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        Q&A本文(No4351-4500)

No
Q(お客の質問) A(答え)
4351 直腸癌とは/直腸がんとは/直腸ガンとは(ちょくちょうがん) 直腸がんは直腸の粘膜にできた悪性の腫瘍。結腸がんとともに最近増えているがんの一つ。 特に40歳台から増加して60歳台が最も多い。一般的に男性に多い。日本の死亡原因はがんが第1位で、大腸がん(結腸がん,直腸がん)は、年々増加している。 肉食の多い欧米人に大腸がんあるいは直腸ガンの発生が多いことから、動物性脂質や動物性タンパク質の摂取量が増えたのに対し 炭水化物や食物繊維の摂取量が減っているため便が大腸内に留まる時間が長くなり、食物に含まれていたり、 代謝によって発生した発癌物質が大腸粘膜に接している時間が長くなったためであると考えられる。また粘膜に発生した良性のポリープががんに変化することも知られている。遺伝的な発症とされている例もある。発生しやすい因子として大腸および直腸ポリープ経験、家族内の発症、潰瘍性の大腸炎またはクローン病の既往歴、治りにくい痔などが指摘されている。
直腸癌の症状は初期には自覚症状がないが、がんが大きくなると血便や排便異常、残便感、腹痛、下痢と便秘、腹部のはり、貧血症状などが出てくる。肛門に近い部分にある直腸がんでは赤いはっきりとした血便が多く認められる。排便異常や残便感、腹痛などは大腸の内腔が、がんで狭められたときに現れやすい症状になる。他に腸閉塞気味になるために起こる嘔吐で発見されることもある。さらにはがんが進行して肺や肝臓に転移したことで呼吸が苦しくなったり、咳がでたり、背中や腹部が張ったり痛くなったり、 食欲不振になったり黄疸症状が出て気が付く場合もある。
治療法は手術、放射線療法、化学療法となる。
4352 排便障害とは(はいべんしょうがい) 排便の障害とは便秘、下痢、便が漏れてしまう便失禁などのこと。
1)下痢
下痢は便の水分が多くなり、便の形が有形でなくなり、水っぽい状態。
2)便秘
便が固く、排便に苦労したり、何日も出ないといった状態。 たとえ毎日出ていても、うさぎの糞のように固く、水分の少ない便は便秘と言える。逆に、数日間出なくても、出てきた便が有形で、柔らかくスムーズであれば便秘ではない。
3)便失禁
便が我慢できずに漏れたり、あるいは知らないうちに出てしまうこと。原因によって便失禁の症状が異なります。
4353 血栓性外痔核とは(けっせんせいがいじかく) 下記のような何らかの原因で、ある日突然に肛門部が痛む。立っていると擦れるようで、座ると痛みのあるイボが肛門部周囲に出来たことが分かる。はなはなだしい場合には、肛門周囲の皮膚表面が潰瘍化し、そこから中の血栓が顔を出し、出血する。
血栓性外痔核を起こす原因
1)疾患:内痔核・外痔核、便秘、肝疾患など。  
2)状態:スポーツ一般、立ち仕事、腹圧がかかること(便秘、重いものの運搬など)、冷所での作業など。
小さければ、自然と血栓が融解し治る。また軟膏や内服薬で早く解けるようにする。大きな場合や出血する場合などは、摘出したほうが早く治る。
4354 肛門掻痒症とは(こうもんそうようしょう) 肛門のかゆみを訴えられるひとは多い。原因は種々ある。 蟯虫などの寄生虫は、現在ではかなり頻度が少なくなった。女性は生理の前後にオリモノが多くなると、かゆみを訴える。カンジダ菌やインキン・タムシ(股部白癬症)などは季節によって症状が変わる。肛門周囲に関しては内外痔核の脱出によって、直腸の腸液が肛門周囲に漏れ、腸液による皮膚炎を起こす人も多い。排便後は清潔にし、同時に、脱出した痔核は指などで戻す。根治的には、痔の手術をする。
4355 肛門ポリープとは(こうもんぽりーぷ) 肛門ポリープは肛門の粘液分泌腺が炎症を起こして、突起物となるもの。原因は肛門に10箇所以上ある粘液分泌腺が炎症で大きくなるために起こる。症状 は肛門の一部が裂ける 、ポリープが肛門外に出るなど。 治療 はポリープ切除手術と裂肛治療をする。
4356 肛門癌とは/肛門がんとは(こうもんがん) 肛門がんは肛門縁周辺の細胞や直腸肛門接合部までの肛門管内の細胞から発生する。多くの肛門がんは肛門皮膚部から発生し、扁平上皮がんといわれる。肛門がんは口側の肛門管の特殊な上皮から発生して総排泄腔がんと呼ばれる。細胞自体は悪性ですが、表在組織より深くは浸潤せず前癌状態にとどまる。この状態はボーエン病と呼ばれる。
4357 術後肛門障害とは(じゅつごこうもんしょうがい) 手術を行った後におこったさまざまの不都合な障害を総称したもの。医師の経験不足、知識不足、時代遅れの手術、患者の不養生などが基にある。原因としてはホワイトヘッド手術、痔核、痔瘻、裂肛手術、腐食療法、結紮術などがある。障害の種類としては粘膜脱、狭窄、変形、難治創、閉鎖不全などがある。障害の病名としてはホワイトヘッド肛門、術後肛門狭窄、術後肛門括約筋不全が代表的。術後障害の修復術は高い技術が必要であり、専門医と要相談。
4358 括約不全とは(かつやくふぜん)   肛門を締める筋肉の働きが弱くなったもので、便もれ・ガスもれを伴う。
4359 尖圭コンジロームとは(せんけいこんじろーむ)   ウィルスの感染により肛門の周囲に小さなイボ状の集まりを生じたもの。
4360 A型急性肝炎とは(Aがたきゅうせいかんえん) A型急性肝炎はA型肝炎ウイルスの感染で発症する肝炎である。原因は感染者の便の排泄で出たウイルスが、経口感染することで起こる。環境衛生の向上で、日本国内の発症は少ないが、東南アジア旅行で感染することが多く、20代、30代に多い。症状 は発熱 、倦怠感、食欲不振、黄疸 劇症化や、腎不全の併発が稀にあり、胆汁うっ滞性肝炎となって長期化することもある。治療は安静にすれば、2ヶ月内で自然治癒することが多い。黄疸症状の場合、バランスよく栄養をとり、薬物治療を行う。
4361 B型急性肝炎とは(Bがたきゅうせいかんえん) B型急性肝炎はB型肝炎ウイルスが感染して起こる肝炎である。原因はB型肝炎ウイルスは血液に混じるもので、傷口や輸血、注射、キス、性行為等を原因として感染する。輸血血液の検査の徹底で、輸血による感染は減少している。症状は発熱、倦怠感、黄疸など。 ふつうは、数ヶ月で治癒するが、劇症化する場合や慢性化する場合もある。治療は安静にすることが必須。黄疸症状が出たら、栄養バランスを良くし、薬物療法を行う。
4362 慢性肝炎とは(まんせいかんえん) 慢性肝炎とは6か月以上肝臓に炎症が持続する病態で、主としてウイルス肝炎を指す。日本ではB型が約30%を占め、残りが非A・非B型である。男性に多い。 C型肝炎ウイルス(HCV)は血液を介して感染する。成人でもHCVの感染を受けると高率(60%〜70%)に持続感染状態になる(キャリア化する)。
原因は慢性肝炎の中には自己免疫性肝炎のような特殊なものも少数ながらある。ほとんどはウィルス感染が原因となっている。アルコールによる慢肝炎や肝硬変は昔考えられていたよりずっと少ない。
4363 劇症肝炎とは(げきしょうかんえん) 劇症肝炎は急激に広範囲の肝細胞が破壊され、肝機能が低下して、肝臓が小さくなる。 原因の90%がB型を中心とするウイルスによるもので、残りは降圧薬や抗生物質、麻酔薬等の薬剤による。これにより、免疫反応が過剰になって起こる。症状は全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、黄疸、頻脈、血圧低下、腹水、浮腫など。 悪化すると、意識障害から昏睡状態となり、生命にかかわる。治療は薬物療法、血漿交換等で肝機能を向上させ、合併症の予防処置をとる。
4364 原発性胆汁性肝硬変とは(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん) 原発性胆汁性肝硬変は胆汁うっ滞によって起こる肝硬変である。原因は胆汁うっ滞は、胆汁成分が肝臓に沈着したり血中に停留することで、胆汁分泌や排泄が阻害されるもの。免疫異常が関係すると言われるが、はっきりとした原因が不明である。厚生省の難病指定を受けており、食道静脈瘤の破裂や肝不全への移行で死亡することもある。40代以上の女性に多い。症状は皮膚のかゆみ、黄疸、下痢 、皮膚の黄色腫、骨軟化症、骨粗しょう症の合併など。根治の決定的な治療法はない。かゆみには薬物を使い、食道静脈瘤は破裂しないように予防処置をする。
4365 肝細胞癌とは/肝細胞がんとは(かんさいぼうがん) 肝細胞癌のほとんどはウイルス性肝炎から発生する。C型肝炎が70〜80%で最多であり、次いでB型肝炎が10%〜20%と多い。その他、BC重複感染と非B非Cが数%ずつある。日本や西欧ではC型肝炎が原因として多い。まれな原因としてヘモクロマトーシスやアフラトキシン暴露などが挙げられる。アルコール性肝硬変を原因とする肝細胞癌は日本では少ない。肝細胞癌になる前に素地として肝硬変が存在する事が多いが、特にC型肝炎が原因の場合には肝硬変を経て癌化する経過をたどる場合が多い。日本では欧米よりも肝細胞癌の発生率が高い。特に手術や輸血、注射針の使い回しなどが原因と考えられる。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状はほとんどない。病状が進行してくると肝機能悪化および腫瘍の増大に伴い、全身倦怠感、食欲不振、黄疸、尿の黄染、腹部膨満、腹部腫瘤、腹痛、発熱などが出現してくる。
4366 胆管細胞癌とは/胆管細胞がんとは(たんかんさいぼうがん) 胆管細胞癌は肝臓にできる悪性腫瘍である原発性肝癌の約4%を占める疾患。 胆管細胞癌は肝臓にできる癌のことで、胆管細胞が癌化し発生するもので肝細胞が癌化する肝細胞癌とは区別される。腫瘍の進展する様式の特徴として所属リンパ節への転移が多く認めらる。手術例で肝細胞癌が2%であるのに対して、胆管細胞癌は39%と高い頻度で認められる。治療法としては肝切除を中心。胆管細胞癌は肝予備能が保たれている反面、腫瘍径が大きい傾向があり、大量肝切除となる大きな手術になることが多い。リンパ節への転移率が高いため肝周辺の所属リンパ節も郭清といって一緒に取ってくる手術が行われる。 切除できない症例は抗癌剤の肝動脈注入療法が行われますが、成績は不良です。
