に知られているものには、クサブグ、 コモンフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグ、マフグ、メフグなど。ま た、ふぐ以外のマンボウやハリセソボンもテトロドトキシンをもっている。ふぐの毒素の多い部分は、卵巣、肝臓などで、産卵直前が最も毒性が高い。なお、毒性の高い時期は、12月から6月頃で最近では夏から秋にかけてのほうが高いといわれている。 また、この毒素は、もともと動物の生体防御物質で、魚類以外のイモリ、ヒラタムシなどの卵にも含まれる。 ふぐ中毒の中毒症状は、比較的急速に現れ、摂食後1時間以内に発症。とくに、飲酒時には早い。症状は、初期には、口唇、舌端のし びれにはじまり、次いで嘔吐がおこる。 進行は、不完全運動まひ、完全運動ま ひ(血圧降下、呼吸困難)、意識消失の経過をたどる。 また、絶命までの時間は、6時問前後。 中毒時の対応については、解毒剤はないが、次の応急処置を行う。
@胃腸内の毒素の排除
A流血中の毒素の排除
B人工坪吸を長く続ける
C輸血は避けて、強心剤の投与を行う なお、大切なことは中毒の予防で、素人料理はやめ、専門家の調理したものを 食べること。
4697 シガテラ中毒とは(しがてらちゅうどく) シガテラとは、食物連鎖と関係するある種の中毒の名称で、プランクトンがつ くった毒を魚がこれを摂取し、蓄積したものを人か食べておこる内毒性魚中毒です。 なお、中毒例の多い魚は、バラフエダイ、バラハタ、ドクウツボ、マダラハタ、 ドクカマスなどです。有毒成分は、シガトキシン、マイトキシンおよびスカリトキシンなどが知られている。中毒症状は、摂取後24時間前後に発症、口周囲の不規則性機能亢進、手足の近くの障害、下痢、嘔吐、冷温感覚異常などがみられる。
4698 貝中毒とは(かいちゅうどく) 貝による中毒にはムラサキガイ、イ ガイ、アサリ、ホタテガイ、コタマガイなどによるまひ性貝毒、下痢性貝毒があり、いずれも、有機成分は食物連鎖によるものです。今日では毒化予防法の研究も進んで おり、定期的モニタリングによって毒力が規制値を超した場合に、出荷規制措置がとられるので問題はない。
4699 化学物質による食中毒(かがくぶっしつ、しょくちゅうどく) 化学性食中毒は食品中に混在する有毒化学物質による健康障害で、比較的急性なものをいう。化学物質による中毒で、最もよく知られているのは、メチルアルコールの飲用による中毒です。こ の例にもみられるように、社会的背景と関連が大きいのが特徴です。
4700 カドミウム中毒とは(かどみにゅうむちゅうどく) カドミウムによる急性の中毒では、昭和52年1月に神奈川県の平塚市で、バーベキューによる食中毒が発生した。 そのときの原因物質がこれでした。カドミウムは、カルシウム代謝に影響を与えるもので、骨格系障害をもたらします。この中毒はイタイイタイ病でよく知ら れている。
4701 水銀中毒とは(すいぎんちゅうどく) 中枢神経系に影響を及ほす中毒で、水俣病で知られているメチル水銀中毒がある。水俣湾と阿賀野川でとれた魚に蓄積されていたものを摂食することによって発症したもの。
4702 PCBによる中毒とは PCBによる中毒事故は、カネミ油症でよく知られている。PCB(ポリ塩化ピフェニール)は、コンデンサー、 トランスの絶縁油、食用油の工程中に使用する熱媒体、可塑剤などに用いられている。なお、PCBの人体一日摂取許容量は1kg中0.005mg。中毒症状は、ツメの異常、にきび様の発疹、 頭痛、嘔吐、下痢、肝障害など。 以上が、化学物質による食中毒で一般に知られているものです。なお、このほかに化学物質による中毒にはヒ素、錫、農薬、食品添加物あるいはかびの産生した化学物質などによるものがある。 多くは、製造工程の十分な管理で、中毒を未然に防ぐことができる。
4703 タバコの誤食とは(たばこのごしょく) タバコの誤食は小児の家庭事故の中で最も頻度が高い。タバコの有毒成分はニコチン。 ニコチンは中枢神経、自律神経末端において、初期には刺激・興奮作用を、後には抑制作用を示す。 紙巻きタバコ一本には、約20mgのニコチンが含まれ小児の経口致死量に匹敵する。しかし、 乳幼児が一本全部を食べてしまうことは 少なく、実際に中毒症状を呈することはまれ。タバコの浸漬液はニコチン量が多く、吸収も早く、重篤な中毒症状を きたす。灰皿代わりに用いたジュー ス缶の残液を誤って飲み込んだ場合には、 注意を要す。軽症の場合は悪心、嘔吐、頭痛、頭重、 めまいなど。中等症では流涎(よだれ)、蒼白、動悸、胸部圧迫感、腹痛、激しい嘔吐、下痢がみられる。重症では手指振戦、精神錯乱、けいれん、呼吸不全、血圧の下降、昏睡など、危険な症状が出現。
治療:胃洗浄。症状 がなくても行う方がよい。多くの場合、洗浄液中にタバコが見い出される。消化管内のニコチンを排泄させるため吸着剤と塩類下剤を投与する。 けいれん、呼吸まひなどに対しては対症療法を行う。
病気に気づいたらどうする:口の中のタバコの葉をぬぐい取り、コ ップ半分の牛乳や温水を飲ませてから、 咽頭を刺激して嘔吐させる。また、ほとんど飲み込んでいないと思われても、 必ず医療機関に連れて行く。胃洗浄後2時間観察して、症状が出現しなければ、まず心配はない。
4704 一酸化炭素中毒とは(いっさんかたんそちゅうどく) 早く治療すれば、救出時に意識が障害されていても完治する。処置が遅れると重大な障害が残り、その後も回復しない可能性がある。
どのような病気か:血液の中のヘモグロビン(Hb)は酸素と結合して、酸素を運搬する役目をする。一酸化炭索(Co)は、酸素よりもHbとの親和性が強く、したがってCoが体内に入ると、Co-Hbが生成され、細胞に必要な酸素が不足する。同時に、Coは細胞のミトコン ドリアの機能も障害する。
どうして病気がおこるのか:空気の流通の悪いところで、炭火、燃料用ガス、石油などが不完全燃焼したと き、自動車の排気ガスの吸入、炭鉱事故などで発生する。
頭痛から深昏睡に至るまでの中枢神経系の障害がみられる。 肺水腫、腎障害なども合併。
治療:意識障告を伴うものには純酸素を投与。高圧酸素療法を行えば、より有効。
4705 有機溶剤中毒とは/シンナー中毒とは(ゆうきようざいちゅうどく、しんなー) シンナーは、混合有機溶剤ですが、その中のトルエンがおもに中毒作用を示す。
どのような病気か:有機溶剤は脂溶性が高く、神経組織と親和性が強いので、麻酔作用を呈す。ほとんどの場合、経気道的に吸収される。
どうして病気がおこるのか:塗装作業などの職業的曝露やシンナー遊びにより発生。
症状:筋力低下症状(疲労感、四肢まひ)、 消化器症状(悪心、嘔吐、腹痛)、神経症状(頭痛、知覚異常、幻覚、嗜眠、昏睡)などを生じ、死に至ることもある。
治療:気管内挿管を行い、ベンチレータによる人工呼吸で呼気からの排出を促す。重症例では全身管理が必要。
4706 有機リン剤中毒とは(ゆうきりんざいちゅうどく) 有機リソ剤は農薬の一つで、殺虫剤。
どのような病気か:本剤により、神経の化学伝達に関わるコリンエステラーゼの活動が阻害される。このため、副交感神経末梢刺激作用(ムスカリン様作用)、横紋筋に対する作用、交感神経節刺激作用、中枢神経作用などがみられる。
どうして病気がおこるのか:農薬散布により、経皮的に発生する (慢性のものが多い)場合と、経口的に摂取して生じる場合がある。
症状:軽症では食欲不振、発汗、流涎、腹痛、 下痢、頭痛、めまいがみられる。中等症では縮瞳、筋線維性れん縮、徐脈、興奮、錯乱。 重症では失禁、縮瞳、気管内分泌物の増加、肺水腫、昏睡、けいれん、呼吸まひ。重症度は血清コリンエステラーゼ値と比例する。
治療:硫酸アトロピン、ときにパム(PAM)という解毒剤を用いる。 同時に、肺水腫などに対する治療を行う。 最近の有機リン剤は低毒性で、ほとんど救命が可能。
4707 パラコート中毒とは/ジクワット中毒とは(ぱらこーとちゅうどく、じくわっとちゅうどく) 眼や皮膚への接触、経口摂取で中毒。 眼に入ったり、皮膚にかかった場所に発赤、水疱、潰瘍が出る。経口摂取した場合には、直後に激しい嘔吐。摂取量が大量の場合、数時問の経過でショックに陥る。一般には、次のような症状が出現。
口腔内にびらん、呼吸障害(呼吸困難、チアノーゼ、肺水腫、 肺出血)がみられ、経遇中に肺の線維化が進む。肝障害(黄疸)、腎障害 (乏尿、無尿)も生じる。これら の症状は数日を過ぎてから 徐々に現れる。なお、意識は障害されない。
治療:体内に入った毒物を消化管や血液中からいかに早く除去するか、 肺の線維化が進むのをいかに阻止するかです。胃洗浄、腸洗浄を行う。 ついで血液浄化を速やかに行う。活性酸素による細胞障害に注意しながら、呼吸管理を行う。肝障害、腎障害には対症療法。 口唇や爪が緑色を呈していれば、本剤の服用を疑う(誤用防止のため緑色に着色してある)。
4708 家庭用防虫剤中毒とは(かていようぼうちゅうざいちゅうどく) パラジクロルベンゼソは、そのものによる刺激性、アレルギー反応のほか、代謝物がエポキシドで細胞障害をおこすために、いろいろな症状、障害が現れる。
ナフタリンは肝臓で代謝されるが、代謝産物が赤血球を障害する。
樟脳(d -カンブル)は中枢神経系刺激剤でもあ り、強心作用を示す。
どうして病気がおこるのか:原因は小児の誤食が最も多く、自殺目的の大量服毒や、ぼけ老人によるトイレ防臭剤の誤食など。
どんな現れ方か:
バラジクロルベンゼンの場合は、約1時間後悪心からはじまる。また、粘膜刺激は直後からおこる。
ナフタリンは飲み込んでも吸収が遅いため1〜2日後に症状が現れる。臓器障害は2〜5日後におこる。カン フルは吸収が早く、飲み込んでから50〜90分で症状が出始める。
治療:カンフルを除き、いずれの場合も牛乳などを使用せず、水を飲ませて吐かせる。吸入した可能性があれば新鮮な空気が吸える場所へ移し、また、皮膚接触した場合は、石けん水で洗い落とす。カンブルは無理に吐かせずに、刺激を 少なくして病院に行く。いずれも口腔、呼気にそのにおいがあ り、気づいたときには、中毒物質は何か、量はどれだけかを確認する。
4709 サリン中毒とは(さりんちゅうどく) サリンは化学兵器の中の神経剤に分類される有機リン系化合物。農薬の有機リン剤のきわめて猛毒なもの。常温では液体、容易に気化。ガス状となって呼吸器や眼の結膜から吸収され、松本や東京地下鉄のサリン事件のように多くの人が死亡する恐ろしいもの。軽症では頭痛・吐き気と眼症状。眼症状の多くは縮瞳し、ものが暗く見える、見えにくい(視カ低下)、見えない範囲がある(視野狭窄)、眼に何か入っている(異物感)、眼が痛いなどの訴えがある。中等度から重症になると、呼吸器症状(くしゃみ、せき、鼻水、喘息様喘鳴、息切れ、胸の圧迫感、呼吸困難) を生じ意識障害や全身の筋肉のれん縮、まひ、けいれん、呼吸停止、心停止が発現。重症度に応じて気道の確保、人口呼吸を行う。病院での治療は農薬の有機リン中毒と同様。硫酸アトロピンとパム(PAM)が特効薬 。サリンは市販されてない。しかし政情不安定な現在の世界では化学兵器としてまだまだ使用される可能性があり注意しなければならない。