4367 転移性肝癌とは/転移性肝がんとは(てんいせいかんがん) 転移性肝癌は体の別の部位に生じた癌が肝臓に広がったものです。 転移性肝癌の多くは、もともとは肺、乳房、大腸、膵臓、胃に生じたものです。白血病(白血球の癌)やリンパ腫(リンパ系の癌)も肝臓に転移することがある。転移性肝癌の発見が、癌と診断される最初のきっかけとなることもある。 体重減少、発熱と食欲不振がしばしば最初の症状となる。典型的には肝臓は腫大しますが硬くはなく、圧痛がある。癌が膵臓から始まった場合などでは、ときに脾臓の腫大がみられる。癌が胆管をふさいでいなければ、黄疸はないか、あっても軽度です。癌が進行すると、腹腔に体液がたまって腹部が膨張する。終末期の数週間は黄疸が悪化する。毒性物質が脳にたまって肝性脳症になると、錯乱したり眠りがちの状態になる。
治療は癌の種類によっては化学療法薬を投与して腫瘍を一時的に小さくし、延命を図るが、この方法で癌が根治することはない。化学療法薬は、肝臓内の癌細胞に高い濃度で直接到達するように、肝動脈に注入することもできる。肝臓への放射線療法は激しい痛みの緩和にはときに有効ですが、それ以外の効果はほとんどない。
4368 アルコール性肝障害とは(あるこーるせいかんしょうがい) アルコールは肝臓によって分解されるが、アルコール性飲料の慢性過剰摂取によって分解されなかったアルコールが肝細胞を破壊する。これによってさまざまな炎症が引き起こされ、これをアルコール性肝障害という。アルコール性肝障害は、脂肪肝に始まり、より重症型のアルコール性肝炎、さらに終末的な肝硬変に至る。罹りやすい方は、アルコール分解能力の低い者、あるいは飲酒量が多く、しかも継続的に飲酒を行っている人。
肝障害・肝炎はどれも似た症状を持つ。脂肪肝は、通常無症状です。アルコール性肝炎では黄疸、強い倦怠感、腹痛、下痢、発熱などの症状が多く、進行すると肝臓の腫れ、腹水、浮腫などが見られる。 治療法は禁酒が原則です。
4369 薬剤性肝障害とは(やくざいせいかんしょうがい) 薬剤性肝障害とは薬剤が原因となる肝障害のことであり、肝における薬剤代謝の過程で起こる。アレルギー性機序により起こる薬剤過敏性肝障害と、肝毒性機序により起こる薬剤中毒性肝障害に大別される。前者は過敏性機序であり肝障害を予知できないが、後者は用量依存性であり、肝障害を予知できる。薬剤過敏性肝障害は血液中の肝機能所見により、肝細胞障害型(肝炎型、肝壊死型)、胆汁うっ滞型、混合型の3型に分類されている。
4370 胆石症とは(たんせき) 胆石症とは胆汁の成分が結晶して胆石になり、胆管・胆道をふさいでしまう疾患。胆石の大きさや形はさまざまですが、結晶した成分によってコレステロール結石、ビリルビン結石、その両方の混合結石に分けられ、日本人に多くみられるのがコレステロール結石です。 症状は過食したあと、上腹部が差し込むような激痛に襲われ、夕食をとって数時間後や眠りばなに痛みを感じることがある。人によっては痛みは右背中に鈍痛を感じるだけという場合もある。悪寒、震え、発熱、黄疸など 胆石があるのに全く無症状の場合もあれば("サイレントストーン"と呼ばれている)、症状が重く、さらに合併症として急性胆のう炎や胆管炎を併発した場合には胆石を摘出しなければならないこともある。なお”サイレントストーン”でも、予防的に腹腔鏡による胆のう摘出術を行うこともある。
4371 胆道感染症とは(たんどうかんせんしょう) 胆道(胆嚢および肝内、肝外の胆管内)に細菌をはじめある種の化学物質が侵入することで起こる炎症を胆嚢炎、胆管炎という。右季肋部を中心とした腹痛とともに一過性あるいは持続性の発熱,黄疸を伴うことが多く、放置すると重症化する。とくに高齢者では総胆管胆石が在る場合、急性化膿性閉塞性胆管炎をおこすことがある。これは細菌感染が総胆管から肝臓内に侵入し胆管の末端部で膿瘍を形成し敗血症を起こし死に至ることもある。
4372 胆嚢癌とは/胆嚢がんとは(たんのうがん) 胆嚢癌は高齢者と女性に多く、95%以上の例で胆石症と合併しているのが特徴で、非常に悪性度が高く、予後は不良です。早期の段階ではほとんどの場合は無症状です。進行すれば黄疸や、右上腹部の違和感、疼痛、悪心、嘔吐、体重減少が出現する。また、腹部超音波で胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症(胆嚢壁の肥厚)と誤診されることもある。胆嚢炎症状発症する場合もある。
4373 胆管癌とは/胆管がんとは(たんかんがん) 胆管がんは胆管の上皮から発生する悪性腫瘍です。発生部位によって、肝内胆管がんと肝外胆管がんと分かれるが、一般的には、肝外胆管がんを「胆管がん」と呼ぶ。胆管がんと胆嚢がんを合わせて「胆道がん」と呼ぶが、胆道がんの発生は年々増加している。胆嚢がんは女性に多く、胆管がんは男性に多く発生する。胆管がんは、明確な腫瘍としての塊を作ることは少なく、胆管粘膜上を、周辺に向かってしみこむように浸潤していくという特徴がある。
4374 胆嚢ポリープとは(たんのうぽりーぷ) 胆嚢ポリープは一般に無症状で、検診等で発見される。コレステロールの粘膜への沈着によるコレステロールポリープが増えているが、明らかにコレステロールポリープと診断される場合には手術の必要はない。但し1cm以上、特に2cmを超えたものでは癌がある可能性が否定できないため、一般に手術が勧められる。胆嚢癌自体は無症状に進行し、症状がでてきたときには既に治療困難な状況が多いため、注意を要する。
4375 急性膵炎とは(きゅうせいすいえん) 急性膵炎は膵液の消化酵素が膵臓と周辺臓器を消化して炎症を起こすものである。原因は暴飲暴食で、胆石、アルコールの過剰摂取が原因となることが多い。症状は腹部、背中の痛み 、吐き気 、嘔吐など。 重症になると、ショック状態となり、呼吸困難、心不全等で生命の危険がある。治療は絶食をして、薬物療法や補液を行う。開腹手術を要する場合もある。
4376 慢性膵炎とは(まんせいすいえん) 慢性膵炎は急性膵炎の繰り返しで、膵臓が繊維化して硬くなるもの。主な原因はアルコールである。アルコール性膵炎は膵石を形成し、病気を進行させる。進行によって糖尿病になることもある。症状は腹痛 、食欲不振、嘔吐、黄疸、下痢など。 薬物療法を行い安静にする。手術をする場合もある。
4377 膵嚢胞とは(すいのうほう) 膵臓内あるいは周辺に液体を含む袋ができる病気です。症状が膵癌とよく似ている。上腹部の痛み、圧迫感、腫瘤などで発見される。一般に大きな腫瘤や感染、出血の化膿性が高いものは手術した方がよい。
4378 膵癌とは/膵がんとは(すいがん) 膵癌は、嚢胞腺癌、膵管内乳頭腺癌、内分泌腫瘍などを含むが、全体の約80%は浸潤性膵管癌で占める。初期の膵癌ではほとんど症状がないので早期に見つけにくい。また、血液検査などでも初期に特異的な異常をとらえることは困難。膵酵素の上昇、軽い上腹部痛、背部痛など軽微な異常をとらえて、いかに早期の膵癌を見つけていくかが重要なポイント。嚢胞腺癌や、膵管内乳頭腺癌など切除可能な予後のよい膵癌も、報告例が増えてきた。
4379 急性腎炎とは/急性糸球体腎炎とは(きゅうせいじんえん、きゅうせいしきゅうたいじんえん) 急性腎炎(急性糸球体腎炎)は、上気道の炎症(鼻炎、咽頭炎等)の後で発症するもの。子供に多い。原因は菌に対する免疫反応で、これにより免疫複合体が糸球体に沈着して炎症が起きる。主に溶血性連鎖球菌等による、上気道の感染症から1〜2週間後に起こる。皮膚感染、猩紅熱等も原因となる。症状は肉眼的血尿、尿量の激減、むくみ、血圧上昇 、タンパク尿 など。治療は減塩、減タンパク質の食事療法を実施し、安静にすれば、1〜2ヶ月で治癒する。薬物療法をする場合もある。
4380 慢性腎炎とは/慢性糸球体腎炎とは(まんせいじんえん、まんせいしきゅうたいじんえん) 慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)は、血尿、タンパク尿が1年以上続くもの。高血圧を併発することが多い。ほとんどが原因不明である。急性腎炎からの移行の場合もある。症状は血尿、タンパク尿、むくみ、高血圧など。
重症の場合、疲労感、食欲不振、動悸、吐き気など。治療は腎生検で腎炎の型を決定し、それに応じて、副腎皮質ホルモン剤等の薬物療法をする。身体を休め、血圧管理の食事をとる。
4381 ネフローゼ症候群とは(ねふろーぜしょうこうぐん) ネフローゼ症候群は腎臓の糸球体で、通常は濾過しないタンパク質が濾過され、大量に対外へ排出されて、血中タンパク質が減少して起こるもの。子供に多発する。
原因
1)原発性:原因は不明である。
2)続発性:膠原病、梅毒、妊娠中毒症、悪性腫瘍、糖尿病等の疾患を原因とする。
症状 は高脂血症、タンパク尿 、低タンパク血症など。治療は利尿剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤を使い、減塩の食事をとる。続発性は原因疾患の治療をする。
4382 急性腎盂腎炎とは(きゅうせいじんうじんえん) 急性腎盂腎炎は腎盂や腎実質に細菌感染で炎症が起こるもの。主な原因は膀胱炎で、細菌が膀胱から尿管へ逆流して起こる。女性は尿道が短いため、男性より多発する。 症状は頻尿、排尿痛、残尿感 、悪寒、高熱、腰痛、尿に膿が混じるなど。治療は十分に水分補給をして安静を保つ。抗生物質投与をする。排尿を我慢しないことも重要である。
4383 慢性腎盂腎炎とは(まんせいじんうじんえん) 慢性腎盂腎炎は細菌感染による急性腎盂腎炎に繰り返し罹患して、慢性化するものである。 【原因 Cause】 慢性化の原因は、糖尿病の合併、腎・尿路系の奇形である。腎機能障害により、十数年後には腎不全になることがある。 【症状 Symptoms】 ・疲労感、食欲不振 ・悪寒、発熱、腰痛、尿の濁り、高血圧 ・進行・・・腎不全の症状 【治療 Treatment】 抗生物質の投与をする。手術の場合もある。
4384 腎硬化症とは/高血圧性腎症とは(じんこうかしょう、こうけつあつせいじんしょう) 腎硬化症(高血圧性腎症)は高血圧が原因となって、動脈硬化により、腎機能が低下するもの。多くが原因不明の本態性高血圧症が原因となる。他の疾患が原因となるものもある(続発性高血圧症) 。
1)良性硬化症:高血圧による動脈硬化症の進行で腎臓への血液量が減少するために起こる。
2)悪性硬化症:腎動脈の硬化、炎症により高度高血圧で腎機能が低下する。 【症状 Symptoms】 良性・・・肩こり、めまい、頭痛、動悸、タンパク尿 悪性・・・最低血圧120以上の高血圧、尿タンパク、血尿、眼底出血、急性腎不全、意識不明、けいれんなど。治療は食事療法、薬物療法、透析療法がある。
4385 腎結核とは(じんけっかく) 腎臓が結核菌に冒される病気です。腎臓へ結核菌の侵入は肺、リンパ節、骨などから血液を介して運ばれる。普通は菌が運ばれてきても免疫力で菌は死滅するが菌の力が強いと感染が起こる。はじめは腎の外側から起こり次第に腎の内側(髄質、腎盂)へおよびさらに尿管、膀胱へと及ぶ。治療は肺結核と同じで抗結核剤の内服を6ヶ月以上続ける。
4386 遊走腎とは(ゆうそうじん) 遊走腎は腎臓が下方の骨盤腔まで移動してしまうものである。10代〜40代のやせ気味の女性に多い。腎盂腎炎や尿流通過障害等の原因になる。症状は長時間立位後の腰痛、腹部痛、腰のだるさ、吐き気、食欲不振、胃痛、血尿、タンパク尿等。治療は腹筋、背筋を強化する。腹帯を使ったり、腎臓の固定手術をすることもある。
4387 馬蹄鉄腎とは/馬蹄腎とは(ばていてつじん、ばていじん) 馬蹄腎は左右の腎臓が下部でつながり、馬蹄状になってしまうものである。胎児中に起こる。症状は尿流通過障害、腰痛 、水腎症、尿路結石など。自覚症状、合併がなければ治療は不要である。細菌感染等を起こすような場合は手術をする。
4388 多発性嚢胞腎とは(たはつせいのうほうじん) 多発性嚢胞腎は腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんできて、腎臓の働きが徐々に低下していく、遺伝性の病気。初期には無症状。腎臓に嚢胞がたくさんできてくると、腎臓が大きくなり、腹が張ってくる。腎機能障害の進行に伴って、食欲低下、疲れやすい、だるい、夜間多尿、さらには息切れなどが出現する。また高血圧を合併することが多く、脳出血なども通常より高い頻度で起こる。根本的治療法はない。高血圧のある患者は血圧のコントロールが大事です。高血圧の薬としてはアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体阻害薬が良い。
4389 水腎症とは(すいじんしょう) 水腎症は尿の流れが停滞し、腎盂、腎杯等に尿が溜まって膨張することで、腎機能が低下するものである。 先天的な腎臓、尿管の形態異常、膀胱がん、尿路結石、前立腺肥大、子宮筋腫等の疾患が原因となる。これらによって、尿路が圧迫、閉塞することで起こる。症状は・腹部膨張 ・腎臓付近の激痛 、嘔吐、腎機能低下など。手術、カテーテルによる治療を行う。摘出手術の場合もある。
4390 腎癌とは/腎がんとは(じんがん) 腎癌は腎臓の尿を作る実質部分から発生する。腎臓から発生する悪性腫瘍の中で最もよく見られる腫瘍。一般的に高齢者に発生しやすく、男性の方が2倍以上罹患しやすい。早期癌は症状はなく、健康診断や、他の疾患の検査のために行われた,腹部エコーやCTなどの画像診断で発見される。進行癌は血尿、腰痛、発熱、腹部に触れる腫瘤などの症状をきっかけに発見されることもある。
4391 特発性腎出血とは(とくはつせいじんしゅっけつ) 特発性腎出血は原因不明の腎臓からの出血である。症状 は血尿が続く。治療 は抗炎症剤、止血剤、抗アレルギー剤等を使う。
4392 腎血管性高血圧とは(じんけっかんせいこうけつあつ) 腎血管性高血圧は、腎動脈の狭窄で生じた腎の虚血性障害が原因。腎臓に流れる血液の量が少ない、あるいは腎障害があると、腎臓から血圧をあげる「昇圧物質」が産出されて、血圧が高くなる。腎臓、あるいは腎臓に流れる血管の治療を行う。
4393 急性腎不全とは(きゅうせいじんふぜん) 急性腎不全は、急激に腎機能が低下するものである。
原因
1)腎性急性腎不全:薬物、造影剤、重症化した糸球体腎炎等を原因とする。
2)腎前性腎不全:肝硬変、大出血、熱射病等を原因とする。
3)腎後性急性腎不全:腫瘍、前立腺肥大、外傷、結石等を原因とする。
症状は乏尿、無尿、むくみ ・倦怠感、食欲不振 など。進行したものは高血圧、動悸、息切れ、呼吸困難、けいれん、意識低下、血圧降下、 乏尿で死の危険がある。治療は保存的療法として、減塩、減タンパク質の食事療法をする。重症の場合は、透析療法をする。治療により、半数は治癒する。
4394 慢性腎不全とは(まんせいじんふぜん) 慢性腎不全は慢性的に腎機能が低下するものである。主に、糖尿病性腎症、慢性腎炎等を原因とする。数年〜数十年の長期に渡り機能低下していき、回復しない。症状は老廃物の血中濃度が高まる 、倦怠感、無力感 、頭痛、吐き気、嘔吐 など。進行すると多尿、頻尿、むくみ、乏尿、尿毒症、けいれん、昏睡など。 治療は降圧剤、利尿剤を使い、減塩、減タンパク質の食事をとる。進行した場合は、透析療法をする。
4395 尿毒症とは(にょうどくしょう) 尿毒症とは腎不全に関連して見られる症状であり、放置すると生命が危険にさらされる。 原因は尿毒症は、腎不全の最終段階で腎機能が極端に低下し、排出されるべき老廃物が体内に蓄積されることにより起こる。症状は尿が出ない、または少ない、むくみのほか、神経系、心臓系、消化器系、皮膚、骨、視力などに様々な症状が現れる。症状は単一の場合もあれば複数同時に起こる場合もあるが、いずれにせよ、それらの症状は急速に進行し、悪化する。治療は早急に入院すること。安静にし、たんぱく質や食塩を控える食事療法を実行する。必要であれば、同時に透析療法を行う。
4396 尿路結石とは(にょうろけっせき) 尿路結石とは尿中のカルシウム、マグネシウム、尿酸などが腎臓で結石となり、尿管や膀胱などにつまって激しい痛みを起こす病気です。痛みは脂汗をかくほど激しく、尿はにごり、血尿になることが多くみられる。結石ができた場所によって腎杯結石や腎盂結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などと呼ばれている。
4397 腎臓結石とは(じんぞうけっせき) 尿には種々の物質が溶けて体外へ排出されるわけですが、尿中でも種々の物質が溶けきれずに析出して核ができ、次第に結石としての形をとってくる。この現象は腎臓の乳頭部という尿のしみ出してくる所で起こるのですが、石が乳頭部を離れて、腎杯や腎盂で詰まってしまったり、更に移動し尿管に落ちてくると症状がでてくる。腎臓内の結石を腎臓結石という。 カルシウムとリン酸カルシウムがあり、この2つで尿路結石の80%以上を占める。この他には、痛風の原因ともなる尿酸や、ある種のアミノ酸(シスチン)や、尿に細菌が入って感染を起こした時(腎盂腎炎)にできやすいリン酸マグネシウムアンモニウムなどがある。
4398 尿管結石とは(にょうかんけっせき) 尿には種々の物質が溶けて体外へ排出されるわけですが、尿中でも種々の物質が溶けきれずに析出して核ができ、次第に結石としての形をとってくる。この現象は腎臓の乳頭部という尿のしみ出してくる所で起こるのですが、石が乳頭部を離れて、腎杯や腎盂で詰まってしまったり、更に移動し尿管に落ちてくると症状がでてくる。尿管内の結石を尿管結石という。 カルシウムとリン酸カルシウムがあり、この2つで尿路結石の80%以上を占める。この他には、痛風の原因ともなる尿酸や、ある種のアミノ酸(シスチン)や、尿に細菌が入って感染を起こした時(腎盂腎炎)にできやすいリン酸マグネシウムアンモニウムなどがある。
4399 膀胱結石とは(ぼうこうけっせき) 膀胱結石は結石が膀胱から下りてきたり、膀胱内で発生するものである。原因は、膀胱内の異物や、膀胱狭窄、前立腺肥大等である。症状は排尿痛 、頻尿 、血尿、尿の途切れ、膀胱炎の原因となる。 原因疾患の治療をする。結石破壊や摘出をする。
4400 尿道結石とは(にょうどうけっせき) 尿道結石は結石が尿道の途中にひっかかってしまう病気。大腸菌などの腸内細菌の感染によって膀胱の粘膜に炎症が起こると結石ができる。腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿路に結石ができる病気を総称して尿路結石と呼びますが、そのうち、膀胱結石・尿道結石の場合、排尿時に痛みがおこります。女性は尿道が短いので、尿道結石が起こることは少なく、男性がほとんどです。 尿道結石の症状は排尿痛、頻尿、混濁尿、血尿など。 治療法は手術を行います。経尿道的内視鏡による摘出術では、小さい結石はそのままにして、大きい結石はくだいて摘出する。
4401 尿管結石とは(にょうかんけっせき) 尿管結石は尿管に結石ができるもの。原因はほとんどが、腎臓からの結石が下りてきたものである。症状は背、腹に痛み、血尿など。治療は多量の水分摂取で流す。大きい場合は外からの破砕排出、手術をする。
4402 水尿管症とは(すいにょうかんしょう) 種々の原因から尿管が拡張した状態で多くは腎盂腎杯の拡張した水腎症を伴う。ほとんどが片側性で尿管の一部位に生じた通過障害のために尿の停滞がおこり、その上方の尿管が拡張する。膀胱や尿道に通過障害がある場合は両側の尿管が拡張し腎臓に与える障害が大きい。尿の停滞は細菌感染を惹起し感染が悪化することにより慢性化する。治療は通過障害の原因を取り除き、腎への障害を無くして腎機能を回復させることが目標となる。原因疾患の治療が基本あるが時には尿管内カテーテルを留置して尿の通過を改善させる。
4403 膀胱尿管逆流現象とは(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅうげんしょう) 尿管は膀胱壁を斜めに貫通した後、膀胱粘膜下を約1cm走ってから膀胱内に開口している。このような尿管の走行が、平滑筋の緊張により維持されて、膀胱内の尿が、尿管から腎臓へ逆流することを防止しています。  しかし、種々の原因で、この逆流防止機構が障害され、膀胱尿が、尿管、腎臓へと逆流する現象を膀胱尿管逆流現象という。逆流する尿量と逆圧のため、尿管や腎盂腎杯は拡張して水腎水尿管となり、腎実質を萎縮させる。また、膀胱内に細菌感染があれば、細菌は容易に腎まで達し、腎盂腎炎を繰り返す。平滑筋の発達不全による逆流では、成長とともに自然消失が期待できるので高度の水腎水尿管症を伴わないかぎり、感染予防を中心とした保存的治療を続ける。保存的療法を行っても奏効しないような中等度以上の逆流では、膀胱壁内尿管長の延長を目的とした、外科的療法による逆流防止術が必要となる。
4404 尿管腫瘍とは(にょうかんしゅよう) 尿管腫瘍は尿管に発生する腫瘍の総称。尿路系の腫瘍の中では稀なものであるがほとんどが悪性で移行上皮がんが90%を占める。手術が根治療法です。
4405 急性膀胱炎とは(きゅうせいぼうこうえん) 尿道口から進入した大腸菌などの細菌が繁殖して、膀胱内の粘膜に炎症が起こる病気で、女性に多く見られる。症状として、排尿時に差し込むような痛みがあり最後に痛みが強くなる「排尿痛」、何度もトイレに行きたくなる「頻尿」、また「尿の濁り」などが現れます。予防法としては、菌が入らないように身体を清潔に保ち、菌が繁殖しないように排尿を我慢せず水分を多く摂取し、休養をとって抵抗力をつけることです。再発を繰り返すことが多いので日常生活で気を付ける。治療は抗菌薬を服用し、3から4日で症状が治るが菌が完全に死滅するまで一週間ほど服用します。