4710 急性アルコール中毒とは(きゅうせいあるこーるちゅうどく) 急性アルコール中毒は短時間の大量のアルコール摂取で急激な酩酊状態に陥るる。
原因:一気飲み等、急な大量飲酒で、血中アルコール濃度が上がり、中枢神経の働きが鈍って起こる。
症状:多弁、高揚感 、思考力低下、意識の薄れ、昏睡状態、呼吸障害など。
治療:気道確保、点滴が必要である。
4711 シアン中毒とは(しあんちゅうどく) シアン化合物は、経口、経皮、吸入など、すべての経路から吸収され、致死量が200〜300mgと少ない。細胞は酸素を使ってエネルギーを得て、炭酸ガスを排泄するが、体内にシアンが入ると、シアンがチトクローム酸化酵素の鉄と結合し、細胞の作用が停止する。そのため臓器が障害を受けるが、酸素消費量の高い脳への影響は大きく、危険な症状になる。 また、糖が完全に燃焼しないために乳酸が蓄積し、血液が酸性になり、血中の酸素消費量が少なくなる。
どうして病気がおこるのか:倉庫燥蒸、木材燻蒸、実験室内等でシアン化合物を使用している際の事故や、 青うめの実などを幼児が食べた場合におこる。
治療:大量摂取した場合は症状進行が早く、 拮抗剤がなければ助命できない。シアンは、ごくわずかの量が体内に入 った場合、チオ硫酸と結合し尿中に排泄 されます。中毒では鉄と結合しているため、鉄から取りはずす必要がある。その場合は亜硝酸アミルを投与し、シアンと結合しやすいメトヘモグロビンをつ くり、そのあとでチオ硫酸を投与して尿に排泄させる。
4712 トイレ洗浄剤中毒とは/パイプ洗浄剤中毒とは(といれせんじょうざいちゅうどく、ぱいぷせんじゅざいちゅうどく) 強酸・強アルカリ性の物質のトイレ洗浄剤、パイプ洗浄剤は、いずれも腐食作用を現し、接触局所には潰瘍ができ、重症になるとそれが深く穿孔する。また、接触部位では強い炎症反応刺激などにより浮腫がおこり、広い範囲になると体液が移動し、循環虚脱などの全身反応がおこる。
治療:飲んだ場合には牛乳を飲ませ、無理に吐かせることはしない。また、酸に対 してアルカリなどの中和療法も行なわない。眼に対しては流水で15分くらい洗浄し、皮膚は石けん水で洗う。
4713 クレゾール中毒とは(くれぞーるちゅうどく) クレゾールは組織浸透性が強く、蛋白質凝固壊死やメトヘモグロビン血症をおこす。また、吸収されると心臓が刺激されやすくなるために、多くの臓器不全をおこす。
どうして病気がおこるのか:消毒薬やうじ殺しとして使われているものを服毒し、局所刺激として作用したり、またときには細胞毒として全臓器の障害をおこす。 局所症状は5〜30分で現れ、重症では腐食され疼痛がおこり、10数時間でけいれんをおこす。また、24〜48時間後には、腎・肝障害が出現。吐かせたり胃の洗浄をして未吸収物質を取り除き、吸着させるため活性炭を投与する。拮抗剤がないため対症療法を行う。
4714 重金属中毒とは(じゅうきんぞくちゅうどく) 何らかの原因で大量摂取、少量摂取でも生理的排泄を上回った場合に中毒がおこる。 急性中毒では経口摂取により消化管症状がおこり、吸入では発熱、少 しずつ持続的に吸収した場合には臓器障害がおこる。
どうして病気がおこるのか:消化管障害は腐食剤と同様に、接触による刺激性が原因。吸入による発熱は悪寒を伴うが、24時間以内に解熱する。粘膜との接触による障害は、接触直後に発生し、吸入による発熱は数時間後に発生する。臓器障害は程度により、数日から数年で発生する。
治療:経口摂取した場合には吐かせる、胃洗浄、下剤の投与などをする。蓄積した場合には、EDTA、D-ペニシラミン、BAL等の薬を投与して金属塩として尿から排泄される。その他の臓器障害に対してはそれぞれ対症療法を行う。
4715 大気汚染による呼吸器病とは(たいきおせん、こきゅうきびょう) 大気中の硫黄酸化物、窒素酸化物、粉じんなどの工場排気物や自動車の排ガスから出る刺激物などによって、肺の気道を刺激し炎症をおこし、気道が狭くなったり、収縮して空気の出入りが障害される病気(閉塞性肺疾患)。慢性気管支炎、気管支喘息、喘息性気管支炎、肺気腫などがある。
どうして病気がおこるのか:慢性気管支炎では、痰を伴うせきが年に3カ月以上続き、かつ2年以上みられる。気管支喘息では、気管支が過敏となり、急に狭くなり呼吸困難、喘鳴、チアノーゼなどがみられる。 肺気腫は息切れ、呼吸困難、胸部の前後径の拡大(ピアだる状)などがみられる。
治療:気管支拡張薬、去痰薬、抗生物質などのほか、必要により酸素吸入などを行う。
4716 光化学スモッグとは(こうかがくすもっぐ) 自動車の排ガスなどの中の窒素酸化物、炭化水素、酸素などが太陽のエネルギーに反応してオゾンやその他のケトン、アルデヒドなどのオキシダントを形成し、これが、眼や気道の粘膜を刺激する。通常、夏の無風晴天時にみられる。刺激による眼の痛み、チカチカ感、涙、 まぶしさ、ノドの痛み、せきなどがみられる。ときに失神発作や、けいれん、 呼吸困難などもみられる。とくに 運動時に症状は強くでる。
治療:涼しい日陰で安静にし、必要により洗眼や対症療法を行う。 光化学スモッグ注意警報がでたときは、炎天下での運動などを控える。
4717 紫外線障害とは(しがいせんしょうがい) 紫外線は波長の短い電磁波(400〜100ナノメータ)で、太陽光や水銀灯の光に含まれる。通常、皮膚表面の細胞に吸収され、ヒスタミンやキニンなどいろいろな刺激伝導物質を発生させ、局所の炎症をおこす。
眼に対する作用:数時間の潜伏期のあと角膜炎をおこし、まぶしさ、涙、痛みがみられ、雪眼炎、雪盲、電気性眼炎と呼ばれる。
皮膚に対する作用:数時間の後、日やけ(紅斑)が出現し、1〜2日で消え、後に色素沈着を残す。海水浴などで強い日やけをすると、火傷、発熱、不眠、 興奮、けいれんなどもみられる。日光じんま疹や皮膚炎もみらる。長期にわたって受けると皮膚がんになることがある。
治療:洗眼、点眼、軟膏塗布などで局所的に治療する。
4718 赤外線障害とは(せきがいせんしょうがい) 赤外線、とくに長波長のものは熱作用が強く、眼では水晶体に吸収される。長期間にわたって受けると白内障を生じる。皮膚では皮膚の血管拡張、充血、紅斑、色素沈着から熱傷をおこし、全身的にも熱射病をおこすこともある。通常、職業的に、炉前工、ガラス加工工、冶金工、溶接工などにみられる。家庭では赤外線コタツに長い間入っていることによって、火ダコがみられる。局所を必要により冷湿布。
4719 放射線障害とは(ほうしゃせんしょうがい) 放射線による体外被曝と体内被曝によりおこるが、組織が被曝した線量により障害が出る。放射線は身体への障害と遺伝的な障害をもたらす。身体への影響では、被曝後数週間以内に現れる早期影響と、数年以上たってから現れる晩発効果がある。 とくにわずかな線量でも長期間被曝するときには遺伝的影響と発がんのおそれがある・
急性放射線障害:大量の放射線を被曝すると出現。まず、頭痛、嘔吐、下痢などの放射線宿酔が現れ、線量によ って、白血球減少、消化管潰蕩、脳の障害によるけいれん、意識消失が見られ、皮膚の潰瘍もみられる。
晩発障害:白内障、白血病、各種のが ん、不妊、流産、奇形もみられる。
病気の予防: 根本的治療法がなく予防が重要です。無用な被曝を避けること。
4720 高温障害とは(こうおんしょうがい) 高湿による病気は熱中症と呼ばれ、次 の三つがある。
熱けいれん:高温下で筋肉運動をしたときにみられ、筋肉のけいれんが主な症状で体温は正常。高温による発汗で水と塩分が失われた状態のときに、水だけを補給するとおこる。血液中の食塩濃度の低下が原因。治療や予防は十分な水分と食塩をとること。
熱虚脱:高湿に対して皮膚の血管が拡張し発汗や放熱をしようとして血液が皮膚にたまり、全身の循環が不足するため軽いショックの状態になる。顔面蒼白、冷汗、四肢の冷却などがみられる。安静にし、必要により輸液や昇圧薬を用い治療。
熱射病(日射病):最も危険な状態。脳の体温調節中枢がまひし発汗の停止など体温を下げる機構が働かなくな り、著しい体温上昇(39〜40度)、意識障害、けいれん、出血、肝障害などがみられる。できるだけ早く体温を下げることが重要で、氷水の中につけたり、水をかけてから扇風機の風にあてたりする。
4721 低温障害とは(ていおんしょうがい) 局所障害には凍傷と凍瘡があり、また全身低体温症がある。
1)凍傷
零度以下の寒冷により組織が凍結壊死をおこした状態。寒冷感→疼痛→知覚まひ→組織の凍結→融解の順に進行する。40度くらいの温水につけ、正常温に徐々に戻す。患部は傷をつけないように高くして、開放状態で定温に保つ。感染に気をつける。
2)凍瘡
しもやけのこと。零度までの寒冷の中では手足の指先などの循環が悪くなり、そのために生じる。手袋などを用いること、マッサージをすること、 ビタミンEを服用することなどで予防。
3)全身低体温症
直腸温が35度以下の状態。脳の働きが低下し、やがて呼吸や循環が障害され、凍仮死の状態となる。体を温め、呼吸・循環を促進させる。
4722 高山病とは(こうざんびょう) 高所で気圧低下による酸素の欠乏でおこる。寒さや疲労も原因となる。通常2000m以上の高所でみられる。
1)急性高山病
急に高所に登ったときに発病する。脱力感、思考力低下、不眠、興奮、吐き気などの山酔いの症状から肺の気道に水が漏出する肺水腫が出現し、チアノーゼや呼吸困難、さらには幻覚や意識障害もみられる。安静と保温、酸素吸入、薬物投与を行い、症状が改善しないときは、なるべく早く低地に戻す。予防は障害がおこらないように、ゆっく り登山すること。
2)慢性高山病
長い間、高地に居住すると慢性の肺高血圧症、右心肥大、赤血球増加症がみられ、ときにチアノーゼ、呼吸困難などがみられる。
4723 乗り物酔いとは(のりものよい) 乗り物などに乗ることにより受動的な加速度を受けることで、内耳を介しておこる自律神経系の失調状態。睡眠不足、胃腸障害、疲労、不安感などの暗示も原因になる。初期には頭重、生あくび、脱力、中間期には吐き気、最終時には嘔吐が現れる。
治療:途中下車が最も効果的で、その他、深呼吸、対話なども有効。必要により、抗ヒスタミン薬などを服用。予防は心身の調整を図り、不安感を除き、進行方向に向かって横向きの半臥位をとることのほか、ドラマミン、トラベルミンなどの抗ヒスタミン薬を服用。