4406 慢性膀胱炎とは(まんせいぼうこうえん) 急性膀胱炎が慢性に移行する場合と最初から慢性膀胱炎としておこる2つの型がある。多くは何らかの基礎疾患に起因して尿路に発生した続発性のもので、たとえば前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱、膀胱頸部硬化症、膀胱腫瘍、膀胱結石、膀胱異物、留置カテーテルなどが原因となる。原因となる基礎疾患があるときはまず原因を除去し、抗生物質による化学療法を行い、症状の強い時、鎮痛剤や鎮痙剤を併用する。
4407 膀胱癌とは/膀胱がんとは(ぼうこうがん) 膀胱腫瘍の組織型はその約95%が移行上皮癌で,しばしば多発し,再発を繰り返す。細胞の異型度(悪性度)により4段階に分類する。遠隔転移部位として,骨盤内リンパ節,肺,肝,骨等がある。初発症状で最も多いのは血尿です。しかも通常は無痛性かつ肉眼的です(無症候性血尿)。その他排尿障害,膀胱刺激症状がその主症状となることがある。筋層に達していない表在性腫瘍では内視鏡的に腫瘍を切除する経尿道的腫瘍切除(TUR)が一般的。しかしひとたび筋層を越えた浸潤性腫瘍となると,原則的に膀胱全摘出術を含めた集学的な治療が必要となる。その場合何等かの尿路変更術が必要となる。放射線治療や各種の抗がん剤を併用した化学療法は,転移性膀胱癌あるいは浸潤性膀胱癌の手術前後の補助療法としての適応が中心。また,主に経尿道的腫瘍切除後の再発予防を目的として各種の抗癌化学療法剤あるいは免疫療法薬剤を経尿道的にカテーテルで膀胱内注入療法を行う。
4408 神経因性膀胱とは(しんけいんせいぼう) 神経因性膀胱は尿意を伝達する神経の障害で、排尿機能が低下するもの。神経の障害原因は、脳腫瘍や脳血管障害等の脳疾患、背髄損傷、糖尿病等である。症状は排尿困難。原因疾患の治療をする。排尿機能障害には、副交感神経刺激剤、副交感神経遮断剤、交感神経遮断剤を投与する。
4409 腹圧性尿失禁とは(ふくあつせいにょうしっきん) 尿失禁は病名ではなく症候名であり、本人の意思とは関係なく尿を漏らしたり、排尿をしてしまう状態をいう。近年、患者のQOLの重要性が認識され、また患者自身の認識も高まり、高齢化社会の到来と相まって、今や医療上大きな問題となっています。 腹圧性尿失禁は腹部に力が入った時に、すなわち、膀胱に尿が貯留した時のくしゃみ、重いものを持ち上げるとき、階段の昇降、大笑いやテニス、ジョギングなどの運動など瞬間的に腹圧がかかることにより膀胱内圧が尿道閉鎖圧を上回り、尿失禁を起こす。腹圧性尿失禁はほとんど女性に見られます。これは女性には前立腺が無く尿道が短いためです。また女性は骨盤底筋群を尿道、膣、直腸が貫いており、出産、肥満、加齢などにより骨盤底筋群が緩みやすいため膀胱、尿道が後下方に下がった状態になりやすいのです。急激な腹圧がかかることにより尿道はさらに後下方に移動し、尿道閉鎖圧の上昇が得られず尿失禁をおこす。この状態を過動性尿道といい、尿道括約筋自体の収縮力の低下によるものを不全尿道と呼ぶ。
4410 尿道炎とは(にょうどうえん) 尿道炎は細菌等の感染で、尿道に炎症が起きるもの。主な原因は、性交による淋菌感染で、淋菌性尿道炎と言う。クラミジア等の微生物感染、アレルギー等でも起こる。症状は尿道から黄色い分泌物 、排尿痛、頻尿、残尿感など。菌に対して抗生物質の投与等、原因による治療をする。性行為、飲酒は治癒まで避けたほうがよい。
4411 尿道狭窄とは(にょうどうきょうさく) 尿道狭窄は瘢痕化した組織が原因で尿道が狭くなった状態。尿道狭窄の原因で最も多いのは、過去の尿路感染症や陰茎の外傷です。狭窄が軽ければ尿の勢いが弱まったり、尿の出が2本に分かれたりする程度ですが、狭窄がひどくなると尿の流れが完全に遮断される。狭窄部分の手前で圧力が上がると、尿道の外側に突き出た袋(憩室)ができる。排尿の回数が減り、尿を完全に排泄することができないため、しばしば尿路感染症を起こす。狭窄部を拡張するか切開(尿道切開術)により、尿道を広げる。尿道狭窄は再発の可能性があり、瘢痕組織の切除や、皮膚移植による尿道の外科的再形成が必要な場合もある。
4412 前立腺肥大症とは(ぜんりつせんひだいしょう) 前立腺肥大症は前立腺の中の複数のしこりが、尿道を圧迫して、排尿障害を起すもの。中年以降の男性のほとんどに前立腺肥大があり、原因は老化による男性ホルモン分泌のバランスの変化ではないかと言われる。要治療は、その一部だが、放置すると、腎不全等を併発することがある。症状 は排尿に時間がかかる、尿に勢いがなくなる、残尿の増加、尿閉など。治療は排尿促進作用の薬物療法を行う。悪化の場合、切除手術をすることもある。
4413 前立腺癌とは/前立腺がんとは(ぜんりつせんがん) 前立腺は男子の膀胱の出口、尿道のはじまりの部分を取り囲むクルミ大の臓器。尿道に接する内側の部分を内線、外側の部分を外線とよぶが、前立腺がんのほとんどは外線にできます。一方、高齢者に多い前立腺肥大は内線にでる。前立腺がんは外線にできるためすぐに尿道を圧迫することがなく、早期のうちにはほとんど症状がない。がんが大きくなって尿道や膀胱を圧迫するようになると排尿に関連したさまざまな症状が見られるようになる。例えば尿が出にくくなったり、尿がでるのに時間が掛かる排尿困難や尿の回数が特に夜間に増える頻尿、排尿後でも尿が残っている感じがするなどの症状です。 前立腺がんの腫瘍マーカーPSAが高値を示す。前立腺癌の実に90%程度がこのPSAの検査で見つかっている。がんの進行とともにPSA値も上昇するため病期(ステージ)も予測することができます。 ただし、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがあるためPSA値だけではがんの確定診断はできない。
4414 急性前立腺炎とは(きゅうせいぜんりつせんえん) 急性前立腺炎は主として尿道から細菌感染して起こる、前立腺の炎症である。原因 は大量のアルコール摂取や、長時間の座位等で、前立腺が充血し、ブドウ球菌、大腸菌、淋菌等の細菌が感染して起こる。 症状は前立腺の腫れ、排尿痛、進行したものは血尿、頻尿、尿の濁り、膿、悪寒、発熱、頭痛など。治療は抗炎症剤、抗生物質、鎮痛剤等を投与する。
4415 急性副睾丸炎とは/精巣上体炎とは(きゅうせいふくこうがんえん、せいそうじょうたいえん) 急性副睾丸(精巣上体)炎とは精巣は卵形ないし楕円形で陰嚢内に左右一対存在しますが、この精巣の上面 および後面に付着しているのが副睾丸(精巣上体)です。副睾丸は精巣から出た精子を運ぶ精管が睾丸のすぐ近くでふくれている部分のことです。 急性精巣上体炎とは、精巣上体の感染症で、精路上行に起こることが多く、原因は、細菌性などの感染です。クラミジアや淋菌などのSTD(性行為感染症)によっても 生じることがある。
4416 耳下腺炎性睾丸炎とは(じかせんえんせいこうがんえん) 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)をおこすムンプスウイルスによっておこる睾丸炎で流行性耳下腺炎の合併症の一つです。流行性耳下腺炎の治療とともに急性期には局所の安静と睾丸部を冷やし、痛みがひどいときは精索に局所麻酔する。ガンマグロブリンの注射が有効な場合もある。学童期にムンプスワクチン注射をしているので発症は減少している。
4417 睾丸捻転とは/精巣捻転とは(こうがんねんてん、せいそうねんてん) 睾丸は精索という管で体とつながっている。その精索の中に睾丸の動脈・静脈と精子を運ぶ精管がある。睾丸自体は陰嚢内で導帯等で付着して動き回らないようにある程度固定されている。しかし、その付着が少ない場合や、付着がない場合は、陰嚢内で睾丸が動いたり回転することがある。睾丸が何かの拍子に回転したときに精索が何回転もよじれて元に戻らなくなり、次第に血流が障害されることがある。すると睾丸が虚血、し精管や睾丸がむくんでさらに血流が障害され、ついには全く血流がなくなる。このときは睾丸がとても痛くて、大きくはれ上がり、そのまま放置するとついには睾丸組織が死んでしまう。ねじれを元に戻すか、戻らないときは手術が必要。
4418 陰嚢水瘤とは/陰嚢水腫とは(いんのうすいりゅう、いんのうすいしゅ) 陰嚢水瘤は睾丸付近の膜内に液体が溜まるものである。原因は先天的なものと、睾丸、副睾丸の炎症や腫瘍等の後天的なものとがある。症状は陰嚢の腫れ。治療は針か切開手術で液体を抜く。
4419 停留睾丸とは(ていりゅうこうがん) 停留睾丸とは胎児の睾丸はおなかの中にありますが、生まれる前に陰嚢までおりてくる。ところが、おりてくる途中で止まってしまうことがある。途中でとまってしまっている状態の事を停留睾丸といいます。2個ともない場合と1個だけない場合がある。睾丸が陰嚢内にあるのは、睾丸が熱に弱いからです。ずっとおなかの中にあることは睾丸にとってよくない。精子を作る能力が低下して不妊症になる心配がある。 症状は陰嚢(ふくろ)をさわっても睾丸)が2個触れない。自覚症状は特にない。1歳頃までに自然におりてくる事が多いので、様子を見る。2歳を過ぎても、おりてこないときには、手術をする必要がある。
4420 睾丸腫瘍とは(こうがんしゅよう) 睾丸腫瘍は睾丸に発生する悪性腫瘍である。5歳以下、20代、30代に多発する。転移しやすく生命の危険がある。症状は片方の睾丸が大きくなる。治療は睾丸摘出手術をするが、不妊症、インポテンツ等の後遺症の可能性がある。放射線療法、化学療法等を使う。
4421 包茎とは(ほうけい) 包茎は亀頭(陰茎の先端)が包皮に被われた状態で、真性包茎と仮性包茎に分類される。真性包茎は包皮の先が狭く、亀頭を露出できない。仮性包茎は亀頭は包皮に包まれているが、包皮をむいて亀頭を露出することができる。生まれたばかりの赤ちゃんの大部分が真性包茎ですが、3歳頃までに自然に改善し、真性包茎の割合は10人に1人程度に減少する。 一般に治療の対象となるのは真性包茎です。
4422 亀頭包皮炎とは(きとうほうひえん) 亀頭包皮炎は亀頭と亀頭を包む皮膚が、炎症を起すもの。原因 は不潔にして恥垢や淋菌感染を起こすことが原因となる。小児、包茎の人に多い。症状 は亀頭、包皮内側に赤い腫れ、ただれ、膿 ・排尿痛など。治療は抗生物質を使う。
4423 陰茎癌とは陰茎がんとは(いんけいがん) 陰茎癌は陰茎の主に亀頭部、冠状溝、陰茎包皮に発生する扁平上皮癌のこと。カリフラワー状に外方に発育するもの、湿疹様の発赤から次第に深部に浸潤していくものがある。発生率はまれで男性のガン発生率の1%以下を占めるにすぎません(60歳代に多い)。腫瘍の進行速度は遅く鼠径リンパ節への転移をはじめ海綿体への転移、リンパ節への浸潤が多く見られる。 陰茎ガンの治療は、一般的には外科療法、放射線療法 、化学療法 です。
4424 早漏とは(そうろう) 早漏は射精が早すぎることで、挿入前、挿入中、挿入直後に射精してしまう状態。 多くの男性、特に思春期の男性は自分やパートナーが望むよりも早く射精しますが、これだけでは早漏とはいえない。早漏とは、単に自分が望むより早く射精することではなく、挿入後1〜2分以内に射精が起きてしまう状態と定義される。多くは、不安や精神的要因が早漏の原因だと考えられる。一方、陰茎の皮膚過敏も原因と考えられる。前立腺の炎症や神経系の障害が原因で早漏になる場合もあるが、原因が病気であることはまれ。 早漏は、本人だけでなくパートナーの悩みにもなる。 射精を遅らせる方法には、薬物療法(フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンなどの選択的セロトニン再取りこみ阻害薬[SSRI])、陰茎の麻酔、感覚を鈍らせるコンドームの使用などがある。薬物療法と行動療法を組み合わせると、どちらかを単独で行うよりも長い時間、射精を遅らせることができる。早漏の原因が深刻な精神的問題の場合は、心理療法が有効。
4425 遅漏とは(ちろう) 射精までの時間が非常に長い場合を遅漏とう。これも病気や異常ではなく、多くは妊娠への恐怖や、病毒感染などを警戒した精神的な抑制による。本当の遅漏は、射精現象がありません。射精があっても行為時間がいたずらに長びくという のは、相対的な遅漏といえる。遅漏の原因はまず精神系統の病気があります。刺激 の伝達がうまくいかなかったり、尿道の炎症のために末梢神経に障害があったりすると遅漏になる。この場合、勃起力がなくなるのと同時に起こる。亀頭の感覚が鈍かったり射精管に障害があったり すると、勃起力とは関係なしに遅漏現象が起こる。また生理的に老化が始まって、射精中枢が 勃起中枢より早くインポテンツを減退すると、勃起はあっても射精はなく遅漏状態になる。
4426 インポテンスとは(いんぽてんす) インポテンスの原因は機能的障害と器質的障害に大別される。機能的障害とはからだのどこにも障害がないもので、心因性インポテンスと呼ばれており、インポテンスの大部分を占める。 陰茎や体自体は異常がないが、精神的理由で勃起しない人を指す。若い人に増加がみられます。一方、器質的障害とは、からだに障害があるもので、陰茎そのもの障害のほか、神経や血管の障害、内分泌の病気(糖尿病など)などがあげられる。また器質的障害と機能的障害をあわせもつ混合障害もあり、代表的なものは 加齢や糖尿病によるものです。治療法は機能的障害(精神的なもの)に対しては、まずカウンセリングによる助言や指導が行われる。また心理療法、精神療法のほか、薬物療法や勃起を補助する器具を用いて治療することもある。器質的障害の場合は、原因別に治療が行われる。たとえば、内分泌系の腫瘍の摘出などで回復することもあるが、 一般的には、治療は困難といえる。原因を取り除くことができない場合は補助器具を使ったり、シリコンをうめこんだりする手術をおこなうが、非常に高額です。
4427 男性不妊症とは(だんせいふにんしょう) 男性不妊症は避妊せずに夫婦生活を行っていると、90%のカップルが1年以内に妊娠すると言われる。したがって避妊せずに夫婦生活を行っているのに1年以上妊娠しない場合を不妊症と言う。 不妊症のカップルは10組に1組の割合で存在し、その約50%に男性因子が関わっている。男性不妊症は精子の数が少ない乏精子症や精子の動きが悪い精子無力症、精液中に精子が存在しない無精子症などが挙げられる。
4428 急性うっ滞性乳腺炎とは(きゅうせいうったいせいにゅうせんえん) 急性うっ滞性乳腺炎は、乳腺内に乳汁が溜まって、乳房全体が腫れるもの。原因は主に初産の産褥期に起こり、乳管の開き方が不十分であったり、乳児の吸う力が弱かったりするために起こる。症状は乳の出が悪くなる、乳房全体の腫れ、ほてり、痛みなど。治療は乳房マッサージで授乳をする。搾乳器を使うこともある。
4429 急性化膿性乳腺炎とは(きゅうせいかのうせいにゅうせんえん) 急性化膿性乳腺炎は細菌感染による乳腺の炎症である。原因はブドウ球菌、淋菌、連鎖球菌等の細菌が、乳頭や乳輪の傷口から感染して起こる。主に産褥期に起こる。症状 は
乳管炎:乳管が腫れる。
実質性乳腺炎:乳腺全体が腫れる。
間質性乳腺炎:乳房全体が腫れる、痛み、発熱、悪寒、膿瘍、リンパ節の腫れ。
治療は乳房を冷やす。抗生物質、切開による排膿等をする。授乳は中止する。
4430 乳腺症とは(にゅうせんしょう) 乳腺症は乳房にしこりができるものである。原因 は卵胞ホルモン(エストロゲン)の過剰分泌が原因と言われる。更年期の女性に多い。症状は乳房のしこり。月経前に大きくなり、終わると小さくなる。排卵期には痛むことがある。治療は乳がんとの区別が必要である。月経後に小さくなるなら、さほど心配はいらない。ホルモン療法をする場合もある。
4431 乳汁漏とは(にゅうじゅうろう) 乳汁漏は妊娠や正常授乳期以外の時期に、自然に、または圧迫により乳汁が乳房から排出される状態をいい、無月経などの月経異常を伴っていることが多い。 分娩後の正常授乳期に続いておこる場合や、妊娠・分娩と無関係におこる場合もある。 原因は視床下部や下垂体前葉の機能異常、下垂体腫瘍などがあり、乳腺組織の過敏性が原因と考えられる場合もある。
4432 乳腺線維腺腫とは(にゅうせんせんいせんしゅ) 乳腺線維腺腫は小さい充実性のしこりで、癌ではなく良性の腫瘍。触れると弾力があり、線維組織と腺組織からできている。若い女性に多く、10代でもみられることがある。原因は不明。 しこりは可動性で、自己検診のときに触れると、周囲の組織と明瞭な境界が感じられます。小さな、つるつるした小石のように感じられることもある。このような特徴をもつ腫瘍は癌である可能性が低いと考えられる。それでも悪性腫瘍ではないことを確認するために、通常は手術で腫瘍を切除します。手術は局所麻酔をかけて行う。線維腺腫は再発することが多い腫瘍です。
4433 乳癌とは/乳がんとは(にゅうがん) 乳癌は乳腺を構成している乳管や小葉の上皮細胞から発生した悪性腫瘍。癌細胞が乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを 浸潤癌、とどまっているものを非浸潤癌、乳頭・乳輪の表皮内浸潤を特徴とするパジェット病とがある。非浸潤癌には乳管癌と小葉癌が、浸潤癌には乳管癌と特殊型があり、さらに浸潤性乳管癌を乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌の3つに分ける。また、家族性乳癌という遺伝性の乳癌もある。
4434 卵巣腫瘍とは(らんそうしゅよう) 卵巣は妊娠、受精に必要な卵胞をかかえている臓器で、女性ホルモンを産生する。そのため、腫瘍が出来やすい臓器です。一口に卵巣腫瘍といっても、種々あるが、嚢腫と充実性腫瘍の2つに分かれる。嚢腫は、中に水のようなものがたまって、ぶよぶよしている。ほとんどの場合良性ですが、中には悪性のものや、悪性に変化するものがある。卵巣は親指の頭くらいですが、腫瘍ができると徐々に大きくなり、時には数キログラムにもなる。小さいうちは、ほとんど症状がない。握りこぶしくらいになると、痛みや、腹部膨満感など自覚症状がでてくる。また、何らかの原因で卵巣が根元からねじれると、激しい痛みがおこる。このねじれで、血流がストップして、緊急手術が必要となる場合もある。卵巣嚢腫は幅広い年齢層にみられる。卵巣嚢腫(腫瘍)の全てが治療を必要とするわけでない。卵巣嚢腫はほとんどが良性ですので、それほど大きくなくて無症状の時は経過をみる。悪性が疑われる場合や症状がある場合には手術をする。悪性の可能性が低ければ正常卵巣部分を残す嚢腫核出術を原則的に行い、術後は正常卵巣機能がある。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスがくずれ、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が表れる。
4435 黄体嚢胞とは/ルテイン嚢胞とは(おうたいのうほう、るていんのうほう) 妊娠初期に最も頻度の高い類腫瘍性病変は黄体嚢胞。妊娠時の卵巣腫大病変の80〜90%は黄体嚢胞ですが、妊娠経過とともに消失するために治療の必要性は全くない。また黄体嚢胞はルテイン嚢胞とも呼ばれている。黄体嚢胞とは妊娠性機能性嚢胞であり、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の刺激で卵胞内貯留液が増加したものです。すなわち黄体嚢胞はhCGの分泌パターンと一致して腫大縮小を示します。すなわちhCGは妊娠の成立とともに次第に増加し、妊娠8〜9週の頃をピークに以後は下降します。黄体嚢胞の大きさもこのパターンに一致します。すなわち妊娠経過とともに黄体嚢胞は増大し、妊娠8〜9週の頃をピークに以後は縮小傾向になり、いずれは消失する。当然、治療の必要はない。
4436 チョコレート嚢胞とは/テール嚢胞とは(ちょこれーとのうほう、てーるのうほう) 子宮内膜様組織が卵巣内に存在し、、その内膜機能による出血のために血液が溜まって、その結果卵巣に褐色なチョコレート色の濃厚粘稠な液(陳旧血液)を有する嚢胞が形成される。これをチョコレート嚢胞あるいはテール嚢胞と呼ばれる。周囲臓器との癒着性がはなはだ強く、嚢壁はもろく、両側に発生することがしばしばである。内膜症は進行すると、卵巣内に限局することは少なく、卵管などの卵巣周囲や表層にしばしばみられ繊維化や癒着をきたし、卵管炎を併発し、付属器炎の形態を取ることが多い。 従ってチョコレート嚢胞・テール嚢胞は真の卵巣腫瘍ではなく卵巣の類腫瘍病変である。 日本産科婦人科学会編(金原出版)の「子宮内膜症取扱い規約」では「卵巣の子宮内膜症については病巣が表面にあるものを「卵巣子宮内膜症」、嚢胞を形成して膨大したものを「卵巣チョコレート嚢胞」と呼び、タール嚢胞、サンプソン嚢胞や卵巣子宮内膜嚢胞(ovaroan endometrioma)などは用いていない。」と定義されている。
4437 嚢胞性腫瘍とは(のうほうせいしゅよう) 嚢胞性腫瘍はゴム風船のような袋状の腫瘍で卵巣腫瘍の80〜85%を占める。嚢胞性腫瘍は、柔らかくぶよぶよした感じのことが多く、内容物によっておよそ次のように分けられます。殆どは良性腫瘍です。
1)嚢腫
さらさらした漿液や、ねばねばした粘液など液体だけが入っているもの。