4724 VDT障害とは(VDTしょうがい) VDTとは、ピジュアル・デイスブレイ・ターミナルの略で、コンピューター などの画面を常に注視Lて行う作業や職場のOA化とともに近年増加している病気。眼の疲れの程度によって頸肩腕症候群や神経性愁訴もみられる。予防や職場の健康管理に、労働省から〃VDT作業のための労働衛生上の指針(昭和60年労働省基発第705号)が出ている。まずVDTの画面の明るさや輝きを調整し、回りのまぶしさを抑えたり、一日の作業時間を少なく し、1時間に10分は休み、かつ視力を調整するなどで予防すること。
4725 振動障害とは(しんどうしょうがい) 全身障害と局所障害があるがいずれも職業性の障害。
1.全身性振動障害
2〜100ヘルツの振動により、自律神経系の異常による血圧上昇、胃腸障害、ホルモンの異常などがみられ。
2.局所性振動障害
さく岩機やチェーンソーなどの振動工具を使う職業でみられ、寒冷や疲労も原因になる。
1)末梢循環器障害
初期には寒冷などで誘発される白指発作(レイノー現象)から進行すると白ろう病となる。
2)末梢神経障害
手のしびれやこわばり、知覚の異常、力が入らないなどの症状がみられる。
3)骨、関節、筋の障害
手指や関節の変形や運動制限がみられる。そのほか、騒音による難聴や高血圧などを合併していることが多くみられる。
治療:
保存的治療(ジアテルミー、マッサージ、湿布など)、薬物療法(血管拡張薬、ピタミンなど)を行う。 予防が重要で、年2回の健康診断による早期発見と仕事の変更、手の運動や温浴、工具の改善などがすすめられる。
4726 作業要因による職業性疾患とは(さぎょうよういん、しょくぎょうせいしっかん) 技術革新による機械化などに伴い職場の労働態様も変化。かっての重労働や全身筋労働は少なくなくなり、局所の筋のみの使用による局所疲労を生ずる作業による病気が増加。作業によって誘発されたり悪化する病気を作業関連疾患と呼び、その対策が重視される。
1)職業性腰痛症
体の同一局所を続けて使う運動、同じ姿勢の反復作業、日常生活様式の変化に伴う筋力の低下(車社会、肥満、運動不足など)により、腰椎の異常や腰部筋の疲労、硬結、靱帯の変化などによる腰痛が増加。急激な出現は災害性腰痛症。
治療:通常の腰痛症の治療と同じ。
2)職業性頸肩腕症候群
キーパンチ、タ イプなどの打鍵作業、コンベア作業など上肢を同一の位置に保った り、反復する作業により、神経.筋の疲労による病気。
@頸肩腕症状として、首や肩のこり、しびれ、痛み、筋の硬結、運動障害
A自律神経症状として、心臓症状や手のこわばりや白蒼化
B神経症状とLて、不眠、情緒不安定、字を書こうとする手の筋がけいれんする書痙、ヒステリー症状がみられる。
治療:局所の安静やマツサージ、薬物療法などによる。
4727 水俣病とは(みなまたびょう) 熊本県の水俣湾周辺地域において1953年から1961年にかけ発症した有機水銀による中毒症で、公害病として問題になった。
どうして病気がおこるのか:新日本窒素肥料株式会社水俣工場廃液中の有機水銀が、水俣湾水域を汚染し、水中生物間の食物連鎖によって、 魚介類に高濃度に濃縮された後に、これらを繰り返し食べた住民に発症。 1988年では患者数は2200人に達した。
どんな現れ方か:有機水銀は神経系に蓄積しやすいために、中毒症状は神経症状が主となる。最初に手足、口の周囲、舌などに しびれ感、言語は不明瞭、視野狭窄、聴力低下、手の震え、酒に酔ったような歩き方、四肢のしびれ感や感覚の鈍麻など出現。この症状は、ハンターラッセルセル症候群と呼ぶ。妊娠中に、有機水銀に汚染した魚介類を食べると有機水銀は胎盤を通過して胎児に蓄積し、胎児の脳に強い障害をおこし、胎児性水俣病を起こす。
治療:カルシウムEDTAやD-ペニシラミンの内服治療やリハピリテーシ ョンが行われる。水俣病とは別に、1965年に新潟県阿賀野川流域においても、有機水銀の中毒症が発生した。これは第二水俣病、あるいは新潟水俣病といわれる。有機水銀の汚染源は、阿賀野川上流にある昭和電工株式会社鹿瀬工場でした。1988年までに690人の 患者が認定されている。
4728 イタイイタイ病とは(いたいいたいびょう) 昭和20年代に富山県神通川流域の住民に全身に激しい痛みがおこる原因不明の病気が多数発生。日夜 「痛い、痛い」ということから、イタイイタイ病という名前がつけられた。
どうして病気がおこるのか:患者が多数発生した地域の米に含まれるカドミウム濃度は、ほかの地域の米に比べて数倍以上も高く、また患者の体内カドミウム濃度も高い。現在、神通川上流の鉱山から流れ出したカドミウムによる慢性中毒に、 栄養障害も加わっておこると考えられる。しかし、カドミウムによる中毒説を否定する報告もある。その後、神通川地区以外からは、イ タイイタイ病の発生は認められない。
どんな現れ方か:更年期後の多産婦に多く 発症した。
治療:鎮痛剤の投与やリハビリテー ションを行う。
4729 慢性ヒ素中毒とは/慢性砒素中毒とは(まんせいひそちゅうどく) 昔から殺虫剤や農薬として、各種の砒素化合物が使われる。これらの製造作業者や使用者におこった中毒や、砒素が食物中に混入したためにおこった中毒が世界中で報告されている。日本では、森永砒素ミルク事件や、宮崎県土呂久鉱山周辺地区、および島根県笹ケ谷鉱山周辺地区におこった砒素中毒が有名。症状としては、やせが目立ちます。その他、食欲不振、頻繁な下痢や便秘、爪に現れる半月状の白線、皮膚の色素沈着や硬化、いぼ、鼻粘膜の障書などがみられる。また、痛みやしびれを伴う四肢の末梢部の神経障害や、肝臓障害もおこる。数10年以上の経過後に、皮膚がんや肺がんが発症することもある。
治療:ジメルカプロールやビタミン剤の投与を行う。
4730 食物アレルギーとは(しょくもつあれるぎー) 食物アレルギーは消化吸収された食物が抗原となって、抗体ができ、過剰な反応が起きるもの。
原因:主な抗原となるものは、牛乳、卵、マヨネーズ等の乳製品、そば、大豆等である。他に、きゅうり、りんご、トマトや、サバ、タケノコ等、サリチル酸塩、ヒスタミンを含む食物も抗原となる。
症状:胃痛、吐き気、嘔吐 、発熱、じんましん、かゆみ、頭痛、めまい、アナフィラキーショック など。治療:抗原となる食物を食べない。抗アレルギー剤、胃腸薬、抗ヒスタミン剤、抗コリン剤等を対症療法で使う。重症には副腎皮質ステロイド剤を使う。
4731 薬物アレルギーとは(やくぶつあれるぎー) 薬物アレルギーは薬剤がアレルゲン(抗原)となって、アレルギー反応を起こすもの。
原因:解熱、鎮痛剤、かぜ薬、胃腸薬、抗生物質、抗菌剤、ワクチン等、多くの薬剤が原因となる。
症状 :発疹、かゆみ、発熱、関節痛、神経障害、嘔吐、ぜんそく、アナフィラキシーショックなど。
治療:原因となる薬剤使用を止める。改善されない場合は、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ステロイド剤等を使う。アナフィラキシーショックの場合、生命の危険があるので、応急措置を要する。
4732 花粉症とは(かふんしょう) 花粉症は、アレルギー体質の人がアレルゲンとなる風媒花の花粉を吸引することによって起こる症状である。日本国民の実に1〜2割(地方によって異なる)が花粉症を発症している。
原因:スギ、ブタクサ、カモガヤなどの花粉が飛散し、それを吸い込むことによって起こる。
症状:
アレルギー性鼻炎: くしゃみ、鼻水、鼻づまり、嗅覚異常など
アレルギー性結膜炎:目のかゆみ、充血など。
上記は頭痛や咳の発作を伴う場合もある。
治療:花粉症の対処法としては、マスクや眼鏡の着用により、アレルゲンとなる花粉との接触を断つことである。抗アレルギー剤は鼻の過敏性を低下させることで症状を緩和するが、効果が出るまでに服用から2週間程度要するので、症状が現れる前に服用を開始することが望ましい。
4733 物理アレルギーとは(ぶつりあれるぎー) 運動、温度変化、光線、機械的刺激などによって、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎様症状、気管支喘息などのアレルギー様症状が現れる。肥満紬胞から遊離された化学伝達物質の作用に基づくもの。 最近、食物依存性運動誘発アナフィラ キシーが注目されている。
治療:原因となる物理的刺激を避けること。例えば、温度変化に対しては着るものやマスク着用などで対応し、日光に過敏な場合には長紬シャツや日やけ止めクリームなどで対応。治療では抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を投与。
4734 昆虫アレルギーとは(こんちゅうあれるぎー 臨床的に重要なものはハチなどの有刺昆虫によるアナフィラキシーショック、 チョウ、ガ、ゴキブリ、ユスリカ、ヒョウヒダニなどの虫体、虫体破片、排泄物の吸入による気道アレルギーです。
1)ハチアレルギー
ハチ刺傷による全身性アナフィラキシー反応は、刺傷後数分、15分で出現。重症なものほど早く出現。全身の蕁麻疹、紅潮、血管浮腫、声門浮腫、呼吸困難、下痢、嘔吐、低血圧、意識消失、けいれんなどのショック症状 が現れる。死因の多くは、上気道の浮腫による窒息死。全身症状がなくても刺傷部位の周囲の反応が異常に大きい場合には、次に刺されたときに全身性アナ フィラキシー反応を拍こす危険性が高くい。
治療:塩酸エピレナミンを皮下注射し、血管確保、副腎皮質ホル モソ剤の静注を行う。 再度ハチ に刺される可能性の高い場合は、ハチ毒による減感作療法を行う。
2)ゴキブリ、チョウ、ガ、ユスリカ
ゴキブリの虫体、糞はハウスダストの一部を形成し、チョウやガの虫体、りん粉もアレルゲンとなる。 これらの虫体または排泄物の吸入によるアレルギー性鼻炎、喘息は、多くは通年性です。対策としては抗原を環境より除去するのが最善策ですが容易でない。
4735 過敏性肺炎とは(かびんせいはいえん) 過敏性肺炎は有機性のチリを長期間吸い込み、免疫反応を起こして発症するアレルギー性の肺炎。原因:原因となる有機性のチリの種類によって、名前がつけられている。古い木造家屋に繁殖するカビを原因とし、日本の高温多湿の夏に多発するのが夏型過敏性肺炎。空調病・加湿器病はエアコンや加湿器のカビを吸引することで発症するもの。他に、鳥のフンの血清を吸い込むことで発症する鳥飼病・愛鳥家病、農作業中のカビで発症する農夫肺症がある。
症状:悪寒、発熱、倦怠感、チアノーゼ、血痰、胸痛など。
治療:原因となる対象から離れることが一番の治療である。対症療法として、ステロイド剤の投与を行う。
4736 アナフィラキシーショックとは(あなふぃらきしーしょっく) アナフィラキシーショックは薬物が体内に入ったときに、激しいショック状態となって、血液の循環不全を起こすもの。