2)皮様嚢腫
どろどろした脂肪、毛髪、骨などが詰まっているもの。
3)チョコレート嚢種
子宮内膜症が卵巣内部にあり、ここからの出血が少しずつ溜まったもの、内容物が溶かしたチョコレートに似ている。
4438 充実性腫瘍とは(じゅうじつせいしゅよう) 充実性腫瘍の代表例がいわゆる卵巣がんです。イメージとしては固いしこりのような感じです。症状としては小さいうちは無症状で、こぶしより大きくなると、固いしこりが下腹部にできたりする。充実性腫瘍合は良性型、中間型、悪性型の3つに分けられるが、悪性型の代表的なものが卵巣ガンです。良性型、中間型も悪性に悪化することがあるので、1〜2ヶ月に1回は受診する必要がある。
4439 子宮付属器炎とは(しきゅうふぞくきえん) 子宮付属器炎は子宮ならびに卵巣卵管に炎症のおこる状態です。原因は殆どが大腸菌などの雑菌です。まれにクラミジアなどのリケッチアもありますが、疲労などの結果体力が低下したときに発症するのが殆どです。 炎症があるときは、性交渉は禁忌です。
4440 子宮内膜炎とは/子宮筋層炎とは(しきゅうないまくえん、しきゅうきんそうえん) 子宮内膜炎(子宮筋層炎)は子宮内膜が細菌感染で炎症を起すもの。分娩、中絶、月経時等の不衛生が原因となって感染する。悪化により子宮筋層炎となる。症状は発熱、下腹部痛、血や膿の混じるおりもの。治療は抗生物質投与をする。摘出の場合もある。安静を保つ。
4441 子宮膣部びらんとは(しきゅうちつぶびらん) 子宮膣部びらんは子宮腔部の上皮がはがれ、粘膜下の組織が出てしまうもの。原因は成熟期に卵胞ホルモン分泌が活発化することで起こる。症状は炎症が起きやすい、多量の黄色いおりもの、出血など。治療は 抗生物質を投与する。冷凍法、レーザー光線治療、切除手術の場合もある。
4442 子宮頸管ポリープとは(しきゅうけいかんぽりーぷ)
子宮頸管ポリープは子宮頸部に良性の腫瘍(ポリープ)が発生する。 茎ををもつため、子宮頸部から膣のほうに出てくる。 ポリープの組織は柔らかく、わずかな刺激でも傷ついて出血する。 切除すれば治るが、半年〜1年ほどの間に再発することがある。 その場合は、再切除する。 また、癌の場合も考えて、摘出したポリープは組織診を行う。
4443 子宮頸管炎とは(しきゅうけいかんえん) 子宮頸管に起きる炎症を子宮頸管炎という。大量のおりもの(ときに膿が混じる)、セックス後などに出血がある。 性交痛や腰痛が起こることもある。大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌、淋菌などによって起こった膣炎が、上方へと感染して起こる場合がほとんどです。 また、クラミジア・トラコーマティスという微生物の感染によるクラミジア感染症から子宮頸管炎が起こることもある。この場合はセックスによって、クラミジアが子宮口の近くにうつされ、上方へと感染していき、子宮頚管炎となることが多い。
4444 子宮内膜症とは(しきゅうないまくしょう) 生理のサイクルと共に子宮の内膜は増殖と剥離を繰り返している。剥離された内膜が剥れること、これが生理と普段我々が呼んでいる現象です。子宮内膜症とは、この子宮内膜の組織が、卵巣内や子宮周囲、子宮の壁、子宮を腰と支える靭帯、膀胱や直腸の近くなど、子宮の内側以外の場所にできる病気のこと。このため、子宮の内側以外でできてしまった内膜症の患部は、生理のサイクルと共に増殖し、出口がないために卵巣チョコレートのう腫(血がたまって腫れる)や子宮の壁(筋肉)の中にできる子宮腺筋症(子宮筋腫と間違われることもある)と呼ばれるものや腹膜にできたりし、進行すると周囲の臓器と癒着を起こしていき、痛みが強くなる。子宮内膜症の原因ははっきりとはわかっていない。
4445 子宮筋腫とは(しきゅうきんしゅ) 子宮筋腫は女性に見られる最も多い腫瘍の一つで、30歳以上であれば、4〜5人に一人はあるといわれる。子宮筋腫自体は良性の腫腫なので、症状がなければ特別治療の必要はない。しかし、子宮筋腫による症状、すなわち月経異常(月経困難症、月経痛、過多月経)、不正子宮出血、貧血、圧迫症状などが認められ、日常生活に支障をきたすようであれば治療の必要がある。また、子宮筋腫はエストロゲンというホルモンに依存していることが知られている。したがって更年期、閉経後に行われるホルモン補充療法は子宮筋腫を増大させ、症状を悪化させる可能性がある。
4446 子宮下垂とは/子宮脱とは(しきゅうかすい、しきゅうだつ) 子宮が下方に偏位したものを子宮下垂といい、さらに子宮膣部が膣入口より外に脱出したものを子宮脱という。 原因は子宮支持装置(基靱帯・仙骨子宮靱帯・肛門挙筋など)の脆弱化に起因し、多産婦の高齢者が危険因子となる。子宮支持装置の弛緩である。したがって治療はこれらの支持組織の補強である。 症状は子宮下垂感、排尿障害など。合併した膀胱脱に起因する。 合併症は膀胱脱、子宮頸部延長、緊張性尿失禁。治療は手術。延長した基靱帯を縫合固定し、子宮頸部を切断する。
4447 子宮頸癌とは/子宮頸がんとは(しきゅうけいがん) 子宮頸部を原発とする。組織学的には85%以上が扁平上皮癌であり、9%程度が腺癌であるが、近年腺癌の占める割合は増加傾向にある。
子宮頸癌の好発年齢は40歳〜60歳代で、50歳代にピークがあるが、近年若年者の子宮頸癌が増加傾向にある。初期癌などは自覚症状に乏しく、無症状。検診や他の婦人科疾患で受診した際に偶然発見されることが多い。癌の進行に伴って、原発巣の症状として、出血、帯下(おりもの)などが出現し、浸潤・転移に従い疼痛、尿路障害、直腸障害、貧血などの全身症状を示す。治療法 は癌の進行度により、治療の方法は変わる。手術療法、化学療法、放射線療法などがある。
4448 子宮体癌とは/子宮体がんとは(しきゅうたいがん) 子宮体癌は組織学的には、殆どは子宮内膜に類似する類内膜癌で、その10%程度に扁平上皮癌への分化を伴う。まれに、類内膜癌以外のいわゆる特殊型と言われる組織型を認めることもある。 子宮頸癌の減少に反して、子宮体癌は増加している。子宮体癌の発生年齢は50〜60歳代に多く、子宮頸癌に比べると高齢者に多い。 一般に40歳未満の子宮体癌は若年体癌とされ、その頻度は子宮癌全体の5〜10%程度。エストロゲンを中心とした内分泌環境の異常が発症に大きく関与していると考えらる。症状は不正性器出血。 従って、更年期や閉経後の女性が不正性器出血を訴えたときには、子宮体癌を強く疑う。 その他、異常帯下や疼痛。治療法は基本的には手術療法。ただし、早期発見の若年性子宮体癌に対しては、妊孕性温存(子宮卵巣温存)の治療法もある。
4449 絨毛がんとは/絨毛癌とは(じゅうもうがん) 絨毛がんは、胎盤の絨毛細胞ががん化するものである。異常妊娠の胞状奇胎(ぶどうっ子)の後に発生することが多い。40代以上の女性に多い。急速に全身に転移し、肺、脳への転移で死亡することがある。症状は胞状奇胎 、流産 、分娩後の不正出血など。治療は化学療法が有効である。手術療法、放射線療法も行う。
4450 外陰がんとは/外陰癌とは(がいいんがん) 外陰がんは外陰部に発生する悪性腫瘍である。リンパ節へ転移しやすい。60代〜70代に多発する。症状はかゆみ、しこり、腫瘍 ・排尿時の熱感など。進行すると潰瘍が広がる、おりもの、不正出血など。治療は外陰部、リンパ節の切除手術をする。放射線療法、化学療法を行うこともある。
4451 外陰潰瘍とは(がいいんかいよう) 外陰潰瘍は外陰部にできる潰瘍である。原因の多くは、ヘルペスウイルス、ベーチェット病である。炎症性、性病、がんによるものがある。 症状は潰瘍。 ・悪化すると分泌物で覆われる、強い痛み 1〜2週間で自然治癒するが、再発しやすい。治療は抗ウイルス剤、消炎鎮痛剤、抗生物質の軟膏、副腎皮質ホルモン剤の軟膏等を使う。
4452 外陰ページェット病とは(がいいんぺーじぇっとびょう)
皮膚がんの一種で、おもに乳房に湿疹状の病変があらわれるが、乳房のほかに外陰部や肛門周囲などに生じることがある。外陰部や肛門周囲の皮膚に、湿疹やたむしに似た病変を生じます。正常な皮膚との境界が非常に明確で、赤いビロード状の病変の中に、白い部分が点在する。強いかゆみが持続する。なんらかの原因によって細胞が変化するもので、病変部は淡明大型細胞と呼ばれる異常な細胞がみられる。真菌症や皮膚炎と見誤ることが多いため、それらとの区別が必要。治療には手術が有効で、用囲の、正常部分も含めて病変部を大きく切り取る。リンパ節の切除を行うこともる。
4453 外陰炎とは(がいいんえん) 外陰炎は通常は炎症の起こりにくい外陰部に炎症が起きるもの。原因は抵抗力の低下や、子宮がん等による刺激性のおりもの、糖尿病、妊娠、老化等である。症状 は外陰部の腫れ、ほてり、かゆみなど。慢性化すると湿疹 、悪化すると肛門まで波及。治療は消炎剤、かゆみ止め、ステロイド剤、卵胞ホルモン軟膏を使う。患部を清浄に保つ。原因疾患の治療をする。
4454 外陰カンジダ症とは(がいいんかんじだしょう) Candida albicansによる膣炎・外陰炎で、典型的な症例では外陰部の激しい掻痒感と特異的な帯下の増加がみられる。診断は比較的容易で、抗真菌剤の投与によって通常は短期間で治癒します。しかし、少数例であるが反復症例や難治症例もみられ、この際には発症増強因子の存在の有無の検討が必要。外陰部に強い痒みがあり、発赤、脹れ、湿潤、灼熱感がある。白い苔状のかたまりが混じったヨーグルト状のおりものが増える。症状は外陰部に強い痒み、発赤、脹れ、湿潤、灼熱感のほかヨーグルト状のおりものなど。
4455 老人性膣炎とは/萎縮性膣炎とは/老人性外陰炎とは(ろうじんせいちつえん、いしゅくせいちつえん、ろうじんんせいがいいんえん) 老人性膣炎(萎縮性膣炎)は、更年期後に、膣が細菌に感染しやすくなって起こる炎症である。原因は更年期後に卵胞ホルモン分泌の減少で、膣粘膜が萎縮し、自浄作用が衰退して起こる。症状 は膿や血の混じるおりもの 、膣粘膜の赤いただれなど。治療は卵胞ホルモン、抗生物質による治療をする。悪性腫瘍でないことを確認する必要がある。
4456 外陰ジストロフィーとは(がいいんじすとろふぃー) 外陰ジストロフィーは外陰癌の前癌病変である。増殖性ジストロフィー,外陰白斑症 と硬化性苔癬,外陰萎縮症に分類される。増殖性ジストロフィー,外陰白斑症は周囲より隆起した境界明瞭な白斑として現れる。痛みとかゆみを主症状として、頻回の擦過により疼痛を訴える。 硬化性苔癬,外陰萎縮症は辺縁不規則な扁平白色丘疹として始まり、癒合して境界明瞭な白斑となる。大陰唇・小陰唇に左右対称性に多発する。 主症状は痛みとかゆみである。閉経後や思春期前に多い。