原因:薬物等に対して、通常と異なる抗体ができることで起こる。抗原となるのは、抗生物質や昆虫毒、異種血清、非ステロイド系消炎鎮痛薬等である。症状:血圧低下、顔面蒼白 、冷汗、嘔吐、蕁麻疹、下痢、呼吸困難など。 重症になると、数時間で死亡することもある。
治療: 緊急の治療を要する。普段の予防も必要である。
4737 アレルギー性接触性皮膚炎とは(あれるぎーせいせっしょくせいひふえん) 抗原となる物質と接触することで皮膚に抗原抗体反応かおこり、発赤、腫脹、 膨疹、かゆみなどの症状を発現。原因となる物質は時計のバンドや化繊の下着類、メガネフレーム、アクセサリ ー類、化粧品、白髪染め、パーマ液などで、それらを皮膚と接触させることによって感作が成立し、抗原抗体反応の結果、 遅発型のアレルギー症状が発現。接触性皮膚炎はじんま疹とは異なり、 比較的長い時間を必要とし、何回も繰り返せぱ次第に症状は激しくなるが、 一般にはすみやかに消失する場合が多いので、あまり大事には至らない。原因 と思われる物質を使用しないか、身につけないことが再発を防ぐ一番の方法 。
4738 結節性動脈周囲炎とは/結節性多発動脈炎とは(けっせつせいどうみゃくしゅういえん、けっせつせいたはつどうみゃくえん) 中小筋型動脈の壊死性血管炎。動脈瘤を形成し、肉眼でも小動脈瘤が確認できることから名付けられた。疾患の本質より表現する名称として、結節性動脈周囲炎または結節性多発動脈炎と呼ぶことも多い。さらに、病理学的検査の集積にともなって、肉眼では観察できず、顕微鏡ではじめて確認できる壊死性血管炎の存在が多数ある。炎症はあらゆる臓器で発生しますが、とりわけ腎臓が侵される率が高い。
主症状:38℃以上の高熱が数日続き、体重減少、高血圧、腎不全、腎梗塞、肺出血、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、消化管出血、多発性単神経炎など、血管炎による全身症状がみられる。
原因:ウイルス感染やそれにともなう免疫異常が考えられるが、正確に解明できてない。
治療法:ステロイド剤の大量投与が原則で、活動性が高い場合、免疫抑制剤を併用。腎不全に対しては血液透析で対応。血栓溶解剤、血管拡張薬、抗血小板薬なども適宜加える。
4739 混合性結合組織病とは(こんごうせいけつごうそしきびょう) 混合性結合組織病は2つ以上の膠原病が合併する、膠原病のひとつで、特殊な自己抗体を持つ場合に起こるもの。
原因 :30代女性に多く発症。慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症等の膠原病が2つ以上合併し、患者の血清中に抗RNP抗体という特殊な自己抗体がある場合に発症。
症状:原因となる膠原病の症状が出る。
レイノー現象、指、手の甲がふくらむ、関節痛、関節炎、筋肉痛、リンパ腺の腫れ、顔面紅斑、肺繊維症、肺高血圧、食物が飲み込みにくくなるなど。
治療:副腎皮質ホルモン剤投与を中心に、各膠原病の対症療法をする。
4740 強直性脊椎炎とは(きょうちょくせいせきついえん) 強直性脊椎炎は膠原病に近似したリウマチ性疾患の一種である。
原因:遺伝、免疫異常と関連があると言われるが、明確な原因は不明である。脊椎や骨の関節部が硬化し、骨同士で癒着する。10代〜20代の男性に多い。
症状:腰部、でん部、股関節等のこわばりと痛み、強直など。放置すると、数年内に腰から背骨が動かなくなる。
治療:理学療法と非ステロイド抗炎症剤投与をする。重症には副腎皮質ホルモン剤を投与する。
4741 ベーチェット病とは(べーちぇっとびょう) ベーチェット病は目や口腔粘膜、外陰部の皮膚に炎症が起きるもの。
原因:膠原病の一種とされ、免疫異常が原因と見られているが、まだはっきりと判明していない。
症状:口内に潰瘍性病変、目に膿が溜まる、外陰部に潰瘍 、顔、指、胸の発疹。 静脈、動脈、関節、腸管等に進行すると、四肢麻痺や血栓性閉塞、下血等、重い症状になる。
治療:免疫抑制剤、副腎皮質ホルモン剤、消炎鎮痛剤等を使い、対症の外科治療を実施することもある。
4742 ウエゲナー肉芽腫症とは(うえげなーにくげしゅしょう) 病理組織学的に、@上気道、肺の壊死性肉芽腫性病変、A壊死性血管炎、B糸球体腎炎の三つをおもな特徴とする原因不明の病気で、病変は@、A、Bの順に進行する。好発年齢は30〜60歳代で、性差な く、患者数は多くはない。診断は特徴的な臨床症状と病理組織所見によって行う。
治療:免疫抑制薬(とくにシクロホスファミド)と副腎皮質ステロイ ド薬の併用による免疫抑制療法を行うが、免疫抑制薬の有効性が高い。早期に診断して治療を開始すれば緩解率は高いが、治療が遅れると腎不全、呼吸不全による死亡が多くなる。
4743 続発性免疫不全症候群とは(ぞくはつせいめんえきふぜんしょうこうぐん) 続発性免疫不全症候群は抗体の作用が低下して、免疫反応がうまく機能しなくなる免疫不全症候群のひとつで、後天的な疾患等が原因となるもの。原因 :悪性腫瘍や白血病、再生不良性貧血、膠原病、ウイルス感染等が原因となる。抗がん剤や副腎皮質ホルモン剤、放射線照射等が、免疫不全を起こす場合もある。高齢者、子供の発症が多い。症状 :原因となる疾患の症状が出る。
治療:免疫不全には欠落している抗体や酵素の補給を行い、原因疾患の治療も行う。
4744 原発性免疫不全症候群とは(げんぱつせいめんえきふぜんしょうこうぐん) 原発性免疫不全症候群は抗体の作用が低下して、免疫反応がうまく機能しなくなる免疫不全症候群のひとつで、先天性のものである。
原因:遺伝等で、先天的に免疫機能に欠陥のある場合が多い。
症状:発症の部位により症状は異なるが、感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍等の合併症を併発しやすい点は共通である。
気管支炎、中耳炎、鼻炎、副鼻腔炎、肺炎等の感染症にかかりやすくなる。
治療:抗体や酵素で欠落しているものを、細胞補給する。ガンマグロブリンの補給や胸腺移植、骨髄移植等を実施する。合併症の治療も行う。
4745 ウエーバー・クリスチャン病とは(うぇーばー・くりすちゃんびょう) 多発性、対称性の皮下結節を特徴とし発熱を伴う原因不明の病気。症状は増悪と緩解を繰り返す。皮下結節の組織像は脂肪織炎であり中年女性に多発する。皮下結節は大小さまぎまで、四肢や体幹に好発し、圧痛を伴う。最初は暗赤色をして、比較的軟らかいが、次第に硬くなる。経過とともに多発、融合し、ときに潰瘍を形成する。皮下結節発生の数日後から発熟があり、しばしぱ高熱となる。ほかに、食欲不振、全身倦怠感、体重減少などの全身症状が必ず現れ、関節痛、 筋肉痛、消化器症状、呼吸器症状、心血管症状、精神神経症状を認めることがある。肝腫大や脾腫もみられる。
治療:副腎皮質ステロイド薬を用いるのが一般的ですが、症状が軽い場合には非ステロイド系抗炎症薬を投与する。
4746 乾癬性関節炎とは(かんせんせいかんせつえん) 皮膚や爪の乾癬に関節炎が合併した病気を乾癬性関節炎と呼ぶ。強直性脊椎炎と同様にHLA- B27陽性者に多く、患者の約7割が陽性。乾癬性関節炎の乾癬は膝、肘、腰、頭などの骨突出部に円形の紅斑として現れる。表面が銀白色に乾燥するが、関節炎に先行して出現することが多 く、乾癬と関節炎の活動性は連動する傾向が高い。関節炎は四肢、とくに手指や足の指の関節に認められ仙腸関節や背骨の関節がおかされることが多い。ほかに眼の症状として虹彩炎や結膜炎を伴うことがある。
治療:非ステロイド系抗炎症薬の投与とリハビリテーションが中心となる。重症の場合は、メソトレキセートやシクロスポリンなどの免疫抑制薬や、副腎皮質ステロイド薬を投与する。乾癬に対しては副腎皮質ステロイド薬含有軟膏などによる局所療法も行われる。
4747 先天性代謝異常症とは(せんてんたいしゃいじょうしょう) 生まれつき指が欠けたり、肛門の閉鎖のような「かたち」の異常は先天奇形という。これに対し生体の新陳代謝のどこかが、生まれつきうまく働かないためにおこる病気を先天性代謝異常症という。分類は未確立だが、現時点での例は以下の通り。
1)アミノ酸代謝異常症
フェニルケトン尿症、メーブルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、才ルニチントランスカルバミラーゼ欠損症
2)糖質代謝異常
ガラクトース血症、糖原病(フォン・ギールケ病など)、五炭糖尿症。
3)有機酸代謝異常
ブロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、乳酸血症4)脂質代謝異常
家族性高コレステロール血症、家族性アルファリポ蛋白血症
5)プリン・ビリミジン代謝異常
レッシュ・ナイハン症候群、痛風
6)リソゾーム病
ムコ多糖症(ハーラー症候群、ハンター症候群など)、テイ・サックス病、ゴーシェ病、二一マン・ピック病7)金属代謝異常
ウイルソン病、メンキス病
8)腎尿細管転送異常
シスチソ尿症、ハートナップ病
9)テイ・サック 内分泌代謝異常
先天性副腎過形成、甲状腺ホルモン合成異常、腎性尿崩症
どうして病気がおこるのか:蛋白質の一種である酵素をつくる遺伝子に異常がおこり、 酵素がつくられなかったり、異常な酵索 がつくられたりしたためにおこる。
先天性代謝異常症の症状:
臨床症状はさまざ まですが、そのうち重要なものは次の通 りです。
1)知的障害、けいれんなどの脳障害
2)肝・脾腫大
3)眼症状:白内障、水晶体脱臼、角膜のにごり、眼底中心窩にサクランボ様の暗赤色斑出現
4)骨格異常:手の拘縮(指が熊手のように曲る) など、
5)皮膚、毛髪の異常:鮫肌(魚鱗癬)、異常に白い肌もしくは黒っぽい肌、頭髪のねじれ毛、結節ができてもろい髪、赤毛もし くは金髪、白髪など。
6)反復する嘔吐、下痢
乳糖、ガラクトース、果糖などの消化吸収が困難な疾患。また有機酸の代謝異常のため、自家中毒様の激しい嘔吐を反復。
7)異様な尿臭、体臭または尿の色
メーブルシロッブ様の甘いにおい、カ ピ様のにおい、汗臭い足のにおいなど。 放置した尿が黒色や青色になったりする。
4748 フェニルケトン尿症とは(ふぇにるけとんにょうしょう) フェニルケトン尿症は約8万人に1人に出現する。フェニルアラニンは食べ物の蛋白質に含まれるアミノ酸のひとつです。フェニルアラニンをチロジンに転換する酵素の先天的欠損により、血中および組織中にフェニルアラニンが増量し、尿中に多量のフェニルピルビン酸を排泄する疾患です。早期に低フェニルアラニンによる食餌療法を開始しないと、知能の発達障害や赤毛、色白などのメラニン色素欠乏症状が現れます。
4749 メープルシロップ尿症とは(めーぷるしろっぷにょうしょう) ミルクや食物から摂取した三種の分枝アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)の代謝障害で、血中、 尿中に三種のアミノ酸やそれら由来のケト酸が著しく増加し、さまざまな症状をおこす先天性アミノ酸代謝異常症。
遺伝型式は常染色体劣性で両親が保因者)の場合、1/4の確率で 子どもが病気になる。
どんな現れ方か:
〈古典型〉生後3〜5日頃、突然に哺乳困難、吐乳、けいれん、意識障害がおこ り、後弓反張、発育障害、知的障害をきたし、治療しなければ死亡する。
〈間欠型〉子どもから成人にみられる型で、ふつうのときはまったく正常で、感染、多量の蛋白摂取などが誘因となり嘔吐、けいれん、運動失調などの発作がおこる。知的障害は通常ない。
治療:
急性期の治療:けいれん、呼吸障害、昏睡などの症状が進行するときは腹膜透析、交換輸血が行われます。アシドーシスに対する重炭酸ソーダの投与や最重症期を過ぎたら分枝アミノ酸を除いたミルクを与え、できるだけ熱量がとれるようにする。
栄養治療法:ミルクや一般食品からのロイシン、イソロイシン、バリンの摂取を制限し、そのために不足する熱量やその他の栄養素を、それらのアミノ酸を除 いた特殊ミルクで補います。
4750 ガラクトース血症とは(がらくとーすけっしょう) ガラクトースの代謝に必要な酵素の1つが欠損しているために血液中のガラクトース値が上昇する。毒性の代謝産物が肝臓や腎臓にたまり、眼の水晶体も損傷を受けめ白内障が起こる。ガラクトース血症の新生児は出生時に正常でも、数日または数週間以内に食欲の喪失、嘔吐、黄疸、下痢などが起こり、成長が止まる。白血球の働きが低下して重症の感染症が起こる。治療が遅れると成長が止まって精神遅滞が起こり、死亡することもある。
治療:ガラクトース源である牛乳と乳製品を食事から完全に除去する。ガラクトースは一部の果物、野菜、海藻のような海産物にも含まれる。この病気の人は一生を通じてガラクトースの摂取を制限。この病気の多くの子供は知能指数(IQ)が兄弟姉妹より低く、言語障害もみられる。女子の多くは卵巣機能不全になり、自然に妊娠できるのはごくわずかです。しかし男子の精巣機能は正常です。
4751 ホモシスチン尿症とは(ほもしすちんにょうしょう) 体内で蛋白質に含まれるアミノ酸の一種メチオニンからホモシステインがつくられ、これにシスタチオニン合成酵素が作用してシスタチオニン、さらにはシスチンがつくられるが、これらは硫黄を含んだアミノ酸で、結合組織や脳の成分として重要です。ホモシスチン尿症はこのシスタチオニ ン合成酵素の活性が先天的に欠損し、シスタチオニンやシスチンの欠乏と ホモシステインやメチオニンが過剰に蓄積する病気。このホモシステインは ホモシスチンに変わり血中や尿中に増える。常染色体性劣性遺伝がみられ、知的障害、骨格異常(マルファン症候群様)、視力障害、緑内障、血栓症による脳障害や腎障害などが出現。
治療:低メチオニンでシスチンを補うミルクを用いるが、大量のビタミンB6服用が有効なこともある。
4752 尿素サイクル異常症とは(にょうそさいくるいじょうしょう) 尿素サイクル異常症は一般の食品、ミルクより摂取した蛋白質、アミノ酸の終末代謝産物として生じるアンモニァを処理する尿素サイクルの5種類の酵素の先天性の欠損のため、高アンモニア血症となり、嘔吐、けいれん、意識障害などの症状をおこす疾患として以下の病気が知られている。
@カルバミルリン酸合成酵素欠損症
Aオルニチソトラソスカルバミラーゼ欠損症
Bシトルリン血症
Cアルギニノコハク酸尿症
Dアルギニン血症
最も多いオルニチントランスカルバミ ラーゼ欠損症は伴性遺伝型式をとり新生時期に発症した男子は重症になる。他の四つの病気は常染色体劣性の遺伝。シトルリン血症は、生後早期から年長児、成人になり発症するものもある。アルギニノコハク酸尿症は毛髪異常が特徴的で、アルギニン血症は四肢まひが強く重篤な知的障害がみられる。
治療:重篤な高アンモニア血症発作のときには交換輸血、腹膜灌流によりアンモニ アを除去。
長期療法として、
@非必須アミノ酸制限(蛋白質として一日に体重1kgあたり1g程度)、
A必須アミノ酸の必要量投与、
Bアルギニン投与(アルギニン血症以外)、
C安息香酸ソーダ、L-カルニチン投与など
がある。いずれにしても有機酸血症、尿素サイ クル異常症は家庭での栄養治療(蛋白制限など)が重要となる。
4753 糖原病とは(とうげんびょう) 糖原病は酵素の異常で、グリコーゲン(糖原)がブドウ糖に変換されずに、身体に過剰に蓄積されるもの。
原因 :ブドウ糖をグリコーゲンに変える酵素の、先天的な欠損や機能不全が原因で起こる。とくに肝臓の酵素欠損が多い。骨格筋や肝臓を中心に、全身にわたり、グリコーゲンが過剰蓄積する。
症状:
肝臓酵素の欠損:腹部膨張。
けいれん ・骨格筋酵素欠損:運動筋脱力、痛み。
全身性のもの:筋力低下、筋萎縮
治療は鎮痛剤で痛みを抑制。決定的な治療法は確立していない。
4754 ムコ多糖症とは(むこたとうしょう) ムコ多糖症は正式にはムコ多糖代謝異常症といいムコ多糖(アミノ糖を成分にもつ多糖の一群)を分解する酵素が、生まれつき欠けていることにより、全身(特に皮膚、骨、軟骨などの結合組織)にムコ多糖の切れ端(デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)が蓄積し、種々の臓器や組織が次第に損なわれる進行性の病気。その中には7つの主な型があってそれぞれ異なった酵素の欠損によりムコ多糖症T型からZ型に分類され、ハラー(IH型)、シャイエ(IS型)、ハンター(U型)、サンフィリポ(V型)、モルキオ(W型)、マルトラーミー(Y型)、スラィ(Z型)の各症候群として知られている。これらの約半分は種々の程度の知的障害を伴い、ほとんどは進行性で、成人に達するまでに死亡する型もある。主な症状は著しい骨の変化、短い首、関節が固くなる、粗い顔つき等です。その他、角膜混濁、難聴、肝肥腫、心臓疾患、低身長などの症状がみられる。
4755 血友病とは(けつゆうびょう) 血友病は血液凝固因子が欠け出血しやすくなる病気。
原因:12種類の血液凝固因子のうち、第[か第\因子が欠けて起こる。遺伝性で男児に発症する。症状:出血、血尿、 筋肉内、関節等の深い部分で出血する。幼児期から発症する。消化管、中枢神経からの出血は生命の危険がある。
治療:欠乏因子の濃縮製剤を補給する。リハビリも必要となる。根治の治療法は確立していない。
4756 ダウン症候群とは/21トリソミーとは(だうんしょうこうぐん、21とりそみー) ダウン症候群(21トリソミー)とは染色体の異常による病気で精神遅滞とさまざまな体の異常が生じる。 ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態を「トリソミー」と呼びます。新生児で最もよくみられるトリソミーは21トリソミー(21番染色体が3本あること)です。ダウン症候群の症例のうち、約95%の原因が21トリソミーです。母親が高齢の場合、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも余分な染色体が生じる原因となる。その結果、高齢の母親はダウン症候群の子供を産む確率が高いが余分な染色体は父親が原因であることもある。
ダウン症候群の子供の知能指数(IQ)には幅があるが、正常な子供のIQが平均100であるのに比べ、ダウン症候群の子供では平均でおよそ50です。ダウン症候群の子供は頭が小さく、顔は広く扁平でつり上がった眼と低い鼻をもつ傾向がある。舌は大きく、耳は小さくて頭の低い位置についています。手は短くて幅が広く、手のひらを横切るしわが1本しかありません。指は短く、第5指の関節は3つではなく2つしかないことが多く、内側に曲がっています。足指の第1指と第2指の間が明らかに広くなっている。
4757 ターナー症候群とは(たーなーしょうこうぐん) 外陰部は女性で子宮、膣、卵管も存 在Lますが発育は不十分であり、月経発来、恥毛など二次性徴の発現はほとんどみられない。身長は同年齢の人に比べてかなり低くとどまる。性染色体に異常があり、X染色体が一本しかないか、一本の一部が欠けているために、先天的に卵巣の発育が悪く、排 卵やホルモンの分泌がみられない。したがって大人になっても無月経、不妊症になる。低身長には蛋白同化ホルモンや成長ホルモンの有効な場合があり、二次性徴障害には思春期以降に女性ホルモンが使用される。ただし、治療期間が長いので 副作用に注意する必要がある。知能の発達は、やや遅れのみられることもありますが、一般に正常です。性格も女性的で感情のこまやかな入が多いと いわれる。
4758 クラインフェルター症候群とは(くらいんふぇるたーしょうこうぐん) 男性にみられる本疾患は、小児期には気づかれることが少なく、思春期以降 なって特徴的な症状を示します。つまり、 思春期を過ぎても増大しない小さい睾丸(陰茎、陰嚢などの外性器はほぼ正常) と不妊症が特徴。その他の特徴としては、高身長、下肢 が長い、細長い体型、ときに女性化乳房、 軽度知的障害、まれに精神病様症状を示すこともある。しかし、不妊以外に 何ら支障もないので、気づかれない例もある。各種の性腺刺激ホルモンの上昇がみられる。この疾患は、性染色体の数の異常によ っておこる。多くは通常の男性より X染色体が一本過剰のXXYの構成ですがXXXYもみられる。原因は、卵子や精子形成のときにおこる性染色体の不分離に由来する。
4759 XYY症候群とは(XYYしょうこうぐん) この疾患は通常の男性の染色体(XY)にY染色体の過剰(XYY)によっておこる。原因は、父親の性腺で精子形成されるときのY染色体不分離に由来する。身体的には通常の男性と変わらないが、思春期を過ぎると高身長になる率が高く、軽度の知的障筈や反社会的行動の頻度が一般より多いとされている。し かし、乳児期に発見された例では心身ともに正常なことが少なくないこと、一般新生児集団で約0.1%と推定されるが、医療の現場ではまれにしかみられない。
4760 脆弱X症候群とは(ぜいじゃくXしょうこうぐん) 葉酸の欠乏条件下で白血球の培養をしたときX染色体長腕末端に裂隙がみられることから脆弱X症候群と命名された。本症は遺伝性の精神遅滞で、出生約2,000人に対して一人という高い頻度で発生することや、とくに男性に多発する。保因者と思われる女性は一般的には知能は正常ですが、ときに精神遅滞のこともある。精神遅滞に合併する症状としては、大人では長い顔、長い鼻、大きな耳といっ た特徴的顔貌と睾丸が大きいことがあげ られる。一方、子どもでは大人のよう な特徴が明らかではなく、大きな頭、大 きな耳、関節がやわらかいことなどがみられるにすぎない。そのため言語発達遅滞や多動を訴え小児科を受診することが多いようです。
治療法:葉酸の投与が試みられている。また合併症としてけいれんが高率にみられる。