4457 性器ヘルペス症(せいきへるぺす) 外陰部などにできる、ウイルス性の急性の潰瘍で、痛みを伴う。
1)急性型
初感染のもので、強い症状が出る。性行為などで単純ヘルペスウイルスの感染があり、3〜7日後に軽いかゆみが起こり、その後突然痛くなり、歩くのも難しく排尿が困難になる。熱が出て、鼠径リンパ節がはれ、外陰部の左右対称位置に水ぶくれができ、じきに、破れて潰瘍になる。
2)再発型
感染してウイルスがからだの中に潜伏しているのに症状が出ないことがある。また、体の中に潜伏していたウイルスによって、水ぶくれや潰瘍ができ、再発を繰り返すことがある。再発型は急性型に比べて痛みが少ないことが多い。女性の場合は月経や妊娠、過労やストレスが引き金になることが多く、妊娠中に再発することがある。
3)誘発型
副腎皮質ホルモン剤の使用、放射線照射、施術などが誘因で起きる。再発型に似た症状。 原因は単純ヘルペスウイルスが膣、子宮頸部、外陰に感染して起こる。性感染症(STD)の一つ。
抗ヘルペス剤(外用と内服)を使う。場合によっては点滴で使用する。痛みには鎮痛剤を使う。分娩前の数週問以内に性器ヘルペス症になった場合は、膣を通る際、赤ちゃんにうつる可能性があるため、帝王切開することがある。
4458 カンジダ膣炎とは/膣カンジダ症(かんじだちつえん、ちつかんじだしょう) カンジダ膣炎(膣カンジダ症) は真菌のカンジダに感染して膣が炎症を起すもの。 原因は糖尿病や妊娠による抵抗力低下、抗生物質の長期使用等で、体内の真菌が増殖して起こる。性交によっても感染する。症状 は糊状の白いおりもの、外陰部の激しいかゆみ、痛み ・膣粘膜のただれなど。治療は抗真菌剤(抗ガンジダ剤)を膣に挿入する。再発しやすいので、要注意。
4459 トリコモナス膣炎とは/膣トリコモナス症とは(とりこもなすちつえん、ちつとりこもなすしょう) トリコモナス膣炎(膣トリコモナス症)は原虫感染による、膣の炎症。原因はトリコモナス原虫による感染である。性交時が一番多く、風呂、下着、便座等からも感染する。尿道、膀胱、子宮頚管等にも感染する。症状は悪臭のする黄色の泡状おりもの、外陰部の赤いただれ、かゆみ、性交時の痛み、出血など。治療は性交相手と共に、膣剤挿入、内服薬で治療。
4460 非特異性膣炎とは(ひとくいせいちつえん) 非特異性膣炎は膣の自浄作用低下によって起こる炎症である。 原因 は膣の中に避妊器具、タンポンを入れっぱなしにすることで、大腸菌、ブドウ球菌等が感染して起こる。症状は白色、黄色のおりもの、かゆみなど。治療は膣内洗浄をして、抗生物質を挿入する。
4461 淋菌性膣炎とは(りんきんせいちつえん) 淋菌性膣炎は性感染症の一種です。淋菌という細菌に感染することで起こる。淋菌は、うみになって体の外に出たり、乾燥した状態ではすぐに死んでしまいます。そのため、性行為以外では人から人へ移ることはほとんどない。感染してから症状がでるまで、2日から7日かかる。まれに、うみがついた下着や手などからも感染することもある。また、うみが目につくと重い目の病気なる。 治療中は安静が必要。とくに自動車やオートバイ、性的刺激を避ける。性交も厳禁。
4462 無月経とは(むげっけい) 無月経は18歳を過ぎても初潮を迎えなかったり(原発性無月経)、月経が2〜3ヶ月以上なくなったり(続発性無月経)するものである。原因は
1)原発性無月経
子宮、卵巣等の発育不全、染色体異常、脳下垂体等の障害、処女膜、膣の閉塞等
2)続発性無月経
過激なダイエット、スポーツ、糖尿病、腎臓病、妊娠等
症状は適齢で初潮がない 、3ヶ月以上月経がないなど。治療は原因により、ホルモン療法や手術。基礎体温のチェックも必要。
4463 稀発月経とは(きはつげっけい) 稀発月経は月経周期が39日以上になるものである。原因は甲状腺機能、脳下垂体、脳の視床下部等の機能異常や、糖尿病、ストレスが原因となる。閉経期近くの人や初潮が始まったばかりの人は、心配はいらない。症状は月経周期が39日以上になる。治療は基礎体温で排卵の有無を見る。排卵があって黄体期の短縮がなければ問題はない。無排卵の場合は、ホルモンによる排卵誘発治療を行う。
4464 頻発月経とは(ひんぱつげっけい) 頻発月経は月経周期が24日以内のもの。卵巣機能が原因となり、卵細胞、黄体期の短縮等で起こる。子宮がん、腫瘍、性器炎症等による不正出血を見誤る場合もある。症状は月経が24日以下の周期で起こる。治療はホルモン治療で卵巣の機能を高める。排卵誘発剤を使うこともある。
4465 過多月経とは(かたげっけい) 過多月経は月経血の量が多かったり、月経期間が通常より長いもの。子宮筋腫、子宮内膜症等子宮の疾患、卵巣の機能不全の他、精神的ストレスが原因となることもある。 症状 は出血量が平均以上の量になる 、凝血塊 、日数が8日以上になる。原因疾患の治療をする。ホルモン療法を行う、止血薬を使うこともある。
4466 過少月経とは/過小月経とは(かしょうげっけい) 過少月経は、月経血の量が少ないもの。更年期、思春期、出産後に多い。他に原因としては、中絶等による子宮内腔の癒着、卵巣機能不全等があげられる。症状は月経血の量が極端に少ない。 月経の日数が2日以下のものを過短月経ともいう。治療はホルモン療法を行う。
4467 機能性子宮出血とは/機能性出血とは(きのうせいしきゅうしゅっけつ、きのうせいしゅっけつ) 機能性子宮出血は月経以外の性器出血である。血液疾患や卵巣の機能不全によるホルモン異常が原因と言われる。 症状は性器出血。治療はホルモン療法を実施する。子宮筋腫等ではないかの検査が必要。
4468 月経困難症とは(げっけいこんなんしょう) 月経困難症は月経の症状が通常よりも重いもの。機能的な原因として、子宮の発育不全、黄体ホルモンの分泌不全等があり、器質的な原因として、骨盤内の炎症、子宮筋腫、子宮内膜症等がある。症状は下腹部の痛み、下痢、頭痛、腰痛、脱力感、腹部圧迫感 など。治療は原因疾患を治癒する。ホルモン療法、精神安定剤投与等を行う。
4469 月経前緊張症とは(げっけいぜんきんちょうしょう) 月経前緊張症は月経前にさまざまな不快感が出る。主な原因は、月経前に分泌される卵胞ホルモンと黄体ホルモンのアンバランスのためである。症状はイライラ 、頭痛、肩こり、むくみ 、乳房痛など。治療は利尿剤、精神安定剤、ホルモン剤等を使う。
4470 卵巣機能不全とは(らんそうきのうふぜん) 卵巣が正常に働かない状態。そのため排卵はなく月経もなくなる。無排卵無月経となる。原因は生まれつき卵巣が発達していない、過剰なダイエット、消耗性疾患、糖尿病などが考えられる。ほかの病気の治療薬の副作用で卵巣機能が失調することもある。治療は直接卵巣を賦活させる薬、脳下垂体に働く薬、また下垂体の刺激ホルモンを賦活させる薬などで治療。
4471 黄体機能不全とは(おうたいきのうふぜん) 黄体機能不全は排卵後に形成される黄体からのエストロゲンおよびプロゲステロンの分泌不全あるいは分泌不均衡によって、受精卵の着床にそなえた子宮内膜の分泌性変化が完全に起こらない病態。そのために不妊症の原因になったり、妊娠しても流産、反復流産の原因の一つになる。黄体機能不全の治療はその原因に応じて以下の3つに分類されている。(1)卵胞成熟不全の場合、(2)卵胞成熟は正常であるが、黄体ホルモン分泌不全あるいは子宮内膜細胞の黄体ホルモンに対する感受性の低下がある場合、(3)その他の内分泌疾患の合併している場合に分類される。
1)卵胞成熟不全
排卵誘発剤を用いて卵胞の発育を正常化させることにより、黄体の機能を改善させる方法。クロミフェン(クロミッド)療法、ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)がある。
2)卵胞成熟は正常であるが、黄体ホルモン分泌不全あるいは子宮内膜細胞の黄体ホルモンに対する感受性の低下がある場合
卵胞の発育・成熟は正常のために、直接黄体を賦活するか黄体ホルモンそれ自体を補充する。
3)その他の内分泌疾患の合併
高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣(PCO)、甲状腺機能の正常化、インシュリン代謝異常の正常化などの際、ホルモンの分泌不全を合併し、結果的に黄体機能不全を引き起こす可能性が高く、それぞれの疾患を治療する。
4472 不正性器出血とは(ふせいせいきしゅっけつ) 不正性器出血は月経以外で、性器から出血するもの。原因としては、子宮筋腫等、子宮の疾患、卵巣、卵管の疾患、膣の疾患、子宮外妊娠、ピル等がある。症状は月経以外の性器出血。原因疾患の治療をする。安静にする。
4473 切迫流産とは(せっぱくりゅうざん) 流産は妊娠初期の4〜12週に起きやすく、特に妊娠11週ごろがもっとも発生する危険性が高い。切迫流産は流産しかかっている緊急状態。原因は胎児側、母体側の両方が考えられる。妊娠初期の流産の原因は、主に胎児側にあるといわれる(染色体異常、卵子の異常など)。母体側の原因は、子宮の形、子宮内膜に異常があって受精卵が着床しにくい場合、そして知らないうちに炎症や感染が発生していることなどが考えられる。症状は少量の出血、下腹部につっぱった感じの軽い痛みなど。
4474 不育症とは/習慣性流産とは/反復性流産とは(ふいくしょう、しゅうかんせいりゅうざん、はんぷくせいりゅうざん) 不育症とは、妊娠しても流産や早産または死産を繰り返し、元気な赤ちゃんを得られない状態をいい、 同じように使われる2回以上流産を繰り返すことを反復流産という。 3回以上流産を繰り返すことを習慣(性)流産という。
厳密に不育症は
1)流産だけではなく、早産、死産を含む。
2)流産を続けて2回した場合も含む。(3回以上ではない)
妊娠10週以降の子宮内胎児死亡の場合、1回でも不育症と診断する医師もいる。
4475 胞状奇胎とは(ほうじょうきたい) 妊娠すると、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら絨毛という細かい根のような組織を増やして、子宮の内膜から養分を吸収するす。これは妊娠3ヶ月ごろまで発達を続けて、赤ちゃんに栄養を送る胎盤になる。 胞状奇胎はこの絨毛が異常に増殖し、水泡状のぶどうのような粒になって子宮の中に充満してしまう病気のこと。別名:ぶどうっ子ともいう。 良性の絨毛性疾患ですが、まれ(奇胎後1〜2%の確率)に絨毛ガンに移行することがある。
4476 妊娠悪阻とは(にんしんおそ) 妊娠悪阻は重症のつわりのこと。一般につわりは、妊娠4週目から6週目ぐらいから始まり、12週目から16週目ぐらいには落ち着く。しかし、つわりが重症で体重が減りすぎたり、水分がとれなくなった場合は妊娠悪阻という病気で治療が必要。