4761 染色体異常(18トリソミー、13トリソミー)とは(18とりそみー、13とりそみー) これらのトリソミーは、ダウン症に次いで多い染色体の数的異常症で両者とも約5,000人に1人の頻度で出生。しかし、合併する心臓や腎臓や中枢神経系の奇形が重篤なため重度の発達遅滞を伴い、1歳までにその約90%が死亡する。
18トリソミーは女子が多く、出生時に頭蓋変形や独特の手指の屈曲など特異的な外表奇形がみられる。
13トリソミーも出生時に、口唇、口蓋裂、多指症、小眼球といった独特の奇形がみられる。そのため両症候群とも生後すぐに、医師により発見され染色体 検査で確定される。
4762 猫泣き症候群とは(ねこなきしょうこうぐん) この病気は、5番染色体短腕末端部の欠損が原因で生じるまれな疾患。乳児期のかん高い仔猫様の泣き声、下がり目、丸顔、重度の精神運動発達遅滞が特徴的。心臓その他の内臓の奇形が約30%症例にみられる。本症の90%は突然変異で生じるが、10%は両親の転座に由来するので、 遺伝相談を受けることが必要。
4763 閉鎖性骨折とは(へいさせいこっせつ) 骨折部近くの皮膚が破れてなく、骨折部が外界と通じていない骨折のことで、皮下骨折ともいう。皮膚の表面に傷があり外界と通じている開放性骨折に比べ、骨折部への感染の危険性は少ない。出血は骨折部周囲の内出血に限られ、体外への出血がないので、出血量も開放性骨折よりは少ない。骨折の様式によって、横骨折、斜骨折、螺旋骨折、粉砕骨折、圧迫骨折、亀裂骨折、剥離骨折、陥没骨折などに分類する。
4764 開放骨折とは/複雑骨折とは/開放性骨折とは(かいほうこっせつ、ふくざつこっせつ、かいほうせいこっせつ) 骨折部近辺の皮膚が破れ、骨折部が外界と通じた骨折のこと。患部が皮膚表面から外界と通じているため、骨折部に細菌感染のおこる危険性が高い。いったん感染がおこると、骨折部の癒着が妨げられるだけではなく、治すことが難しい骨髄炎をおこすこともあり、この事態が最も恐れられている。 また、大腿骨のような大きな骨の骨折では、創(傷)から体外へ多量に出血するために、ショックをおこす原因ともなる。
骨折の原因のほとんどは交通事故、労働災害、高所からの墜落、激しいスポーツなどに伴っておこる外傷。 外力が直接、皮膚を破り、真下の骨を損傷する場合と、骨折による鋭利な骨の端が内側から皮膚を突き破る場合とがある。
4765 ねんざとは(ねんざ) 関節は骨、そして骨と骨とをつなぐ靱帯や関節包(関節を包む袋)などの支持組織によって構成されている。個々の関節の可動範囲はその形態や支持組織の構造によって決まっている。ところが、強い外力が働き、関節がその固有な生理的可動範囲を超えて動かされると、関節包や靱帯などの関節支持組織は引き伸ばされ損傷されることになる。この場合、関節支持組織が損傷されても、関節面の相対的な位置関係が正常に保たれている状熊をねんざという。ねんざのほとんどすべては、外傷によるものです。各種の事故やスポーツのみならず、下駄やハイヒールでの歩行中や階段を踏み外したときなどにもおこる。いずれの関節にもおこる可能性があるが、下肢、それも足関節に多くみ られる。
治療:局所の安静を保つために、絆創膏やサポーター、副木、ギプスなどで、必要な期間固定する。固定によって多くは痛みがなくなるが、消炎鎮痛剤や抗腫脹剤も用いられる。関節血腫がある場合には、針を刺して中の血液を取り除く。重度のねんざの場合には、 外科的な手術によって修復が必要。固定期間終了後は、積極的、リハビリテーションを行う。
4766 脱臼とは(だっきゅう) 互いに接している関節面が、生理的な可動の限界を超えてズレをおこした状態を脱臼という。あらゆる関節でおこる可能性があるが顎、肩、肘、股、膝などの関節でよくみられる。その程度によって不完全脱臼(亜脱)、完全脱臼に分類する。 また頻度によって、反復脱臼や習慣性脱臼と呼ばれる。さらに骨折を伴うこともあり、これを脱臼骨折と呼ぶ。
外傷によっておこる外傷性脱臼がほと んどですが、関節の先天的な形成不全によっておこる先天性脱臼(先天性股関節脱臼など)もあり、さらに、関節リウマチや筋神経疾患によっておこる病的脱臼もある。
脱臼か疑われた場合には、その場で無理に整復しようとせず局所の安静を保ち、できるだけすみやかに医療機関で受診する。
4767 突き指とは(つきゆび) 外部からの鈍い力が手指や足指の骨、 関節、靱帯、腱などにかかっておこった損傷を総じて突き指と呼ぶ。正式な医学用語ではなく、骨折、ねんぎ、脱臼、 腱損傷底ど、諸々の損傷形態を含んでいる。損傷の程度も、きわめて軽くわずかなものから、放置すれば重大な機能障害をおこすものまでさまざま。
治療:突き指したときには軽く考えないで必ず医療機関で受診し、適切な治療を受 けることが、後遺障害を少なくする上で大切です。
4768 骨と関節の棘形成 関節軟骨が変性し、関節の破壊と、関節付近の増殖性変化を特徴とする慢性の関節疾患。
どうしておこるのか:関節軟骨の変性の原因は、加齢による変化に機械的な影響が加わったときにおこる。女性に多く、指の最も先端の関節にみられ、初期には関節の疼痛、腫脹がみられるため、慢性関節リウマチを疑 って受診し、発見されることが多い。関節の背側および側方に棘の形成される。初期にみられる炎症は次第に消失 し、痛みのない硬結になる。それに伴い関節を伸展させるときに障害が現れる。一般に多くの指に現れます。
治療:腫脹、発赤などの炎症には抗炎症鎮痛剤の内服あるいは軟膏の塗布が効果的。しかし治療によって、その進行を止めることはできない。最終的にみにくい変形を残す。そのため、変形の矯正を目的として関節固定術が行われることがある。
4769 打撲とは(だぼく) 打撃、衝突、墜落などの鈍い力によって直接損傷されておこる場合と、間接的な外力が関節に加わっておこる場合がある。外力が加わった局所あるいはその周辺の疼痛が最も顕著な症状。ふつう、激痛は長くは続かない。加えられた外力の程度が強ければ、はれがおこり、と きには皮下出血もみられる。関節に鈍 い力が加わった場合には、その関節を動かすときに痛みを生じる。
治療:局所を湿布、氷で冷やし、安静を保つ。症状に応じて、抗炎症鎮痛剤を使用。 通常は1週間以内に治る。
4770 肉離れとは/筋肉の部分断裂とは(にくばなれ、ぶぶんだんれつ) 肉離れは、スポーツ等で、筋肉が急に収縮したり、筋肉繊維等が切れたりする。
原因:スポーツで、準備運動不足だったり、疲労していたりする場合によく起こる。ふくらはぎ、ももに多発する。
症状:激痛 、筋肉に力が入らない、断裂部分がへこむ。
治療:患部を冷やし、安静にしてマッサージ等をする。
4771 アキレス腱断裂とは(あきれすけんだんれつ) アキレス腱断裂はスポーツ等で、アキレス腱が切れてしまうもの。
原因:スポーツで、着地したり、飛び上がったりしたときに、アキレス腱が切れることが多い。運動不足が原因となることもある。30代以降に多い。
症状:激痛、切れた部分がへこむ、歩行困難など。
治療:ギプス固定をする。手術をすることもある。通常1〜2カ月で治癒する。
4772 手部腱損傷とは(しゅぶけんそんしょう) 手には指を伸ぼす伸筋腱と指を曲げる屈筋腱の二種類の腱がある。指を曲げたり伸ばしたりする筋肉は前腕部にあって、手関節より末梢部では腱となつ て、それぞれの機能に適した部位の骨に付着する。 手は外傷にさらされる機会が多いため、腱損傷の危険性も高い。
治療:突き指による伸筋腱損傷以外は手術する。手術の時期は傷を負った後、できるだけ早 いほうがよい。腱の切れた端を引き寄せることができる場合は腱縫合を行う。 腱の部分欠損がある場合や、傷を受けてからの経過が長すぎて腱の断端を引き寄せられない場合には腱移植を行う。
4773 手部靱帯損傷とは(しゅぶじんたいそんしょう) 外傷により靱帯あるいは関節包(関節を包んでいる袋)が損傷された状態をねんざというが、その中でも靱帯断裂の症状がはっきりと表に現れているものを靱帯損傷と呼び、とくに区別する。手関節には小さな骨が8個あり、それらは互いに靱帯によって支えられている。外傷後、骨折がないのに疹痛がいつ までも持続する場合には、この靱帯の損傷が考えられ、これをとくに手根不安定症という。
治療:指の過伸展を強いられて掌側の靱帯を 損傷された場合は、その関節を軽く屈曲 した状態で2〜3週間固定。指に横方向への力が加わって受傷した場合には、比較的軽度の損傷であれば隣 りの指と一緒に軽く曲げた状態で2週問 固定L、その後固定を取り除いてから隣の指とテーピングしたまま運動練習を開始する。高度の損傷の場合は手術する。いずれも初期 より抗炎症鎮痛剤を内服する。
4774 上腕二頭筋皮下断裂とは(じょうわんにとうきんひかだんれつ) 上腕二頭筋を強く収縮した時に、筋肉のはじまりから上腕骨結節間溝部で、腱部分が断裂することによって生じる。主として中年の健康な人が、前腕外旋位で重い物を持ち上げようとして、急激に筋収縮をさせたときにおこる。また、 自然に発生することもある。
治療:切断された腱を、結節間溝に縫着固定する方。高齢者の場合は三角巾で吊るだけで、手術を行わないこともある。
4775 肩板損傷とは(けんばんそんしょう) 肩関節の部分で上腕骨頭を取り巻いている小さな筋肉群を肩腱板といい、四つの筋肉より構成されている。これらの筋肉群に障害がおきると、肩を動かそうとしたときに痛みを覚え、動きが制限される。転倒などをして、腱板に力が入ったと きに腱板が破れて痛みが生じる。また、小さな外力が加わって切れることもある。 広い意味で五十肩、 四十肩ともいわれる。通常は、転倒して肩を上げようとする ときに、これに反する力が加わった場合に最も多く発生する。
治療:三角巾を使用して安静を保つ。そ して、痛みがなくなったら、徐々に動か していくようにする。痛みが長期化したり、腕が挙げられない場合は手術をすることも考えられるので、専門医の診察が必要。
4776 膝靱帯損傷とは(しつじんたいそんしょう) 膝関節は大腿骨と脛骨および膝蓋骨からなる関節で、それぞれが強力な靱帯や腱で支えられているが、関節に外傷 などの強い力が加わると、これらの靱帯に損傷がおきる。軽い場合は単なるねんざとして1〜2週間の安静で、ほぼ完全に治るが、 靱帯損傷が広範囲に及ぶ場合は、外科的 な治療も必要。
治療:
1)内側側副靱帯損傷:軽い場合は膝用サポータなどで、1〜2週間間固定するだけで完治。多少の外反動揺性が 認められるならば、ギプス固定の必要。
2)前十字靱帯損傷:スポーツをする人にとっては、致命的な機能障害を引きおこすことが多くなる。関節腫脹がひどい場合は、この靱帯が切断されていることが多いので、専門医に要相談。
3)後十字靱帯損傷:この靱帯の単独損のため日常動作か制限されるというこ とは一般的には少なく、あまり手術の対象とはなりません。
4)外側側副靱帯および膝蓋靱帯損傷:これらの損傷は、後遺症を残すことが多いので、受傷時に外科的に処置することが望まれる。
4777 足関節靱帯損傷とは(そくかんせつじんたいそんしょう) 足関節は下腿を構成する脛骨と腓骨の二本の骨と、足の一部でこの二本の骨を下で支えて距骨とで形成される。通常最もおこりやすいのは、足首の内がえしによる外側側副靱帯の損傷。 この靱帯はほかに比べて強度が弱く、足関節を底屈していると関節は不安定となり内がえしをおこすと、骨折よりも外側部の靱帯損傷をおこしやす い。道路の段差を踏みはずしたり、くぼみ に足をとられたり、軽い足関節のねじり で発生するが、バレーポールやバスケットボールなどスボーツに際して受傷することが多い。
治療:単に靱帯が伸びた場合や、いわゆるねんざであれば、約3週問のテーピングや弾性包帯による固定でよい。靱帯断裂が明らかとなれば、ギプス固定あるいは外科的手術が必要。軽くひねった感じであれば、湿布などをして弾性包帯で固定しておく。はれおよび痛みが強い場合は足関節を中心に趾尖(足の先)から下腿中問部まで副木を用いて固定し、.局所の安静を保つ。はれがひどい場合は骨折も疑い、専門医を受診。
4778 外出血とは(がいしゅっけつ) 血液は血管内にあるのが普通の状態ですが、けがにより皮膚や粘膜の外に流れでることを外出血という。例えば刃物で指を切った場合、小さい血管 から血は外へ漏れだし、さらに切った皮膚の間からにじみでるような状態。 これは体をおおっている皮膚の連続が絶たれた状態で、その原因は、刃物など の鋭利なもので皮膚が切れたり、固い物にぶつかって皮膚が切れたり、皮膚が擦れてもおこる。一般に静脈からの出血性の出血は鮮紅色です。しかし皮膚などの表面のけがでは、動脈、静脈が混ざった混合性に出血する。また 出血の仕方は動脈性の場合は、血管が直接外にでている場合は、噴出するように出る。この出血を放置すると、血圧が低下し冷汗、意識障書がおこり、最後に は心停止に至る。
治療:外出血に対する応急処置の基本は出血を止めること。大部分の 外出血は、その部分を圧迫することによ り止血される。
4779 脳内出血とは(のうないしゅっけつ) 脳内出血は血液循環の障害によって脳細胞が死滅する脳卒中のひとつで、脳の血管が弱くなって出血するもの。
原因 :動脈硬化や高血圧で、脳血管が弱まるために起こる。
症状:頭痛、不快感、めまい 、嘔吐 、手足の運動不全、いびき、昏睡(重症)など。
24時間以上の昏睡は死の危険がある。
治療:薬剤等の内科的療法と手術がある。回復後はリハビリテーションで機能訓練をする
4780 内出血とは(ないしゅっけつ) 内出血とは血管がけがにより破れても、皮膚や粘膜が破れなければ出血した血液は体の中にたまる。この目に見えない出血を内出血という。一般に打撲などにより皮膚の下の血管が破れ、 出血し皮膚の下に血がたまったことによ り、皮膚の上からは紫色のあざのように見える。内出血は、けがをしても外から見ただけでは、すぐにははれている状態しかわかりませんが、数日たつとあざとして目で見えるのが一般的で、吸収されて消えるのにも数週間かかる。
治療:一般的な四肢の打撲による内出血には3つの原則がある。これは
@内出血した部位を冷やすこと
A出血が多くならないよう軽く 圧迫すること
B挙上すること(足ならば座布団などで 少し足を高くして寝る)
これによりけがの程度をそれ以上悪化しないように予防する。
4781 出血性ショックとは(しゅっけつせいしょっく) ショックとは、血圧が低くなりすぎて、生命にかかわる状態のこと。症状は、まず最初、 不安状態、無欲無関心状熊、なまあくびではじまることが多く、見落としやすい。次に冷汗や顔面蒼白な状態が続き、そのときの脈拍は速 く、さらに進むと意識は混濁し呼吸も速 く、血の気がない状態となる。このような状態では血圧はほとんど触れないことが多い。
どのようにしておこるのか:けがにより、血管から血が大量に出る と、心臓から全身の臓器に血が行かなくなるため、何とか血圧を維持しよ うと呼吸や脈が速くなったり、手足が冷 たくなったりする。最終的に脳へ血が行かなくなると意識がなくなる。
治療;医療機関を速やかに受診。
4782 喀血とは/吐血とは(かくけつ、かっけつ、とけつ) 喀血とは呼吸するところ(気管、気管支、肺)からでてきた出血であり、咳をしたときに口から鮮紅色の血液を吐きだし、泡を含んでいることが特徴。大量に喀血すれば出血性ショックをきたす。また少量でも呼吸をする道に出血がたまるので、呼吸困難になる。
吐血は消化器官(食道、胃、十二指腸)からの出血であり、吐くような動作とともにおこる。胃や十二指腸の出血は胃酸による黒っぽい出血が特徴で、一般には「コーヒー残渣様」と呼ぱれる。
治療:喀血や吐血は突然口から出血する。まず口腔内に出血がたまり呼吸ができなくなるので危険。周期的に出血がおこる場合があるので その後も横向きにした状態で吐きやすく する。
4783 鼻出血とは(びしゅっけつ) 鼻出血は鼻の内部出血である。
原因:打撲やのぼせ等が原因となることが多い。糖尿病、腫瘍、循環器系疾患等が原因となることも多いので、注意を要する。
症状:主に鼻の入り口付近での出血。
疾患が原因・・・大量の出血
治療 :小鼻を押さえて、安静にすれば自然に止まる。原因疾患のある場合は、その治療をする。
4784 下血とは(げけつ) 下血とは便に血液が混 じる状態。混じった血液の量、新鮮なものか古いものかで出血の部位、損傷の程度を判断することができる。下血の原因として最も多いのは、腹部を強く叩打した場合です。交通事故、転落、転 倒によるものが多くみられる。
受傷時の注意: 腹部を強く叩打した場合などは、腸管の破裂や腹腔内出血をきたすことが多々ある。腹部にかすり傷程度しか認められなくても、腹腔内では 肝臓一脾臓の破裂や大腸・小腸の破裂な ど、致命的な損傷をおこしている場合があり注意が必要。最近とくに交通事故で多く認められるシートベルト外傷では肝・脾損傷や腸管の断裂などをきたすことがある。このよう な場合においては大量の下血を呈することがある。損傷の程度が比較的軽度で腸管の断裂、穿孔などをまぬがれて壁内血腫のみでとどまっても、受傷後数時間および数日経過してから下血を呈することがあるので注意が必要。
4785 血尿とは(けつにょう) 腹部、骨盤、会陰部などに強い鈍的外傷 (全身を強く打撲しておこる外傷のこと。交通事故や転落、墜落による外傷)が加わると、腎臓、尿管、膀胱、尿道が損傷を受けて出血し、血尿として現れることがある。強い打撲痛を伴うが排尿痛ははっきりしない。血尿の程度によって肉眼的血尿、顕徴鏡的血尿に分けられる。このほか外因性の疾患で血尿を認めるものは重症熱傷、熱中症などがあり、ミオグロビン尿症と呼ぶことがある。これらは全身の筋肉の組織が分解・崩壊するために生じるもので、打撲などの外傷でおこる血尿とは、機序が異なるので注意が必要。外傷による血尿の原因として多いのは、 交通事故、転落、転倒など。これらの原因により鈍的外傷を受け、 泌尿器系の損傷をきたすため血尿を生ずる。
どんな現れ方か:損傷の程度によって、鮮紅色を呈する 肉眼的血尿から、ほとんど症状を認めな いで顕徴鏡的血尿のみ現れるものまでさまざまです。 ただし、生理期間中の女性ではしばしば尿潜血陽性を呈することがあり注意が必要。
治療:程度の軽い場合は経過観察を行い、保存的治療で治癒するが、損傷が著明でショック症状を呈する場合は、緊急手術 が必要。誤って腰背部や会陰部、骨盤等を強く打撲した場合は、いかなる場合も念のため病院を受診し、レントゲン検査および尿の潜血反応を調べる。
4786 頭部軟部組織損傷とは(ずぶなんぶそしきそんしょう) 頭皮が損傷された状態。開放創の有無により、閉鎖性損傷と開放性損傷に分類 する。
@閉鎖性損傷
皮下結合組織に血液がたまる皮下血踵といわれる小さいものから帽状腱膜下血腫や膜下血腫のように大きいものまでさまざ。
A開放性損傷
傷を受けた原因や傷の状態により、挫創、切創、刺創、裂創などに分類。さらに、頭蓋骨骨折をおこして脳実質と傷口とがつながっている場合を穿通性損傷という。
治療:小さな皮下血踵の場合、数日で消失するので経過観察のみでよい。しかし、帽状腱膜下血腫や骨膜下血腫の場合は吸収されるのに時間を要し、後者の場合は石灰化の傾向も認められるので専門医に診てもらい、症状によっては血腫を穿刺することが必要。 一方、開放性損傷では傷口の縫合が必要。出血が続いている場合は清潔なタオルでしっかりと傷口を押さえ、 早急に専門医を受診。
4787 頭蓋骨線状骨折とは(ずがいこつせんじょうこっせつ) 頭部に強い外からの力が加わることにより生じた骨折で、骨折線が頭蓋骨を線状に走るのでこの名がある。骨折自体は外科的な手術の対象にはならないが、硬膜の血管や静脈洞が損傷することもある。この場合、硬膜外血腫が発生する可能性がありますので注意が必要。
治療:頭蓋骨線状骨折は、頭蓋骨をレントゲン撮影することにより診断。骨折が完全に治癒するまでには幼児で1〜4ヵ月、5〜12歳で一年、成人で は数年を要するとされているが、その間安静にする必要はない。しかし骨折線が前頭洞などの副鼻腔や内耳に達している場合には感染の可能性もあり、抗生物質の投与が必要。また、硬膜外血腫がおきて意識障害を伴っているときは外科的な血腫除去術が必要。進行性頭蓋骨骨折で偽性髄膜瘤を伴う場合も外科的治療の対象。
4788 頭蓋骨陥没骨折とは(ずがいこつかんぼつこっせつ) 外部からの力により、頭蓋骨が内側に没する骨折。強い外からのカが頭部の特定部位に加わったときに生じ、頭蓋骨が軟らかい幼小児に多く発生。表面に傷があって、骨折部と外界がつながっている開放性陥没骨折では24時間以内に適切な処置をしないと感染の危険性があるので早急な治療が必要。本症に特異的な症状はないが線状骨折と同様に、骨折と同時におきる頭蓋内損傷のために意識障害、片まひなどの神経学的症状がおこる場合がある。
治療:陥没が軽度のものは経過観察。しかし定期的な検査と専門医の診察が必要。重症の場合はできるだけ早期に整復手術を行うことが原則。なぜなら陥没部の骨片が脳を圧迫して、けいれんの原因になる可能性がある。とくに開放性頭蓋骨骨折の場合は、傷を受けてから24時間以内に整復手術を行わないと感染の恐れがある。24時間以上を経過した場合は、まず陥没した骨片を除去して傷口を縫合し、 傷が完全に治癒してから二次的に頭蓋骨形成術を行う。
4789 頭蓋底骨折とは(ずがいていこっせつ) 外部からの力による頭蓋骨底部の骨折をいい、臨床的には鼻や耳からの髄液の漏れなどで診断。本症は副鼻腔や内耳と傷がつながることが多いので感染して髄膜炎にならないよう注意が必要。