4477 頸管無力症とは/頸管不全症とは(けいかんむりょくしょう、けいかんふぜんしょう) 子宮頸管は子宮の出口にあたる部分。妊娠中、子宮頸管はしっかりと閉じていて、子宮の中の胎児を保持しているが、まれにこの部分がゆるくて開きやすく、流産や早産になってしまう場合があるす。このような病態を頸管無力症(頸管不全症)といい、妊娠初・中期の習慣性流産の一つの要因となる。頸管無力症の原因は人工妊娠中絶により頸管の裂傷が瘢痕化すること、円錐切除術後などがあるが、原因不明の場合も多い。
4478 子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん) 子宮外妊娠は卵管等、子宮腔以外の場所に着床して妊娠するもの。 卵管炎等で卵管が通りにくくなっていることが原因。すみやかに処置すれば心配はないが、手遅れになると、生命の危険がある。症状は強い腹痛 、出血 、腹部膨満など。重症になるとショック状態。治療は輸血、輸液後、手術。
4479 妊娠中毒症とは(にんしんちゅうどくしょう) 妊娠中毒症は妊娠後期にむくみ等、さまざまな症状が出る。原因は不明である。妊産婦の死亡原因のトップで、肺水腫、脳出血の併発で死亡する恐れがある。症状はむくみ、タンパク尿、高血圧、手のしびれ、呼吸困難 など。治療は減塩、高タンパク、高カロリーの食事療法。
4480 骨盤位とは/逆子とは(こつばんい、さかご) 骨盤位はいわゆる逆子のことで、胎児の下肢が子宮口に向いているもの。原因不明が多い。子宮の形状異常の場合もある。自覚症状はない。分娩に支障はないが、帝王切開の場合もある。
4481 子宮内胎児発育遅延とは(しきゅうないたいじはついくちえん) 胎児の発育は妊娠週数に相当した発育を続けるのが正常。しかし、何らかの理由(たとえば妊娠中毒症)により子宮内の胎児の発育が遅れている状態を子宮内胎児発育遅延と呼ばれる。子宮内胎児発育遅延は胎児死亡、周産期死亡の原因になる。
4482 羊水過多症とは(ようすいかたしょう) 羊水過多で心配されるのは胎児に飲み込む力がなかったり、消化器管になんらかの異常がみられる。また、胎盤に腫瘍が出来ていて、その刺激で羊水が異常につくられるということもある。母体に内臓の疾患があったり、特に糖尿病があると羊水が多くなることもある。週数に対してお腹がかなり大きくなる。胎動を感じにくい。出産が近づいても胎児の一が定まらないなどの症状がある。    羊水が増えすぎて母体が苦しい場合は羊水を抜く場合もある。過多症は早産を起こしやすいので注意が必要。
4483 羊水過少症とは(ようすいかしょうしょう) もともと羊水が産出されにくい。胎児の心臓に何らかの問題が考えられる場合もある。母体を外から見て、あまりの羊水の少なさに胎児の形がはっきりと分かることもある。羊水が極端に少なくなると外部からの衝撃が伝わりやすくなり、へその緒も圧迫されやすくなるので胎児仮死を起こすこともある。
4484 前置胎盤とは(ぜんちたいばん) 前置胎盤は胎盤が子宮下部に寄り、子宮口を覆うものである原因は不明である。症状は妊娠後半に出血。治療は帝王切開をする場合もある。
4485 常位胎盤早期剥離とは(じょういたいばんそうきはくり) 常位胎盤早期剥離は分娩前に子宮の中で、母体と胎児をつなぐ胎盤がはがれるもの。妊娠中毒症等が原因となる。 症状は腹部の痛み 、性器出血。出血で母体がショック状態になると、危険である。治療は帝王切開をするか、胎児死亡の場合は手術をする。
4486 妊娠貧血とは(にんしんひんけつ) 妊娠中には胎児に鉄分を取られるので、妊娠の3〜4割は鉄欠乏性の貧血になりやすい。この状態を妊娠貧血と呼ぶ。妊娠5ヵ月ころになると、胎児の発育が盛んになり、それに伴い母体の血液の量も増え始める。この時にヘモグロビン(血色素)の材料である鉄分が不足しがちになる。これにより鉄欠乏性貧血になるわけです。貧血が強くなると、妊婦には、めまい、動悸、息切れ、頭痛などの症状が現れ、胎児にも影響が出る。胎児への影響は発育が悪くなって、生後に未熟児、虚弱児、心身障害児になる場合もある。分娩時に影響が出る場合もある。微弱陣痛、弛緩出血などを起こしやすくなり、母体の抵抗力が落ちるために、分娩後に産褥熱にかかりやすくなる。
4487 前期破水とは(ぜんきはすい) 前期破水は分娩の開始以前、すなわち規則正しい陣痛が発来する以前に卵膜の破綻をきたし、羊水が子宮外に流出する。前期破水は早産、臍帯脱出および子宮内感染症の主要な原因。妊娠37週以前の前期破水は未熟児出産の原因になります。
4488 微弱陣痛とは(びじゃくじんつう) 微弱陣痛は陣痛が長時間続いて、母体が疲労して子宮の収縮する力が弱くなってしまった状態で、出産全体のおよそ0.6%〜9.0%程度。原因には多胎妊娠、羊水過多、胎児の廻旋異常のほかに若年出産と高齢出産があげられるが、これらの原因がなくとも結構起こる可能性がある。
4489 子宮頸管裂傷とは(しきゅうけいかんれっしょう) 分娩の際、子宮口にあたる子宮頸管が切れることがある。裂傷が深いとその近くを通る子宮動脈が切れて大出血することがある。胎児が生まれた後、膣を通して裂傷部を縫合し、止血する。裂傷が深い時は開腹して裂傷部を縫合する。
4490 会陰部裂傷とは(えいんぶれっしょう) 陣痛が強すぎると胎児が娩出するときにいきみ(腹圧)を止めないと胎児の頭によって引き延ばされ薄くなった会陰部が膣壁の裂傷を伴ってさけてしまうことがある。まれに肛門部までさけることがあり、出血を伴うので分娩後すぐ縫合する必要がある。分娩前に早めに切開して産道を広げる処置をすると会陰部裂傷に比べ傷が直線的で縫合しやすい。
4491 臍帯巻絡とは(さいたいけんらく) 臍帯(へそのお)が胎児の体に巻きついている状態。これは珍しいことではなく、産婦の10人中 2〜3人に見られ何の問題もなく出産できるケースが多い。 しかし、巻きついた 臍帯が胎児と産道の間で圧迫され、酸素不足で仮死状態になることもあり、鉗子分娩や吸引分娩あるいは帝王切開になることもある。
4492 胎児仮死とは(たいじかし) 分娩中は子宮収縮により子宮の血流量が減少する。そのために胎児への酸素供給が少なくなり、低酸素状態になる。また、へその緒が胎児のからだに巻きついたり、産道を通るときにへその緒が圧迫されることで血行が妨げられ胎児への酸素供給がなされなくなり低酸素状態におちいることがある。また、妊娠中毒症や予定日超過などで胎盤の機能が落ちてしまうなど、胎児への十分な酸素が供給がなされなくなり低酸素状態になること。
4493 弛緩出血とは(しかんしゅっけつ) 分娩後、子宮は急速に収縮して子宮底部(子宮の一番上部、頭方よりの部分)は、臍の下にまで下がってくるのが通常ですが、この収縮が不十分なために子宮内での出血が止まらなくなって大出血をおこすものを弛緩出血という。早急に子宮を収縮させる必要があり、子宮のマッサージ、双手圧迫法、お腹に氷を乗せるなどの処置を行うが、出血が止まらない場合には手術で子宮を摘出することもある。ごく短時間の間に大量の出血を起こすこともまれではなく、母体死亡の危険性の高い疾患。
4494 産褥感染症とは(さんじょくかんせんしょう) 分娩後細菌などの感染により発生する感染症の総称。悪露が臭くなり、子宮内に感染が進むと寒気やふるえがきて高熱を出す。子宮の周囲に広がると産褥骨盤腹膜炎を起こして重症になる。腎盂腎炎や血栓性静脈炎を起こすこともある。抗生物質の内服、注射で治療。
4495 更年期障害とは(こうねんきしょうがい) 更年期障害は女性の老年期への移行期に起こる、種々の精神的、肉体的症状のことである。40代半ばから50代半ばの間に、卵巣機能が低下し、閉経となるのが原因である。また、この年代が抱える家庭環境の変化や夫婦不和、子供の問題等の心理的ストレスが誘引となる。
1)症状
不定愁訴が起こる。これは、器質的疾患なく自覚症状を訴えるもの。
熱感、動悸、肩こり、頻脈、遅脈、冷え性、血圧の高低等 ・頭痛、めまい、不眠、耳鳴り、抑うつ、集中力低下等 ・腰痛、関節痛、筋肉痛等 ・しびれ、知覚過敏、知覚鈍麻等 ・頻尿、不正出血、性交障害等 ・発汗、口内乾燥、唾液分泌過剰等 ・吐き気、食欲不振、下痢、便秘等
2)治療
まず不定愁訴なのか、原因疾患があるのかを確認する。軽症は治療の必要はない。症状が重い場合は、ホルモン補充療法、漢方療法や心理療法を実施する。規則正しい生活、バランスの良い食事も有効。
4496 不妊症とは(ふにんしょう) 不妊症は妊娠の希望がありながら、2年を経過しても妊娠しないもの。
原因は女性は卵巣障害、子宮障害、卵管障害、強いストレス等。男性は無精子症、精子減少症、精管閉鎖、陰茎の勃起不全等。治療は女性は排卵を起こすホルモン治療、手術的治療。 男性はホルモン療法。他に人工受精、体外受精の手段もある。
4497 単純性甲状腺腺腫とは(たんじゅんせいこうじょうせんせんしゅ) 甲状腺が全体的に腫れているが血液検査、超音波などで何も異常を認めない状態。思春期によくみられることから、体の成長のために甲状腺の働きが活発になっていることが原因とも考えられている。しかし患者さんの経過を追っていくとバセドウ病や橋本病に移行することがある。
4498 結節性甲状腺腫とは(けっせつせいこうじょうせんせんしゅ) 甲状腺内に腫瘤ができる病気。良性と悪性があり、結節性甲状腺腫は、以下のように分類されます。
1)甲状腺良性結節(腺腫・腺腫様甲状腺腫・嚢胞)
2)甲状腺悪性腫瘍(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫)
3)甲状腺機能性結節(プランマー病)
結節性甲状腺腫は、甲状腺の機能にほとんど異常がないため自覚症状はなく、知らない間に徐々に大きくなり、のどの一部が腫れ、腫瘤に気付く。腫瘤は良性か悪性かを鑑別する事が重要。
4499 甲状腺がんとは/甲状腺癌とは(こうじょうせんがん) 甲状腺がんは代謝ホルモン分泌を司る甲状腺に発生するがんである。うち80%は腺がんである。40歳以下の年代、女性に多い。症状は喉の圧迫感 、声のかすれ 、首中央の腫れなど。治療は摘出手術、放射線療法、化学療法を行う。
4500 亜急性甲状腺炎とは(あきゅうせいこうじょうせんえん) 亜急性甲状腺炎は甲状腺ホルモンの血中への大量流入で、甲状腺機能の亢進が起きる。甲状腺のウイルス感染が原因。甲状腺の「かぜ」と言われる。症状は甲状腺のしこり、発熱、発汗、高熱、動悸 、息切れ、倦怠感、筋肉痛 、首の腫れ、首の痛みの移動など。初期なら治療なしで、半年以内に完治する。重症には副腎皮質ホルモン剤を投与し、安静にしてバランスの良い食事をとる。