頭蓋底骨折は骨折の部位により特徴的 な症状や徴候を現すことが知られる。
前頭蓋底骨折場合には眼窩周囲に皮下血腫を認める"パンダの眼〃(ブラックアイ)や鼻からの髄液漏が認められる。
中頭蓋底の骨折では、耳の後ろ にバトルサイソと呼ばれる皮下血腫が認められたり、内耳や中耳からの髄液漏が認められる。合併損傷として嗅神経損傷、視神経損傷、顔面神経損傷、聴神経損傷などの脳神経障害を生じることもある。
治療:頭蓋底骨折自体が治療の対象になるこ とは少なく、合併する難治性の髄液漏や脳神経障害が治療の対象となる。本疾患に合併する髄液漏の80%は一週間以内に自然に停止するが、それ以上続 く場合は逆行性の感染、髄膜炎発症の可能性もあり、外科的な治療が必要。脳神経障害を合併する症例も、場合によっては手術が必要。合併損傷のない症例は、抗生物質を投与。いずれにせよ、 専門医による診断治療が必要。
4790 硬膜外血腫とは(こうまくがいけっしゅ) 硬膜外血腫は、脳を包む硬膜と骨の間に形成される血腫で側頭、頭頂部に多い。頭部外傷例の1〜3%にみられ、ほとんどは急性に発症する血腫。幼小児では症状が急速に進みやすいので注意が必要。頭部外傷を受けることにより、脳を包 んでいる硬膜と骨の間に動脈または静脈からの出血がおきて、血液がこのスペー スにたまる状態をいう。大部分は頭蓋骨骨折を伴うが、幼小児では骨折を伴わない場合もある。血腫が大き くなるにつれ、脳への圧迫が著しくなり、 激しい頭痛から意識消失へと症状が移行。
治療:できるだけ早期に開頭、血腫除去術を行う。しかし、血腫が小さければ様子をみながら治療を続けていけばよい場合もある。脳挫傷をともなうことは少なく 早期に対処すれば予後は比較的良い。できるだけ早く専門の脳神経外科医を受診。
4791 硬膜下血腫とは(こうまくかけっしゅ) 硬膜下血腫は全頭部外傷中の1%にみられる。打撃を受けた部位とは反対側 にできることも多く、好発部位は大脳半球全体にわたり、前頭、側頭、頭頂部に最も多くみられる。脳を包む硬膜と脳の間に血液がたまってくる状態で、多くは脳挫傷を伴う。脳挫傷により脳表の動脈や静脈が損傷 して出血する場合と、脳表から静脈洞に注ぐ架橋静脈が切れ、血腫を形成する場合がある。とくに幼小児では、軽い外傷で架橋静脈が切れ、硬膜下血腫を形 成する場合があるので注意。 外傷の程度は硬膜外血腫の場合より強いことが多い。
治療:開頭、血腫除去、外減圧術によって治療する。脳挫傷を伴うことが多いため、 硬膜外血腫に比べ予後は良くない。 血腫除去後に、脳浮腫、脳腫脹をきたすこともよくある。
4792 くも膜下血腫とは(くもまくかけっしゅ) 脳表面を包んでいる薄いくも膜と脳表との間は脳脊髄液で満たされており、この部分をくも膜下腔といい、ここに出血がおこった場合をくも膜下血腫という。原因が外傷によるものを外傷性くも膜下血腫という。くも膜下腔は血管が密になっているので、外力が加わると血管の損傷を受けやすく、くも膜下出血の原因となる。脳挫傷を伴うと、傷を受けた直後から意識障害が続く場合がある。脳挫傷を伴わず軽度の出血の場合は、意識障害はなく、頭痛、吐き気、嘔吐のみがみられることも多い。
治療: くも膜下出血のみであれば手術の必要はない。合併する硬膜下血腫、脳内出血の重症度により手術するかどうかを決定する。病気に気づいたらできるだけ早く、脳神経外科専門医を受診。
4793 脳内血腫とは(のうないけっしゅ) 頭の構造を外側から内側へみてみると、皮膚、頭蓋骨、硬膜、くも膜、脳組織と なっている。 頭蓋内出血とは、これらのいずれかの部位およぴ、その間に生じた出血のすべてをいう。
外傷による骨折や脳組織そのものに達する脳外傷により、脳挫傷をきたLて血腫を生じたり、脳の深いところの血管が切れて発生する。脳挫傷による遅発性の脳内血腫もまれではない。出血部位、程度、大きさ、他の合併出血の有無などにより、受傷直後から意識障害をみるものが多い。
治療:薬物を用いた保存的治療を行う。 それでも意識がどんどん薄れていく場合は手術を行う。
4794 脳室内出血とは(のうしつないしゅっけつ) 脳室というのは、その字のように脳のほぼ中央にある部屋で、脳脊髄液という体液をつくっているところ。脳室内出血は、この部屋の中に出血することをいう。その原因は脳室の近くにできた脳内血腫が脳室の壁を破って出血する場合が大多数。症状だけでは脳室内出血と脳内血腫を区別することは困難。脳室内出血そのものを手術することはほとんどない。脳脊髄液は脳を保護して常に循環している。そのため出血によってその循環が悪くなることがある。そうなると脳室が拡大し、周辺の脳を圧迫したりします(水頭症)。その場合は、一時的に脳室の体液や血腫を外に逃がす手術を行うことがある。また脳室内出血は単独ではなく他の頭蓋内出血を合併していることが多いため、そちらのほうの治療も必要。いずれにしても、 脳室内出血をきたす場合には、相当強い外力が脳に加わっており、予後はあまり 良くない。
4795 瀰漫性脳腫脹とは/びまん性脳腫脹/びまん性脳浮腫(びまんせいのうしゅちょう、びまんせいのうふしゅ) 小児の重症な頭部外傷の場合にその30〜40%で、急性期に頭部CT検査によって特有の所見(側脳室、第3脳室、髄液槽などに両側性の陰影欠損または圧迫像)がみられたものをいう。外傷により脳血流量が増加するためと考えられる。頭部外傷の直後に、軽い意識障害を伴 い、その後少し時間をおいて急速に意識状態の悪化をきたし、除脳硬直をきたす場合がある。また、受傷直後より意識状態の悪化を伴い、そのまま除脳硬直となり死に至る場合もある。
治療:脳圧を減少させる治療を行う。頭部を高く上げ、過換気を行い、脳圧を減少させる薬剤を投与する。頭部に外傷を受けたときに少しでも意識障害を伴った場合は、脳外科のある救急病院にすみやかに受診。
4796 脳挫傷とは(のうざしょう) 頭部への衝撃により脳実質に損傷が生じたもの。何らかの原因で頭部に強い衝撃が加わ ったために生じる。次のように、いくつかに分類される。
1)直撃損傷
外力の加わった部位のすぐ下の脳損傷。
2)反衝損傷
外力の加わった部位の反対側にできる脳損傷。
3)せん断変形
脳に対する外力の伝わり方の違い(せん断力)によるもの。
4)空洞現象
外力の加わった反対側に瞬間的に真空状態ができて損傷されるもの。
どんな現れ方か:受傷の直後から意識障害がみられ、それが継続。脳浮腫により頭蓋内圧が上昇すると呼吸異常、徐脈、瞳孔異常がみられ、また障害部位により片まひが現れる。重篤の場合 は死亡する。
治療:脳挫傷で二次的におきてくる脳浮腫を抑えて、脳ヘルニアをおこさないようにする。そのためには過換気、頭部を高く上げる、高浸透圧脳降下剤などを使用。脳圧を調べて、上昇する場合には、減圧開頭することもある。
4797 頭部外傷後遺症とは(とうぶがいしょうこういしょう) 頭部へ受傷後3週間以上経過しても外傷による症状が継続している場合をいう。神経、血管、筋などの器質的な病変によるものと、心因反応によるものがある。
どんな現れ方か
1)頭痛
@筋収縮性頭痛:最も多く、精神的ものが多い。持続的に頭が重く締めつけられるような感じがする。
A外傷性片頭痛:周期的に拍動する痛みがあり、吐き気、差明(目がまぶし い)を伴う。血管拡張性の頭痛です。
B頸椎ねんざによるもの:一般的にむちうち損傷といわれるもの。頸部が急激に過伸展され、さらに屈曲するときにおきる。頭痛は後頭部を中心に締めつけられるような痛み。
C牽引性頭痛:坐位、立位で強くなり、 横になると軽くなる。髄液の産生低下による。
2)めまい
約半数にみられる。ふらふらする動揺感と、ぐるぐるまわる回転感がある。
3)神経蓑弱様症状
不眠、食欲不振、易疲労感、全身倦怠感、注意力散漫などの不定愁訴を訴える。
4)外傷神経症
心気、不安症状を主とするものと、ヒ ステリー症状を主とするものがある。
治療:筋収縮性頭痛や頸椎ねんざには鎮痛消炎剤、筋弛緩剤、血管拡張剤、ピタミンB12などを投与。血管拡張性頭痛には抗セロトニン剤や抗ヒスタミン剤を投与。また、めまいに対しては安静にして、血管拡張剤、代謝改善剤、脳循環改善剤などを投与。神経衰弱様症状、外傷神経症に対しては抗不安剤 の投与と対症的治療を行う。
4798 外傷性てんかんとは(がいしょうせいてんかん) 外傷性てんかんとは頭部に受傷後、てんかん発作をおこすもので、受傷後1週間くらいにおこる早期てんかんと、3カ月から2年以内におこる晩期てんかんがある。
どうしておこるのか:頭部外傷により脳組織が損傷され、そこが巣となっててんかん発作をおこす。脳挫傷が強ければてんかん発作の発症の頻度が増すといわれてる。
どんな現れ方か:外傷後しばらく期間をおいてからのけいれんを主とする発作で、いわゆるてんかん発作と同じです。
治療:外傷後予防的に抗けいれん剤を投与。また、受傷時に巣となりうる脳組織を外科的に除去することもある。
4799 脳震盪とは/脳しんとうとは(のうしんとう) 頭痛、悪心、嘔吐などの神経症状が現れる。肉眼的には脳損傷を伴わないもので、これらの症状は可逆的で後に後遺症を残さないものと定義されている。
どうしておこるのか:頭部衝撃により脳振揚が発生する原因は、脳神経細胞の機械的破壊、低酸素症、脳腫脹、脳細胞から湧き出される神経や血管への影響物質の存在などが考えられる。
頭部に衝撃を受けた直後より意識障害、神経反射の消失、弛緩性まひ、頭痛、嘔吐、視力障害、視野狭窄、聴力障害、臭覚障害、手足のしびれ、痛みなどが現れる。
治療:頭部外傷の場合、その現場で比較的軽度な脳震盪であるのか、もっと重症な外傷による意識障害であるのか鑑別する。呼吸をしていなかったら人工呼吸を、心臓が停止していたら心マッサージを行い、最寄りの救急病院に運ぶ。ただし頭部外傷は、頸椎損傷を伴うことが多いので、頸部は固定しておくことが大切。 脳震盪の治療は安静にして経過観察するだけで十分なことが多い。
4800 頚椎捻挫とは/むちうち損傷とは(けいついねんざ、むちうちそんしょう) 頚椎捻挫いわゆるむちうち損傷は日常しばしば見られる病態。原因として一番多いのは交通事故ですが、スポーツ外傷あるいは労災(仕事中の事故)などでもしばしば見られる。また軽い頚椎捻挫は寝違いでも起こる。症状としては頸部から肩およびけんびき(肩甲骨の内側)にかけてのいたみ(鈍痛)、上肢のだるさ、(手の)しびれ、後頭部痛、むかつき、嘔吐、めまい、ふらつき、つかれ目、眼痛、かすみ目、複視(物が二重に見える)など様々の症状が出現する。
治療:医療機関を受診。原則は安静。 しびれ、むかつき、ふらつきが強い時は点滴治療が有効。いたみに関しては薬物療法(経口薬、湿布、坐薬)、理学療法(ホットパック、低周波、牽引など)、ブロック療法(ペインクリニック)、ハリ治療などいろいろあるが、自分にあう治療法を選択。